(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の樹脂部品の材質は、ポリアミド、ポリイミド、ポリアセタール共重合体、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステルを少なくとも1種類以上含む樹脂材料からなり、さらに単一または複数の樹脂材料を組合せて形成された
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベーター装置用部品。
前記緩衝材の材質は、ウレタンゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、またはこれらの複合化物からなる
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベーター装置用部品。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のエレベーター装置用部品、エレベーター装置及びエレベーター装置の保守方法を実施するための形態について、
図1〜
図26を参照して説明する。
【0026】
[エレベーター装置の構成]
まず、本発明の一実施形態に係るエレベーター装置の構成について、
図1を参照して説明する。ただし、本発明に係る寸法、材料、その他具体的な数値等は、ここで取り上げた実施形態に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。また本発明に直接関係のない要素は、図示を省略する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係るエレベーター装置の概略構成図である。
図1に示すように、エレベーター装置1は、建物構造物内に形成された昇降路100の上方に機械室を設けない、いわゆる機械室レスエレベーター装置である。このエレベーター装置1は、昇降路100内を昇降する乗りかご3及びつり合いおもり4と、巻上機5と、シーブ6と、複数のロープ7と、頂部滑車8A,8Bとを備えている。
【0028】
乗りかご3は、複数のスライダ(不図示)を有しており、複数のスライダは、昇降路100の壁面に固定されたガイドレール(不図示)に摺動可能に係合する。したがって、乗りかご3は、ガイドレールに案内されて昇降路100内を昇降する。乗りかご3の下部には、せり上げ用滑車3a,3bが設けられている。
【0029】
釣合いおもり4は、複数のスライダ(不図示)を有している。釣合いおもり4の複数のスライダは、昇降路100の壁面に固定されたガイドレール(不図示)に摺動可能に係合する。したがって、釣合いおもり4は、ガイドレールに案内されて昇降路100内を昇降する。以下、乗りかご3及び釣合いおもり4が昇降する方向を昇降方向とする。また、釣合いおもり4の上部には、錘側滑車4aが設けられている。
【0030】
巻上機5は、昇降路100の下部に配置されており、シーブ6を回転可能に支持している。この巻上機5は、シーブ6を回転させる駆動部を有している。したがって、シーブ6は、巻上機5によって回転駆動する。
【0031】
複数のロープ7の一端と他端は、昇降路100の最上部に固定されている。また、頂部滑車8A,8Bは、昇降路100の最上部に配置されている。複数のロープ7は、乗りかご3のせり上げ用滑車3a,3b、頂部滑車8A、シーブ6、頂部滑車8B、錘側滑車4aの順に巻き掛けられている。
【0032】
複数のロープ7とシーブ6との間に生じる摩擦力は、乗りかご3とつり合いおもり4によって発生する張力の差と釣り合っている。そして、乗りかご3及び釣合いおもり4は、シーブ6が回転してロープ7を摩擦駆動することにより、ガイドレール(不図示)に沿って昇降する。
【0033】
[ロープの構造]
次に、ロープ7の構造について、
図2を参照して説明する。
図2は、エレベーター装置1におけるロープ7(ワイヤロープ)の一例を示す断面の模式図である。
【0034】
エレベーター装置用のロープとしては、例えば、JIS G 3525で規定されたものを適用することが一般的である。
図2に示すように、ロープ7は、合成繊維もしくは天然繊維からなる心綱11と、心綱11の周りに配置された6本のストランド12とを有し、これら心綱11及びストランド12を撚った構造である。なお、ストランド12の本数は、任意に設定できるものであり、例えば、心綱11の周りに8本のストランド12を配置してもよい。
【0035】
ストランド12は、複数本の鋼線13を撚り合わせて形成されている。ロープ7に張力が加わると、ストランド12が心綱11を圧縮する方向に力が作用し、鋼線13同士の擦れや摩耗が生じる。そのため、ロープ7の表面には、粘性を持った油もしくはグリース状の油が塗布されており、鋼線13同士の擦れや摩耗を抑制している。また、ロープ7の表面に油を塗布することにより、ロープ7とシーブ6(
図1参照)との間に油膜が形成され、潤滑性が保持される。
【0036】
図1に示すエレベーター装置1において、各ロープ7とシーブ6との接触部における接触面圧(ヘルツ面圧)が高くなるように、ロープ7の張力を大きくすると、ロープ7の表面に塗布された油は、各ロープ7とシーブ6との接触部で弾性流体潤滑膜を形成する。これにより、巻上機5の動力は、ロープ7とシーブ6との接触部を通じてロープ7に伝達される。
【0037】
これは、トラクションドライブと呼ばれる駆動方式の1種であり、ロープ7が動くことで乗りかご3とつり合いおもり4が昇降する。また、昇降路100の上段に機械室(および巻上機)が設けられたエレベーター装置についても、機械室レスのエレベーター装置と同様に、トラクションドライブによる駆動が主に用いられる。
【0038】
[エレベーター装置用部品]
次に、エレベーター装置用部品の構成について、
図3〜
図9を参照して説明する。
本発明のエレベーター装置用部品としては、エレベーター装置1におけるせり上げ用滑車3a,3b、錘側滑車4a、シーブ6及び頂部滑車8A,8Bに適用することができる。
【0039】
図3は、エレベーター装置用部品の一例を示す正面図である。
図3に示すように、エレベーター装置用部品21は、円筒状の金属製構造体22と、その外周部全体を覆うように配置される樹脂製構造体23と、緩衝材24と、接続部材25とを備えている。
【0040】
樹脂製構造体23は、複数(本実施形態では6個)の樹脂部品41から構成されている。緩衝材24は、複数の樹脂部品41間に配置されており、接続部材25は、複数の樹脂部品41における隣り合う樹脂部品を接続している。
【0041】
図4は、金属製構造体22を示す正面図である。
図5は、
図4のA−A線に沿う断面図である。
金属製構造体22は、例えば、鋳造により成形されている。
図4及び
