特許第6621704号(P6621704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621704
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】発電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20191209BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20191209BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20191209BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20191209BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   H02J7/00 A
   H02J3/32
   H02J3/38 130
   H02J7/35 B
   H02J3/00 170
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-85690(P2016-85690)
(22)【出願日】2016年4月22日
(65)【公開番号】特開2017-195728(P2017-195728A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2019年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕子
【審査官】 下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−027679(JP,A)
【文献】 特開2014−033539(JP,A)
【文献】 特開2010−022122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
H02J 3/00 − 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置と、
蓄電池を有し、前記発電装置から出力される発電電力と前記蓄電池の充放電電力との総和であるシステム出力電力の変動を抑制する蓄電池装置と、
前記発電電力の変動が大きくなるか否かを判定する判定部を有し、前記判定部により前記発電電力の変動が大きくなると判定された場合、前記発電電力の変動が大きくなる時間帯に、前記発電装置及び前記蓄電池装置の運転を停止する出力制御装置と、備える
発電システム。
【請求項2】
前記出力制御装置は、前記発電電力の変動が大きくなる時間帯に、前記システム出力電力を、許容範囲内の変化率で、零まで低下させる制御を行うとともに、前記制御の期間中の所定のタイミングで前記発電装置の運転を停止し、前記制御の終了時に前記蓄電池装置の運転を停止する
請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記発電電力の変動予測の情報に基づいて、前記発電電力の変動が大きくなるか否かを判定する
請求項1に記載の発電システム。
【請求項4】
さらに、前記発電電力の変化量を逐次算出する変化量算出部を備え、
前記判定部は、前記変化量算出部の算出結果に基づいて、前記発電電力の変化量の値が正の値となる状態又は負の値となる状態が所定時間継続している場合に、前記発電電力の変動が大きくなると判定する
請求項1に記載の発電システム。
【請求項5】
前記出力制御装置は、前記判定部により前記発電電力の変動が大きくなると判定されてから所定時間経過した後に、前記発電装置及び前記蓄電池装置の運転の停止動作を開始する
請求項1に記載の発電システム。
【請求項6】
発電装置と、
蓄電池を有し、前記発電装置から出力される発電電力と前記蓄電池の充放電電力との総和であるシステム出力電力の変動を抑制する蓄電池装置と、
前記発電電力の変動が大きくなるか否かを判定する判定部を有し、前記判定部により前記発電電力の変動が大きくなると判定された場合、前記発電電力の変動が大きくなる時間帯に、前記システム出力電力が所定値一定で出力されるように、前記発電装置及び前記蓄電池装置の運転制御を行う出力制御装置と、備える
発電システム。
【請求項7】
前記出力制御装置は、前記発電電力の変動が大きくなる時間帯に、前記システム出力電力を、許容範囲内の変化率で、前記所定値まで変化させる制御を行い、その後、前記システム出力電力が前記所定値一定で出力されるように、前記発電装置及び前記蓄電池装置の運転制御を行う
請求項6に記載の発電システム。
【請求項8】
前記所定値が、前記発電電力の変動が大きくなる時間帯の前記発電電力の最小値である
請求項6に記載の発電システム。
【請求項9】
前記所定値が、前記発電電力の変動が大きくなる時間帯の前記発電電力の平均値である
請求項6に記載の発電システム。
【請求項10】
発電装置と、
蓄電池を有し、前記発電装置から出力される発電電力と前記蓄電池の充放電電力との総和であるシステム出力電力の変動を抑制する蓄電池装置と、
前記発電電力の変動が大きくなるか否かを判定する判定部を有し、前記判定部により前記発電電力の変動が大きくなると判定された場合、前記発電電力の変動が大きくなる時間帯に、前記発電装置で生成された前記発電電力が前記蓄電池装置により全て充電されるように、前記発電装置及び前記蓄電池装置の運転制御を行う出力制御装置と、を備える
発電システム。
【請求項11】
前記出力制御装置は、前記発電電力の変動が大きくなる時間帯に、前記システム出力電力を、許容範囲内の変化率で、零まで低下させる制御を行い、その後、前記発電装置で生成された前記発電電力が前記蓄電池装置により全て充電されるように、前記発電装置及び前記蓄電池装置の運転制御を行う
請求項10に記載の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題等を考慮して太陽光発電システムの導入が促進されている。しかしながら、太陽光発電の出力電力は天候による変動が大きいため、太陽光発電システムと連系する電力系統の電圧変動や周波数変動を引き起こす可能性がある。この対策として、従来、太陽光発電システムに発電電力の変動抑制用の蓄電池システムを併設し、蓄電池システムの充放電により電力系統への出力電力を平滑化する技術が提案されている。この従来技術として、例えば、特許文献1に、太陽光発電システムの充放電制御手法に関する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1には、「太陽光発電システムは、電力系統に連系され、太陽光を用いて発電する発電装置と、電力を蓄電可能な蓄電手段と、発電装置と電力系統との間の配線の所定部分を通過する電力を検出する発電電力検出部と、蓄電手段の充放電を制御する充放電制御部とを備えている。」との記載がある。また、特許文献1には、「充放電制御部は、発電装置の発電電力が第1電力から第2電力に変化した際の変化量が所定の変化量以上であり、かつ、第1電力から第2電力に変化した時点から待機時間内に第2電力から第1電力近傍の発電電力に戻らない場合に、蓄電手段の充放電制御を行う。」との記載もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−097817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄電池システムが併設された太陽光発電システムにおいて、例えば、最大出力の発電動作と零出力の動作とが繰り返された場合、すなわち、発電電力の大きな変動が繰り返し発生した場合、次のような課題が発生し得る。この場合、蓄電池において激しい充放電が繰り返されるので、蓄電池の劣化が進行するという課題が発生する。
【0006】
本発明はこの課題を解決するためになされてものである。本発明の目的は、蓄電池システムが併設された発電システムにおいて、発電電力の大きな変動が発生しても、蓄電池の劣化の進行を抑制することが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、発電装置と、発電装置から出力される発電電力と蓄電池の充放電電力との総和であるシステム出力電力の変動を抑制する蓄電池装置と、出力制御装置とを備える発電システムを提供する。また、本発明の発電システムは、出力制御装置が、発電電力の変動が大きくなるか否かを判定する判定部を有する。
【0008】
