【課題を解決するための手段】
【0003】
高塩素環境におけるヒープ浸出サイクル内で、ただ1つの休止工程及び続く潅注工程の原理、又は休止工程及び潅注工程の複数の交互工程の原理を使用して、黄銅鉱の不動態化を防止又は低減することにより、黄銅鉱の浸出速度を増大させる黄銅鉱についてのヒープ浸出操作法を参照して、本発明を開示する。
【0004】
本発明は、主として、黄銅鉱の表面を、銅イオン及び塩素イオンを含有する「停滞した」又は「ゆっくりと移動する」浸出溶液に露出することによって、黄銅鉱の浸出が大いに促進されるとの驚くべき発見に基づく。停滞した又はゆっくりと移動する溶液相は、ヒープ浸出サイクル内におけるただ1つの休止工程によって又は休止工程及び続く潅注工程の複数の工程によって増進される。
【0005】
ここで使用するように、「ヒープ」は、処理される鉱石を含む野積みした山、ダンプ、バット、又はカラムを含む。
【0006】
ここで使用するように、「溶液適用工程」は、「潅注工程」又は凝集工程の間における浸出又は潅注溶液の付加をいう。
【0007】
ヒープ浸出サイクルは、構築(続いて、連続潅注が行われる)後における最初の休止期間にて始まるか、又は溶液適用工程(続いて、休止工程が行われる)により始まり、ついで、ヒープ浸出サイクル内における潅注工程及び続く休止工程の複数の交互の工程が行われる。
【0008】
ここで使用するように、「複数の休止工程」は、2以上の休止工程をいう。
【0009】
ここで使用するように、「凝集工程」は、ヒープ構築以前又は構築中に鉱石へ浸出溶液を適用するために、ヒープ浸出サイクル内におけるただ1回の凝集技術の使用をいう。ただし、この工程は、本発明の方法の実施に必須ではない。ヒープは、凝集技術を使用しなくても構築される。
【0010】
本発明の方法において、ヒープ浸出サイクル内で、鉱石を少なくとも1つの休止工程及び続く潅注工程に供する。鉱石の凝集(使用する場合)及びヒープ構築後の最初の休止期間は、第1の休止工程とみなされる。前記したように、鉱石を複数の休止工程及び続く潅注工程に供することもできる。
【0011】
好ましくは、休止工程の間、
1.鉱石に浸出溶液を適用しない;
2.鉱石の凝集、又は第1の潅注工程の結果として、ヒープにおいて、浸出溶液は停滞するか、ヒープにおける鉱石の黄銅鉱の表面上を、潅注工程中よりも遅い速度で移動する;
3.生じ得る内部水分の排液は、任意に、浸出貴液池(「PLS池」という)に収容される;
4.鉱石と接触する浸出溶液の塩素イオン濃度は、100〜190g/Lである;
5.鉱石と接触する浸出溶液は、休止工程における各種の所定の時間において、溶解銅少なくとも0.5g/Lを含有する;
6.黄銅鉱の表面と接触する浸出溶液中の銅は、黄銅鉱の表面上に停滞する溶液又はゆっくりと移動する溶液のため、潅注工程における黄銅鉱の表面と接触する浸出溶液中よりも高い濃度に増大する;及び
7.休止工程の期間は、20時間〜50日間である。
【0012】
鉱石と接触する浸出溶液のpHは、酸の消費の結果として、脈石の溶解のため、pH1.5以上に高まることがある。浸出溶液のpHの増大は、鉱石の酸消費及び休止工程の期間の関数である。鉱石と接触する溶液のpHは、pH0〜3.5の範囲内であると予期される。実施例によってのみpHの範囲が特定されるが、本発明の方法では制限されない。銅の抽出率は、pH1.0〜3.0の範囲内で増大する溶液のpHによって増大する。
【0013】
浸出溶液のpHにおける増大は、ジャロサイト又はいくつかの形の硫化鉄及び/又は鉄ヒドロキシ塩化物の沈殿を生じ得る。これは、技術の実施により、浸出サーキットにおける硫酸塩、鉄、カリウム及びナトリウムのような不純物のレベルを低下させることを可能にする。
