特許第6621422号(P6621422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621422
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】透明アルミナ焼結体の製法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/115 20060101AFI20191209BHJP
【FI】
   C04B35/115
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-561545(P2016-561545)
(86)(22)【出願日】2015年11月20日
(86)【国際出願番号】JP2015082643
(87)【国際公開番号】WO2016084721
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2018年7月19日
(31)【優先権主張番号】特願2014-241685(P2014-241685)
(32)【優先日】2014年11月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-98524(P2015-98524)
(32)【優先日】2015年5月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松島 潔
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 守道
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭
(72)【発明者】
【氏名】七瀧 努
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−030209(JP,A)
【文献】 特開2004−359495(JP,A)
【文献】 特開平01−286956(JP,A)
【文献】 特許第5396176(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アスペクト比が3以上の板状アルミナ粉末を含むアルミナ原料粉末を、該アルミナ原料粉末中のFのAlに対する質量比R1が5ppm以上となるように調製し、前記アルミナ原料粉末を含む成形用原料を成形して成形体とする工程と、
(b)前記成形体を1700℃以上で加圧焼成することにより透明アルミナ焼結体を得る工程と、
を含み、
前記工程(a)では、前記板状アルミナ粉末と前記板状アルミナ粉末よりも平均粒径が小さな微細アルミナ粉末とを含むアルミナ原料粉末を、前記板状アルミナ粉末と前記微細アルミナ粉末との混合割合が質量比で0.1:99.9〜15:85となるよう調製する、
透明アルミナ焼結体の製法。
但し、質量比R1は、下記式(1)で算出される値であり、単位は質量ppmである。式(1)中、Xは、板状アルミナ粉末中のFのAlに対する質量比(質量ppm)である。板状アルミナ粉末のF含有量は、熱加水分解−イオンクロマトグラフ法で求める。板状アルミナ粉末のAl含有量は、板状アルミナ粉末のアルミナ純度を100−(Al,O以外の不純物元素の質量%の和)として求め、それに0.529を乗じた値を用いて算出する。不純物元素の質量%は、以下のように定量する。すなわち、Sは燃焼(高周波加熱)−赤外線吸収法、Nは不活性ガス融解−熱伝導度法、Hは不活性ガス融解−非分散型赤外線吸収法、Fは熱加水分解−イオンクロマトグラフ法、その他の元素はICP(誘導結合プラズマ)発光分析で定量する。
R1=X×(板状アルミナの質量/アルミナ原料粉末の質量) …(1)
【請求項2】
(a)アスペクト比が3以上の板状アルミナ粉末を含むアルミナ原料粉末を、該アルミナ原料粉末中のFのAlに対する質量比R2が15ppm以上となるように調製し、前記アルミナ原料粉末を含む成形用原料を成形して成形体とする工程と、
(b)前記成形体を1700℃以上で加圧焼成することにより透明アルミナ焼結体を得る工程と、
を含み、
前記工程(a)では、前記板状アルミナ粉末と前記板状アルミナ粉末よりも平均粒径が小さな微細アルミナ粉末とを含むアルミナ原料粉末を、前記板状アルミナ粉末と前記微細アルミナ粉末との混合割合が質量比で0.1:99.9〜15:85となるよう調製する、
透明アルミナ焼結体の製法。
但し、質量比R2は、下記式(2)で算出される値であり、単位は質量ppmである。アルミナ原料粉末は、板状アルミナ粉末と微細アルミナ粉末との混合割合が質量比でT:(100−T)である。アルミナ原料粉末に添加物を外配で添加する場合、アルミナ原料粉末に対する添加物の割合をZ(質量%)とする。x1は、板状アルミナ粉末中のF含有
率(質量ppm)、x2は、微細アルミナ粉末中のF含有率(質量ppm)、x3は添加物中のF含有率(質量ppm)である。F含有量は、アルカリ融解−イオンクロマトグラフ法で求める。y1は、板状アルミナ粉末中のAl含有率(質量%)、y2は、微細アルミナ粉末中のAl含有率(質量%)である。Al含有率は、各アルミナ粉末のアルミナ純度を100−(Al,O以外の不純物元素の質量%の和)として求め、それに0.529を乗じた値(質量%)とする。不純物元素の質量%は、以下のように定量する。すなわち、Sは燃焼(高周波加熱)−赤外線吸収法、Nは不活性ガス融解−熱伝導度法、Hは不活性ガス融解−非分散型赤外線吸収法、Fはアルカリ融解−イオンクロマトグラフ法、その他の元素はICP発光分析で定量する。y3は、添加物中のAl含有率(質量%)であり、ICP発光分析で定量する。
R2=100×[x1×T+x2×(100-T)+x3×Z]/[y1×T+y2×(100-T)+y3 ×Z}…(2)
【請求項3】
前記工程(a)では、前記アルミナ原料粉末100質量部に対して、MgOを100〜5000質量ppm添加して混合することにより混合原料粉末とする、
請求項1又は2に記載の透明アルミナ焼結体の製法。
【請求項4】
