(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の圧縮コイルが第1の遠位端を有し、前記第2の圧縮コイルが第2の遠位端を有し、前記第1の遠位端が前記第2の遠位端の遠位にある、請求項6に記載のカテーテル。
前記2個以上のワッシャの各々の前記2個の軸外管腔のそれぞれが、前記偏向可能な中間区域の対応の軸外管腔の中心と軸方向に一直線である、請求項1に記載のカテーテル。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、本発明のカテーテル10は、近位端及び遠位端を有する細長いカテーテル本体12と、カテーテル本体の遠位端にある偏向可能な遠位区域14と、カテーテル本体の近位端にある制御ハンドル16と、を備える。カテーテルはまた、遠位区域14の遠位端においてコネクタ区域15に取り付けられる遠位アセンブリ17を含む。遠位アセンブリは、マッピング及び/又はアブレーションに適した複数の電極27を備える。
【0015】
図2及び2Aを参照すると、カテーテル本体12は、単一の軸方向又は中央管腔18を有する細長い管状構成体を含む。カテーテル本体12は可撓性であり、すなわち屈曲可能であるが、その長さに沿って実質的に圧縮不能である。カテーテル本体12は、任意の適当な構造のものでよく、任意の適当な材料で形成することができる。開示された実施形態では、カテーテル本体は、少なくとも外壁20(例えば、PEBAX製又はPellethane製)を備える。外壁20は、カテーテル本体12のねじり剛性を高めるためにステンレス鋼などの包埋された編組メッシュなどを含んでよく、このため制御ハンドル16が回転させられると、カテーテル本体12がこれに対応して回転する。
【0016】
カテーテル本体12の外径はそれほど重要ではないが、約2.1又は2.4mm(約7又は8フレンチ)であってよい。同様に、外壁20の厚さもそれほど重要ではないが、外壁20は、中央管腔18が牽引ワイヤ、多数のリード線、ケーブル、及び/又は管を含む部品を収容できるように充分に薄い。所望に応じて、外壁20の内側表面は、(例えば、ポリイミド製の)補強管(図示なし)で裏打ちされて、改善されたねじり安定性をもたらし、牽引ワイヤの張力がカテーテル本体を圧縮させるカテーテルの偏向中にシャフトが波打つ程度を減じてよい。
【0017】
図3及び3Aを参照すると、偏向可能な遠位区域14は、それぞれ牽引ワイヤに使用される、少なくとも第1及び第2の軸外の直径方向反対側にある管腔30及び31などを含む複数の管腔を有する、管22の短い区域を備える。図示した実施形態では、少なくとも第3の軸外管腔32及び第4の軸外管腔33も存在し、管腔33は、位置センサー34に接続されるケーブル36に使用され、管腔32は、遠位アセンブリ17上又は遠位アセンブリ17の付近に担持される電極27に接続されるリード線35に使用される。必要に応じて、遠位アセンブリに洗浄液を輸送する洗浄管など、追加の管腔を設けてよい。管22は、好ましくは、カテーテル本体12よりも可撓性である、好適な非毒性材料で作製される。管22に好適な材料の1つは、編組ポリウレタン、すなわち、編組ステンレス鋼などの埋込みメッシュを有するポリウレタンである。各管腔の寸法はそれほど重要ではないが、リード線、牽引ワイヤ、ケーブル、及び管など対応の部品を収容するのに十分である。
【0018】
カテーテル本体12の有効長さ、すなわち、遠位アセンブリ17を除く、身体内に挿入することができる部分は、必要に応じて変化させることができる。一実施形態では、有効長さは、約110cm〜約120cmの範囲である。遠位区域14の長さは、有用な長さの比較的小さな部分であり、好ましくは約3.5cm〜約10cm、より好ましくは約5cm〜約6.5cmの範囲である。
【0019】
カテーテル本体12及び遠位区域14を結合するために、遠位区域14の管22の近位端は、カテーテル本体12の外壁22の遠位端の内周面を受容する、
