(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の運転支援装置、運転支援方法、投資支援装置、投資支援方法及びコンピュータプログラムを、図面を参照して説明する。
【0011】
(概略)
図1は、下記実施形態における運転支援装置1及び投資支援装置2の概要を示す概略図である。
図1の送水施設100は、下記実施形態において省エネルギー化を図る対象となる施設である。送水施設100は、輸送路10、ポンプ20−1〜20−4、流量計30、圧力計40、電力供給スイッチ50、制御システム60及び電力計70を備える。
【0012】
輸送路10は、処理対象の水の流路である。複数の輸送路10を流れる水は、各輸送路10に設置されたポンプ20−1〜20−4によって図中の実線矢印が示す方向に輸送され合流点101で合流する。合流後の輸送路10には、流量計30及び圧力計40が設置されている。流量計30は、設置位置の輸送路10を流れる水の流量を計測する。圧力計40は、設置位置の輸送路10を流れる水の圧力を計測する。以下、説明を簡単にするため、ポンプ20−1〜20−4をポンプ20と記載する。また以下では、必要に応じてポンプ20−1〜20−4を、それぞれ1号機、2号機、3号機及び4号機と記載する。
【0013】
電力供給スイッチ50は、電力需要設備に対する電力供給を制御するためのスイッチである。電力供給スイッチ50のON又はOFFは制御システム60によって制御される。制御システム60は、対応する電力供給スイッチ50のON又はOFFを制御することによって、各ポンプ20の運転状態を制御する。各電力需要設備には、電力系統200から電力が供給される。電力計70は、電力系統200が供給する電力を計測する。
【0014】
ポンプ効率推定装置3は、送水施設100において取得される流量情報、圧力情報、電力情報及び運転情報に基づいて、各ポンプ20の運転効率を推定する。流量情報は流量計30によって計測された流量の時系列データである。圧力情報は圧力計40によって計測された圧力の時系列データである。電力情報は電力計70によって計測された電力の時系列データである。運転情報は制御システム60が持つ各ポンプ20の運転状態を示す情報である。ポンプ効率推定装置3は、推定した各ポンプ20の運転効率を示す特性情報を、運転支援装置1又は投資支援装置2に提供する。
【0015】
具体的には、ポンプ20の運転効率は、ポンプの吐出流量と揚程及び消費電力との関係により表される。一般に、ポンプの揚程及び消費電力は吐出流量の関数として、それぞれ式(1)及び式(2)のように近似することができる。
【0018】
式(1)において、hはポンプの揚程を表し、qはポンプの吐出流量を表す。α、β及びγは式(1)の2次曲線を一意に決定する係数である。以下、式(1)によって表される曲線を揚程曲線と称する。
【0019】
式(2)において、pはポンプの消費電力を表す。δ、ε、λ及びμは式(2)の3次曲線を一意に決定する係数である。以下、式(2)によって表される曲線を消費電力曲線と称する。
【0020】
すなわち、ポンプ20の特性情報は、揚程曲線を一意に決定する係数α、β及びγ、消費電力曲線を一意に決定する係数δ、ε、λ及びμを示す情報である。一般に、ポンプの特性はポンプの劣化に伴って変化することが知られている。そのため、ポンプの運転を効率的に制御するためには、ポンプの劣化の度合いに応じた特性情報が必要となる。ポンプの特性情報は、ポンプごとの吐出流量、吐出流量に応じた揚程及び消費電力の計測値が取得可能であれば、これらの計測値に基づいて式(1)及び式(2)を最適化することによって推定することができる。しかしながら、
図1の送水施設において流量計30によって計測される流量は、各ポンプ20の吐出流量の合計である。また、電力計70によって計測される電力は、各ポンプ20や他の電力需要設備の消費電力の合計である。そのため、
図1の送水施設では、吐出流量及び消費電力を個々のポンプ20ごとに取得することができない。また、個々のポンプ20に対応する計測機器を設けるのはコストの面で現実的でない。
【0021】
そこで、ポンプ効率推定装置3は、流量情報、圧力情報及び電力情報に運転情報を組み合わせることによって各ポンプ20の運転効率を推定する。
【0022】
運転支援装置1は、ポンプ効率推定装置3から取得される特性情報に基づいて、送水施設100の省エネルギー化の実現を支援する、ポンプ20の運転に関する情報(以下、「運転支援情報」という。)を生成する。具体的には、運転支援情報は、稼働させるポンプ20の優先順位(以下、「稼働順位」という。)と、ポンプ20の動作点を決定する吐出弁の開度(以下、「弁開度」という。)と、を含む情報である。運転支援装置1は、生成した運転支援情報を送水施設100の担当者に提供することによって、送水施設100の省エネルギー化を支援する。
【0023】
