特許第6621710号(P6621710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621710
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/16 20060101AFI20191209BHJP
   B60J 3/04 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   E02F9/16 C
   E02F9/16 E
   B60J3/04
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-108892(P2016-108892)
(22)【出願日】2016年5月31日
(65)【公開番号】特開2017-214761(P2017-214761A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2018年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】三崎 陽二
(72)【発明者】
【氏名】新垣 一
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−067690(JP,A)
【文献】 特開2010−222878(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/098312(WO,A1)
【文献】 特開2016−078460(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/084064(WO,A1)
【文献】 特開2005−035384(JP,A)
【文献】 特開2007−153135(JP,A)
【文献】 特開2009−243073(JP,A)
【文献】 特開2009−173195(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02857239(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/16
B60J 3/00−3/06
B60J 1/00−1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に設けられたキャビンと、
前記キャビンの窓面前部を構成するフロントウィンドウと、
前記フロントウィンドウに設けられた前記キャビンの外から入射される光源を遮る遮光手段と、
操作者の視点位置を検出する第1検出部と、
前記光源の位置と該光源の前記フロントウィンドウに対する入射方向を検出する第2検出部と、
前記視点位置からショベルの作業領域の上限と前記視点位置から前記作業領域の下限との間における前記光源の入射角が重複する範囲において、前記各検出結果に基づいて前記光源の前記視点位置に対する入射方向を算出し、前記光源と前記視点位置との間の領域を前記遮光手段により防眩する制御部と
を備えるショベル。
【請求項2】
前記遮光手段は、液晶パネルであり、当該液晶パネルにより防眩領域を形成して前記光源を防眩することを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記遮光手段により形成した前記防眩領域の位置や大きさを任意に設定可能な設定手段を有していることを特徴とする請求項2に記載のショベル。
【請求項4】
前記遮光手段により形成した前記防眩領域の防眩度を任意に調整可能な調整手段を有していることを特徴とする請求項2に記載のショベル。
【請求項5】
前記遮光手段は、タッチパネルであることを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【請求項6】
前記タッチパネルは、前記操作者のピンチイン操作及びピンチアウト操作により前記光源を防眩する防眩領域の位置や大きさを任意に調整可能であることを特徴とする請求項5に記載のショベル。
【請求項7】
前記タッチパネルは、前記操作者のスワイプ操作により前記光源を防眩する防眩領域の防眩度を任意に調整可能であることを特徴とする請求項5に記載のショベル。
【請求項8】
前記フロントウィンドウに設けられる前記遮光手段は、前記キャビンの床上900mmの高さ位置から前記フロントウィンドウの上端位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載のショベル。
【請求項9】