図4に示すような、より小さい外周ノッチ26を備える。遠位区域14とカテーテル本体12とが重なる部分は、接着剤などで接着される。所望に応じて、スペーサ(図示せず)を、カテーテル本体内の、補強管の遠位端(提供される場合)と遠位区域の近位端との間に配置できる。このスペーサは、カテーテル本体と遠位区域との間の接合部において可撓性の変化をもたらし、これにより接合部が折り畳まれる又はよじれることなく滑らかに曲がることが可能になる。このようなスペーサを有するカテーテルは、米国特許第5,964,757号に開示され、この開示は参考として本明細書に組み込まれる。
【0020】
図3に示すように、コネクタ区域15は、位置センサー34を収容し、遠位アセンブリ17の近位端を固定する中央管腔19を備える、短い円筒部材、つまり管23を有する。管23は、任意の好適な材料、例えば、PEEKで構成されてよい。遠位区域14及びコネクタ区域15を結合するために、偏向可能な区域14の管22の遠位端は、円筒形部材23の近位端の内周面を受容する、
図4に示すような、より小さい外周ノッチ28を備える。管22及び23の重なり合う端部は、接着剤などで接着される。
【0021】
カテーテル本体12及び遠位アセンブリ17を操作するためにカテーテル本体12に沿って偏向を達成するために、牽引ワイヤ24は、制御ハンドル16を通って延在し、カテーテル本体12の全体を通って延在する(
図2)。本発明の特徴によると、牽引ワイヤは、両方向性偏向、つまり、
図1に示すように、遠位区域14の管22の第1の管腔30及び第2の管腔31によって画定される面内での反対方向へのカテーテルの両側に沿った偏向をもたらす、単一の連続引張部材である。
図5にも示すように、牽引ワイヤ24は、管腔30を通って延在する第1の長手方向近位部分24Aと、管腔31を通って延在する第2の長手方向近位部分24Bと、2つの反対側の屈曲部、つまり角部の間に形成されて約90度の角度を有する中間の短い部分24Mと、を有する。長手方向部分24A及び24Bは、カテーテルの長手方向軸と平行であり、短い部分24Mは、管22の遠位端において管腔30及び31にまたがるため、長手方向軸に対して概ね垂直である。牽引ワイヤ24の両近位端は、当業者に理解されるように、制御ハンドル16に固定される。カテーテルの片側に沿った一方向への偏向は、長い部分24A又は24Bのいずれか一方を近位に引き込むという、ユーザーによる制御ハンドル16上のアクチュエータ54(
図1)の操作によって実現する。この点において、各長い部分は、中央管腔18を通ってカテーテル本体12の近位端から遠位区域14の対応の管腔30又は31(
図3A)へと延在し、遠位区域14の管22の長さに沿って、所定の遠位位置A及びB(
図1)を終点とする、対応の圧縮コイル25A、25B(
図2)によって包囲されている。牽引ワイヤ24は、ステンレス鋼又はニチノールなどの任意の好適な金属で作製される。引込線64は、好ましくは、約0.006インチ〜約0.010インチ(約0.015cm〜約0.025cm)の範囲の直径を有する。
【0022】
各圧縮コイル25A、25Bは、任意の好適な金属、好ましくはステンレス鋼で作製される。圧縮コイルは、可撓性、すなわち曲げをもたらすが、圧縮力には抵抗するように、圧縮コイル自体に緊密に巻かれている。圧縮コイルの内径は、引っ張りワイヤの直径よりもわずかに大きいことが好ましい。牽引ワイヤ24をコーティングするTeflon(登録商標)は、牽引ワイヤ24が、圧縮コイル内を自由に摺動できるようにする。各圧縮コイル25A及び25Bの外側表面は、例えばポリイミド管材で作製される、可撓性の非導電性シース29A及び29B(
図2)によって被覆される。
【0023】
各圧縮コイルは可撓性であるが、圧縮力には抵抗するため、その遠位端は、対応の牽引ワイヤの偏向を開始する所望の位置として機能する。各牽引ワイヤの開始位置は、カテーテルの長手方向軸に沿って互いに同じであってよく、又は、その位置は、各牽引ワイヤ若しくは牽引ワイヤ部分(本明細書では同義に使用される)で異なってもよい。
図1及び2に図示した実施形態では、位置A及びBのいずれも概ね偏向可能な区域14の遠位端と近位端との間であり、位置Aは位置Bよりも遠位であり、このため、大きい、つまり緩やかな偏向DBを有する短い圧縮コイル24Aを備える長手方向部分24Bの側に対して、長い圧縮コイル25Aを備える長手方向部分24Aの側で、小さい、つまりきつい偏向DAを有するカテーテルとなる。
