特許第6621711号(P6621711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621711
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】電源切替回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20191209BHJP
【FI】
   H02M3/28 W
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-127298(P2016-127298)
(22)【出願日】2016年6月28日
(65)【公開番号】特開2018-7331(P2018-7331A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】▲高橋▼ 正吾
【審査官】 遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−538546(JP,A)
【文献】 特開2014−054040(JP,A)
【文献】 特開昭63−198578(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3139721(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0033450(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00− 3/44
H02M 7/00− 7/40
H02J 1/00− 1/16
H02J 9/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスの一次巻線に接続されたスイッチング素子に対するスイッチング制御を行う制御回路と、
前記トランスの二次巻線に接続されたメインの整流平滑回路で構成され、電源出力端子に第1の電圧を供給可能な第1の電源と、
前記電源出力端子に繋がる前記第1の電源の出力ラインに対して逆流防止用のダイオードを介してワイヤードオア接続され、第2の電圧を前記電源出力端子に供給可能な第2の電源と、
前記逆流防止用のダイオードを介しての前記第2の電源からの電流流入を規制する状態で前記トランスの二次巻線に接続された補助の整流平滑回路と、
前記メインの整流平滑回路が出力する前記第1の電圧の変化を監視し、前記制御回路にフィードバックするメインのフィードバック回路と、
前記補助の整流平滑回路の出力電圧の変化を監視し、前記制御回路にフィードバックする補助のフィードバック回路と、
前記第1の電圧と前記第2の電圧の電圧値の比較結果に基づく切替制御信号を出力する電圧検知回路と、
前記電圧検知回路による切替制御信号を入力とし、前記第2の電圧が前記第1の電圧以下となる第1のモードのとき前記メインのフィードバック回路を活性化しかつ前記補助のフィードバック回路を不活性化する一方、前記第2の電圧が前記第1の電圧を超える第2のモードのとき前記補助のフィードバック回路を活性化しかつ前記メインのフィードバック回路を不活性化するフィードバック切替回路とを備えたことを特徴とする電源切替回路。
【請求項2】
前記電圧検知回路は、
前記第2の電源が出力する前記第2の電圧の変化を監視し、予め設定された所定の規定値とを比較することで、前記第2の電圧に応じた電圧値が前記規定値以下のときは前記第1のモードに切り替える前記切替制御信号を出力する一方、前記第2の電圧に応じた電圧値が前記規定値を超えるときは前記第2のモードに切り替える前記切替制御信号を出力する請求項1に記載の電源切替回路。
【請求項3】
前記メインのフィードバック回路と前記補助のフィードバック回路とは、ダイオードオア接続されている請求項1または請求項2に記載の電源切替回路。
【請求項4】
前記メインの整流平滑回路は整流ダイオードを有し、前記整流ダイオードが前記トランス出力に誘起された交流電圧を整流するとともに、前記第2の電源からの電流流入を規制するように構成されている請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の電源切替回路。
【請求項5】
前記電圧検知回路は、シャントレギュレータおよびコンパレータを有している請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電源切替回路。
【請求項6】
前記フィードバック切替回路は、スイッチング素子および一方向性通電素子を有している請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の電源切替回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力電圧を互いに異にする第1の電源と第2の電源を選択的に切り替えるための電源切替回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は従来の電源切替回路の構成を示す回路図である。
【0003】
第1の一次側入力回路10は、第1のトランスT1の一次巻線N11と第1のスイッチング素子Q1との直列回路や第1のスイッチング素子Q1に対するスイッチング制御を行う第1の制御回路11を有している。同様に、第2の一次側入力回路20は、第2のトランスT2の一次巻線N21と第2のスイッチング素子Q2との直列回路や第2のスイッチング素子Q2に対するスイッチング制御を行う第2の制御回路21を有している。第1の電源E11を構成する整流平滑回路30は整流ダイオードD1と平滑コンデンサC1を有している。第2の電源E12を構成する整流平滑回路50は整流ダイオードD3と平滑コンデンサC3を有している。