前記工程(b)では、前記透明アルミナ焼結体に含まれるMg、C以外の各不純物元素が10質量ppm以下となるように焼成する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明アルミナ焼結体の製法。
【請求項5】
前記工程(b)では、降温時において1000〜1400℃の範囲で設定された所定温度まで50kgf/cm2以上の圧力を印加し続け、前記所定温度以下の温度域では50kgf/cm2未満まで除圧する、
請求項1〜のいずれか1項に記載の透明アルミナ焼結体の製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明アルミナ焼結体の製法に関する。
【背景技術】
【0002】
高密度、高純度の多結晶アルミナは透光性を有することが知られており、高圧ナトリウムランプ用発光管や高耐熱窓材、半導体装置用部材、光学部品用基板等に用いることができる。一方、アルミナは結晶構造上、光学的異方性を持っており、焼結体中のアルミナ粒子の結晶方位がランダムだと結晶粒子間の屈折率が異なるため光が散乱し、透過率が減少してしまう。そのため、高い直線透過率を有する透明アルミナ中の結晶粒子は一軸配向していることが望ましい。例えば、非特許文献1には、透明アルミナの製法が開示されている。具体的には、高磁場を利用することによって高純度且つ高配向、高密度の透明アルミナを製造している。
【0003】
また、アルミナ焼結体を製造するにあたり、焼結性を上げるために、アルミナ原料粉末にフッ化物を添加して焼成する方法も知られている。例えば、特許文献1,2では、アルミナ粉末とフッ化物粉末とを混合し、成形した後、1300℃以下の低温で焼成することで緻密なアルミナ焼結体を得ている。特許文献3では、アルミナ原料粉末にフッ素化合物を添加し、平均粒子径を2μm以下に粉砕混合し、成形し、大気中で1600〜1800℃で焼成することにより、耐食性、耐衝撃抵抗性及び耐久性に優れたアルミナ焼結体を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5396176号
【特許文献2】特許第5501040号
【特許文献3】特許第4357584号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Ceramics International 38 (2012) 5557-5561
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載された製法では、透明アルミナが得られているものの、高磁場を利用するため、製造コストが高くなるうえ大型化が困難であり大量生産に向かなかった。
【0007】
特許文献1,2に記載された製法では、アルミナ粒子は配向が考慮されていないためランダムに並ぶ。そのため、得られるアルミナ焼結体の透明性は低いと考えられる。
【0008】
特許文献3に記載された製法によれば、結晶の配向がほとんどなくアルミナ粒子がランダムに分布しているアルミナ焼結体が得られる。そのため、このアルミナ焼結体の透明性は低いと考えられる。このように、透明アルミナ焼結体を安価かつ容易に製造する方法は、これまでのところ知られていない。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、透明アルミナ焼結体を安価かつ容易に製造することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の透明アルミナ焼結体の製法は、
(a)アスペクト比が3以上の板状アルミナ粉末を含むアルミナ原料粉末を、該アルミナ原料粉末中のFのAlに対する質量比R1が5ppm以上となるように調製し、前記アルミナ原料粉末を含む成形用原料を成形して成形体とする工程と、
(b)前記成形体を1700℃以上で加圧焼成することにより透明アルミナ焼結体を得る工程と、
を含むものである。
【0011】
但し、質量比R1は、下記式(1)で算出される値であり、単位は質量ppmである。式(1)中、Xは、板状アルミナ粉末中のFのAlに対する質量比(質量ppm)である。板状アルミナ粉末のF含有量は、熱加水分解−イオンクロマトグラフ法で求める。板状アルミナ粉末のAl含有量は、板状アルミナ粉末のアルミナ純度を100−(Al,O以外の不純物元素の質量%の和)として求め、それに0.529を乗じた値を用いて算出する。不純物元素の質量%は、以下のように定量する。すなわち、Sは燃焼(高周波加熱)−赤外線吸収法、Nは不活性ガス融解−熱伝導度法、Hは不活性ガス融解−非分散型赤外線吸収法、Fは熱加水分解−イオンクロマトグラフ法、その他の元素はICP(誘導結合プラズマ)発光分析で定量する。
R1=X×(板状アルミナの質量/アルミナ原料粉末の質量) …(1)
【0012】
本発明の第2の透明アルミナ焼結体の製法は、
(a)アスペクト比が3以上の板状アルミナ粉末を含むアルミナ原料粉末を、該アルミナ原料粉末中のFのAlに対する質量比R2が15ppm以上となるように調製し、前記アルミナ原料粉末を含む成形用原料を成形して成形体とする工程と、
(b)前記成形体を1700℃以上で加圧焼成することにより透明アルミナ焼結体を得る工程と、
を含む透明アルミナ焼結体の製法。
【0013】
但し、質量比R2は、下記式(2)で算出される値であり、単位は質量ppmである。アルミナ原料粉末は、板状アルミナ粉末と微細アルミナ粉末との混合割合が質量比でT:(100−T)である。アルミナ原料粉末に添加物を外配で添加する場合、アルミナ原料粉末に対する添加物の割合をZ(質量%)とする。x1は、板状アルミナ粉末中のF含有率(質量ppm)、x2は、微細アルミナ粉末中のF含有率(質量ppm)、x3は添加物中のF含有率(質量ppm)である。F含有量は、アルカリ融解−イオンクロマトグラフ法で求める。y1は、板状アルミナ粉末中のAl含有率(質量%)、y2は、微細アルミナ粉末中のAl含有率(質量%)である。Al含有率は、各アルミナ粉末のアルミナ純度を100−(Al,O以外の不純物元素の質量%の和)として求め、それに0.529を乗じた値(質量%)とする。不純物元素の質量%は、以下のように定量する。すなわち、Sは燃焼(高周波加熱)−赤外線吸収法、Nは不活性ガス融解−熱伝導度法、Hは不活性ガス融解−非分散型赤外線吸収法、Fはアルカリ融解−イオンクロマトグラフ法、その他の元素はICP発光分析で定量する。y3は、添加物中のAl含有率(質量%)であり、ICP発光分析で定量する。