投資支援装置2は、ポンプ効率推定装置3から取得される特性情報に基づいて、送水施設100の省エネルギー化を設備投資によって実現する場合の投資判断を支援する投資支援情報を生成する。ここでいう設備投資とは、具体的には、既存のポンプ20に対してインバータ又はモーターを導入することである。具体的には、投資支援装置2は、投資費用を削減コストで回収するのに要する期間(以下、「投資回収期間」という。)や、機器の導入によって得られる各種の投資効果などを示す情報を、投資支援情報として生成する。運転支援装置1は、生成した投資支援情報を送水施設100の担当者に提供することによって、送水施設100の省エネルギー化を支援する。
【0024】
以下、実施形態の運転支援装置1及び投資支援装置2の実施形態について詳細に説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態における運転支援装置1の機能構成を示す機能ブロック図である。
運転支援装置1は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、運転支援装置プログラムを実行する。運転支援装置1は、運転支援装置プログラムの実行によって記憶部11、通信部12、特性情報取得部13、最適流量推定部14、計画水量取得部15及び運転支援情報生成部16を備える装置として機能する。なお、運転支援装置1の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。運転支援装置プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。運転支援装置プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0026】
記憶部11は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。記憶部11は、自装置の各機能部の処理に必要な情報を予め記憶している。
通信部12は、LAN(Local Area Network)等のネットワークに接続するための通信インターフェースを用いて構成される。通信部12は、ポンプ効率推定装置3と通信する。
【0027】
特性情報取得部13は、ポンプ効率推定装置3から特性情報を取得する。特性情報取得部13は、取得した特性情報を最適流量推定部14に出力する。
【0028】
最適流量推定部14は、特性情報取得部13によって取得された各ポンプ20の特性情報と、各ポンプ20の動作に関する制約を示す制約情報と、に基づいて最適流量を推定する。最適流量とは、各ポンプ20が上記制約を満たしつつ最も効率的に動作することができる各ポンプ20の吐出流量である。各ポンプ20を最適流量に基づく動作点で動作させることにより、ポンプ20による消費電力の省エネルギー化を実現することができる。
【0029】
図3は、最適流量の具体例を示す図である。
図3(A)は、ポンプ20の吐出流量と、エネルギー原単位との関係を示す図である。エネルギー原単位とは、エネルギー効率を表す指標の一つである。本実施形態では、ポンプ20の単位吐出量あたりの消費電力量をエネルギー原単位とする。
図3(A)において、横軸はポンプ20の吐出流量を表す。縦軸は吐出流量に対するエネルギー原単位を表す。
図3(A)が示す吐出流量とエネルギー原単位との関係は次の式(3)のように表される。
【0031】
式(3)において、SECはエネルギー原単位を表す。また、式(3)におけるqは吐出流量を表す。エネルギー原単位SECは、式(2)の消費電力曲線を吐出流量qで割ることによって得られる。
【0032】
図3(B)は、ポンプ20の揚程曲線の具体例を示す。
図3(B)において、横軸はポンプ20の吐出流量を表す。縦軸はポンプ20の揚程を表す。
図3(B)が示す揚程曲線は、式(1)によって表される。一般に、送水プロセスに用いられるポンプは常時一定量の水を引き揚げておく必要がある。図中の揚程必要下限はポンプ20が常時維持する必要のある最小の揚程を表す。揚程必要下限は、制約情報が示す制約の一つである。
【0033】
図3(C)は、ポンプ20の吐出流量と、ポンプ20の動作に必要な電流との関係を示す図である。
図3(C)において、横軸はポンプ20の吐出流量を表す。縦軸は電流を表し、横軸が示す吐出流量での動作に要する電流を示す。
図3(C)が示す吐出流量と電流との関係は、式(2)の消費電力曲線を電圧で割ることによって得られる。一般にポンプは、使用条件として定められた定格電流の範囲内で動作させる必要がある。図中の電流上限は各ポンプ20が動作可能な定格電流の上限を示す。電流上限は、制約情報が示す制約の一つである。
【0034】
このように、ポンプ20の運転には揚程必要下限及び電流上限の制約がある。
図3において、Q
1は電流上限に基づく吐出流量の上限値を表し、Q
2は揚程必要下限に基づく吐出流量の上限値を表す。すなわちポンプ20は、吐出流量がQ
1及びQ
2以下で動作するように制御される必要がある。最適流量推定部14は、この制約を満たしつつ、エネルギー原単位が最小となる吐出流量をポンプ20の最適流量として推定する。例えば、あるポンプ20のエネルギー原単位が
図3(A)の例のように表される場合、最適流量推定部14は、吐出流量の制約を満たしつつエネルギー原単位が最小となるQ
