(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重合可能な条件下かつ流動層反応器内で、1種または複数のモノマー、少なくとも1種の触媒系、および、50質量%超の2,2−ジメチルプロパンを含む凝縮剤を接触させて、ポリオレフィンポリマーを製造することを含む、重合方法であって、前記方法が凝縮モードで稼働し、前記反応器に進入する液体および気体中の凝縮性流体のレベルが、前記反応器に進入する液体および気体の総質量に対して5質量%超である、方法。
【背景技術】
【0002】
気相重合反応器の凝縮モード運転は、サイクルガス中の凝縮物を蒸発させることにより、格別に大きな除熱能力を提供することによって、製造速度または空時収率を著しく高める。しばしば、反応器内への不活性
凝縮剤(「ICA」)の供給によって凝縮をさらに促進して、凝縮モード運転をいっそう実用的にしている。商用としての実用において最も一般的に使用されているICAは、n−ペンタン、イソペンタン、n−ブタン、イソヘキサンおよびイソブタンである。しかしながら、反応器内に導入され得るICAの量は、それを超えると流動媒体(bed material)がねばつきすぎて排出することができなくなるまたは通常の流動化状態を維持することができなくなる、「粘着限界」より少なく保たなければならない。この限界を超えた状態で運転することは、ファウリングまたは被膜形成の種類と反応器システム内での位置との両方に関して多様な様式のファウリングまたは被膜形成が起きる。流動層反応器内での反応速度を高める際の主な制約は、重合区域から熱を取り除くことができる速度である。例えば、最も一般的なICAの一つであるイソペンタンが商用として用いられるとき、濃度は、許容できる最大のレベルにまで高められているが、気相反応器内にある広々としたドーム状の区域における皮膜形成を回避すべく、より高くされることはない。過去の努力は、製造速度を高めて、連続運転時間をより長くすることによって、この技術を改善しようとするものであった。
【0003】
例えば、米国特許第5,352,749号は、流動化媒体が、前記反応器の冷却能力を制御するように作用する、流動層および流動化媒体を有する気相反応器内でα−オレフィンを重合させるための方法を対象としており、この改善点は、流動化媒体の総質量に対して17.4〜50質量パーセントまでの範囲のあるレベルの液体を、反応器内に進入する流動化媒体中に用いること、および沈降バルク密度に対する流動化バルク密度の比を0.59超に維持することを含む。さらに、米国特許第5,352,749号は、触媒の存在下でモノマーを含む気体流を反応区域に通して、ポリマー生成物を製造すること、前記ポリマー生成物を抜き出すこと、前記反応区域から未反応モノマーを含む前記流動化媒体を抜き出すこと、前記流動化媒体を炭化水素および重合性モノマーと混合して、液相および気相を形成すること、ならびに前記流動化媒体を前記反応器に再循環すること含む、流動化媒体および流動層を有する気相重合反応器の反応器生産性を高めるための連続プロセスも対象としており、この改善は、a) 前記炭化水素を前記流動化媒体中に導入して、42Btu/lb〜110Btu/lbの範囲のレベルへの流動化媒体の冷却能力の増大を可能にすること、b) ポリマー生成物の抜出し速度を500lb/時・ft2超に高めること、およびc) 沈降バルク密度に対する流動化バルク密度の比を0.59超に維持することを含む。凝縮性流体に関する記述は、第6欄、31〜47行目に設けられている。
米国特許第6,063,877号は、(1) 反応器入口、(2) 反応層、(3) 反応器出口ならびに(4) (a) 圧縮機および(b) 熱交換器が付いた再循環管路を有する反応器内における、発熱を伴う連続気相法を制御するための方法であって、反応層または出口(2または3)の温度が、あらかじめ選択されており、反応器入口(1)の温度と、あらかじめ選択された反応層または出口(2または3)の温度との間に温度差(ΔT)があり、(A) 熱交換器(4(b))によって実現される伝熱を制御して、あらかじめ選択された反応層(2)または出口(3)温度を維持する一方で、同時に、B) 反応器への凝縮性流体の供給速度を制御して、温度差(ΔT)を一定に維持することを含む、方法を対象としている。凝縮性流体の例は、第2欄、24〜34行目に列記されている。
【0004】
米国特許第7,696,289号は、分子量が小さくて露点上昇作用のある成分および分子量が大きくて露点上昇作用のある成分を含む再循環流を、気相流動層反応器内の流動層に通すステップ、触媒の存在下で少なくとも1種のα−オレフィンモノマーを重合させるステップ、ならびに、再循環流の露点アプローチ温度が、分子量が大きい方の露点上昇作用のある成分のみを用いて運転した場合の露点アプローチ温度より低くなるように、再循環流中の露点上昇作用のある低分子量成分の量を制御するステップを含む、気相重合方法を対象としている。ICAは例えば、第15欄、34〜45行目および請求項5において記述されている。
米国特許第7,858,719号は、反応器内において触媒系およびフッ素化炭化水素の存在下で1種または複数の炭化水素モノマーを重合させるための気相法であって、フッ素化炭化水素が、反応器内に6.9〜3448kPaの分圧で存在し、反応器温度が、30〜120℃までであり、触媒系が、第3族〜第12族の金属を含み、フッ素化炭化水素対触媒系の金属のモル比が、2000〜3500:1までである、気相法を対象としている。「凝縮性流体」という節の見出しの下で、第19欄〜第21欄において、いくつかのフッ素化炭化水素を認めることができる。
【0005】
米国特許出願公開第2005/0182207号は、触媒の存在下において反応性の良い条件で、モノマーを含む気体流を流動層反応器に継続的に通すこと、ポリマー生成物および未反応モノマーガスを含む流れを抜き出すこと、未反応モノマーガスを含む前記流れを冷却して、気相および液相を含む混合物を形成すること、ならびに前記混合物を十分なさらなるモノマーと一緒に前記反応器内に再導入して、重合を済ませて生成物として抜き出されたモノマーを置きかえることを含む、モノマーからのポリマーの製造のための気体流動層型で連続式の重合方法であって、前記液相が、気化されるものであり、流れが、アルカン、シクロアルカンおよびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも2種の不活性
凝縮剤を含み、不活性
