(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621850
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】有機発光ダイオード用チエノチオフェンホウ素(電子供与体−受容体)系材料
(51)【国際特許分類】
C07F 5/02 20060101AFI20191209BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20191209BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
C07F5/02 CCSP
C09K11/06 690
H05B33/14 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-562142(P2017-562142)
(86)(22)【出願日】2015年2月20日
(65)【公表番号】特表2018-508576(P2018-508576A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】IB2015051306
(87)【国際公開番号】WO2016132180
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2018年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】517291896
【氏名又は名称】トゥビタック
(74)【代理人】
【識別番号】100138760
【弁理士】
【氏名又は名称】森 智香子
(72)【発明者】
【氏名】ウストゥルク、トゥラン
(72)【発明者】
【氏名】テキン、エミネ
(72)【発明者】
【氏名】ピラビディリ ムジュル、セリン
(72)【発明者】
【氏名】ゴーレン、アーメット セイラン
(72)【発明者】
【氏名】ターコルー、ギュルシェン
(72)【発明者】
【氏名】チナル、メフメット エミーン
(72)【発明者】
【氏名】ブイルック、アリ
【審査官】
石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2018−507258(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/173396(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/067614(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第103896973(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)に示す化合物。
【化1】
【化2】
式中、R1、R2およびR3は、独立してまたは等しく、1原子〜100原子
の基であって、これらは、等しくまたは独立して、
分岐または非分岐アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アミン、エステル、炭酸エステル、カルボニル、スルフィド、オルガノシランおよびチオレートを含む基の1つまたは1つ以上を有してよい
。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物を含む配合物。
【請求項3】
電子、光学、電気光学、エレクトロルミネセンスまたは光ルミネセンス成分またはデバイスにおける電荷輸送、導電、半導電、光導電または発光材料として、請求項1に記載される化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造を有するチエノチオフェンおよびホウ素誘導体に関する。それらは、有機発光ダイオード(OLED)への適用の可能性を有する。
【背景技術】
【0002】
有機電子および光電子材料は、50年を超えてますます多くの、特に物理学および化学研究者達の注目を集めている。その主な理由は、有機化合物の化学構造を変更する可能性がより高いからである。したがって、材料の特性に直接影響を及ぼすことができる。1980年代半ばまでは、有機材料から製造したデバイスの安定性および性能は、シリコンまたは砒素ガリウムなどの材料に基づくデバイスには及ばなかった。これが、低電圧で効率的な薄膜発光ダイオードの出現により変化した。薄膜発光ダイオードは、電子および光電子デバイスの新世代に有機薄膜を使用する可能性を提供した。有機薄膜は様々な用途において有用であり、有機発光デバイス(OLED)は最も成功したものであることが今では証明されており、現在フルカラーディスプレイに使用されている。
【0003】
一般に、有機材料の2つのグループ、低分子およびポリマーは電子および光電子デバイスに使用され、両方は溶液から処理することができ、デバイスの低コスト製造を可能にしている。低分子およびポリマーのエレクトロルミネセンスデバイスは、例えば、C.W.Tang,Appl.Phys.Letters,1987,51,913−915;J. H.Burroughes,Nature,1990,347,539;US6727008,US7133032,WO2007/134280A1;US2005/01184A1;WO90/13148;US005399502;US4356429に記載されている。
【0004】
高性能な光学および電子有機デバイスを設計するには、それらの電子構造を理解することが必要であり、有機材料の構造または組成における何らかのわずかな調整でさえ、その本来の特性を大きく変えることができる。光電子特性を調整するために共役有機材料の構造を変更することは、困難なテーマである。チオフェン系有機材料は、適切な分子工学によって調整可能な機能特性を有する最も有望な化合物に含まれる。例えば、オリゴチオフェンを対応するオリゴチオフェン−S,S−ジオキシドに変換することは、薄膜光ルミネセンス効率および分子エネルギーレベルの両方を増加させることに有用であることを示している。
【0005】
近年、ホウ素が有機電子および光電子材料の特性を変えるために適用されており、興味深い結果を示した。ホウ素が3つの結合をつくる際に強力な電子求引原子として作用するホウ素の空のp
z軌道の存在が、特性を変える主な理由である。空のp
z軌道は、「π」系に組み込まれる際に電子を強力に非局在化させる。共役オルガノボランは、今では電子機器、光電子回路およびセンサーにおいて広く適用される新たな種類の有機材料とみなされている。
【0006】