R2=100×[x1×T+x2×(100-T)+x3×Z]/[y1×T+y2×(100-T)+y3 ×Z}…(2)
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1及び第2の透明アルミナ焼結体の製法によれば、アスペクト比が3以上の板状アルミナ粉末を含む成形用原料を成形し加圧焼成するため、得られるアルミナ焼結体は配向度の高いものとなる。また、アルミナ原料粉末には適量のFが含まれるため、アルミナ原料粉末の焼結性が向上し、アルミナ焼結体が十分に緻密化する。更に、粉末及び/又は成形体の表面からFが揮発する温度で焼成するため、得られるアルミナ焼結体のF含有量をゼロにしたり低く抑えたりすることができる。したがって、得られるアルミナ焼結体は、配向度が高く緻密で高純度のものとなり、高い透明性を有する。また、この製法では、従来のように高磁場を利用する必要がないため、透明アルミナ焼結体の製造コストを低く抑えることができる。更に、透明アルミナ焼結体を容易に製造できるため、大量生産に向いている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】板状アルミナ粒子の模式図で、(a)は平面図、(b)は正面図。
図2】TGG法でアルミナ焼結体を作製する工程の模式図。
図3】アルミナ焼結体のサンプルの外観写真。
図4】アルミナ焼結体の研磨された断面の高倍率写真。
図5】高倍率写真を連続的な写真となるように並べた様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の透明アルミナ焼結体の製法は、
(a)アスペクト比が3以上の板状アルミナ粉末を含むアルミナ原料粉末を、該アルミナ原料粉末中のFのAlに対する質量比R1が5ppm以上(あるいは質量比R2が15ppm以上)となるように調製し、前記アルミナ原料粉末を含む成形用原料を成形して成形体とする工程と、
(b)前記成形体を1700℃以上で加圧焼成することにより透明アルミナ焼結体を得る工程と、
を含むものである。
【0017】
工程(a)では、板状アルミナ粉末を使用する。この板状アルミナ粉末は、アスペクト比が3以上のものである。アスペクト比は、平均粒径/平均厚さである。ここで、平均粒径は、粒子板面の長軸長の平均値、平均厚さは、粒子の短軸長の平均値である。これらの値は、走査型電子顕微鏡(SEM)で板状アルミナ粉末中の任意の粒子100個を観察して決定する。図1は、板状アルミナ粒子の模式図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。板状アルミナ粒子は、平面視したときの形状が略六角形状であり、その粒径は図1(a)に示したとおりであり、厚みは図1(b)に示したとおりである。アスペクト比が3以上の板状アルミナ粉末を含むアルミナ原料粉末を使用することにより、最終的に得られるアルミナ焼結体の配向度が高くなる。板状アルミナ粉末の平均粒径は、高配向化の観点からは大きい方が好ましく、1.5μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましく、15μm以上が特に好ましい。但し、緻密化の観点からは小さい方が好ましく、30μm以下が好ましい。こうしたことから、高配向と緻密化を両立するには平均粒径が1.5μm〜20μmであることが好ましい。
【0018】
板状アルミナ粉末は高純度のものを用いることが好ましい。板状アルミナ粉末の純度は99質量%以上が好ましく、99.9質量%以上がより好ましく、99.99質量%以上が更に好ましい。但し、焼成中に揮発消失する、又は揮発減量する不純物は含んでいてもよく、例えばFやSなどの元素は含まれていてもよい。高純度の板状アルミナ粉末は、例えば、以下の手順で製造することができる。すなわち、まず、ギブサイト、ベーマイト及びγ−アルミナからなる群より選ばれる少なくとも1種の遷移アルミナ粉末とAlF3粉末とを、AlF3の含有率が0.25質量%以上となるように混合して、F,H,C,S以外の不純物元素の質量割合の合計が1000ppm以下の混合粉末を得る。この混合粉末中に種結晶としてα−アルミナ粒子を添加することが好ましい。次に、容器として、混合粉末に含まれるAlF3の質量を容器の体積で除した値(=AlF3質量/容器体積)が1×10-4g/cm3以上になるものを用意する。容器は、Al,O,Mg,N,Re(Re:希土類元素)以外の元素の合計が1質量%以下であることが好ましい。容器の材質は、純度99.5質量%以上のAl23が好ましい。そして、混合粉末を容器に入れて蓋をするか、混合粉末を容器に入れて密閉するか、又は混合粉末を多孔質材料からなる容器に閉じ込め、750〜1650℃で熱処理することにより板状のα−アルミナ粒子で構成された板状アルミナ粉末を得る。こうして得られる板状アルミナ粉末を工程(a)の板状アルミナ粉末として用いることができる。また、この板状アルミナ粉末を大気、不活性又は真空の雰囲気下で600〜1350℃、好ましくは900〜1350℃でアニール処理したものを工程(a)の板状アルミナ粉末として用いることができる。こうして得られる板状アルミナ粉末はアニール処理等の条件によってはAlF3由来の少量のFを含むものとなる。なお、板状アルミナ粉末は、使用する前に粉砕してもよい。
【0019】
