【実施例】
【0037】
以下、実施例に従って本発明を具体的に説明する。本発明はこの実施例に限定されない。
本発明の実施例における測定方法、又は評価方法は、以下の通りである。
<繊度>
実施例及び比較例において、材料として用いられたポリエステル撚糸及びポリエステル仮撚加工糸、並びに得られたポリエステル系裏地を構成する織物から採取したポリエステル撚糸及びポリエステル仮撚加工糸について、JIS L 1013に従って繊度を測定した。
【0038】
<曲げ剛性B値、曲げ弾性2HB値>
曲げ試験機(カトーテック株式会社製、「KES−FB2」)を用いた。得られたポリエステル系裏地を1cm×10cmの幅に裁断し、試験片とした。この試験片を曲率が−2.5cm
−1〜+2.5cm
−1の範囲で、かつ等速度(変形速度0.5cm
−1/sec)の曲げ試験を行った。曲げ試験は1サイクルとし、単位長さ当たりの曲げ剛性値である曲げ剛性B値(単位:gf・cm
2/cm)と、ヒステリシスの幅である曲げ断性2HB値(単位:gf・cm/cm)とを求めた。
【0039】
<クリンプ率>
実施例及び比較例において、材料として用いられたポリエステル仮撚加工糸に、繊度(dtex)に対して1/500の荷重(単位:g/dtex)を付与し20cmの箇所に印を付けた。荷重を1/10の荷重(単位:g/dtex)に変更して付与し、そのときの印間長さaを測定した。下記式(2)に従って算出した。
クリンプ率(%)={(a−20)/a}×100 (2)
さらに、実施例及び比較例において得られた裏地を分解して、1本の仮撚加工糸を採取した。この仮撚加工糸に、繊度(dtex)に対して1/500の荷重(単位:g/dtex)を付与し20cmの箇所に印を付けた。荷重を1/10の荷重(単位:g/dtex)に変更して付与し、そのときの印間長さbを測定した。下記式(3)に従って算出した。
クリンプ率(%)={(b−20)/b}×100 (3)
【0040】
<撚係数>
実施例及び比較例において、材料として用いられたポリエステル撚糸について、下記式(1)に従って撚係数を算出した。さらに、実施例及び比較例において得られたポリエステル系裏地を構成する織物から1本のポリエステル撚糸を採取して解撚し、下記式(1)に従って算出した。
K=T/(10000/D)
1/2 (1)
上記式(1)において、Tは撚数(単位:T/M)を示し、Dはポリエステル撚糸の総繊度を示す。
【0041】
<シワ抑制(官能評価)>
スーツの上着の裏側(人体側)全体に、実施例及び比較例にて得られた裏地を縫着した。このスーツを着用し30分経過後の裏地のシワ状態を目視で確認し、下記の基準で評価した。
◎:着用後のシワが少なく、目立たない。
○:着用後のシワが多少あるが、目立つ程度ではない。
×:着用後のシワが多く、目立つ。
【0042】
<滑り性(官能評価)>
スーツの上着の裏側(人体側)全体に、実施例及び比較例にて得られた裏地を縫着した。このスーツを着用し、腕をスーツの袖に挿入する際の滑り性を、下記の基準で評価した。
◎:着用時に滑り易く、容易に着用できる。
○:着用時の滑りが普通である。
×:着用時に滑りにくく、着用が困難である。
【0043】
<風合い(官能評価)>
スーツの上着の裏側(人体側)全体に、実施例及び比較例にて得られた裏地を縫着した。このスーツを着用したときの着用感を、下記の基準で評価した。
◎:着心地がソフトで適度にコシがあり、着用感が良好である。
○:着心地が普通である。
×:着心地が悪い。
【0044】
実施例1
経糸として、ポリエステルフィラメント糸(56dtex24フィラメント)に、Z撚り600T/Mの条件で撚りを施して得られたポリエステル撚糸を用いた。緯糸として、ポリエステル仮撚加工糸(84dtex36フィラメント、クリンプ率35%)を用いた。そして、経糸密度が98本/2.54cm、緯糸密度:90本/2.54cmである平組織の織物生機を得た。次いで、得られた織物生機に対して80℃で30分間の精練処理を行い、その後、減量率が15%となるようにアルカリ減量処理(NaOH濃度:40g/L)を行った。次に、分散染料としてのDianix Bule UN−SEを1%o.w.f、酢酸を0.2cc/L、ニッカサンソルトを0.5g/Lを用いて130℃で30分間染色を行った後に仕上げセットを行った。次いで、カムフィット機(上野山機工株式会社製)を用いてカムフィット処理を行い、実施例1のポリエステル系裏地を得た。
【0045】
実施例2
経糸に用いるポリエステル撚糸において、撚条件をZ撚り135T/Mに変更し、撚係数を13.4とした以外は、実施例1と同様にして実施例2のポリエステル系裏地を得た。
【0046】
実施例3
経糸に用いるポリエステル撚糸において、撚条件をZ撚り1300T/Mに変更し、撚係数を97.3とした以外は、実施例1と同様にして実施例3のポリエステル系裏地を得た。
【0047】
実施例4
緯糸に用いるポリエステル仮撚加工糸を、クリンプ率が13%であるものに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例4のポリエステル系裏地を得た。
【0048】
実施例5
緯糸に用いるポリエステル仮撚加工糸を、クリンプ率が25%であり84dtex72フィラメントであるものに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例5のポリエステル系裏地を得た。