前記遮光手段は、前記キャビンのサイドウィンドウに設けられていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル等は、下部走行体上に上部旋回体が搭載され、該上部旋回体の前部にキャブが設けられている。更に、該キャブ内におけるフロントウィンドウの上部全体に半透明のサンバイザが上下開閉可能に取り付けられ、該サンバイザによりキャブ内に射し込む日光を遮断して眩しさを回避できるように構成されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−222878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上述のサンバイザは、フロントウィンドウの上部全体に設置される。そのため、防眩効果は十分に発揮されるが、必要のない箇所まで遮蔽されてフロントウィンドウの視界性を悪化させてしまう。
【0005】
そこで、操作者が必要とする位置にのみ防眩を行って、防眩効果と視界性の向上を期待できるショベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明の一実施形態によれば、
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に設けられたキャビンと、
前記キャビンの窓面前部を構成するフロントウィンドウと、
前記フロントウィンドウに設けられた前記キャビンの外から入射される光源を遮る遮光手段と、
操作者の視点位置を検出する第1検出部と、
前記光源の位置と該光源の前記フロントウィンドウに対する入射方向を検出する第2検出部と、
前記各検出結果に基づいて前記光源の前記視点位置に対する入射方向を算出し、前記光源と前記視点位置との間の領域を前記遮光手段により防眩する制御部と
を備えるショベルが提供される。
【発明の効果】
【0007】
開示した実施形態によれば、操作者が必要とする位置にのみ防眩を行って、防眩効果と視界性の向上を期待できるショベルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ショベルの側面図である。
図2図1のショベルの構成を示す図である。
図3】ショベルの防眩構成を例示する図である。
図4】ショベルのキャビン内の運転席から前方を見た際の液晶パネル上に形成された防眩領域を例示する図である。
図5】ショベルのキャビン内の運転席から前方を見た際の液晶パネル上に形成された異なる防眩領域を例示する図である。
図6】ショベルのキャビン内の運転席から前方を見た際の液晶パネル上に形成された更に異なる防眩領域を例示する図である。
図7】ショベルのキャビン内の運転席から前方を見た際のタッチパネル上に形成された防眩領域を例示する図である。
図8】別の実施形態のおけるショベルの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施形態におけるショベルを例示する側面図である。
ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメント(作業部位)としてバケット6が取り付けられている。エンドアタッチメントとしては、法面用バケット、浚渫用バケット、ブレーカ等が取り付けられてもよい。
【0010】
ブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの一例として掘削アタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。
【0011】
上部旋回体3には、運転室としてキャビン10が搭載される。上部旋回体3においてキャビン10の後方に、ショベルの動力源としてエンジン11が搭載される。エンジン11は、例えばディーゼルエンジンのような内燃機関である。
【0012】
キャビン10は、キャビンの窓面前部を構成するフロントウィンドウ110を有している。またキャビン10は、図示することは省略したが窓面側部を構成する左右のサイドウィンドウを有している。
【0013】
キャビン10内には、運転席50、操作レバーや操作機器などが設けられたコンソール51が設置される。さらに、キャビン10内には、コントローラ30、操作者の視点位置を検出する第1検出部としての視点位置検出装置C1、表示装置40、ゲートロックレバーD1が設置される。
【0014】
コントローラ30は、ショベルの駆動制御を行う制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU及びメモリ30aを含む演算処理装置で構成される。そして、コントローラ30の各種機能は、CPUがメモリ30aに格納されたプログラムを実行することで実現される。後述の防眩制御は、コントローラ30により行われる。
【0015】
視点位置検出装置C1は、例えばCCDやCMOS等の撮像素子を有するデジタルカメラでありキャビン10内の上方位置に設置され、レンズを操作者OPの顔Fに向けた状態で取付けられており、操作者OPの顔Fが撮影可能とされている。視点位置検出装置C1は、操作者OPの顔Fを撮影して画像情報をコントローラ30に供給する。視点位置検出装置C1は、コンソール51上に設置されてもよい。
【0016】
表示装置40は、コントローラ30からの指令に応じて各種画像情報を出力する。本実施形態では、表示装置40として、コントローラ30に直接接続される車載液晶ディスプレイが利用される。
【0017】