工程(a)では、アルミナ原料粉末を使用する。このアルミナ原料粉末は、該アルミナ原料粉末中のFのAlに対する質量比R1が5ppm以上あるいは質量比R2が15ppm以上となるように調製したものである。Fは、アルミナ粉末の焼結を促進する焼結助剤として働く。質量比R1が5ppm未満あるいは質量比R2が15ppm未満だと、焼成時に十分緻密化が進まずアルミナ焼結体に気孔が残り直線透過率が低くなるため、好ましくない。質量比R1,R2の上限は特に限定するものではないが、多すぎると粒成長が過多になって配向度が低下したり、気孔を取り込んだ異常粒子が生成したりして透光性が低くなることがある。こうした観点から、質量比R1は6300ppm以下が好ましく、3000ppm以下がより好ましく、1500ppm以下がより好ましく、1000ppm以下がより好ましく、100ppm以下がより好ましく、50ppm以下がより好ましく、25ppm以下が更に好ましい。質量比R2は10000ppm以下が好ましく、5000ppm以下がより好ましく、2500ppm以下が更に好ましく、1000ppm以下が特に好ましい。質量比R1,R2は上述した式(1)、(2)により求めることができる。
【0020】
アルミナ原料粉末は、アスペクト比が3以上の板状アルミナ粉末そのものでもよいが、この板状アルミナ粉末と平均粒径が板状アルミナ粉末よりも小さい微細アルミナ粉末とを混合した混合アルミナ粉末とするのが好ましい。アスペクト比が3以上の板状アルミナ粉末そのものをアルミナ原料粉末として用いる場合には、平均粒径の小さいもの、例えば平均粒径が1μm以下のものを用いることが好ましい。板状アルミナ粉末と微細アルミナ粉末とを混合した混合アルミナ粉末をアルミナ原料粉末として用いる場合には、成形時に板状アルミナ粒子が配向しやすくなる。また、焼成時に、板状アルミナ粉末が種結晶(テンプレート)となり、微細アルミナ粉末がマトリックスとなって、テンプレートがマトリックスを取り込みながらホモエピタキシャル成長する。こうした製法は、TGG(Templated Grain Growth)法と呼ばれる。板状アルミナ粉末と微細アルミナ粉末との混合割合は、質量比でT:(100−T)(Tは0.001〜50)とすることが好ましい。Tが0.001未満だと得られるアルミナ焼結体の配向度が高くなりにくく、50を超えるとアルミナが焼結しにくくなるおそれがあるからである。配向度の観点ではTは0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1.5以上が更に好ましい。一方、焼結性の観点ではTは15以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下が更に好ましく、2.5以下が特に好ましい。配向度と焼結性を両立する観点では、Tは0.001〜15が好ましく、0.1〜15がより好ましく、0.5〜10がより好ましく、0.5〜5がより好ましく、1.5〜5が更に好ましく、1.5〜2.5が特に好ましい。TGG法でアルミナ焼結体を作製する工程の模式図を図2に示す。TGG法では、板状アルミナ粉末と微細アルミナ粉末の粒径や混合比によって、得られるアルミナ焼結体の微細構造を制御することができ、板状アルミナ粉末単体を焼成する場合に比べて緻密化しやすく、配向度が向上しやすい。
【0021】
工程(a)では、アルミナ原料粉末を含む成形用原料を調製する。成形用原料は、アルミナ原料粉末そのものでもよいが、アルミナ原料粉末に焼結助剤やグラファイト、バインダー、可塑剤、分散剤、分散媒などを適宜添加したものとしてもよい。焼結助剤としては、MgOが好ましい。MgOは、過剰な粒成長を抑制しつつ緻密化を促進するからである。特にアルミナ原料粉末に含まれるFが多いときには粒成長が過剰になりやすいため、MgOを添加する意義が高い。アルミナ原料粉末にMgO粉末を添加する場合、アルミナ原料粉末100質量部に対して、MgO粉末を100〜5000質量ppm添加するのが好ましい。なお、MgO添加形態は、焼成等の過程でMgOに変化するような炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物等のマグネシウム化合物として加えてもよい。このようなマグネシウム化合物の場合、添加量がMgO換算で100〜5000質量ppmとなる限り、粉末でもよいし、液体であってもよい。
【0022】
工程(a)では、成形用原料を成形して成形体とする。成型方法は特に限定するものではないが、例えば、テープ成形、押出成形、鋳込み成形、射出成形、一軸プレス成形等により成形体とする。
【0023】
工程(b)では、成形体をFが揮発する温度で加圧焼成することにより透明アルミナ焼結体を得る。Fは焼結助剤として機能するが、1700℃以上で焼成すると焼結体の表面にはFが残らない。加圧焼成としては、例えばホットプレス焼成やHIP焼成、プラズマ放電焼成(SPS)などが挙げられる。ホットプレス焼成における焼成雰囲気は特に限定はないが、窒素、Ar等の不活性ガス、又は真空雰囲気が好ましい。真空雰囲気における圧力は低い方が良く、1Pa以下が好ましく、0.1Pa以下が更に好ましく、0.01Pa以下が特に好ましく、下限はない。なお、加圧焼成前に常圧予備焼成を行ってもよい。常圧予備焼成時の雰囲気は特に限定はないが、真空雰囲気、窒素、Ar等の不活性ガス、水素ガス、或いは大気が好ましく、真空雰囲気、又は水素ガスが更に好ましく、真空雰囲気が最も好ましい。真空雰囲気における圧力は低い方が良く、1Pa以下が好ましく、0.1Pa以下が更に好ましく、0.01Pa以下が特に好ましく、下限はない。HIP焼成を行うときにはカプセル法を用いることもできる。焼成温度(最高到達温度)は1700〜2050℃が好ましく、1750〜2000℃がより好ましい。ホットプレス焼成の場合の圧力は、50kgf/cm2以上が好ましく、200kgf/cm2以上がより好ましい。HIP焼成の場合の圧力は、1000kgf/cm2以上が好ましく、2000kgf/cm2以上がより好ましい。
【0024】
