(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、上記した電動工具の利用には、家屋天井を切断するような場面がある。このような場面では、作業者頭上で被加工材を切断するため、切断により生じた切断粉が頭上から作業者に向けて落ちてくる。このように切断粉が降りかかる状況では、作業者にとって切断作業がし難くなる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、出力軸に取り付けられた鋸刃部材を所定角度で往復動させて被加工材を切断する電動工具において、切断により生ずる切断粉が作業者に降りかからないようにし、このような切断時の作業性を高めるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するにあたって、本発明に係る電動工具は次の手段をとる。すなわち、本発明の第1の発明に係る電動工具は、工具本体と該工具本体から突出する出力軸とを有し、該出力軸に取り付けられた鋸刃部材を所定角度で往復動させて被加工材を切断する電動工具であって、前記出力軸の下端には、前記鋸刃部材を取り付けるための取付部が設けられており、前記工具本体には、前記鋸刃部材の刃先側となる前側を開口させて前記取付部の外周を覆う第1カバーが取り付けられており、前記第1カバーは、平面視半円形で前記取付部の下側で該取付部と対面する下壁部と、前記下壁部と対をなす平面視半円形で前記取付部の上側で前記下壁部と対面する上壁部と、前記下壁部および前記上壁部の円弧の端縁同士を連接する周壁部と、を有し、前記周壁部は、前記工具本体の持ち手側に向いて配置される、という構成である。
【0008】
この第1の発明に係る電動工具によれば、第1カバーは、平面視半円形で互いに対面する上壁部および下壁部と、円弧の端縁同士を連接する周壁部とを有する。ここで、周壁部は工具本体の持ち手側に向いて配置されるので、切断により生じた切断粉は、持ち手側に向かってきても周壁部にて遮られることとなる。これによって、切断により生ずる切断粉は作業者に降りかからないようになって切断時の作業性を高めることができる。
【0009】
本発明の第2の発明に係る電動工具は、前記第1の発明に係る電動工具において、前記第1カバーは、前記円弧方向で回転変位可能に前記工具本体に支持されており、前記第1カバーには、該第1カバーの内外を連通される吸気用開口部が、前記円弧方向に複数並べられており、前記吸気用開口部のそれぞれは、前記第1カバーを回転変位させて前記工具本体に支持される各位置で、吸気ダクトと接続可能に形成されている、という構成である。
【0010】
この第2の発明に係る電動工具によれば、吸気用開口部が円弧方向に複数並べられ、吸気用開口部のそれぞれは回転変位させて工具本体に支持される各位置で吸気ダクトと接続することができる。これによって、工具本体に対して鋸刃部材の刃先側を回転変位させ、これに応じて第1カバーを回転変位させても、吸気ダクトに吸気用開口部を簡単に接続させることができる。したがって、鋸刃部材の刃先側を回転変位させる場合であっても、切断粉の吸引を良好に行えて作業者の作業性を高めることができる。
【0011】
本発明の第3の発明に係る電動工具は、前記第2の発明に係る電動工具において、前記吸気ダクトは、前記工具本体のハウジングに支持されている、という構成である。この第3の発明に係る電動工具によれば、吸気ダクトは工具本体のハウジングに支持されているので、切断粉の吸引を行う吸気ダクトを安定して支持することができて、作業者の作業性を高めることができる。
【0012】
本発明の第4の発明に係る電動工具は、前記第2または前記第3の発明に係る電動工具において、前記吸気用開口部は、前記第1カバーのうち前記工具本体と対面する上側面に設定されている、という構成である。この第4の発明に係る電動工具によれば、吸気用開口部は、第1カバーのうち工具本体と対面する上側面に設定されているので、第1カバーに対して吸気ダクトの接続位置を上側に設定することができて、吸気ダクトを設けるにあたって吸気ダクトの上下方向の寸法を小さくすることができる。これによって、電動工具の構成をコンパクトに纏めることができて電動工具の操作性を高めることができる。
【0013】
