特許第6621567号(P6621567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6621567圧電性材料基板と支持基板との接合体および弾性波素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621567
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】圧電性材料基板と支持基板との接合体および弾性波素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/313 20130101AFI20191209BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20191209BHJP
   H01L 41/053 20060101ALI20191209BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20191209BHJP
   H01L 41/337 20130101ALI20191209BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   H01L41/313
   H01L41/187
   H01L41/053
   H01L41/09
   H01L41/337
   H03H9/25 C
【請求項の数】3
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-514134(P2019-514134)
(86)(22)【出願日】2018年11月16日
(86)【国際出願番号】JP2018042433
(87)【国際公開番号】WO2019130895
(87)【国際公開日】20190704
【審査請求日】2019年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2017-252872(P2017-252872)
(32)【優先日】2017年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】堀 裕二
(72)【発明者】
【氏名】山寺 喬紘
(72)【発明者】
【氏名】高垣 達朗
【審査官】 宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/186661(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/163722(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/043615(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/313
H01L 41/053
H01L 41/09
H01L 41/187
H01L 41/337
H03H 9/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板、
ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムおよびニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウムからなる群より選ばれた材質からなる圧電性材料基板、および
前記支持基板と前記圧電性材料基板とを接合する接合層
を備えている接合体であって、
前記接合層の材質が酸化珪素であり、前記接合層を、圧電性材料基板側接合部、支持基板側接合部および前記圧電性材料基板側接合部と前記支持基板側接合部との間の中間部に分けたとき、
前記中間部における窒素濃度が1×1019atoms/cm3以上、5×1020atoms/cm3以下であり、前記圧電性材料基板側接合部における窒素濃度および前記支持基板側接合部における窒素濃度が9×1018atoms/cm3以下であり、
前記中間部における炭素濃度が1×1019atoms/cm3以上、5×1020atoms/cm3以下であり、前記圧電性材料基板側接合部における炭素濃度および前記支持基板側接合部における炭素濃度が3×1018atoms/cm3以下であることを特徴とする、接合体。
【請求項2】
前記中間部におけるフッ素濃度が、前記圧電性材料基板側接合部におけるフッ素濃度および前記支持基板側接合部におけるフッ素濃度よりも高いことを特徴とする、請求項1記載の接合体。
【請求項3】
前記圧電性材料基板の厚さが4.0μm以下であることを特徴とする、請求項1または2記載の接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電性材料基板と支持基板との接合体および弾性波素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高性能な半導体素子を実現する目的で、高抵抗Si/SiO2薄膜/Si薄膜からなるSOI基板が広く用いられている。SOI基板を実現するにあたりプラズマ活性化が用いられる。これは比較的低温(400℃)で接合できるためである。圧電デバイスの特性向上を狙い、類似のSi/SiO2薄膜/圧電薄膜からなる複合基板が提案されている(特許文献1)。特許文献1では、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムからなる圧電性材料基板と、酸化珪素層を設けたシリコン基板とをイオン注入法によって活性化した後に接合する。
