(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621589
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】粘性材料の吹付け方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
E21D 11/38 20060101AFI20191209BHJP
E02B 7/00 20060101ALI20191209BHJP
B09B 1/00 20060101ALI20191209BHJP
B28B 13/02 20060101ALI20191209BHJP
B28B 1/32 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
E21D11/38 ZZAB
E02B7/00 Z
B09B1/00 F
B28B13/02
B28B1/32 C
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-64610(P2015-64610)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-183515(P2016-183515A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2018年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 宏之
(72)【発明者】
【氏名】石濱 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】千々松 正和
【審査官】
荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−000763(JP,A)
【文献】
特開2004−316345(JP,A)
【文献】
特開平01−271522(JP,A)
【文献】
特開昭63−210363(JP,A)
【文献】
実開昭51−067534(JP,U)
【文献】
米国特許第04695167(US,A)
【文献】
特開平07−034792(JP,A)
【文献】
特開2000−319893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00−19/06
E02D 17/00−17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性材料を吹付け機に投入し、粘性材料を前記吹付け機から高圧でホースへ圧送し、ノズルにより施工面に吹付ける粘性材料の吹付け方法において、
粘性材料に水分調整済みの原材料を用い、前記水分調整済みの原材料を、前記吹付け機に投入する前に、水平方向に並列配置の複数の固定羽と、前記各固定羽の上方でかつ前記各固定羽の間で垂直方向に回転させる複数の回転羽とにより切り込む方式により、含水比を変えることなくほぐし、ほぐし後の前記水分調整済みの原材料を乾燥させることなく前記吹付け機に投入し、前記吹付け機からほぐし後の前記水分調整済みの原材料を加水することなく前記ホースへ圧送し、前記ノズルより吹付ける、
ことを特徴とする粘性材料の吹付け方法。
【請求項2】
複数の固定羽は着脱式とし、前記固定羽の数の増減により前記各固定羽の間の間隔を調整する請求項1に記載の粘性材料の吹付け方法。
【請求項3】
粘性材料を水分調整済みの原材料とし、前記水分調整済みの原材料を収容し供給する材料供給装置と、前記材料供給装置から供給される前記水分調整済みの原材料をほぐすためのほぐし機構とを備え、前記ほぐし機構は、天面及び底面に開口を有するボックスと、前記ボックス内の下部に略水平方向に並列に配置される複数の固定羽、及び前記ボックス内で前記固定羽の上方に配置され、前記各固定羽の間で垂直方向に回転し、羽先が前記各固定羽の間に入り込む複数の回転羽と、前記ボックスの底面に配設され、当該底面の開口に連通される吐出ホッパとを有し、前記水分調整済みの原材料を含水比を変えることなくほぐし、ほぐし後の前記水分調整済みの原材料を乾燥させることなく供給するほぐし機構付きの材料供給設備と、
ほぐし後の前記水分調整済みの原材料を加水することなく高圧で送り出す吹付け機と、
