特許第6621404号(P6621404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621404
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】銅のヒープ浸出法
(51)【国際特許分類】
   C22B 15/00 20060101AFI20191209BHJP
   C22B 3/08 20060101ALI20191209BHJP
   C22B 3/26 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   C22B15/00 105
   C22B3/08
   C22B3/26
【請求項の数】19
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-526165(P2016-526165)
(86)(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公表番号】特表2016-535167(P2016-535167A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(86)【国際出願番号】IB2014002193
(87)【国際公開番号】WO2015059551
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2017年9月4日
(31)【優先権主張番号】2013/08223
(32)【優先日】2013年10月23日
(33)【優先権主張国】ZA
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515048825
【氏名又は名称】ビーエイチピー チリ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ フレデリック ローテンバッハ
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0144209(US,A1)
【文献】 特表平06−508179(JP,A)
【文献】 米国特許第04739973(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00〜61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕した鉱石のヒープから銅を浸出する方法であって、該方法は、少なくとも1の休止工程及び続く潅注工程を含むものであり、前記潅注工程の間に、100〜190g/Lの濃度で塩素イオンを含有する浸出溶液を前記鉱石に適用し、休止工程の間に、鉱石に浸出溶液を適用せず、休止工程は、少なくとも20時間の期間を有し、休止工程において、鉱石と接触する浸出溶液は、可溶性銅少なくとも0.5g/Lを含有し、塩素イオンを、NaCl、MgCl、KCl、AlCl及びその混合物からなる群から選ばれる化合物の添加によって導入することを特徴とする銅の浸出法。
【請求項2】
潅注工程の間において、浸出溶液が、4〜100g/Lの硫酸濃度を有するものである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
潅注工程の間に又は後に、50ppm未満の電解液の塩素イオン濃度を促進するために、少なくとも1の銅負荷有機洗浄ステージを有する溶媒抽出工程によって、ヒープから排出した溶液から銅を回収する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
凝集した鉱石からヒープを構築した後、第1の休止工程を行う請求項1に記載の方法。
【請求項5】
潅注工程の間、浸出溶液を連続して供給する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
休止工程が、鉱石の溶解を増大させるために、50日以下の期間を有する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
休止工程の間、浸出溶液が、鉱石の溶解を増大させるために、3.5未満のpHを有する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
休止工程の間、鉱石の溶解を増大させるために、ヒープに通気する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
潅注工程の間、ヒープの表面上又はヒープ内に配置されたグリッドを使用して、ヒープに潅注する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
グリッドを構築又は作動させて、浸出溶液を、ヒープの選択された部分にのみ適用する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
潅注工程の間、鉱石の溶解を増大させるために、浸出溶液を、3m/トン(鉱石)未満の率でヒープに適用する請求項1に記載の方法。
【請求項12】
潅注工程の間、鉱石の溶解を増大させるため、ヒープに通気する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