本発明の第5の発明に係る電動工具は、前記第1から前記第4のいずれかの発明に係る電動工具において、前記第1カバーの前側には、前記取付部から前記鋸刃部材の刃先に向かう方向に開口して延在する筒形状の第2カバーが取り付けられており、前記第2カバーは、前記鋸刃部材の前記刃先から前記取付部に向かう方向で伸縮可能に形成されている、という構成である。この第5の発明に係る電動工具によれば、第1カバーの前側には取付部から鋸刃部材の刃先に向かう方向に開口して延在する筒形状の第2カバーが取り付けられている。この第2カバーは鋸刃部材の刃先から取付部に向かう方向で伸縮可能に形成されているので、第2カバーは鋸刃部材の刃先周囲を覆うことができる。これによって、鋸刃部材の刃先から生じる切断粉が撒き散るのを抑えながら切断粉の吸引を好ましく行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る電動工具を実施するための実施の形態について
図1〜
図13を参照しながら説明する。
図1の斜視図および
図2の左側面図にて示す符号10は、本発明に係る電動工具としてのマルチツールである。このマルチツール10は、石膏ボードの切断に用いられたり、Pタイルの剥離に用いられたり、木材の研削に用いられたりする電動工具である。このマルチツール10の電源には、家庭用交流電源が利用されている。
図3は、
図1のマルチツール10の(III)-(III)断面矢視を示す断面図である。
図4は、
図1のマルチツール10の(IV)-(IV)断面矢視を示す断面図である。
図5は、部材カバー60が取り外されている
図1のマルチツール10を示す斜視図である。
図6は、軸カバー42の単品を示す斜視図である。
図7は、軸カバー42が取り外されてカットソー90を取り付けるツールホルダ32を示す斜視図である。
図8は、部材カバー60が縮んで刃先部95が出されたマルチツール10を示す斜視図である。
図9は、
図8のマルチツール10を示す左側面図である。
【0016】
図1〜
図9に示すマルチツール10は、工具本体11から出力軸31が下側に突出しており、出力軸31の下端にツールホルダ32が設けられている。このツールホルダ32は、先端工具としてのカットソー90を保持する。このツールホルダ32は本発明に係る取付部に相当し、カットソー90は本発明に係る鋸刃部材に相当する。マルチツール10は、被加工材を切断するにあたってカットソー90の刃先部95を微小角度で高速に往復動させる。カットソー90は、概略、取付部91と、長板部93と、刃先部95とに区分けすることができる。取付部91は、ツールホルダ32に取り付けられる。長板部93は、取付部91と刃先部95との間の長さを設定する。この長板部93は、取付部91から刃先部95へと延びる上面視長方形をなす板形にて形成されている。刃先部95には、鋸型の刃が設けられている。この刃は、長板部93が延びる方向に対して直交方向に延びるように設定される。つまり、刃先部95はストレート状に形成されている。なお、カットソー90の刃先部95は、カットソー90により切断材を切断する側に配置されて切断材と対面している。ちなみに、図示される部材としては、例えば株式会社マキタ製TMA009BIMなどが挙げられる。
【0017】
このマルチツール10は、ツールホルダ32に取り付けられたカットソー90の刃先部95を往復動させる。この刃先部95の往復動は、カットソー90が取り付けられる出力軸31の往復回動による。この出力軸31が往復回動する角度としては、微小角度となる『3.2度』に設定されている。なお、出力軸31の往復回動は高速の回動であるゆえ、刃先部95の往復動は振動するような往復動となっている。なお、後述するラウンドソー90Aも、本発明に係る鋸刃部材に相当するが、刃先部95Aが円弧形に形成されている点でカットソー90の刃先部95と相違する。ちなみに、ラウンドソー90Aも、カットソー90と同様、ツールホルダ32に付け替えできる先端工具である。この先端工具には、塗装剥離作業に用いられるスクレーパや、研削作業や研磨作業に用いられるサンディングパッド等がある。
【0018】
マルチツール10は、概略、工具本体11と、吸塵装置40とを有する。工具本体11は、