工程(b)では、最高到達温度からの降温時において、所定温度(1000〜1400℃(好ましくは1100〜1300℃)の範囲で設定された温度)まで50kgf/cm2以上のプレス圧を印加することが好ましい。このようにすることで、得られる焼結体の透明性を高めることができる。最高到達温度でのキープ終了後、直ちに除圧してもある程度の透明性を得ることができるが、プレス圧を印加し続けたまま所定温度まで降温する方が透明性を高くすることができる。その理由は定かではないが、最高到達温度で除圧すると、焼結体中に気孔が発生して透明性を阻害するのではないかと考えられる。また、工程(b)では、所定温度未満の温度域では50kgf/cm2未満の圧力まで除圧することが好ましい。このようにすることで、焼結体中にクラックが入ることを抑制することができる。特に、焼結体のサイズが大きい場合には焼結体中にクラックが入りやすいため、このような除圧を行うことが好ましい。また、ホットプレス焼成やSPS焼成を採用する場合にこのような除圧を行うことが好ましい。以上のように、プレス圧の除圧のタイミングは透明性の観点とクラック抑制の観点からきわめて重要である。これらを両立する除圧のタイミングとしては、降温中の1200℃が特に好ましい。
【0025】
本発明の製法によって得られるアルミナ焼結体は、配向度が高く緻密で高純度のものとなり、高い透明性を有する。配向度についていえば、X線を照射したときの2θ=20°〜70°の範囲におけるX線回折プロファイルを用いてロットゲーリング法により求めたc面配向度が5%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上)のものを得ることが可能となる。緻密さについていえば、任意の断面をイオンミリングによって研磨したあと走査型電子顕微鏡にて倍率5000倍で調べたときの気孔の数がゼロのもの乃至5個以下のものを得ることが可能となる。純度についていえば、Mg,C以外の不純物元素の合計の質量割合が100ppm以下(好ましくは50ppm以下、より好ましくは10ppm以下)のものを得ることが可能となる。アルミナ焼結体に含まれるMg、C、F以外の各不純物元素は10質量ppm以下となるようにすることが好ましい。アルミナ含有量は、便宜上、不純物元素の合計の質量(%)を100から減算した値とすると、99.8質量%以上、好ましくは99.9質量%以上のものを得ることが可能となる。透光性についていえば、アルミナ焼結体から取り出した厚み0.2mmの試料の波長350〜1000nmにおける直線透過率が60%以上(好ましくは70%以上)のものを得ることが可能となる。また、厚み0.5mmの試料の波長300〜1000nmにおける直線透過率が50%以上のものを得ることが可能となる。
【実施例】
【0026】
[実験例1]
1.アルミナ焼結体の作製
(1)板状アルミナ粉末の作製
高純度γ−アルミナ(TM−300D、大明化学製)96質量部と、高純度AlF3(関東化学製、鹿特級)4質量部と、種結晶として高純度α−アルミナ(TM−DAR、大明化学製、D50=1μm)0.17質量部とを、溶媒をIPA(イソプロピルアルコール)としてφ2mmのアルミナボールを用いて5時間ポットミルで混合した。得られた混合粉末中のF,H,C,S以外の不純物元素の質量割合の合計は1000ppm以下であった。得られた混合原料粉末300gを純度99.5質量%の高純度アルミナ製のさや(容積750cm3)に入れ、純度99.5質量%の高純度アルミナ製の蓋をして電気炉内でエアフロー中、900℃、3時間熱処理した。エアの流量は25000cc/minとした。熱処理後の粉末を大気中、1150℃で40時間アニール処理した後、φ2mmのアルミナボールを用いて4時間粉砕して平均粒径2μm、平均厚み0.2μm、アスペクト比10の板状アルミナ粉末を得た。粒子の平均粒径、平均厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)で板状アルミナ粉末中の任意の粒子100個を観察して決定した。平均粒径は、粒子の長軸長の平均値、平均厚みは、粒子の短軸長の平均値、アスペクト比は平均粒径/平均厚みである。得られた板状アルミナ粉末は、α−アルミナであった。
【0027】
上記のようにして得られた板状アルミナ粉末中の不純物元素について、下記方法により定量分析した。そして、板状アルミナ粉末中のFのAlに対する質量比X(質量ppm)及び板状アルミナ粉末中のF含有率x1(質量ppm)を求めた。質量比Xは熱加水分解−イオンクロマトグラフ法で求めたFの質量を用いて算出した値であり、F含有率x1はアルカリ融解−イオンクロマトグラフ法で求めたFの質量を用いて算出した値である。熱加水分解−イオンクロマトグラフ法では主として試料表面のFを測定し、アルカリ融解−イオンクロマトグラフ法では試料を溶融してFを測定するため試料全体のFを測定することになる。実験例1の板状アルミナ粉末の質量比X,F含有率x1はそれぞれ490ppm,5600ppmであった。また、Al以外の不純物元素で検出されたのはFのみであり、他の分析元素はすべて検出限界以下であった。板状アルミナ粉末の純度を(100−F質量(%))として求めたところ、99.97%であった。
C,S:燃焼(高周波加熱)−赤外線吸収法
N:不活性ガス融解−熱伝導度法
H:不活性ガス融解−非分散型赤外線吸収法
F:熱加水分解−イオンクロマトグラフ法、アルカリ融解−イオンクロマトグラフ法
上記以外の不純物元素(主にSi,Fe,Ti,Na,Ca,Mg,K,P,V,Cr,Mn,Co,Ni,Cu,Zn,Y,Zr,Pb,Bi,Li,Be,B,Cl,Sc,Ga,Ge,As,Se,Br,Rb,Sr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Te,Cs,Ba,Hf,Ta,W,Ir,Pt,Au,Hg,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu):ICP発光分析
【0028】
(2)テープ成形