【0003】
接合界面に単一または複数の誘電膜を形成する多層構造のフィルターも提案されている(特許文献2)。しかし、タンタル酸リチウム/酸化珪素/珪素の構造を実現するための接合技術に関する公知情報はほとんどない。
【0004】
特許文献3には、タンタル酸リチウムとサファイアやセラミックスとを、酸化珪素層を介してプラズマ活性化法により接合することが記載されている。
【0005】
非特許文献1には、タンタル酸リチウム基板と、酸化珪素層を設けたシリコン基板とを、O2のRIE(13.56MHz)プラズマとN2のmicrowave(2.45GHz)プラズマを続けざまに照射することで接合することが記載されている。
【0006】
SiとSiO2/Siのプラズマ活性化接合においては、その接合界面でSi-O-Si結合が形成されることで十分な接合強度が得られる。また同時にSiがSiO2に酸化されることで平滑度が向上し、最表面で上記接合が促進される(非特許文献2)。
【0007】
なお、特許文献4に記載の弾性表面波素子では、圧電性材料基板と支持基板との間に、高音速膜と低音速膜とを設けることによって、弾性表面波のエネルギーが支持基板に漏れることを防止することを提案している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ECS Transactions, 3 (6) 91-98 (2006)
【非特許文献2】J. Applied Physics 113, 094905 (2013)
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016-225537
【特許文献2】特許 5910763
【特許文献3】特許第3774782号
【特許文献4】特許 5713025
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、先行文献の通り、イオン注入により、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウム基板を薄くすることで圧電素子を作製した場合には、特性が低いという問題があった。これは、イオン注入時のダメージにより結晶性が劣化することに起因すると考えられる。
【0011】
一方、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムなどの圧電性材料基板をシリコン基板上の酸化珪素膜に接合した後に、圧電性材料基板を研磨することで薄くする場合には、加工変質層をCMPにより取り除くことができるので、素子特性は劣化しない。しかし、研磨加工によって圧電性材料基板の厚さを小さくしていくと、得られた接合体の特性が劣化することがあった。特に接合体を弾性波素子として用いる場合、弾性波素子としての特性、特に共振周波数fsでのアドミタンスと反共振周波数frでのアドミタンスとの比率(アドミタンス比)が低下することがわかった。
【0012】
本発明の課題は、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムおよびニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウムからなる群より選ばれた材質からなる圧電性材料基板と支持基板とを酸化珪素層を介して接合するのに際して、接合体の特性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
支持基板、
ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムおよびニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウムからなる群より選ばれた材質からなる圧電性材料基板、および
前記支持基板と前記圧電性材料基板とを接合する接合層
を備えている接合体に係る
【0014】
ここで、この接合層の材質が酸化珪素であり、前記接合層を、圧電性材料基板側接合部、支持基板側接合部および前記圧電性材料基板側接合部と前記支持基板側接合部との間の中間部に分けたとき、
前記中間部における窒素濃度が1×1019atoms/cm3以上、5×1020atoms/cm3以下であり、前記圧電性材料基板側接合部における窒素濃度および前記支持基板側接合部における窒素濃度が9×1018atoms/cm3以下であり、
前記中間部における炭素濃度が1×1019atoms/cm3以上、5×1020atoms/cm3以下であり、前記圧電性材料基板側接合部における炭素濃度および前記支持基板側接合部における炭素濃度が3×1018atoms/cm3以下であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、
前記接合体、および前記圧電性材料基板上に設けられた電極を備えることを特徴とする、弾性波素子に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明者は、ニオブ酸リチウム等からなる圧電性材料基板と支持基板とを酸化珪素層を介して接合するのに際して、接合体の特性が劣化する理由を検討した。特に、共振周波数fsでのアドミタンスと反共振周波数frでのアドミタンスとの比率(アドミタンス比)が低下する理由について検討した。