【0004】
第1のフィードバック回路70aは、シャントレギュレータSR1と抵抗素子R2〜R5とフォトカプラPC1を有している。第2のフィードバック回路90aは、シャントレギュレータSR3と抵抗素子R10〜R13とフォトカプラPC2を有している。
【0005】
第1の電源E11の出力電圧に対して第2の電源E12の出力電圧は高めに設定されている。通常時には、出力電圧が低めに設定された第1の電源E11が駆動状態にあり、出力電圧が高めに設定された第2の電源E12は停止状態にある。
【0006】
通常時において、第1の電源E11の出力電圧はダイオードオア60′における第1の逆流防止用のダイオードD11を介して負荷回路へ出力される。ダイオードオアにおける第2の逆流防止用のダイオードD12は第1の電源E11の出力電圧に対して逆流防止用を行う。この第2の逆流防止用のダイオードD12の存在により、第1の電源E11の出力電圧は停止状態にある第2の電源E12には印加されない。
【0007】
第2の電源E12が起動されると、時間経過に伴ってその出力電圧が次第に上昇する。第2の電源E12の出力電圧が第1の電源E11の出力電圧を上回ると、瞬時に第1の電源E11の出力電圧に代わって第2の電源E12の出力電圧が第2の逆流防止用のダイオードD12を介して負荷回路に出力される。第1の逆流防止用のダイオードD11は第2の電源E12の出力電圧に対して逆流防止用ダイオードとして作用する。この第1の逆流防止用のダイオードD11の存在により、第2の電源E12の出力電圧は第1の電源E11には印加されない。
【0008】
もしも第1の逆流防止用のダイオードD11がないとすると、第2の電源E12の出力電圧が第1の電源E11に印加され、その印加電圧が第1の電源E11における第1のフィードバック回路70aの設定電圧よりも高いために、第1の一次側入力回路10における第1のスイッチング素子Q1のスイッチング動作が停止し、連動して第1の電源E11の動作が一旦停止する。
【0009】
ところで、負荷回路に対する第1の電源E11の出力状態と第2の電源E12の出力状態との双方的な切り替えについては、瞬時に行われることが望ましい。第1の電源E11の出力電圧から第2の電源E12の出力電圧への切り替えは、上記のとおり瞬時に行われる。
【0010】
ここで、第1の逆流防止用のダイオードD11がなくて第1の電源E11の出力状態が一旦停止する場合には、その後において、第2の電源E12の出力電圧が低下して第1の電源E11の出力電圧(規定値)を下回るに至った状態を考える。第1のフィードバック回路70aに作用する電圧が設定電圧を下回ることから、第1の一次側入力回路10における第1のスイッチング素子Q1のスイッチング動作が再開し、第1の電源E11が起動してその出力電圧が上昇を開始する。しかし、その出力電圧が低下中の第2の電源E12の出力電圧を上回るようにならないと、第2の出力電圧から第1の出力電圧への切り替えは実行されない。すなわち、負荷回路に対する出力電圧が設定電圧より落ち込むことになってしまう〔電源切替制御時の瞬時切替不良(応動性欠陥)〕。
【0011】
このような負荷回路に対する出力電圧の落ち込みを回避するために、ダイオードオア60′の第1の逆流防止用のダイオードD11を用いて、第2の電源E12の出力電圧が第1のフィードバック回路70aに印加されることに起因する第1の電源E11の一旦停止を防止し、第1のフィードバック回路70aを活性状態に維持させることで第1の電源E11の出力電圧を規定値に保つようにしている〔電源切替制御時の瞬時切替(高速応動性)〕。
【0012】
しかし、第1の逆流防止用のダイオードD11を用いると、通常時に第1の電源E11からの出力電流が負荷回路に対して第1の逆流防止用のダイオードD11を介して供給されるため、第1の逆流防止用のダイオードD11での電力損失が相当に大きなものになってしまうという問題が残る〔電力損失問題〕。
【0013】
すなわち、図4の電源切替回路では、高速応動性は確保しているものの電力損失問題を有している。
【0014】
図4に認められる上記のような問題を解決する提案例として図5に示す回路構成の電源切替回路がある。この第2の従来例では、第1のトランスT1の二次巻線N12に対してメインの整流平滑回路30とは別に補助の整流平滑回路40も接続し、補助の整流平滑回路40をフィードバック回路80aの電源としている。
【0015】
負荷回路に対して接続される第1の電源E21の出力端と第2の電源E22の出力端の合流点のワイヤードオア60では第2の逆流防止用のダイオードD4が設けられているが、図4に示された第1の逆流防止用のダイオードD11に相当するものは削除されている。この第1の逆流防止用のダイオードD11の削除により、通常時において第1の電源E21から負荷回路に供給される電力の損失が低減される。
【0016】
第1の逆流防止用のダイオードD11が削除されていることから、第2の電源E22の出力電圧が第1の電源E21の出力電圧より高い場合に、第2の電源E22の出力電圧は第1の電源E21に印加されることになる。しかし、二次巻線N12と出力端子TO1との間に介装された整流ダイオードD1の存在により、第2の出力電圧は補助の整流平滑回路40には印加されない。補助の整流平滑回路40の電圧は補助の整流平滑回路40で駆動されるフィードバック回路80aで監視される。この電圧が規定値に維持されるように第1の一次側入力回路10の第1のスイッチング素子Q1のスイッチング動作が制御される。つまり、負荷回路に対し給電を行う電源が第2の電源E22であるときに、第1の電源E21も活性状態にあり、その出力電圧は第1の電源E21の規定値に近い電圧に維持される。