図1に示すように、偏向DAは、明確な半径を備える小さい曲線を有し、偏向DBは、明確な半径を備える大きい曲線を有する。
【0024】
圧縮コイルは、その近位端において、近位接着部によってカテーテル本体12の補強材21に固定され、管腔30及び31の対応の遠位端において遠位接着部によって固定される。どちらの接着部も、好ましくはポリウレタン接着剤などを含む。この接着剤は、注射器などの手段によって、カテーテル本体の管及び偏向可能な遠位部分14に形成された孔から適用されてよい。かかる孔は、例えば、永続的な孔を形成するために十分に加熱された、管壁を穿孔する針などにより形成されてよい。次に、接着剤は、孔から圧縮コイルの外側面に注入され、外周部の周囲に広がって、各圧縮コイルの全周の周りに接着部を形成する。
【0025】
本発明の別の特徴として、少なくとも1個の牽引ワイヤの張力緩和用圧縮ワッシャ38が管22の遠位端に設けられて、中間部分24Mを固定する。
図5に最も見やすく図示しているように、ワッシャ38は、遠位区域14の第1の管腔30及び第2の管腔31の中心とそれぞれ軸方向に一直線である、少なくとも2個の貫通孔40及び41を備えて形成される。孔40、41のそれぞれの直径は、牽引ワイヤの直交直径よりも最大約14%大きくてよい。偏向中、1つの長い牽引ワイヤ部分24A又は24Bは張力を受け、ワッシャ38は、制御ハンドル16に収容される偏向機構によって付与される牽引ワイヤの張力により、遠位部分14の管22の柔らかいエラストマー製の遠位端に対して圧縮される。ワッシャ孔40及び41は、管腔30及び31と一直線上にあるため、各長手方向部分24A及び24Bへの力ベクトルは、管腔30及び31に直接配向され、長手方向部分24A及び24Bは、偏向中に引張応力負荷のみを受ける。この特徴は、より良好な先端偏向特性をもたらし、過去の両方向性偏向構造に伴う、歪んだ、面外偏向を減じる。ワッシャ38は、ステンレス鋼、ニチノール、又はチタンを含む、任意の好適な材料で作製されてよい。
【0026】
ワッシャ38は、その外周縁部にタブ56を有してよい。ワッシャは、単一の酸エッチングシートから大量に作製され、したがって、タブ56は、製造プロセス中にワッシャを固定するために使用される機構である。
【0027】
図3及び5に図示した実施形態では、第2の牽引ワイヤの張力緩和用圧縮ワッシャ39は、ワッシャ38に直接隣接して、遠位に設けられる。ワッシャ38及び39の構造及び構成は、互いに対して概ね同一である。単一又は任意の複数のワッシャを使用して所望の最適な厚さを提供し、牽引ワイヤによる偏向中に、管22の遠位先端部の偏向を最小限に抑えるか、防止してよい。
【0028】
図5を再び参照すると、単一の連続牽引ワイヤは予め屈曲して2個の90度の屈曲部を備えており、24A、24B、及び24Mの各部分を形成する。長手方向部分24A及び24Bは、それぞれワッシャ38及び39の孔40及び41並びに管22の管腔30及び31に入れられる。牽引ワイヤの断面、つまり厚さに対してワッシャ孔40と41との間に高い耐性を備える2個の90度の屈曲部は、遠位区域14の管22に対して牽引ワイヤを定位置に固定し、アクチュエータ及び偏向機構から張力が印加された場合に偏向したり、ワッシャにおける90度の屈曲部で滑動したりしないようにする。
【0029】
図3を参照すると、管22の遠位端の上を滑動するコネクタ区域15の管23の近位端はワッシャ38及び39を被覆し、2液性ポリウレタンなど弾力性接着剤によって管22の遠位ノッチ端部28に接着される。コネクタ区域15の管23の中央管腔19は、任意の好適な接着剤容積47、例えば、エポキシによってその内部に埋め込まれる様々な部品によって占められる。図示した実施形態では、埋め込まれる部品としては、遠位アセンブリ17の支持部材50の近位端部分58、遠位アセンブリ17上の電極27のリード線35の非導電性移行管44、センサーケーブル36の遠位端から延在する位置センサー34が挙げられる。位置センサー34は、少なくとも1個の検出コイルと、コイルのハウジング(いずれも図示なし)を備える。今度はハウジングが、有利に熱収縮性カバー又は管45(