図5に示すように、金属製構造体22は、中心部に設けられたボス部31と、外周部32と、ボス部31と外周部32とを連結する複数のスポーク部33とを有している。ボス部31と複数のスポーク部33は、金属製構造体22の平面部を形成している。
【0042】
ボス部31は、軸方向に貫通する軸孔31aを有する。この軸孔31aには、エレベーター装置用部品21を回転可能に支持する軸部(不図示)が貫通する。なお、エレベーター装置1において、エレベーター装置用部品21を回転可能に支持する軸部は、例えば、乗りかご3、つり合いおもり4、巻上機5、昇降路100の最上部に設けられている。
【0043】
外周部32は、金属製構造体22の外周面を形成しており、この外周面は、滑らかな曲面になっている。この外周部32には、樹脂製構造体23の複数の樹脂部品41が嵌合する。また、外周部32の幅は、エレベーター装置用部品21に掛け回すロープの本数n、ロープ径φ(mm)、及び樹脂製構造体23の形状などにより適宜選定されるが、少なくとも(2n+1)φ(mm)以上となる範囲で設計することが望ましい。
【0044】
複数のスポーク部33は、それぞれボス部31と外周部32との間に設けられた凹部33aを有している。また、隣り合うスポーク部33間には、スポーク部33よりも厚みが薄い部分である薄肉部34が形成されている。この薄肉部34を設けることで金属製構造体22を軽量化できる。また、薄肉部34の一部には、軸方向に貫通した肉抜き孔34aが形成されている。この肉抜き孔34aを設けることで金属製構造体22をさらに軽量化できる。
【0045】
図6は、エレベーター装置用部品21から1つの樹脂部品41を取り外した状態を示す説明図である。
図7は、樹脂部品41の接合面を示す説明図である。
図8は、金属製構造体22に樹脂部品41を嵌合した状態を示す拡大断面図である。
【0046】
図3及び
図6に示すように、樹脂製構造体23の複数の樹脂部品41は、金属製構造体22の周方向に沿って並んでおり、金属製構造体22の外周部32を全て覆っている。樹脂部品41における金属製構造体22の軸方向に直交する平面形状は、外周と内周を有する略扇形に形成されている。
【0047】
樹脂部品41は、金属製構造体22の外周部32に対向する曲面カバー部42と、金属製構造体22の平面部(スポーク部33及び薄肉部34)に対向する側面部43とを有している。
【0048】
図7及び
図8に示すように、樹脂部品41の曲面カバー部42及び側面部43は、金属製構造体22に嵌合する嵌合凹部44を形成している。この嵌合凹部44に金属製構造体22の外周部32及びスポーク部33の一部が嵌合することにより、樹脂部品41が金属製構造体22に取り付けられる。
【0049】
複数の樹脂部品41は、金属製構造体22の径方向に移動することで、金属製構造体22に対して着脱される。また、金属製構造体22に樹脂部品41が嵌合することにより、複数のロープ7から複数の樹脂部品41(樹脂製構造体23)にかかる荷重を、金属製構造体22で支持することが可能となる。
【0050】
曲面カバー部42の外周縁には、複数のロープ7を巻き掛けるための複数のロープ溝45が形成されている。複数のロープ溝45は、樹脂部品41の幅方向に適当な間隔を空けて並んでおり、曲面カバー部42の周方向に延びている。曲面カバー部42に複数のロープ溝45を設けることにより、曲面カバー部42は、溝底部45aと、複数のロープ溝45の幅方向の両側に形成された端頂部42aと、複数のロープ溝45間に形成された中頂部42bとを有している。
【0051】
ロープ溝45の壁面には、ロープ溝45が摩耗した深さ(摩耗深さ)を示すインジケーター(標線)46が設けられている。このインジケーター46とロープ溝45に巻き掛けられたロープ7との相対的な位置を目視することにより、ロープ溝45の摩耗深さを検出することができる。
【0052】
溝底部45aの形状、ロープ溝45の幅、及びロープ溝45の壁面の傾斜は、使用するエレベーターのD/d比、ロープ張力、ロープの構造等により適宜設定される。本実施形態において、ロープ7との接触による摩耗が生じる部分は、樹脂部品41の溝底部45aである。そのため、溝底部45aを丸型のU字溝とし、ロープ溝45を径方向の内側に向けて垂直に窪ませている。これにより、ロープ溝45とロープ7が一定の接触面で接触し、エレベーターを動作させることができる。また、ロープ溝45におけるロープ7との接触面積が最大化し、ロープ7の損傷抑制や高摩擦化によるトラクション性能向上などの効果も得られる。
【0053】
ロープ溝45の幅は、ロープ7が緩みなく溝底部45aに掛けられる範囲であれば特に制限はない。また、曲面カバー部42における溝底部45aから曲面カバー部42の底面42cまでの長さは、ロープ7の径の少なくとも1倍以上とすることが望ましい。ロープ溝45の摩耗は、曲面カバー部42の底面42cに向かって進行するため、溝底部45aから底面42cまでの長さが長くなるほど樹脂部品41の寿命が長くなる。
【0054】
端頂部42a及び中頂部42bは、エレベーター装置1の動作中にロープ溝45からロープ7が外れない範囲であれば、形状等に特に制限はない。端頂部42aの幅は、ロープ7の径の2倍以上とすることが望ましく、中頂部42bの幅は、ロープ7の径の1倍以上とすることが望ましい。なお、本実施形態では、中頂部42bの上面は、端頂部42aの上面よりも低いが、本発明に係る中頂部の上面は、端頂部の上面と同じ高さであってもよい。
【0055】
また、側面部43の曲面カバー部42から突出する長さは、金属製構造体22のボス部31に干渉しない範囲であれば任意に設定することができる。しかし、保守性などを考慮して、ボス部31の内径と外周部32の外径との中間程度までの長さにすることが望ましい。また、側面部43の幅は、ロープ7の径の少なくとも1倍以上とすることが望ましい。
【0056】
樹脂部品41の材質は、摺動部品として用いることのできる樹脂材料であれば特に限定されない。本発明に係る樹脂部品としては、引張強度50MPa以上、曲げ弾性率2.5GPa以上、特定の試験条件(荷重10kgf、粗面(耐水性研磨紙 粒度表示#1200))で摺動試験を行った場合の比摩耗量が5.0x10
−2(mm3/Nm)以上となる樹脂材料により形成することが好ましい。
【0057】
上記のような特性の樹脂材料としては、材料の強度、耐熱性に優れる樹脂材料、例えばエンジニアリングプラスチックと呼ばれる熱可塑性樹脂や、三次元網目構造を形成可能な熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらは、摩擦による温度上昇に対し強度を維持でき、耐摩耗性および荷重圧力とすべり速度との許容値(限界PV値)の範囲も広いことから、積載量が大きく、高荷重のエレベーター装置におけるエレベーター装置用部品にも適用できる。
【0058】