そして、本発明の第1の発電システムでは、出力制御装置は、判定部により発電電力の変動が大きくなると判定された場合、発電電力の変動が大きくなる時間帯に、発電装置及び蓄電池装置の運転を停止する。また、本発明の第2の発電システムでは、出力制御装置は、上述の判定結果が得られた場合、発電電力の変動が大きくなる時間帯に、システム出力電力が所定値一定で出力されるように、発電装置及び蓄電池装置の運転制御を行う。さらに、本発明の第3の発電システムでは、出力制御装置は、上述の判定結果が得られた場合、発電電力の変動が大きくなる時間帯に、発電装置で生成された発電電力が蓄電池装置により全て充電されるように、発電装置及び蓄電池装置の運転制御を行う。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の本発明の発電システムによれば、発電電力の大きな変動が発生しても、蓄電池の劣化の進行を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る太陽光発電システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る太陽光発電システムの統括コントローラーの内部構成を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る太陽光発電システムのシステム目標出力演算部の内部構成を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態に係る太陽光発電システムにおけるシステム出力の出力制御例を説明するための図である。
図5】第1の実施形態に係る太陽光発電システムにおけるシステム出力の目標値の修正処理の手順を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2の実施形態に係る太陽光発電システムにおけるシステム出力の第1の出力制御例を説明するための図である。
図7】第2の実施形態に係る太陽光発電システムにおけるシステム出力の第2の出力制御例を説明するための図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係る太陽光発電システムの統括コントローラーの内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の各種実施形態に係る発電システムの構成及び動作について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、下記各種実施形態では、発電システムとして、蓄電池システムが併設された太陽光発電システムを例に挙げて説明する。
【0012】
<第1の実施形態>
[太陽光発電システムの全体構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る太陽光発電システムの全体構成を示すブロック図である。太陽光発電システム100は、図1に示すように、発電装置部1(発電装置)と、蓄電池システム2と、発電量予測部3とを備える。なお、本実施形態では、発電量予測部3が太陽光発電システム100に含まれる構成例を説明するが、本発明はこれに限定されず、発電量予測部3が太陽光発電システム100の外部に設けられていてもよい。
【0013】
発電装置部1の電力出力端は、外部の電力系統200に電気的に接続される。また、蓄電池システム2(後述の蓄電池装置6)の電力の充放電端は、発電装置部1の電力出力端と電力系統200とを繋ぐ配線の途中(図1中の接続点cp)に電気的に接続される。それゆえ、本実施形態の太陽光発電システム100では、蓄電池システム2により入出力される後述の充放電電力Pbattは、接続点cpにおいて、発電装置部1から出力された発電電力Ppvに加算又は減算される。そして、発電電力Ppvと充放電電力Pbattとの総和が、太陽光発電システム100のシステム出力Psys(システム出力電力)として、電力系統200に供給される。
【0014】
発電量予測部3は、例えば気象等の情報に基づいて、未来の発電電力Ppvの変動を予測し、その予測した発電電力Ppvの変動情報(以下、「出力予測値Ppv_pre」と称す)を蓄電池システム2内の後述の統括コントローラー10に出力する。なお、出力予測値Ppv_preは、現時刻から所定時間後(1サンプリング時間先)の予測値のみであってもよいし、現時刻から特定期間に渡って所定のサンプリング時間間隔で得られる複数の予測値であってもよい。
【0015】
また、発電量予測部3の構成は、未来の発電電力Ppvの変動を予測できる構成であれば、任意の構成を適用することができる。例えば、発電量予測部3の構成は、外部(例えば気象庁や気象関連会社など)から供給される発電装置部1の設置場所の気象情報等を用いて未来の発電電力Ppvの変動を予測する構成であってもよい。また、例えば、発電量予測部3の構成は、例えば、発電装置部1の設置場所に、気象情報等を取得可能な装置(気象計測器、カメラ等)を設置し、その装置から送信される情報に基づいて、未来の発電電力Ppvの変動を予測する構成であってもよい。なお、発電量予測部3で用いられる発電電力Ppvの変動予測手法もまた、未来の発電電力Ppvの変動を予測できる手法であれば、任意の手法を適用することができる。
【0016】
[発電装置部の構成]
発電装置部1は、図1に示すように、太陽光パネル4と、太陽光用パワーコンディショナー5(以下、「太陽光用PCS5」と称す)とを有する。発電装置部1では、太陽光パネル4の発電電力の出力端が太陽光用PCS5の入力端に電気的に接続され、太陽光用PCS5の出力端が電力系統200に電気的に接続される。
【0017】
太陽光パネル4は、太陽光を電力に変換して発電する。太陽光パネル4で生成された発電電力(直流電力)は太陽光用PCS5に出力される。なお、太陽光パネル4は、例えば、単結晶シリコン型、多結晶シリコン型、微結晶シリコン型、アモルファスシリコン型等のシリコン系の太陽電池を複数直並列接続することにより構成することができる。また、太陽光パネル4を、例えば、InGaAs系、GaAs系、CIS系(カルコバライト系)等の化合物系の太陽電池を複数直並列接続することにより構成してもよい。さらに、本実施形態では、太陽光パネル4を構成する太陽電池として、例えば、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池等の有機系の太陽電池を用いてもよい。
【0018】
太陽光用PCS5は、太陽光パネル4から出力される直流の発電電力を交流の発電電力Ppvに変換し、該変換した発電電力Ppvを電力系統200に供給(出力)する。すなわち、太陽光パネル4で発電された電力は、太陽光用PCS5を介して、電力系統200に供給される。それゆえ、電力系統200に供給される発電電力Ppvは、太陽光用PCS5の容量により制限される。
【0019】
[蓄電池システムの構成]
蓄電池システム2は、図1に示すように、蓄電池装置6と、電力制御装置7(出力制御装置)とを備える。蓄電池システム2は、発電装置部1から出力される発電電力Ppvの変動を、蓄電池装置6(蓄電池8)の充放電動作により平滑化して補償する。
【0020】
蓄電池装置6は、蓄電池8と、蓄電池用パワーコンディショナー9(以下、「蓄電池用PCS9」と称す)とを有する。蓄電池装置6では、蓄電池8の充放電端が蓄電池用PCS9の一方の入出力端に電気的に接続され、蓄電池用PCS9の他方の入出力端が、発電装置部1の電力出力端と電力系統200とを繋ぐ配線上の接続点cpに電気的に接続される。なお、蓄電池用PCS9及び上述の太陽光用PCS5は、系統連系インバーターと称される場合もある。
【0021】
蓄電池8は、例えば、鉛蓄電池、リチウムイオン蓄電池、ニッケル・水素蓄電池などにより構成される。
【0022】
蓄電池用PCS9は、放電時には、蓄電池8から出力される直流電力を交流に変換し、該変換した電力(放電電力)を、発電装置部1の電力出力端と電力系統200とを繋ぐ配線上の接続点cpに出力する。これにより、蓄電池装置6から電力系統200側に電力が放電される。また、蓄電池用PCS9は、充電時には、接続点cpから入力された交流電力(充電電力)を直流に変換し、該変換した電力を蓄電池8に出力する。これにより、蓄電池装置6に電力が充電される。すなわち、蓄電池8は、電力系統200に対し、蓄電池用PCS9を介して充放電動作を行う。なお、以下では、蓄電池装置6の充放電動作で生成される放電電力及び充電電力をまとめて「充放電電力Pbatt」と称す。
【0023】
電力制御装置7は、太陽光発電システム100のシステム出力Psysの変動を抑制(補償)するための機能(変動抑制機能)を有する。例えば、雲などにより生成される日影等の影響に起因する発電電力Ppvの変動成分は、電力制御装置7が充放電電力Pbattを調整することにより相殺(補償)され、システム出力Psysが平滑化される。
【0024】
電力制御装置7は、図1に示すように、統括コントローラー10と、通信ネットワーク11(インターネット等)と、外部コントローラー12と、端末13とを有する。電力制御装置7内において、統括コントローラー10は、通信ネットワーク11を介して、外部コントローラー12と通信可能に接続され、外部コントローラー12は、シリアルバス又はパラレルバス等を介して端末13に接続される。