【0017】
圧電性材料基板と支持基板との間の接合層を酸化珪素によって形成する場合、圧電性材料基板(例えばニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウム)を伝搬するバルク波の音速よりも、酸化珪素(接合層)中を伝搬するバルク波の音速が低い。このため、圧電性材料基板から接合層を通して支持基板へと伝搬エネルギーが漏洩し、伝搬特性を劣化させたものと考えられる。
【0018】
ここで、本発明者は、接合層のうち圧電性材料基板側に窒素濃度の相対的に高い部分を設けることで、相対的に高音速な部分を設け、支持基板側には、窒素濃度の相対的に低い低音速な部分を設ける構造を想到した。この結果、圧電性材料基板を伝搬する弾性波の支持基板への漏れを抑制できることを見いだした。
【0019】
また、本発明者は、接合層のうち中間部に窒素濃度および炭素濃度の相対的に高い部分を設けることで、相対的に高音速な部分を設け、支持基板側および圧電性材料基板側には、窒素濃度および炭素濃度の相対的に低い低音速な部分を設ける構造を想到した。この結果、圧電性材料基板を伝搬する弾性波の支持基板への漏れを抑制し、低損失な素子を提供できることを見いだした。
【0020】
なお、特許文献4に記載の弾性表面波素子では、圧電性材料基板と支持基板との間に、高音速膜と低音速膜とを設けることによって、弾性表面波のエネルギーが支持基板に漏れることを防止することを提案している。また、高音速膜として窒化珪素が例示され、低音速膜として酸化珪素が例示されている。しかし、圧電性材料基板と支持基板との間の酸化珪素を材質とする接合層中において、上述のように窒素濃度の相対的に高い層状部位を設けることで、圧電性材料基板を伝搬する弾性波のエネルギーの漏れを抑制することは記載されていない。
【0021】
更に、支持基板上に酸化珪素膜を設け、この酸化珪素膜の接合面および圧電性材料基板の接合面に対して150℃以下で窒素プラズマを照射して活性化した後で、圧電性材料基板の接合面を酸化珪素層の接合面に対して接合することで、酸化珪素を材質とする接合層の圧電性材料基板側部分に窒素濃度の高い領域を生成できることを見いだした。
【0022】
また、支持基板および圧電性材料基板上にそれぞれ酸化珪素膜を設け、各酸化珪素膜の各接合面に対して150℃以下で窒素プラズマを照射して活性化した後で、支持基板上の酸化珪素膜と圧電性材料基板上の酸化珪素膜とを直接接合することで、酸化珪素を材質とする接合層の中間部に窒素濃度および炭素濃度の高い領域を生成できることを見いだした。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(a)は、圧電性材料基板1を示し、(b)は、圧電性材料基板1の接合面にプラズマAを照射して活性化面5を生成させた状態を示す。
図2】(a)は、支持基板3上に酸化珪素膜4を設けた状態を示し、(b)は、酸化珪素膜4の接合面に対してプラズマBを照射している状態を示す。
図3】(a)は、圧電性材料基板1と支持基板3との接合体8を示し、(b)は、接合体8Aの圧電性材料基板1を加工によって薄くした状態を示し、(c)は弾性波素子11を示す。
図4】(a)は、圧電性材料基板1を示し、(b)は、圧電性材料基板1上に酸化珪素膜12を設けた状態を示し、(c)は、酸化珪素膜12の接合面に対してプラズマAを照射して活性化した状態を示す。
図5】(a)は、圧電性材料基板1と支持基板3との接合体18を示し、(b)は、接合体18Aの圧電性材料基板1を加工によって薄くした状態を示し、(c)は、弾性波素子21を示す。
図6】弾性波素子の典型的な共振特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
図1図3は、本発明の第一の態様に係るものである。
まず、図1(a)に示すように、一対の主面1a、1bを有する圧電性材料基板1を準備する。次いで、図1(b)に示すように、圧電性材料基板1の接合面1aに対して矢印Aのようにプラズマを照射し、表面活性化された接合面5を得る。
【0025】
一方、図2(a)に示すように、支持基板3の表面3aに酸化珪素膜4を形成する。次いで、図2(b)に示すように、酸化珪素膜4の表面4aに対して矢印Bのようにプラズマを照射することによって表面活性化し、活性化された接合面6を形成する。
【0026】
次いで、圧電性材料基板1上の活性化された接合面5と、支持基板3上の酸化珪素膜4の活性化された接合面6とを接触させ、直接接合し、図3(a)に示す接合体8を得ることができる。ここで、支持基板3と圧電性材料基板1との間には、酸化珪素を材質とする接合層7が生成している。接合層7を、圧電性材料基板側接合部7aと支持基板側接合部7bとに分けたとき、圧電性材料基板側接合部7aにおける窒素濃度が、支持基板側接合部7bにおける窒素濃度よりも高くなっている。圧電性材料基板側接合部7aは圧電性材料基板1に接しており、支持基板側接合部7bは支持基板3に接している。
【0027】