前記吹付け機に高圧のガスを送給するコンプレッサと、
前記吹付け機に連結され、ほぐし後の前記水分調整済みの原材料を移送するためのホース、及び前記ホースの先端に取り付けられるノズルと、
を備え、
前記材料供給設備で前記水分調整済みの原材料を前記複数の固定羽と複数の回転羽とにより切り込むことによりほぐし、ほぐし後の前記水分調整済みの原材料を乾燥させることなく前記吹付け機に投入し、前記吹付け機からほぐし後の前記水分調整済みの原材料を加水することなく高圧で前記ホースへ圧送し、前記ノズルにより吹付ける、
ことを特徴とする粘性材料の吹付けシステム。
【請求項4】
複数の固定羽は前記各固定羽の間の間隔を調整可能に着脱可能に配置される請求項3に記載の粘性材料の吹付けシステム。
【請求項5】
吹付け機とホースは、一端に前記吹付け機の吐出口と水密に接続可能な吹付け機側接続部を有し、他端に前記ホースに水密に接続可能なホース側接続部を有する異径ジョイントを介して連結される請求項3又は4に記載の粘性材料の吹付けシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム、トンネル、廃棄物の最終処分場など止水が必要な施工面に粘性材料を吹付けるのに使用する粘性材料の吹付け方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の粘性材料の吹付け方法として、コンタクトクレイ吹付け工法、ベントナイト混合土吹付け工法、及びこれらの工法に使用するシステムが知られている。
前者の工法及びシステムは特許文献1により、後者の工法及びシステムは特許文献2により提案されている。
【0003】
特許文献1はシール材料の吹き付け方法および吹き付け装置に関するもので、この文献1の工法では、流動性のあるシール材料を吹き付けることによって、その吹き付け対象となる表面にシール層を形成するに際し、シール材料を、シール層の形成に必要な適性な水分量よりも少ない水分量に調整して移送する工程と、その移送したシール材料の吹き付け時に、水を加えつつ吹き付ける工程とを採用する。このような工程を取ることによって、シール材料をシール層の形成に必要な適性な水分量に調整する。また、この文献1のシステムは、シール材料の水分量を調整するための水分量調整手段と、その水分量を調整したシール材料を加圧流体によって移送し、先端のノズルより吐出させる吹き付け機と、その吹き付け機のノズルへ向けて移送されるシール材料に対して給水するための給水手段とを備える。このような構成を備えることによって、シール材料の水分量を、取り扱いや移送、および吹き付け等に適した状態とする。また、この場合、吹き付け機は、シール材を移送するためのホースを備え、そのホースの先端にノズルを有し、給水手段は、ノズルの近くのホースの途中に接続される構成とし、このようにすることで、ホースによるシール材料の圧送を容易にし、その取り扱いを良好にしている。
【0004】
特許文献2は吹付け層に関するもので、この文献2の工法では、粘性土(土質材料としての砂と低透水性材料としてのベントナイトとを混合してなる人口粘性土)をコンベア装置により搬送して吹付け装置に投入し、この吹付け装置にコンプレッサにより空気を圧送することにより吹付け装置内の粘性土をホースへ送り出すとともに、水ポンプから水をホースへ供給して、粘性材料を水とともにホースを経由して先端のノズルにより法面に向けて吹付け、粘性土を法面に層状に堆積する。また、この文献2のシステムは、粘性土を攪拌する攪拌機と、粘性土を高圧のガスで吹付ける吹付け機と、吹付け機に高圧のガスを送るコンプレッサと、吹付け機の出口側に接続されるホース、ホースへ水を供給する設備、及びホースに接続されるノズルとを備え、特に、吹付け機22は、内蔵発電機と、内蔵攪拌機と、粘性土を出口方向に移送する回転羽根と、定期的に出口側を開く弁部とにより構成され、このようにして粘性土を法面に層状に堆積し、地盤を形成する。
【0005】
また、この種の粘性材料の吹付けに有効な吹付け装置が本願出願人により特許文献3により提案されている。