複数の休止工程及び複数の潅注工程を含み、各休止工程に続いて各潅注工程を行う請求項1に記載の方法。
【請求項14】
鉱石が、黄銅鉱、耐火性銅酸化物鉱物、輝銅鉱、班銅鉱、硫砒銅鉱、銅藍、及び銅含有クレー鉱物の少なくとも1つを含有するものである請求項1に記載の方法。
【請求項15】
続いて、ヒープから可溶性銅及び塩化物を回収するために、リンス工程を行う請求項1に記載の方法。
【請求項16】
リンス工程を、50日未満の期間続ける請求項15に記載の方法。
【請求項17】
鉱石が黄銅鉱である請求項1に記載の方法。
【請求項18】
粉砕した鉱石が、粉砕した鉱石の80%が1.3cm(0.5インチ)の目を通過する粒子サイズを有するものである請求項1に記載の方法。
【請求項19】
ヒープを、完全に、粉砕した鉱石で構築する請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、黄銅鉱、又は銅マンガン酸化物((Cu,Mn,Co,Ni,Ca,Zn,Fe)x(O,OH)x)のような耐火性酸化物鉱石及び輝銅鉱、銅藍、硫砒銅鉱及び班銅鉱のような二次硫化鉱と混合した黄銅鉱から銅をヒープ浸出する湿式精錬法に関する。本発明の方法は、酸化物鉱石及び二次硫化鉱の処理に適用される従来のヒープ浸出法では処理できない銅含有クレー鉱物(Cux(K,Fe,Mg)xAlxSix(OH)x)の浸出にも適用可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の目的は、浸出サイクルを完了させるために、ヒープに適用される浸出溶液の現在の工業的基準容積を低減させることによって、代表的には、粉砕した鉱石に含まれる黄銅鉱からの銅の抽出率を増大させること及び操作コストを低下させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0003】
高塩素環境におけるヒープ浸出サイクル内で、ただ1つの休止工程及び続く潅注工程の原理、又は休止工程及び潅注工程の複数の交互工程の原理を使用して、黄銅鉱の不動態化を防止又は低減することにより、黄銅鉱の浸出速度を増大させる黄銅鉱についてのヒープ浸出操作法を参照して、本発明を開示する。
【0004】
本発明は、主として、黄銅鉱の表面を、銅イオン及び塩素イオンを含有する「停滞した」又は「ゆっくりと移動する」浸出溶液に露出することによって、黄銅鉱の浸出が大いに促進されるとの驚くべき発見に基づく。停滞した又はゆっくりと移動する溶液相は、ヒープ浸出サイクル内におけるただ1つの休止工程によって又は休止工程及び続く潅注工程の複数の工程によって増進される。
【0005】
ここで使用するように、「ヒープ」は、処理される鉱石を含む野積みした山、ダンプ、バット、又はカラムを含む。
【0006】
ここで使用するように、「溶液適用工程」は、「潅注工程」又は凝集工程の間における浸出又は潅注溶液の付加をいう。
【0007】
ヒープ浸出サイクルは、構築(続いて、連続潅注が行われる)後における最初の休止期間にて始まるか、又は溶液適用工程(続いて、休止工程が行われる)により始まり、ついで、ヒープ浸出サイクル内における潅注工程及び続く休止工程の複数の交互の工程が行われる。
【0008】
ここで使用するように、「複数の休止工程」は、2以上の休止工程をいう。
【0009】
ここで使用するように、「凝集工程」は、ヒープ構築以前又は構築中に鉱石へ浸出溶液を適用するために、ヒープ浸出サイクル内におけるただ1回の凝集技術の使用をいう。ただし、この工程は、本発明の方法の実施に必須ではない。ヒープは、凝集技術を使用しなくても構築される。
【0010】
本発明の方法において、ヒープ浸出サイクル内で、鉱石を少なくとも1つの休止工程及び続く潅注工程に供する。鉱石の凝集(使用する場合)及びヒープ構築後の最初の休止期間は、第1の休止工程とみなされる。前記したように、鉱石を複数の休止工程及び続く潅注工程に供することもできる。
【0011】
好ましくは、休止工程の間、
1.鉱石に浸出溶液を適用しない;
2.鉱石の凝集、又は第1の潅注工程の結果として、ヒープにおいて、浸出溶液は停滞するか、ヒープにおける鉱石の黄銅鉱の表面上を、潅注工程中よりも遅い速度で移動する;
3.生じ得る内部水分の排液は、任意に、浸出貴液池(「PLS池」という)に収容される;
4.鉱石と接触する浸出溶液の塩素イオン濃度は、100〜190g/Lである;
5.鉱石と接触する浸出溶液は、休止工程における各種の所定の時間において、溶解銅少なくとも0.5g/Lを含有する;
6.黄銅鉱の表面と接触する浸出溶液中の銅は、黄銅鉱の表面上に停滞する溶液又はゆっくりと移動する溶液のため、潅注工程における黄銅鉱の表面と接触する浸出溶液中よりも高い濃度に増大する;及び
7.休止工程の期間は、20時間〜50日間である。
【0012】
鉱石と接触する浸出溶液のpHは、酸の消費の結果として、脈石の溶解のため、pH1.5以上に高まることがある。浸出溶液のpHの増大は、鉱石の酸消費及び休止工程の期間の関数である。鉱石と接触する溶液のpHは、pH0〜3.5の範囲内であると予期される。実施例によってのみpHの範囲が特定されるが、本発明の方法では制限されない。銅の抽出率は、pH1.0〜3.0の範囲内で増大する溶液のpHによって増大する。
【0013】
浸出溶液のpHにおける増大は、ジャロサイト又はいくつかの形の硫化鉄及び/又は鉄ヒドロキシ塩化物の沈殿を生じ得る。これは、技術の実施により、浸出サーキットにおける硫酸塩、鉄、カリウム及びナトリウムのような不純物のレベルを低下させることを可能にする。