具体的な材質としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアセタール共重合体、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトンを少なくとも1種類以上含む樹脂材料が挙げられる。これらは、一般にエンジニアリングプラスチックと呼ばれる材料であり、本発明に係る樹脂製構造体(樹脂部品)として用いる際には、優れた性能を発揮する。また、具体的な材質としては、材料強度に優れた樹脂材料であるフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂を単体もしくは構造部材などに組み合わせたものを挙げることができる。
【0059】
また、樹脂材料としては、高強度化、耐摩耗化などを目的として、シリカ粉末、酸化チタン粉末、酸化ジルコニウム粉末、黒鉛、炭素粉末、窒化ホウ素粉末、ガラス繊維、炭素繊維を適宜組み合わせて用いることもできる。これらの材料のうち、樹脂への分散性を考慮して、粉末材料に関してはその粒径が5〜30ミクロンメータであることが望ましく、適宜カップリング剤などによる表面処理を行ってもよい。また、粉末材料の含量は組成物重量の1〜50質量%とすることが望ましい。
【0060】
樹脂部品41の製造方法は、射出成型や切削加工、注型重合など、任意の方法を適用することができる。本発明に係る樹脂部品は、ロープによる接触面圧を直接受ける構造としており、比較的厚い構造を有する。そのため、射出成型時に欠陥(気泡、陥没、未充填など)が発生する可能性があり、製造に際しては樹脂材料の選定や流動性などを考慮した製造条件の選定が必要となる。射出成型と切削加工を組み合わせることで、寸法安定性に優れた樹脂部品を製造することが可能となる。また、樹脂の原料であるモノマーを金型内に注ぎ、直接重合する注型重合という方法により、樹脂部品を製造することもできる。樹脂部品の仕様は、エレベーター装置の設計条件に加え、製造時の寸法安定性及びコスト等を考慮して適宜設定される。
【0061】
エレベーター装置1において、複数のロープ7は、エレベーター装置用部品21のロープ溝45の全周に対して約半分程度接触している(
図6参照)。したがって、交換したい樹脂部品41がロープ7に接触しない位置までエレベーター装置用部品21を回転させることで、エレベーター装置用部品21から複数のロープ7を外さなくても、樹脂部品41を金属製構造体22に対して着脱することができる。
【0062】
また、樹脂部品41交換後に、エレベーター装置用部品21を60度回転することで、隣接する樹脂部品41を交換することができる。従来のエレベーター装置では、エレベーター装置用部品を交換する際に、ロープの着脱を伴うため、エレベーター装置用部品の交換作業が非常に煩雑になっていた。しかし、本実施形態のエレベーター装置用部品21では、ロープ7を外さなくても保守作業が行うことが可能であり、作業時間及び作業工数の大幅な短縮が見込まれる。また、ロープ7の損傷を抑制することができるため、ロープ7の交換頻度が低減し、保守作業の回数を削減することができる。
【0063】
図9は、エレベーター装置用部品21における接続部材25を示す説明図である。
図9に示すように、本実施形態では、隣り合う樹脂部品41間にゴム弾性を有する緩衝材24を介在させる。そして、隣り合う樹脂部品41同士を接続部材25で接続する。
【0064】
緩衝材24は、樹脂部品41同士の接触抑制と、樹脂部品41同士の応力緩和を目的として設けられている。緩衝材24が接触する樹脂部品41の端面は、樹脂製構造体23の中で特に変形や摺動が起こりやすく、脆い部分である。例えば、ロープ溝45にロープ7が接触したときの樹脂部品41の端面では、樹脂部品41がロープ7の応力を受けて周方向に平行かつ隣り合う樹脂部品41が向かい合う方向に変形を受ける。さらに、隣り合う樹脂部品41同士での応力や回転力、抗力、振動などが複雑に生じ、割れや摩耗(共摺り)が発生しやすくなる。
【0065】
そこで、本実施形態では、隣り合う樹脂部品41の端面間に緩衝材24を介在させることで、上述した影響を大幅に低減し、樹脂部品41の破損を防止又は抑制している。また、ゴム弾性を持つ緩衝材24は、挟み込みや接着など、任意の方法で隣り合う樹脂部品41間に介在させることができる。さらに、緩衝材24は、ゴム弾性や厚みなどを適宜設定することで、樹脂製構造体23の寸法径を調整するスペーサとしても機能する。
【0066】
また、樹脂部品41の端面において側面部43の角部を丸めたり、隣り合う樹脂部品41の端面間に強度に影響の無い範囲で隙間を設けたりすることにより、構造的な作用で応力を緩和してもよい。
【0067】
緩衝材24の材質としては、ゴム弾性を有していれば特に限定されず、常温での弾性率が0.1〜100MPaの範囲にある熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、加硫ゴムなどが挙げられる。具体的な材質としては、ウレタンゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、またはこれらの複合化物からなる材料を挙げることができる。
【0068】
接続部材25は、伸縮プレート51と、ボルト52から構成されている。接続部材25の伸縮プレート51は、隣り合う樹脂部品41の側面部43に跨って配置され、ボルト52及びナット(不図示)を用いて2つの側面部43に固定されている。したがって、伸縮プレート51は、樹脂部品41にのみ固定されており、接続部材25は、隣り合う樹脂部品41同士を接続している。
【0069】
なお、樹脂部品41の側面部43には、ボルト52が貫通する貫通孔が設けられている。この貫通孔の位置は、側面部43における伸縮プレート51と対向する任意の位置を設定することができるが、樹脂部品41の強度が十分で、かつ端部から十分離れた位置とすることが望ましい。
【0070】
伸縮プレート51の材質としては、ゴム弾性を有していれば特に限定されず、例えば、常温での弾性率が10〜500MPaの範囲にある熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、加硫ゴムなどが挙げられる。具体的な材質としては、例えば、ウレタンゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、またはこれらの複合化物からなる材料を挙げることができる。また、伸縮プレート51は、ゴム弾性を有する緩衝材24よりも硬質な材料によって形成することが望ましい。
【0071】