図3に示すようにモータ部21とメカ部25とを有する。モータ部21は、モータハウジング22の内部に、モータ210および冷却ファン225が内蔵されて構成される。モータハウジング22は、略円筒のハウジング構造をなしている。モータハウジング22の前側かつ上側には、操作スイッチ151が設けられている。操作スイッチ151が前側にスライドされると、モータハウジング22の内部のコントローラ155にオン入力がされる。なお、コントローラ155には、工具本体11の後部に設けられる速度ダイヤル152から速度入力がされている。コントローラ155は、この速度入力とオン入力に基づいてモータ210の回転駆動を制御している。ちなみに、このモータハウジング22は、円筒形に形成されている。このため、このモータハウジング22の外周は手で握り易くされたマルチツール10のハンドル部17として設定されている。
【0019】
モータ210は、モータ軸211を回転駆動させる。モータ軸211は、後側ベアリング221および前側ベアリング222により回転可能に支持されている。このモータ210は、モータハウジング22に支持されるステータ212と、モータ軸211に支持されるロータ213とを有する。ロータ213には、コイル214が巻かれている。コイル214には、コンミテータ215を通じて電気が流される。この流される電気は、コントローラ155により制御されている。電気が流されたモータ210は、モータ軸211を回転駆動させる。回転駆動するモータ軸211は、冷却ファン225を回転させつつ、メカ部25に回転駆動力を入力する。
【0020】
モータ軸211の前部には、冷却ファン225が取り付けられている。冷却ファン225は、モータ軸211と一体に回転する遠心式ファンにて構成されている。冷却ファン225により発生させた冷却風は、モータ210やコントローラ155を冷却する。また、モータハウジング22の後部には吸気口231が設けられている。また、モータハウジング22の前部には排気口232が設けられている。これら吸気口231および排気口232は、モータハウジング22の内外を通気可能に連通している。また、吸気口231の下部には、ダクトホルダ85の係止爪部87を係止させる雌部24が設けられている。
【0021】
メカ部25は、
図3および
図4に示すように、メカハウジング26の内部にメカユニットが内蔵されて構成される。モータ軸211の前端には偏心軸部271が設けられている。この偏心軸部271は、前側ベアリング222の前側に設けられている。偏心軸部271は、モータ軸211の回転駆動を受けて偏心運動する。この偏心軸部271の外周には、スフィアベアリング273が取り付けられている。このスフィアベアリング273は、外輪の周面が球面形状となっている転がり軸受である。偏心軸部271の偏心運動は、スフィアベアリング273を介してスイングアーム28に伝達されている。スイングアーム28は、出力軸31に一体に取り付けられている。スイングアーム28は、スフィアベアリング273が当たる揺動受け部281と、出力軸31に一体に取り付けられる揺動支点部283とを有する。
【0022】
揺動受け部281は、上下方向では、スフィアベアリング273との間に適宜のクリアランスが設けられている。また、揺動受け部281は、左右方向では、スフィアベアリング273に対して密着している。このため、この揺動受け部281は、偏心軸部271の上下の偏心運動に関しては逃がすようにしながら、偏心軸部271の左右の偏心運動に関してはスフィアベアリング273を介して追従するようになっている。このため、揺動受け部281は、左右方向で揺動するように偏心軸部271の偏心運動に追従することとなる。この揺動受け部281は、一体にされ且つ揺動の支点となる揺動支点部283を回転方向で往復動させることとなる。揺動支点部283は、出力軸31と一体にされているので、この揺動支点部283の回転方向の往復動は、出力軸31を往復回動(往復回転運動)させることとなる。
【0023】
出力軸31は、上側ベアリング311および下側ベアリング312を介してメカハウジング26に支持されている。上側ベアリング311はニードルベアリングで構成され、下側ベアリング312はボールベアリングで構成される。このように支持される出力軸31は、モータ軸211と直交する上下方向に延在している。この出力軸31の下部は外部に露出され、出力軸31の下端には上記したツールホルダ32が取り付けられている。ツールホルダ32を介して出力軸31に取り付けられたカットソー90は、出力軸31の往復回動に応じて刃先部95を微小角度で往復動させて被加工材を切断可能とする。なお、メカハウジング26の外周の下部は、