【0014】
本発明の方法は、ヒープ浸出サイクルにおいて、少なくとも1つの休止工程を使用する。上述のように鉱石の凝集及びヒープ構築の後の初期期間は、潅注及び休止の複数の工程、又は連続する潅注のみの以前における第1の又は単一の休止工程とみなされる。休止工程の数は制限されず、各休止工程の間に達成される増加性銅抽出及び目的の銅抽出全体、又は達成可能な最大の銅抽出に左右される。
【0015】
休止工程の間に、ヒープは通気される。代表的な通気率は、0.01Nm/時間・トン程度である。
【0016】
本発明の方法の実施では、凝集以前又は凝集の間に、各種の形の固体塩化物源を直接鉱石に添加することを必要としない。
【0017】
「潅注工程」は、潅注グリッドの使用を含み、これによって、浸出溶液を、ヒープの構築直後、又は各休止工程の後にヒープ全体に適用する。潅注グリッドは、ヒープの表面上、又はヒープ内に配置され、又は両方の形の構成の組み合わせが使用される。
【0018】
潅注グリッドは、浸出溶液が、要求に応じて、ヒープの選ばれた部位又は複数の部位にのみ適用されるように構成又は作動される。
【0019】
池は、溶液適用工程の間に使用された潅注又は浸出溶液を保持するために使用される。この池を、ここでは、「溶液適用池」という。
【0020】
好ましくは、連続する潅注の間又は各潅注工程について:
1.鉱石に適用される溶液(この溶液を、ここでは、「ラフィネート」ともいう)の硫酸濃度は、4〜100g/Lである;
2.溶液の塩素イオン濃度は、100〜190g/Lである;
3.液体ヒープ排液は、任意に、PLS池に収容される;
4.銅は、PLS池内の溶液から、50ppm以下の電解液の塩素イオン濃度を促進するための少なくとも1の銅負荷有機洗浄ステージを有する溶媒抽出によって、少なくとも部分的に回収される。
【0021】
鉱石に適用される溶液は、溶媒抽出工程によって、溶媒適用池から生成される。
【0022】
ヒープに適用される浸出溶液の量は、1の完全浸出サイクル当たり、3m/トンを越えない。この値は、実施例におけるものであり、限定されず、浸出サイクル後のヒープリンスから生ずる液体を含まない。
【0023】
潅注溶液における酸は、鉱石中の脈石と反応して、例えば、亜塩素酸塩及び黒雲母の酸浸出を生ずる。このタイプの反応は熱を発生し、鉱石の温度は、潅注率及び酸の濃度を制御することによって、中でも鉱石中の反応性の脈石の含量に応じて、顕著に上昇される。温度上昇により、脈石の酸化速度が速くなり、結果として、脈石回収の増大及び浸出サイクル時間の低減につながる。
【0024】
温度の増大は、耐火性銅酸化物、例えば、黒色酸化物((Cu,Mn,Co,Ni,Ca,Zn,Fe)x(O,OH)x)及び銅含有クレー鉱物(Cux(K,Fe,Mg)xAlxSix(OH)x)の浸出速度を増大させるために特に重要である。増大された温度は、耐火性の銅酸化物鉱物を浸出するために要求される活性化エネルギーを克服又は低減し、これは銅溶解の率及び程度の増大につながる。
【0025】
黄銅鉱のような硫化銅鉱物の溶解は、ヒープの通気によって改善される。通気は、銅溶解の率及び程度を顕著に増大させる酸素を提供する。通気は潅注工程の間に行われる。代表的には、通気率は0.01Nm/時間・トンであるが、この値は例示であり、非限定的である。
【0026】
ここで使用するように、「ヒープセクション」は、全ヒープよりも小さい表面積を有することを特徴とするヒープの区分をいう。
【0027】
ここで使用するように、「銅ヒープ浸出サイクル」は、ヒープ排液(一般に、「浸出貴液」という)から銅を回収するために、配管を介して溶媒抽出及び電解採取プロセスに接続された少なくとも1つの池を含む溶液収集システムへのヒープからの排液を容易なものとするライニングパッド上に構築された少なくとも1つのヒープをいう。ヒープの潅注のため、溶媒抽出プロセスからの銅含量がより低く、酸濃度がより高い溶液(一般に、「ラフィネート」という)が、少なくとも部分的に使用される。
【0028】
ここで使用するように、「動的銅ヒープ浸出サーキット」は、ヒープサイクルが完了した後、浸出された物質がサーキットから除去される銅ヒープ浸出サーキットをいう。このような除去は、「再生」とも呼ばれる。
【0029】
動的銅ヒープ浸出サーキットの場合では、後述するただ1つの又は複数の休止及び潅注工程に続いて、浸出サイクルの終わりに、浸出サーキットからの浸出済み物質又は廃棄物質を再生する工程前に、浸出済み物質から可溶性銅及び塩化物を回収することを目的とするリンス工程が含まれてもよい。
【0030】
リンス工程の間では:
1.リンス溶液は、ヒープ全体に、又は再生工程直後に再生れるべきヒープの区分に適用される;
2.内部水分は、場合によって、リンス溶液を適用する前に、ヒープ全体又はヒープ区分から排出される;
3.リンス溶液はリンス池で調製され、少なくとも大部分は、逆浸透プロセスによって生成された水、海水、天然の水、又は各種のプロセス水、又はこれらの各種の組み合わせからなる;及び
4.リンス溶液は、100g/L未満の塩素イオンを含有できる。
【0031】
リンス溶液は、潅注工程の間に鉱石に適用される溶液よりも少ない硫酸を含有できる。
【0032】