ゲートロックレバーD1は、ショベルが誤って操作されるのを防止する機構である。本実施形態では、ゲートロックレバーD1は、キャビン10のドアと運転席との間に配置される。キャビン10から操作者が退出できないようにゲートロックレバーD1が引き上げられた場合に、各種操作装置は操作可能となる。一方、キャビン10から操作者が退出できるようにゲートロックレバーD1が押し下げられた場合には、各種操作装置は操作不能となる。
【0018】
フロントウィンドウ110の内側面には、キャビン10の外から入射される光線Jを遮る遮光手段60が設けられている。遮光手段60は、液晶パネルが好ましい。遮光手段60の具体的構成や配置位置については後述する。
【0019】
キャビン10の上には光源としての太陽の位置を検出することで、太陽のフロントウィンドウ110に対する位置と入射方向を検出する第2検出部としての光源位置検出装置C2が設けられている。光源位置検出装置C2は、例えばCCDやCMOS等の撮像素子を有するデジタルカメラであり車両の前方にレンズを向けた状態でキャビン10上に設置される。光源位置検出装置C2は、例えば作業領域及び空を含む風景を撮影し、撮影された画像の地平線より上の領域に太陽などの光源があれば、該光源の位置と入射方向を検出する。光源位置検出装置C2は、太陽の画像情報として例えば高輝度画素情報をコントローラ30に供給する。
【0020】
本実施形態の制御部としてのコントローラ30は、視点位置検出装置C1から取得した画像情報を解析することで、操作者の視点位置を特定する。視点位置とは、操作者の目(眼球)の位置を指す。また、コントローラ30は、光源位置検出装置C2から取得した高輝度画素情報などから太陽のフロントウィンドウ110に対する位置と入射方向を特定する。その際、コントローラ30は、視点位置検出装置C1で算出した操作者の視点位置情報などを使用してよい。太陽のフロントウィンドウ110に対する位置とは、操作者がキャビン10内からフロントウィンドウ110を見た際の太陽の位置である。
【0021】
具体的には、コントローラ30は、視点位置検出装置C1から取得した画像情報に基づいて、視点位置検出装置C1に対する操作者の相対的な視点位置を特定する。一方、コントローラ30は、光源位置検出装置C2から取得した高輝度画素情報などから光源位置検出装置C2に対する太陽の位置と入射方向を特定する。ここで、視点位置検出装置C1と光源位置検出装置C2は、キャビンにおける予め定められた位置に配置されている。このため、視点位置検出装置C1と光源位置検出装置C2との対応関係は、コントローラ30に予め入力されている。したがって、コントローラ30は、操作者の視点位置と太陽との位置関係を把握することができる。更に、コントローラ30は、操作者の視点位置、太陽、及び、フロントウィンドウ110との位置関係を把握することができる。
【0022】
そして、コントローラ30は、太陽と操作者の視点位置の中間部を遮光手段60により防眩する。
【0023】
図2は、実施形態におけるショベルのコントローラ30を含む接続構成を例示する図である。図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細実線でそれぞれ示される。
【0024】
エンジン11はショベルの動力源である。本実施形態では、エンジン11は、エンジン負荷の増減にかかわらずエンジン回転数を一定に維持するアイソクロナス制御を採用したディーゼルエンジンである。エンジン11における燃料噴射量、燃料噴射タイミング、ブースト圧等は、エンジンコントローラユニット(ECU)D7により制御される。
【0025】
エンジン11には油圧ポンプとしてのメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続される。メインポンプ14には高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17が接続される。
【0026】
コントロールバルブ17は、ショベルの油圧系の制御を行う油圧制御装置である。右側走行用油圧モータ、左側走行用油圧モータ、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、旋回用油圧モータ等の油圧アクチュエータは、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。なお、旋回用油圧モータは旋回用電動発電機であってもよい。
【0027】
パイロットポンプ15にはパイロットラインを介して操作装置26が接続される。操作装置26はレバー及びペダルを含む。また、操作装置26は、油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。
【0028】