図7に示すように円筒状の被締結部30として形成されている。この被締結部30には、軸カバー42の締結部48が締結される。
【0024】
吸塵装置40は、大まかに、吸塵カバー41と、吸気ダクト71とを有する。吸塵カバー41は、出力軸31の外周とカットソー90の外周とを覆う。吸塵カバー41は、第1カバーとしての軸カバー42と、第2カバーとしての部材カバー60とを有する。軸カバー42は、主に、出力軸31とカットソー90の取付部91とを覆う。部材カバー60は、主に、カットソー90の外周を覆う。
図2および
図3に示すように、軸カバー42は、カバー本体43と締結部48とを有する。カバー本体43は、上面視半円形の内部空間構造を有する。カバー本体43は、出力軸31の外周半分を覆うように設定されている。
【0025】
軸カバー42は、カットソー90の刃先部95となる前側を開口させてツールホルダ32の外周を覆う。この軸カバー42は、
図6に示すように、半円上壁44と半円下壁45と円弧周壁46とを有する。半円上壁44は本発明に係る上壁部に相当する。この半円上壁44は平面視半円形で形成される。半円下壁45も半円上壁44と対をなす平面視半円形で形成される。半円下壁45は本発明に係る下壁部に相当する。また、半円上壁44の円弧端縁442と半円下壁45の円弧端縁452とを円弧周壁46で連接するように形成されている。この円弧周壁46は、本発明に係る周壁部に相当する。つまり、軸カバー42のカバー本体43は、前側のみを開口させ、上下左右後に関して半円上壁44と半円下壁45と円弧周壁46とで閉塞された形状に形成されている。
【0026】
つまり、半円上壁44は上面441をなし、半円下壁45は下面451をなし、円弧周壁46は側面461をなしている。カバー本体43の前面には、開口部47が設けられている。開口部47は、左右方向に長く延びる長方形の形状で開口されている。開口部47は、カットソー90を前側に突出可能に開口される。カバー本体43は、樹脂を材料にして、締結部48のベース体481と一体に成形されている。カバー本体43は、上下で分割された上側部材50と下側部材55とを一体に合体して形成される。なお、この合体は、
図3および
図6に示すように、下側部材55に設けられた後端側の嵌合部57および重畳部58を上側部材50に嵌め合わせることによるものとなっている。
【0027】
半円上壁44には、締結部48が設けられている。締結部48は、半円上壁44と一体にされるベース体481と、半円上壁44と分離される周回部483と、これらを締結するクランプ螺子487とを有する。ベース体481の一端には、クランプ螺子487を挿通可能な螺子孔482が設けられている。ベース体481と周回部483とは、互いに連なった一体の略筒形に形成されている。このようなベース体481と周回部483とは、被締結部30の外周に対して密着可能な形状に形成されている。周回部483の他端には、クランプ螺子487を挿通可能な孔484が設けられている。クランプ螺子487は、孔484内で保持されるナット486に螺合される。このナット486は、回転不可に孔484内で保持される。
【0028】
すなわち、クランプ螺子487を締付け方向に螺旋回しすると、ベース体481の一端と周回部483の他端との間の距離を詰める。そうすると、ベース体481と周回部483とによる略筒形の内径は締まり、締結部48は被締結部30を締め込むこととなる。そして、ベース体481と周回部483とは被締結部30を把持することとなり、締結部48は被締結部30に対して締結したものとなる。この締結によって、吸塵カバー41はメカハウジング26に支持される。
【0029】
また、締結部48の下側には、カバー本体43の内部に出力軸31を突き出させる突出孔49が設けられている。ここで、突出孔49を通じてカバー本体43の内部に突き出された出力軸31の下端には、ツールホルダ32が設けられている。このため、軸カバー42が工具本体11に取り付けられた場合には、半円上壁44はツールホルダ32に対して上側に配置され、半円下壁45はツールホルダ32に対して下側に配置されることとなる。半円上壁44と半円下壁45とは、ツールホルダ32を上下で挟み込むように対面配置される。ここで、円弧周壁46は、工具本体11の持ち手側に向いて配置される。軸カバー42は、円弧周壁46をハンドル部17側に向けて工具本体11に取り付けられる。