リンス工程の間のリンス溶液の潅注の結果としてのヒープから又はヒープ区分からの排液は、少なくとも部分的に、PLS池に収容される。この工程は、特に、初期排液が、PLS池における溶液との混合について許容されるとみなされる銅及び塩化物濃度を有する際に適用可能である。
【0033】
或いは、リンス工程中又は後におけるリンス溶液による潅注の結果として、ヒープ又はヒープ区分から排出された溶液は、ここでは「中間池」と呼ばれる池に、少なくとも部分的に収容される。
【0034】
最適性能については、リンス期間は50日を超えてはならない。しかし、この値は例示であり、非限定的である。
【0035】
リンス溶液の潅注率は、1日当たり、ヒープの表面1m当たりの適用量7Lを超えてはならない。しかし、より大きい潅注率を使用できる。
【0036】
リンス工程の間、ヒープは通気されない。
【0037】
リンス工程は、各種の硫酸銅鉱物から銅を浸出するためには使用されない。
【0038】
リンス工程は、潅注工程のために使用されるものと同じ潅注グリッドを使用して行われる。
【0039】
溶媒抽出のプロセスから生成された溶液又は溶液適用池に収容された溶液を、浸出サーキットにおける水バランスを維持するために、中間池に収容された溶液に添加できる。
【0040】
塩素イオンは、NaCl、MgCl、KCl及びAlClの1以上を中間池に保持された溶液に添加することによって、浸出サーキットに導入される。
【0041】
中間池に収容された溶液の少なくとも一部は、PLS池に移動されてもよい。
【0042】
中間池に収容された溶液の少なくとも一部は、溶液適用池に移動されてもよい。
【0043】
PLS池に収容された溶液少なくとも一部は、溶媒抽出工程に供することなく、直接、溶液適用池に移動されてもよい。
【0044】
添付図面を参照して、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の方法を実施する1方法を説明する簡略化した動的フローシートである。
図2】4つの浸出テストについて、経時的な累積溶液適用容積/鉱石質量比のグラフである。
図3図2に関連する浸出テストから抽出された銅の百分率を示すグラフである。
図4】浸出溶液の硫酸濃度を示すグラフである。
図5】浸出溶液及び排出溶液の塩素イオン濃度を示すグラフである。
図6】潅注工程の間及び続く排液の間における浸出溶液の銅濃度を示すグラフである。
図7】3つの浸出テストについて、累積溶液適用容積/鉱石質量比を関数とする銅抽出率のグラフである。
図8】浸出期間における時間を関数とする銅の抽出率を描写するグラフである。
図9】時間を関数とするPLS及びラフィネートの銅濃度を示すグラフである。
図10】塩素イオン濃度を関数とする電極のピーク電荷過度値を示すグラフである。
図11】テストカラムにおける溶液の容積を関数とする鉱石粒子上の溶液表面フィルムの厚さを描写するグラフである。
図12】溶液層の厚さを関数とする初期及び最終のEh測定値を示すグラフである。
図13】溶液/空気の表面積及び作動体積を関数とする酸素の移動速度を示すグラフである。
図14】酸供給を関数とする緑泥石鉱物から発生したエネルギーを描写するグラフである。
図15】時間及び潅注率を関数とするテストカラムにおける温度を示すグラフである。
図16】浸出サイクル及びリンスサイクルの間におけるカラムの頂部から底部までの温度プロフィールの描写である。
図17】時間を関数とするラフィネート及びPLSの溶液の電位値を示すグラフである。
図18】ラフィネートにおける及びPLSにおける硫酸イオン濃度を示すグラフである。
図19】リンス工程の間におけるPLS中の塩素イオン濃度値を示すグラフである。
図20】時間を基準とする黄銅鉱からの部分的及び累積銅抽出値を示すグラフである。
図21】休止工程及び潅注工程の間における時間を基準とする通気率を示すグラフである。
図22】酸素の利用値を描写するグラフである。
図23】銅の抽出率を示すグラフである。
図24】銅の抽出率対溶液/鉱石の比を示すグラフである。
図25】経時的な銅の抽出率を示すグラフである。
図26】毎日の平均潅注率を示すグラフである。
図27】PLS及びラフィネートにおける銅の濃度を示すグラフである。
図28】時間を関数とするラフィネート及びPLSのPLS溶液電位値及びラフィネート溶液電位値を示すグラフである。
図29】PLS及びラフィネートの酸濃度を示すグラフである。
図30図29に示す酸濃度において達成された正味の酸消費量を表すグラフである。
図31】PLS及びラフィネートのpHプロフィールを示すグラフである。
図32】経時的に達成された銅の抽出率を示すグラフである。
図33】異なったpHに曝露された黄銅鉱電極に関して0.7ボルトで記録されたアノード電流密度を示すグラフである。
図34】リンス工程の間に得られたPLSの銅の濃度を示すグラフであり、集められた溶液の質量%値も示す。
図35】溶液/鉱石の比を関数とするリンス工程の間に得られたPLSの銅の濃度を示すグラフである。
図36】潅注工程の間にラフィネートにおいて使われた増大する塩素イオン濃度を関数とする得られた銅の抽出率を示すグラフである。
図37図36に示されたデータセットから算定された銅の抽出率定数を示すグラフである。
図38】酸素オフガス分析及び溶液サンプルからの測定値から概算された銅の抽出値を描写するグラフである。