図3Bに最も見やすく示される)に入れられて、コイルを接着剤47から分離する。したがって、支持部材50に作用する、ねじり及び/又は軸引張力/圧縮力から接着容積47に伝わる任意の応力は、センサーが接着剤容積47に直接接着されていないため、センサー34から分離される。センサーハウジングの応力亀裂を防止するために、接着剤ベースのセンサーハウジング及び接着剤の膨張係数が一致する必要はない。
【0030】
カテーテル10に担持される電極27に接続されるリード線35は、制御ハンドル16から、
図2及び2Aに示すように、カテーテル本体12の中央管腔18を貫通する、非導電性管37を貫通する。次に、リード線35は、偏向可能な区域14の第3の管腔32を貫通し、ワッシャ38及び39のそれぞれに形成された第3の貫通孔43を貫通する。次に、リード線37は、コネクタ区域15を通って延在する、例えば、ポリイミド製の非導電性管44を貫通する。管44は、コネクタ区域15の近位端の近位に短い距離にわたって延在する近位端と、コネクタ区域15の遠位端に概ね隣接する遠位端と、を有する。ワッシャ孔43は、偏向可能な遠位部分14の管腔33と軸方向に一直線である。
【0031】
センサーケーブル36はセンサー34の近位端から延在し、ワッシャ38及び39に形成された第4の軸外貫通孔44、偏向可能な遠位部分15の第4の管腔34、カテーテル本体12の中央管腔18を貫通して、制御ハンドル16に入る。非導電性管46は、コネクタ区域15を通って延在するセンサーケーブルの一部を包囲する。例えば、ポリイミド製の管46は、コネクタ区域15の近位端の近位に短い距離にわたって延在する近位端と、センサー34の近位端に隣接する遠位端と、を有する。
【0032】
図3及び6に図示したように、遠位アセンブリ17は、支持部材50と、非導電性カバー52と、複数の環電極27と、を含む管状構造を備える。開示した実施形態では、遠位アセンブリ17は、コネクタ区域15から軸方向に延在する、概ね直線状の近位部分58と、部分58の遠位にあり、近位部分58から約90度で延在する概ね直線状の部分59と、概ね円形の主要領域60と、を備える。部分59及び60のいずれも、部分58及びコネクタ区域15を概ね横断している。
図7に示すように、近位領域58(Xで示す)は、概ね円形の主要領域60の中心を概ね外れている。近位領域58は、約3mm〜約12mm、より好ましくは約3mm〜約8mm、更に好ましくは約5mmの範囲であるが、必要に応じて変えることができる、好ましくは露出した長さ、すなわち、コネクタ区域15内に含まれない、長さを有する。
【0033】
図7にも示すように、概ね円形の主要領域60は、少なくとも1個の360度の完全な円、より好ましくは1個以上のループ又は円、例えば、螺旋形又は円錐形を有するように、例えば、約720度の、内側ループ61と外側ループ62からなる2個のループ又は円を形成する。概ね円形の主要領域60は、カテーテル本体12及び偏向可能な遠位部分14を概ね横断しており、好ましくは、カテーテル本体と約80度〜約100度の範囲、より好ましくは約90度の角度を形成する。図示した実施形態では、ループ61及び62のいずれも、概ね共通の面内にある。しかし、ループ61及び62は、一方のループが他方のループよりも遠位にあって、遠位アセンブリが概ね螺旋形状を有するように配置されてよいことを理解されたい。概ね円形の主要領域59は、好ましくは約10mm〜約40mm、より好ましくは約10mm〜約35mm、更により好ましくは約12mm〜約25mmの範囲、更に一層好ましくは約20mmの外径を有する。領域58、59、及び60を含む、近位端から遠位先端部までの露出した遠位アセンブリ17の長さ(直線状に置かれた場合)は、約2.2〜6.2インチ、より好ましくは約3.6〜5.4インチ、更により好ましくは約4.2〜4.9インチの範囲である。別の実施形態では、遠位アセンブリ17は、