【0030】
これに対し、クランプ螺子487を緩めると、ベース体481と周回部483とによる略筒形の内径は緩まり、被締結部30に対する締結部48の締結は解除される。つまり、ベース体481と周回部483とによる被締結部30の把持は解除される。このように締結部48の締結が解除されると、ユーザはメカハウジング26に対して吸塵カバー41を回転周方向で変位させることができる。つまり、半円上壁44、半円下壁45、円弧周壁46の円弧方向は、被締結部30に締結される締結部48(出力軸31)を中心として描かれる円弧の延在方向である。このため、メカハウジング26に対して軸カバー42(吸塵カバー41)を円弧方向で変位させて再びクランプ螺子487を締めると、締結部48は被締結部30と締結し、吸塵カバー41はメカハウジング26に支持されることとなる。
【0031】
図6等に示すように、半円上壁44には、7つの吸気孔51が設けられている。吸気孔51は、本発明に係る吸気用開口部に相当する。この吸気孔51は、上面を開口するようにカバー本体43(軸カバー42)の内部と外部とを連通して形成される。7つの吸気孔51は、上面441をなす半円上壁44において回転周方向(円弧方向)で等間隔で並べられている。7つの吸気孔51のそれぞれは、半円上壁44を上面視略長方形で貫通されている。
図6に示すように、円弧方向で並べられた7つの吸気孔51のうち中央に配置される中央吸気孔52は、半円上壁44の円弧の中央に位置している。これら7つの吸気孔51は、吸気ダクト71の吸気口部82が差し込まれて接続可能となっている。なお、この上面441は、軸カバー42のうちメカハウジング26と対面する。この回転周方向は、円弧周壁46が延びる方向と一致する方向であり、出力軸31の回転方向とも一致する方向である。
【0032】
その他の吸気孔51は、中央吸気孔52を境界に、左側に3つ並べられると共に、右側に3つ並べられている。このように、吸気用開口部としての吸気孔51は、出力軸31の回転周方向に7つ並べられて設けられている。このため、7つの吸気孔51のそれぞれは、軸カバー42を回転変位させて工具本体11に支持される各位置で、吸気ダクト71と接続可能となっている。例えば
図10に示すように、吸塵カバー41を左側に回転させた場合には、中央吸気孔52の左隣の吸気孔51が工具本体11の真下に位置するようになっている。このような軸カバー42の位置で被締結部30に締結部48を締結させると、この左隣の吸気孔51に吸気ダクト71を接続することができる。ところで、吸気孔51の開口の大きさは、吸気ダクト71の吸気口部82が隙間なく嵌まる大きさに設定されている。ちなみに、吸気孔51に吸気ダクト71の吸気口部82を差し込むには、この吸気孔51を工具本体11の真下に位置させておくことが好ましい。
【0033】
半円上壁44には、上方に突出する係止ボス53が出力軸31を挟んだ左右対称位置に1つずつ設けられている。半円下壁45にも、下方に突出する係止ボス54が出力軸31を挟んだ左右対称位置に1つずつ設けられている。これらの係止ボス53,54は、次に説明する部材カバー60の係止孔66が係止されるボスとなっている。これらの係止ボス53,54は、半円上壁44および半円下壁45のうち開口部47に近い箇所に設けられている。これらの係止ボス53,54に係止孔66を係止させることにより、開口部47の前側に部材カバー60が取り付けられる。この部材カバー60は、本発明に係る第2カバーに相当する。部材カバー60は、刃先部95を除いてカットソー90の周囲を覆う。
【0034】
この部材カバー60は、軸カバー42の前側に取り付けられる。部材カバー60は、前後に連通されながら上下左右を囲う角筒形をなしている。部材カバー60は、ツールホルダ32からカットソー90の刃先部95に向かう方向に開口して延在する筒形状をなしている。部材カバー60の後部および前部には、後部開口部61および前部開口部62が設定されている。後部開口部61は、軸カバー42の開口部47の形状と一致する角形形状に設定されている。この前部開口部62は、カットソー90の刃先部95より僅かに前側に出されるように設定されている。この部材カバー60は、力が加わると容易に弾性変形可能な柔らかい樹脂を材料に成形されている。つまり、部材カバー60は、カットソー90の刃先部95から取付部91に向かう方向で伸縮可能に形成されている。