この吹付け装置は、上部に仕切り弁により開閉される材料入口、下部に仕切り弁により開閉される材料出口を有する釜からなり、内部を加圧、減圧する手段、回転軸と複数の羽根とからなる回転羽根機構を有し、材料を収容する上釜、及び上部に上釜の材料出口と連通される材料入口、下部に材料出口を有する釜からなり、内部を加圧、減圧する手段、回転軸と複数の羽根とからなる回転羽根機構を有し、材料を収容し、圧送する下釜とを具備する吹付機と、吹付機の内部を加圧する各手段に連結され、エアを供給するコンプレッサと、下釜の材料出口にホースを介して接続され、材料を吹き出すノズルとを備える。この吹付け装置の回転羽根機構は、複数の羽根が全体として略弓形で、基端側の両面が略直線状に延びる平面状に、先端側の両面を略中間部から先端部にかけて漸次先端側の一方の面側に湾曲するように曲面状に形成され、これらの羽根が先端側を出口側に向けて、回転軸に順次各羽根の基端側の一方の面から直角方向への先端側の突き出し距離に相当する寸法又はこれよりも小さい寸法の間隔で、所定の角度位相を変えて取り付けられる。このようにして調整済みの粘性材料を上釜内及び下釜内で回転羽根機構によりほぐして下釜の材料出口へ送り、ホースを通じて圧送し、ノズルより吹付けるようになっている。
これにより、上釜、下釜の各釜内で、回転軸に対して直角に延びる各羽根の基端側の両面で別途調整済みの粘性材料に切り込みを入れて十分にほぐし、各羽根の材料出口に向けて湾曲する先端側で当該材料を上釜、下釜の内壁全面から掻き取りながら材料出口方向に向けて確実に送り出すことができ、調整済みの粘性材料を上釜や下釜の内壁や羽根に付着しにくくして、材料のほぐし性能や掻き取り能力を良好に維持し、十分にほぐされた調整済みの粘性材料を直接、ホースを通じて圧送し、ノズルから吹付けることができ、従来に比べて材料吹付けの施工性を大幅に向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−13350号公報
【特許文献2】特開2000−329781公報
【特許文献3】特開2014−763公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の粘性材料の吹付け方法及びシステムでは、次のような問題がある。
(1)従来のコンタクトクレイ吹付け工法及びそのシステムでは、コンタクトクレイ材が粘性の強い材料で、吹付け機内やホース内に付着しやすく、詰まり、脈動といった現象を引き起こすため、これを抑制するために、コンタクトクレイ材を吹付け機に投入する前にコンタクトクレイ材の表面を乾燥し、コンタクトクレイ材を乾燥させた状態で吹付け機内に投入してホースに圧送し、このコンタクトクレイ材の吹付け時にこの乾燥状態の材料を必要な水分量に戻すため、ノズル近くで加水している。このため、この工法及びシステムでは、材料を乾燥させる設備と加水する設備とを必要とし、設備コストは増大する。また、この場合、吹付け機からホース、ノズルへ送り出すコンタクトクレイ材の密度を常に一定にすることは困難で、コンタクトクレイ材の吹付け時、ノズル近くでコンタクトクレイ材に加水する際は、厳格な含水比管理(吐出量、加水量等の管理)が必要となる。
(2)従来のベントナイト混合土吹付け工法及びそのシステムでは、ベントナイト混合土がその保管時に自重により圧縮し大塊となり、この大塊となった材料が吹付け機内に供給されるので、これが吹付け機内やホース内で詰まり、脈動を起こす。また、この工法では、吹付け機にベントナイト混合土(砂、ベントナイト)のみを投入し、ホースやノズルの近くでベントナイト混合土に加水して、ベントナイト混合土の吹き付け時に、ベントナイト混合土を水とともに吹付けることが通常で、この工法においても、ホース内やノズルの近くでベントナイト混合土に加水する際は、厳格な含水比管理(材料の質量管理)が要求される。
(3)これらの工法及びシステムではいずれも、使用する吹付け材料や吹付けの施工方法(人力施工、機械施工)に応じて、吹付け機を選択する必要があり、また、同じ材料を使用する場合でも目的に応じて使用するホースの径が異なる(例えば、法面の場合、小径のホースを使用し、トンネル一次覆工の場合、大径のホースを使用する)ため、目的に応じてホースを選択する必要がある。ところが、吹付け機の吐出口の径は吹付け機の種類によって異なるのが通常で、目的に応じて吹付けホースを選択すると、そのホースの径に適合する吐出口を有する吹付け機を用意せざるを得ず、ホースと吹付け機の選択、組み合わせに自由度がなく、市場性、汎用性をまったく無視した機種機材の選定になっている。
