特許第6621303号(P6621303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621303
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】シール部材及びシール部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/22 20060101AFI20191209BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20191209BHJP
   F01D 11/02 20060101ALI20191209BHJP
   F02C 7/28 20060101ALI20191209BHJP
   C22C 19/03 20060101ALI20191209BHJP
   C22C 19/05 20060101ALI20191209BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20191209BHJP
   C22C 38/44 20060101ALI20191209BHJP
   C23F 1/00 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   F16J15/22
   F01D25/00 M
   F01D25/00 L
   F01D25/00 X
   F01D11/02
   F02C7/28 B
   F02C7/28 E
   C22C19/03 H
   C22C19/05 C
   C22C38/00 302Z
   C22C38/44
   C23F1/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-217130(P2015-217130)
(22)【出願日】2015年11月4日
(65)【公開番号】特開2017-89689(P2017-89689A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平川 裕一
(72)【発明者】
【氏名】上原 秀和
(72)【発明者】
【氏名】西本 慎
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−238311(JP,A)
【文献】 特開2010−236547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/22
F01D 25/00
F01D 11/02
F02C 7/28
C22C 19/03
C22C 19/05
C22C 38/00
C22C 38/44
C23F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する板状部材が円環状に積層されてなるシール部材であって、
前記板状部材は、第1金属材料を含有する第1金属板と、エッチング加工可能な第2金属材料を含有する第2金属板とが積層されてなり、一端側の厚さが他端側の厚さに対して相対的に小さく、
前記第2金属板は、前記第1金属板の表面の全域に配置され、一端側の厚さが他端側の厚さに対して相対的に小さいことを特徴とする、シール部材。
【請求項2】
前記板状部材は、前記他端側から前記一端側に向けて厚さが減少する、請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
前記板状部材は、第2金属板の表面に凸状部が設けられた、請求項1又は請求項2に記載のシール部材。
【請求項4】
前記第1金属板は、一対の前記第2金属板に挟持されてなる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシール部材。
【請求項5】
前記第1金属材料は、アルミニウム及びチタンの含有量の合計が1質量%以上であるNi基合金を含有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシール部材。
【請求項6】
前記第2金属材料は、クロムの含有量が10質量%以上であって、モリブデンの含有量が3質量%未満であるステンレス鋼及びNi基合金の少なくとも1種を含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシール部材。
【請求項7】
可撓性を有する板状部材が積層されてなるシール部材の製造方法であって、
第1金属材料を含有する第1金属板と、エッチング加工可能な第2金属材料を含有する第2金属板とを積層する積層工程と、
