特許第6621258号(P6621258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621258
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】転写装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/20 20060101AFI20191209BHJP
【FI】
   H05K3/20 C
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-147314(P2015-147314)
(22)【出願日】2015年7月27日
(65)【公開番号】特開2017-28180(P2017-28180A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】515204432
【氏名又は名称】有限会社エリンタ
(74)【代理人】
【識別番号】100073689
【弁理士】
【氏名又は名称】築山 正由
(72)【発明者】
【氏名】山賀 宏
【審査官】 ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−173317(JP,A)
【文献】 特開2010−141001(JP,A)
【文献】 特開2007−201344(JP,A)
【文献】 特開平05−191055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/00
H05K 3/20
H05K 3/46
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コピーやプリンタで印刷した回路図等のパターンを生基板に転写するための装置であって、
一対の板材(30)と、
開口部(41)を有する防水性の耐熱袋(40)と、
板材(30)同士を固定するための固定部材(60)と、
一対の板材(30)の間に介在させるスペーサ(70)と、
パターンと生基板を挟み込むためのクッション材(20)と、
耐熱袋(40)の開口部(41)を沸騰水上に維持するための支持部材(50)と、
を備える転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコピーやプリンタで印刷した回路図のパターン等の被写体を転写するための装置に関し、殊に回路図を基板に転写し、プリント基板を製作するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板を自作する際は、コピー機やプリンターで印刷した回路図を生基板に、アイロンやラミネーターで転写するという方法が採られる。
【0003】
複数の層に回路パターンが形成された多層プリント基板を製造する技術が、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1の多層プリント配線板の製造方法は、両面銅張り積層板の一方の面に接着フィルムを、他方の面にドライフィルムをラミネートした状態で、ドライフィルムの露光・現像およびエッチング処理を行うことにより、積層板の他方の面に所定の回路パターンを形成する。そして、上述のようにして形成した2つの積層板の回路パターン面の間に両面プリント配線板を配置し、プリプレグを介してこれらを加熱プレス圧着することにより、多層プリント基板が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−64965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は簡単、且つ、安価にコピー機やプリンターで印刷した回路図を生基板に転写することが可能な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本考案の構成は以下の通りである。
【0007】
(1) 請求項1に記載の発明は、コピーやプリンタで印刷した回路図等のパターンを生基板に転写するための装置を、一対の板材と、開口部を有する防水性の耐熱袋と、板材同士を固定するための固定部材とにより構成した。
【0008】
(2) 請求項2に記載の発明は、請求項1記載の転写装置に、一対の板材の間に介在させるスペーサと、パターンと生基板を挟み込むためのクッション材とを更に備えて構成した。
【0009】
(3) 請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の転写装置に、耐熱袋の開口部を沸騰水上に維持するための支持部材を更に備えて構成した。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成される本発明が、如何に作用して課題を解決するかを図面を参照しながら概説する。
【0011】
図1は本発明にかかる転写装置10を模式的に示した概略説明図である。回路図等のパターンを印刷した用紙1と生基板2とを重ねた状体で耐熱袋40の中に入れ、上下にクッション材30を介在させたうえで、一対の板材30で挟持するものである。
【0012】