上記(1)で作製した板状アルミナ粉末5質量部と、微細なアルミナ粉末(TM−DAR、平均粒径0.1μm、大明化学製)95質量部とを混合し、混合アルミナ粉末とした。この混合アルミナ粉末100質量部に対し、酸化マグネシウム(500A、宇部マテリアルズ製)0.025質量部(250質量ppm)と、グラファイト粉末(UF−G5、昭和電工製)0.01質量部と、バインダーとしてポリビニルブチラール(品番BM−2、積水化学工業製)7.8質量部と、可塑剤としてジ(2−エチルヘキシル)フタレート(黒金化成製)3.9質量部と、分散剤としてトリオレイン酸ソルビタン(レオドールSP−O30、花王製)2質量部と、分散媒として2−エチルヘキサノールとを加えて混合した。分散媒の量は、スラリー粘度が20000cPとなるように調整した。このようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によってPETフィルムの上に乾燥後の厚さが20μmとなるようにシート状に成形した。得られたテープを口径50.8mm(2インチ)の円形に切断した後150枚積層し、厚さ10mmのAl板の上に載置した後、パッケージに入れて内部を真空にすることで真空パックとした。この真空パックを85℃の温水中で100kgf/cm2の圧力にて静水圧プレスを行い、円板状の成形体を得た。
【0029】
混合アルミナ粉末中のFのAlに対する質量比R1,R2(ppm)はそれぞれ上記式(1),(2)より求めた。実験例1では混合アルミナ粉末の質量比R1,R2はそれぞれ24ppm,529ppmであった。
【0030】
(3)焼成
得られた成形体を脱脂炉中に配置し、600℃で10時間の条件で脱脂を行った。得られた脱脂体を黒鉛製の型を用い、ホットプレスにて窒素中1800℃で4時間、面圧200kgf/cm2の条件で焼成し、アルミナ焼結体を得た。得られたアルミナ焼結体のサンプルの外観写真を図3に示した。図3に描かれたNGKのロゴ入りマークは日本碍子(株)の登録商標である。
【0031】
なお、上記1.(1)、(2)が本発明の工程(a)に相当し、上記1.(3)が本発明の工程(b)に相当する。
【0032】
2.アルミナ焼結体の特性
(1)c面配向度
得られたアルミナ焼結体の配向度を確認するため、円板状のアルミナ焼結体の上面に対して平行になるように研磨加工した後、その研磨面に対してX線を照射しc面配向度を測定した。XRD装置(リガク製、RINT−TTR III)を用い、2θ=20〜70°の範囲でXRDプロファイルを測定した。具体的には、CuKα線を用いて電圧50kV、電流300mAという条件で測定した。c面配向度は、ロットゲーリング法によって算出した。具体的には、以下の式により算出した。c面とはアルミナの(006)面である。式中、Pは作製したアルミナ焼結体のXRDから得られた値であり、P0は標準α−アルミナ(JCPDSカードNo.46−1212)から算出された値である。実験例1のアルミナ焼結体のc面配向度は99.7%であった。
【0033】
【数1】
【0034】
(2)気孔数(密度)
得られたアルミナ焼結体の任意の断面をクロスセクションポリッシャ(CP)(日本電子製、IB−09010CP)で研磨した。CPはイオンミリングの範疇に属する。CPを用いたのは、研磨面に脱粒が生じないからである。得られた断面を走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM−6390)にて撮影した。具体的には、図4のような縦19.0μm×横25.4μmの視野を倍率5000倍で撮影した写真を、図5のように縦6枚分、横5枚分の連続的な写真(縦114μm×横127μm)となるように並べ、目視により気孔の数をカウントした。気孔と気孔でない部分とは、明暗がはっきりしているため目視で容易に区別することができる。実験例1のアルミナ焼結体で確認された気孔数は0個であった。また、縦223.4μm×横321.4μmの視野を倍率500倍で撮影した写真を、縦6枚分、横5枚分の連続的な写真(縦1340.4μm×横1607.0μm)となるように並べ、目視により直径1μm以上の気孔の数をカウントした。この場合、実験例1のアルミナ焼結体で確認された気孔数は2個であった。
【0035】
(3)不純物量
アルミナ焼結体を純度99.9%のアルミナ乳鉢で粉砕した後、不純物元素を下記方法により定量分析した。そして、アルミナ焼結体中のMg,C以外の不純物元素の合計の質量割合(ppm)、アルミナ焼結体に含まれるMg,Cの質量割合(ppm)を求めた。実験例1のアルミナ焼結体のMg,C以外の不純物元素は、いずれも検出限界以下であり、Mgが114ppm、Cが40ppm検出された。
C,S:燃焼(高周波加熱)−赤外線吸収法
N:不活性ガス融解−熱伝導度法
H:不活性ガス融解−非分散型赤外線吸収法
F:熱加水分解−イオンクロマトグラフ法
上記以外の不純物元素(主にSi,Fe,Ti,Na,Ca,Mg,K,P,V,Cr,Mn,Co,Ni,Cu,Zn,Y,Zr,Pb,Bi,Li,Be,B,Cl,Sc,Ga,Ge,As,Se,Br,Rb,Sr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Te,Cs,Ba,Hf,Ta,W,Ir,Pt,Au,Hg,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu):ICP発光分析
【0036】
(4)Al23含有量
アルミナ焼結体のAl23含有量(質量%)は、上述した定量分析で得られた、アルミナ焼結体中のAl、O以外の元素の質量%の和Sを算出し、100−Sにより便宜的に求めた。実験例1のアルミナ焼結体のAl23含有量は99.98質量%であった。
【0037】
(5)直線透過率
得られたアルミナ焼結体を、10mm×10mmの大きさに切り出し、φ68mmの金属製定盤の最外周部に90°おきに4個固定し、SiC研磨紙上で、金属製定盤と研磨治具の荷重のみ(合わせて1314g)をかけた状態で#800で10分、#1200で5分ラップ研磨(予備研磨)した。その後、セラミック定盤上でダイヤモンド砥粒を用いたラップ研磨を行った。ラップ研磨は、砥粒サイズ1μmで30分、その後、砥粒サイズ0.5μmで2時間行った。研磨後の10mm×10mm×0.2mm厚の試料をアセトン、エタノール、イオン交換水の順でそれぞれ3分間洗浄した後、分光光度計(Perkin Elmer製、Lambda900)を用いて波長350〜1000nmにおける直線透過率を測定した。実験例1のアルミナ焼結体の波長350〜1000nmにおける直線透過率は80.3%以上であった。また、0.5mm厚の試料の波長300〜1000nmにおける直線透過率は66.0%以上であった。