前記第2金属板をエッチングして前記第2金属板の一端側の厚さを他端側の厚さに対して相対的に小さくしたシール部材を得るエッチング工程とを含むことを特徴とする、シール部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、蒸気タービン及びガスタービンに用いられるシール部材及びシール部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスタービン、蒸気タービン及び圧縮機などの回転装置では、回転軸の周囲をシールする軸シール部材としてのリーフシールが用いられている(例えば、特許文献1参照)。このリーフシールにおいては、複数のリーフシールが円環状に配置されたリーフ群に対する低圧空間側のリーフ群の厚さを高圧空間側よりも厚さを大きくすることにより、リーフ群における圧力降下を低圧空間側で起こるようにして、低圧空間側でのリーフ間の間隙を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−238311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のリーフシールでは、リーフ群のリーフ間の隙間が均一ではなく、特定のリーフシールと当該特定のリーフシールの近傍のリーフシールとの間の隙間に被密封流体が入り込む場合がある。このような場合には、被密封流体のばね剛性による振動伝搬により、リーフシールの先端部にバタツキが発生して過大な応力が作用するので、リーフシールの先端部に疲労損傷が発生する場合がある。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、リーフ群の剛性を向上でき、軸シール部材の疲労損傷を防ぐことが可能なシール部材及びシール部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシール部材は、可撓性を有する板状部材が円環状に積層されてなるシール部材であって、前記部材は、第1金属材料を含有する第1金属板と、エッチング加工可能な第2金属材料を含有する第2金属板とが積層されてなり、一端側の厚さが他端側の厚さに対して相対的に小さいことを特徴とする。
【0007】
本発明のシール部材によれば、第2金属板がエッチング加工可能な第2金属材料を含有するので、エッチング加工によってシール部材の一端側の厚さと他端側の厚さとを異ならせることが可能となる。これにより、シール部材は、シール部材の一端側における剛性を向上させることができるので、シール部材の使用時における疲労損傷を防ぐことが可能となる。
【0008】
本発明のシール部材においては、板状部材は、前記一端側から前記他端側に向けて厚さが減少することが好ましい。この構成により、シール部材は、シール部材の一端側における剛性を更に向上させることができるので、シール部材の使用時における疲労損傷をより一層防ぐことが可能となる。
【0009】
本発明のシール部材においては、前記板状部材は、第2金属板の表面に凸状部が設けられたことが好ましい。この構成により、シール部材は、使用時にシール部材が隣接するシール部材と接触した際にダンパ効果が得られるので、シール部材の使用時における疲労損傷をより一層防ぐことが可能となる。
【0010】
本発明のシール部材においては、前記第1金属板は、一対の前記第2金属板に挟持されてなることが好ましい。この構成により、シール部材は、シール部材の一端側における剛性を更に向上させることができるので、シール部材の使用時における疲労損傷をより一層防ぐことが可能となる。
【0011】
本発明のシール部材においては、前記第1金属材料は、アルミニウム及びチタンの含有量の合計が1質量%以上であるNi基合金を含有することが好ましい。この構成により、600℃級の高温下で使用可能な高温強度及び耐酸化性を具備することができるので、リーフ間の隙間に発生し得る酸化スケールによるリーフ同士の固着に伴う、リーフの浮上性能の低下によるリーフとロータとの接触を防ぐことが可能となる。また、Ni基合金としては、上述した作用効果を一層向上する観点から、時効処理により高温強度を向上させた析出型のNi基合金が好ましい。
【0012】
本発明のシール部材においては、前記第2金属材料は、クロムの含有量が10質量%以上であって、モリブデンの含有量が3質量%未満であるステンレス鋼及びNi基合金の少なくとも1種を含むことが好ましい。この構成により、600℃級の高温下での耐酸化性が向上すると共に、エッチング液に対する耐食性が上がりすぎによるエッチング加工精度の低下を防ぐことができるので、第2金属板の板厚方向の高精度なエッチング加工が可能となり、シール部材の任意の形状への板厚方向の加工が容易となる。
【0013】