【0035】
部材カバー60の形状は、蛇腹部63と取付部64とに区分けできる。蛇腹部63は、例えば電気配管などで使用されるフレキシブルチューブのように蛇腹形状にて成形されている。具体的には、蛇腹部63は、凹凸形状が連続で繰り返されるように成形されている。この凹凸形状は、上下の面に関しては左右方向に延びるように成形され、左右の面に関しては上下方向に延びるように成形されている。このように蛇腹部63は、出力軸31から刃先部95に向かう前方向で伸縮可能となっている。つまり、開口部61,62の間の長さは、伸縮方向で相対的に変形することができる。なお、伸縮方向で相対的に変形する部材カバー60は、自身の材料性質により弾性復元して元通りとなる。
【0036】
取付部64は、蛇腹部63の後側の範囲に設定されている。この取付部64は、平滑端部65に係止孔66を設けることにより形成される。平滑端部65は、上記した蛇腹部63と相違して滑らかな平板形状に成形されている。この平滑端部65には上下で2つずつの係止孔66が設けられている。係止孔66は、上記した係止ボス53,54が嵌合される雌孔である。このため、係止孔66は、上記した係止ボス53,54と対応する位置で平滑端部65に設けられている。
【0037】
上記した係止孔66に係止ボス53,54を嵌合すると、部材カバー60と軸カバー42とは一体となって吸塵カバー41をなす。部材カバー60の前端縁68は、被加工材に当接する端縁である。カットソー90が切り込んでいくと部材カバー60の前端縁68が当接して押され、
図8および
図9に示すように蛇腹部63は前後方向で縮まるように作用する。また、部材カバー60は、前端縁68の被加工材との当接が離されると、弾性復元により元に戻るようになっている。なお、部材カバー60を成形する樹脂としては、部材カバー60内部のカットソー90を視認できるように、例えば透明樹脂のように透過性を有する樹脂であることが好ましい。さらに言えば、部材カバー60のうちカットソー90が存する箇所については、切込みなどを入れて外部からカットソー90の刃先部95を視認可能とするものであってもよい。
【0038】
吸気ダクト71は、工具本体11の真下に配置されて工具本体11に保持される。具体的には、吸気ダクト71は、工具本体11の真下に配置されるダクト本体72と、ダクト本体72をモータハウジング22と一体とするダクトホルダ85とを有する。ダクト本体72は、前後に延びる筒形に形成される。吸気ダクト71は、ダクトホルダ85によりモータハウジング22に支持されている。ダクト本体72は、後側の後ダクト部73と、前側の前ダクト部80とに機能的に区分けできる。ダクト本体72は、カバー本体43と同様に、樹脂を材料にしてブロー成形により成形されている。
【0039】
後ダクト部73と前ダクト部80とは互いに連なってダクト本体72をなしており、後ダクト部73と前ダクト部80との両者は、前後方向に延びている。後ダクト部73は、ハンドル部17の真下にて、モータハウジング22と接触するまで近接して配置されている。後ダクト部73の後端には排気口部74が設けられる。後ダクト部73の下側面には、3つの凹部751,752,753を適宜の間隔で設定することにより凹凸形状が設けられている。これら3つの凹部751,752,753は、ユーザがハンドル部17を手で握った場合に、握った手の指が入り込むような形状で形成されている。後ダクト部73には、前から1つ目の凹部751と2つ目の凹部752との間に、上下方向で設定される段差部76が設けられている。この段差部76は、モータハウジング22の外周デザインに対応して設定されている。後ダクト部73の後部には、ホルダ凹部77が設けられている。ホルダ凹部77は、排気口部74の前側にて、一段上側に凹まされる形状に設定されている。ホルダ凹部77には、ダクトホルダ85のホルダ本体86が嵌る。
【0040】