(4)また、これらの工法及びシステムに用いられる吹付け機としては、圧力釜式吹付け機やエア圧送式リボルバー吹付け機などの汎用機や、本願出願人による吹付け装置があるが、特に、汎用機の場合、本願出願人の吹付け装置のほぐし機構のようなほぐし機能がないため、粘性材料が吹付け機内やホース内で付着し、詰まり、脈動を起こしやすい。エア圧送式リボルバー吹付け機にあっては、回転する羽は備わっていないため材料をほぐす能力は無い。また、振動震いは備わっているものの粘性材料に振動を与えると逆に塊となりやすい。
【0008】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、この種の粘性材料の吹付け方法及びシステムにおいて、粘性材料の吹付け時の脈動、ホースの詰まりといった現象を抑制すること、乾燥設備、加水設備を不要とし、併せて粘性材料の吹付け時の厳格な含水比管理を簡略化させること、吹付け機の種類やホースの種類(径)を限定しないこと(換言すれば、吹付け機とホースの選択、組み合わせの自由度を高めること)、人力施工、機械施工といった施工方法を限定しないこと(換言すれば、人力施工、機械施工のいずれにも対応可能とすること)など、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発
明は、粘性材料を吹付け機に投入し、粘性材料を前記吹付け機から高圧でホースへ圧送し、ノズルにより施工面に吹付ける粘性材料の吹付け方法において、粘性材料に水分調整済みの原材料を用い、
前記水分調整済みの原材料を
、前記吹付け機に投入する前に、水平方向に並列配置の複数の固定羽と、前記各固定羽の上方でかつ前記各固定羽の間で垂直方向に回転させる複数の回転羽とにより切り込む方式により、含水比を変えることなくほぐし、ほぐし後の
前記水分調整済みの原材料を乾燥させることなく前記吹付け機に投入し、前記吹付け機からほぐし後の
前記水分調整済みの原材料を加水することなく前記ホースへ圧送し、前記ノズルより吹付ける、ことを要旨とする。
この場合、
複数の固定羽は着脱式とし、前記固定羽の数の増減により前記各固定羽の間の間隔を調整することが好ましい。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の粘性材料の吹付けシステムは、粘性材料を水分調整済みの原材料とし、
前記水分調整済みの原材料を収容し供給する材料供給装置と、前記材料供給装置から供給される前記水分調整済みの原材料をほぐすためのほぐし機構とを備え、前記ほぐし機構は、天面及び底面に開口を有するボックスと、前記ボックス内の下部に略水平方向に並列に配置される複数の固定羽、及び前記ボックス内で前記固定羽の上方に配置され、前記各固定羽の間で垂直方向に回転し、羽先が前記各固定羽の間に入り込む複数の回転羽と、前記ボックスの底面に配設され、当該底面の開口に連通される吐出ホッパとを有し、前記水分調整済みの原材料を含水比を変えることなくほぐし、ほぐし後の
前記水分調整済みの原材料を乾燥させることなく供給するほぐし機構付きの材料供給設備と、ほぐし後の
前記水分調整済みの原材料を加水することなく高圧で送り出す吹付け機と、前記吹付け機に高圧のガスを送給するコンプレッサと、前記吹付け機に連結され、ほぐし後の
前記水分調整済みの原材料を移送するためのホース、及び前記ホースの先端に取り付けられるノズルとを備え、前記材料供給設備
で前記水分調整済みの原材料を
前記複数の固定羽と複数の回転羽とにより切り込むことによりほぐし、ほぐし後の
前記水分調整済みの原材料を乾燥させることなく前記吹付け機に投入し、前記吹付け機からほぐし後の
前記水分調整済みの原材料を加水することなく高圧で前記ホースへ圧送し、前記ノズルにより吹付ける、ことを要旨とする。
この場合、
複数の固定羽は前記各固定羽の間の間隔を調整可能に着脱可能に配置されることが好ましい。
また、この場合、吹付け機とホースは、一端に前記吹付け機の吐出口と水密に接続可能な吹付け機側接続部を有し、他端に前記ホースに水密に接続可能なホース側接続部を有する異径ジョイントを介して連結されるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粘性材料の吹付け方法及びシステムによれば、粘性材料に水分調整済みの原材料を用い、当該水分調整済みの原材料を