凝縮剤のそれぞれが、通常40℃未満の沸点を含む、重合方法を対象としている。表1は、ICAのリストを提供している。
背景に関する他の参考資料には、WO94/28032、WO2011/147539ならびに米国特許第6,262,192号および米国特許第7,683,140号が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の化合物、成分、組成物および/または方法を開示および記述する前に、そうではないと示されていない限り、本発明は、特定の化合物、成分、組成物、反応物質、反応条件、リガンドまたはメタロセン構造等に限定されず、したがって、本発明は、そうではないとの記載がない限り、変更が可能であると理解すべきである。本明細書において使用されている用語は、特定の実施形態の記述を目的としたものにすぎず、限定を加えるものであるように意図されていないことも理解すべきである。
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されているとき、「1つの」、「一」および「前記」という単数形は、そうではないとの記載がない限り、複数の指示対象を含むことにも留意しなければならない。したがって、例えば、「脱離基によって置換された」部分に関する場合のような「脱離基」への言及は、1個より多い脱離基を含み、したがって、当該部分は、2個以上の脱離基によって置換されていてもよい。同様に、「ハロゲン原子によって置換された」部分に関する場合のような「ハロゲン原子」への言及は、1個より多いハロゲン原子を含み、したがって、当該部分が2個以上のハロゲン原子によって置換されていてもよい、「1つの置換基」への言及は、1つまたは複数の置換基を含み、「1つのリガンド」への言及は、1つまたは複数のリガンドを含む等である。
本発明は一般に、少なくとも1種の触媒系の存在下で1種または複数のモノマーを重合させるための重合方法、特に気相法を対象としている。いくつかの部類の実施形態において、本発明は、製造速度および/または製品の機能が向上した重合方法にも関する。
本明細書において記述された重合方法は、連続プロセスであってもよい。本明細書において使用されているとき、「連続プロセス」は、介入または中断なしで動作する(または動作するように意図されている)プロセスであるが、当然ながら、慣例的な保守管理または偶発的な妨害事象のために中断されることもある。例えば、ポリマーを製造するための連続プロセスは、反応物質が1個または複数の反応器に継続的に導入され、ポリマー生成物が連続的にまたは半連続的に抜き出される、連続プロセスであろう。
数多くの部類の本発明の実施形態において、本発明は、少なくとも1種の触媒系および
凝縮性薬剤(condensable agent)の存在下で1種または複数のモノマーを重合させるための気相法であって、凝縮モードで運転される、気相法を提供する。
例えば、ある部類の実施形態において、本発明は、重合可能な条件下で1種または複数のモノマー、少なくとも1種の触媒系および2,2−ジメチルプロパンと少なくとも別のC
4−C
8凝縮剤、好ましくは少なくとも別のC
4−C
6凝縮剤との混合物を含む
凝縮剤を接触させて、ポリオレフィンポリマーを製造することを含む、重合方法を提供する。
【0011】
別の部類の実施形態において、本方法は、重合可能な条件下で1種または複数のモノマー、少なくとも1種の触媒系、および、大部分を占めている2,2−ジメチルプロパンを含む
凝縮剤を接触させて、ポリオレフィンポリマーを製造することを含み、ポリオレフィンポリマーの製造速度が、別のC
4−C
8凝縮剤によって重合させる同じ方法より少なくとも20%速い。本明細書において使用されているとき、「同じ方法」は、同等の設備を使用して同様のポリマー生成物を製造する、任意の気相法を指すものとする。しかしながら、「同じ方法」は、明示的に言及されているか否かにかかわらず、他の相違点、ステップ、要素、設備または材料の存在または省略を排除しないものとする。
他の実施形態において、製造速度は、別のC
4−C
8凝縮剤によって重合させる同じ方法より少なくとも25%速いことが可能であり、または別のC
4−C
8凝縮剤によって重合させる同じ方法より少なくとも30%速いことが可能である。
【0012】
触媒成分および触媒系
従来型の遷移金属触媒を含むすべての重合触媒は、本発明の重合方法における使用に適している。下記は、本発明の方法において有用な様々な重合触媒に関する非限定的な論述である。元素周期表に関するすべての数および言及は、そうではないとの記載がない限り、Chemical and Engineering News, 63(5), 27(1985)に記載の新しい表記法に基づいている。
本明細書の記述において、遷移金属化合物は、触媒前駆物質、遷移金属触媒、重合触媒または触媒化合物として記述されていることもあるが、これらの用語は、互換可能に使用されている。活性化剤という用語は、共触媒という用語と互換可能に使用されている。本明細書において使用されているとき、「少なくとも1種の触媒系」は、モノマーを重合させることができる、触媒化合物および活性化剤を含む組合せを指す。
【0013】
従来の触媒
当技術分野において一般に公知の従来の触媒は、チーグラー−ナッタ触媒またはPhillips型クロム触媒を指す。従来型の遷移金属触媒の例は、米国特許第4,115,639号、米国特許第4,077,904号、米国特許第4,482,687号、米国特許第4,564,605号、米国特許第4,721,763号、米国特許第4,879,359号および米国特許第4,960,741号において論述されている。本発明において使用され得る従来の触媒化合物は、元素周期表の第3族〜第10族、好ましくは第4族〜第6族の遷移金属化合物を含む。
これらの従来型の遷移金属触媒は、
MR
x (I)
[式中、Mが、第3族〜第10族、好ましくは第4族の金属であり、より好ましくはチタンであり、Rが、ハロゲンまたはヒドロカルビルオキシ基であり、xが、金属Mの価数であり、好ましくはxが、1、2、3または4であり、より好ましくはxが、4である]
によって表すことができる。Rの非限定的な例には、アルコキシ、フェノキシ、ブロミド、クロリドおよびフルオリドが挙げられる。Mがチタンである従来型の遷移金属触媒の非限定的な例には、TiCl
3、TiCl
4、TiBr
4、Ti(OC
2H
5)
3Cl、Ti(OC
2H
5)Cl
3、Ti(OC
4H
9)
3Cl、Ti(OC
3H
7)
2Cl
2、Ti(OC
2H
5)
2Br
2、TiCl
3.1/3AlCl