この状態で、圧電性材料基板1上に電極を設けても良い。しかし、好ましくは、図3(b)に示すように、圧電性材料基板1の主面1bを加工して基板1を薄くし、薄板化された圧電性材料基板1Aを得る。9は加工面である。次いで、図3(c)に示すように、接合体7Aの圧電性材料基板1Aの加工面9上に所定の電極10を形成し、弾性波素子11を得ることができる。
【0028】
本態様の発明においては、接合層7の材質が酸化珪素であり、接合層7を圧電性材料基板側接合部7aと支持基板側接合部7bとに分けたとき、圧電性材料基板側接合部7aにおける窒素濃度N7aが支持基板側接合部における窒素濃度N7bよりも高い。この本発明の観点からは、圧電性材料基板側接合部7aにおける窒素濃度N7aの支持基板側接合部における窒素濃度N7bに対する比率(N7a/N7b)は、10以上が好ましく、100以上が更に好ましい。ただし、実際上の観点からは、比率(N7a/N7b)は、
1000以下であることが好ましい。
【0029】
本発明の観点からは、圧電性材料基板側接合部7aにおける窒素濃度N7aは、1E19atoms/cm3以上が好ましく、5E19atoms/cm3以上が更に好ましい。また、窒素濃度N7aは8E20atoms/cm3以下であってよい。また、接合層の支持基板側接合部における窒素濃度N7bは、4E17〜7E18atoms/cm3が好ましい。なお、「1E19」は、「1×1019」を示しており、他の数値も同様である。
【0030】
ただし,接合層7を厚さ方向に向かって二分することで、圧電性材料基板側接合部7aと支持基板側接合部7bとに分け、各接合部の厚さは同じにするものとする。また、圧電性材料基板側接合部7aは圧電性材料基板1に対して接しており、支持基板側接合部7bは支持基板3に対して接している。
【0031】
好適な実施形態においては、圧電性材料基板側接合部7aにおける炭素濃度C7aが支持基板側接合部7bにおける炭素濃度C7bよりも高い。この観点からは、圧電性材料基板側接合部7aにおける炭素濃度C7aの支持基板側接合部における炭素濃度C7bに対する比率(C7a/C7b)は、10以上が好ましく、100以上が更に好ましい。ただし、実際上の観点からは、比率(C7a/C7b)は、1000以下であることが好ましい。
【0032】
本実施形態の観点からは、圧電性材料基板側接合部7aにおける炭素濃度C7aは、1E19atoms/cm3以上が好ましく、5E19atoms/cm3以上が更に好ましい。また、炭素濃度C7aは、1E21atoms/cm3以下であってよい。また、接合層7の支持基板側接合部7bにおける炭素濃度C7bは、1E17〜3E18atoms/cm3が好ましい。
【0033】
好適な実施形態においては、圧電性材料基板側接合部7aにおけるフッ素濃度F7aが支持基板側接合部7bにおけるフッ素濃度F7bよりも高い。この観点からは、圧電性材料基板側接合部7aにおけるフッ素濃度F7aの支持基板側接合部7bにおけるフッ素濃度F7bに対する比率(F7a/F7b)は、5以上が好ましく、50以上が更に好ましい。ただし、実際上の観点からは、比率(F7a/F7b)は、500以下であることが好ましい。
【0034】
本実施形態の観点からは、圧電性材料基板側接合部7aにおけるフッ素濃度F7aは、3E18atoms/cm3以上が好ましく、6E18atoms/cm3以上が更に好ましい。また、フッ素濃度C7aは 2E20atoms/cm3以下であってよい。また、接合層7の支持基板側接合部7bにおけるフッ素濃度F7bは、1E17〜2E18atoms/cm3が好ましい。
【0035】
図2図4図5は、本発明の第二の態様に係るものである。
まず、図4(a)に示すように、一対の主面1a、1bを有する圧電性材料基板1を準備する。次いで、図4(b)に示すように、圧電性材料基板1の一方の主面1a上に酸化珪素膜12を成膜する。次いで、図4(c)に示すように、酸化珪素膜12の接合面12aに対して矢印Aのようにプラズマを照射し、表面活性化された接合面13を得る。
【0036】
一方、図2(a)に示すように、支持基板3の表面3aに酸化珪素膜4を形成する。次いで、図2(b)に示すように、酸化珪素膜4の表面4aに対して矢印Bのようにプラズマを照射することによって表面活性化し、活性化された接合面6を形成する。
【0037】
次いで、圧電性材料基板上の酸化珪素膜12の活性化された接合面13と、支持基板上の酸化珪素膜4の活性化された接合面6とを接触させ、直接接合することによって、図5(a)に示す接合体18を得る。ここで、酸化珪素膜12と酸化珪素膜4とが直接接合によって一体化し、酸化珪素層17が生成する。
【0038】
接合層17を、圧電性材料基板側接合部17aと支持基板側接合部17cと中間部17bとに分けたとき、中間部17bにおける窒素濃度が、圧電性材料基板側接合部17aにおける窒素濃度および支持基板側接合部17cにおける窒素濃度よりも高くなっている。圧電性材料基板側接合部17aは圧電性材料基板1に接しており、支持基板側接合部17cは支持基板3に接している。
【0039】
この状態で、圧電性材料基板1上に電極を設けても良い。しかし、好ましくは、図5(b)に示すように、圧電性材料基板1の主面1bを加工して基板1を薄くし、薄板化された圧電性材料基板1Aを得る。9は加工面である。次いで、図5(c)に示すように、接合体18Aの圧電性材料基板1Aの加工面9上に所定の電極10を形成し、弾性波素子21を得ることができる。