、吹付け機に投入する前に、水平方向に並列配置の複数の固定羽と、各固定羽の上方でかつ各固定羽の間で垂直方向に回転させる複数の回転羽とにより切り込む方式により、含水比を変えることなくほぐし、ほぐし後の当該水分調整済みの原材料を乾燥させることなく吹付け機に投入し、吹付け機からほぐし後の当該水分調整済みの原材料を加水することなくホースへ圧送し、ノズルより吹付けるようにしたので、水分調整済みの原材料を十分に細分化して吹付け機、ホースに通すことができ、粘性材料の吹付け時の脈動、ホースの詰まりといった現象を抑制することができ、また、乾燥設備と、加水設備を不要とし、併せて粘性材料の吹付け時の厳格な含水比管理を簡略化させることができる。
また、この場合、ほぐし機構の固定羽が着脱式で、固定羽の数を増減させ、各固定羽間の間隔を調整することで、この粘性材料のほぐし能力を吹付け機、ホース、また粘性材料に応じて変更可能とすることができ、このほぐし機構により、粘性材料を吹付け機やその材料に応じた大きさに細分化することにより、粘性材料が吹付け機内やホース内で付着したり、詰まり、脈動といった現象を起こしたりするのを抑制することができる。
さらに、この場合、吹付け機とホースが異径ジョイントを介して連結されることで、吹付け機の種類やホースの種類(径)を限定することがなく吹付け機とホースの選択、組み合わせの自由度を高めることができ、各種の吹付け機やホースを人力施工、機械施工といった施工方法に限定することなく、人力施工、機械施工のいずれにも対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態における粘性材料の吹付け方法及びシステムを示す図
【
図2】同方法及びシステムに用いるほぐし機構付き材料供給設備を示す図(斜視図)
【
図3】同方法及びシステムに用いるほぐし機構付き材料供給設備の各部の構成を示す図((a)は平面図(b)は側面図(c)は正面図)
【
図4】同方法及びシステムに用いる異径ジョイントを示す図
【
図5】同方法及びシステムによる施工フロー及び従来工法の施工フローを示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1に本発明の一実施の形態による粘性材料の吹付け方法及びシステムを併せて示している。
図1に示すように、この粘性材料の吹付け方法は、粘性材料を吹付け機に投入し、粘性材料を吹付け機から高圧でホースへ圧送し、ノズルにより施工面に吹付けるもので、この吹付け方法では、特に、粘性材料に水分調整済みの原材料を用い、水分調整済みの原材料の含水比を変えることなく、この水分調整済みの原材料をほぐし細分化しながら吹付け機に投入し、吹付け機からこの水分調整済みのほぐし後の原材料をホースへ圧送し、ノズルで吹付けるようにした。この場合、水分調整済みの原材料のほぐしは、この水分調整済みの原材料を吹付け機に投入する前に、水平方向に並列配置の複数の固定羽と、各固定羽の上方でかつ各固定羽の間で垂直方向に回転させる複数の回転羽とにより切り込む方式により行う。
【0014】
そして、この粘性材料の吹付け方法は次の粘性材料の吹付けシステムSにより実現される。
この吹付けシステムSは、粘性材料を水分調整済みの原材料とし、この水分調整済みの原材料を含水比を変えることなくほぐし細分化しながら供給するほぐし機構付きの材料供給設備1と、水分調整済みのほぐし後の原材料を高圧で送り出す吹付け機2と、吹付け機2に高圧のガスを送給するコンプレッサ(図示省略)と、吹付け機2に連結され、この水分調整済みのほぐし後の原材料を移送するためのホース3、及びホース3の先端に取り付けられ、この水分調整済みのほぐし後の原材料を噴出させるためのノズル4とを備えて構成される。
なお、この吹付けシステムSにおいて、吹付け機2の機種、ホース3の種類(径)は特に限定されない。また、この吹付けシステムSでは、人力施工、機械施工といった施工方法が限定されない。
【0015】
材料供給設備1は、
図2、
図3に示すように、水分調整済みの原材料を収容し供給する材料供給装置10と、材料供給装置10から供給される水分調整済みの原材料を搬送する第1の搬送装置11と、第1の搬送装置11により搬送された水分調整済みの原材料をほぐすためのほぐし機構12と、ほぐし機構12によりほぐされた水分調整済みのほぐし後の原材料を吹付け機2に向けて搬送する第2の搬送装置13(
図1参照)とを備える。