【0049】
比較例1
経糸に用いるポリエステル撚糸において、撚条件をZ撚り100T/Mに変更し、撚係数を7.4とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1のポリエステル系裏地を得た。
【0050】
比較例2
経糸に用いるポリエステル撚糸において、撚条件をZ撚り1500T/Mに変更し、撚係数を112.2と変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2のポリエステル系裏地を得た。
【0051】
比較例3
緯糸に用いるポリエステル仮撚加工糸を、仮撚加工を行っておらずクリンプ率が2%であるポリエステルフィラメント糸(84dtex36フィラメント)に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例3のポリエステル系裏地を得た。
【0052】
比較例4
緯糸に用いるポリエステル仮撚加工糸を、クリンプ率が16%であり84dtex144フィラメントであるものに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例4のポリエステル系裏地を得た。
【0053】
比較例5
緯糸に用いるポリエステル仮撚加工糸を、セルロース系フィラメント糸(旭化成せんい株式会社製「ベンベルグ」、84dtex45フィラメント)に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例5の裏地を得た。
【0054】
比較例6
織物加工においてアルカリ減量処理を施さなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例6のポリエステル系裏地を得た。
【0055】
比較例7
織物加工においてカムフィット処理を施さなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例7のポリエステル系裏地を得た。
【0056】
実施例1〜5、及び比較例1〜7で得られた裏地の構成を、表1にまとめて示す。
【表1】
【0057】
実施例1〜5、及び比較例1〜7で得られた裏地の評価を、表2にまとめて示す。
【表2】
【0058】
表2から理解できるように、実施例1〜5で得られたポリエステル系裏地は、特定の撚係数を有するポリエステル撚糸と、特定の単糸繊度及びクリンプ率を有するポリエステル仮撚加工糸とが用いられていたため、曲げ剛性B値及び曲げ弾性2BH値が本発明の範囲であり、優れた滑り性及び柔らかい風合いを有しシワが発生し難いものであった。
【0059】
比較例1で得られたポリエステル系裏地は、経糸として配されたポリエステル撚糸の撚係数が過小であり反発性が不十分であったために、曲げ弾性2HB値が過大となり、滑り性に劣りシワが発生し易いものであった。
【0060】
比較例2で得られたポリエステル系裏地は、経糸として配されたポリエステル撚糸の撚係数が過大であり表面にザラツキが発現したため、曲げ剛性B値が過大となり、滑り性及び風合いに劣るものであった。
【0061】
比較例3で得られたポリエステル系裏地は、緯糸として配されたポリエステル仮撚加工糸のクリンプ率が過小であったために、曲げ弾性2HB値が過大となり、滑り性に劣るものであった。
【0062】
比較例4で得られたポリエステル系裏地は、緯糸として配されたポリエステル仮撚加工糸の単糸繊度が過小であったために、曲げ弾性2HB値が過大となり、滑り性に劣りシワが発生し易いものであった。
【0063】
比較例5で得られた裏地は、緯糸に用いられたポリエステル仮撚加工糸に代えてセルロース系フィラメント糸が用いられており、曲げ弾性2HB値が過大となり、シワが発生し易いものであった。
【0064】
比較例6で得られたポリエステル系裏地は、織物加工においてアルカリ減量処理が施されておらず、構成繊維が浮き出した状態となり、曲げ剛性B値が過大となり、滑り性及び風合いに劣っていた。
【0065】
比較例7で得られたポリエステル系裏地は、織物加工においてカムフィット処理が施されておらず、構成繊維が浮き出した状態となり、曲げ弾性2HB値が過大となり、滑り性に劣っていた。
【0066】
図2は、比較例5で得られた裏地(セルロース系繊維が用いられており、曲げ弾性2HBが本発明の範囲を満足しない裏地)の表面を、上記のデジタルマイクロスコープを用いて倍率200倍で撮影した写真である。
図3は、比較例6で得られたポリエステル系裏地(アルカリ減量処理が施されておらず、曲げ剛性B値が本発明の範囲を満足しない裏地)の表面を、上記のデジタルマイクロスコープを用いて倍率200倍で撮影した写真である。
図2及び
図3においては、構成繊維が集束し配列が乱れるとともに、織物表面に浮き出ていた。つまり、
図1と
図2及び
図3との比較から、特定の撚係数を有するポリエステル撚糸と、特定の単糸繊度及びクリンプ率を有するポリエステル仮撚加工糸とからなり、曲げ剛性B値及び曲げ弾性2HBが特定の範囲である本発明のポリエステル系裏地は、セルロース系繊維が用いられた裏地又はアルカリ減量処理が施されてないポリエステル系裏地と比較すると、織物表面における構成繊維の配列が整っており平滑性に優れるため滑り性が良好であるとともに、経糸及び緯糸において適度な空隙を有するものであるため風合いが柔らかいことが理解できる。