【0017】
したがって、第2の電源E22の出力電圧が第1の電源E21の出力電圧よりも高くて第2の電源E22の出力電圧が負荷回路に供給されている状態から、第2の電源E22の出力電圧が第1の電源E21の出力電圧を下回る状態へと電源切替がなされたときには、直ちに、負荷回路に給電する電源が第2の電源E22から第1の電源E21に切り替えられ、負荷回路に対する所望の給電動作が継続される〔電源切替制御時の瞬時切替(高速応動性)〕。
【0018】
なお、若干の関連があると思われる従来例として特許文献1,2に開示の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2012−151942号公報
【特許文献2】特開平8−8073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、図5に示す従来の電源切替回路においては、フィードバック回路80aは補助の整流平滑回路40で駆動されるものであって、負荷回路に対して電源供給を行う第1の電源E21の出力電圧を監視するものではない。補助の整流平滑回路40の出力電圧はメインの整流平滑回路30の出力電圧と比例するが、必ずしも常時等しいとは限らない。むしろ、両電圧間に相違が生じるのが通常である。したがって、その結果、第1の電源E21の出力電圧の電圧精度が劣化するという問題が避けられない〔電圧精度劣化〕。
【0021】
本発明はこのような事情に鑑みて創作したものであり、負荷回路に対して第1の電源の出力ラインと第2の電源の出力ラインとを共通に接続するワイヤードオアで第1の電源側の第1の逆流防止用のダイオードが省略され、電力損失を低減するようにした電源切替回路において、負荷回路に給電する電源を第2の電源から第1の電源に切り替える電源切替制御時の瞬時切替性(高速応動性)を確保するとともに、第1の電源の出力電圧の電圧精度を高いものにできるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。
【0023】
本発明による電源切替回路は、
トランスの一次巻線に接続されたスイッチング素子に対するスイッチング制御を行う制御回路と、
前記トランスの二次巻線に接続されたメインの整流平滑回路で構成され、電源出力端子に第1の電圧を供給可能な第1の電源と、
前記電源出力端子に繋がる前記第1の電源の出力ラインに対して逆流防止用のダイオードを介してワイヤードオア接続され、第2の電圧を前記電源出力端子に供給可能な第2の電源と、
前記逆流防止用のダイオードを介しての前記第2の電源からの電流流入を規制する状態で前記トランスの二次巻線に接続された補助の整流平滑回路と、
前記メインの整流平滑回路が出力する前記第1の電圧の変化を監視し、前記制御回路にフィードバックするメインのフィードバック回路と、
前記補助の整流平滑回路の出力電圧の変化を監視し、前記制御回路にフィードバックする補助のフィードバック回路と、
前記第1の電圧と前記第2の電圧の電圧値の比較結果に基づく切替制御信号を出力する電圧検知回路と、
前記電圧検知回路による切替制御信号を入力とし、前記第2の電圧が前記第1の電圧以下となる第1のモードのとき前記メインのフィードバック回路を活性化しかつ前記補助のフィードバック回路を不活性化する一方、前記第2の電圧が前記第1の電圧を超える第2のモードのとき前記補助のフィードバック回路を活性化しかつ前記メインのフィードバック回路を不活性化するフィードバック切替回路とを備えたことを特徴とする。
【0024】
上記構成の本発明の電源切替回路においては、第2の電圧が第1の電圧以下となる第1のモードのとき、高い方の第1の電圧が負荷回路に印加される。その第1の電圧はワイヤードオアにおける逆流防止用のダイオードの存在により第2の電源に印加されることはない。
【0025】
この第1のモードのとき、フィードバック切替回路はメインのフィードバック回路を活性化しかつ補助のフィードバック回路を不活性化する。メインのフィードバック回路はメインの整流平滑回路が出力する第1の電圧の変化を監視し、制御回路にフィードバックする。このフィードバック制御により、負荷回路に供給される第1の電源は安定化される。負荷回路に供給している第1の電圧を検出してのフィードバック制御であるため、第1の電源の電圧精度は高いものを確保することが可能である。
【0026】
第1のモードからの遷移により第2の電圧が第1の電圧を超える第2のモードになると、高い方の第2の電圧が負荷回路に印加される。その第2の電圧はワイヤードオアを介して第1の電源に印加される(第1の電源の出力ラインにはワイヤードオアに逆流防止用のダイオードがないため)。すなわち、メインの整流平滑回路に印加される。しかし、補助の整流平滑回路には印加されることはない。なぜなら、上記構成のとおり、補助の整流平滑回路は、第2の電源からの電流流入を規制する状態でトランスの二次巻線に接続されたものであるからである。
【0027】