図8に示すように、概ね円形の主要領域60から実質的に接線方向に延在する、概ね直線状の遠位領域64を更に備える。領域64は、約2.0mm〜約18.0mmの範囲、より好ましくは約4.0mm及び10.0mmの長さを有してよい。
【0034】
図3に示すように、支柱、つまり支持部材50は細長く、遠位アセンブリ17の少なくとも全長を通って延在して、その形状及び構造をもたらす。支持部材は、形状記憶性を有する材料、すなわち、力を加えると、その本来の形状から離れて伸張させるか又は屈曲させることが可能であり、かつ力を取り除くと、実質的に本来の形状に戻ることが可能である材料で作製される。支持部材に好適な材料は、ニッケル/チタン合金である。このような合金は、典型的には、約55%のニッケルと45%のチタンを含むが、約54%〜約57%のニッケルと、チタンである残部を含んでもよい。好適なニッケル/チタン合金は、耐久性、強度、耐食性、電気抵抗、及び温度安定性とともに、優れた形状記憶性を有する、ニチノールである。
【0035】
支持部材50は、遠位アセンブリ17の近位にある近位端70を有する。この近位端は、コネクタ区域15の接着剤容積に受容され、固定される。本発明の別の特徴によると、支持部材50の近位端70の近位部分は平坦であり、例えば、凸凹領域72(
図9A及び9Bを参照)を備える、格子状又は鋸歯状の表面など不均一な表面で鋸歯状であって、円形断面を有する牽引ワイヤのねじり降伏強さ以上の接着接合部のためにより大きい不規則な接着表面をもたらす。近位端70において断面形状を(例えば、円形形状からより楕円形状又は方形形状へ)変更し、表面の質感を(例えば、概ね滑面から粗面又は不均一面へ)変更すると、コネクタ区域15の接着剤容積47に埋め込まれた支持部材50の近位端70の引張り又は回転/スピンに対して優れた抵抗力をもたらす。
【0036】
支持部材50及び環電極27用のリード線35など遠位アセンブリ17の他の部品を被覆する押出非導電性カバー52は、任意の好適な材料で作製されてよく、好ましくは、生体適合性の押出プラスチック、例えば、ポリウレタン又はPEBAX 25〜35 Dショア硬さで作製される。本発明の別の特徴によると、カバー52は、少なくとも2個の管腔53及び54と共に形成され、支持部材50が管腔53を通って延在し、リード線35が管腔54を通って延在する。支持部材50用の管腔53は、軸外であり、支持部材が領域60の湾曲部をより良好に支持できるように、概ね円形の領域60の内周側にあってよい。管腔53及びその直径はまた、支持部材50の周囲にぴったりはまるか、摩擦嵌合する特定の寸法に形成されて、マッピング又はアブレーション処置中の支持部材50とカバー52との間の自由な動き又は微小移動を最小限に抑えるか、防止する。カバー52のプラスチック材は、熱処理を要せずに、支持部材50の形状に有利に適合する。これは、機械的バリアをもたらし、リード線35と支持部材50とを電気的に絶縁する。カバー52は、遠位アセンブリ17の遠位先端部からポリウレタンなど好適な生体適合性材料で構成されたドーム74で封止されるコネクタ区域15の遠位端付近まで延在する。遠位アセンブリ17の遠位先端部は、ポリウレタンなど好適な生体適合性材料で構成された第2のドーム80によって封止されて、遠位アセンブリの無傷先端部を形成する。支持部材の遠位端は、例えば、ポリイミド製の短い管82で包囲されており、ドーム80を結合及び固定する。ドーム80を形成する材料は、管82の管腔の内側及び管82の背後から注入されて、ドーム80の分離を防止してよい。
【0037】
遠位アセンブリ17は、カバー52上で環電極を含む一連の電極27を担持する。環電極は、互いに等距離離れて配置されるか、又は対で近接配置されてよい。本明細書で使用する用語「環電極対」は、他の隣接する環電極に対してよりも、互いにより近くに配置される環電極対を指す。好ましくは、電極対の2個の電極27の間の距離は、約3mm未満、より好ましくは約2mm未満、更に好ましくは約0.5mm〜約1.5mmである。電極の数は所望に応じて変化してよく、好ましくは約12個〜28個の環電極の範囲、より好ましくは約20個の環電極である。
【0038】