【0025】
このような構成の電力制御装置7では、オペレータが、太陽光発電システム100から離れた場所に設置された外部コントローラー12を介して、統括コントローラー10の処理動作を制御することができる。例えば、オペレータが端末13を操作することにより、外部コントローラー12を介して統括コントローラー10にアクセスし、各種制御に必要な各種設定値などを入力することができる。また、例えば、オペレータは、太陽光発電システム100の状態(動作状況)を端末13に表示することができる。なお、本実施形態では、電力制御装置7に外部コントローラー12、通信ネットワーク11及び端末13が含まれる構成例を説明するが、本発明はこれに限定されず、これらの構成が電力制御装置7の外部に設けられていてもよい。
【0026】
[統括コントローラーの構成及び各種制御機能]
統括コントローラー10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置により構成され、発電装置部1(太陽光用PCS5)、発電量予測部3並びに蓄電池装置6(蓄電池8及び蓄電池用PCS9)のそれぞれに電気的に接続される。そして、統括コントローラー10は、後述の蓄電池装置6の各種動作の制御に必要な各種演算制御だけでなく、太陽光発電システム100の動作全般の制御を行う。なお、統括コントローラー10は、発電装置部1、発電量予測部3及び蓄電池装置6のそれぞれに通信網を介して接続されていてもよい。この場合、通信接続態様は任意に設定することができ、例えば、無線通信及び有線通信のいずれの態様でも適用することができる。
【0027】
統括コントローラー10は、太陽光用PCS5により計測される発電電力Ppvのモニター信号(以下、「発電電力モニター信号Ppv_fb」と称す)を取得する。なお、発電電力モニター信号Ppv_fbは、太陽光用PCS5とは別個に設けられた電力計等により計測されてもよい。また、統括コントローラー10は、発電量予測部3で生成された出力予測値Ppv_preを取得する。さらに、統括コントローラー10は、蓄電池8から充電状態の情報を含む信号(以下、「SOC(State Of Charge)信号」と称す)も取得する。なお、統括コントローラー10によるこれらの各種信号(各種情報)の取得動作は、定期的に行ってもよいし、不定期で行ってもよい。
【0028】
また、統括コントローラー10は、太陽光用PCS5から入力された発電電力モニター信号Ppv_fb及び発電量予測部3から入力された出力予測値Ppv_preに基づいて、電力変動を抑制(補償)するための各種演算を行う。具体的には、統括コントローラー10は、システム出力Psysの変動抑制の目安となる目標値(後述の図4中のPsyst、Plim、Psyst_c)を算出する。さらに、統括コントローラー10は、算出されたシステム出力Psysの目標値に基づいて、蓄電池装置6により生成される充放電電力Pbattの目標値(以下、「充放電目標値Pbt」と称す)を算出する。これらの演算を実行するための統括コントローラー10の内部構成については、後で詳述する。
【0029】
また、統括コントローラー10は、算出された充放電目標値Pbtを蓄電池用PCS9に出力する。なお、蓄電池用PCS9(蓄電池装置6)は、統括コントローラー10から入力された充放電目標値Pbtに基づいて、電力系統200に対する充放電電力Pbattの調整(制御)を行う。具体的には、蓄電池用PCS9(蓄電池装置6)は、充放電電力Pbattが充放電目標値Pbtと同じ値となるように制御する。これにより、システム出力Psysが、システム出力Psysの目標値と略同じ値となるように制御される。
【0030】
さらに、統括コントローラー10は、発電量予測部3から入力された出力予測値Ppv_preに基づいて、システム出力Psysの目標値を修正する機能(目標値修正機能)を有する。本実施形態では、出力予測値Ppv_preに基づいて、今後、発電電力Ppvの変動が大きくなると予想されたときには、その時点から、この目標値修正機能により、システム出力Psysを許容範囲内の変動率で低減させる処理が開始される。そして、本実施形態では、この目標値修正機能の作動により、システム出力Psys(システム出力Psysの目標値)が零になれば、最終的に、太陽光発電システム100全体(発電装置部1及び蓄電池システム2の両方)を停止させる。
【0031】
[統括コントローラーの内部構成]
図2は、統括コントローラー10の内部構成例を示す機能ブロック図である。統括コントローラー10は、図2に示すように、後述の平滑処理部22を含むシステム目標出力演算部20と、差分演算部21とを有する。なお、システム目標出力演算部20の一方の入力端は、太陽光用PCS5に接続され、他方の入力端は、発電量予測部3に接続される。また、システム目標出力演算部20の出力端は、差分演算部21の「+」側の入力端に接続される。また、差分演算部21の「−」側の入力端は、太陽光用PCS5に接続され、差分演算部21の出力端は、蓄電池用PCS9に接続される。
【0032】
システム目標出力演算部20は、太陽光用PCS5から入力された発電電力モニター信号Ppv_fbと、発電量予測部3から入力された出力予測値Ppv_preとに基づいて、システム出力Psysの目標値(制御目標値)を算出する。次いで、システム目標出力演算部20は、算出されたシステム出力Psysの目標値(図2中のPsyst、Plim又はPsyst_c)を差分演算部21に出力する。なお、システム目標出力演算部20の内部構成及び具体的な演算内容については、後で詳述する。
【0033】
また、システム目標出力演算部20は、入力された出力予測値Ppv_preに基づいて、今後、発電電力Ppvの変動が大きくなるか否かの判定(予測)を行う。そして、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された場合、システム目標出力演算部20は、システム出力Psysの目標値の演算制御を通常時の演算制御から、目標値を時間とともに所定の変化率で変化させる演算制御に切り替える。
【0034】
本実施形態において、発電電力Ppvの変動が小さく、システム出力Psysの変動が許容範囲内である時間帯では、発電電力モニター信号Ppv_fbに基づいてシステム出力Psysの目標値が算出される(通常の演算制御が行われる)。なお、以下では、この通常時の演算制御で算出されるシステム出力Psysの目標値を「システム目標出力Psyst」と称す。
【0035】
一方、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された場合には、それ以降、発電電力モニター信号Ppv_fbの変動とは関係なく、時間とともに所定の変化率で変化するシステム出力Psysの目標値(以下、「補正下降出力Plim」と称す)が算出される。それゆえ、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された場合には、補正下降出力Plimが、システム出力Psysの目標値としてシステム目標出力演算部20から差分演算部21に出力される。なお、補正下降出力Plimは、時間とともに制約条件に規定されたシステム出力Psysの許容範囲内の変化率で低下する。
【0036】
また、本実施形態では、補正下降出力Plimが所定値(本実施形態では零)まで低下すると、それ以降、システム目標出力演算部20は、該所定値をシステム出力Psysの目標値(以下、「システム目標出力Psyst_c」と称す)として一定出力する。なお、このシステム目標出力Psyst_cの出力動作は、通常時のシステム出力Psysの目標値の演算制御が可能と判断されるまで継続される。また、システム目標出力Psyst_cの出力期間(本実施形態では、太陽光発電システム100の停止期間)は、例えば気象状況、蓄電池システム2の性能等に応じて任意に設定することができる。
【0037】
差分演算部21は、システム目標出力演算部20から入力されたシステム出力Psysの目標値から、太陽光用PCS5から入力された発電電力モニター信号Ppv_fbを差し引いた差分信号を算出する。そして、差分演算部21は、算出した差分信号を、充放電目標値Pbtとして蓄電池用PCS9に出力する。
【0038】
図3は、システム目標出力演算部20の内部構成例を示す演算ブロック図である。システム目標出力演算部20は、図3に示すように、平滑処理部22と、目標値修正部23とを有する。また、目標値修正部23は、制約条件記憶部24、変動規模判定部25(判定部)及び修正量算出部26を有する。
【0039】
平滑処理部22は、太陽光用PCS5から入力された発電電力モニター信号Ppv_fbに対して、例えば移動平均方式や一次遅れ方式などのローパスフィルタ演算(平滑化演算)処理を行う。そして、平滑処理部22は、平滑化された信号を、システム目標出力Psystの基本値Psyst0として、目標値修正部23に出力する。