ゲートロック弁D2は、パイロットポンプ15と操作装置26とを接続する油圧ラインの連通・遮断を切り換える。本実施形態では、ゲートロック弁D2は、コントローラ30からの指令に応じて油圧ラインの連通・遮断を切り換える電磁弁である。コントローラ30は、ゲートロックレバーD1が出力する状態信号に基づいてゲートロックレバーD1の状態を判定する。そして、コントローラ30は、ゲートロックレバーD1が引き上げられた状態にあると判定した場合に、ゲートロック弁D2に対して連通指令を出力する。連通指令を受けると、ゲートロック弁D2は開いて油圧ラインを連通させる。その結果、操作装置26に対する操作者の操作が有効となる。一方、コントローラ30は、ゲートロックレバーD1が押し下げられた状態にあると判定した場合に、ゲートロック弁D2に対して遮断指令を出力する。遮断指令を受けると、ゲートロック弁D2は閉じて油圧ラインを遮断する。その結果、操作装置26に対する操作者の操作が無効となる。
【0029】
圧力センサ29は、操作装置26の操作内容を圧力の形で検出する。圧力センサ29は、検出値をコントローラ30に対して出力する。
【0030】
また、図2はコントローラ30と表示装置40との接続関係を示す。本実施形態では、表示装置40はコントローラ30に接続される。なお、表示装置40及びコントローラ30は、CAN等の通信ネットワークを介して接続されてもよく、専用線を介して接続されてもよい。
【0031】
表示装置40は画像を生成する変換処理部40aを含む。変換処理部40aは、コントローラ30が出力する各種情報を画像信号に変換する。なお、コントローラ30が出力する情報は、例えば、エンジン冷却水の温度を示すデータ、作動油の温度を示すデータ、燃料の残量を示すデータ等を含む。
【0032】
なお、変換処理部40aは、表示装置40が有する機能としてではなく、コントローラ30が有する機能として実現されてもよい。
【0033】
表示装置40は、入力部としてのスイッチパネル42を有する。スイッチパネル42は、各種ハードウェアスイッチを含むパネルである。スイッチパネル42は、ライトスイッチ42a、ワイパースイッチ42b、及びウィンドウォッシャスイッチ42cを有する。
【0034】
ライトスイッチ42aは、キャビン10の外部に取り付けられるライトの点灯・消灯を切り替えるためのスイッチである。ワイパースイッチ42bは、ワイパーの作動・停止を切り替えるためのスイッチである。また、ウィンドウォッシャスイッチ42cは、ウィンドウォッシャ液を噴射するためのスイッチである。
【0035】
また、表示装置40は、蓄電池70から電力の供給を受けて動作する。なお、蓄電池70はエンジン11のオルタネータ11a(発電機)で発電した電力で充電される。蓄電池70の電力は、コントローラ30及び表示装置40以外のショベルの電装品72等にも供給される。また、エンジン11のスタータ11bは、蓄電池70からの電力で駆動され、エンジン11を始動する。
【0036】
また、本実施形態のショベルは、図2に示すように、フロントウィンドウ110に遮光手段60が設けられる。遮光手段60は、液晶パネルであり、フロントウィンドウ110の内側面に配置される。液晶パネル60は、操作者の必要な位置に防眩領域を形成して、太陽光の入射を遮る。遮光手段60は、通常使用されている液晶ディスプレイ(LCD、Liquid Crystal Display)の構成を有している。なお、本実施形態の遮光手段60(以下、液晶パネル60ともいう)には、通常液晶パネルの外側に配置されるバックライトを排除している。
【0037】
液晶パネル60は、通常鉛直方向の偏光のみを通す偏光板を外側に配置し、内側に水平方向の偏光を通す偏光板を配置し、その間に液晶(液晶分子)を配置する。電圧が印加されていないとき、鉛直方向の偏光は液晶によって偏光軸が回転され、水平方向の偏光となり内側の偏光板を透過する。このとき、液晶パネル60は透明な状態である。
【0038】
一方、電圧が印加された状態では、偏光軸が回転されないため鉛直方向の偏光は内側の偏光板を透過しない。このとき、液晶パネル60は不透明(黒を含む)な状態となり、防眩領域が形成される。液晶パネル60は、コントローラ30などから供給される指示により、操作者に必要な位置にのみ防眩領域を形成する。形成される防眩領域の位置や大きさについては後述する。液晶パネル60は、上記の構成を1画素毎に有してよい。
【0039】
液晶パネル60で表示される画像の明るさ(濃淡)は液晶を通り抜けてくる光の量で決定される。例えばモノクロ液晶パネルの場合、液晶に電圧が加えられていない部分は白色、十分な電圧が加えられている部分は黒色、その間の電圧が加えられている部分は灰色となる。本実施形態では、白から黒までを複数の階調で表示することで、液晶パネル60の防眩領域の防眩度(濃淡)を調整できる。遮光手段60は、蓄電池70から電力の供給を受けて動作する。
【0040】
エンジン11は、エンジンコントローラユニットD7により制御される。エンジンコントローラユニットD7からは、エンジン11の状態を示す各種データ(例えば、水温センサ11cで検出される冷却水温(物理量)を示すデータ)がコントローラ30に常時送信される。したがって、コントローラ30は一時記憶部(メモリ)30aにこのデータを蓄積しておき、必要なときに表示装置40に送信することができる。