3およびTi(OC
12H
25)Cl
3が挙げられる。
【0014】
しばしばPhillips型触媒と呼ばれる従来のクロム触媒は、CrO
3、クロモセン、シリルクロメート、クロミルクロリド(CrO
2Cl
2)、クロム−2−エチルヘキサノエート、クロムアセチルアセトネート(Cr(AcAc)
3)を含み得る。非限定的な例は、米国特許第2,285,721号、米国特許第3,242,099号および米国特許第3,231,550号において開示されている。
最適化のために、数多くの従来の触媒は、少なくとも1種の共触媒を必要とする。共触媒に関する詳細な論述は、米国特許第7,858,719号、第6欄、46行目〜第7欄、45行目に認めることができる。
【0015】
メタロセン触媒
本発明の実施形態において有用な重合触媒は、1種または複数のメタロセン化合物(本明細書においては、メタロセンまたはメタロセン触媒とも呼ばれる)を含む。メタロセン触媒は一般に、少なくとも1個の金属原子に結合した1つまたは複数のリガンドおよび1つまたは複数の脱離基を含み、少なくとも1つの架橋基を一緒に含んでもよいものであるとして、記述されている。リガンドは一般に、開環、非環式もしくは縮合環(1つもしくは複数)もしくは環系(1つもしくは複数)またはこれらの組合せによって表される。これらのリガンド、好ましくは環または環系は一般的に、元素周期表の第13族〜第16族の原子から選択される1つまたは複数の原子から構成され、好ましくは、この原子は、炭素、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、リン、ゲルマニウム、ホウ素およびアルミニウムまたはこれらの組合せからなる群より選択される。最も好ましくは、環または環系は、限定されるわけではないがシクロペンタジエニルリガンドもしくはシクロペンタジエニル型リガンド構造、または、ペンタジエンリガンド、シクロオクタテトラエンジイルリガンドもしくはイミドリガンド等の類似した働きをする他のリガンド構造等、炭素原子から構成されるものである。金属原子は好ましくは、元素周期表の第3族〜第15族およびランタニド系列またはアクチニド系列から選択される。好ましくは、金属は、第4族〜第12族、より好ましくは第4族、第5族および第6族の遷移金属であり、最も好ましくは、遷移金属は、第4族である。
【0016】
例示的なメタロセン触媒および触媒系は、例えば、米国特許第4,530,914号、米国特許第4,871,705号、米国特許第4,937,299号、米国特許第5,017,714号、米国特許第5,055,438号、米国特許第5,096,867号、米国特許第5,120,867号、米国特許第5,124,418号、米国特許第5,198,401号、米国特許第5,210,352号、米国特許第5,229,478号、米国特許第5,264,405号、米国特許第5,278,264号、米国特許第5,278,119号、米国特許第5,304,614号、米国特許第5,324,800号、米国特許第5,347,025号、米国特許第5,350,723号、米国特許第5,384,299号、米国特許第5,391,790号、米国特許第5,391,789号、米国特許第5,399,636号、米国特許第5,408,017号、米国特許第5,491,207号、米国特許第5,455,366号、米国特許第5,534,473号、米国特許第5,539,124号、米国特許第5,554,775号、米国特許第5,621,126号、米国特許第5,684,098号、米国特許第5,693,730号、米国特許第5,698,634号、米国特許第5,710,297号、米国特許第5,712,354号、米国特許第5,714,427号、米国特許第5,714,555号、米国特許第5,728,641号、米国特許第5,728,839号、米国特許第5,753,577号、米国特許第5,767,209号、米国特許第5,770,753号、米国特許第5,770,664号、EP−A−0591756、EP−A−0520−732、EP−A−0420436、EP−B10485822、EP−B10485823、EP−A2−0743324、EP−B10518092、WO91/04257、WO92/00333、WO93/08221、WO93/08199、WO94/01471、WO96/20233、WO97/15582、WO97/19959、WO97/46567、WO98/01455、WO98/06759およびWO98/011144において記述されている。
【0017】
混合触媒
ある部類の本発明の実施形態において、少なくとも1種の触媒系は、混合触媒、すなわち、2つ以上の同じ種類または異なる種類の触媒、例えば上記触媒を含み得る。例えば、メタロセン触媒は、当技術分野において公知の従来の触媒または先進型の触媒の1種または複数と組み合わせてもよい。このような触媒の一例は、Univation Technologies,LLC、Houston、TXから入手できるPRODIGY(商標)バイモダル触媒である。
活性化剤および活性化方法
上記重合触媒、特にメタロセン触媒は一般的に、オレフィンを配位させ、挿入し、重合させることになる空いた配位部位を有する重合触媒を生成するために、様々な方法によって活性化される。
本明細書において使用されているとき、「活性化剤」という用語は、中性の重合触媒化合物を触媒活性な触媒カチオン化合物に変換することによって、本明細書において記述された重合触媒化合物のいずれか一つを活性化することができる、任意の化合物を指す。非限定的な活性化剤は例えば、アルモキサン、アルミニウムアルキル、中性であってもイオン性であってもよい電離性活性化剤および従来型の共触媒が挙げられる。活性化剤および活性化方法に関する詳細な論述は、特許第7,858,719号、第14欄、21行目〜第17欄、30行目に認めることができる。
【0018】
担持方法
上記触媒および触媒系は、当技術分野において周知の担持方法の一つを使用して、1種または複数の担持材料またはキャリアと組み合わせてもよい。いくつかの部類の本発明の実施形態において、少なくとも1種の触媒系は、担持された形態である。
本明細書において使用されているとき、「担体」または「キャリア」という用語は、互換可能に使用されており、任意の多孔性担持材料または非多孔性担持材料であり、好ましくは多孔性担持材料、例えばタルク、無機酸化物および無機塩化物、例えばシリカまたはアルミナである。他のキャリアには、ポリスチレン等の樹脂型担持材料、ポリスチレンジビニルベンゼンポリオレフィンもしくはポリマー化合物等の官能化有機担体もしくは架橋有機担体または任意の他の有機担持材料もしくは無機担持材料等、またはこれらの混合物が挙げられる。