本発明のシール部材の製造方法は、可撓性を有する板状部材が積層されてなるシール部材の製造方法であって、第1金属材料を含有する第1金属板と、エッチング加工可能な第2金属材料を含有する第2金属板とを積層する積層工程と、前記第2金属板をエッチングして前記第2金属板の一端側の厚さを他端側の厚さに対して相対的に小さくした軸シール部材を得るエッチング工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明のシール部材の製造方法によれば、第2金属板がエッチング加工可能な第2金属材料を含有するので、エッチング加工によってシール部材の一端側の厚さと他端側の厚さとを異ならせることが可能となる。これにより、シール部材の製造方法により得られるシール部材は、シール部材の一端側における剛性を向上させることができるので、シール部材の使用時における疲労損傷を防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、リーフ群の剛性を向上でき、軸シール部材の疲労損傷を防ぐことが可能なシール部材及びシール部材の製造方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るガスタービンシステムの一例を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る軸シール装置の概略を示す断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る軸シール装置の一部を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る軸シール装置の概略を示す断面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る軸シール装置の分解図である。
図6A図6Aは、本発明の実施の形態に係るリーフの一例を示す平面図である。
図6B図6Bは、図6AのVIB−VIB線における矢視断面図である。
図6C図6Cは、図6AのVIC−VIC線における矢視断面図である。
図6D図6Dは、図6AのVIC−VIC線における矢視断面図である。
図7A図7Aは、本発明の実施の形態に係るリーフの他の例を示す平面図である。
図7B図7Bは、図7AのVIIB−VIIB線における矢視断面図である。
図7C図7Cは、図7AのVIIC−VIIC線における矢視断面図である。
図8A図8Aは、本発明の実施の形態に係るリーフの別の例を示す平面図である。
図8B図8Bは、図8AのVIIIB−VIIIB線における矢視断面図である。
図8C図8Cは、図8AのVIIIC−VIIIC線における矢視断面図である。
図9図9は、一般的な軸シール装置の使用時の流体の流れの説明図である。
図10図10は、一般的な軸シール装置の使用時のリーフの説明図である。
図11図11は、本発明の実施の形態に係る軸シール装置の使用時のリーフの説明図である。
図12図12は、第2金属材料におけるクロム(Cr)含有量とモリブデン(Mo)含有量との関係を示す図である。
図13図13は、本発明の実施の形態に係るリーフシールの製造方法のフロー図である。
図14A図14Aは、本発明の実施の形態に係るリーフシールの製造方法の説明図である。
図14B図14Bは、本発明の実施の形態に係るリーフシールの製造方法の説明図である。
図14C図14Cは、本発明の実施の形態に係るリーフシールの製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の各実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。また、以下の各実施の形態は適宜組み合わせて実施可能である。また、各実施の形態において共通する構成要素には同一の符号を付し、説明の重複を避ける。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る回転機械を備えたガスタービンシステム1の一例を示す模式図である。図1に示すように、このガスタービンシステム1は、空気G1を圧縮して圧縮空気G2とする圧縮機(回転機械)2と、圧縮機2で圧縮された圧縮空気G2に燃料を供給して混合して燃焼させる燃焼器3と、燃焼器3で燃焼された燃焼ガスG3が供給されるタービン(回転機械)4と、圧縮機2内に配置された回転軸51とタービン4内に配置された回転軸52とを接続する回転軸50を有するロータ5とを備える。
【0019】
圧縮機2は、内部空間に空気G1が導入されるケーシング2Kを有する。圧縮機2は、ケーシング2Kの内部空間に導入された空気を圧縮して圧縮空気G2とする。圧縮機2には、回転軸50を回転可能に支持する軸受を有する支持部2Sが設けられている。
【0020】
タービン4は、内部空間に燃焼ガスG3が導入されるケーシング4Kを有する。タービン4は、タービン4は、燃焼器3で発生した燃焼ガスG3をケーシング4Kの内部空間に導入して膨張させて、燃焼ガスG3の熱エネルギーを回転エネルギーに変換する。タービン4には、回転軸50を回転可能に支持する軸受を有する支持部4Sが設けられている。