このように、隣り合う樹脂部品41の側面部43に伸縮プレート51を固定することにより、エレベーター装置用部品21の外周部にロープ溝45のみを設ける構成にすることができる。その結果、曲面カバー部42にボルトを貫通させる貫通孔を形成するためのクリアランス確保が不要であり、樹脂部品41の曲面カバー部42の幅を小型化することができる。また、上述したゴム弾性を有する緩衝材24と、伸縮プレート51による樹脂部品41の接続を組み合わせることで、樹脂部品41の側面部43での応力を緩和しながら隣り合う樹脂部品41同士を接続して、樹脂製構造体23を一体化することができる。
【0072】
図10は、樹脂部品41に設けたロープ溝45の摩耗深さの検出を説明する説明図である。
【0073】
従来のエレベーター装置では、ロープの表面とロープ溝など金属同士の摩耗により、ロープやロープを巻き掛ける部品が損傷して、装置の異常動作や故障の検知が困難な場合があった。また、従来技術では、同じ形式のエレベーター装置を同じ時期に据付けた場合においても、メンテナンスや部品交換のタイミングは運転状況により変化するため、部品交換が必要なタイミングを装置毎に把握することが非常に難しい。
【0074】
本実施形態のエレベーター装置用部品21に生じる摩耗は、主にロープ7と接している樹脂部品41に集中して発生する。この樹脂部品41に生じる摩耗の進行を把握し、適切なメンテナンスや交換を行うことで、エレベーター装置1の昇降性能を一定に維持することができる。
【0075】
図10に示すように、本実施形態では、樹脂部品41のロープ溝45に設けたインジケーター46を確認することで、ロープ溝45における摩耗の進行状況を把握することができる。これにより、樹脂部品41の交換時期を目視等により容易に把握でき、樹脂部品41の保守性をより高めることができる。
【0076】
図10に示すように、エレベーター装置1を設置したとき(摩耗前)、ロープ溝45に設けたインジケーター46は、ロープ7の周面における溝底部45aから最も遠い点(部分)よりも金属製構造体22の径方向の内側に位置している。設置後、エレベーター装置1の運転が行われると、ロープ溝45は、金属製構造体22の径方向の内側に向けて垂直に摩耗する。
【0077】
ロープ溝45が所定の摩耗深さまで摩耗したとき(摩耗後)、インジケーター46は、ロープ7の周面における溝底部45aから最も遠い点(部分)と重なり、摩耗深さ(d)が初定値以下となる。保守点検時に、摩耗深さ(d)が所定値以上であれば、作業者は、樹脂部品41が寿命に達したと判断する。
【0078】
このように、本実施形態では、ロープ溝45の摩耗深さを検出することにより、樹脂部品41の交換の要否や時期を、エレベーター装置毎に容易に把握することができる。また、摩耗深さの推移を記録することで、余寿命の診断が可能となり、エレベーター装置1の保守性が飛躍的に高まる。さらに、計画的なメンテナンスや部品交換を行うことができ、不要不急の交換作業を抑制して、メンテナンス及び部品コストの削減を実現することができる。
【0079】
なお、樹脂部品41の摩耗深さ(d)を確認する方法および構造は、上述したインジケーター(標線)46に限定されない。例えば、インジケーターとして、目盛り、微小な貫通孔などを樹脂部品41に形成しても、摩耗深さを目視で確認することができる。また、ロープ溝の全体もしくは一部(例えば、溝底部45a)を塗料などで着色し、摩耗により色が変わった場合に、摩耗深さ(d)が所定値以上であることを検出してもよい。
【0080】
[エレベーター装置の保守方法]
ここで、本実施形態に係るエレベーター装置の保守方法について説明する。
エレベーター装置の保守方法では、まず、摩耗深さ検出工程を行う。この摩耗深さ検出工程では、上述したように、インジケーター46を用いて摩耗深さ(d)が所定値以上であるか否かを検出する。このとき、摩耗深さ(d)が所定値未満であった場合は、エレベーター装置の保守方法を終了する。なお、摩耗深さ(d)は、インジケーターを用いずに、例えば、ノギスなどの測定器を用いて、中頂部42bの上面とロープ7との相対的な距離を測定することで検出してもよい。
【0081】
一方、摩耗深さ検出工程において、摩耗深さ(d)が所定値以上であった場合は、樹脂部品移動工程を行う。この樹脂部品移動工程では、エレベーター装置用部品21を回転させて、摩耗深さが所定値以上である取外し対象の樹脂部品41(取外し対象樹脂部品)を、ロープが係合しない位置(
図6参照)に移動させる。
【0082】
次に、樹脂部品取り外し工程を行う。この樹脂部品取り外し工程では、取外し対象の樹脂部品41と、これに隣り合う樹脂部品41とを接続している接続部材25(
図9参照)を外して、金属製構造体22から取外し対象の樹脂部品41を取り外す(
図6参照)。
【0083】
その後、接続工程を行う。この接続工程では、交換用の樹脂部品41(交換用樹脂部品)を金属製構造体22に取り付けて、接続部材25を用いて交換用の樹脂部品41とこれに隣り合う樹脂部品41とを接続する。このとき、交換用の樹脂部品41とこれに隣り合う樹脂部品41との間には、緩衝材24を介在させる。以上でエレベーター装置の保守方法が終了する。
【0084】
このように、本実施形態のエレベーター装置用部品、エレベーター装置及びエレベーター装置の保守方法では、エレベーター装置用部品21からロープ7を外さずに、ロープ7に接触して摩耗した樹脂部品41を容易に交換することができる。その結果、エレベーター装置1の保守作業における作業時間の大幅な短縮、作業工数の低減が可能となる。
【0085】
ところで、金属製構造体へ樹脂製構造体(樹脂部品)を直接固定すると、その固定部などで応力が集中するため、樹脂製構造体(樹脂部品)のせん断破壊の原因となる。この着脱式の樹脂部品における課題に対して、本実施形態では、隣り合う樹脂部品41間に緩衝材24を回沿いさせると共に、接続部材25を用いて隣り合う樹脂部品41同士を接続する。これにより、樹脂製構造体23(樹脂部品41)に局所的な応力や摺動が生じないようにすることができ、樹脂製構造体(樹脂部品)のせん断破壊を抑制することができる。
【0086】
さらに、樹脂製構造体23(樹脂部品41)に複数のロープ溝45を設けたため、エレベーター装置などに適合する多本掛けのエレベーター装置用部品21を実現することができる。また、複数のロープ7に接触する部品を樹脂製の樹脂製構造体23(樹脂部品41)にしたため、ロープ7の疲労寿命・耐摩耗性を向上することができ、ロープ7の交換頻度を低下させることができる。
【0087】
さらに、複数のロープ溝45の壁面にインジケーター46を設けたため、目視等により容易に樹脂部品41の摩耗深さを検出することができ、樹脂部品41を交換するタイミングを把握することができる。そして、このようなエレベーター装置用部品を備えたエレベーター装置の保守方法では、保守作業における作業時間の大幅な短縮、作業工数の低減が可能であり、保守性を向上することができる。
【0088】
[変形例]