【0014】
本発明の方法は、ヒープ浸出サイクルにおいて、少なくとも1つの休止工程を使用する。上述のように鉱石の凝集及びヒープ構築の後の初期期間は、潅注及び休止の複数の工程、又は連続する潅注のみの以前における第1の又は単一の休止工程とみなされる。休止工程の数は制限されず、各休止工程の間に達成される増加性銅抽出及び目的の銅抽出全体、又は達成可能な最大の銅抽出に左右される。
【0015】
休止工程の間に、ヒープは通気される。代表的な通気率は、0.01Nm
3/時間・トン程度である。
【0016】
本発明の方法の実施では、凝集以前又は凝集の間に、各種の形の固体塩化物源を直接鉱石に添加することを必要としない。
【0017】
「潅注工程」は、潅注グリッドの使用を含み、これによって、浸出溶液を、ヒープの構築直後、又は各休止工程の後にヒープ全体に適用する。潅注グリッドは、ヒープの表面上、又はヒープ内に配置され、又は両方の形の構成の組み合わせが使用される。
【0018】
潅注グリッドは、浸出溶液が、要求に応じて、ヒープの選ばれた部位又は複数の部位にのみ適用されるように構成又は作動される。
【0019】
池は、溶液適用工程の間に使用された潅注又は浸出溶液を保持するために使用される。この池を、ここでは、「溶液適用池」という。
【0020】
好ましくは、連続する潅注の間又は各潅注工程について:
1.鉱石に適用される溶液(この溶液を、ここでは、「ラフィネート」ともいう)の硫酸濃度は、4〜100g/Lである;
2.溶液の塩素イオン濃度は、100〜190g/Lである;
3.液体ヒープ排液は、任意に、PLS池に収容される;
4.銅は、PLS池内の溶液から、50ppm以下の電解液の塩素イオン濃度を促進するための少なくとも1の銅負荷有機洗浄ステージを有する溶媒抽出によって、少なくとも部分的に回収される。
【0021】
鉱石に適用される溶液は、溶媒抽出工程によって、溶媒適用池から生成される。
【0022】
ヒープに適用される浸出溶液の量は、1の完全浸出サイクル当たり、3m
3/トンを越えない。この値は、実施例におけるものであり、限定されず、浸出サイクル後のヒープリンスから生ずる液体を含まない。
【0023】
潅注溶液における酸は、鉱石中の脈石と反応して、例えば、亜塩素酸塩及び黒雲母の酸浸出を生ずる。このタイプの反応は熱を発生し、鉱石の温度は、潅注率及び酸の濃度を制御することによって、中でも鉱石中の反応性の脈石の含量に応じて、顕著に上昇される。温度上昇により、脈石の酸化速度が速くなり、結果として、脈石回収の増大及び浸出サイクル時間の低減につながる。
【0024】
温度の増大は、耐火性銅酸化物、例えば、黒色酸化物((Cu,Mn,Co,Ni,Ca,Zn,Fe)x(O,OH)x)及び銅含有クレー鉱物(Cux(K,Fe,Mg)xAlxSix(OH)x)の浸出速度を増大させるために特に重要である。増大された温度は、耐火性の銅酸化物鉱物を浸出するために要求される活性化エネルギーを克服又は低減し、これは銅溶解の率及び程度の増大につながる。
【0025】
黄銅鉱のような硫化銅鉱物の溶解は、ヒープの通気によって改善される。通気は、銅溶解の率及び程度を顕著に増大させる酸素を提供する。通気は潅注工程の間に行われる。代表的には、通気率は0.01Nm
3/時間・トンであるが、この値は例示であり、非限定的である。
【0026】
ここで使用するように、「ヒープセクション」は、全ヒープよりも小さい表面積を有することを特徴とするヒープの区分をいう。
【0027】