一実施形態では、より大きい幅を有する最遠位の環電極を除いて、各電極の幅は概ね同一である。より幅広の環電極は、X線透視下でカテーテルを見る場合に遠位先端部の位置をユーザーに伝える視覚的信号を提供する。具体的には、マッピングアセンブリは概ね円形であるために、いずれの電極が心臓内の特定の場所に置かれているかをユーザーが判定することは困難であり得る。最遠位の環電極など1個の環電極を他の環電極とは異なる寸法に形成することにより、ユーザーは、X線透視下でカテーテルを見る場合の基準点を有する。
【0039】
環電極の寸法及び数にかかわらず、電極対は、好ましくは概ね円形の主要領域60の周囲に均等に離隔される。近接配置された電極対により、心房細動治療を試みる際に非常に重要である、遠距離場の心房信号に対する近距離場の肺静脈電位の検出の精度を向上できる。具体的には、近距離場の肺静脈電位は極めて小さい信号であり、一方で心房は、肺静脈に極めて近接する場所にあり、遙かに大きい信号を提供する。したがって、遠位アセンブリが、マッピングのために肺静脈内に配置される場合であっても、信号が、(肺静脈からの)小さい、近接する電位か、(心房からの)より大きい、より遠方の電位のいずれであるかを、医師が判定することは、困難であり得る。近接配置される双極子により、医師は、近接する信号又は遠方の信号のいずれを検査しているかを、より正確に判定することが可能になる。したがって、近接配置される電極を有することによって、肺動脈電位を有する心筋組織の場所を、正確に標的とすることが可能であるため、臨床医は、特定の組織に治療を施すことが可能になる。更には、近接配置される電極により、医師は、電気信号によって、心門の正確な解剖学的場所を判定することが可能になる。しかし、環電極は、単極容量又は双極容量のいずれかで機能するように構成されてよいことを理解されたい。
【0040】
多数、例えば約2〜26個、より好ましくは約20個の環電極は、アブレーションアセンブリ17の概ね円形の主要領域60の非導電性カバー52に取り付けられる。かかる環電極は、例えば、マッピング及び/又はアブレーション用に望ましくてよい。かかる環電極を含むカテーテルの説明は、米国特許出願第09/551,467号、表題「Catheter Having Mapping Assembly」に記載されており、この開示全体は参考として本明細書に組み込まれる。所望に応じて、遠位アセンブリ17及び/又は遠位部分14に沿った他の場所に追加の環電極(図示なし)を取り付けてよい。
図6の図示した実施形態では、環電極27Aは、コネクタ区域15の遠位端又はその付近に取り付けられ、環電極27Bは、コネクタ区域15の近位端又はその付近に取り付けられる。
【0041】
環電極へのリード線の接続は、好ましくは、環電極が取り付けられる管の壁を貫通する孔を最初に形成することにより達成される。次に、リード線が孔を通って引き込まれる。次に、リード線の端部からコーティングを全て剥ぎ取り、環電極の下面にはんだ付けするか、溶接した後、孔を覆う定位置へと環電極を滑動させ、ポリウレタン接着剤などによって定着させる。したがって、遠位アセンブリ17に担持される各環電極27について、対応の孔85(
図6Aを参照)が、対応のリード線35が通って延在する管腔54に通じるカバー52の壁を貫通して形成される。遠位アセンブリ17の近位に担持される環電極27A及び27Bについては、これらのリード線40が、センサーケーブル36と並行して、管腔33を通って延在する。環電極27Bについては、対応のリード線が通って延在するコネクタ区域15の中央管腔19に通じる管23の壁を貫通して孔87(図示なし)が形成される。環電極27Aについては、対応のリード線が通って延在する管腔32に通じる偏向可能な区域14の管22の壁を貫通して孔84(
図3Aを参照)が形成される。各電極のリード線35の近位端は、制御ハンドル16の近位端において好適なコネクタ(図示なし)に接続される。このコネクタは、例えば、高周波(RF)エネルギーなど好適なアブレーションエネルギーの電源(図示なし)に接続される。
【0042】