【0040】
目標値修正部23は、平滑処理部22から入力された基本値Psyst0及び発電量予測部3から入力された出力予測値Ppv_preに基づいて、システム出力Psysを算出する。この際、例えば出力予測値Ppv_pre等の情報に基づき、基本値Psyst0の修正が必要であると判断された場合には、目標値修正部23は、基本値Psyst0を修正し、該修正した信号をシステム出力Psysの目標値として差分演算部21に出力する。一方、基本値Psyst0の修正が不要である場合には、目標値修正部23は、基本値Psyst0をシステム目標出力Psystとして差分演算部21に出力する。なお、目標値修正部23を構成する各部の構成及び処理動作の内容は、次の通りである。
【0041】
制約条件記憶部24は、太陽光発電システム100から電力系統200へのシステム出力Psysの供給態様に対して規定された制約条件を記憶する。制約条件の一つとしては、例えば、システム出力Psysの単位時間当たりの変化量(変化率)等の条件が挙げられる。システム出力Psysの変化率は、売電事業者と送配電事業者との間などで予め取り決められる制約条件であり、太陽光発電システム100は、その許容範囲内の変化率で電力系統200に電力を供給しなければならない。
【0042】
変動規模判定部25は、発電量予測部3から入力された出力予測値Ppv_preに基づいて、未来の発電電力Ppvの変動量を算出し、発電電力Ppv(又はシステム出力Psys)の変動規模を判定する。そして、変動規模判定部25は、発電電力Ppvの変動規模の判定結果(大きいか否か)を修正量算出部26に出力する。
【0043】
修正量算出部26は、変動規模判定部25から入力された変動規模の判定結果及び制約条件記憶部24に格納された制約条件に基づいて、必要があれば、平滑処理部22から入力されたシステム目標出力Psystの基本値Psyst0を修正する。具体的には、本実施形態では、変動規模判定部25により発電電力Ppvの変動が大きいと判定された場合(システム出力Psysの変動率が制約条件で規定された変動率の許容範囲を超える場合等)に、修正量算出部26は、基本値Psyst0を修正する。この際、本実施形態では、修正量算出部26は、基本値Psyst0の値に関係なく、修正後のシステム出力Psysの目標値として、予め設定された変化率で変化する補正下降出力Plimを算出する。なお、補正下降出力Plimの変化率は、制約条件で規定された許容範囲内の値に設定される。
【0044】
[システム出力Psysの出力制御例]
ここで、図4を参照しながら、統括コントローラー10によるシステム出力Psysの出力制御例(システム出力Psysの目標値の演算制御例)を説明する。図4は、統括コントローラー10(システム目標出力演算部20)により演算制御されるシステム出力Psysの目標値の時間変化例を示す図である。なお、本実施形態の太陽光発電システム100では、システム稼働中に発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された後、補正下降出力Plim(システム出力Psysの目標値)が零になると、太陽光発電システム100全体を停止させる。
【0045】
図4に示す例では、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された時間が時刻T1であり、発電装置部1が停止された時間が時刻T2(>T1)であり、蓄電池システム2が停止された時間が時刻T3(>T2)である例を示す。また、図4中の実線で示す特性(曲線)は、時刻T2以前に検出される発電電力モニター信号Ppv_fbの時間変化特性である。図4中の点線で示す特性(曲線)は、時刻T2以降に予測される発電電力モニター信号Ppv_fb(発電電力Ppv)の時間変化特性である。
【0046】
図4に示す出力制御例では、まず、システム稼動中の時刻T1において、システム目標出力演算部20の変動規模判定部25が、発電量予測部3から入力された出力予測値Ppv_preに基づき、今後、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測する。時刻T1において、このような予測結果が得られると、システム目標出力演算部20は、システム出力Psysの目標値の演算制御をシステム目標出力Psystの演算制御から補正下降出力Plimの演算制御に切り替える。
【0047】
時刻T1以前では、システム出力Psysの目標値(システム目標出力Psyst)は、発電電力モニター信号Ppv_fbに基づいて算出される。それゆえ、時刻T1以前では、システム目標出力Psystの変化特性(図4中の太点線)は、発電電力モニター信号Ppv_fbのそれ(図4中の実線)と同様になる。一方、時刻T1以降では、システム出力Psysの目標値(補正下降出力Plim)は、発電電力モニター信号Ppv_fbの変化とは関係なく所定の変化率(傾きa)に基づいて算出される。それゆえ、時刻T1以降では、補正下降出力Plimの変化特性(図4中の太破線)は、補正下降出力Plimが時間とともに所定の変化率(傾きa)で直線的に変化(低下)する特性となる。すなわち、図4に示す例では、統括コントローラー10は、システム出力Psysの出力制御を、時刻T1において、システム出力Psysが時間とともに傾きaの変化率で低下するような出力制御に強制的に切り替える。
【0048】
次いで、時刻T1後、最初に、発電電力モニター信号Ppv_fbと、補正下降出力Plimとが同じ値になるタイミング(時刻T2)において、発電装置部1が停止される。それゆえ、図4には示さないが、時刻T2以降、発電電力モニター信号Ppv_fb(実測値)は零となる。
【0049】
次いで、時刻T2後、補正下降出力Plimがさらに低下し、零になると、すなわち、時刻T3になると、蓄電池システム2が停止され、太陽光発電システム100全体が停止した状態となる。そして、時刻T3以降では、太陽光発電システム100全体が停止しているので、システム目標出力演算部20は、システム出力Psysの目標値(システム目標出力Psyst_c)も零に設定する(図4中の太一点鎖線参照)。
【0050】
なお、図4に示す例において、補正下降出力Plimの変化率(傾きa)は、制約条件で規定された許容範囲内であれば、任意の変化率に設定することができる。また、図4に示す例では、時刻T1から時刻T3までの期間における補正下降出力Plimの変化率が一定である例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、時刻T1から時刻T3までの期間の所定のタイミングにおいて、補正下降出力Plimの変化率を、制約条件で規定された許容範囲内で適宜変更してもよい。さらに、図4に示す例では、補正下降出力Plimを時間とともに直線的に変化(低下)させる例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、補正下降出力Plimの変化率を逐次更新する構成(機能)を設け、補正下降出力Plimが時間とともに曲線的に変化(低下)するようにしてもよい。
【0051】
また、図4に示す例では、時刻T1後、発電電力モニター信号Ppv_fbと補正下降出力Plimとが同じ値になるタイミング(時刻T2)において、発電装置部1が停止する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。発電装置部1を停止させるタイミングは、時刻T1以降であり、且つ、蓄電池システム2を停止するタイミング(時刻T3)以前であれば任意のタイミングに設定することができる。例えば、発電装置部1を停止させるタイミングを、時刻T1に設定してもよいし、時刻T3に設定してもよい。後者の場合には、補正下降出力Plimが零になるタイミングで、発電装置部1及び蓄電池システム2の両方が同時に停止する。
【0052】
[システム出力の目標値の修正処理例]
次に、図5を参照しながら、システム出力Psysの目標値の修正処理について説明する。図5は、統括コントローラー10(システム目標出力演算部20)によるシステム出力Psysの目標値の修正処理の手順を示すフローチャートである。
【0053】
まず、システム目標出力演算部20は、発電電力Ppvの変動予測に必要なデータを取得する(ステップS11)。具体的には、システム目標出力演算部20は、発電量予測部3から入力される出力予測値Ppv_preに基づいて、発電電力Ppvの予測変動量ΔPpv_preを算出する。
【0054】