【0040】
本態様の発明においては、接合層17の材質が酸化珪素であり、接合層17を圧電性材料基板側接合部17a、中間部17b、支持基板側接合部17cに分けたとき、中間部17bにおける窒素濃度N17bが、圧電性材料基板側接合部17aにおける窒素濃度N17aおよび支持基板側接合部17cにおける窒素濃度N17cよりも高い。この本発明の観点からは、中間部17bにおける窒素濃度N17bの、圧電性材料基板側接合部17aにおける窒素濃度N17aに対する比率(N17b/N17a)および支持基板側接合部17cにおける窒素濃度N17cに対する比率(N17b/N17c)は、10以上が好ましく、100以上が更に好ましい。また、比率(N17b/N17a)および比率(N17b/N17c)は、
実際上の観点からは、1000以下であることが更に好ましい。
【0041】
ただし、接合層17を厚さ方向に向かって三分することで、圧電性材料基板側接合部17a、中間部17b、支持基板側接合部17cに分け、各接合部17a、17b、17cの厚さは同じにするものとする。また、圧電性材料基板側接合部17aは圧電性材料基板1Aに対して接しており、支持基板側接合部17cは支持基板3に対して接している。
【0042】
本発明の観点からは、中間部17bにおける窒素濃度N17bは、1E19atoms/cm3以上であることが好ましく、5E19atoms/cm3以上であることが更に好ましい。また、窒素濃度N17bは、 5E20atoms/cm3以下であることが好ましい。圧電性材料基板側接合部17aにおける窒素濃度N17aおよび支持基板側接合部17cにおける窒素濃度N17cは、9E18atoms/cm3以下であることが好ましい。また、窒素濃度N17a、N17cは、4E17atoms/cm3以上であってよい。
【0043】
本実施形態においては、中間部17bにおける炭素濃度C17bが、圧電性材料基板側接合部17aにおける炭素濃度C17aおよび支持基板側接合部17cにおける炭素濃度C17cよりも高い。本発明の観点からは、中間部17bにおける炭素濃度C17bの、圧電性材料基板側接合部17aにおける炭素濃度C17aに対する比率(C17b/C17a)および支持基板側接合部17cにおける炭素濃度C17cに対する比率(C17b/C17c)は、10以上が好ましく、100以上が更に好ましい。また、比率(C17b/C17a)および比率(C17b/C17c)は、実際上の観点からは、1000以下であることが更に好ましい。
【0044】
本発明の観点からは、中間部17bにおける炭素濃度C17bは、1E19atoms/cm3以上が好ましく、5E19atoms/cm3以上が更に好ましい。また、炭素濃度C17bは、5E20atoms/cm3以下であることが好ましい。圧電性材料基板側接合部17aにおける炭素濃度C17aおよび支持基板側接合部17cにおける炭素濃度C17cは、3E18atoms/cm3以下であることが好ましい。また、炭素濃度C17a、C17cは、1E17 atoms/cm3以上であってよい。
【0045】
本実施形態においては、中間部17bにおけるフッ素濃度F17bが、圧電性材料基板側接合部17aにおけるフッ素濃度F17aおよび支持基板側接合部17cにおけるフッ素濃度F17cよりも高い。本発明の観点からは、中間部17bにおけるフッ素濃度F17bの、圧電性材料基板側接合部17aにおけるフッ素濃度F17aに対する比率(F17b/F17a)および支持基板側接合部17cにおけるフッ素濃度F17cに対する比率(F17b/F17c)は、5以上であることが好ましく、50以上であることが更に好ましい。また、比率(F17b/F17a)および比率(F17b/F17c)は、実際上の観点からは、500以下であることが更に好ましい。
【0046】
本発明の観点からは、中間部17bにおけるフッ素濃度F17bは、3E18atoms/cm3以上が好ましく、6E18atoms/cm3以上が更に好ましい。また、フッ素濃度F17bは、8E19atoms/cm3以下であることが好ましい。圧電性材料基板側接合部17aにおけるフッ素濃度F17aおよび支持基板側接合部17cにおけるフッ素濃度F17cは、2E18atoms/cm3以下であることが好ましい。また、フッ素濃度F17a、F17cは、1E17atoms/cm3以上であってよい。
【0047】
以下、本発明の各構成要素について順次述べる。
支持基板3の材質は特に限定されないが、好ましくは、シリコン、水晶、サイアロン、ムライト、サファイアおよび透光性アルミナからなる群より選ばれた材質からなる。これによって、弾性波素子11、21の周波数の温度特性を一層改善することができる。
【0048】
支持基板3上、および必要に応じて圧電性材料基板1上に酸化珪素膜4、12を形成する。各酸化珪素膜4、12の成膜方法は限定されないが、スパッタリング、化学的気相成長法(CVD)、蒸着を例示できる。好ましくは支持基板3がシリコン基板であり、この場合にはシリコン基板表面への酸素のスパッタリングやイオン注入、酸化雰囲気下での加熱によって酸化珪素膜4を形成できる。
【0049】
酸化珪素膜4、12の厚さは、本発明の観点からは、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることが更に好ましく、0.2μm以上であることが特に好ましい。また、酸化珪素膜の厚さは、3μm以下であることが好ましく、2.5μm以下が好ましく、2.0μm以下が更に好ましい。