【0021】
ロータ5は、ケーシング2Kの内部空間に配置された回転軸51に設けられた動翼51Aと、ケーシング4Kの内部空間に配置された回転軸52に設けられた動翼52Aとを有する。
【0022】
圧縮機2は、ケーシング2Kに配置された静翼2Aを有する。圧縮機2の静翼2Aと回転軸51に設けられた動翼51Aとは、回転軸50の軸AXの軸線方向と平行な方向に交互に複数配置される。
【0023】
タービン4は、ケーシング4Kに配置された静翼4Aを有する。タービン4の静翼4Aと回転軸52に設けられた動翼52Aとは、回転軸50の軸方向に交互に複数配置される。
【0024】
また、ガスタービンシステム1は、圧縮機2のケーシング2K内の静翼2Aの内周部に配置され、回転軸51の周囲をシールする軸シール装置10と、タービン4のケーシング4K内に配置された回転軸52の周囲をシールする軸シール装置10と、を備える。圧縮機2に配置される軸シール装置10は、作動気体である圧縮空気G2が高圧空間側から低圧空間側に漏出することを抑制する。また、圧縮機2の軸シール装置10は、支持部2Sに配置される。タービン4に配置される軸シール装置10は、作動気体である燃焼ガスが高圧側から低圧側に漏出することを抑制する。タービン4の軸シール装置10は、静翼4Aの内周部に配置される。また、タービン4の軸シール装置10は、支持部4Sに配置される。
【0025】
ガスタービンシステム1においては、燃焼器3から導入された燃焼ガスG3がタービン4内の動翼52Aに供給される。これにより、燃焼ガスG3の熱エネルギーが機械的な回転エネルギーに変換されて動力が発生する。タービン4で発生した動力の一部は、回転軸50を介して圧縮機2に伝達される。タービン4で発生した動力の一部は、圧縮機2の動力として利用される。
【0026】
次に、図2を参照して本実施の形態に係る軸シール装置10について説明する。図2は、本実施の形態に係る軸シール装置10の概略を示す断面模式図であり、図3は、本実施形態に係る軸シール装置10の一部を模式的に示す斜視図であり、図4は、本実施の形態に係る回転軸50の軸AXを含む軸シール装置10の概略を示す断面図である。図5は、本実施の形態に係る軸シール装置10の分解図である。なお、図2においては、図1のA―A線矢視断面図を示し、図3においては、軸シール装置10の一部を破断して示している。
【0027】
以下の説明においては、圧縮機2及びタービン4のそれぞれに設けられた軸シール装置10のうち、タービン4に設けられた軸シール装置10について説明する。なお、圧縮機2に設けられた軸シール装置10の構成は、タービン4に設けられた軸シール装置10の構成と同様である。
【0028】
図2図5に示すように、に示すように、軸シール装置10は、回転軸52の周囲に配置される複数のシールセグメント11を有する。各シールセグメント11は、軸AXと直交する平面内において円弧状の形状を有している。本実施の形態においては、シールセグメント11は、回転軸50の周囲に8つ配置される。
【0029】
シールセグメント11は、回転軸50の周囲に配置される複数のリーフ(板状部材:シール部材)20と、リーフ20を保持する保持リング13及び保持リング14を含む保持部材134と、リーフ20と保持部材134との間に配置される背面スペーサ15と、回転軸50の軸方向D1におけるリーフ20の一端側に配置された高圧側サイドシール板16と、回転軸50の軸方向D1におけるリーフ20の他端側に配置された低圧側サイドシール板17とを備える。
【0030】
シールセグメント11は、静翼4Aに相当するハウジング9の凹部9aに挿入され、少なくとも一部がハウジング9の凹部9aに配置される。凹部9aは、回転軸52の外周面に面する開口9kを有する。凹部9aは、回転軸50の周方向D2に延在する。凹部9aの外側に、リーフ20の一部が突出する。なお、ハウジング9は、静翼2A、支持部2S、及び支持部4Sにもそれぞれ設けられている。
【0031】
リーフ20は、回転軸52の周方向D2おける可撓性を有する板状部材であり、弾性変形可能である。本実施の形態においては、リーフ20は、薄い鋼板である。リーフ20の表面の法線は、回転軸52の回転方向である周方向D2と略平行である。リーフ20の幅方向は、回転軸52の軸方向とほぼ一致する。リーフ20の厚さ方向は、回転軸52の周方向D2とほぼ一致する。このような構成により、リーフ20は、回転軸52の軸方向D1に高い剛性を有する。
【0032】
リーフ20は、回転軸52の周方向D2に間隔をあけて複数配置される。リーフ20と、当該リーフ20に隣り合うリーフ20との間に隙間Sが形成される。複数のリーフ20によって複数のリーフ20が積層された集合体(積層体)であるリーフ積層体12が形成される。
【0033】