以上、本発明のエレベーター装置の実施形態について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明のエレベーター装置は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0089】
<樹脂部品の変形例>
図11は、樹脂部品の変形例を示す拡大断面図である。
【0090】
図11に示す樹脂部品61は、上述した実施形態に係る樹脂部品41の変形例であり、樹脂部品61が樹脂部品41と異なる点は、複数のロープ溝65である。そのため、樹脂部品61の樹脂部品41と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略し、ここでは、複数のロープ溝65について説明する。
【0091】
樹脂部品61の複数のロープ溝65は、摩耗する部分である溝底部65aを有している。この溝底部65aは、ロープ溝65の壁面等を形成するその他の部分の材料と異なる材料によって形成されている。すなわち、樹脂部品61における構造を維持する部分と摩耗する部分とで異なる樹脂材料を用いている。
【0092】
複数のロープ溝65の壁面等を形成するその他の部分は、樹脂部品61における構造を維持する部分である。したがって、複数のロープ溝65の壁面等を形成するその他の部分は、熱硬化性樹脂によって形成することが望ましい。また、摩耗する部分である溝底部65aは、弾性変形が起こりやすい熱可塑性樹脂65gよって形成することが望ましい。
【0093】
図12は、ロープ溝45の摩耗深さが所定値以上になった樹脂部品41の補修を説明する説明図である。
【0094】
図12に示すように、長期間の使用により摩耗したロープ溝45の溝底部45a´に適切な補修を施すことで、元の樹脂部品41に相当する補修済み樹脂部品62として再生することができる。例えば、摩耗したロープ溝45に上述した熱可塑性樹脂65gを充填し、余剰部分を切削加工することで溝底部45aを有するロープ溝45を形成する。これにより、摩耗する前と同程度の補修済み樹脂部品62を得ることができる。
【0095】
また、樹脂部品41の複数のロープ溝45を既定の深さ以下まで切削し、それらロープ溝45に樹脂材料を充填、加工し、溝底部45aから樹脂部品41の底面42cまでの厚みを厚くしてもよい。なお、充填する樹脂材料は、樹脂部品41と同一であってもよく、また、異なっていてもよい。また、充填する樹脂材料を、複数のロープ7の表面に対する保護性に適した材料にすることで、ロープ7の長寿命化が可能となる。
【0096】
また、樹脂部品41の複数のロープ溝45を既定の深さ以下まで切削し、色の異なる樹脂材料を複数のロープ溝45に充填、加工し、それらロープ溝45の色調変化により摩耗深さが所定値以上になったか否かを検出するようにしてもよい。ロープ7の表面には、油やグリースが含まれるため、ロープ溝45に油やグリースが付着してインジケーターの視認性が悪くなる可能性がある。そのため、色調の差を利用してロープ溝45の摩耗深さを検出することで、作業性を向上することができる。
【0097】
<金属製構造体の変形例>
図13は、金属製構造体の第1の変形例を示す拡大断面図である。
【0098】
図13に示す金属製構造体71は、上述した実施形態に係る金属製構造体22の第1の変形例であり、金属製構造体71が金属製構造体22と異なる点は、外周部72である。そのため、金属製構造体71の金属製構造体22と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略し、ここでは、外周部72について説明する。
【0099】
外周部72は、スポーク部33と反対側の角部が曲面に形成されている。外周部72の角部を曲面に形成した場合は、樹脂部品41と金属製構造体71との接触応力を緩和することができ、樹脂部品41の長寿命化を実現することができる。また、外周部72を有するエレベーター装置用部品は、トラクションが不要な滑車(プーリ)や、摩擦力のみで金属製構造体と樹脂製構造体との間の動力伝達が可能なシーブに適用するとよい。
【0100】
図14は、金属製構造体の第2の変形例を示す拡大断面図である。
【0101】
図14示す金属製構造体73は、上述した実施形態に係る金属製構造体22の第2の変形例であり、金属製構造体73が金属製構造体22と異なる点は、外周部74である。そのため、金属製構造体73の金属製構造体22と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略し、ここでは、外周部74について説明する。
【0102】
外周部74は、スポーク部33と反対側の面が曲面に形成されている。この曲面は、金属製構造体73の幅方向の中央部が最も高く、両側に至るにつれて低くなっている。外周部74のスポーク部33と反対側の面を曲面に形成した場合は、金属製構造体22の第1の変形例と同様に、樹脂部品41と金属製構造体73との接触応力を緩和することができ、樹脂部品41の長寿命化を実現することができる。また、外周部74を有するエレベーター装置用部品は、トラクションが不要な滑車(プーリ)や、摩擦力のみで金属製構造体と樹脂製構造体との間の動力伝達が可能なシーブに適用するとよい。
【0103】
図15は、金属製構造体の第3の変形例を示す拡大断面図である。
図16は、金属製構造体の第3の変形例に樹脂部品を嵌合した状態を示す拡大断面図である。
【0104】
図15及び
図16に示す金属製構造体75は、上述した実施形態に係る金属製構造体22の第3の変形例であり、金属製構造体75が金属製構造体22と異なる点は、外周部76である。そのため、金属製構造体75の金属製構造体22と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略し、ここでは、外周部76について説明する。
【0105】
外周部76は、縦ガイド77を有している。この縦ガイド77は、金属製構造体75の幅方向の中央部に設けられており、金属製構造体75の周方向に沿って延びる突条に形成されている。
図16に示すように、外周部76を有する金属製構造体75には、樹脂部品63が嵌合する。この樹脂部品63における曲面カバー部42の底面42cには、金属製構造体75の縦ガイド77が係合する凹部49が形成されている。
【0106】
樹脂部品63の溝底部45aから曲面カバー部42の底面42cまでの長さは、ロープ7の径の少なくとも1倍以上とすることが望ましい。上述した樹脂部品41と同様に、ロープ溝45の摩耗は、曲面カバー部42の底面42cに向かって進行するため、溝底部45aから底面42cまでの長さが長くなるほど樹脂部品63の寿命が長くなる。
【0107】