材料供給装置10には、上部に投入口を有し、下部に吐出口を有し、全体が略四角錐形のホッパが採用される。このホッパには、上部の投入口の四隅から上方へ所定の高さでかつ投入口の中心に対応する位置に向けて延びる複数の取付部材を介して破袋機101が取り付けられる。なお、この破袋機101は上端が尖った棒状の部材である。この材料供給装置10は施工現場の適宜位置に作業台付きの架台14を介して設置される。このようにしてホッパの上部投入口の上方に粘性材料(水分調整済みの原材料)がフレコンバッグ(フレキシブルコンテナバッグ)に詰められて運搬され、フレコンバッグが破袋機101により破袋されて、材料がホッパ上部の投入口から投入され、順次、ホッパ下部の吐出口から吐出する。
第1の搬送装置11はベルトコンベアが採用される。このベルトコンベアは材料供給装置10に近接する位置に架台14を介して斜めに設置され、一端が材料供給装置(ホッパ)10の下部吐出口の下方に配置され、他端が後述するほぐし機構12の材料投入口(ボックス120天面の開口)に近接して配置される。このベルトコンベアにより材料供給装置10から吐出された材料をほぐし機構12まで搬送し、ほぐし機構12の材料投入口に投入する。
ほぐし機構12は、天面及び底面に開口を有するボックス120と、ボックス120内の下部に略水平方向に並列に配置される複数の固定羽121、及びボックス120内で固定羽121の上方に配置され、各固定羽121の間で垂直方向に回転し、羽先が各固定羽121の間に入り込むモータ駆動の複数の回転羽122と、ボックス120の底面に配設され、当該底面の開口に連通される吐出ホッパ123とを有する。この場合、複数の固定羽121はそれぞれ細長い棒状に形成され、その上面に鋸歯状の刃が設けられて、ボックス120内の下部に水平方向に等間隔で並列に着脱可能に架け渡し配設される。この固定羽121は着脱式になっていることで、固定羽121の枚数と各固定羽121間のスペースが可変になっている。複数の回転羽122はそれぞれ細長い平板又は棒材からなり、ボックス120内にモータ駆動の回転軸12sの周囲に、各固定羽121間のスペースに対応して複列にかつ各列毎に等角度間隔で羽先が各固定羽121間のスペースから少し下方まで入り込むように、さらに相互に隣り合う列の各回転羽122が互い違いになるように配設される。また、この回転羽122の回転数及び回転方向はインバータ制御により可変になっており、この回転羽122の回転数、回転方向と既述の固定羽121の枚数の一方又は双方を変化させることで、材料に応じて材料のほぐし状態を最適化することが可能である。また、この回転羽122の回転数を一定にすることで、回転羽122に材料の過不足を補う機能を持たせている。ボックス120内を連続で自由落下する材料質量の増減にかかわらず、固定羽121を通過する材料はほぐされ(細分化され)、一定量となり、材料質量が多ければ材料の滞留時間が長くなり、少なければ短くなるが、連続で落下するため、追加分で補うことができる。これにより、ボックス120下部の吐出ホッパ123から一定量の材料が吐出され、吹付け機2へ供給される材料のかさ密度が一定になる。
このほぐし機構12は第1の搬送装置11を介在して材料供給装置10に対向する位置に架台14を介して設置され、ボックス120天面の開口が第1の搬送装置11の他端に近接して配置される。このようにして第1の搬送装置11により搬送された材料がボックス120天面の開口に自由落下で連続投入され、ボックス120内部で材料が回転羽122によりほぐされ(細分化され)て、これを自由落下によりボックス120下部の吐出ホッパ123から吐出する。回転羽122に当たらなかった材料は、固定羽121上に留まり、回転羽122によりほぐされた後、一定量をボックス120下部の吐出ホッパ123から吐出する。
第2の搬送装置13はベルトコンベアが採用される。このベルトコンベアはほぐし機構12と吹付け機2との間に設置され、一端がほぐし機構12の吐出ホッパ123の下方に配置され、他端が吹付け機2の材料投入口の上方に配置される。このベルトコンベアによりほぐし機構12から吐出された材料を吹付け機2まで搬送し、吹付け機2の材料投入口に投入する。
【0016】
吹付け機2は、既述のとおり、特に限定されるものではなく、圧力釜式吹付け機やエア圧送式リボルバー吹付け機などの汎用機械から任意の機種が選択的に採用される。
なお、ここでは一般に知られている圧力釜式吹付け機やエア圧送式リボルバー吹付け機を使用するものとする。