なお、本実施形態では、ステップS11で用いられる出力予測値Ppv_preとして、現時刻より1サンプル時間先の予測値を用いてもよいし、現時刻以降の特定期間に渡って所定のサンプリング時間間隔で取得された複数の予測値を用いてもよい。前者の場合には、予測変動量ΔPpv_preを、1サンプリング時間先の出力予測値Ppv_preから現時刻の発電電力モニター信号Ppv_fbを差し引いた値とすることができる。一方、後者の場合には、予測変動量ΔPpv_preを、例えば、各サンプリング時刻において別個に算出された予測変動量ΔPpv_preの最大値又は最小値とすることができる。また、後者の場合には、予測変動量ΔPpv_preを、例えば、特定期間に渡って取得された複数の出力予測値Ppv_preの中の最大値と最小値との差としてもよい。
【0055】
次いで、システム目標出力演算部20(変動規模判定部25)は、今後、発電電力Ppvの変動が大きくなるか否かを判定する(ステップS12)。具体的には、変動規模判定部25は、予測変動量ΔPpv_preが所定の変動量以上であるか否かを判定し、予測変動量ΔPpv_preが所定の変動量以上である場合には、今後、発電電力Ppvの変動が大きくなると判定する。また、ステップS12の判定処理で用いられる予測変動量ΔPpv_preの閾値(所定の変動量)は、例えば、システム出力Psysの変動率の許容範囲等に基づいて適宜決定することができる。なお、本実施形態では、予測変動量ΔPpv_preの閾値を、例えば、発電所定格出力の65%程度以上の値に設定することが望ましい。
【0056】
ステップS12において、システム目標出力演算部20が、今後、発電電力Ppvの変動が大きくならないと判定した場合(ステップS12がNO判定である場合)、システム目標出力演算部20は、システム出力Psysの目標値の修正処理を終了する。この場合には、平滑処理部22で算出された基本値Psyst0がシステム出力Psysの目標値(システム目標出力Psyst)として出力される。
【0057】
一方、ステップS12において、システム目標出力演算部20が、今後、発電電力Ppvの変動が大きくなると判定した場合(ステップS12がYES判定である場合)、システム目標出力演算部20は、ステップS13の処理を行う。この処理では、システム目標出力演算部20は、システム出力Psysの目標値の演算制御を、システム目標出力Psystの演算制御から補正下降出力Plimの演算制御に切り替える。
【0058】
次いで、システム目標出力演算部20は、次のシステム出力Psysの目標値となる補正下降出力Plimを算出し、該算出した補正下降出力Plimを、統括コントローラー10内の差分演算部21に出力する(ステップS14)。なお、この処理では、システム目標出力演算部20は、予め設定された補正下降出力Plimの変化率(図4中の傾きa)を用いて、次のシステム出力Psysの目標値となる補正下降出力Plimを算出する。また、この処理では、補正下降出力Plimの初期値は、ステップS12がYES判定となったときのシステム目標出力Psystとなる。
【0059】
次いで、システム目標出力演算部20は、ステップS14で算出された補正下降出力Plimが所定値であるか否かを判定する(ステップS15)。なお、本実施形態では、この処理において、システム目標出力演算部20は、補正下降出力Plimが零であるか否かを判定する。
【0060】
ステップS15において、システム目標出力演算部20が、補正下降出力Plimが所定値でないと判定した場合(ステップS15がNO判定の場合)、システム目標出力演算部20は、処理をステップS14に戻し、ステップS14以降に処理を繰り返す。すなわち、本実施形態では、補正下降出力Plimが零になるまで、ステップS14及びステップS15の処理が繰り返される。そして、ステップS15において、システム目標出力演算部20が、補正下降出力Plimが所定値であると判定した場合(ステップS15がYES判定の場合)、システム目標出力演算部20は、システム出力Psysの目標値の修正処理を終了する。
【0061】
[各種効果]
上述のように、本実施形態の太陽光発電システム100では、発電電力Ppvの変動が大きくなる場合、発電電力Ppvの変動が大きくなる時間帯に、太陽光発電システム100を最終的に停止する。このようなシステム出力Psysの出力制御を行った場合、発電電力Ppvの変動が大きくなる時間帯に、蓄電池8の充放電動作が停止されるので、蓄電池8の劣化の進行を抑制することができる。
【0062】
また、通常、発電電力Ppvの変動が大きくなると、蓄電池システムの充放電能力の不足により、太陽光発電システムから電力系統に供給されるシステム出力の変動が、電力系統の許容範囲を超えてしまう可能性がある。このような状況が発生した場合、発電停止等の対策が必要になり、売電量が減少する可能性がある。しかしながら、本実施形態では、発電電力Ppvの変動が大きくなると予想されたときから太陽光発電システム100の停止までの期間において、システム出力Psysの変動を許容範囲内に抑制しながらシステム出力Psysを低減させる。そして、この期間では、太陽光発電システム100から電力系統200に電力が供給される。それゆえ、本実施形態では、発電電力Ppvの変動が大きくなる状況が発生しても、この期間、システム出力Psysの変動の許容範囲からの逸脱を防止して、売電量を確保することができる。
【0063】
<第2の実施形態>
上記第1の実施形態では、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された場合に、システム出力Psysの目標値(補正下降出力Plim)を零まで降下させて、太陽光発電システム100全体を停止させる構成を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された場合に、システム出力Psysの目標値を零より大きい所定値(所定の一定値)まで変化させた後、システム出力Psysの目標値を所定値一定で出力制御するような構成にしてもよい。この場合、太陽光発電システム(発電装置部及び蓄電池システム)を停止しなくてもよい。
【0064】
第2の実施形態では、このようなシステム出力Psysの出力制御を行うことが可能な太陽光発電システムについて説明する。なお、本実施形態の太陽光発電システムの構成は、上記第1の実施形態の構成(図1図3参照)と同様であるので、ここでは、太陽光発電システムの構成の説明を省略する。また、以下では、各構成に対して、上記第1の実施形態と同じ符号を付して説明する。
【0065】
[システム出力Psysの第1の出力制御例]
図6を参照しながら、本実施形態の統括コントローラー10によるシステム出力Psysの第1の出力制御例を説明する。図6は、統括コントローラー10(システム目標出力演算部20)により演算制御されるシステム出力Psysの目標値の時間変化例を示す図である。
【0066】
図6に示す第1の出力制御例では、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された場合、発電電力Ppvの変動が大きくなる時間帯において予測される発電電力Ppvの最小値(以下、「予測最小値」と称す)を、補正下降出力Plimの最終値として設定する。また、図6には、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された時刻が時刻T4であり、システム出力Psysの目標値を最終値(システム目標出力Psyst_c)一定とする演算制御の開始時刻が時刻T5(>T4)である例を示す。
【0067】
図6に示す例では、時刻T4において、発電電力Ppvの変動(図6中の実線参照)が大きくなると予測されると、システム出力Psysの目標値の演算制御が、上記第1の実施形態と同様に、補正下降出力Plimの演算制御に切り替わる。この際、発電量予測部3から出力された、特定時間に渡って所定のサンプリング時間間隔で得られた複数の出力予測値Ppv_preの中から予測最小値が特定され、その予測最小値が補正下降出力Plimの最終値(所定値)として設定される。
【0068】
次いで、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された後(時刻T4以降)、補正下降出力Plimを、時間とともに所定の変化率(傾きb)で予測最小値(所定値)まで低下させる(図6中の太破線参照)。すなわち、図6に示す例では、時刻T4において、統括コントローラー10は、システム出力Psysの出力制御を、システム出力Psysが時間とともに傾きbの変化率で低下するような出力制御に強制的に切り替える。
【0069】
なお、この例における補正下降出力Plimの変化率(傾きb)は、制約条件で規定された許容範囲内であれば、任意の変化率(傾き)に設定することができる。また、この例の補正下降出力Plimの変化率(傾きb)は、図4で説明した補正下降出力Plimの変化率(傾きa)と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0070】