複数のリーフ20からなるリーフ積層体12は、回転軸52の周囲をシールすることによって、回転軸52の周囲の空間を回転軸52の軸方向D1において2つの空間に区分する。本実施の形態においては、リーフ積層体12は、回転軸52の周囲の空間を高圧空間と当該高圧空間よりも相対的に圧力が低い低圧空間とに区分する。
【0034】
複数のリーフ20は、回転軸52の軸AXに対して直交する径方向D3における外側の基端部(外側端部)20aと、内側の先端部(内側端部)20bと、回転軸50の軸方向における高圧空間側の側端部20cと、低圧空間側の側端部20dとをそれぞれ有する。
【0035】
以下の説明においては、複数のリーフ20の基端部20aを合わせてリーフ積層体12の基端部12aともいい、複数のリーフ20の先端部20bを合わせてリーフ積層体12の先端部12bともいい、複数のリーフ20の側端部20cを合わせてリーフ積層体12の側端部12cともいい、複数のリーフ20の側端部20dを合わせてリーフ積層体12の側端部12dともいう。基端部12aは、複数の基端部20aの集合体である。先端部12bは、複数の先端部20bの集合体である。側端部12cは、複数の側端部20cの集合体である。側端部12dは、複数の側端部20dの集合体である。
【0036】
基端部12aは、回転軸52の径方向における外側に向けられる。先端部12bは、回転軸52の外周面と対向するように、回転軸52の径方向における内側に向けられる。また、先端部12b(先端部20b)は、開口9kを介して凹部9aの外側に配置される。側端部12cは、回転軸52の軸方向における一端側である高圧空間側に向けられる。側端部12dは、回転軸52の軸方向における他端側である低圧空間側に向けられる。
【0037】
本実施の形態においては、複数のリーフ20の基端部20aは、それぞれ背面スペーサ15に固定されて固定端となる。また、複数のリーフ20の先端部20bは、それぞれ固定されない自由端となる。複数のリーフ20(リーフ積層体12)は、基端部20aが固定された状態で保持部材134に保持される。
【0038】
リーフ20は、基端部20aが設けられる頭部21と、先端部20b、側端部20c、及び側端部20dが設けられ、弾性変形可能な胴部22とを有する。回転軸52の軸方向であるリーフ20の幅方向における胴部22の寸法は、頭部21の寸法よりも小さい。回転軸52の周方向である厚さ方向における胴部22の寸法は、頭部21の寸法よりも小さい。胴部22は、胴部22の頭部21との境界部に切欠部20x及び切欠部20yが設けられている。頭部21は、切欠部20x及び切欠部20yより基端部20a側がそれぞれ幅方向に突出した側方突出部21c及び側方突出部21dとなっている。本実施の形態においては、複数のリーフ20は、頭部21の側方突出部21c及び側方突出部21dのそれぞれにおいて溶接により接続される。
【0039】
保持部材134は、ハウジング9に支持され、リーフ積層体12を保持する。ハウジング9は、凹部9aの内側に保持部材134を支持する支持面9sを有する。保持部材134は、支持面9sに支持される。
【0040】
保持部材134は、回転軸52の周方向D2に延在する円弧状の部材である保持リング13及び保持リング14を含む。保持リング13は、リーフ20の側方突出部21cを含む頭部21の一部が配置される凹部13aを有する。保持リング14は、リーフ20の側方突出部21dを含む頭部21の一部が配置される凹部14aを有する。背面スペーサ15は、リーフ20の頭部21と保持リング13及び保持リング14との間に配置される。リーフ20は、頭部21が背面スペーサ15を介して凹部13a及び凹部14aにはめ込まれる。これにより、リーフ積層体12が保持部材134に保持される。
【0041】
高圧側サイドシール板16は、リーフ20(リーフ積層体12)に隣接するように高圧空間に配置される。低圧側サイドシール板17は、リーフ20(リーフ積層体12)に隣接するように低圧空間に配置される。高圧側サイドシール板16は、高圧空間においてリーフ積層体12の側端部12cの一部と対向するように配置される。低圧側サイドシール板17は、低圧空間においてリーフ積層体12の側端部12dの一部と対向するように配置される。
【0042】
高圧側サイドシール板16は、リーフ20の側端部20c(リーフ積層体12の側端部12c)の少なくとも一部と対向する対向面161と、対向面161の反対方向を向く表面162とを有する。高圧側サイドシール板16は、リーフ20の切欠部20xに配置される凸部16aを有する。切欠部20xに配置された凸部16aは、リーフ20(リーフ積層体12)及び保持リング13により固定される。
【0043】
本実施の形態においては、高圧側サイドシール板16の先端部163は、リーフ20の先端部20bよりも回転軸52から離れている。高圧側サイドシール板16は、径方向において基端部20a側の側端部20c(側端部12c)の一部と対向し、先端部20b側の側端部20c(側端部12c)の一部と対向しない。