また、この場合、吹付け機2には、水分を含まない圧縮空気を使用するため、コンプレッサにはドライコンプレッサが採用される。
【0017】
ホース3及びノズル4についても、既述のとおり、特に限定されるものではなく、汎用機材から任意に選択される。
そして、この場合、吹付け機2とホース3は、
図4に示すように、一端に吹付け機2の吐出口と水密に接続可能な吹付け機側接続部51を有し、他端にホース3に水密に接続可能なホース側接続部52を有する異径ジョイント5を介して連結される。この場合、異径ジョイント5は、一端に吹付け機2の吐出口と接続可能な吹付け機側接続口511を有し、他端にホース3に接続可能なホース側接続口512を有する異径ジョイント管510と、異径ジョイント管510の吹付け機側接続口511と吹付け機2の吐出口との接続部分の外周に巻き付けられるゴムリング、及びこのゴムリングを(上から全周に亘って)締め付け可能な2つの分割リングからなる吹付け機側締め付けリング513と、異径ジョイント管510のホース側接続口512とホース3との接続部分の外周に巻き付けられるゴムリング、及びこのゴムリングを(上から全周に亘って)締め付け可能な2つの分割リングからなる吹付け機側締め付けリング514と、各締め付けリング513、514の各分割リング間を締め付けるためのボルト、ナットとにより構成される。
なお、この異径ジョイント5の各締め付けリング513、514に日本ヴィクトリック株式会社製のヴィクトリックジョイント(製品名)を利用することができる。このヴィクトリックジョイントはその使用圧力に応じて様々なサイズが用意されており、入手も容易である。
【0018】
この吹付けシステムSはかかる構成を備え、材料供給設備1により水分調整済みの原材料をほぐしながら吹付け機2に投入し、吹付け機2からこの水分調整済みのほぐし後の原材料を高圧でホース3へ圧送し、ノズル4により施工面に吹付けるようになっている。
図5にこの吹付けシステムSを用いた吹付け工法の施工フローを従来工法の施工フローとともに示している。
図5に示すように、従来工法では材料に対して乾燥、加水という手順が入っているが、本吹付け工法ではこれらの手順が省略され、予め水分調整された材料をそのまま、すなわち、水分調整済みの粘性材料を乾燥させることなく、また加水することもなく、水分調整済みの現材料のまましかも連続して吹付けるものとした。また、含水比に関わる手順が省略されたことで、材料の含水比は水分調整済みと、吹付け後とで一定になる。なお、このほぐし機構通過前後の材料の乾燥密度が一定であることは予備試験により確認済みである。
【0019】
そして、この吹付けシステムSでは、特に従来の次のような問題に対して次のように対応した。
(1)従来、ベントナイト混合土やコンタクトクレイ材などの粘性材料はその保管時に自重により圧縮され大塊となりやすく、これが吹付け機内やホース内で付着、詰まり、脈動といった現象を引き起こす。
この吹付けシステムSでは、
図1に示すように、材料供給設備1に粘性材料のほぐし機構12を備え、粘性の強い材料をこのほぐし機構12を通して必要十分にほぐし細分化できるようにし、また、このほぐし機構12の固定羽121が着脱式で、固定羽121の数を増減させ、各固定羽121間の間隔を調整することにより、この粘性材料のほぐし能力を吹付け機2、ホース3、また粘性材料に応じて変更可能としたので、このほぐし機構12により、粘性材料を吹付け機2やその材料に応じた大きさに細分化することで、粘性材料が吹付け機2内やホース3内で付着したり、詰まり、脈動といった現象を起こしたりするのを抑制することができる。したがって、粘性材料を乾燥させたり加水したりする必要がなく、コンタクトクレイ材などの吹付けにおいて必須であった乾燥設備や加水装置などは省略することができ、設備コストの大幅な低減を図ることができる。また、水分調整済みの高含水比の材料をそのまま吹付けるだけなので、吹付け時の厳格な含水比管理が不要となる。水分調整済みの材料の含水比はそのまま吹付け後の含水比となる成果が得られる。
(2)従来の粘性土の吹付け時のホースの詰まり、脈動といった現象は、吹付け機へ大塊が供給されることのみならず、吹付け機への安定した材料供給がなされていないことも要因の一つである。なお、通常、粘性土の供給はホッパが用いられ、ホッパに投入された材料を自由落下により出口から吐出するが、自由落下であることから、その吐出量はホッパへの投入量が支配的である。また、粘性の高い材料の場合、ホッパ出口で小塊同士が結合して出口付近に溜り、ある時点でまとまって吐出されるため、不安定な供給となることが判明している。