【0041】
また、コントローラ30には以下のように各種のデータが供給され、コントローラ30の一時記憶部30aに格納されてよい。
【0042】
まず、可変容量式油圧ポンプであるメインポンプ14のレギュレータ14aから斜板傾転角を示すデータがコントローラ30に供給される。また、メインポンプ14の吐出圧力を示すデータが、吐出圧力センサ14bからコントローラ30に送られる。これらのデータ(物理量を表すデータ)は一時記憶部30aに格納される。また、メインポンプ14が吸入する作動油が貯蔵されたタンクとメインポンプ14との間の管路には油温センサ14cが設けられており、その管路を流れる作動油の温度を表すデータが油温センサ14cからコントローラ30に供給される。また、操作装置26を操作した際にコントロールバルブ17に送られるパイロット圧が、圧力センサ29で検出され、検出したパイロット圧を示すデータがコントローラ30に供給される。
【0043】
視点位置検出装置C1は、操作者OPの顔Fを撮影して画像情報をコントローラ30に供給する。光源位置検出装置C2は、太陽の画像情報として例えば高輝度画素情報をコントローラ30に供給する。
【0044】
コントローラ30は、入射方向算出部31と防眩制御部32を含む。
【0045】
入射方向算出部31は、視点位置検出装置C1から取得した画像情報から操作者の視点位置を特定する。視点位置とは、操作者の目(眼球)の位置を指す。本実施形態では入射方向算出部31は、画像情報内の操作者の眼球領域を検出し、眼球の位置から視点位置を算出する。入射方向算出部31は、光源位置検出装置C2から取得した高輝度情報から太陽のフロントウィンドウ110に対する位置と入射方向を特定する。そして入射方向算出部31は、太陽光の視点位置に対する入射方向を算出する。算出される入射方向とは、視点位置に入射する太陽光の入射仮想線である。
【0046】
防眩制御部32は、液晶パネル60の太陽と視点位置との間に位置する領域を防眩領域に設定する。設定される防眩領域の形状と大きさは、予め設定していてよく、例えば形状は円形で、大きさは液晶パネル60上に視認される太陽の大きさより1.5〜3倍などとされてよい。また、防眩制御部32は、防眩領域の防眩度(表示の明るさ(濃淡))を設定する。防眩度は、光源位置検出装置C2から取得した高輝度画素情報と対応付けられた防眩度テーブルなどに基づいて設定されてよい。
【0047】
また、本実施形態では、図2に示すように、キャビン10内に操作者が任意に防眩領域の位置や大きさを設定可能な設定手段としての設定部52と、防眩領域の防眩度(濃淡)を調整可能な調整手段としての調整部53を有している。設定部52の設定情報はコントローラ30に供給される。調整部53の調整情報はコントローラ30に供給される。コントローラ30は、設定情報と調整情報に基づいて、液晶パネル60上に操作者の所望する位置と大きさの防眩領域を表示させる。
【0048】
また、図2に示すようにショベルは、キャビン10内にエンジン回転数調整ダイヤル75を備える。エンジン回転数調整ダイヤル75は、エンジン11の回転数を調整するためのダイヤルであり、本実施形態ではエンジン回転数を4段階で切り換えできるようにする。また、エンジン回転数調整ダイヤル75からは、エンジン回転数の設定状態を示すデータがコントローラ30に常時送信される。また、エンジン回転数調整ダイヤル75は、SPモード、Hモード、Aモード、及びアイドリングモードの4段階でエンジン回転数を切り換えできるようにする。なお、図2は、エンジン回転数調整ダイヤル75でHモードが選択された状態を示す。
【0049】
SPモードは、作業量を優先したい場合に選択される回転数モードであり、最も高いエンジン回転数を利用する。Hモードは、作業量と燃費を両立させたい場合に選択される回転数モードであり、二番目に高いエンジン回転数を利用する。Aモードは、燃費を優先させながら低騒音でショベルを稼働させたい場合に選択される回転数モードであり、三番目に高いエンジン回転数を利用する。アイドリングモードは、エンジン11をアイドリング状態にしたい場合に選択される回転数モードであり、最も低いエンジン回転数を利用する。そして、エンジン11は、エンジン回転数調整ダイヤル75で設定された回転数モードのエンジン回転数で一定に回転数制御される。
【0050】
次に、図3を参照しながら、液晶パネル60の設置位置や防眩制御について説明する。
図3は、防眩構成を説明する側面図である。図3は、ショベルの一般的な掘削作業の一例を示している。また図3はキャビン10へ西日が差しこんでいる例を示している。
【0051】
符号Nは、一般的な掘削作業における作業領域を示している。Hは、作業領域Nの高さを示している。符号SPは、操作者OPの視点位置(目の位置)を示している。
【0052】