使用する際、好適な誘導シースが患者に挿入され、マッピング及び/又はアブレーションでの所望の位置に遠位端が位置付けられる。本発明と共に使用するのに好適な誘導シースの一例は、Biosense Webster,Inc.社(Diamond Bar,Calif.)より市販されるPreface(商標)Braiding Guiding Sheathである。シースの遠位端は、関心領域、例えば、患者の心臓の心房の1つに誘導される。本発明に従うカテーテルは、その遠位端が誘導シースの遠位端から延在するまで、誘導シースから提供される。カテーテルが誘導シースを通じて送られる際、遠位アセンブリ17はシースを通り抜けるようにまっすぐにされる。カテーテルの遠位端が所望の位置に位置付けられると、誘導シースは近位に引っ張られ、偏向可能な遠位部分14及び遠位アセンブリ17が、シースの外側に延在することが可能になり、遠位アセンブリ17は、その本来の形状に戻る。次に、遠位アセンブリ17は、アセンブリ17の概ね円形の主要領域60の各ループの外周が管状領域の内側の対応の円周に接触するように、肺静脈又は他の管状領域(冠静脈洞、上大静脈、又は下大静脈など)内に挿入される。
【0043】
遠位アセンブリ17の円形配置は、管状領域の所望の位置に環電極27を保持するための安定した機構をもたらす。ユーザーは、制御ハンドル16を回転させることにより遠位アセンブリ17を回転させて、各外周に沿って隣接点と接触するように電極を移動させることができる。遠位アセンブリの設計により、ユーザーは、特に距離と共に管状領域の直径又は寸法が減少する場合、環電極と、管状領域の異なる外周に沿った組織との同時接触をより容易に実現できる。本発明のカテーテルは、2つの目的を兼ねた設計を有する。心臓壁の大部分は、心臓壁と接触する遠位アセンブリのループの大部分を使用して、迅速にマッピングされ得る(高密度マッピング)。外径が患者の身体構造に合った適切な寸法であれば、各ループの外周が動脈壁と接触する肺動脈のマッピングにもカテーテルを使用できる。
【0044】
当業者に認識されるように、遠位アセンブリは、先端部が押されるのではなく、引かれる方向により容易に回転する。例えば、アセンブリ17が反時計方向に形成される(制御ハンドル16から遠位に見る場合)本明細書に記載の実施形態では、アセンブリを反時計方向に回転することが望ましい。したがって、所望に応じて、矢印又は他の標識(図示なし)をカテーテル本体のハンドル又は近位端に含めて、患者の身体内でアセンブリ17を回転させる好ましい方向をユーザーに指示できる。
【0045】
かかる実施形態に好適な制御ハンドルを備える、両方向性偏向カテーテルの好適な設計は、例えば、米国特許第6,123,699号、同第6,171,277号、同第6,183,435号、同第6,183,463号、同第6,198,974号、同第6,210,407号、及び同第6,267,746号に記載されており、これらの開示全体は参考として本明細書に組み込まれる。
【0046】
あるいは、第2の牽引ワイヤ(図示なし)を含めて、遠位アセンブリ17の概ね円形の領域60の直径又は寸法を変化させるか、縮小させることができる。かかる配置は、米国特許第5,626,136号に概ね記載されており、この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる。上記の制御ハンドルは、第2の牽引ワイヤの操作に使用されてよい。
【0047】
上記の説明文は、現時点における本発明の好ましい実施形態に基づいて示したものである。当業者であれば、本発明の原理、趣旨及び範囲を大きく逸脱することなく、本願に述べた構造の改変及び変更を実施することが可能であることは認識されるところであろう。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、任意の他の実施形態の任意の他の特徴に加えて、又はその代わりに、任意の実施形態の任意の特徴を組み込むことができることを理解されたい。
【0048】
したがって、上記の説明は、添付図面で説明及び図示した厳密な構造のみに関するものとして読まれるべきではなく、むしろ、以下の特許請求の範囲と一致し、かつそれを支持するものとして読まれるべきであり、この特許請求の範囲が完全かつ公正な範囲を有することになる。
【0049】