この第2のモードのとき、フィードバック切替回路は補助のフィードバック回路を活性化しかつメインのフィードバック回路を不活性化する。補助のフィードバック回路は補助の整流平滑回路の出力電圧の変化を監視し、制御回路にフィードバックする。このフィードバック制御により、第1の電源はその活性状態を維持する(メインの整流平滑回路も補助の整流平滑回路も動作状態を継続する)。
【0028】
ここにおいて、フィードバック制御は、第1の電圧を出力しているメインの整流平滑回路の出力電圧(第1の電圧)に基づくものではなく、第1の電圧とは誤差をもち得る補助の整流平滑回路の出力電圧に基づくものであるため、結果として、第1の電圧の電圧精度は劣化することになる(電圧精度劣化)。
【0029】
しかし、この第2のモードにおいては、負荷回路に供給するのは第2の電圧であって、第1の電圧ではない。したがって、第2のモードにおいて第1の電圧の電圧精度が劣化しても、それは負荷回路への供給電圧の電圧精度には影響せず、問題とはならない。
【0030】
ここで大切なことは、省電力のために第1の電源の出力ラインから逆流防止用のダイオードを省略したことから、第2のモードで第2の電圧が第1の電源のメインの整流平滑回路に印加されることになる(第1の電源が動作停止することはない)が、それは負荷回路への供給電圧の電圧精度を劣化させることにはならない、ということである。
【0031】
次に、第2のモードから第1のモードに復帰したとき、今度は、電圧検知回路の切替制御信号はフィードバック切替回路を介して補助のフィードバック回路を不活性化しかつメインのフィードバック回路を活性化する。ここで、直前において補助の整流平滑回路もメインの整流平滑回路も活性状態に保たれていたので、メインの整流平滑回路からの第1の電圧は、第2のモードから第1のモードへの切り替えの瞬間から所定レベルで高精度な電圧となる。すなわち、電源切替制御時の瞬時切替性(高速応動性)を確保することが可能である。
【0032】
上記構成の本発明の電源切替回路には、次のようないくつかの好ましい態様ないし変化・変形の態様がある。
【0033】
〔1〕前記第2の電源が出力する前記第2の電圧の変化を監視し、予め設定された所定の規定値とを比較することで、前記第2の電圧に応じた電圧値が前記規定値以下のときは前記第1のモードに切り替える前記切替制御信号を出力する一方、前記第2の電圧に応じた電圧値が前記規定値を超えるときは前記第2のモードに切り替える前記切替制御信号を出力する、という態様がある。このように構成すれば、予め設定された所定の規定値と第2の電圧とを比較することで、第1のモードと第2のモードとを容易に切り替えることができる。
【0034】
〔2〕また、前記メインのフィードバック回路と前記補助のフィードバック回路とは、ダイオードオア接続されている、という態様がある。このように構成すれば、相互緩衝を避けながら、メインのフィードバック回路の信号出力先と補助のフィードバック回路の信号出力先を共通ラインにまとめることが可能となり、回路構成の簡素化に有利である。
【0035】
〔3〕また、前記メインの整流平滑回路は整流ダイオードを有し、前記整流ダイオードが前記トランス出力に誘起された交流電圧を整流するとともに、前記第2の電源からの電流流入を規制するように構成されている、という態様がある。1つの整流ダイオードに2つの機能をもたせることで、回路構成の簡素化に有利となる。
【0036】
なお、前記電圧検知回路は、シャントレギュレータおよびコンパレータなどで構成することが可能である。
【0037】
また、前記フィードバック切替回路は、スイッチング素子および一方向性通電素子などで構成することが可能である。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、第1の電源と第2の電源の負荷回路に対するワイヤードオアで第1の電源側の第1の逆流防止用のダイオードを省略して電力損失を低減するようにした電源切替回路において、負荷回路に給電する電源を第2の電源から第1の電源に切り替える電源切替制御時の瞬時切替性(高速応動性)を確保しながら、第1の電源の出力電圧の電圧精度を高いものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の実施例における電源切替回路の構成を示す回路図
図2】本発明の実施例における電源切替回路の第1のモードの動作状態図
図3】本発明の実施例における電源切替回路の第2のモードの動作状態図
図4】第1の従来例の電源切替回路の構成を示す回路図
図5】第2の従来例の電源切替回路の構成を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、上記構成の本発明の電源切替回路につき、その実施の形態を具体的な実施例のレベルで詳しく説明する。
【0041】
図1は本発明の実施例における電源切替回路の構成を示す回路図である。
【0042】
図1において、10は第1の一次側入力回路、20は第2の一次側入力回路、30は第1の電源E1を構成するメインの整流平滑回路、40は補助の整流平滑回路、50は第2の電源E2を構成する整流平滑回路、60はワイヤードオア、70はメインのフィードバック回路、80は補助のフィードバック回路、90は高電圧側のフィードバック回路、100はダイオードオア、110は電圧検知回路、120はフィードバック切替回路である。また、T11,T12は第1の一次側入力回路10の直流入力端子、T21,T22は第2の一次側入力回路20の直流入力端子、TO1は電源出力端子、TO2はグラウンド端子、T1は第1のトランス、T2は第2のトランス、PC1は第1のフォトカプラ、PC2は第2のフォトカプラである。
【0043】