【0044】
低圧側サイドシール板17は、リーフ20の側端部20d(リーフ積層体12の側端部12d)の少なくとも一部と対向する対向面171と、対向面171の反対方向を向く表面172とを有する。低圧側サイドシール板17は、リーフ20の切欠部20yに配置される凸部17aを有する。切欠部20yに配置された凸部17aは、リーフ20(リーフ積層体12)及び保持リング14により固定される。
【0045】
本実施の形態においては、低圧側サイドシール板17の先端部173は、リーフ20の先端部20bよりも回転軸52から離れている。低圧側サイドシール板17は、径方向に関して基端部20a側の側端部20d(側端部12d)の一部と対向し、先端部20b側の側端部20d(側端部12d)の一部と対向しないように配置される。
【0046】
また、本実施の形態においては、低圧側サイドシール板17の先端部173は、高圧側サイドシール板16の先端部163よりも回転軸52から離れている。本実施の形態において、回転軸52の径方向D3において、高圧側サイドシール板16の寸法は、低圧側サイドシール板17の寸法よりも大きい。
【0047】
次に、図6A図6Dを参照して、本実施の形態に係るリーフ20について詳細に説明する。図6Aは、本実施の形態に係るリーフ20の一例を示す平面図であり、図6Bは、図6AのVIB−VIB線における矢視断面図であり、図6C及び図6Dは、図6AのVIC−VIC線における矢視断面図である。
【0048】
図6A図6Dに示すように、本実施の形態に係るリーフ20は、可撓性を有する板状部材であり、高温(例えば、500℃以上700℃以下)での高温強度及び耐酸化性を有する第1金属材料を含有する第1金属板201と、耐酸化性を有すると共にエッチング加工可能な第2金属材料を含有する第2金属板202とが積層されてなる。このリーフ20は、高圧空間側に配置されるリーフ20の一端側の側端部20cの厚さd1が低圧空間側に配置される他端側の側端部20dの厚さd2に対して相対的に小さく形成される。第1金属板201の厚さd3は略均一である。本実施の形態においては、第1金属板201と第2金属板202とを圧延及び圧着などによりクラッド構造材とした後、第2金属板202の他端側をエッチングして第2金属板202の他端側の厚さd4を一端側の厚さd5に対して小さくする。このように、高温強度及び耐酸化性に優れた第1金属板201と耐酸化性を有すると共にエッチング可能な第2金属板202とを積層することにより、リーフ20の高温での耐酸化性及び強度を損なうことなく、第2金属板202の厚さをエッチングで変化させることができる。これにより、リーフ20は、リーフ20の低圧空間側の剛性を増大させることができるので、リーフ20の使用時の疲労損傷を防止することが可能となる。厚さd4と厚さd5の差は、リーフ間隙間が、例えば、0μm以上100μm以下の差となるよう選定される。
【0049】
リーフ20の厚さは、一端側から他端側に向けて厚さが減少すれば特に制限はない。リーフ20は、一端側から他端側に向けて厚さが連続的に減少するテーパー形状であってもよく(図6C参照)、一端側から他端側に向けて厚さが段階的に変化する形状であってもよい(図6D参照)。これらの中でも、リーフ20としては、リーフ20の可撓性を向上して軸シール装置10の使用時のもれ損失を低減する観点から、一端側から他端側に向けて厚さが連続的に減少するテーパー形状が好ましく、またリーフ20の製造時のエッチング加工を容易にする観点から、一端側から他端側に向けて厚さが段階的に変化する形状が好ましい。
【0050】
図7Aは、本実施の形態に係るリーフ20の他の例を示す平面図であり、図7Bは、図7AのVIIB−VIIB線における矢視断面図であり、図7Cは、図7AのVIIC−VIIC線における矢視断面図である。
【0051】
図7Aに示すリーフ20は、高温強度及び耐酸化性を有する第1金属材料を含有する第1金属板201と、この第1金属板201の一方の主面上に積層され、耐酸化性を有すると共にエッチング加工可能な第2金属材料を含有する第2金属板202Aと、この第1金属板201の他方の主面上に積層され、耐食性を有すると共にエッチング加工可能な第2金属材料を含有する第2金属板202Bとが積層されてなる。このリーフ20は、図6A図6Dに示したリーフ20と同様に、高圧空間側に配置されるリーフ20の一端側の側端部20cにおける厚さd1が低圧空間側に配置される他端側の厚さd2に対して相対的に小さく形成される。第1金属板201の厚さd3は略均一である。
【0052】