【0038】
実験例1のアルミナ焼結体の製造条件及び特性を表1にまとめた。
【0039】
【表1】
【0040】
[実験例2]
板状アルミナ粉末を作製する際のアニール温度を1180℃としたこと以外は実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。熱処理温度が高くFの揮発量が増加したため、混合アルミナ粉末の質量比R1,R2はそれぞれ11,491であった。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(5)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0041】
[実験例3]
テープ成形の際の板状アルミナ粉末と微細アルミナ粉末との混合比を質量比で1.5:98.5としたこと以外は実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。Fを含有する板状アルミナ粉末の混合割合を低くしたため、混合アルミナ粉末の質量比R1,R2はそれぞれ7,159であった。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(5)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0042】
[実験例4]
テープ成形の際の酸化マグネシウムの添加量を2500質量ppmとしたこと以外は実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(5)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0043】
[実験例5]
焼成の際に酸化マグネシウムを添加しなかったこと以外は実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(5)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0044】
[実験例6]
板状アルミナ粉末を作製する際にアニール温度を1200℃としたこと、テープ成形の際にAlF3を0.025質量部添加(外配)したこと以外は実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。混合アルミナ粉末の質量比R2は652であった。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(5)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0045】
[実験例7]
焼成の際に常圧大気焼成を行ったあとHIP焼成を行ったこと以外は実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。アルミナ原料粉末の質量比R1,R2はそれぞれ24,529であった。常圧大気焼成の条件は、1350℃で4時間保持とした。また、HIP焼成の条件は、Arを圧力媒体とし、圧力185MPaで1800℃、2時間保持とした。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(5)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0046】
[実験例8]
板状アルミナ粉末を作製する際に板状アルミナ粉末のアニール処理を行わなかったこと以外は実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。板状アルミナ粉末に多くのFが残ったため、アルミナ原料粉末の質量比R1,R2はそれぞれ1439,2271であった。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(5)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0047】
[実験例9]
板状アルミナ粉末を作製する際のアニール温度を1200℃としたこと以外は実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。熱処理温度が高くFの揮発量が増加したため、混合アルミナ粉末の質量比R1,R2はそれぞれ5,331であった。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(5)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0048】
[実験例10]
板状アルミナ粉末を作製する際のアニール温度を900℃としたこと、及びホットプレス焼成温度を1650℃としたこと以外は実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。混合アルミナ粉末の質量比R1,R2はそれぞれ343,747であった。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(5)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0049】
[実験例11]
テープ成形の際にアルミナ原料粉末を微細アルミナ粉末であるTM−DARのみとし、混合時にフッ化アルミニウム粉末を0.004質量部添加(外配)したこと以外は実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。アルミナ原料粉末の質量比R2は51であった。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(5)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0050】
[実験例12]