ダクトホルダ85は、ダクト本体72を保持するホルダ本体86と、ホルダ本体86をモータハウジング22と係止する係止爪部87とを有する。ホルダ本体86は、ダクト本体72のホルダ凹部77に嵌まるように湾曲した形状に形成される。係止爪部87は、ホルダ本体86の両端に設定されており、吸気口231の下部の雌部24に係止する爪形に設定されている。このようにダクトホルダ85は、ホルダ凹部77に嵌まりつつ係止爪部87にて工具本体11の雌部24に係止し、ダクト本体72を工具本体11と一体に支持する。
【0041】
前ダクト部80は、ハンドル部17とメカ部25とに跨る位置の真下に配置されている。前ダクト部80は、後ダクト部73と第1折曲部79を介して連なっている。第1折曲部79は、後ダクト部73から前ダクト部80を下側に向けて段差形に曲げていく形状に設定されている。このため、前ダクト部80は、工具本体11から下側へ空間Sだけ離れて配置されている。前ダクト部80の前端には、第2折曲部81を介して吸気口部82が設けられる。第2折曲部81は、
図2に示すように、吸気口部82を下向きとするように前ダクト部80の前端箇所を下側に曲げる形状に設定されている。
【0042】
下向きにされた吸気口部82は、軸カバー42の吸気孔51に差し込まれる。この吸気口部82は、クランプ螺子487を緩めて吸塵カバー41を回転周方向で変位させれば、7つの吸気孔51のいずれにも差し込むことができる。ただ、上記したように、吸気ダクト71は工具本体11の真下に配置されている。このため、吸気口部82が差し込まれる吸気孔51は、回転周方向で変位した7つの吸気孔51のうち工具本体11の真下に位置する吸気孔51となる。例えば、
図1および
図2では工具本体11の真下の中央吸気孔52に吸気口部82が差し込まれており、
図6では工具本体11の真下の中央吸気孔52の左隣の吸気孔51に吸気口部82が差し込まれている。
【0043】
ちなみに、前後方向に延びる前ダクト部80の延在部83を下側から上側に押すと、上記した工具本体11との空間Sを狭めるように前ダクト部80は上側に変位する。そうすると、吸気孔51に差し込まれていた前ダクト部80の吸気口部82が、吸気孔51から抜けるように変位することとなる。このように吸気口部82を吸気孔51から抜いた後には、クランプ螺子487を緩めて吸塵カバー41を回転周方向で変位させることができる。なお、このような吸塵カバー41の回転周方向の変位は、一般的にはツールホルダ32に保持されるカットソー90の突出向きに合わせられたものとなっている。
【0044】
上記したマルチツール10の吸塵装置40によれば、次のような作用効果を奏することができる。すなわち、上記した吸塵装置40によれば、軸カバー42は、平面視半円形で互いに対面する半円上壁44および半円下壁45と、円弧の端縁442,452同士を連接する円弧周壁46とを有する。ここで、円弧周壁46は工具本体11のハンドル部17側に向いて配置されるので、切断により生じた切断粉は、ハンドル部17を握る持ち手側に向かってきても円弧周壁46にて遮られることとなる。これによって、切断により生ずる切断粉は作業者に降りかからないようになって切断時の作業性を高めることができる。特に家屋天井を切断するような場合には、ハンドル部17を握る持ち手側が下側となって切断により生ずる切断粉が作業者に降りかかってしまい易い。しかしながら、上記した吸塵装置40によれば、生じた切断粉を円弧周壁46により受け止めることができ、作業者の作業性を高めることができる。
【0045】
また、上記した吸塵装置40によれば、吸気孔51が円弧方向に7つ並べられ、吸気孔51のそれぞれは回転変位させて工具本体11に支持される各位置で吸気ダクト71と接続することができる。これによって、工具本体11に対してカットソー90の刃先部95側を回転変位させ、これに応じて軸カバー42を回転変位させても、吸気ダクト71に吸気孔51を簡単に接続させることができる。したがって、カットソー90の刃先部95側を回転変位させる場合であっても、切断粉の吸引を良好に行えて作業者の作業性を高めることができる。また、上記した吸塵装置40によれば、吸気ダクト71は工具本体11のモータハウジング22に支持されているので、切断粉の吸引を行う吸気ダクト71を安定して支持することができて、作業者の作業性を高めることができる。
【0046】