かかる状体で図3に示すように、水4が入れられ下部から加熱器5によって加熱されている容器3内に転写装置10を浸け、転写装置10を煮沸する。すると、用紙1に印刷された回路図等のパターンが生基板2に熱転写されるものである。
【0013】
かように本発明によれば、沸騰した湯に浸け煮沸するだけで熱転写が可能となる。すなわち、簡単、且つ、安価しかも短時間で熱転写が可能な装置の提供が可能となるのである。
【0014】
更には本発明によれば、下記に示すような効果も奏するものである。
【0015】
沸騰した湯は温度が100℃程度の一定した状体にとどまることから、温度制御装置が不要となる。
【0016】
用紙と生基板を耐熱袋に収容することで均一に転写を行うことが可能となる。すなわち、袋に入れずに煮沸すると、体積が急激に増大した気泡が熱の伝導を部分的に遮ると共に、気泡の位置が不特定に移動するため、熱分布が均一でなくなり、結果転写結果が均一でなくなる。しかし、本発明によれば気泡が直接生基板等に接触しないことから、かかる不都合を回避可能となるのである。
【0017】
請求項2に記載の転写装置では、一対の板材30の間にスペーサ70が介在させてある。これにより上下の板材30による締め付け圧力が一定以上になることを抑制可能となる。また、クッション材20を介在させることで固定部材60による締め付け圧力が不均一になることを抑制可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明では、耐熱袋40の開口部41を沸騰水上に維持するための支持部材50が装備される。これにより耐熱袋40内の残留空気が加熱により膨張し、耐熱袋40が破裂すること防止することが可能となる。なお、チャックを設けることで開口部41を閉鎖することを可能とすれば、耐熱袋40内の空気を押し出したうえでチャックを閉じ、耐熱袋40全体を湯中に沈めた状体で加熱転写することも可能である。
【0019】
また、生基板の両面に回路図等のパターンが印刷された用紙を圧着させれば、生基板の両面に同時に熱転写を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の概略説明図
図2】本発明の概略構成図
図3】実施状体を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、好ましい発明の一実施形態につき、図面を参照しながら概説する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属
する限り種々の形態を採りうる。
【0022】
本発明に係る転写装置10は、一対の板材30、耐熱袋40、固定部材60、クッション材20及び支持部材50を主な構成要素とする。
【0023】
図2に示すように板材30は方形の板状体であり、材質は煮沸により変形や変質しない特性を有する金属板や樹脂板を利用可能である。むろん方形という形状は一例であり、任意の形状を採用できる。
【0024】
一方の板材30には耐熱袋40の開口部41を支持するための支持部材50が設けてある。図1図2において支持部材50は板材30上に立設された支柱51と開口部41を挟持するクリップ52で形成されているが、もちろんかかる形状に限定されるものではない。他には支柱51を板状にし、これに磁石を装着し、別の磁石で開口部41を挟むようにしても良い。また、支柱51に保持リングを取り付け、当該保持リングで開口部を保持するようにしても良い。要は開口部41を水面より上部に支持できれば任意の形態を採用できる。
【0025】
クッション材20は図2に示すように、耐熱性、弾性及び通気性を有する素材で形成された方形の板状体である。回路図1aが印刷された用紙1及び生基盤2を挟む形態で一対備えられるものである。
【0026】
固定部材60は図1に示すようにボルト61及び六角長ナット62で成るものである。六角長ナット62を採用しているのは締めつけ及び解放を容易にするためである。無論これは一例であり、一対の板材30を緊締できるものであれば、任意の手段を採用できる。
【0027】
また、板材30にはボルト61を通すための孔部31が複数設けてある。
【0028】
一対の板材30,30の間には図1に示すようにスペーサ70が介在させてある。図1においては他の部材を可視的にするため、スペーサ70は一部破断して作図してあるが、実際は図2に示すように板状体であり、一対装備されるものである。
【0029】
むろんかかるスペーサの形状は一例であり、他にも円筒形状でありボルト61を緩挿させることで板材30の四隅に介在させるといったもの、その他任意の形状のものを採用できる。
【0030】
耐熱袋40は耐熱性及び防水性を有する樹脂製等の袋体であり、用紙1及び生基板2を内部に収容するための開口部41を有するものである。開口部41に図示しないチャックを設けて、開閉自在にすれば、より使い勝手に富むものとなる。
【0031】
図3は転写作業時を示すものであるが、容器3は鍋を加熱器5はガスコンロなどを使用できるものである。
【符号の説明】
【0032】
10・・転写装置
20・・クッション材
30・・板材
40・・耐熱袋 41・・開口部
50・・支持部材
60・・固定部材
70・・スペーサ
図1
図2
図3