好ましいキャリアは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族または第14族金属酸化物を含む無機酸化物である。好ましい担体は、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、塩化マグネシウムおよびこれらの混合物を含む。他の有用な担体は、マグネシア、チタニア、ジルコニアおよびモンモリロナイト等を含む。さらに、これらの担持材料の組合せ、例えばシリカ−クロムおよびシリカ−チタニアが使用されてもよい。
【0019】
担持メタロセン触媒系の例は、米国特許第4,701,432号、米国特許第4,808,561号、米国特許第4,912,075号、米国特許第4,925,821号、米国特許第4,937,217号、米国特許第5,008,228号、米国特許第5,238,892号、米国特許第5,240,894号、米国特許第5,332,706号、米国特許第5,346,925号、米国特許第5,422,325号、米国特許第5,466,649号、米国特許第5,466,766号、米国特許第5,468,702号、米国特許第5,529,965号、米国特許第5,554,704号、米国特許第5,629,253号、米国特許第5,639,835号、米国特許第5,625,015号、米国特許第5,643,847号、米国特許第5,648,310号、米国特許第5,665,665号、米国特許第5,698,487号、米国特許第5,714,424号、米国特許第5,723,400号、米国特許第5,723,402号、米国特許第5,731,261号、米国特許第5,743,202号、米国特許第5,759,940号、米国特許第5,767,032号、米国特許第5,688,880号、米国特許第5,770,755号および米国特許第5,770,664号、WO95/32995、WO95/14044、WO96/06187、WO96/11960およびWO96/00243において記述されている。
【0020】
従来の担持触媒系の例は、米国特許第4,894,424号、米国特許第4,376,062号、米国特許第4,395,359号、米国特許第4,379,759号、米国特許第4,405,495号、米国特許第4,540,758号および米国特許第5,096,869号において記述されている。
重合方法
上記少なくとも1種の触媒系の実施形態は、流動層プロセスまたは撹拌層プロセスを含む任意の気相重合方法における使用に適している。後述の1種または複数の
凝縮性薬剤が利用される気相重合方法が、特に好ましい。
【0021】
一般的に、気相重合方法においては連続サイクルが用いられるが、この場合、反応器システムのサイクルの一部分において、再循環流または流動化媒体の別名でも知られた循環ガス流が、反応器内で重合の熱によって加熱される。この熱は、サイクルの別の部分において、反応器の外部にある冷却システムによって再循環用組成物から取り除かれる。一般に、ポリマーを製造するための気体流動層型プロセスにおいては、少なくとも1種の触媒系の存在下において重合可能な条件下で、1種または複数のモノマーを含有する気体流が、流動層の中を通るように継続的に循環される。本明細書において使用されているとき、「重合可能な条件」は、オレフィンを重合してポリオレフィンにするのに必要で適している、すべての任意のプロセス条件およびすべての任意の設備を指す。好ましいある部類の本発明の実施形態において、後述の
凝縮性薬剤が、再循環流の冷却能力の向上という目的のために、本方法に導入される。気相法への
凝縮性薬剤の意図的な導入は、下記においてさらに詳細に論述されている「凝縮モードプロセス」と呼ばれる。気体流が流動層から抜き出され、反応器に戻るように再循環される。同時に、ポリマー生成物が反応器から抜き出され、モノマーを含む新たな反応物質が反応器に供給される。例えば、米国特許第4,543,399号、米国特許第4,588,790号、米国特許第5,028,670号、米国特許第5,317,036号、米国特許第5,352,749号、米国特許第5,405,922号、米国特許第5,436,304号、米国特許第5,453,471号、米国特許第5,462,999号、米国特許第5,616,661号および米国特許第5,668,228号および本出願の背景技術の部を参照されたい。
【0022】
凝縮性薬剤
凝縮性薬剤または流体は一般に、ポリマー生成物を対象とする溶解力がほとんどない乃至全くない炭化水素を含む。適切な
凝縮剤は、直鎖状炭化水素、分岐状炭化水素、環状炭化水素、置換炭化水素を含むC
4−C
8炭化水素およびこれらの混合物、好ましくはC
4−C
6炭化水素およびこれらの混合物、ならびにこれらのそれぞれの異性体を含む。いくつかの部類の本発明の実施形態において、
凝縮剤は、2,2−ジメチルプロパンを含む。ネオペンタンとも呼ばれる2,2−ジメチルプロパンは、5個の炭素原子を有する二重分岐鎖アルカンである。2,2−ジメチルプロパンは、第四級炭素を有する最も単純なアルカンである。2,2−ジメチルプロパンは、分子式C
5H
12(ペンタン)を有する3種の構造異性体の一つであり、他の2種の構造異性体は、n−ペンタンおよびイソペンタンである。
ある部類の本発明の実施形態において、2,2−ジメチルプロパンは、上記のように、他の
凝縮剤、例えば他のC
4−C
8凝縮剤またはこれらの混合物と一緒に使用されてもよい。特に、
凝縮剤は、2,2−ジメチルプロパンと少なくとも別のC
4−C
8凝縮剤、例えばn−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンまたはこれらの2つ以上の混合物との混合物を含んでもよい。本発明の一実施形態において、
凝縮剤は、2,2−ジメチルプロパンおよびイソペンタンを含み、またはこれらから本質的になる。
【0023】
他の実施形態において、
凝縮剤は、少なくとも1種の他の
凝縮剤と組み合わせて使用される場合、大部分を占めている2,2−ジメチルプロパンを含む。
凝縮剤は、2,2−ジメチルプロパンから本質的になることもできる。本明細書において使用されているとき、「2,2−ジメチルプロパンから本質的になる」、または
凝縮剤に「大部分を占めている2,2−ジメチルプロパン」を使用するは、反応器内の