ここで使用するように、「銅ヒープ浸出サイクル」は、ヒープ排液(一般に、「浸出貴液」という)から銅を回収するために、配管を介して溶媒抽出及び電解採取プロセスに接続された少なくとも1つの池を含む溶液収集システムへのヒープからの排液を容易なものとするライニングパッド上に構築された少なくとも1つのヒープをいう。ヒープの潅注のため、溶媒抽出プロセスからの銅含量がより低く、酸濃度がより高い溶液(一般に、「ラフィネート」という)が、少なくとも部分的に使用される。
【0028】
ここで使用するように、「動的銅ヒープ浸出サーキット」は、ヒープサイクルが完了した後、浸出された物質がサーキットから除去される銅ヒープ浸出サーキットをいう。このような除去は、「再生」とも呼ばれる。
【0029】
動的銅ヒープ浸出サーキットの場合では、後述するただ1つの又は複数の休止及び潅注工程に続いて、浸出サイクルの終わりに、浸出サーキットからの浸出済み物質又は廃棄物質を再生する工程前に、浸出済み物質から可溶性銅及び塩化物を回収することを目的とするリンス工程が含まれてもよい。
【0030】
リンス工程の間では:
1.リンス溶液は、ヒープ全体に、又は再生工程直後に再生れるべきヒープの区分に適用される;
2.内部水分は、場合によって、リンス溶液を適用する前に、ヒープ全体又はヒープ区分から排出される;
3.リンス溶液はリンス池で調製され、少なくとも大部分は、逆浸透プロセスによって生成された水、海水、天然の水、又は各種のプロセス水、又はこれらの各種の組み合わせからなる;及び
4.リンス溶液は、100g/L未満の塩素イオンを含有できる。
【0031】
リンス溶液は、潅注工程の間に鉱石に適用される溶液よりも少ない硫酸を含有できる。
【0032】
リンス工程の間のリンス溶液の潅注の結果としてのヒープから又はヒープ区分からの排液は、少なくとも部分的に、PLS池に収容される。この工程は、特に、初期排液が、PLS池における溶液との混合について許容されるとみなされる銅及び塩化物濃度を有する際に適用可能である。
【0033】
或いは、リンス工程中又は後におけるリンス溶液による潅注の結果として、ヒープ又はヒープ区分から排出された溶液は、ここでは「中間池」と呼ばれる池に、少なくとも部分的に収容される。
【0034】
最適性能については、リンス期間は50日を超えてはならない。しかし、この値は例示であり、非限定的である。
【0035】
リンス溶液の潅注率は、1日当たり、ヒープの表面1m
2当たりの適用量7Lを超えてはならない。しかし、より大きい潅注率を使用できる。
【0036】
リンス工程の間、ヒープは通気されない。
【0037】
リンス工程は、各種の硫酸銅鉱物から銅を浸出するためには使用されない。
【0038】
リンス工程は、潅注工程のために使用されるものと同じ潅注グリッドを使用して行われる。
【0039】
溶媒抽出のプロセスから生成された溶液又は溶液適用池に収容された溶液を、浸出サーキットにおける水バランスを維持するために、中間池に収容された溶液に添加できる。
【0040】
塩素イオンは、NaCl、MgCl
2、KCl及びAlCl
3の1以上を中間池に保持された溶液に添加することによって、浸出サーキットに導入される。
【0041】
中間池に収容された溶液の少なくとも一部は、PLS池に移動されてもよい。
【0042】
中間池に収容された溶液の少なくとも一部は、溶液適用池に移動されてもよい。
【0043】
PLS池に収容された溶液少なくとも一部は、溶媒抽出工程に供することなく、直接、溶液適用池に移動されてもよい。
【0044】
添付図面を参照して、本発明をさらに説明する。