外周部76が縦ガイド77を有する場合は、金属製構造体75及び樹脂部品63の寸法公差に起因する樹脂部品63のガタツキを抑制することができる。また、外周部76を有するエレベーター装置用部品は、トラクションが不要な滑車(プーリ)や、摩擦力のみで金属製構造体と樹脂製構造体との間の動力伝達が可能なシーブに適用するとよい。
【0108】
図17は、金属製構造体の第4の変形例を示す拡大断面図である。
【0109】
図17に示す金属製構造体81は、上述した実施形態に係る金属製構造体22の第4の変形例であり、金属製構造体81が金属製構造体22と異なる点は、外周部82である。そのため、金属製構造体81の金属製構造体22と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略し、ここでは、外周部82について説明する。
【0110】
外周部82は、横ガイド83を有している。この横ガイド83は、金属製構造体81の周方向に適当な間隔を空けて配置されており、金属製構造体81の幅方向に沿って延びる突条に形成されている。外周部82を有する金属製構造体81には、横ガイド83が係合する凹部を有する樹脂部品(不図示)が嵌合する。
【0111】
外周部82が横ガイド83を有する場合は、嵌合する樹脂部品を周方向の回転力に抗して支持することができる。したがって、外周部82を有するエレベーター装置用部品は、積載量が比較的大きく、金属製構造体81とこれに嵌合する樹脂部品との間で高いトラクションが必要なシーブに適用するとよい。
【0112】
図18は、金属製構造体の第5の変形例を示す拡大断面図である。
【0113】
図18に示す金属製構造体85は、上述した実施形態に係る金属製構造体22の第5の変形例であり、金属製構造体85が金属製構造体22と異なる点は、外周部86である。そのため、金属製構造体85の金属製構造体22と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略し、ここでは、外周部86について説明する。
【0114】
外周部86は、縦ガイド87と、横ガイド88とを有している。縦ガイド87は、金属製構造体85の幅方向の中央部に設けられており、金属製構造体85の周方向に沿って延びる突条に形成されている。また、横ガイド88は、金属製構造体85の周方向に適当な間隔を空けて配置されており、金属製構造体85の幅方向に沿って延びる突条に形成されている。外周部86を有する金属製構造体85には、縦ガイド87及び横ガイド88が係合する凹部を有する樹脂部品(不図示)が嵌合する。
【0115】
外周部86が横ガイド88を有する場合は、嵌合する樹脂部品を周方向の回転力に抗して支持することができる。したがって、外周部86を有するエレベーター装置用部品は、積載量が比較的大きく、金属製構造体85とこれに嵌合する樹脂部品との間で高いトラクションが必要なシーブに適用するとよい。
【0116】
図19は、金属製構造体の第6の変形例を示す拡大断面図である。
【0117】
図19に示す金属製構造体91は、上述した実施形態に係る金属製構造体22の第6の変形例であり、金属製構造体91が金属製構造体22と異なる点は、外周部92である。そのため、金属製構造体91の金属製構造体22と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略し、ここでは、外周部92について説明する。
【0118】
外周部92は、歯型ガイド93を有している。歯型ガイド93は、金属製構造体91の周方向に間隔を空けずに並んでおり、金属製構造体91の幅方向に沿って延びている。外周部92を有する金属製構造体91には、歯型ガイド93が係合する凹部を有する樹脂部品(不図示)が嵌合する。
【0119】
金属製構造体91における樹脂部品の周方向の回転力に抗する力は、金属製構造体71(
図17参照)及び金属製構造体75(
図18参照)における樹脂部品の周方向の回転力に抗する力よりも大きい。これにより、金属製構造体91と樹脂部品との間にすべりが生じない。したがって、外周部92を有するエレベーター装置用部品は、高積載容量のエレベーター装置のシーブに適用するとよい。
【0120】
<接続部材の変形例>
図20は、接続部材の第1の変形例を示す説明図である。
【0121】
図20に示す接続部材101は、本発明に係る接続部材の第1の変形例であり、伸縮バンド102と、固定具103から構成されている。伸縮バンド102は、隣り合う樹脂部品41の側面部43に設けられた貫通孔43aを貫通しており、固定具103によって結束されている。したがって、伸縮バンド102は、樹脂部品41にのみ固定されており、接続部材101は、隣り合う樹脂部品41同士を接続している。
【0122】
貫通孔43aの位置は、側面部43の任意の位置を設定することができるが、樹脂部品41の強度が十分で、かつ端部から十分離れた位置とすることが望ましい。なお、貫通孔43aには、金属製の補強材などを適宜設置してもよい。また、固定具103としては、例えば、平ベルト金具、両面カシメ、バックル、ピンなどを挙げることができる。
【0123】
伸縮バンド102の材質としては、上述した伸縮プレート51と同様であり、ゴム弾性を有していれば特に限定されず、例えば、常温での弾性率が10〜500MPaの範囲にある熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、加硫ゴムなどが挙げられる。また、伸縮バンド102は、ゴム弾性を有する緩衝材24よりも硬質な材料によって形成することが望ましい。
【0124】
このように、隣り合う樹脂部品41の側面部43を伸縮バンド102及び固定具103によって接続することにより、エレベーター装置用部品の外周部にロープ溝のみを設ける構成にすることができる。その結果、曲面カバー部にボルトを貫通させる貫通孔を形成するためのクリアランス確保が不要であり、樹脂部品41(曲面カバー部42)の幅の小型化を図ることができる。また、上述したゴム弾性を有する緩衝材24と、伸縮バンド102による樹脂部品41の接続を組み合わせることで、樹脂部品41の側面部43での応力を緩和しながら隣り合う樹脂部品41同士を接続して、複数の樹脂部品41を一体化することができる。
【0125】
図21は、接続部材の第2の変形例を示す説明図である。
【0126】
図21に示す接続部材105は、本発明に係る接続部材の第1の変形例であり、ボルト106と、緩衝チューブ107から構成されている。ボルト106は、隣り合う樹脂部品111の側面部43に設けられた貫通孔を貫通し、隣り合う樹脂部品111同士を締結する。貫通孔は、隣り合う樹脂部品111のそれぞれ設けられた係合部及び被係合部を貫通している。
【0127】
緩衝チューブ107は、貫通孔に挿通されており、ボルト106と樹脂部品111との間に介在されている。この緩衝チューブ107の材質は、緩衝材24と同じものを適用でき、例えば、常温での弾性率が0.1〜100MPaの範囲にある熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、加硫ゴムなどが挙げられる。