そして、補正下降出力Plimが予測最小値(所定値)まで低下すると(時刻T5)、システム出力Psysの目標値を予測最小値(システム目標出力Psyst_c)一定とする演算制御が開始される(図6中の太一点鎖線参照)。それゆえ、時刻T5以降、予測最小値と略同じ値のシステム出力Psysが太陽光発電システム100から電力系統200に一定出力される。
【0071】
なお、図6に示す例では、時刻T4以降、補正下降出力Plimを低下させる例を説明したが、本発明はこれに限定されない。発電電力Ppvの変動が大きくなると予測されたタイミング(時刻)によっては、その時刻におけるシステム目標出力Psystが発電電力Ppvの予測最小値と同じ値になる場合がある。この場合、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された時刻以降、システム出力Psysの目標値を予測最小値(システム目標出力Psyst_c)一定とする制御が行われる。
【0072】
[システム出力Psysの第2の出力制御例]
次に、図7を参照しながら、本実施形態の統括コントローラー10によるシステム出力Psysの第2の出力制御例を説明する。図7は、統括コントローラー10(システム目標出力演算部20)により演算制御されるシステム出力Psysの目標値の時間変化例を示す図である。
【0073】
図7に示す第2の出力制御例では、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された場合、発電電力Ppvの変動が大きくなる時間帯において予測される発電電力Ppvの平均値(以下、「予測平均値」と称す)を、補正下降出力Plimの最終値として設定する。また、図7には、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された時刻が時刻T6であり、システム出力Psysの目標値を最終値(システム目標出力Psyst_c)一定とする演算制御の開始時刻が時刻T7(>T6)である例を示す。
【0074】
図7に示す例では、時刻T6において、発電電力Ppvの変動(図7中の実線参照)が大きくなると予測されると、システム出力Psysの目標値の演算制御が、上記第1の実施形態と同様に、補正下降出力Plimの演算制御に切り替わる。この際、発電量予測部3から出力された、特定時間に渡って所定のサンプリング時間間隔で得られた複数の出力予測値Ppv_preに基づいて予測平均値が算出され、その予測平均値が補正下降出力Plimの最終値(所定値)として設定される。
【0075】
次いで、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された後(時刻T6以降)、補正下降出力Plimを、時間とともに所定の変化率(傾きc)で予測平均値(所定値)まで低下させる(図7中の太破線参照)。すなわち、図7に示す例においても、時刻T6において、統括コントローラー10は、システム出力Psysの出力制御を、システム出力Psysが時間とともに傾きcの変化率で低下するような出力制御に強制的に切り替える。
【0076】
なお、この例における補正下降出力Plimの変化率(傾きc)は、制約条件で規定された許容範囲内であれば、任意の変化率(傾き)に設定することができる。また、この例の補正下降出力Plimの変化率(傾きc)は、図4で説明した補正下降出力Plimの変化率(傾きa)又は図6で説明した補正下降出力Plimの変化率(傾きb)と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0077】
そして、補正下降出力Plimが予測平均値(所定値)まで低下すると(時刻T7)、システム出力Psysの目標値を予測平均値(システム目標出力Psyst_c)一定とする演算制御が開始される(図7中の太一点鎖線参照)。それゆえ、時刻T7以降、予測平均値と略同じ値のシステム出力Psysが太陽光発電システム100から電力系統200に一定出力される。
【0078】
なお、図7に示す例では、時刻T4以降、補正下降出力Plimを低下させる例を説明したが、本発明はこれに限定されない。発電電力Ppvの変動が大きくなると予測されたタイミング(時刻)によっては、その時刻のシステム目標出力Psystが発電電力Ppvの予測平均値より低い値になる場合又は予測平均値と同じ値になる場合がある。前者の場合には、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された時刻以降、補正下降出力Plimを予測平均値まで所定の変化率で増加させる制御が行われる。一方、後者の場合には、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された時刻以降、システム出力Psysの目標値を、予測平均値(システム目標出力Psyst_c)一定とする制御が行われる。
【0079】
[システム出力の目標値の修正処理例]
本実施形態におけるシステム出力Psysの目標値の修正処理の基本的な手順は、図5のフローチャートを用いて説明した上記第1の実施形態のそれと同様である。しかしながら、次の点で、本実施形態におけるシステム出力Psysの目標値の修正処理は、上記第1の実施形態のそれと異なる。
【0080】
本実施形態では、ステップS11で発電電力Ppvの変動予測に必要なデータ(予測変動量ΔPpv_pre)を求める際に用いられる出力予測値Ppv_preは、現時刻以降の特定期間に渡って所定のサンプリング時間間隔で得られる複数の予測値となる。また、ステップS15の判定処理で用いられる補正下降出力Plimの閾値(所定値)は、発電電力Ppvの変動が大きくなる時間帯における発電電力Ppvの予測最小値又は予測平均値となる。
【0081】
[各種効果]
上述した本実施形態における第1の出力制御例では、補正下降出力Plimを発電電力Ppvの予測最小値まで低下させた後(時刻T5以降)、システム出力Psysは、発電電力Ppvの予測最小値で一定出力される。この場合、時刻T5以降における蓄電池システム2の動作は充電動作となる。それゆえ、上述した第1の出力制御例では、発電電力Ppvの変動が大きくなっても、発電電力Ppvの変動が大きくなる時間帯において、蓄電池システム2の放電動作が少なくなるので、蓄電池8の劣化の進行を抑制することができる。
【0082】
また、上述した本実施形態における第2の出力制御例では、補正下降出力Plimを発電電力Ppvの予測平均値まで低下させた後(時刻T7以降)、システム出力Psysは発電電力Ppvの予測平均値で一定出力される。この場合、時刻T7以降におけるシステム出力Psysの出力制御では、蓄電池システム2の充電量と放電量とがほぼ釣り合った状態となるので、蓄電池8の劣化の進行を抑制することができる。
【0083】
さらに、本実施形態では、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された時刻以降も発電装置部1及び蓄電池システム2の両方(太陽光発電システム100全体)は停止されない。また、本実施形態では、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された時刻以降もシステム出力Psysの変動が許容範囲内に収まるように出力制御される。すなわち、本実施形態では、発電電力Ppvの変動が大きくなっても、太陽光発電システム100を停止することなく、システム出力Psysの変動を許容範囲内に抑えながら、システム出力Psysを電力系統200に出力することができる。それゆえ、本実施形態の太陽光発電システム100では、発電電力Ppvの変動が大きくなっても、システム出力Psysの変動の許容範囲からの逸脱を防止して、売電量を確保することができる。
【0084】
<第3の実施形態>
第3の実施形態では、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された場合に、太陽光発電システム(発電装置部及び蓄電池システム)を停止しない別の構成を説明する。なお、本実施形態の太陽光発電システムの構成は、上記第1の実施形態の構成(図1図3参照)と同様であるので、ここでは、本実施形態の太陽光発電システムの構成の説明を省略する。また、以下では、各構成に対して、上記第1の実施形態と同じ符号を付して説明する。
【0085】
本実施形態の太陽光発電システム100では、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された場合、それ以降、主に、発電電力Ppvを蓄電池8で充電する動作のみを行い、システム出力Psysを電力系統200に供給しない(売電を停止する)。このようなシステム出力Psysの出力制御は、例えば、上記第2の実施形態のシステム出力Psysの出力制御(例えば図6及び図7参照)において、補正下降出力Plimの最終値(Psyst_c)を零に設定することにより実現することができる。