また、上記した吸塵装置40によれば、吸気孔51は、軸カバー42のうち工具本体11と対面する上面441に設定されているので、軸カバー42に対して吸気ダクト71の接続位置を上側に設定することができて、吸気ダクト71を設けるにあたって吸気ダクト71の上下方向の寸法を小さくすることができる。これによって、マルチツール10の構成をコンパクトに纏めることができてマルチツール10の操作性を高めることができる。また、上記した吸塵装置40によれば、ツールホルダ32からカットソー90の刃先部95に向かう方向に開口して延在する筒形状をなす部材カバー60が取り付けられている。この部材カバー60はカットソー90の刃先部95から取付部91に向かう方向で伸縮可能に形成されているので、部材カバー60はカットソー90の刃先部95周囲を覆うことができる。これによって、カットソー90の刃先部95から生じる切断粉が撒き散るのを抑えながら切断粉の吸引を好ましく行うことができる。
【0047】
なお、本発明に係る電動工具にあっては、上記した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更を適宜に加えることができる。例えば、上記した吸気ダクト71の前ダクト部80にあっては次のように構成されるものであってもよい。
図11の左側面図の符号71Aは、吸気ダクト71に関して接続箇所が相違する変形例を示している。この吸塵カバー41Aに設けられる吸気孔51Aは、側面461をなす円弧周壁46に設けられている。このため、この吸気孔51Aに接続される吸気ダクト71Aの前ダクト部80Aも、これに対応して第3折曲部841および第4折曲部842が設けられている。
【0048】
第3折曲部841は、前ダクト部80Aの前側範囲が下側に向くように曲げていく形状に設定されている。また、第4折曲部842は、吸気口部82Aを前向きとするように前ダクト部80の前端箇所を前側に曲げる形状に設定されている。このように吸気ダクト71を設定した場合にも、吸気口部82Aの開口方向と吸塵カバー41の開口方向とを一致させることができて、効率良く吸塵することができる。また、上記した吸気孔51,51Aにあっては、その他の吸塵装置の吸気ノズルが差し込まれて吸気されるものであってもよい。
【0049】
図12は、鋸刃部材としてのカットソー90をラウンドソー90Aに交換したマルチツール10Aを示す斜視図である。このマルチツール10Aは、鋸刃部材がラウンドソー90Aであることに関して以外、上記したマルチツール10と同様に構成される。このラウンドソー90Aの刃先部95Aは上面視円弧形に形成される。なお、この刃先部95Aの円弧形は、180〜270度の角度に亘るように設定されてもよいし、360度全周の角度に亘って設定されるものであってもよい。なお、このラウンドソー90Aの刃先部95Aにおける『鋸刃部材の刃先』にあっては、この刃先部95Aのうち切断材と対面する範囲の刃先部である。つまり、往復動するラウンドソー90Aは、この切断材と対面する範囲の刃先部で切断材を切断する。ちなみに、図示される部材としては、例えば株式会社マキタ製TMA006BIMなどが挙げられる。このようなラウンドソー90Aが鋸刃部材としてツールホルダ32に取り付けられる場合であっても、上記した吸塵装置40の作用効果を略同様に奏することができる。
【0050】
図13は、軸カバー42Aの展開図である。この軸カバー42Aは上記した軸カバー42の変形例となっている。すなわち、上記した軸カバー42は、分離される上側部材50と下側部材55とを一体に合体させるにあたって、下側部材55の嵌合部57および重畳部58を上側部材50に嵌め合わせることによるものとなっていた。これに対し、
図13に示す軸カバー42Aは、嵌合部57がヒンジ構造をなすヒンジ部57Aに置き換えられている。すなわち、ヒンジ部57Aは、ヒンジピン58Aを介して上側部材50Aと下側部材55Aとが一体にヒンジ結合されている。
【0051】
具体的には、上側部材50Aにはヒンジピン58Aを支持する上側軸受部591が対で設けられると共に、下側部材55Aにもヒンジピン58Aを支持する下側軸受部592が対の上側軸受部591の間に設けられている。これにより、上側部材50Aと下側部材55Aとは、ヒンジピン58Aを介して相対回動させることができる。なお、この軸カバー42Aは、上記した軸カバー42と比較してヒンジ部57Aの構造しか相違しない。このため、その他の同一に構成される箇所については、上記した軸カバー42に付した符号を図面に付して説明を省略する。