【0128】
ボルト106は、複数のロープ7から受ける荷重が低く、樹脂部品111の側面部43への負荷が十分許容される場合に接続部材として適用するとよい。本発明に係る接続部材としては、ボルトの代わりにピンを適用することができる。また、接続部材としてボルトやピンを適用する場合に、緩衝チューブを省いてもよい。
【0129】
図22は、隣り合う樹脂部品の係合状態の第1の例を示す断面図である。
【0130】
図22に示すように、隣り合う樹脂部品111の一方には、係合部112が形成されており、隣り合う樹脂部品111の他方には、被係合部113が形成されている。係合部112は、被係合部113に係合する。そして、隣り合う樹脂部品111は、係合部112と被係合部113が係合した状態で、ボルト106によって締結されている。
【0131】
係合部112は、樹脂部品111における側面部43の端面に設けられており、端面から垂直に突出する凸部と、端面に対して垂直に凹んでいる凹部から形成されている。係合部112の凸部は、外側に配置されており、係合部112の凹部は、内側(金属製構造体側)に配置されている。
【0132】
被係合部113は、樹脂部品111における側面部43の端面に設けられており、端面に対して垂直に凹んでいる凹部と、端面から垂直に突出する凸部から形成されている。被係合部113の凹部は、外側に配置されており、被係合部113の凸部は、内側(金属製構造体側)に配置されている。
【0133】
係合部112の凸部は、被係合部113の凹部に係合し、被係合部113の凸部は、係合部112の凹部に係合する。そして、係合部112と被係合部113との間には、緩衝材24が介在されている。
【0134】
図23は、隣り合う樹脂部品の係合状態の第2の例を示す断面図である。
【0135】
図23に示すように、隣り合う樹脂部品111の一方には、係合部114が形成されており、隣り合う樹脂部品111の他方には、被係合部115が形成されている。係合部114は、被係合部115に係合する。そして、隣り合う樹脂部品111は、係合部114と被係合部115が係合した状態で、ボルト106によって締結されている。
【0136】
係合部114は、樹脂部品111における側面部43の端面の中間部に凹部を設けることにより形成されている。被係合部115は、樹脂部品111における側面部43の端面の中間部に凸部を設けることにより形成されている。被係合部115の凸部は、係合部114の凹部に係合する。そして、係合部114と被係合部115との間には、緩衝材24が介在されている。
【0137】
図24は、隣り合う樹脂部品の係合状態の第3の例を示す断面図である。
【0138】
図24に示すように、隣り合う樹脂部品111の一方には、係合部116が形成されており、隣り合う樹脂部品111の他方には、被係合部117が形成されている。係合部116は、被係合部117に係合する。そして、隣り合う樹脂部品111は、係合部116と被係合部117が係合した状態で、ボルト106によって締結されている。
【0139】
係合部116は、樹脂部品111における側面部43の端面を傾斜面にすることにより形成されている。係合部116の外側の角部は、鋭角であり、係合部116の内側(金属製構造体側)の角部は、鈍角になっている。被係合部117は、樹脂部品111における側面部43の端面を傾斜面にすることにより形成されている。被係合部117の外側の角部は、鈍角であり、被係合部117の内側(金属製構造体側)の角部は、鋭角になっている。係合部116の傾斜面は、被係合部117の傾斜面に係合する。そして、係合部116と被係合部117との間には、緩衝材24が介在されている。
【0140】
図25は、隣り合う樹脂部品の係合状態の第4の例を示す断面図である。
【0141】
図25に示すように、隣り合う樹脂部品111の一方には、係合部118が形成されており、隣り合う樹脂部品111の他方には、被係合部119が形成されている。係合部118は、被係合部119に係合する。そして、隣り合う樹脂部品111は、係合部118と被係合部119が係合した状態で、ボルト106によって締結されている。
【0142】
係合部118は、樹脂部品111における側面部43の端面に設けられており、端面から垂直に突出する凸部と、端面に対して垂直に凹んでいる凹部から形成されている。係合部112の凸部は、外側に配置されており、係合部112の凹部は、内側(金属製構造体側)に配置されている。また、係合部112の凸部には、ボルト106に螺合するナット108を収容する収容凹部118aが設けられている。
【0143】
被係合部119は、樹脂部品111における側面部43の端面に設けられており、端面に対して垂直に凹んでいる凹部と、端面から垂直に突出する凸部から形成されている。被係合部113の凹部は、外側に配置されており、被係合部113の凸部は、内側(金属製構造体側)に配置されている。なお、被係合部113の凸部に、ボルト106の頭部を収容する収容凹部を設けてもよい。
【0144】
係合部118の凸部は、被係合部119の凹部に係合し、被係合部119の凸部は、係合部118の凹部に係合する。そして、係合部118と被係合部119との間には、緩衝材24が介在されている。
【0145】
なお、本発明に係る接続部材としては、上述した伸縮プレート51(
図9参照)の代わりに、金属製のプレートを用いてもよい。また、本発明に係る接続部材としては、上述した伸縮バンド102(
図20参照)の代わりに、樹脂製の結束バンドを用いてもよい。樹脂製の結束バンドの材質としては、特に限定されないが、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリエチレンを少なくとも1種類以上含む樹脂材料を挙げることができる。
【0146】
[金属製構造体と接続部材の組合せ例]
図26は、エレベーター装置用部品における金属製構造体と接続部材の組合せ表を示す図である。
【0147】
<組合せ例1〜8>
図26に示すように、組合せ例1〜8は、金属製構造体の外周部が平面構造(
図7参照)であるエレベーター装置用部品である。例えば、組合せ例1は、接続部材としてボルト(ピン)を使用して樹脂部品の係合状態の第1の例を接続したものであり、組合せ例2は、接続部材としてボルト(ピン)を使用して樹脂部品の係合状態の第2の例を接続したものである。
【0148】
エレベーター装置用部品の組合せ例1〜8は、トラクションが不要な滑車(プーリ)に用いることができる。また、金属製構造体と樹脂製構造体との間に生じる摩擦力のみで、金属製構造体と樹脂製構造体との間で動力を伝達することが可能な、比較的荷重の低いエレベーター装置のシーブに用いることができる。
【0149】