第1の一次側入力回路10は、第1のトランスT1の一次巻線N11、第1のスイッチング素子Q1および第1の制御回路11を備えている。第1の一次側入力回路10の正負の直流入力端子T11,T12の間に一次巻線N11と第1のスイッチング素子Q1の直列回路が接続されている。第1のスイッチング素子Q1は、第1の制御回路11によってそのスイッチング動作が制御されるようになっている。第1のスイッチング素子Q1のスイッチング動作により第1のトランスT1の二次巻線N12に交流電圧を誘起するようになっている。第1の制御回路11は、第1のフォトカプラPC1(フィードバック制御用)の受光素子RE1が導通したときの制御信号によって第1のスイッチング素子Q1に対するスイッチング制御を停止するように構成されている。
【0044】
第2の一次側入力回路20は、第2のトランスT2の一次巻線N21、第2のスイッチング素子Q2および第2の制御回路21を備えている。第2の一次側入力回路20の正負の直流入力端子T21,T22の間に一次巻線N21と第2のスイッチング素子Q2の直列回路が接続されている。第2のスイッチング素子Q2は、第2の制御回路21によってそのスイッチング動作が制御されるようになっている。第2のスイッチング素子Q2のスイッチング動作により第2のトランスT2の二次巻線N22に交流電圧を誘起するようになっている。第2の制御回路21は、第2のフォトカプラPC2(フィードバック制御用)の受光素子RE2が導通したときの制御信号によって第2のスイッチング素子Q2に対するスイッチング制御を停止するように構成されている。
【0045】
第1および第2のスイッチング素子Q1,Q2は例えばFET(電界効果トランジスタ)で構成されるもので、ここではNチャンネル型のMOSFETが採用されている。第1および第2のフォトカプラPC1,PC2における受光素子RE1,RE2は例えばフォトトランジスタで構成され、対応する発光素子EE1,EE2は例えば発光ダイオード(LED)で構成される。
【0046】
第1の電源E1におけるメインの整流平滑回路30は、整流ダイオードD1および平滑コンデンサC1を備えている。第1のトランスT1の二次巻線N12の両端間に整流ダイオードD1と平滑コンデンサC1の直列回路が接続され、メインの整流平滑回路30が構成されている。整流ダイオードD1のカソードと平滑コンデンサC1の正極端子との接続点がメインの整流平滑回路30の出力点を構成し、この出力点が第1の出力ラインL1を介して電源出力端子TO1に接続されている。電源出力端子TO1に正極端子が接続される図示しない負荷回路の負極端子はグラウンド端子TO2に接続されるが、グラウンド端子TO2は第1のグラウンドラインGL1を介してメインの整流平滑回路30のリターン端子に接続されている。
【0047】
上記のメインの整流平滑回路30とは別に、第1のトランスT1の二次巻線N12の両端間に整流ダイオードD2と抵抗素子R1と平滑コンデンサC2の直列回路が接続され、補助の整流平滑回路40が構成されている。整流ダイオードD2のカソードに接続された抵抗素子R1と平滑コンデンサC2の正極端子との接続点が補助の整流平滑回路40の出力点を構成している。この出力点は電源出力端子TO1(第1の出力ラインL1)から切り離された回路構成となっている。
【0048】
第2の電源E2における高電圧側の整流平滑回路50は、整流ダイオードD3および平滑コンデンサC3を備えている。第2のトランスT2の二次巻線N22の両端間に整流ダイオードD3と平滑コンデンサC3の直列回路が接続され、高電圧側の整流平滑回路50が構成されている。整流ダイオードD3のカソードと平滑コンデンサC3の正極端子との接続点が高電圧側の整流平滑回路50の出力点を構成し、この出力点が第2の出力ラインL2および逆流防止用のダイオードD4を介して電源出力端子TO1に接続されている。図示しない負荷回路の負極端子が接続されるグラウンド端子TO2は第2のグラウンドラインGL2を介して高電圧側の整流平滑回路50のリターン端子に接続されている。
【0049】
メインの整流平滑回路30と第1の出力ラインL1が第1の電源E1を構成し、高電圧側の整流平滑回路50と第2の出力ラインL2と逆流防止用のダイオードD4が第2の電源E2を構成している。第1の出力ラインL1と第2の出力ラインL2が電源出力端子TO1に対してワイヤードオア60を構成するが、このワイヤードオア60において、逆流防止用のダイオードD4は第2の出力ラインL2には挿入されているが、第1の出力ラインL1には逆流防止用のダイオードは挿入されていない。
【0050】
第2の電源E2における整流平滑回路50について「高電圧側の」と修飾語を付けているが、これは第1の電源E1におけるメインの整流平滑回路30が生成する電圧に対してより高い電圧を生成することが可能であることということを意味しており、必ずしも常時的にメインの整流平滑回路30の生成電圧よりも高いということではない。高電圧側の整流平滑回路50の生成電圧がメインの整流平滑回路30の生成電圧よりも低いモード(第1のモード)もある。修飾語「高電圧側の」は、第1の電源E1における修飾語「メインの」や「補助の」との区別を付けるためだけのものである。
【0051】