焼成方法を常圧大気1700℃としたこと以外は実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。混合アルミナ粉末の質量比R1,R2はそれぞれ24,529であった。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(5)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0051】
[評価]
実験例1〜7,9では、板状アルミナ粉末を含むアルミナ原料粉末を、該アルミナ原料粉末中のFのAlに対する質量比R1が5ppm以上、質量比R2が15ppm以上となるように調製し、このアルミナ原料粉末を含む成形用原料をテープ成形した後、1700℃以上で加圧焼成(ホットプレス焼成又はHIP焼成)した。そのため、実験例1〜7,9のアルミナ焼結体は、c面配向度が90%以上、気孔の数は視野114×127μmの範囲では0個、視野1340.4×1607.0μmの範囲では0〜2個、Mg,C以外の不純物元素の合計は100ppm以下、アルミナ含有量が99.8質量%以上であり、高配向、高緻密性かつ高純度のアルミナ焼結体であった。また、0.2mm厚で350〜1000nmの直線透過率が60%以上、0.5mm厚で300〜1000nmの直線透過率が50%以上であり、高い透光性を示した。実験例8では、混合アルミナ粉末中のR1,R2が高かったため、得られたアルミナ焼結体は、粒成長がやや過剰となってc面配向度や直線透過率はやや低くなったものの、高配向、高緻密性かつ高純度と呼べるものであった。
【0052】
一方、実験例10では、焼成温度が低すぎたため、得られたアルミナ焼結体は、c面配向度が低く気孔も多く残り、直線透過率が非常に低くなった。実験例11では、板状アルミナ粉末を使用しなかったため、得られたアルミナ焼結体は、c面配向度が極めて低くなり、十分な直線透過率が得られなかった。実験例12では、加圧焼成ではなく常圧大気焼成を採用したため、得られたアルミナ焼結体は、c面配向度が低く気孔も多く残り、直線透過率が非常に低くなった。
【0053】
[実験例13〜22]
テープ成形の際の板状アルミナ粉末と微細アルミナ粉末との混合比、MgO量、焼成の際の焼成温度を表2の通りとし、焼成温度から降温する際に1200℃までプレス圧を維持し、1200℃未満の温度域ではプレス圧をゼロに開放した以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(5)の特性を求めた。その結果を表2に示した。
【0054】
【表2】
【0055】
[実験例23〜25]
テープ成形の際の板状アルミナ粉末と微細アルミナ粉末との混合比、MgO量、焼成の際の焼成温度を表2の通りとし、焼成温度から降温する際に1200℃までプレス圧を維持し、1200℃未満の温度域ではプレス圧をゼロに開放した以外は、実験例8と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(5)の特性を求めた。その結果を表2に示した。
【0056】
[実験例26,27]
板状アルミナ粉末を作製する際のアニール条件を900℃3時間エアフロー(エアの流量は25000cc/min)とし、テープ成形の際の板状アルミナ粉末と微細アルミナ粉末との混合比、焼成の際の焼成温度を表2の通りとし、焼成温度から降温する際に1200℃までプレス圧を維持し、1200℃未満の温度域ではプレス圧をゼロに開放した以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(5)の特性を求めた。その結果を表2に示した。
【0057】
[実験例28]
テープ成形の際のアルミナ原料粉末を微細アルミナ粉末のみとすると共にF含有量をゼロとし、焼成の際の焼成温度を表2の通りとし、焼成温度から降温する際に1200℃までプレス圧を維持し、1200℃未満の温度域ではプレス圧をゼロに開放した以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(5)の特性を求めた。その結果を表2に示した。
【0058】
[評価]
実験例13〜27では、板状アルミナ粉末を含むアルミナ原料粉末を、該アルミナ原料粉末中のFのAlに対する質量比R1が5ppm以上、質量比R2が15ppm以上となるように調製し、このアルミナ原料粉末を含む成形用原料をテープ成形した後、1700℃以上で加圧焼成(ホットプレス焼成)した。そのため、実験例13〜27のアルミナ焼結体は、c面配向度が5%以上、気孔の数は視野114×127μmの範囲では0〜4個、視野1340.4×1607.0μmの範囲では0〜17個、Mg,C以外の不純物元素の合計は100ppm以下、アルミナ含有量が99.8質量%以上であり、高配向、高緻密性かつ高純度のアルミナ焼結体であった。また、0.2mm厚で350〜1000nmの直線透過率が70%以上、0.5mm厚で300〜1000nmの直線透過率が60%以上であり、高い透光性を示した。
【0059】
一方、実験例28では、板状アルミナ粉末を使用しなかったため、得られたアルミナ焼結体は、c面配向度が極めて低くなり、十分な直線透過率が得られなかった。
【0060】
なお、実験例1〜28のうち、本発明の実施例に相当するのは実験例1〜9,13〜27である。本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の態様で実施することができる。
【0061】
本出願は、2014年11月28日に出願された日本国特許出願第2014−241685号及び2015年5月13日に出願された日本国特許出願第2015−98524号を優先権主張の基礎としており、引用によりそれらの内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、例えば、高圧ナトリウムランプ用発光管や高耐熱窓材、半導体装置用部材、光学部品用基板等に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5