Pを最適流量として推定する。最適流量推定部14は、このように推定した最適流量及びエネルギー原単位の最小値を示す情報を各ポンプ20の最適流量情報として運転支援情報生成部16に出力する。
【0035】
図2の説明に戻る。
計画水量取得部15は、送水プロセスに求められる送水量を示す計画水量を取得する。例えば、
図1の送水施設が各世帯への給水を目的とする場合、計画水量取得部15は、水道施設設計指針等のガイドラインに基づいて計画水量を取得することができる。この場合、計画水量取得部15は、次の式(4)によって算出される一日の最大給水量q
maxを計画水量として取得する。
【0037】
式(4)において、nは給水の対象となる人口(以下、「計画給水人口」という。)を表す。q
avgは、一人が一日に消費する平均水量(以下、「平均消費水量」という。)を表す。lは給水の目的に応じて最大給水量を補正するための係数(以下、「負荷率」という。)である。lは給水の目的に応じた定数であってもよいし、計画給水人口nの関数としてもよい。例えば、給水の目的が導水又は送水である場合、系からの水の流出がないため負荷率として1を設定する。また、本実施形態のように取水が目的である場合、例えば最大給水量が1.1倍となるような負荷率を設定する。また、給水の目的が配水である場合、例えば給水人口の関数として表される時間係数として負荷率を設定する。
【0038】
なお、計画水量の取得に必要となる計画給水人口及び平均消費水量は、これらの情報を提供可能な装置との通信によって取得されてもよいし、記憶部11に予め記憶されていてもよい。ただし、計画給水人口及び平均消費水量は人口の増減や季節の変化によって変動するものであるため、計画水量取得部15は、これらの変化に応じた最新の計画給水人口及び平均消費水量を取得して最大給水量を更新する。計画水量取得部15は、このように取得した計画水量を示す計画水量情報を運転支援情報生成部16に出力する。
【0039】
運転支援情報生成部16(選択部及び弁開度取得部)は、最適流量推定部14から最適流量情報を取得し、計画水量取得部15から計画水量情報を取得する。運転支援情報生成部16は、最適流量情報が示す最適流量と、計画水量情報が示す計画水量と、に基づいて運転支援情報を生成する。具体的には、運転支援情報生成部16は、各ポンプ20の最適流量に基づいて、最適流量で動作する各ポンプ20の一日の送水量(以下、「最適水量」という。)を取得する。また、運転支援情報生成部16は、エネルギー原単位が小さいものほど高い順位となるようにポンプ20の稼働順位を決定する。運転支援情報生成部16は、決定した稼働順位の順に各ポンプの最適水量を加算していき、計画水量を満たす最小の加算値を取得する。そして、運転支援情報生成部16は、最適水量がその最小の加算値に計上されたポンプ20を、稼働対象のポンプとして選択する。
【0040】
図4は、稼働対象となるポンプ20の選択の具体例を示す図である。
図4は、計画水量と最適水量の加算値を棒グラフで示した図である。
図4の縦軸は水量を表す。棒グラフの右に記載した稼働順位の軸は、最適水量の加算値を示す棒グラフが稼働順位の高いものから順に積み上げられていることを表している。
図4は、稼働順位が1号機、4号機、2号機、3号機の順に高い場合を示している。
【0041】
この場合、運転支援情報生成部16は、計画水量を満たす最小の加算値が1号機、4号機及び2号機の最適水量の加算値であることを判断する。これにより、運転支援情報生成部16は、稼働対象のポンプ20が1号機、4号機及び2号機であることを判断する。そして、運転支援情報生成部16は、稼働対象として選択されたポンプ20について、各ポンプ20の吐出流量を最適流量に保つ弁開度(以下、「最適開度」という。)を取得する。
【0042】
図5は、最適開度を決定する方法の具体例を説明する図である。
図5は、揚程曲線及び抵抗曲線の具体例として、揚程曲線300、抵抗曲線301−1及び301−2を表している。抵抗曲線は、ポンプ20の揚程に対して抵抗として働く圧力(以下、「抵抗圧力」という。)を示す曲線である。抵抗曲線301−1は、吐出弁が全開の状態における抵抗圧力を示す。この場合、吐出弁の絞りによる抵抗圧力がないため、抵抗曲線301−1は流路における摩擦等の抵抗圧力を表す。一方、弁開度が小さくなるほど吐出弁の絞りによる抵抗圧力は大きくなる。そのため抵抗曲線は、弁開度を小さくするほど抵抗曲線301−2に近づいていく。このような抵抗曲線は、吐出流量q及び弁開度uの関数として次の式(5)によって表される。
【0044】
式(5)において、hは抵抗圧力を表す。h
0は実揚程を表す。rは流路等において水が受ける抵抗圧力を表す。運転支援情報生成部16は、式(5)において、ポンプ20の吐出流量qが最適流量をとる弁開度uを求めることによって最適開度を決定する。
図5の例の場合、運転支援情報生成部16は、抵抗曲線が抵抗曲線301−3となるような弁開度uを算出する。運転支援情報生成部16は、上記のように決定したポンプ20の稼働順位や稼働対象として選択されたポンプ20、選択されたポンプ20の最適開度などを示す情報を運転支援情報として生成する。