本実施の形態においては、第1金属板201、第2金属板202A及び第2金属板202Bを圧延及び圧着などによりクラッド構造材とした後、第2金属板202A及び第2金属板202Bの他端側をそれぞれエッチングして第2金属板202Aの一端側の厚さd4を他端側の厚さd5に対して小さくすると共に、第2金属板202Bの一端側の厚さd6を一端側の厚さd7に対して小さくする。このように一対の第2金属板202A,202Bで第1金属板201を挟持することにより、低圧空間側に配置されるリーフ20の一端側の強度を更に増大させることができるので、リーフ20の剛性をより向上して疲労損傷を低減できる。なお、図7A図7Cに示す例では、一対の第2金属板202A,202Bをそれぞれエッチングした例について説明したが、必ずしも一対の第2金属板202A,202Bをそれぞれエッチングする必要はなく、少なくとも一方の第2金属板202A及び第2金属板202Bをエッチングすればよい。また、第2金属板202A,202Bは、リーフ20の一端側から他端側に向けて厚さが連続的に変化してもよく、段階的に変化してもよい。
【0053】
図8Aは、本実施の形態に係るリーフ20の別の例を示す平面図であり、図8Bは、図8AのVIIIB−VIIIB線における矢視断面図であり、図8Cは、図8AのVIIIC−VIIIC線における矢視断面図である。図8A図8Cに示すように、このリーフ20は、図6に示したリーフ20の構成に加えて第2金属板202の表面202aに凹部202bが設けられている。この凹部202bは、例えば、第2金属板202のエッチング加工などにより設けられる。このようにリーフ20に凹部202bを設けて第2金属板202の表面202aに、凹部202bの底部から突出した凸状部(202a参照)を設けることにより、軸シール装置10の使用時に、隣接するリーフ20同士が接触した際にダンパ効果が作用してリーフ20に作用する衝撃が緩和されるので、より一層リーフ20の疲労損傷を防ぐことが可能となる。なお、図8A図8Cに示した例では、第2金属板202の表面202aに規則的に凹部202bを設けて凹凸構造とした例にについて説明したが、第2金属板202の表面202aには必ずしも凹凸構造を設ける必要はなく、例えば、第2金属板202の表面202aに不規則に突起などを凸状部として設けてもよい。
【0054】
次に、一般的な軸シール装置10の使用時におけるリーフ20の燃焼ガスG3の流れについて説明する。図9は、一般的な軸シール装置10の使用時の燃焼ガスG3の流れの説明図であり、図10は、一般的な軸シール装置10の使用時のリーフ20の説明図である。
【0055】
図9に示すように、本実施の形態に係る軸シール装置10においては、使用時には燃焼ガスG3が回転軸52とリーフ20の先端部20bとの間を流れると共に、燃焼ガスG3の一部がリーフ20間に不均一に生じた隙間を介して高圧空間側から低圧空間側に流れる。このため、図10に示すように、リーフ20を流れる燃焼ガスG3により、リーフ20に流体ばねの剛性に基づく振動伝搬現象が発生しし、リーフ20の先端部20bに振れが生じて先端部20bに過大な応力が作用して疲労損傷が発生する場合がある。
【0056】
図11は、本実施の形態に係る軸シール装置10の使用時のリーフ20の説明図である。本実施の形態にリーフ20は、上述したように、低圧空間側に配置されるリーフ20の一端側の厚さd1が他端側の厚さd2に対して大きくなっている。これにより、リーフ20のねじれ剛性が向上して先端部20bのバタツキを防ぐことができるので、リーフ20の疲労損傷を防ぐことが可能となる。
【0057】
第1金属材料としては、高温での強度と耐酸化性に優れたNi基合金(インコネル、ハステロイなど)が用いられる。Ni基合金としては、アルミニウム(Al)とチタン(Ti)との含有量の合計が1質量%であるNi基合金を含有することが好ましい。この構成により、軸シール装置10は、600℃級の高温下で使用可能な高温強度及び耐酸化性を具備することができるので、リーフ間の隙間に発生し得る酸化スケールによるリーフ同士の固着に伴う、リーフの浮上性能の低下によるリーフとロータとの接触を防ぐことが可能となる。またこのような合金を用いることにより、引張り強度、疲労強度及びクリープ破断強度などの強度が良好となり、高温下の優れた耐酸化性、応力腐食割れ及び孔食に対する耐性が得られる。また、Ni基合金としては、上述した作用効果を一層向上する観点から、時効処理により高温強度を向上させた析出型のNi基合金が好ましい。また、リーフ20には、基材とは異なる時効硬化による硬化が大きい異種材料を積層させることにより、1種類の材料で構成した場合よりも大きい硬度差を付与しても良い。
【0058】
図12は、第2金属材料におけるクロム(Cr)含有量とモリブデン(Mo)含有量との関係を示す図である。下記表1では、第2金属材料として用いられる金属材料の具体例の一例を示している。なお、図12及び表1においては、対象の金属材料に最適なエッチング液を用いて金属材料を3分間エッチングした際に、均一な深さ(±10μm)にエッチングできたものを○とし、エッチングできなかったものを×としている。また、下記表1においては、ステンレス鋼A:SUS430、ステンレス鋼B:SUS304、Ni基合金A:Hastelloy X、Ni基合金B:Alloy 601、Ni基合金C:Alloy 625、Ni基合金D:Nimonic PK33、Ni基合金E:Alloy X750及びNi基合金F:Alloy 718の金属含有量とエッチング加工の可否との関係を示している。また、図12においては、bal.とは、金属含有量の残部を示している。