<組合せ例9〜14>
組合せ例9〜14は、金属製構造体の外周部が曲面構造(
図13及び
図14参照)であるエレベーター装置用部品である。例えば、組合せ例13は、接続部材として金属製のプレートを使用して隣り合う樹脂部品同士を接続したものであり、組合せ例14は、接続部材として樹脂製の結束バンドを使用して隣り合う樹脂部品同士を接続したものである。
【0150】
組合せ例9〜14のエレベーター装置用部品は、金属製構造体と樹脂製構造体(樹脂部品)とが曲面で接する構造であり、金属製構造体と樹脂部品との接触応力を緩和することができる。したがって、金属製構造体の外周部が平面構造(
図7参照)であるエレベーター装置用部品よりも樹脂部品の長寿命化が期待できる。
【0151】
しかし、金属製構造体と樹脂製構造体(樹脂部品)とが曲面で接する構造は、接触面積の低下により金属製構造体と樹脂製構造体との間の動力伝達が低下する。そのため、組合せ例9〜14のエレベーター装置用部品は、主に滑車(プーリ)などのトラクションが不要な部品に用いることができる。
【0152】
<組合せ例15〜22>
組合せ例15〜22は、金属製構造体の外周部が縦ガイドを有する構造(
図15参照)であるエレベーター装置用部品である。例えば、組合せ例21は、接続部材として伸縮プレート(
図9参照)を使用して隣り合う樹脂部品同士を接続したものであり、組合せ例22は、接続部材として伸縮バンド(
図20参照)を使用して隣り合う樹脂部品同士を接続したものである。
【0153】
組合せ例15〜22のエレベーター装置用部品は、金属製構造体の縦ガイドが樹脂部品の凹部に係合するため、金属製構造体の幅方向に対する樹脂部品のズレが抑制されて樹脂製構造体の寸法安定性が高まる。また、金属製構造体と樹脂製構造体(樹脂部品)との接触面積が、金属製構造体の外周部が平面構造である場合よりも大きいため、組合せ例1〜8のエレベーター装置用部品よりも金属製構造体と樹脂製構造体(樹脂部品)との間に生じる摩擦力が大きくなる。
【0154】
組合せ例15〜22のエレベーター装置用部品は、トラクションが不要な滑車(プーリ)に用いることができる。また、金属製構造体と樹脂製構造体との間に生じる摩擦力のみで、金属製構造体と樹脂製構造体との間で動力を伝達することが可能な、比較的荷重の低いエレベーター装置のシーブに用いることができる。
【0155】
<組合せ例23〜26>
組合せ例23〜26は、金属製構造体の外周部が横ガイドを有する構造(
図17及び
図19参照)であるエレベーター装置用部品である。例えば、組合せ例23は、接続部材として伸縮プレート(
図9参照)を使用して隣り合う樹脂部品同士を接続したものであり、組合せ例24は、接続部材として伸縮バンド(
図20参照)を使用して隣り合う樹脂部品同士を接続したものである。
【0156】
組合せ例23、24のエレベーター装置用部品は、金属製構造体の横ガイドが樹脂部品の凹部に係合するため、巻上機から加えられる回転力に抗して樹脂製構造体を支持できる。そのため、組合せ例1〜22のエレベーター装置用部品よりも大きな駆動力をロープに伝達することが可能となる。
【0157】
また、組合せ例25、26のエレベーター装置用部品は、金属製構造体の外周部に縦ガイドと横ガイドを有する構造であるため、樹脂製構造体の寸法安定性と巻上機からのトラクション特性を両立できる。このように、組合せ例23〜26のエレベーター装置用部品は、金属製構造体と樹脂製構造体との間に生じる摩擦力に加え、横ガイドにより金属製構造体と樹脂製構造体との間で生じるすべりが抑制されるため、積載量の大きいエレベーターのシーブに適する。
【0158】
<組合せ例27、28>
組合せ例27〜28は、金属製構造体の外周部が歯型ガイドを有する構造(
図19参照)であるエレベーター装置用部品である。組合せ例27は、接続部材として伸縮プレート(
図9参照)を使用して隣り合う樹脂部品同士を接続したものであり、組合せ例28は、接続部材として伸縮バンド(
図20参照)を使用して隣り合う樹脂部品同士を接続したものである。
【0159】
組合せ例27、28のエレベーター装置用部品は、金属製構造体の幅方向に沿って延びる歯型ガイドを有するため、ロープから加わる荷重が大きくても、金属製構造体と樹脂製構造体との間で生じるすべりを抑制することができる。したがって、組合せ例27、28のエレベーター装置用部品は、組合せ例23〜26のエレベーター装置用部品よりも更に高積載容量のエレベーター装置用シーブとして用いることができる。
【0160】
組合せ例1〜28のエレベーター装置用部品は、いずれも樹脂部品が容易に交換可能であり、エレベーター装置の保守作業における作業工数を低減することができ、保守作業に要する時間を大幅に短縮することができる。また、隣り合う樹脂部品同士を接続するため、樹脂部品に局所的な応力が加わったり、局所的な摺動が生じたりすることを抑制できる。
【0161】
さらに、隣り合う樹脂部品同士の側面部を接続することで、樹脂部品の周面部(曲面カバー部)に複数のロープ溝を設けるスペースを確保することができる。これにより、エレベーター装置などに適合する多本掛けのエレベーター装置用部品を実現することができる。
また、ロープに接触する部品を樹脂製の樹脂製構造体(樹脂部品)にしたため、ロープの疲労寿命・耐摩耗性を向上することができ、ロープの交換頻度を低下させることができる。
【0162】
また、ロープ溝の壁面にインジケーターとなる構造(標線や目盛り、微小な貫通孔など)を設けたことにより、目視等で樹脂部品の摩耗深さや樹脂部品の交換のタイミングを容易に把握することができる。このようなエレベーター用部品を備えたエレベーター装置の保守方法では、樹脂部品の交換のタイミングを容易に把握できると共に、ロープを外さずに樹脂部品の交換を容易に行うことができる。その結果、エレベーター装置の保守性を向上させることができる。
【0163】
なお、上記した実施形態は、本発明の理解を助けるために具体的に説明したものであり、本発明は、説明した全ての構成を備えることに限定されるものではない。例えば、ある実施例(変形例)の構成の一部を、他の実施例(変形例)の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例(変形例)の構成に他の実施例(変形例)の構成を加えることも可能である。さらに、各実施例(変形例)の構成の一部について、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能である。
【0164】
例えば、上述した実施形態では、金属製構造体22を鋳造により形成したが、本発明に係る金属製構造体としては、切削加工に形成してもよい。また、金属製構造体22の径、スポーク部33の本数、太さ、材質などは、エレベーター装置用部品にかかる荷重の大きさにより、適宜設定することができる。