チオフェン、チオフェン誘導体およびホウ素などの異なる機能的な基礎的構成要素の組み合わせを有する材料は、単一の活性分子材料から明るい白色光を発する傾向がある(M. Mazzeo,Adv.Mater.2005,17,34)。AIE(凝集誘起発光)の性質と、テトラフェニルエチレンおよびトリフェニルアミンを含んだ材料の正孔輸送能は、単純構造で低コストであるが良好な動作を有するOLEDデバイスの製造を可能にした(Tang Z.B.Adv.Mater.2010,22,19)。本質的に電子不足基であるジメシチルボリルを組み込んだAIE−活性材料により、発光体の二機能材料およびOLEDにおける電子伝達層として同時に機能することが可能になる(Tang Z.B.Adv.Functional Mater.2014,24,3611−3630)。このように、有機発光ダイオード用の様々な発光を得るために、チオフェン、チオフェン誘導体およびホウ素を有する材料を開発することは望ましいであろう。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、有機発光材料、すなわち有機発光ダイオード(OLED)として用いられる際に有用な化合物を開示する。これらの化合物は、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機光起電ダイオード等などの電子デバイスにおいて電荷輸送材料として用いられる可能性を有する。本発明は、式(I)を有する化合物を開示する。
【0010】
式中、R
1、R
2およびR
3は、独立してまたは等しく、約1原子〜100原子の原子鎖/基である。これらは、等しくまたは独立して、分岐または非分岐アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アミン、エステル、炭酸エステル、カルボニル、スルフィド、オルガノシランおよびチオレートを含む基の1つまたは1つ以上を有してよい。
【0012】
チエノチオフェンI(TT)は、文献の方法(T.Ozturk,et al.Tetrahedron,2005,61,11055;E.Ertas,et al.Tetrahedron Lett.2004,45,3405;I.Osken,Tetrahedron,2012,68,1216;P.Dundar,Synth.Met.2012,162,1010;I.Osken,Thin Solid Films,2011,519,7707;O.Sahin,Synth.Met.2011,161,183;O.Mert,J.Electroanal.Chem.2006,591,53;A.Capan,Macromolecules 2012,45,8228;I.Osken,Macromolecules 2013,46,9202)に従って合成された。TTs Iは、n−BuLiを用いるブロモ−TTs IIのリチウム化によって製造され、次にアリールジメトキシボランを加えた。
【実施例】
【0013】
【化4】
【0014】
4−(5−メシチル(メトキシ)ボラニル)−3−(4−メトキシフェニル)チエノ[3,2−b]チオフェン−2−イル)−N,N−ジフェニルアニリン(I)の 合成方法
【0015】
4−(3−(4−メトキシフェニル)チエノ[3,2−b]チオフェン−2−イル)−N,N−ジフェニルアニリン(123mg、240μmol)の乾燥THF(30mL)溶液に、n−BuLi(185μL,290μmol)を−78℃で窒素雰囲気下にて滴下添加した。反応混合物を、同じ温度で1時間撹拌した。次いでMesB(OMe)
2(51.0μL、240μmol)を−78℃で添加し、溶液を室温までゆっくりと加熱し、さらに12時間撹拌した。生成物を、ジクロロメタン(3×20mL)で抽出した。溶液をブラインおよびH
2Oで洗浄し、次にNaSO
4上で乾燥させた。大気下で溶媒を除去した後、粗生成物をn−ヘキサン/ジクロロメタン(6:1)の混合物を溶出液として使用し、シリカゲルに通すカラムクロマトグラフィーによって精製した。45%収率、R
f=0.85;M.p.179〜180
oC;
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ7.74(s,1H)、7.38(d,J=9.0Hz,2H)、7.26(t,J=8.0Hz,4H)、7.18(d,J=9.0Hz,2H)、7.11(d,J=7.5Hz,4H)、7.05(t,J=7.5Hz,2H)、6.92(dd,J=8.0,2.5Hz 4H)、6.82(s,2H)、3.83(s,3H)、2.32(s,3H)、2.10ppm(s,6H);
13C NMR(125MHz,CDCl
3):δ158.9、152.5、147.6、147.2、146.7、144.3、137.6、136.6、136.5、132.5、131.5、130.2、129.8、129.4、129.3、127.8、127.6、126.9、124.9、123.4、122.1、114.2、55.2、28.1、22.3で緑色固体物として生成物を得た。
【0016】
デバイス製造の実施例:有機発光デバイスを、分子を溶液から導電性基板上にコーティングすることによって製造した。分子(I)を、トルエン/ジクロロベンゼン(8mg/ml)の混合物中に溶解させた。ガラス上にコーティングされた(15Ω/sq.)酸化インジウムスズ(ITO)は、アノード電極として用いられた。正孔注入層としてPEDOT:PSSがITO上にスピンコーティングされ、110℃で10分間乾燥させた。続いて、活性層として分子膜がスピンコーティングによってコーティングされた。最後に、LiF(1nm)およびアルミニウム(Al、100nm)を真空下(約10
−6mbar)で熱蒸着技術により蒸着させ、カソード電極を取り付けた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】室温で、テトラヒドロフラン(THF)溶液における分子(I)のUV−Visスペクトルを示す。
【
図2】室温で、テトラヒドロフラン溶液(THF)におけるおよび(ITOコーティングガラス上)の固体状態における分子(I)の蛍光スペクトルを示す。
【
図3】a)分子(I)の製造デバイス(デバイス構成:PEDOT/分子(I
*)/LiF/Al)のエレクトロルミネセンススペクトル、b)異なる電圧での分子(I)の製造デバイスのCIE座標を示す。エレクトロルミネセンススペクトルは、400nm〜650nmのほとんどの領域をカバーする。色座標は、CIE1931色度図による青緑色の領域内である。
【
図4】OLEDデバイスの特徴:a)電圧−電流、b)輝度−電圧、c)発光効率−電流密度、d)外部量子効率−電流密度を示す。