凝縮剤の総質量に対して50質量%超、代替的には60質量%以上、代替的には65質量%以上、代替的には70質量%以上、代替的には75質量%以上、代替的には80質量%以上、代替的には85質量%以上、代替的には90質量%以上、代替的には91質量%以上、代替的には92質量%以上、代替的には93質量%以上、代替的には94質量%以上、代替的には95質量%以上、代替的には96質量%以上、代替的には97質量%以上、代替的には98質量%以上、代替的には99質量%以上を指すものとする。
【0024】
他の部類の本発明の実施形態において、
凝縮剤の混合物が使用される場合、2,2−ジメチルプロパン対少なくとも別のC
4−C
8凝縮剤の比は、50:50以上であり、代替的には、2,2−ジメチルプロパン対少なくとも別のC
4−C
8凝縮剤の比は、65:35以上であり、代替的には、2,2−ジメチルプロパン対少なくとも別のC
4−C
8凝縮剤の比は、85:15以上である。
ある部類の実施形態において、ポリオレフィンポリマーの製造速度は、2,2−ジメチルプロパンを実質的に用いないで重合させる同じ方法より少なくとも20%速く、代替的には少なくとも25%速く、代替的には少なくとも30%速い。本明細書において使用されているとき、「2,2−ジメチルプロパンを実質的に用いない」は、2,2−ジメチルプロパンが添加されないもしくは利用可能でないこと、または、反応器内にある合計での
凝縮性薬剤に対して10質量%未満の2,2−ジメチルプロパンが添加されるまたは利用可能であることを意味するものとする。
【0025】
凝縮モードプロセス
凝縮剤は、気相重合方法または簡潔に言うと気相法において使用されてもよい。気相法は、凝縮モードで運転されるが、この場合、再循環流の冷却能力を向上するために上記
凝縮剤が本方法に導入される。気相法は、流動層反応器内で1種のオレフィンまたは少なくとも1種がエチレンもしくはプロピレンであることが好ましい複数のオレフィンを重合させるのに特に良く適合しており、本方法は、流動化媒体を有する流動層反応器またはある媒体を有する撹拌層反応器に液体および気体が導入される凝縮モードで稼働し、凝縮性流体のレベルは、反応器に進入する液体および気体の総質量に対して5質量パーセント超、好ましくは10質量パーセント超または15質量パーセント超または20質量パーセント超、より好ましくは25質量パーセント超、さらにより好ましくは30質量パーセント超、なおさらにより好ましくは35質量パーセント超、最も好ましくは30質量パーセント超〜最大60質量パーセントまで、好ましくは50質量パーセントまたは代替的には55質量パーセント、60質量パーセント、65質量パーセント、70質量パーセント、75質量パーセント、80質量パーセント、85質量パーセント、90質量パーセント、91質量パーセント、92質量パーセント、95質量パーセント、96質量パーセント、97質量パーセント、98質量パーセントもしくは99質量パーセントである。凝縮モードプロセスのさらなる詳細に関しては、例えば、米国特許第5,342,749号および米国特許第5,436,304号を参照されたい。
本発明の好ましい一実施形態において、本発明は、(a) 1種または複数のモノマーを含む再循環流を反応器内に導入するステップ、(b) 重合触媒および凝縮性流体を反応器内に導入するステップ、(c) 反応器から再循環流を抜き出すステップ、(d) 再循環流を冷却して、気相および液相を形成するステップ、(e) 気相および液相を反応器内に再導入するステップ、(f) 反応器内にさらなるモノマーを導入して、重合されたモノマーを置きかえるステップならびに(g) 反応器からポリマー生成物を抜き出すステップを含む、反応器内でモノマーを重合させるための方法、好ましくは連続プロセスを対象としている。一実施形態において、凝縮性流体は、反応器内に再導入された流動化媒体の総質量に対して10質量パーセント超または15質量パーセント超または20質量パーセント超、好ましくは25質量パーセント超、より好ましくは30質量パーセント超または35質量パーセント超、最も好ましくは40質量パーセント超の量で導入される。
【0026】
反応器条件
上記実施形態において記述された気相法のいずれかにおける反応器圧力は、約100psig(690kPa)〜約500psig(3448kPa)、好ましくは約200psig(1379kPa)〜約400psig(2759kPa)の範囲、より好ましくは約250psig(1724kPa)〜約350psig(2414kPa)の範囲である。
上記実施形態において記述された気相法のいずれかにおける反応器温度は、約30℃〜約120℃まで、好ましくは約60℃〜約115℃まで、より好ましくは約70℃〜110℃の範囲、最も好ましくは約70℃〜約100℃の範囲である。別の実施形態において、重合温度は、周囲温度(23℃)より高く、好ましくは30℃超、好ましくは50℃超、好ましくは70℃超である。
【0027】
いくつかの部類の本発明の実施形態において、本方法は、1時間当たり500lbs超(227Kg/時)のポリマーから約200,000lbs/時(90,900Kg/時)以上のポリマーを製造し、好ましくは1000lbs/時(455Kg/時)超、より好ましくは10,000lbs/時(4540Kg/時)超、さらにより好ましくは25,000lbs/時(11,300Kg/時)超、さらにより好ましくは35,000lbs/時(15,900Kg/時)超、なおさらにより好ましくは100,000lbs/時(45,500Kg/時)超、最も好ましくは65,000lbs/時(29,000Kg/時)超〜200,000lbs/時(90,700Kg/時)超のポリマーを製造する。
【0028】
モノマーおよびポリマー
本発明によって製造されたポリマーは、オレフィンポリマーまたは「ポリオレフィン」である。本明細書において使用されているとき、「オレフィンポリマー」または「ポリオレフィン」は、炭化水素モノマーに由来した少なくとも75モル%、好ましくは少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも85モル%、好ましくは少なくとも90モル%、好ましくは少なくとも95モル%、好ましくは少なくとも99モル%のポリマーを指す。炭化水素モノマーは、炭素および水素のみからモノマー構成されたである。例えば、重合対象のモノマーは、(Hawley's Condensed Chemical Dictionary, 13th edition, R. J. Lewis ed., John Wiley and Sons, New York, 1997の「Hydrocarbon」以下で規定されているような)脂肪族炭化水素または脂環式炭化水素である。本発明の別の実施形態において、重合対象のモノマーは、直鎖状または分岐状α−オレフィン、好ましくはC