図39】休止工程及び潅注工程及び連続潅注の組み合わせを使用する6mカラムテストに関する銅の抽出率対浸出期間を描写するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、本発明の方法の簡略化した動的フローシートである。溶媒抽出、ヒープ浸出サーキット、電解採取、凝集、鉱石の堆積及び再生の各工程を含むヒープ浸出サーキットの一般的な操作態様については、ここには記載していない。
【0047】
ヒープサーキットは、鉱石において、主として黄銅鉱を含むことを特徴としており、黄銅鉱は、輝銅鉱、銅藍、硫砒銅鉱及び班銅鉱のような二次硫化鉱と混合されてもよい。次に、塩素イオン濃度が高い浸出溶液(100〜190g/L Cl)を使用する。本明細書では、記載を黄銅鉱の浸出に限定したが、同じ方法を、銅マンガン酸化物((Cu,Mn,Co,Ni,Ca,Zn,Fe)x(O,OH)x)のような耐火性酸化物鉱石及び輝銅鉱、銅藍、硫砒銅鉱及び班銅鉱のような二次硫化鉱にも適用できる。本発明の方法は、酸化物鉱石及び二次硫化鉱の処理に適用される従来のヒープ浸出法では処理できない銅含有クレー鉱石(Cux(K,Fe,Mg)xAlxSix(OH)x)の浸出にも適用可能である。
【0048】
図1は、塩素イオンのような試薬の消費を最少とし、及び休止工程の間において黄銅鉱の表面と接触する溶液の銅濃度0.5g/L以上を達成するために、溶液適用工程の間において銅濃度を維持する溶液管理原理を説明する。
【0049】
鉱石10を、溶液適用池14からの溶液12にて凝集し、鉱石堆積プロセス18によってヒープ16を構築する。
【0050】
構築に続いて、ヒープ浸出サイクルにおいて、ヒープを、凝集後、休止工程に供し、続いて、連続潅注工程又は複数の潅注工程及び続く休止工程に供する。
【0051】
この実施例では、ヒープ16は、ヒープ浸出サイクルにおける異なった操作ステージ(連続的に、16D,16C、16B、16A等という)にある一連の構築されたヒープの一部分と考えられる。
【0052】
潅注工程の間にヒープ16Aに適用される溶液は、溶液適用池14から取り出される。潅注工程から生ずるヒープ16Aからの排液は、浸出貴液池(PLS池)22に収容される。
【0053】
先行するヒープ16Bからの内部水分26は、最後の潅注工程の後、リンス溶液30を適用する前に、PLS池22に排出される。
【0054】
銅は、溶液又は溶液の少なくとも一部を、溶媒抽出及び電解採取工程32を通過させることによって、PLS池に収容された溶液から回収される。
【0055】
PLS池22に収容された溶液の一部を、溶液適用池14に直接送給する。
【0056】
先行するヒープ部分16Cに適用されるリンス溶液30は、リンス池36から取り出される。リンス溶液は100g/L未満の塩素イオン濃度を有し、逆浸透プロセスによって生成された水、海水、天然の水、各種の利用可能なプロセス水、又はこれらの各種の組み合わせにより調製される。
【0057】
リンス溶液30は、リンス工程の間において銅が沈殿することを防止するために、硫酸40を添加することによって酸性化される。ヒープ部分16Cにリンス溶液30を適用することによって生ずる初期排液42をPLS池22において集める。先行するヒープ部分16Dにリンス溶液30を適用することによって生ずる排液44を、再生プロセス50の実施前に、中間池46において集める。
【0058】
中間池46では、塩52の追加又は調合を行う。この池からの溶液を、溶液適用池14に直接送給する。溶媒抽出プロセス32によって生成された溶液54は、浸出サーキットにおける水バランスを維持するために、中間池46に送給される。
【0059】
ヒープ16Aは、休止工程及び潅注工程の間に、排液層の上のヒープの基底部に配置された通気システム60(概念的に示す)を使用して、通気される。代表的には、通気率は0.01Nm/時間・トンであるが、硫化物鉱物の等級に応じて0.002〜0.05Nm/時間・トンの範囲内でもよい。
【0060】
ここで使用するように、用語「sal」は、本明細書に記載されたパラメーター内で生じたデータをいう。
【0061】
図2は、総銅等級0.6質量%を有する85%黄銅鉱を含有する粉砕した鉱石(80%が1.3cm(1/2インチ)の目を通過する)からの銅抽出を目的とする4つの浸出テストについて、経時的な累積溶液適用容積/鉱石質量比(m/トンで表示する)を表す4つのデータセットは、連続的温度増加バイオ浸出(BIO seq temp)、周囲温度(25℃)塩素イオン系浸出(従来型Cl(Conc C1))(国際公開2007/134343号に記載されている)、及びここに記載するパラメーター内で行われた2つの周囲温度(25℃)複数休止及び養生系浸出テスト(sal Q1及びsal Q2という)を含む。sal Q1は、最終容積/鉱石質量比3m/トン未満を有していた。Q1及びQ2は、いずれも、10日休止サイクルを使用しており、主な差異は、潅注サイクルの間に添加された浸出溶液の容積である。このデータセットにはリンスサイクルは含まれない。
【0062】
図2に示す浸出テストから抽出された銅の百分率を、図3において、累積溶液適用容積/鉱石質量比に対して示す。バイオ浸出テストの連続温度増加も示す。黄銅鉱から銅の抽出率は、上昇された温度(顕著には、25℃以上)により増大される。従って、温度25℃におけるsal Q1及びQ2テストにて達成された増大された銅の抽出率は、本発明の方法を適用することによって達成される顕著な改良と認識されなければならない。より小さい容積の溶液を適用するテストQ1は、Q2(ここに規定するように、溶液適用容積/鉱石質量比の上限3m/トンを越える)よりも大きい銅の抽出率を達成した。