【0059】
【表1】
【0060】
図12及び上記表1に示すように、第2金属材料としては、上記表1に示すように、クロム(Cr)の含有量が10質量%以上であって、モリブデンの含有量が3質量%未満であるステンレス鋼及びNi基合金の少なくとも1種を含むことが好ましい。この構成により、軸シール装置10は、600℃級の高温下での耐酸化性が向上すると共に、エッチング液に対する耐食性が上がりすぎによるエッチング加工精度の低下を防ぐことができるので、第2金属板の板厚方向の高精度なエッチング加工が可能となり、シール部材の任意の形状への板厚方向の加工が容易となる。Crの含有量は、一般的なステンレス鋼を用いることができる観点及び600℃級の高温下での耐酸化性の観点から、10質量%以上が好ましい。また、モリブデン(Mo)は、3質量%未満であれば、エッチング液に対する耐食性が上がりすぎによる板厚方向のエッチング加工の精度の低下をふせぐことができる。以上の観点から、第2金属材料としては、ステンレス鋼及びNi基合金としては、Crの含有量は、12.5質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、またMo含有量は、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
【0061】
次に、図13を参照して、本実施の形態に係るリーフシール20の製造方法について説明する。図13は、本実施の形態に係るリーフシール20の製造方法のフロー図である。図13に示すように、本実施の形態に係るリーフシール20の製造方法は、第1金属材料を含有する第1金属板201と、エッチング加工可能な第2金属材料を含有する第2金属板202とを積層する積層工程ST11と、第2金属板202をエッチングして第2金属板202の一端側の厚さd4を他端側の厚さd5に対して小さくしたリーフシール20を得るエッチング工程ST12とを含む。
【0062】
図14A図14Cは、本実施の形態に係るリーフシール20の製造方法の説明図である。図14A及び図14Bに示すように、積層工程ST11では、第2金属板202に対して相対的に強度が高い第1金属板201とエッチング加工可能な第2の金属板202とを圧延及び圧着などにより積層してラッド構造体とする。次に、図13Cに示すように、第2の金属板202をエッチング加工して一端側の側端部20cの厚さd1が他端側20dの厚さd2に対して相対的に小さいリーフ20を得る。エッチングの条件としては、特に制限はなく、ニッケル−クロム−鉄合金をエッチング可能な従来公知のエッチング方法を適用することが可能である。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態に係る軸シール装置10によれば、第2金属板202がエッチング加工可能な第2金属材料を含有するので、エッチング加工によってリーフ20の一端側の厚さd1と他端側の厚さd2とを異ならせることが可能となる。これにより、軸シール装置10は、リーフ20の一端側におけるねじれ剛性を向上させることができるので、使用時におけるリーフ20の疲労損傷を防ぐことが可能となる。
【符号の説明】
【0064】
1 ガスタービンシステム
2 圧縮機(回転機械)
2A 静翼
2K ケーシング
2S 支持部
3 燃焼器
4 タービン(回転機械)
4A 静翼
4K ケーシング
5 ロータ
50,51,52 回転軸
51A,52A 動翼
9 ハウジング
9a 凹部
9k 開口
9s 支持面
10 軸シール装置
11 シールセグメント
12 リーフ積層体
12c 側端部
13,14 保持リング
13a,14a 凹部
15 背面スペーサ
16 高圧側サイドシール板
16a 凸部
161 対向面
162 表面
163 先端部
17 低圧側サイドシール板
17a 凸部
171 対向面
172 表面
20 リーフ
20a 基端部(外側端部)
20b 内側の先端部(内側端部)
20c,20d 側端部
20x,20y 切欠部
201 第1金属板
202,202A,202B 第2金属板
21 頭部
21c,21d 側方突出部
22 胴部
AX 軸
D1 軸方向
D2 周方向
D3 径方向
G1 空気
G2 圧縮空気
G3 燃焼ガス
d1,d2,d3,d4,d5,d6,d7 厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C