2−C
40直鎖状または分岐状α−オレフィン、好ましくはC
2−C
20直鎖状または分岐状α−オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセンまたはこれらの混合物である。良く適合するモノマーは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1,4−メチル−ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1およびこれらの混合物の2種以上のオレフィンモノマーを含む。
【0029】
本発明の方法において有用な他のモノマーは、エチレン性不飽和モノマー、4〜18個の炭素原子を有するジオレフィン、共役または非共役ジエン、ポリエン、ビニルモノマーおよび環状オレフィンを含む。本発明において有用な非限定的なモノマーは、ブタジエン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、イソブチレン、ビニルベンゾシクロブタン、エチリデンノルボルネン、イソプレン、ジシクロペンタジエンおよびシクロペンテンを含む。
本発明の別の実施形態において、エチレンまたはプロピレンを、それらの一方がジエンであってもよい少なくとも2種の異なるコモノマーと重合させて、ターポリマーを形成する。
本発明の方法によって製造されたポリマーは、多種多様な製品の製造に有用であり、数多くの最終使用用途においても有用である。本発明の方法によって製造されたポリマーは、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンを含む。
【0030】
製造されたポリマー、一般的にポリエチレンポリマーは、0.860g/cc〜0.970g/ccの範囲、好ましくは0.880g/cc〜0.965g/ccの範囲、より好ましくは0.900g/cc〜0.960g/ccの範囲、さらにより好ましくは0.905g/cc〜0.950g/ccの範囲、さらにいっそうより好ましくは0.910g/cc〜0.940g/ccの範囲、最も好ましくは0.912g/cc超の密度を有し得る。
一実施形態において、本発明の方法によって製造されるポリマーは一般的に、数平均分子量に対する質量平均分子量(Mw/Mn)が約1.5〜約30まで、特に約2〜約15まで、より好ましくは約2〜約10まで、さらにより好ましくは約2.2〜約8未満まで、最も好ましくは約2.5〜約8までである、分子量分布を有する。Mw/Mnの比は、当技術分野において周知のゲル浸透クロマトグラフィー法によって測定される。
いくつかの部類の本発明の実施形態において、ポリエチレンポリマーは一般的に、組成分布幅指数(CDBI:Composition Distribution Breadth Index)によって測定される、狭い組成分布または幅広な組成分布を有する。コポリマーのCDBI測定のさらなる詳細は、当業者に公知である。例えば、WO93/03093を参照されたい。CDBIは一般に、50%超〜99%の範囲、好ましくは55%〜85%の範囲、より好ましくは60%〜80%まで、さらにより好ましくは60%超、なおさらにより好ましくは65%超であり得る。代替的には、CDBIは一般に、50%未満、より好ましくは40%未満、最も好ましくは30%未満であり得る。
【0031】
ポリエチレンポリマーは、ASTM−D−1238−Eによって測定して0.01dg/分〜1000dg/分の範囲、より好ましくは約0.01dg/分〜約100dg/分の範囲、さらにより好ましくは約0.1dg/分〜約50dg/分の範囲、最も好ましくは約0.1dg/分〜約10dg/分の範囲のメルトインデックス(MI)または(I
2)を有し得る。ポリエチレンポリマーは、(ASTM−D−1238−Fによって測定して)10〜25未満まで、より好ましくは約15〜25未満のメルトインデックス比(I
21.6/I
2.16または略記の場合は「I
21/I
2」)を有し得る。さらに、別の実施形態において、ポリマーは、好ましくは25超、より好ましくは30超、さらにより好ましくは40超、なおさらにより好ましくは50超、最も好ましくは65超のメルトインデックス比(I
21/I
2)を有する。代替的には、ポリエチレンポリマーは、15〜40の範囲、好ましくは約20〜約35の範囲、より好ましくは約22〜約30の範囲、最も好ましくは24〜27の範囲のメルトインデックス比(I
21/I
2)を有し得る。
本発明のさらなる他の実施形態において、プロピレン主体型ポリマーが製造されてもよい。これらのポリマーには、限定はないが、アタクチックなポリプロピレン、イソタクチックなポリプロピレンおよびシンジオタクチックなポリプロピレンが挙げられる。他のプロピレンポリマーは、プロピレンランダムコポリマー、プロピレンブロックコポリマーまたはプロピレンインパクトコポリマーを含む。
【0032】
本発明の方法によって製造されたポリマーは、種々の物品の形成に有用である。このような物品には、限定はないが、フィルム、シートおよび繊維が挙げられる。物品は、押出および共押出ならびにブロー成形、射出成形および回転成形によって製造することができる。フィルムは、共押出またはラミネート加工によって形成されたインフレーションフィルムまたはキャストフィルム、シュリンクフィルム、クリングフィルム、ストレッチフィルム、シーリングフィルムおよび配向フィルムを含む。フィルムは、包装、重包装袋、雑貨袋、食品包装、医療用包装、工業用ライナー、ジオメンブレン等において有用である。繊維は、フィルター、おむつ用織物、医療用衣服、ジオテキスタイル等を製造することを目的として、織物形態または非織物形態で使用するための溶融紡糸繊維、溶液紡糸繊維およびメルトブロー繊維の操作を含む。押出品は、医療用チューブ、ワイヤー用およびケーブル用のコーティング、ジオメンブレンならびに池の中敷きを含む。成形品は、ボトル、タンク、大型の中空物品、食品用の剛性容器、遊び場の設備、おもちゃ等の形態の単層構造体および多層構造体を含む。
【実施例】
【0033】
本発明は、本発明の特定の実施形態と一緒に記述してきたが、上記の記載は、本発明の範囲を説明し、限定を加えることがないように意図されていると理解すべきである。他の態様、利点および修正は、本発明が属する分野の当業者には明らかである。