【0063】
上述のsal Q1及びQ2の潅注工程の間に鉱石に適用される溶液の硫酸濃度を図4に示す(Raff sal Q1及びQ2)。
【0064】
潅注工程(Raff sal Q1及びQ2)及び続く排出(PLS Q1及びQ2)の間に鉱石に適用される溶液の塩素イオン濃度を図5に示す。
【0065】
図6は、潅注工程(Raff sal Q1及びQ2)及び続く排出(PLS Q1及びQ2)の間における浸出溶液の銅濃度を示す。排液の銅濃度は、各潅注サイクルの開始から終了まで低減する。潅注サイクルの間の初期排液から得られる銅濃度は、合理的な程度まで、休止サイクルの終了時に黄銅鉱表面と接触する銅濃度を示す。より小さい溶液/鉱石比を有するsal Q1は、各休止工程に続くPLSにおいて、より大きい銅濃度値を示した。
【0066】
図7は、総銅等級0.4質量%を有する90%黄銅鉱を含有する粉砕した鉱石(80%が1.3cmの目を通過する)からの銅抽出を目的とする3つの浸出テストについて、銅抽出率対累積溶液適用容積/鉱石質量比の関係を表す。3つのデータセットは、周囲温度(25℃)塩素イオン系浸出(従来型Cl)(国際公開2007/134343号に記載されている)及びここに記載するパラメーター内で行われた2つの周囲温度(25℃)「複数休止及び養生」系浸出テスト(sal10日休止(タイム休止工程)及びsal0.5日休止という)を含む。溶液適用容積/鉱石質量比2m/トンの後のsal10日休止状態について、図8(同じテストについての銅抽出率対浸出期間(日)を表す)に示すように、浸出サイクル第145日にリンスサイクルを実施した。
【0067】
リンスサイクルの間のPLS及びラフィネートの銅濃度を図9に示す。12日間で90%以上の銅リンス効率が得られた。
【0068】
黄銅鉱電極を、同じ銅及び鉄の濃度を有するが、増大する塩素イオン濃度を有する各種の溶液によって促進された異なった開路電位に露出した。その後、電極を、各々、印加電位範囲に供し、塩素イオン濃度に対するピーク電荷過度値(mA/cmで表示する)(及び当量/鉱石溶解率)をプロットした(図10)。塩素イオン濃度(ここでは、100〜190g/Lと規定される)は、本発明の方法について記載した条件下における許容される黄銅鉱の溶解率を達成するためには、許容される濃度と考えられる。
【0069】
篩通した1.2〜6.4mmの既知量の鉱石の複数のフラクションを混合し、近似の鉱石表面積を有するカラムに積み上げた。カラムを、工業的において一般的に使用される率での連続溶液適用に供した。図11の曲線は、カラムに保持された溶液の容積を関数とする鉱石粒子上の算定された溶液フィルムの厚さ(mm)における増大を示す。ヒープ浸出関連システムにおける鉱石の溶液保持特性のため、同じ浸出期間内における溶液容積/鉱石比の増大により、溶液容積保持の増大(それ自体、鉱石粒子を包囲する溶液層の厚さを増大させる)が生ずることが広く認められる。溶液容積/鉱石比が増大すると、鉱石粒子間の全てのボイドスペースが浸出溶液で充満される。溶液容積/鉱石比が低減する場合には、逆の現象が生ずる。本発明の方法は、休止期間を使用することによって、溶液容積/鉱石比を最少にすることが可能になり、そのため、鉱石粒子を包囲する溶液層も最小となり、酸、酸素、第二鉄イオン及び第二銅イオンのような試薬の鉱石表面への空間移動速度を促進し、この結果、鉱物の溶解率が増進される。
【0070】
それぞれ、既知の表面積を有する大型の平らなトレーに添加される、所定の開始時濃度の銅(I)イオン及び塩素イオン150g/Lを含有する酸性化した溶液の容積を増大して、4つの別個の銅(I)酸化データセットを得た。各テストにおける容積の増大は、1.5〜4.5mmの溶液層の厚さの増大に相当する。酸化テストを、20℃及びシステム圧力1気圧で実施した。銅の酸化の指標として、経時的に溶液電位を測定した。酸化時間(1.5時間)を限定すると、溶液電位は500〜580mV SHEに維持された。初期及び最終のEh測定値を図12に示す。経時的な銅の酸化率(質量)も示す。容積又は表面厚さが増大しても(その間に、最終の溶液電位は低減する)、これらは一定のままである。溶液/空気表面積(kg/日・m)及び稼働容積(kg/日・m)を関数として酸素移動速度を算定するために、銅の酸化率のデータを使用した(図13)。特定のシステムにおいて酸化された銅の量又は質量を、酸素移動速度によって限定した。容積酸素移動速度における低減は、本質的に、容積又は層の厚さの増大によるCu(II)/Cu(I)比の低減の原因となり、この結果、溶液電位のゆっくりとした増大を生ずる。
【0071】
塩化物鉱物含有鉱石(黄銅鉱90%、CuT 0.3質量%、粒子サイズ:80%が3.8cm(1.5インチ)の目を通過する)の熱発生能力を、ここに規定する条件下にて評価した。以下の図面は、国際公開第2005/061741号に記載された種類のヒープ浸出シミュレーション装置において生じたデータに相当する。シミュレーションカラム又は装置に負荷した鉱石を、全浸出サイクルにおける溶液容積/鉱石比0.6m/トンにて、複数の潅注工程(10日)及び休止工程(15日)に供した。潅注サイクルの間に使用した浸出溶液は、硫酸100g/L、塩素イオン150g/L、可溶性イオン1g/L及び銅(II)5g/Lを含有する。マグネシウムの溶解率を使用することによって、潅注サイクルの間に塩化物鉱物から発生したエネルギー(ワット/m(鉱石))を算定し、酸供給物に対して、kg/トン(鉱石)でプロットした(図14)。第85日の後に高酸濃度(リンス溶液中のHSO 100g/L)リンスサイクルを適用した。