【0050】
本発明で用いる圧電性材料基板1は、タンタル酸リチウム(LT)単結晶、ニオブ酸リチウム(LN)単結晶、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体とする。これらは弾性波の伝搬速度が速く、電気機械結合係数が大きいため、高周波数且つ広帯域周波数用の弾性表面波デバイスとして適している。
【0051】
また、圧電性材料基板1の主面の法線方向は、特に限定されないが、例えば、圧電性材料基板1がLTからなるときには、弾性表面波の伝搬方向であるX軸を中心に、Y軸からZ軸に32〜55°回転した方向のもの、オイラー角表示で(180°,58〜35°,180°)、を用いるのが伝搬損失が小さいため好ましい。圧電性材料基板1がLNからなるときには、(ア)弾性表面波の伝搬方向であるX軸を中心に、Z軸から-Y軸に37.8°回転した方向のもの、オイラー角表示で(0°,37.8°,0°)を用いるのが電気機械結合係数が大きいため好ましい、または、(イ)弾性表面波の伝搬方向であるX軸を中心に、Y軸からZ軸に40〜65°回転した方向のもの、オイラー角表示で(180°,50〜25°,180°)を用いるのが高音速がえられるため好ましい。更に、圧電性材料基板1の大きさは、特に限定されないが、例えば、直径100〜200mm,厚さが0.15〜1μmである。
【0052】
次いで、圧電性材料基板1の接合面1a、圧電性材料基板1上の酸化珪素膜12の接合面12a、支持基板3上の酸化珪素膜4の接合面4aに150℃以下でプラズマを照射し、接合面1a、4a、12aを活性化させる。本発明の観点からは、窒素プラズマを照射することが好ましいが、酸素プラズマを照射した場合にも、本発明の接合体8A、18Aを得ることが可能である。
表面活性化時の圧力は、100Pa以下が好ましく、80Pa以下が更に好ましい。また、雰囲気は窒素のみであって良く、酸素のみであってよいが、窒素、酸素の混合物であってもよい。
【0053】
プラズマ照射時の温度は150℃以下とする。これによって、接合強度が高く、かつ結晶性の劣化のない接合体8A、18Aが得られる。この観点から、プラズマ照射時の温度を150℃以下とするが、100℃以下とすることが更に好ましい。
【0054】
また、プラズマ照射時のエネルギーは、30〜150Wが好ましい。また、プラズマ照射時のエネルギーと照射時間との積は、0.12〜1.0Whが好ましい。
プラズマ処理した基板の接合面5と接合面6同士、又は、接合面13と接合面6同士を室温で互いに接触させる。このとき真空中で処理してもよいが、より好ましくは大気中で接触させる。こうすることで、プラズマ処理で酸化珪素中に取り込まれた窒素、炭素、フッ素の分布を保ったままの接合基板を実現することができる。
【0055】
好適な実施形態においては、プラズマ処理前に、圧電性材料基板1の接合面1aおよび酸化珪素層4、12の接合面4a、12aを平坦化加工する。各接合面1a、4a、12aを平坦化する方法は、ラップ(lap)研磨、化学機械研磨加工(CMP)などがある。また、平坦面は、Ra≦1nmが好ましく、0.3nm以下にすると更に好ましい。
【0056】
次いで、圧電性材料基板1の接合面5と支持基板3上の酸化珪素膜4の接合面6、あるいは圧電性材料基板1上の酸化珪素膜12の接合面13と支持基板3上の酸化珪素膜4の接合面6とを接触させ、接合する。この後、アニール処理を行うことによって、接合強度を向上させることが好ましい。アニール処理時の温度は、100℃以上、300℃以下が好ましい。
【0057】
本発明の接合体8A、18Aは、弾性波素子11、21に対して好適に利用できる。
弾性波素子11、21としては、弾性表面波デバイスやラム波素子、薄膜共振子(FBAR)などが知られている。例えば、弾性表面波デバイスは、圧電性材料基板の表面に、弾性表面波を励振する入力側のIDT(Interdigital Transducer)電極(櫛形電極、すだれ状電極ともいう)と弾性表面波を受信する出力側のIDT電極とを設けたものである。入力側のIDT電極に高周波信号を印加すると、電極間に電界が発生し、弾性表面波が励振されて圧電性材料基板上を伝搬していく。そして、伝搬方向に設けられた出力側のIDT電極から、伝搬された弾性表面波を電気信号として取り出すことができる。
【0058】
圧電性材料基板1A上の電極10を構成する材質は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、金が好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金がさらに好ましい。アルミニウム合金は、Alに0.3から5重量%のCuを混ぜたものを使用するのが好ましい。この場合、CuのかわりにTi、Mg、Ni、Mo、Taを使用しても良い。
【実施例】
【0059】
(実施例A1)
図1図3を参照しつつ説明した方法に従い、図3(c)に示す弾性波素子11を作製した。
【0060】
具体的には、厚さが200μmで両面が鏡面に研磨されている42YカットX伝搬LiTaO3基板(圧電性材料基板)1と、厚みが675μmの高抵抗(>2kΩ・cm)Si(100)基板(支持基板)3を用意した。基板サイズはいずれも150mmである。支持基板3上には、スパッタリング法により、酸化珪素膜4を500nmの厚さで成膜した。成膜後の酸化珪素膜4の表面粗さRaが0.6nmであったため、表面をCMP(化学機械的研磨)でわずかに研磨し、Raを0.3nmまで改善した。