【0086】
それゆえ、本実施形態においても、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された場合、それ以降、システム目標出力演算部20は、時間とともに所定の変化率で、補正下降出力Plimが低下するような、システム出力Psysの目標値の演算制御を行う。そして、補正下降出力Plimが零になると、それ以降、システム出力Psysの目標値(システム目標出力Psyst_c)を零で一定とする演算制御が行われる。
【0087】
このようなシステム出力Psysの出力制御を行った場合、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された時刻以降、発電電力Ppvが補正下降出力Plimより大きくなる僅かな時間帯を除いて、蓄電池システム2の動作は充電動作となる。すなわち、本実施形態では、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された時刻以降の時間帯(発電電力Ppvの変動が大きくなる時間帯)において、蓄電池システム2の動作が、ほぼ充電動作のみとなるので、蓄電池8の劣化の進行を抑制することができる。
【0088】
また、本実施形態では、発電電力Ppvの変動が大きくなると予想されたときから補正下降出力Plimが零に到達するまでの期間において、システム出力Psysの変動を許容範囲内に抑制しながらシステム出力Psysを低減させる。そして、この期間では、太陽光発電システム100から電力系統200に電力が供給される。それゆえ、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様に、発電電力Ppvの変動が大きくなる状況が発生しても、この期間、システム出力Psysの許容範囲からの逸脱を防止して、売電量を確保することができる。
【0089】
<第4の実施形態>
上記各種実施形態では、発電電力Ppvの変動が大きくなるか否かを判定するために用いる情報(出力予測値Ppv_pre)を発電量予測部3から取得する構成を説明したが、本発明はこれに限定されない。発電電力Ppvの変動が大きくなるか否かを判定することが可能な情報(データ)であれば、任意の情報(データ)を採用することができ、その取得手法も任意である。第4の実施形態では、発電量予測部3を設けずに、発電電力Ppvの変動が大きくなるか否かを判定可能な構成の太陽光発電システムについて説明する。
【0090】
図8は、本実施形態における統括コントローラー10の内部構成及びその周辺の構成を示す機能ブロック図である。なお、図8中において、上記第1の実施形態(図2参照)と同様の構成には同じ符号を付して示す。
【0091】
図8図2との比較から明らかなように、本実施形態の太陽光発電システムは、上記第1の実施形態の太陽光発電システム100において、発電量予測部3の代わりに微分算出部30(変化量算出部)を設けた構成となる。なお、本実施形態の太陽光発電システムにおいて、発電量予測部3の代わりに微分算出部30を設けたこと以外の構成は、上記第1の実施形態の太陽光発電システム100の対応する構成と同様である。それゆえ、ここでは、微分算出部30の構成についてのみ説明する。
【0092】
微分算出部30の入力端は、太陽光用PCS5に接続され、出力端は、システム目標出力演算部20の他方の入力端(上記第1の実施形態では、出力予測値Ppv_preが入力される入力端)に接続される。微分算出部30は、太陽光用PCS5から入力される発電電力モニター信号Ppv_fbに基づいて、発電電力Ppvの変動の微分値Ppv_dif(変化量)を算出する。なお、図示しないが、本実施形態では、システム目標出力演算部20は、微分値Ppv_difの履歴を記憶する機能を有する。
【0093】
微分値Ppv_difとしては、例えば、現時刻の発電電力モニター信号Ppv_fbと、1サンプリング時間前の発電電力モニター信号Ppv_fbとの差分値をサンプリング時間で除算した値を用いることができる。また、微分値Ppv_difとしては、例えば、現時刻の発電電力モニター信号Ppv_fbと、1サンプリング時間前の発電電力モニター信号Ppv_fbとの差分値を採用してもよい。
【0094】
そして、本実施形態では、システム目標出力演算部20は、微分算出部30から入力された発電電力Ppvの変動の微分値Ppv_difに基づいて、今後、発電電力Ppvの変動が大きくなるか否かを判定する。具体的には、システム目標出力演算部20は、微分値Ppv_difの履歴に基づいて、発電電力Ppvの変動の微分値Ppv_difが正となる状態又は負となる状態が所定時間継続(経過)していれば、発電電力Ppvの変動が大きくなると判定する。なお、この判定で用いられる閾値(所定時間の値)は、任意に設定することができるが、例えば、過去の経験則等に基づいて設定してもよい。
【0095】
また、本実施形態における発電電力Ppvの変動の大小の判定手法は、この例に限定されない。例えば、単純に、微分値Ppv_difが所定の閾値以上の値であれば、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測してもよい。
【0096】
本実施形態におけるシステム出力Psysの目標値の修正処理の基本的な手順は、図5のフローチャートを用いて説明した上記各種実施形態のそれと同様である。しかしながら、次の点で、本実施形態におけるシステム出力Psysの目標値の修正処理は、上記各種実施形態のそれと異なる。
【0097】
本実施形態では、ステップS11の処理において、発電電力Ppvの変動予測に必要なデータとして、発電電力Ppvの変動の微分値Ppv_difが算出される。また、ステップS12の判定処理では、微分値Ppv_difの履歴に基づいて、発電電力Ppvの変動の微分値Ppv_difが正となる状態又は負となる状態が、所定時間継続しているか否かが判定される。そして、発電電力Ppvの変動の微分値Ppv_difが正となる状態又は負となる状態が、所定時間継続している場合には、ステップS12において、今後、発電電力Ppvの変動が大きくなると判定される。
【0098】
上述した本実施形態の太陽光発電システムでは、発電電力Ppvの変動予測に必要なデータの取得手法及び発電電力Ppvの変動が大きくなるか否かの判定処理が上記各種実施形態のそれらと異なる。しかしながら、本実施形態のシステム出力Psysの出力制御手法(システム出力Psysの目標値の修正手法)は、上記各種実施形態のそれと同じである。それゆえ、本実施形態では、上記各種実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態の太陽光発電システムでは、高価な発電量予測部3が不要となるので、太陽光発電システムのコストを下げることができる。なお、予測精度の観点では、発電量予測部3を備える構成の方が本実施形態の構成より優位である。
【0099】
また、図8に示す構成例では、発電電力Ppvの変動の微分値Ppv_difを算出するための発電電力モニター信号Ppv_fbを、太陽光用PCS5で計測する構成例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、太陽光パネル4から出力される直流の発電電力を計測する電力計を別途設け、該電力計の計測結果を発電電力モニター信号Ppv_fbとして用いる構成にしてもよい。
【0100】
<各種変形例>
以上、本発明の各種実施形態に係る発電システムについて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限り、その他、種々の変形例、応用例の態様を取ることができる。
【0101】
[変形例1]
上記各種実施形態では、一つの発電装置部1(太陽光パネル4及び太陽光用PCS5)に対して一つの電力制御装置7を設ける構成を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、複数の発電装置部が設けられた太陽光発電システムにおいて、複数の発電装置部に対して一つの電力制御装置7を設ける構成にしてもよい。
【0102】
この場合、複数の発電装置部が一つの電力制御装置7に接続され、電力制御装置7は、各発電装置部から入力される発電電力モニター信号Ppv_fbに基づいて、システム出力Psysの出力制御を行う。このような構成では、上記各種実施形態と同様の効果が得られるとともに、発電装置部間における、発電電力Ppvやその変動量のバラツキが大きくても、それらを補償することができ、より安定してシステム出力Psysを電力系統に供給することができる。
【0103】