第1の電源E1におけるメインのフィードバック回路70は、シャントレギュレータSR1、逆流防止用のダイオードD5、抵抗素子R2〜R5および第1のフォトカプラPC1を備えている。抵抗素子R2,R3の直列回路がメインの整流平滑回路30の出力端子間(平滑コンデンサC1の両端間)に接続されている。また、メインの整流平滑回路30の出力端子間に抵抗素子R4,R5とシャントレギュレータSR1の直列回路が接続されている。シャントレギュレータSR1は、そのアノードが平滑コンデンサC1の負極端子に接続され、そのカソードが抵抗素子R5に接続されている。抵抗素子R5に接続された抵抗素子R4が第1の出力ラインL1に接続されている。シャントレギュレータSR1のリファレンス端子は抵抗素子R2,R3の接続点に接続されている。抵抗素子R5の両端間に逆流防止用のダイオードD5と第1のフォトカプラPC1における発光素子EE1の直列回路が接続されている。
【0052】
第1の電源E1における補助のフィードバック回路80は、シャントレギュレータSR2、逆流防止用のダイオードD6、抵抗素子R6〜R9および前記の第1のフォトカプラPC1を備えている。第1のフォトカプラPC1はメインのフィードバック回路70と共有している。抵抗素子R6,R7の直列回路が補助の整流平滑回路40の出力端子間(平滑コンデンサC2の両端間)に接続されている。また、補助の整流平滑回路40の出力端子間に抵抗素子R8,R9とシャントレギュレータSR2の直列回路が接続されている。シャントレギュレータSR2は、そのアノードが平滑コンデンサC2の負極端子に接続され、そのカソードが抵抗素子R9に接続されている。抵抗素子R9に接続された抵抗素子R8が平滑コンデンサC2の正極端子に接続されている。シャントレギュレータSR2のリファレンス端子は抵抗素子R6,R7の接続点に接続されている。抵抗素子R9の両端間に逆流防止用のダイオードD6と第1のフォトカプラPC1における発光素子EE1の直列回路が接続されている。
【0053】
メインのフィードバック回路70における逆流防止用のダイオードD5と補助のフィードバック回路80における逆流防止用のダイオードD6とは第1のフォトカプラPC1の発光素子EE1に対してダイオードオア100を構成している。
【0054】
第1のフォトカプラPC1における受光素子RE1が第1の制御回路11に接続されている。発光素子EE1が動作したときの光信号のフィードバック信号が受光素子RE1に入射されて受光素子RE1が導通すると、第1の制御回路11による第1のスイッチング素子Q1に対するスイッチング動作が停止するようになっている。
【0055】
第2の電源E2における高電圧側のフィードバック回路90は、シャントレギュレータSR3、抵抗素子R10〜R13および第2のフォトカプラPC2を備えている。抵抗素子R10,R11の直列回路が高電圧側の整流平滑回路50の出力端子間(平滑コンデンサC3の両端間)に接続されている。また、高電圧側の整流平滑回路50の出力端子間に抵抗素子R12,R13とシャントレギュレータSR3の直列回路が接続されている。シャントレギュレータSR3は、そのアノードが平滑コンデンサC3の負極端子に接続され、そのカソードが抵抗素子R13に接続されている。抵抗素子R13に接続された抵抗素子R12が第2の出力ラインL2に接続されている。シャントレギュレータSR3のリファレンス端子は抵抗素子R10,R11の接続点に接続されている。抵抗素子R13の両端間に第2のフォトカプラPC2における発光素子EE2が接続されている。
【0056】
第2のフォトカプラPC2における受光素子RE2が第2の制御回路21に接続されている。発光素子EE2が動作したときの光信号のフィードバック信号が受光素子RE2に入射されて受光素子RE2が導通すると、第2の制御回路21による第2のスイッチング素子Q2に対するスイッチング動作が停止するようになっている。
【0057】
電圧検知回路110は、シャントレギュレータSR4、コンパレータCmおよび抵抗素子R14〜R18をもって構成されている。シャントレギュレータSR4は、そのアノードが第2のグラウンドラインGL2に接続され、カソードが抵抗素子R14を介して第2の出力ラインL2に接続されている。そのリファレンス端子はカソードに接続(短絡)されている。シャントレギュレータSR4のカソードは2つの抵抗素子R15,R16の直列回路を介して第2のグランドラインGL2に接続されている。コンパレータCmは、その反転入力端子(−)が直列の抵抗素子R15,R16の接続点に接続され、その非反転入力端子(+)が、第2の出力ラインL2とグラウンドラインGL2との間に接続された直列の抵抗素子R17,R18の接続点に接続されている。非反転入力端子(+)には第2の電源E2の出力電圧に比例した電圧が入力される。
【0058】
シャントレギュレータSR4のリファレンス電圧が抵抗素子R15,R16
によって抵抗分割されてコンパレータCmの反転入力端子(−)に基準電圧として入力される。また、第2の電源E2の出力電圧が直列の抵抗素子R18,R17によって抵抗分割された電圧がコンパレータCmの非反転入力端子(+)に検出電圧として入力される。第2の電源E2の出力電圧が予め設定された所定の規定値(以下、単に「規定値」という)より低い(抵抗分割による検出電圧が基準電圧より低い)場合には、コンパレータCmはその出力端子から“L”レベルの切替制御信号Scを出力し、第2の出力電圧が規定値以上になると、切替制御信号Scは“H”レベルに切り替えられる。
【0059】
フィードバック切替回路120は、スイッチング素子Q3,Q4、逆流防止用のダイオードD7,D8および抵抗素子R19〜R23をもって構成されている。スイッチング素子Q3,Q4はバイポーラ型でNPN型のトランジスタで構成されている。スイッチング素子Q3は、そのベース(制御端子)が抵抗素子R19を介して電圧検知回路110におけるコンパレータCmの出力端子に接続されている。抵抗素子R19とベースとの接続点が第1のグラウンドラインGL1に抵抗素子R20を介して接続されている。