バケット6が一般的な作業領域Nの上限高さ位置Hupにあるとき、小柄な操作者OPの視点位置SPに対する太陽光の入射仮想線は例えばCL1、CL2である。このように、作業領域Nの範囲に太陽光の入射角が重複する。したがって、操作者OPがバケット6を注視しながら旋回作業を行う際に、操作者OPに対するバケット6の向きと太陽の向きとが一致する場合には、操作者OPの目に太陽光が入射する。その結果、操作者OPはバケット6を注視して作業することが困難になり、作業性が低下してしまう。
【0053】
そこで、先ず、フロントウィンドウ110に液晶パネル60が設けられる。液晶パネル60は、フロントウィンドウ110の内側面であって範囲M(遮光可能領域)に設置される。範囲Mの下限は、一例として、キャビン10の床上から約900mmの高さ位置Kの高さと設定される。一方、範囲Mの上限は、フロントウィンドウ110の上端位置までに設定される。
【0054】
バケット6が一般的な作業領域Nの上限高さ位置Hupにあるとき、小柄操作者OPの視点位置SPに対する太陽光の入射仮想線は例えばCL1、CL2である。
【0055】
上記したように、一般的な掘削作業においては、視点位置SPに対する太陽光の入射仮想線は、CL1〜CL2の範囲にあるため、液晶パネル60がフロントウィンドウ110の範囲Mに配置されていれば十分に防眩できる。また、傾斜地において、ショベルが作業を行う場合には、フロントウィンドウ110の範囲Mの下限よりも下方から、太陽光線が入射することもある。このため、液晶パネル60はフロントウィンドウ110の全面に設けられることが望ましい。
【0056】
コントローラ30は、操作者OPの視点位置SPと、例えば該視点位置SPに対する太陽光の入射仮想線CL1を算出すると、液晶パネル60の太陽と視点位置SPの間に位置する領域を防眩領域に設定し、液晶パネル60の防眩領域に該当する位置を不透明表示させる。またコントローラ30は、操作者OPの視点位置SPの移動に追随して防眩領域が移動する防眩制御を逐次行う。
【0057】
図4は、実施形態のショベルのキャビン10内の運転席50から前方を見た際のフロントウィンドウ110の液晶パネル60に形成される防眩領域Sを例示する図である。
【0058】
図4に示すように、キャビン10のフロントウィンドウ110からは、バケット6を見ることができる。キャビン10には、中央に運転席50が設けられ、その両脇に操作レバー26A,26Bが配置されている。運転席50の右前方(前面の窓の右下)には、表示装置40の画像表示部41及びスイッチパネル42が配置されている。操作者は、運転席50に座って、左手で操作レバー26Aを操作し、右手で操作レバー26Bを操作することで、バケット6を所望の位置に移動させて掘削作業を行う。操作者は、操作中は窓の外のバケット6を注視することになるため、バケット6の近傍高さに位置する太陽Tからの太陽光が眩しくなる。
【0059】
そこで本実施形態では、コントローラ30は、操作者の視点位置に対する太陽光の入射方向を算出すると、液晶パネル60の太陽Tと視点位置との間に位置する領域を防眩領域Sに設定し、不透明表示を行う。
【0060】
図示例の防眩領域Sは円形とされ、濃い色の表示がなされている。また、防眩領域Sは、視界性を確保する為に太陽Tより若干大きな直径となるように予め設定されている。また、防眩領域Sの防眩度(濃淡)は、光源位置検出装置C2から取得した高輝度画素情報と対応付けられた防眩度テーブルなどに基づいて設定されている。
【0061】
したがって、本実施形態のショベルは、操作者が必要とする位置にのみ最小限の防眩領域Sを自動で形成して、防眩効果と視界性の向上を実現できる。
【0062】
また、コンソール51の右側には、操作者が任意に防眩領域Sの位置や大きさを設定可能な設定部52と、防眩領域Sの防眩度(濃淡)を調整可能な調整部53を有している。本実施形態において防眩領域Sの位置は、コントローラ30により自動的に設定されるため、設定部52は必須ではない。なお、図示例の液晶パネル60は、フロントウィンドウ110にのみ設置されているがこの限りではなく、右サイドウィンドウ111と左サイドウィンドウ112にも同様に設置されて、防眩効果を高めてもよい。
【0063】
図5は、操作者が図4の防眩領域Sの大きさを、設定部52により大きくした防眩領域S2の例を示している。図5では、防眩領域S2の形状を、横長の楕円形に形成した事例を示したが、横長の長方形に形成してもよい。また、フロントウィンドウ110における太陽光が入射する高さの横方向全領域に、防眩領域S2を形成してもよい。また、図6は、操作者が図4の防眩領域Sの防眩度(濃淡)を、調整部53により淡くした防眩領域S3の例を示している。なお、図6では防眩領域S3の全体の防眩度が調整されているが、防眩領域S3の例えば上半分など一部分の防眩度のみを調整する構成を有してよい。
【0064】
別の実施形態として、遮光手段60をタッチパネル60'として実施することができる。図7は、ショベルのキャビン10内の運転席50から前方を見た際のフロントウィンドウ110のタッチパネル60'に形成される防眩領域S4を例示する。なお、図1図6で説明した実施形態と共通の事項は説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0065】