【0072】
カラムにおいて得られた平均温度値、最高温度値及び頂部区域の温度値を図15に示し、潅注率とともにプロットした。温度上昇は、潅注工程の間に達成され、及び酸供給の関数である(図14)ことが明らかである。図16において、浸出及びリンスサイクル全体で、カラムの頂部から底部までの温度プロフィールを示す。熱は、主にカラムの中央部に保存され、一定の通気率0.03Nm/時間を適用した。
【0073】
ラフィネート及びPLSの溶液電位値を図17に示す。
【0074】
ラフィネート及びPLSの硫酸イオン濃度における差によって硫酸塩の沈殿が生じ、これは、pH1.5を越える排液pHから見られるように(図18)、特に、休止工程の間で顕著である。リンス溶液における高い酸濃度(ラフィネートにおいても同じ)は、沈殿した硫酸塩化合物を溶解させるとの不必要な効果を有し、これは、リンス溶液の硫酸塩濃度以上にPLSの硫酸塩濃度における上昇が顕著であることから理解される(図18)。従って、ここでは、pHを硫酸塩沈殿物が溶解されないように管理するために、潅注サイクルの間に鉱石に適用される溶液よりも、リンス溶液が少ない硫酸を含有するように規定される。
【0075】
使用するリンス溶液は塩素イオン1g/Lを含有する。リンス工程の間のPLSにおける塩素イオン濃度値を図19に示す。約30日で、90%を越える塩素イオンリンス効力が得られた。
【0076】
黄銅鉱含有鉱石からの部分及び累積銅抽出率を図20に示す(リンスサイクル(第85日から第120日)を含む120日間で60%を越える)。潅注工程及びリンス工程の間に鉱石床内で発生した大きい銅インベントリーのため、リンスサイクルは、銅の回収において重要と考えら、ここで規定するように、最良の成績のためには、50日以内で完了されなければならないが、ただし、この期間に限定されない。
【0077】
ここに記載の概念についての酸素要求を、黄銅鉱75%及び二次硫化鉱25%を含有し、高い総銅等級0.8質量%を有する粉砕した鉱石(80%が1.3cmの目を通過する)について、入口及び出口酸素分析を使用する大規模なカラム浸出システムにおいて評価した。カラム浸出テストでは、鉱石温度を25℃で一定に維持した。鉱石を凝集し、負荷し、続いて、48日の休止工程及び続く10日の潅注工程及び15日の休止工程に供した。これらの3つの休止及び潅注工程の間に、カラムテストの2つにおいて、低い通気率(0.002Nm/時間・トン)及び高い通気率(0.05Nm/時間・トン)を使用した(図21)。
【0078】
2つのシステムにおける硫化物の酸化についての酸素利用度は、図22において、1日単位(部分)の酸素及び出口酸素の間の百分率差として表示される。低通気条件では酸素が欠乏し(>90%利用率)、高通気条件と比べて、硫化物鉱物からの銅の抽出率が低くなる。図23は、第1の休止工程45日間の後、第1の潅注工程の開始以降の銅の抽出率を示す。窒素雰囲気下で行ったカラム浸出テストも含まれ、このテストでは、低通気条件よりも明らかに低い銅抽出率を示した。高通気条件では、通気期間に、約5%の低い酸素利用率を示した。25〜50%の酸素利用率を助長する通気率は、商業ベースのヒープ浸出のための最良の実施と考えられる。このように、0.01Nm/時間・トンの通気率は、記載した条件下において、この特別な鉱石について最適と考えられる。
【0079】
図24は、黄銅鉱88%以上(残余の銅は二次硫化鉱である)を含有し、0.45〜0.65%の総銅等級を有する3種の異なる粉砕した鉱石(80%が1.3cmの目を通過する)からの銅抽出率(%)を目的とする3種の6mカラム浸出テストに関する、時間に対する累積溶液適用容積/鉱石質量比(m/トンとして表示する)を示す。3つのカラムテストにおいて、時間に対して達成された銅抽出率を図25に示す。カラムに負荷した鉱石サンプルを濃縮した酸及び塩素イオン150g/Lを含有する溶液にて凝集し、続いて、各カラムテストについて、50日の休止工程を行った。カラムテストでは、凝集後、温度を25℃で一定に維持した。他に規定しない限り、ここに記載する全ての実施例を、凝集後、25℃において実施した。初めの50日の休止工程の後、各カラムテストについて、複数の潅注工程(各10時間)及び複数の変性休止工程(各14時間)を使用した(図25において、抽出された銅を0日後から描写した)。1つの休止工程後に、続いて、1つの潅注工程が行われる。潅注工程の間、各カラムテストについての溶液の適用量を、時間、鉱石の表面積m当たり6Lに維持した(6L/時間・トン)。潅注工程の間に使用した潅注溶液(「ラフィネート」)は、塩化ナトリウムからの塩素イオン約150g/L及び硫酸約20g/Lを含有する。カラムへの負荷直後からの1日当たりの平均溶液適用率を図26に示す。上記の休止及び潅注工程の全ての期間、カラムを0.01Nm/時間・トンで通気した。データセットでは、リンスサイクルは含まれない。上述のカラムテストのラフィネート及びPLSの銅濃度を図27に示す。上述のカラムテストのラフィネート及びPLSの溶液電位値(対標準水素電極)を図28に示す。