〔実施の態様〕
(1) 内部を通って延在する少なくとも1個の管腔を備える、細長い管状のカテーテル本体と、
近位端及び遠位端、及び内部を通って延在する少なくとも2個の軸外管腔を有する偏向可能な中間区域であって、前記偏向可能な中間区域の前記近位端が前記カテーテル本体の遠位端に取り付けられている、偏向可能な中間区域と、
前記偏向可能な中間区域の遠位にある遠位アセンブリであって、
前記中間区域に取り付けられた概ね直線状の近位領域、及び前記近位領域を概ね横断し、前記近位領域の遠位にある概ね円形の主要領域を有する管状構造と、
前記遠位アセンブリを通って延在する、形状記憶性を有する細長い支持部材と、
前記遠位アセンブリの少なくとも前記主要領域を被覆する非導電性カバーと、
前記遠位アセンブリの前記概ね円形の主要領域に担持される少なくとも1個の電極と、を備える、遠位アセンブリと、
前記偏向可能な中間区域の遠位端にあり、少なくとも2個の軸外管腔を有し、それぞれが前記偏向可能な中間区域の対応の軸外管腔と軸方向に一直線である、少なくとも1個のワッシャと、
2つの近位部分及び前記2つの近位部分を横断する中間部分を有する牽引ワイヤであって、各遠位部分が前記偏向可能な中間区域の対応の軸外管腔及び前記ワッシャの対応の軸外管腔を通って延在し、前記中間部分が前記ワッシャの遠位にあって、前記ワッシャの前記2個の軸外管腔の間を延在する、牽引ワイヤと、
制御ハンドルに固定された前記牽引ワイヤの少なくとも1つの近位部分に作用して前記偏向可能な中間区域を偏向させるように構成される偏向機構を備える制御ハンドルと、を備える、カテーテル。
(2) 前記遠位アセンブリと前記偏向可能な中間区域との間にコネクタ区域を更に備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(3) 前記支持部材の近位端が、前記コネクタ区域で受容される、実施態様2に記載のカテーテル。
(4) 前記支持部材の近位端が、平坦である、実施態様1に記載のカテーテル。
(5) 前記支持部材の近位端が、不均一な表面を有する、実施態様1に記載のカテーテル。
【0050】
(6) 前記2つの近位牽引ワイヤ部分の1つを包囲する第1の圧縮コイルと、前記2つの近位牽引ワイヤ部分のもう1つを包囲する第2の圧縮コイルと、を更に備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(7) 前記第1の圧縮コイルが第1の遠位端を有し、前記第2の圧縮コイルが第2の遠位端を有し、前記第1の遠位端が前記第2の遠位端の遠位にある、実施態様6に記載のカテーテル。
(8) 前記コネクタ区域の内部が、結合剤で充填される、実施態様2に記載のカテーテル。
(9) 前記支持部材の近位端が、前記結合剤に埋め込まれる、実施態様8に記載のカテーテル。
(10) 前記結合剤に埋め込まれる位置センサーを更に含む、実施態様8に記載のカテーテル。
【0051】
(11) 前記位置センサーが、熱収縮管で包囲されている、実施態様10に記載のカテーテル。
(12) 前記支持部材及び前記支持部材を被覆する前記非導電性カバーが、摩擦嵌合を有する、実施態様1に記載のカテーテル。
(13) 前記非導電性カバーが、少なくとも2個の管腔を有し、前記支持部材が前記2個の管腔の1つを通って延在する、実施態様1に記載のカテーテル。
(14) 前記ワッシャの前記2個の軸外管腔のそれぞれが、前記偏向可能な区域の対応の軸外管腔の中心と軸方向に一直線である、実施態様1に記載のカテーテル。
(15) 前記概ね円形の主要領域が、少なくとも2個のループを有する、実施態様1に記載のカテーテル。
【0052】
(16) 前記複数の電極が、約2〜24個の範囲である、実施態様1に記載のカテーテル。
(17) 前記複数の電極が、約20個である、実施態様1に記載のカテーテル。
(18) 前記偏向可能な区域に担持される少なくとも1個の電極を更に備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(19) 前記遠位アセンブリの近位にある少なくとも1個の電極を更に備える、実施態様1に記載のカテーテル。