【0061】
次いで、圧電性材料基板1の接合面1aおよび支持基板3上の酸化珪素膜4の接合面4aをそれぞれ洗浄および表面活性化した。具体的には、純水を用いた超音波洗浄を実施し、スピンドライにより基板表面を乾燥させた。次いで、洗浄後の支持基板3をプラズマ活性化チャンバーに導入し、窒素ガスプラズマで30℃で接合面4aを活性化した。また、圧電性材料基板1を同様にプラズマ活性化チャンバーに導入し、窒素ガスプラズマで30℃で接合面1aを表面活性化した。表面活性化時間は40秒とし、エネルギーは100Wとした。表面活性化中に付着したパーティクルを除去する目的で、上述と同じ超音波洗浄、スピンドライを再度実施した。
【0062】
次いで、各基板の位置合わせを行い、室温で両基板の活性化した接合面5、6同士を接触させた。圧電性材料基板1側を上にして接触させた。この結果、基板同士の密着が広がる様子(いわゆるボンディングウェーブ)が観測され、良好に予備接合が行われたことが確認できた。次いで、接合強度を増すことを目的に、接合体を窒素雰囲気のオーブンに投入し、120℃で10時間保持した。
【0063】
加熱後の接合体8の圧電性材料基板1の表面1bを研削加工、ラップ加工、およびCMP加工に供し、圧電性材料基板1Aの厚さが16、8、4、2、1μmとなるようにした。得られた接合体8Aについて、各部分における窒素濃度、炭素濃度、フッ素濃度をSIMS法(2次イオン質量分析法)を用いて測定した。SIMS測定装置として、CAMECA IMS-7fを用い、一次イオン種としてCs+で、一次加速電圧は15.0kVで行った。検出領域は、30μmφとした。
【0064】
圧電性材料基板1Aの厚みは、光干渉を用いた光学式測定機(Filmetrix社製 F20)により測定した。研磨された圧電性材料基板1Aの加工面9に、フォトリソグラフィープロセスでアルミニウム金属からなるIDT電極10を設けた。発振周波数が1000MHz程度になるよう、電極10の周期λは4μmとした。IDT電極10の厚みは200nmとし、200対のIDT電極の両側に80対からなる反射器を設け1ポートの弾性波素子(SAW共振子)11を作成した。作成された弾性波素子(SAW共振子)11のインピーダンス特性をAgilent社製ネットワークアナライザーE5071Cで測定した。図6に典型的な共振特性を示す。1000MHz付近(fs)に共振ピーク、1050MHzあたり(fr)に反共振ピークが観測された。共振周波数fsでのアドミタンス値の反共振周波数frでのアドミタンス値に対する比率を測定した。この結果を表3に示す。
【0065】
(実施例A2)
実施例A1において、窒素プラズマの代わりに窒素ガス80%、酸素ガス20%とした混合ガスのプラズマを用いた。ガス組成を変更するにあたり、RFの反射電力が最小となるようにマッチングは適宜変更した。その他は実施例A1と同様に実験を行った。
【0066】
実施例A1と同様にして、得られた接合体8について、各部分における窒素濃度、炭素濃度、フッ素濃度を測定し、測定結果を表1に示す。また、実施例A1と同様にして、圧電性材料基板の厚さが16、8、4、2、1μmとなるように加工し、共振周波数fsでのアドミタンス値の反共振周波数frでのアドミタンス値に対する比率を測定した。この結果を表3に示す。
【0067】
(比較例A1)
実施例A1と同様にして、各接合体およびSAW素子を作成し、実施例A1と同様の測定を行った。ただし、酸化珪素膜は圧電性材料基板1上に成膜し、支持基板3側には成膜しなかった。また、酸化珪素膜の表面活性化と支持基板3の表面活性化を行い、酸化珪素膜と支持基板3の活性化面を窒素プラズマ照射によって直接接合した。
【0068】
得られた接合体について、各部分における窒素濃度、炭素濃度、フッ素濃度を測定し、測定結果を表2に示す。また、実施例A1と同様にして、圧電性材料基板1の厚さが16、8、4、2、1μmとなるように加工し、共振周波数fsでのアドミタンス値の反共振周波数frでのアドミタンス値に対する比率を測定した。この結果を表3に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
表3に示すように、本発明の接合体8Aを用いた弾性波素子(SAW素子)11では、圧電性材料基板1Aの厚さを2.0〜1.0μmと極めて薄く加工した場合にも、共振周波数fsでのアドミタンス値の反共振周波数frでのアドミタンス値に対する比率は劣化せず、良好であった。一方、比較例A1の接合体では、圧電性材料基板の厚さが薄くなるのにつれて、共振周波数fsでのアドミタンス値の反共振周波数frでのアドミタンス値に対する比率が劣化した。特に、比較例A1の接合体では、圧電性材料基板の厚さを4.0μm以下まで加工すると、共振周波数fsでのアドミタンス値の反共振周波数frでのアドミタンス値に対する比率がかなり劣化した。
【0073】
(実施例B)
実施例A1において、圧電性材料基板の材質を128YカットX伝搬ニオブ酸リチウムに変更した。この結果、実施例A1と同様の結果が得られた。
【0074】
(実施例C1)