【0080】
酸消費脈石からの酸の消費量は、潅注工程の間に使用するラフィネートにおいてより少ない酸を使用することによって最少にされる。高さ6mのカラム浸出テストでは、黄銅鉱90%以上及び総銅含量0.37%を含有する粉砕した鉱石(80%が1.3cmの目を通過する)を負荷した。鉱石1トン当たり硫酸8kg及び塩素イオン150g/Lを含有するラフィネート溶液による凝集の後、40日の休止工程を使用した。続いて、複数の潅注工程(各10時間)及び交互の休止工程(各14時間)を使用した。最初の20日間の潅注工程の間に、酸約20g/L及び塩素イオン150g/Lを含有するラフィネートを使用した。残りの潅注工程の間では、硫酸5g/L及び塩素イオン150g/Lを含有するより低い酸濃度のラフィネートを使用した(図29)。ネットの酸消費量(kg/トン(鉱石))、pHプロフィール及び銅の抽出率を、それぞれ、図30、31及び32に示す。
【0081】
黄銅鉱電極を、pH0、1、2及び3(25℃)において、脱気した5M NaCl溶液に3分間露出した。露出後、0.4〜1ボルトの間で、1mV/秒にてアノード掃引ボルタングラムを記録した。異なったpHに露出された各電極について0.7ボルトで記録された近似のアノード電流密度を図33に示す。図は、アノード鉱物の反応性が、上述の条件において、増大するpHを関数として増大することを示しており、これは、溶液のpHが増大するにつれて、溶解率が増大することを表示している。
【0082】
ここに記載の条件に従って、粉砕したサンプル(80%が1.6cm(5/8インチ)の目を通過する)について、高さ10mのカラム浸出テストを実施した。潅注工程及び休止工程に続いて、システムから、過剰の溶液を15日間排出させた(潅注なし)。排液15日後、カラム内に残留する可溶性銅を回収するために、リンス工程を行った。使用したリンス溶液は、硫酸20g/Lを含有する酸性化水である。毎日5時間、溶液適用率6L/時間・mで、システムに潅注した。システムを毎日19時間休止した。PLSにおける50日間の銅濃度(リンス工程からの銅を含む)を図34に示す。浸出システムからの累積PLSの量も、浸出カラムに負荷した乾燥鉱石の質量に対して、質量%として(溶液密度から算定)、図34に示す。付加した鉱石のトン当たりの累積PLS容積及び銅の濃度を図35に示す。
【0083】
高度に耐火性の黄銅鉱98%(0.45質量%Cu)を含有する粉砕した鉱石サンプル(80%が1.3cmの目を通過する)について、4つのカラム浸出テストを行った。サンプルを濃硫酸及び塩素イオン80、100、130、150g/Lを含有する溶液にて凝集した。4つの浸出テストの全てで、45日の初期休止工程を使用し、続いて、複数の潅注工程(10日)及び交互の休止工程(10日)を使用した。潅注工程の間に、溶液適用のため、塩素イオン80、100、130、150g/Lを含有するラフィネートを使用した。凝集後から、カラムに通気した。各塩化物濃度から得られた銅抽出の経時的な結果を図36に示す。一般的なカラム浸出速度の表示を使用して、各塩化物条件について、共通のfitパラメーターからの速度定数を得た(図37)。
【0084】
硫化銅鉱石(1質量%)を、ここに記載する条件下で操作する6mのカラム浸出テストに供した。濃硫酸及び塩素イオン130g/L含有ラフィネートによる凝集に続いて、30日の初期休止工程を使用し、システムに通気した。この初期休止工程の間に、入口空気(カラムの底部)及び出口空気(カラムの頂部)について酸素濃度の測定を行った。30日後の酸素データ約45%を使用して、この初期休止工程の間の銅抽出率を見積もった(図38)。図38に示すようなケース(初期休止工程の間に、合理的な量の銅が浸出される)では、より短い溶液保持時間で銅が回収されるように、連続の潅注(更なる休止工程なし)が使用される。この方法は、浸出サイクルの時間を低減させることができる。図38に示されるように、ただ1つの潅注工程の間、銅の抽出は持続する。浸出サイクル全体で、溶液/鉱石比は、3m/トン(鉱石)未満に維持される。
【0085】
粉砕した(80%が1.3cmの目を通過する)黄銅鉱(95%、0.36質量%Cu)鉱石を、ここに記載する条件下で操作する6mのカラム浸出テストに供した。濃硫酸及び塩素イオン150g/L含有ラフィネートによる凝集に続いて、47日の初期休止工程を使用した。カラムの操作の間ずっとシステムに通気した。この初期休止期間に続いて、複数の潅注工程(6L/時間・mで10時間ON)及び複数の交互の休止工程(各14時間)を100日間使用した。100日後、潅注工程及び休止工程の操作法に代えて、30日間の6L/時間・mでの連続潅注(24時間ON)を使用した、この操作法の変更の影響は、図39に示すような銅抽出曲線に表される。続く20日の間に、上述のものと同じ休止/潅注操作法に戻し、銅抽出に対する影響を記録した(図39)。第158日に、15日間のカラムからの排出操作(溶液の適用なし)を開始した。排液15日後、上述の休止工程/潅注工程操作法を再度行い、銅抽出に対する影響を記録した。操作法における変化の間ずっと酸性度が維持され、これにより、PLSのpHが約1.5〜1.7の間で極わずかに変化することに注目することが重要である。
図1
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