(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621807
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】ブレードの向きを調節するための部材を駆動するための機構
(51)【国際特許分類】
F04D 29/56 20060101AFI20191209BHJP
F02C 9/22 20060101ALI20191209BHJP
F16H 21/14 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
F04D29/56 C
F02C9/22 A
F16H21/14
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-512793(P2017-512793)
(86)(22)【出願日】2015年9月3日
(65)【公表番号】特表2017-527736(P2017-527736A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】FR2015052325
(87)【国際公開番号】WO2016034816
(87)【国際公開日】20160310
【審査請求日】2018年8月24日
(31)【優先権主張番号】1458344
(32)【優先日】2014年9月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セブレヒト,ピエール−アラン・フランシス・クロード
【審査官】
大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第2626521(EP,A1)
【文献】
特開2007−192222(JP,A)
【文献】
米国特許第5498135(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第2053204(EP,A2)
【文献】
特開2005−9497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/56
F02C 9/22
F16H 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のターボ機械スプリッタ段(16)のブレード(14)の向きを調節するための第1の調節部材(12)と、第2のターボ機械スプリッタ段(22)のブレード(20)の向きを調節するための第2の調節部材(18)とを駆動するための駆動機構(10)にして、ターボ機械の中で両方の調節部材(12、18)を同時に駆動して移動させるための手段を含む駆動機構(10)であって、
第1の調節部材(12)および第2の調節部材(18)を同時に駆動する単一の駆動輪(24)を含み、駆動輪(24)と第1の調節部材(12)および第2の調節部材(18)のいずれかとの間に配置され、異なる速度伝達比を有する2つのギア段(26、28)を含み、
第2の調節部材(18)と関連するギア段(28)の速度伝達比が、ターボ機械の中で駆動輪(24)の角度位置に応じて変化する
ことを特徴とする、駆動機構(10)。
【請求項2】
第2の調節部材(18)と関連するギア段(28)が、駆動輪(24)に噛み合わされる第1の歯車(32)と、第2の調節部材(18)の歯付き部分(44)に噛み合わされる第2の歯車(34)と、ギア段(28)の速度伝達比を変化させるように両方の歯車(32、34)を互いにからませるためのカップリング手段(40、42)とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の駆動機構(10)。
【請求項3】
第2の調節部材(18)と関連するギア段(28)が、ギア段(28)の速度伝達比を非線形に変化させるように作られることを特徴とする、請求項2に記載の駆動機構(10)。
【請求項4】
第2の調節部材(18)と関連するギア段(28)の両方の歯車(32、34)の回転軸(36、38)が、互いに関して平行であり、オフセットされることを特徴とする、請求項3に記載の駆動機構(10)。
【請求項5】
両方の歯車のうちの一方(32)が、溝(40)を含み、他方の歯車(34)が、前記他方の歯車(34)から軸線方向に突出するフィンガ(42)を含み、フィンガ(42)が、溝(40)に収容され、第1の歯車(32)から第2の歯車(34)にトルクを伝達するように溝(40)と協働することができることを特徴とする、請求項4に記載の駆動機構(10)。
【請求項6】
溝(40)が、第1の歯車(32)に形成され、フィンガ(42)が、第2の歯車(34)によって担持されることを特徴とする、請求項5に記載の駆動機構(10)。
【請求項7】
第1の調節部材(12)と関連するギア段(26)が、駆動輪(24)に噛み合わされる第3の歯車(30)と、第1の調節部材(12)の相補的な歯付き部分(44)とを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の駆動機構(10)。
【請求項8】