【0060】
スイッチング素子Q3のエミッタは第1のグラウンドラインGL1に接続され、そのコレクタは整流ダイオードD7を介してメインのフィードバック回路70における抵抗素子R2,R3の接続点に接続されている。整流ダイオードD7は、そのアノードが抵抗素子R2,R3に接続され、そのカソードがスイッチング素子Q3のコレクタに接続されている。
【0061】
また、スイッチング素子Q3のコレクタは整流ダイオードD8および抵抗素子R21の直列回路を介して補助の整流平滑回路40の出力側(平滑コンデンサC2の正極端子)に接続されている。整流ダイオードD8は、そのアノードが抵抗素子R21,R22の接続点に接続され、そのカソードがスイッチング素子Q3のコレクタに接続されている。
【0062】
整流ダイオードD8のアノードと抵抗素子R21との接続点と第1のグラウンドラインGL1との間に抵抗素子R22,R23の直列回路が接続されている。抵抗素子R22,R23の接続点にスイッチング素子Q4のベース(制御端子)が接続され、そのエミッタは第1のグラウンドラインGL1に接続され、そのコレクタは補助のフィードバック回路80における直列の抵抗素子R6,R7の接続点に接続されている。
【0063】
以上のように本実施例においては、第1の電源E1において、メインのフィードバック回路70に加えて補助のフィードバック回路80が設けられ、さらに電圧検知回路110とフィードバック切替回路120が追加されている。また、メインのフィードバック回路70と補助のフィードバック回路80とはダイオードオア100をもって結合され、第1のフォトカプラPC1の発光素子EE1に共通に接続されている。
【0064】
電圧検知回路110は、モニタしている第2の電源E2の出力電圧が規定値以下であれば、コンパレータCmの非反転入力端子(+)に印加される電圧基準電圧より低いために、コンパレータCmからの出力信号は“L”レベルとなる。
【0065】
次に、上記のように構成された本実施例の電源切替回路の動作を説明する。
【0066】
(1)まず、第2の電源E2の出力電圧が規定値以下となっている第1のモードのときの動作を図2を用いて説明する。
【0067】
図2において、太線の○印で囲んだ素子は導通状態(活性状態)にあることを意味し、太線の○印の中に斜線/を追加した形状の印を付けた素子は非導通状態(不活性状態)にあることを意味している。
【0068】
第2の電源E2の出力電圧が規定値以下のときには、コンパレータCmの非反転入力端子(+)に印加される電圧が基準電圧より低いために、コンパレータCmから出力される切替制御信号Scは“L”レベルとなっている。その結果、フィードバック切替回路120におけるスイッチング素子Q3は非導通状態のままであり、それに連動してスイッチング素子Q4は導通状態となっている。
【0069】
スイッチング素子Q3が非導通状態であるので、第1の電源E1におけるメインのフィードバック回路70のシャントレギュレータSR1は、そのリファレンス端子への帰還電圧がリファレンス電圧よりも高くなって導通している。一方、スイッチング素子Q4が導通状態であるので、第1の電源E1における補助のフィードバック回路80のシャントレギュレータSR2は、そのリファレンス端子への帰還電圧がリファレンス電圧以下であるため非導通状態となっている。
【0070】
すなわち、第2の電源E2の出力電圧が規定値以下のときには、メインのフィードバック回路70が活性状態にあるのに対して、補助のフィードバック回路80は不活性状態にある。
【0071】
第1の電源E1の出力電圧が第2の電源E2の出力電圧よりも高いとき、ワイヤードオア60における第2の電源E2側の逆流防止用ダイオードD4の存在によって、高い方の第1の電源E1の出力電圧が第2の電源E2側に印加されることはない。この第1のモードにおいては、第1の電源E1からの出力電圧が負荷回路に対して出力される。すなわち、負荷回路に対する出力電流は第1の電源E1から供給される。そして、活性状態にあるメインのフィードバック回路70の機能によって制御回路11にフィードバック制御され、第1の電源E1の出力電圧が一定値に保たれることとなる。
【0072】
第1の電源E1の出力電圧が第2の電源E2の出力電圧より高くなっても、ワイヤードオア60において第2の電源E2側の逆流防止用ダイオードD4が存在しているので、その高い方の第1の電源E1の出力電圧が第2の電源E2側に印加されることはない。すなわち、ワイヤードオア60において第1の電源E1側の逆流防止用ダイオード(図4のD11参照)が省略されたことによる弊害は生じない。
【0073】
なお、第2の電源E2の出力電圧は、第2の電源E2の高電圧側のフィードバック回路90の機能により制御回路11にフィードバック制御され、一定値に保たれる。
【0074】
(2)次に、第2の電源E2の出力電圧が規定値を超えるようになった第2のモードのときの動作を図3を用いて説明する。
【0075】
図3においても、太線の○印で囲んだ素子は導通状態(活性状態)にあることを意味し、太線の○の中に斜線/を追加した形状の印を付けた素子は非導通状態(不活性状態)にあることを意味している。
【0076】