この吹付けシステムSでは、
図1に示すように、ほぐし機構12がボックス120と吐出ホッパ123の組み合わせにより、全体を漏斗構造とし、材料の投入口を広く、吐出口を狭くしたので、広い投入口から材料が入れやすく、狭い吐出口により材料の供給量をある程度定量化できるようにした上で、このボックス120内で粘性材料をほぐし機構12の回転羽122、固定羽121により留め滞留させ、これを必要十分にほぐしながらほぐし後の粘性材料を供給するようにしたので、ほぐし後の材料を定量的に供給することができる。また、このほぐし機構12の固定羽は着脱式で、固定羽の数を増減させ、各固定羽121間の間隔を調整することにより、この粘性材料のほぐし能力を吹付け機2、ホース3、また粘性材料に応じて変更することができ、このようにほぐし能力を可変にすることで、材料のかさ密度を一定にして材料を供給し、含水比を変えることなく施工することができる。また、かさ密度を一定にすることで施工時の過転圧を抑え、転じて材料ロスを抑えることができる。さらに、吹付け機2を限定することがなく、既述の圧力釜式吹付け機やエア圧送式リボルバー吹付け機その他重機の市場性、施工量などの現場条件に応じて任意の機種を選定することができる。なお、回転羽122についても着脱式とし、回転羽122の数を増減することにより、ほぐし機構12のほぐし能力をさらに変更することができる。
(3)一般に吹付け機はその機構上使用可能なホース径が限定される。すなわち、吹付け機によって吐出口の径は異なり、同じ材料であっても目的に応じてホースの径も異なる(法面の場合、ホース径が小径のものを使用し、トンネル覆工の場合、ホース径が大径のものを使用する)ため、目的に応じたホースを選択し、それに対応した吹付け機の選定が必要となる。このため、市場性、汎用性に富んだ機種選定を行うためには、吹付け機の吐出口と、この吐出口の径とは異なる径のホースとを接続可能にする必要がある。
この吹付けシステムSでは、
図4に示すように、吹付け機2の吐出口に異径ジョイント5を介して吐出口と異なる径のホース3を接続するようにしたので、吹付け機2とホース3の自由な組み合わせを実現することができる。吹付け機2とホース3を異径ジョイント5によりつなぐことで、使用するホース3が限定されなくなり、同一の吹付け機2で、ホース3先端のノズル4を作業者が手で持って行う人力施工、ホース3先端のノズル2をバックホーなどの汎用機のショベル先端に取り付けて行う汎用機による機械施工、ホース3先端のノズル4を専用機の正面アームに取り付けて行う専用機による機械施工など、目的に応じた施工が可能となる。
【0020】
以上説明したように、この粘性材料の吹付け方法及びシステムによれば、粘性材料に水分調整済みの原材料を用い、当該水分調整済みの原材料を含水比を変えることなくほぐしながら吹付け機に投入し、吹付け機から当該水分調整済みのほぐし後の原材料をホースへ圧送し、ノズルより吹付けるようにしたので、水分調整済みの原材料を十分に細分化して吹付け機、ホースに通すことができ、粘性材料の吹付け時の脈動、ホースの詰まりといった現象を抑制することができ、また、乾燥設備と、加水設備を不要とし、併せて粘性材料の吹付け時の厳格な含水比管理を簡略化させることができる。
また、この場合、吹付け機とホースを異径ジョイントを介して連結することにより、吹付け機の種類やホースの種類(径)を限定することがなく、吹付け機とホースの選択、組み合わせの自由度を高めることができ、各種の吹付け機やホースを人力施工、機械施工といった施工方法に限定することなく、各種の施工方法に任意に対応させることができる。
【符号の説明】
【0021】
S 粘性材料の吹付けシステム
1 材料供給設備
10 材料供給装置
101 破袋機
11 第1の搬送装置
12 ほぐし機構
120 ボックス
121 固定羽
12S 回転軸
122 回転羽
123 吐出ホッパ
13 第2の搬送装置
14 作業台付き架台
2 吹付け機
3 ホース
4 ノズル
5 異径ジョイント
51 吹付け機側接続部
52 ホース側接続部
510 異径ジョイント管
511 吹付け機側接続口
512 ホース側接続口
513 吹付け機側締め付けリング
514 ホース側締め付けリング