各スプリッタ段が、前記スプリッタ段(16、22)のブレード(14、20)の向きを調節するための調節部材(12、18)を含み、両方の調節部材(12、18)が、ターボ機械の主軸の周りにターボ機械の中で回転自在に可動であり、請求項1から7のいずれかに記載の駆動機構(10)によって回転自在に駆動されることを特徴とする、前記ブレード(14、20)の向きが変更され得る2つのスプリッタ段(16、22)を含む、航空機ターボ機械。
【請求項9】
各調節部材(12、18)が、これらに関連するギア段(26、28)と関連する第1の歯付き部分(44)と、これらに関連するスプリッタ段(16、22)の各ブレード(14、20)によって担持される歯車と噛み合う第2の歯付き部分とを含むことを特徴とする、請求項8に記載のターボ機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いくつかのターボ機械スプリッタ段のブレードの向きを調節するための部材を駆動するための機構に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、両方の調節部材を互いに関して異なる変位速度で同時に駆動できるようにする2つの調節部材を駆動するための機構に関する。
【背景技術】
【0003】
ターボ機械の圧縮機および/またはタービンは、いくつかの段から成り、各段は、ガス流スプリッタを含む。
【0004】
その効率を最適化するように、ターボ機械の動作条件に応じてスプリッタのブレードの向きを変更することが知られている。
【0005】
知られている実施形態によれば、スプリッタのブレードの向きの変更は、各ブレードと関連する部材と協働するコントロールシャフトまたはブレードの向きを制御するためのコントロールボックスまでも含むアクチュエータによって制御される。
【0006】
両方のスプリッタ段のブレードを駆動するために単一のシャフトを使用すると、構成要素の数をターボ機械の中で制限できるようになるが、このシステムの大部分が特に重要であり、それは、大きな寸法を有するターボ機械に関してこの解決策に有利に働く必要がある。
【0007】
コントロールボックスの使用は、いかなるターボ機械のサイズにも適している。しかしながら、この解決策は、多数の構成要素を含み、それは、非常に多くの構成要素の間の累積クリアランスおよびそれらのそれぞれの変形のため、システム精度を減少させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、省スペース化であるのみならずまた部品点数の低減を含むブレードの向きを調節するための手段を駆動するための機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1のターボ機械スプリッタ段のブレードの向きを調節するための第1の調節部材と、第2のターボ機械スプリッタ段のブレードの向きを調節するための第2の調節部材とを駆動するための駆動機構にして、ターボ機械の中で両方の調節部材を同時に駆動して移動させるための手段を含む駆動機構であって、
第1の調節部材および第2の調節部材を同時に駆動する単一の駆動輪を含み、駆動輪と第1の調節部材および第2の調節部材のいずれかとの間に配置され、異なる速度伝達比を有する2つのギア段を含むことを特徴とする、駆動機構を提供する。
【0010】
この種の駆動機構により、駆動の機能および速度伝達比の可変性が集中されて構成要素の数が減少し、それによって駆動機構の質量を減少させることができるようになる。
【0011】
好ましくは、第2の調節部材と関連するギア段の速度伝達比は、ターボ機械の中で駆動輪の角度位置に応じて変化する。
【0012】
好ましくは、第2の調節部材と関連するギア段は、駆動輪に噛み合わされる第1の歯車と、第2の調節部材の歯付き部分に噛み合わされる第2の歯車と、ギア段の速度伝達比を変化させるように両方の歯車を互いにからませるための
カップリング手段とを含む。
【0013】
好ましくは、第2の調節部材と関連するギア段は、ギア段の速度伝達比を非線形に変化させるように作られる。
【0014】
好ましくは、第2の調節部材と関連するギア段の両方の歯車の回転軸は、互いに関して平行であり、オフセットされる。
【0015】
好ましくは、両方の歯車のうちの一方は、溝を含み、他方の歯車は、前記他の歯車から軸線方向に突出するフィンガを含み、フィンガは、溝に収容され、第1の歯車から第2の歯車にトルクを伝達するように溝と協働することができる。
【0016】
好ましくは、溝は、第1の歯車に形成され、フィンガは、第2の歯車によって担持される。
【0017】
好ましくは、第1の調節部材と関連するギア段は、駆動輪に噛み合わされる第3の歯車と、第1の調節部材の相補的な歯付き部分とを含む。
【0018】
また、本発明は、各スプリッタ段が前記スプリッタ段のブレードの向きを調節するための部材を含み、両方の調節部材がターボ機械の主軸の周りにターボ機械の中で回転自在に可動であり、本発明による駆動機構によって回転自在に駆動されることを特徴とする、そのブレードの向きが変更され得る2つのスプリッタ段を含む、航空機ターボ機械に関する。
【0019】
好ましくは、各調節部材は、これらに関連するギア段と関連する第1の歯付き部分と、これらに関連するスプリッタ段の各ブレードによって担持される歯車と噛み合う第2の歯付き部分とを含む。