本実施形態のタッチパネル60'は、例えば操作者が防眩領域S4上を上から下方向にスワイプ操作すると防眩度を濃くし、下から上方向へスワイプ操作すると防眩度を淡く調整する。この限りではなく、防眩領域S4上へのタッチの回数により防眩度の調整を行う構成であってよい。その場合例えば防眩領域S4の上方をタッチすると防眩度が淡くなり、防眩領域S4の下方をタッチすると防眩度が濃くなる構成であってよい。
【0066】
またタッチパネル60'は、操作者が防眩領域S4上をピンチイン操作すると防眩領域S4を縮小表示し、ピンチアウト操作すると防眩領域S4を拡大表示する。
【0067】
したがって、操作者は直感的に理解しやすいタッチ操作で防眩領域S4の位置と防眩度を設定及び調整できるため、操作者の所望する防眩効果と視界性を容易に実現できる。
【0068】
次に、図8を参照しながら更に別の実施形態を説明する。
図8は更に別の実施形態のショベルのコントローラ30を含む接続構成を例示する図である。図8においても、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細実線でそれぞれ示される。なお図2と共通する事項は説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0069】
本実施形態は端的に云うと、図1図2に記載した第1検出部としての視点位置検出装置C1と第2検出部としての光源位置検出装置C2を、他の形態で実施する例を示している。
【0070】
本実施形態のショベルは、操作者の視点位置を検出する第1検出部としての座席位置センサS5、S6を備えている。座席位置センサS5は、運転席50の前後方向の位置を検出する位置センサである。座席位置センサS6は、運転席50の高さ方向の位置を検出する位置センサである。座席位置センサS5、S6は、操作者が操作した座席の位置情報をコントローラ30へ供給する。
【0071】
コントローラ30は、座席位置センサS5、S6から取得した運転席50の位置情報と、シートインデックスポイント(Seat Index Point)とを照合して、操作者の視点位置を推定する。
【0072】
本実施形態のショベルの上部旋回体3には、太陽のフロントウィンドウ110に対する位置と入射方向を検出する第2検出部としての車体傾斜センサS4と、GPS装置(GNSS受信機)G1、G2が設けられている。車体傾斜センサS4は、上部旋回体3の傾斜角度を検出し、傾斜角度データをコントローラに供給する。GPS装置G1、G2は、ショベルの位置と向きをGPS機能により検出して、コントローラ30に供給する。
【0073】
コントローラ30は、車体傾斜センサS4と、GPS装置(GNSS受信機)G1、G2からの各情報からキャビン10の方位と傾きを算出する。そしてコントローラ30は、GPS装置(GNSS受信機)G1、G2からの現在地情報と、日時情報とに基づいて太陽の位置を算出する。コントローラ30は、キャビン10の方位と傾き情報と、太陽の位置情報からキャビン10に対する太陽の位置と入射方向を算出する。本実施形態のショベルは、磁気センサによりキャビン10の方位を検出してもよい。
【0074】
コントローラ30は、上記の構成により操作者の視点位置と、視点位置に対する太陽光の入射方向を算出すると、液晶パネル60の太陽と視点位置の間の領域を防眩領域に設定し、液晶パネル60の防眩領域に該当する位置を不透明表示させる。またコントローラ30は、操作者の視点位置の移動に追随して防眩領域が移動する防眩制御を逐次行う。更に、本実施形態においてもコントローラ30は、図5図7に説明した防眩制御が実施可能である。
【0075】
なお本実施形態のショベルは、ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、バケット6にはバケット角度センサS3が取り付けられてよい。
【0076】
以上、実施形態に係るショベルについて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。例えば操作者の視点位置は、上記した算出方法の限りではなく、シートインデックスポイントで規定されている標準体型に基づいて予め一義的に設定しておいてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1・・・下部走行体 3・・・上部旋回体 4・・・ブーム 5・・・アーム 6・・・バケット 10・・・キャビン 30・・・コントローラ 31・・・入射方向算出部 32・・・防眩制御部 40・・・表示装置 41・・・画像表示部 50・・・運転席 51・・・コンソール 52・・・設定部 53・・・調整部 C1・・・視点位置検出装置 C2・・・光源位置検出装置 G1、G2・・・GPS装置(GNSS受信機) S5、S6・・・座席位置センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8