したがって、次の例は、当業者に完全な開示および記述を提供するように提案されており、本発明者らが本発明であると考える範囲を限定するように意図されていない。
(例1)
示差走査熱量測定(DSC)を、イソペンタンまたは2,2−ジメチルプロパンのいずれかと接触しているPE顆粒を対象にして実施した。
第1の溶融DSCは、より一般的な第2の溶融DSC曲線に比べて、反応器内に存在する状態のポリマーをよりうまく表すものであると考えられているため、評価された各ポリマーに関しては、第1の溶融DSCのみを使用した。第2の溶融DSC曲線は、第1の溶融DSC曲線と著しく異なる可能性があるが、一般的に、第1の溶融DSC曲線より低いピーク融点およびより鋭い溶融ピークを示すものである。
下記表1のデータにおいて、DSC曲線は、10℃/分の昇温速度によって生成された。DSC機器は、TA Instruments Q200だった。PE顆粒は、1.0dg/分(ASTM D−1238)(190℃/2.16kg)の初期MI
2.1、34dg/分(ASTM D−1238)(190℃/21.6)のMI
21および0.920g/ccの密度(ASTM D−4703)を有するヘキセン−エチレンコポリマーだった。次いで、実験によるばらつきを低減するために顆粒をふるい分けしたが、35メッシュ上に残った顆粒は、イソペンタンを用いたDSC試験用にとっておき、35メッシュを通過して60メッシュ上に残った顆粒は、2,2−ジメチルプロパンを用いたDSC試験用にとっておいた。
【0034】
マイクロリットルシリンジを使用して、冷やしたセプタムボトルからグローブボックスまでイソペンタンを移送することによって、イソペンタンを高圧用の受け皿に量り取った。次いで、受け皿をグローブボックス内に閉じ込めておいてから、取り出してDSC試験データを得た。周囲条件で気体の2,2−ジメチルプロパンを、加圧シリンダーからポリマーを収容している密封容器内まで熱サイフォンにより循環させた。密封容器は、移送を行っている間、気体状2,2−ジメチルプロパンの凝縮を誘導するために氷浴によって0℃に維持した。十分な2,2−ジメチルプロパンを移送した後、密封容器を閉じ、2,2−ジメチルプロパン供給源から切り離し、−15℃未満で動作する冷凍器内に少なくとも4時間入れておいた。試料中の2,2−ジメチルプロパンの量は、移送できるまでにかかる時間により変更した。試料全体を確実に凍結させた後、試料の一部を、グローブボックス内にある風袋の重さを量っておいたDSC受け皿に移送し、次いで、グローブボックスを素早く密封した。密封された受け皿をグローブボックスから取り出し、DSC試験データを得た。密封された受け皿内の2,2−メチルプロパンの量は、熱分析の実施後に受け皿に通気口を開け、密封された受け皿の質量に対して最終的な質量を比較することによって測定した。
【0035】
結果は、表1および
図1に示されている。結果は、2,2−ジメチルプロパンの添加があった場合の方が、融点がより高いことを示している。1箇所、イソペンタンデータ点(0.106質量分率)の結果に重なり合いがあるのは、実験によるばらつきが原因であると考えられている。
【0036】
【表1】
(例2)
この例は、試料と、類似した量のICAとのDSCの第1の溶融のデータを比較している。これらのデータは、表1に収載の2つのデータ点として示されている。材料、設備および手順は、例1の場合と同じである。
図2に示されているように、2,2−ジメチルプロパンは、イソペンタンの0.451質量分率に比較して著しく高い融点およびMITを実証する、0.444質量分率に対応する。
【0037】
(例3)
これらの例は、種々のICAを使用する反応器の運転をモデル化している。モデル化は、米国特許第7,683,140号、第62欄、第48行目〜第69欄、第51行目において示された方法を使用して実施した。これらの例は、上記特許と同じ物理的特性の供給源を使用する。これらの例も、やはり、米国特許第7,683,140号(第69欄の表3を参照されたい。)において使用された同じ例示的な計算を用いる。これらの例は、ΔMITを実証している。表2は、これらの例において使用された溶解度パラメータのフルセットを示している。
【0038】
【表2】
【0039】
サイクルガス濃度が定まったらすぐに、大抵の場合は、ΔMITの目標値への到達を基準にしてサイクルガス濃度が定まったらすぐに、サイクルガス用ループの除熱能力を計算する。説明を目的として言うと、反応器温度は、85℃に固定されたままであり、反応器に進入するサイクルガス温度は、40℃という一定の値に固定されている。これらは、水を使用して重合の熱を取り除く商用プラントにおいて一般的な値である。計算は、Soave−Redlich−Kwong法による熱力学的特性に基づいている。例における計算は、反応器温度における固定の体積流量に基づいて実施されているが、理由として、粒子の持越しを制御するためにこの方法を用いて商用反応器が運転されているという点がある。
【表3】
【0040】
これらの例は、同じ濃度または分圧の2,2−ジメチルペンタンが、イソペンタンよりはるかに低いΔMITを与えることを示している。(反応器の運転において一般的な場合と同様に)ΔMITが一定に保持されているため、2,2−ジメチルプロパンを用いた場合の方が、除熱能力が1.57倍大きい。
【0041】
(例4)
この例は、例3において使用されたのと同じモデルおよび計算方法を使用している。この例は、より低い密度のポリマーの製造速度に及ぼされる、2,2−ジメチルプロパンの影響を調査している。
【0042】
【表4】
【0043】
ICAに比較すると、除熱は、2,2−ジメチルプロパンを用いた場合に1.88倍増大している。0.912g/ccの密度で製造された2,2−ジメチルプロパンの使用は、やはり、0.918g/ccの密度で製造されたイソペンタンよい大きな反応器の除熱をもたらすことが可能である。
【0044】
(例5)
この例は、前出の例と同じモデルおよび計算を使用する。この例は、より高いMI(より低い分子量)のポリマーの製造速度に及ぼされる、2,2−ジメチルプロパンの影響を調査している。
【表5】
これらの例は、除熱が、2,2−ジメチルプロパンを用いた場合に1.59倍増大することを示している。したがって、20dg/分のMIで製造された2,2−ジメチルプロパンの使用は、1dg/分のMIで製造されたイソペンタンより大きな反応器の除熱をもたらすことが可能である。
【0045】
(例6)