【0020】
本発明のさらなる特徴および利点は、その理解のために添付の図を参照する次の詳細な説明を読むと明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】単一の図は、本発明によって作られる駆動機構の図式表現である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
単一の図においては、第1のターボ機械スプリッタ段16のブレード14の向きを調節するための部材12と、第2のターボ機械スプリッタ段22のブレード20の向きを調節するための部材18とを駆動するための機構10が示されている。
【0023】
ブレード14、20の向きを調節するための部材12、18は、各スプリッタ段16、22と関連するリングからそれぞれ成っており、それは、ターボ機械(表示せず)の主軸の周りにターボ機械の中で回転自在に可動である。各リング12、18の軸方向端部12a、18aは、各ブレード14、20によって担持される歯車と協働する歯付き部分を含む。
【0024】
したがって、ターボ機械の中でリング12、18の回転により、これらに関連するスプリッタ段16、22のブレード14、20すべての同時回転が生じる。
【0025】
ターボ機械の動作条件の変化中に、両方のスプリッタ段16、22のブレード14、20の向きは、ターボ機械の性能を最適化するように同時に変更されるべきである。したがって、第1のスプリッタ段16のブレード14は、第2のスプリッタ段22のブレード20の枢動角度に関して異なる角度で枢動する。
【0026】
調節リング12、18を駆動するための機構10は、両方のリング12、18を同時に駆動して移動させるように、および第1のスプリッタ段16と関連する第1のリング12の変位振幅が第2のスプリッタ段22と関連する第2のリング18の変位振幅と異なるように設計される。
【0027】
両方のリング12、18の同時駆動のために、駆動機構10は、2つのギア段26、28を介して両方のリング12、18に噛み合わされる単一の駆動輪24を含む。
【0028】
第1のギア段26は、第1のスプリッタ段16の第1のリング12と関連し、それは、駆動輪24に、および第1のリング12に噛み合わされる単一の歯車30を含む。
【0029】
第2のギア段28は、第2のリング18と関連し、それは、駆動輪24に噛み合わされる第1の歯車32と、第2のリング18に噛み合わされる第2の歯車34とを含む。第2のギア段28の両方の歯車は、第1の歯車32から第2の歯車34まで駆動作用力を伝達するように互に協働する。
【0030】
各リング12、18の第2の軸方向端部12b、18bは、第1のギア段26またはこれに関連する第2のギア段28の歯車30、34と協働する歯付き部分44をその端部に含む。
【0031】
第1の歯車32および第2の歯車34は、第1のギア段26の歯車30によって提供される速度伝達比と異なる速度伝達比を提供されるように互に噛み合わされる。
【0032】
ここに、第1のギア段26の歯車30によって提供される速度伝達比は、線形になり、駆動輪24の角度位置にかかわらず一定である。したがって、第2のギア段28によって提供される速度伝達比は、線形にならない。
【0033】
好ましい実施形態によれば、第2のギア段28の速度伝達比は可変であり、それは、駆動輪24の、およびしたがって第1の歯車32の角度位置に応じて変化する。
【0034】
第1の歯車32および第2の歯車34は、互いに平行に配置され、それらのそれぞれの回転軸36、38は、互いに平行であり、半径方向にオフセットされる。両方の歯車32、34は、第2のギア段28の速度伝達比を変化させるための手段によって噛み合わされる。
【0035】
この
カップリング手段は、この場合、溝40にあり、その各々のトラッキングフィンガ42アセンブリは、第1および第2の歯車32、34のいずれかによってそれぞれ担持される。
【0036】
ここに、溝40は、第1の歯車32に形成され、それは、第1の歯車32の回転軸36に関して半径方向の主な向きから成る。フィンガ42は、第1の歯車32に面する第2の歯車34の半径方向外面34aに関して軸方向に突出することによって、第2の歯車34によって担持され、それは、溝40に収容される。
【0037】
両方の歯車32、34のそれぞれの回転軸36、38は第1の歯車32の回転中に互いからオフセットされるので、フィンガ42は、溝40の中で変位され、したがって、フィンガ42と第1の歯車32の回転軸36との間の距離を変更する。それによって、速度伝達比が変更される。
【0038】
本発明は、溝40のおよびフィンガ42のこのただ1つの形態限定されるものではなく、溝40は、第2のギア段28の速度伝達比を規定する所与の原理を実現するように、直線的でなくてもよいことが理解されよう。
【0039】
さらにまた、示された実施形態によれば、駆動輪24の回転軸は、ギア段26、28の歯車30、32、34の回転軸36、38に対して全体的に垂直である。代替的な実施形態によれば、異なる歯車24、30、32、34の回転軸は、平行である。
【0040】
したがって、上で規定したスプリッタ段16、22および駆動機構10を含むターボ機械(表示せず)は、より簡単な構造体から成る。