第2の電源E2の出力電圧が規定値を超えると、コンパレータCmの非反転入力端子(+)に印加される電圧が基準電圧より高いために、コンパレータCmから出力される切替制御信号Scは反転して“H”レベルとなる。その結果、フィードバック切替回路120におけるスイッチング素子Q3は反転して導通し、スイッチング素子Q4は反転して非導通状態となる。
【0077】
スイッチング素子Q3が導通状態となり、第1の電源E1におけるメインのフィードバック回路70のシャントレギュレータSR1は反転して非導通状態となる。一方、スイッチング素子Q4が反転して非導通状態となり、第1の電源E1における補助のフィードバック回路80のシャントレギュレータSR2は反転して導通する。
【0078】
すなわち、第2の電源E2の出力電圧が規定値を超えると、補助のフィードバック回路80が活性状態になるのに対して、メインのフィードバック回路70は不活性状態となる。
【0079】
第2の電源E2の出力電圧が第1の電源E1の出力電圧よりも高いとき、高い方の第2の電源E2の出力電圧が電圧のより低い方の第1の電源E1に対して印加される。なぜなら、ワイヤードオア60において第1の電源E1側には逆流防止用ダイオード(図4のD11に相当するもの)が存在しないからである。この第2のモードにおいては、第2の電源E2からの出力電圧が負荷回路に対して出力される。すなわち、負荷回路に対する出力電流は第2の電源E2から供給される。そして、活性状態にある補助のフィードバック回路80の機能によって、第1の電源E1の出力電圧よりも高い第2の電源E2の出力電圧が第1の電源E1側に印加されることによりスイッチング動作が停止するのを防止することができる。このように、メインのフィードバック回路70ではなく、補助のフィードバック回路80でフィードバックしているのは、第2の電源E2の出力電圧が第1の電源E1の出力電圧よりも高いとき、メインのフィードバック回路70が第2の電源E2の出力電圧の影響を受け、第1の電源E1のスイッチングが停止してしまうためである。スイッチングが停止すると、第1の電源E1は一旦動作を停止するので、この状態で第2の電源E2の出力電圧が低下しても、直ぐには第1の電源E1が立ち上がらないため、出力電圧が大きく落ち込んでしまう。この実施例のように、補助のフィードバック回路80のフィードバックによってスイッチングさせることにより、負荷に電力供給は行わないものの第1の電源E1自体は動作しているため、第2の電源E2の出力電圧が低下しても、第1の電源E1から直ぐに電圧が出力され、出力電圧の落ち込みを防止することができる。この第2のモードにおいて、第2の電源E2の高い出力電圧が第1の電源E1に対して印加されることになるが、第1の電源E1における電圧制御のためのフィードバック機能は、補助の整流平滑回路40から補助のフィードバック回路80を介して行われるように構成してある。
【0080】
この補助の整流平滑回路40は、メインの整流平滑回路30における整流ダイオードD1の存在によって第2の電源E2からの電流流入が規制されているので、第2の電源E2の出力電圧が第1の電源E1に影響を与えても、補助の整流平滑回路40は第2の電源E2の出力電圧の影響を受けない。よって、電源出力端子TO1の直前のワイヤードオア60において第1の電源E1側の逆流防止用ダイオードを取り除いた結果として第2の電源E2の出力電圧が第1の電源E1に印加されることとなっても、第1の電源E1における電圧制御は実質的に所期通り良好に行われることとなる。
【0081】
すなわち、第2の電源E2の出力電圧が第1の電源E1の出力電圧より高くなった場合において、ワイヤードオア60で第1の電源E1側の逆流防止用ダイオードが省略されていることから、その高い方の第2の電源E2の出力電圧が第1の電源E1側に印加されるとしても、第1の電源E1の電圧変動をフィードバックするのは、第2の電源E2の出力電圧の影響を受けるメインのフィードバック回路70ではなく、第2の電源E2の出力電圧の影響を受けない補助のフィードバック回路80であるから、結局、ワイヤードオア60において第1の電源E1側の逆流防止用ダイオードが省略されたことによる弊害は生じない。なお、第2の電源E2の出力電圧は、上記(1)の場合と同様に、第2の電源E2の高電圧側のフィードバック回路90の機能により一定値に保たれる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、負荷回路に対して第1の電源の出力ラインと第2の電源の出力ラインとを共通に接続するワイヤードオアで第1の電源側の第1の逆流防止用のダイオードが省略され、電力損失を低減するようにした電源切替回路に関して、負荷回路に給電する電源を第2の電源から第1の電源に切り替える電源切替制御時の瞬時切替性(高速応動性)を確保した上で、第1の電源の出力電圧の電圧精度を高いものにする技術として有用である。
【符号の説明】
【0083】
11 制御回路
30 メインの整流平滑回路
40 補助の整流平滑回路
60 ワイヤードオア
70 メインのフィードバック回路
80 補助のフィードバック回路
100 ダイオードオア
110 電圧検知回路
120 フィードバック切替回路
Cm コンパレータ
D1 整流ダイオード
D4 逆流防止用のダイオード
D7,D8 一方向性通電素子
E1 第1の電源
E2 第2の電源
L1 第1の電源の出力ライン
L2 第2の電源の出力ライン
N11 一次巻線
N12 二次巻線
Q1 スイッチング素子
Q3,Q4 フィードバック切替回路のスイッチング素子
Sc 切替制御信号
SR4 電圧検知回路のシャントレギュレータ
T1 トランス
TO1 電源出力端子
図1
図2
図3
図4
図5