また、上記各種実施形態では、太陽光発電システム100において、太陽光用PCS5及び蓄電池用PCS9を1つずつ設ける構成を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、多数の太陽光パネルを備えるメガソーラ等の大規模な太陽光発電システムでは、複数の太陽光パネルに応じて複数台の太陽光用PCSを設置するとともに、複数の蓄電池に対応して複数台の蓄電池用PCSが設置される場合がある。上述した本発明の技術は、このような複数台の太陽光用PCS及び複数台の蓄電池用PCSが設置された太陽光発電システムにも適用可能であり、同様の効果が得られる。
【0104】
なお、この場合、複数台の太陽光用PCS及び複数台の蓄電池用PCSが一つの電力制御装置7(統括コントローラー10)に接続される。そして、統括コントローラー10は、各太陽光用PCSから入力される各発電電力モニター信号Ppv_fbに対して平滑化処理を施す。次いで、統括コントローラー10は、平滑化された各発電電力モニター信号Ppv_fbの合計値をシステム目標出力Psystとして算出する。次いで、統括コントローラー10は、算出されたシステム目標出力Psystに基づいて、充放電目標値Pbtを算出する。この場合、算出された充放電目標値Pbtは、複数台の蓄電池用PCSのそれぞれに出力される充放電目標値の合計値となる。
【0105】
次いで、統括コントローラー10は、充放電目標値Pbt、及び、各太陽光用PCSの発電状況、各蓄電池の充電状態(SOC信号)等に基づいて、各蓄電池用PCSに分配する充放電目標値を決定する。そして、統括コントローラー10は、各蓄電池用PCSに、対応する充放電目標値を出力して、システム出力Psysの出力制御を行う。なお、この際、各蓄電池用PCSに分配する充放電目標値を全て同じ値にしてもよい。
【0106】
[変形例2]
上記各種実施形態におけるシステム出力Psysの出力制御手法では、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測されたときに、上述したシステム出力Psysの目標値の修正制御を開始する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0107】
例えば、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された後から所定時間、発電電力Ppvの変動をモニターし続け、所定時間経過しても発電電力Ppvの変動が収まらない場合に、上述したシステム出力Psysの目標値の修正制御を開始してもよい。また、例えば、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測されたときから所定時間経過後に再度、発電電力Ppvの変動が大きくなるか否かの予測判定を行う。そして、この時点で、変動が大きくなると予測された場合に、上述したシステム出力Psysの目標値の修正制御を開始してもよい。
【0108】
この例の構成では、上述した各種実施形態におけるシステム出力Psysの目標値の修正制御の実行頻度が低減される。この場合、太陽光発電システムの停止動作、売電停止動作及び/又はシステム出力Psysの降下動作の実行頻度を低減することができ、安定した電力供給動作(売電動作)が可能になる。
【0109】
[変形例3]
上記第1〜第3の実施形態では、各実施形態のシステム出力Psysの出力制御手法を単独で実行する構成を説明したが、本発明はこれに限定されない。上記第1〜第3の実施形態では、システム出力Psysの出力制御手法の種別に関係なく、電力制御装置7の構成は互いに同じである。それゆえ、上述した太陽光発電システム100を、上記第1〜第3の実施形態の全てのシステム出力Psysの出力制御手法を実行可能なシステムとしてもよい。
【0110】
この場合、発電装置部1の発電状況(例えば、発電電力Ppvの変動量等)や蓄電池8の充電状態(SOC信号)などに応じて、上記第1〜第3の実施形態の中から所定の実施形態のシステム出力Psysの出力制御手法を選択することが可能になる。
【0111】
例えば、システム出力Psysの供給を停止した場合に大きな支障が発生するような時間帯には、上記第2の実施形態の出力制御手法が選択されるようにしてもよい。また、例えば、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測されたときに、SOC信号に基づいて、蓄電池8に十分な充電能力が残っていると判断された場合には、上記第3の実施形態の出力制御手法が選択されるようにしてもよい。
【0112】
また、上記第1〜第3の実施形態の全てのシステム出力Psysの出力制御手法を実行可能な太陽光発電システム100では、複数種のシステム出力Psysの出力制御手法を組み合わせて適用することも可能になる。例えば、発電電力Ppvの変動が大きくなると予測された後、まず、上記第2の実施形態の出力制御手法を用いて、システム出力Psysの出力制御を行う。しかしながら、この手法で、システム出力Psysの変動を許容範囲内に抑制することが難しくなった場合には、システム出力Psysの出力制御手法を上記第2の実施形態の手法から上記第1の実施形態の手法に切り替える。
【0113】
上述のように、この例の太陽光発電システム100では、上記第1〜第3の実施形態と同様の効果が得られるだけでなく、あらゆる状況に対して臨機応変に対応することが可能になる。なお、この例のシステム出力Psysの出力制御手法は、上記第4の太陽光発電システムにも適用可能であり、同様の効果が得られる。
【0114】
[その他の変形例]
上記各種実施形態及び上記各種変形例では、本発明を分かりやすく説明するために太陽光発電システムの構成を詳細且つ具体的に説明したが、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0115】
また、上記信号制御(電気信号の処理制御)に係る各構成、機能、処理部等では、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよい。この際、上記信号制御に係る各構成、機能、処理部等の一部又は全部を、適宜一体化して構成してもよい。
【0116】
さらに、上記信号制御に係る各構成、機能、処理部等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより実現されてもよい。すなわち、上記信号制御に係る各構成、機能、処理部等をソフトウェアで実現してもよい。なお、各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報(データ)は、上述した内蔵のメモリ部だけでなく、例えば、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置に格納することもできる。また、各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報(データ)は、IC(Integrated Circuit)カード、SD(Secure Digital)カード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に格納することもできる。
【0117】
[応用例]
上述した本発明の技術が適用された蓄電池システム2は、既設又は新設に関係なく、任意の構成の太陽光発電装置(太陽光パネル及び太陽光用PCS)に適用することができる。また、上述した本発明の技術が適用された電力制御装置7は、既設又は新設に関係なく、太陽光パネル、太陽光用PCS、蓄電池及び蓄電池用PCSを有する任意の発電設備に適用することができる。これらの場合、例えば、上述した各種実施形態の太陽光発電システムと同様の効果が得られる太陽光発電システムを容易に構築することができる。
【0118】
また、上記各種実施形態及び上記各種変形例では、本発明の技術を適用する発電システムとして、蓄電池システムが併設された太陽光発電システムを例に挙げ説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、蓄電池システムが併設された発電システムであれば、任意の発電システムに適用可能である。特に、本発明の技術は、例えば気象などの外的要因により発電電力の変動が大きくなる事象が頻繁に発生し得る発電システムに好適であり、例えば風力発電システム等の再生可能エネルギーの発電システムに好適である。
【符号の説明】
【0119】
1…発電装置部、2…蓄電池システム、3…発電量予測部、4…太陽光パネル、5…太陽光用PCS、6…蓄電池装置、7…電力制御装置、8…蓄電池、9…蓄電池用PCS、10…統括コントローラー、11…ネットワーク、12…外部コントローラー、13…端末、20…システム目標出力演算部、21…差分演算部、22…平滑処理部、23…目標値修正部、24…制約条件記憶部、25…変動規模判定部、26…修正量算出部、30…微分算出部、100…太陽光発電システム、200…電力系統
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8