これらの例は、4個、5個または6個の炭素を有するすべての可能な飽和炭化水素異性体を使用する、反応器の運転をモデル化している。計算は、前出の例の方法を使用した。すべての場合において、他の反応器の不活性物質分圧は、一貫した換気率を生じさせるために、305kPa以上に保持されている。他の不活性物質は、純粋な窒素としてモデル化した。表6および
図3は、この計算の結果を示している。
【表6】
【0046】
これらの例は、2,2−ジメチルプロパンが、発熱重合反応器から除熱できる度合いが大きいことを示している。
そうではないとの記載がない限り、「から本質的になる」および「から本質的になっている」という語句は、当該のステップ、要素または材料が、本発明の基礎をなす新規な特徴に影響せず、さらに、これらの語句は、使用された要素および材料に通常伴われる不純物および相違点も排除しない限り、本明細書において明示的に言及されているか否かにかかわらず、他のステップ、要素または材料の存在を排除しない。
【0047】
簡潔性を期するために、特定の範囲のみが本明細書において明示的に開示されている。しかしながら、任意の下限からの範囲は、明示的に記載されていない範囲を記載するために任意の上限と組み合わせることが可能であり、さらには、任意の下限からの範囲は、明示的に記載されていない範囲を記載するために任意の他の下限と組み合わせることが可能であり、同じように、任意の上限からの範囲は、明示的に記載されていない範囲を記載するために、任意の他の上限と組み合わせることが可能である。さらに、1つの範囲は、明示的に記載されていなかったとしても、当該範囲の終点と終点との間にあるすべての点または個別の値を含む。したがって、すべての点または個別の値はそれ自体が、明示的に記載されていない範囲を記載するために任意の他の点もしくは個別の値または任意の他の下限もしくは上限と組み合わされた下限または上限として作用し得る。
【0048】
すべての優先権書類は、そのような組込みが許されるすべての管轄において、そのような開示が本発明の記述と整合する限り、参照により本明細書に完全に組み込まれる。さらに、試験手順、公報、特許、学術雑誌論文等を含む本明細書において引用されたすべての文献および参考資料は、そのような組込みが許されるすべての管轄において、そのような開示が本発明の記述と整合する限り、参照により本明細書に完全に組み込まれる。
本発明は、いくつかの実施形態および例に関して記述されてきたが、本開示の利益を受ける当業者ならば、本明細書において開示された本発明の範囲および趣旨から逸脱しない他の実施形態も考案され得ることを理解されよう。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕重合可能な条件下で1種または複数のモノマー、少なくとも1種の触媒系、および、大部分を占めている2,2−ジメチルプロパンを含む
凝縮剤を接触させて、ポリオレフィンポリマーを製造することを含む、重合方法であって、ポリオレフィンポリマーの製造速度が、別のC
4−C
8凝縮剤によって重合させる同じ方法より少なくとも20%速い、方法。
〔2〕重合可能な条件下で1種または複数のモノマー、少なくとも1種の触媒系、および、2,2−ジメチルプロパンと少なくとも別のC
4−C
8凝縮剤との混合物を含む
凝縮剤を接触させて、ポリオレフィンポリマーを製造することを含む、重合方法。
〔3〕ポリオレフィンポリマーの製造速度が、2,2−ジメチルプロパンを実質的に用いないで重合させる同じ方法より少なくとも20%速い、前記〔2〕に記載の方法。
〔4〕ポリオレフィンポリマーの製造速度が、別のC
4−C
8凝縮剤によって重合させる同じ方法より少なくとも25%速い、前記〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載の方法。
〔5〕ポリオレフィンポリマーの製造速度が、別のC
4−C
8凝縮剤によって重合させる同じ方法より少なくとも30%速い、前記〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載の方法。
〔6〕C
4−C
8凝縮剤が、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンまたはこれらの混合物を含む、前記〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載の方法。
〔7〕C
4−C
8凝縮剤が、イソペンタンである、前記〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載の方法。
〔8〕2,2−ジメチルプロパン対C
4−C
8凝縮剤の比が、50:50以上である、前記〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載の方法。
〔9〕2,2−ジメチルプロパン対C
4−C
8凝縮剤の比が、65:35以上である、前記〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載の方法。
〔10〕2,2−ジメチルプロパン対C
4−C
8凝縮剤の比が、85:15以上である、前記〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載の方法。
〔11〕
凝縮剤が、2,2−ジメチルプロパンから本質的になる、前記〔1〕から〔10〕のいずれか1項に記載の方法。
〔12〕ポリオレフィンポリマーが、エチレンとC
3−C
12α−オレフィンとのコポリマーである、前記〔1〕から〔11〕のいずれか1項に記載の方法。
〔13〕ポリオレフィンポリマーが、エチレンとC
4−C
8α−オレフィンとのコポリマーである、前記〔1〕から〔12〕のいずれか1項に記載の方法。
〔14〕ポリオレフィンポリマーが、0.905g/cm
3〜0.918g/cm
3の密度を有する、前記〔1〕から〔13〕のいずれか1項に記載の方法。
〔15〕ポリオレフィンポリマーが、15g/10分〜100g/10分のメルトインデックス(I
2.16)(ASTM D1238)を有する、前記〔1〕から〔14〕のいずれか1項に記載の方法。
〔16〕少なくとも1種の触媒系が、チーグラー−ナッタ触媒、クロム、酸化クロム、AlCl
3、コバルト、鉄、パラジウム、バナジウム、メタロセン触媒またはこれらの混合物を含む、前記〔1〕から〔15〕のいずれか1項に記載の方法。
〔17〕ポリオレフィンポリマーが、0.910g/cm
3〜0.915g/cm
3の密度を有する、前記〔1〕から〔16〕のいずれか1項に記載の方法。