図2図4図5を参照しつつ説明した方法に従い、図5(c)に示す弾性波素子21を作製した。
【0075】
具体的には、厚さが200μmで両面が鏡面に研磨されている42YカットX伝搬LiTaO3基板(圧電性材料基板)1と、厚みが675μmの高抵抗(>2kΩ・cm)Si(100)基板(支持基板)3を用意した。基板サイズはいずれも150mmである。圧電性材料基板1上、支持基板3上には、スパッタリング法により、酸化珪素膜12、4をそれぞれ250nmの厚さで成膜した。成膜後の各酸化珪素膜12、4の表面粗さをAFMで測定したところRaが0.6nmであったため、表面をCMP(化学機械的研磨)でわずかに研磨し、Raを0.3nmまで改善した。
【0076】
次いで、圧電性材料基板1上の酸化珪素膜12の接合面12aおよび支持基板3上の酸化珪素層4の接合面4aをそれぞれ洗浄および表面活性化した。具体的には、純水を用いた超音波洗浄を実施し、スピンドライにより基板表面を乾燥させた。
【0077】
次いで、洗浄後の支持基板3をプラズマ活性化チャンバーに導入し、窒素ガスプラズマで30℃で酸化珪素膜4の接合面4aを活性化した。また、圧電性材料基板1を同様にプラズマ活性化チャンバーに導入し、窒素ガスプラズマで30℃で酸化珪素膜12の接合面12aを表面活性化した。表面活性化時間は40秒とし、エネルギーは100Wとした。表面活性化中に付着したパーティクルを除去する目的で、上述と同じ超音波洗浄、スピンドライを再度実施した。
【0078】
次いで、各基板の位置合わせを行い、室温で両基板の活性化した接合面13、6同士を接触させた。圧電性材料基板1側を上にして接触させた。この結果、基板同士の密着が広がる様子(いわゆるボンディングウェーブ)が観測され、良好に予備接合が行われたことが確認できた。次いで、接合強度を増すことを目的に、接合体を窒素雰囲気のオーブンに投入し、120℃で10時間保持した。
【0079】
加熱後の接合体18の圧電性材料基板1の表面を研削加工、ラップ加工、およびCMP加工に供し、圧電性材料基板1Aの厚さが16、8、4、2、1μmとなるようにした。得られた接合体18Aについて、各部分における窒素濃度、炭素濃度、フッ素濃度をSIMS法(2次イオン質量分析法)を用いて測定した。SIMS測定装置として、CAMECA IMS-7fを用い、一次イオン種としてCs+で、一次加速電圧は15.0kVで行った。検出領域は、30μmφとした。測定結果を表4に示す。
【0080】
研磨された圧電性材料基板1Aの加工面9に、アルミニウム金属からなるIDT電極10を設け、1ポートの弾性波素子(SAW共振子)21をフォトリソグラフィープロセスで作成した。発振周波数が1000MHz程度になるよう、電極の周期λは4μmとした。作成された弾性波素子(SAW共振子)21のインピーダンス特性をAgilent社製ネットワークアナライザーE5071Cで測定した。共振周波数fsでのアドミタンス値の反共振周波数frでのアドミタンス値に対する比率を測定した。この結果を表6に示す。
【0081】
(実施例C2)
実施例C1において、窒素プラズマの代わりに窒素ガス80%、酸素ガス20%とした混合ガスのプラズマを用いた。その他は実施例C1と同様に実験を行った。
【0082】
実施例C1と同様にして、得られた接合体18Aについて、各部分における窒素濃度、炭素濃度、フッ素濃度を測定し、測定結果を表4に示す。また、実施例C1と同様にして、圧電性材料基板1Aの厚さが16、8、4、2、1μmとなるように加工し、共振周波数fsでのアドミタンス値の反共振周波数frでのアドミタンス値に対する比率を測定した。この結果を表6に示す。
【0083】
(比較例C1)
実施例C1と同様にして、各接合体および弾性波素子(SAW素子)を作成し、実施例C1と同様の測定を行った。ただし、酸化珪素膜は圧電性材料基板上に成膜し、支持基板側には成膜しなかった。また、酸化珪素膜の表面活性化と支持基板の表面活性化を行い、酸化珪素膜と支持基板の活性化面を窒素プラズマ照射によって直接接合した。
【0084】
得られた接合体について、各部分における窒素濃度、炭素濃度、フッ素濃度を測定し、測定結果を表5に示す。また、実施例A1と同様にして、圧電性材料基板1Aの厚さが16、8、4、2、1μmとなるように加工し、共振周波数fsでのアドミタンス値の反共振周波数frでのアドミタンス値に対する比率を測定した。この結果を表6に示す。
【0085】
【表4】

【0086】
【表5】

【0087】
【表6】

【0088】
表6に示すように、本発明の接合体18Aを用いた弾性波素子(SAW素子)21では、圧電性材料基板1Aの厚さを2.0〜1.0μmと極めて薄く加工した場合にも、共振周波数fsでのアドミタンス値の反共振周波数frでのアドミタンス値に対する比率は劣化せず、良好であった。一方、比較例C1の接合体では、圧電性材料基板の厚さが薄くなるのにつれて、共振周波数fsでのアドミタンス値の反共振周波数frでのアドミタンス値に対する比率が劣化した。特に、比較例C1の接合体では、圧電性材料基板の厚さを4.0μm以下まで加工すると、共振周波数fsでのアドミタンス値の反共振周波数frでのアドミタンス値に対する比率がかなり劣化した。
【0089】
(実施例D)
実施例C1において、圧電性材料基板1の材質をニオブ酸リチウムに変更した。この結果、実施例C1と同様の結果が得られた。

図1
図2
図3
図4
図5
図6