【0045】
このように構成された第1の実施形態の運転支援装置1は、時間の経過に伴って変化する各ポンプ20の特性情報と、時間の経過に伴って変化する計画水量とに基づいて、計画水量の供給に用いるポンプ20をエネルギー原単位が小さいポンプ20から順に選択する。従来、送水施設におけるポンプの制御は、ポンプ導入時の特性情報や水の需要量に基づいて制御されることが一般的であった。そのため、ポンプの劣化や人口の減少などの経時的な変化に適応できず、十分な省エネルギー化を実現することができない場合があった。実施形態の運転支援装置1が上記機能を備えることにより生成された運転支援情報によって、送水施設の担当者は、送水プロセスに関する経時的な変化に適応してポンプ20の動作を制御することが可能となる。このようなポンプ20の制御が行われることによって、送水施設における更なる省エネルギー化が実現される。
【0046】
以下、第1の実施形態の運転支援装置1の変形例について説明する。
【0047】
上述した計画水量の取得方法は一例である。計画水量取得部15は、その時点での計画水量が取得可能であれば、他のどのような方法で計画水量を取得してもよい。また、計画水量は、必ずしも運転支援装置1において算出される必要はない。例えば、運転支援装置1は、予め生成された計画水量情報を予め記憶部11に記憶していてもよい。この場合、計画水量情報は、例えば運転支援装置1の利用者によって任意のタイミングで最新の情報に更新される。また、例えば、運転支援装置1は、計画水量情報を保持する他の装置と通信することによって計画水量情報を取得してもよい。
【0048】
上記の実施形態では、運転支援情報は送水施設の担当者などに提供される情報として生成されたが、運転支援情報は、ポンプ20の動作を直接的に制御する制御情報として生成されてもよい。この場合、運転支援装置1は、ポンプ20の動作を制御するポンプ制御装置として構成されてもよい。この場合、ポンプ制御装置は、例えば各ポンプ20の吐出弁を最適開度に制御する制御情報を生成し、各ポンプ20の動作を制御してもよい。
【0049】
上記の実施形態では、一日の最大給水量が計画水量として取得されたが、計画水量取得部15は、最大給水量を送水プロセスの制御タイミングに応じて分割した給水量を計画水量として取得してもよい。例えば、一時間ごとに運転支援情報が生成される場合、計画水量には、一日の最大給水量q
maxを24時間で割った一時間当たりの平均値が用いられてもよい。また、一日の水の需要量について変化のパターンが取得可能であれば、計画水量には、最大給水量q
maxが上記パターンに応じて分割された給水量が用いられてもよい。
【0050】
以下、ポンプ効率推定装置3の構成について説明する。
【0051】
[第1の構成例]
図6は、ポンプ効率推定装置3の機能構成を示す機能ブロック図である。
ポンプ効率推定装置3は、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備える。CPUは、メモリや補助記憶装置に記憶されたポンプ効率推定プログラムを実行する。ポンプ効率推定装置3は、ポンプ効率推定プログラムの実行によって運転情報取得部31、流量情報取得部32、圧力情報取得部33、電力情報取得部34、運転期間抽出部35及び運転効率推定部36を備える装置として機能する。なお、ポンプ効率推定装置3の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されてもよい。ポンプ効率推定プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。ポンプ効率推定プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0052】
運転情報取得部31、流量情報取得部32、圧力情報取得部33及び電力情報取得部34は、例えばLAN(Local Area Network)等のネットワークに接続するための通信インターフェースを含み、他のシステムや装置との通信により各種情報を取得する。
【0053】
運転情報取得部31は、制御システム60から運転情報を取得する。運転情報取得部31は、取得された運転情報を運転期間抽出部35に出力する。
流量情報取得部32は、流量計30から流量情報を取得する。流量情報取得部32は、取得された流量情報を運転効率推定部36に出力する。
圧力情報取得部33は、圧力計40から圧力情報を取得する。圧力情報取得部33は、取得された圧力情報を運転効率推定部36に出力する。
電力情報取得部34は、電力計70から電力情報を取得する。電力情報取得部34は、取得された電力情報を運転効率推定部36に出力する。
【0054】
なお、運転情報取得部31、流量情報取得部32、圧力情報取得部33及び電力情報取得部34は、フレキシブルディスクやフラッシュメモリ等の記録媒体を接続するインターフェースを含んでもよい。この場合、運転情報取得部31、流量情報取得部32、圧力情報取得部33及び電力情報取得部34は、これらの記録媒体から情報を読み出すことにより、各種情報を取得してもよい。
【0055】
図7は、運転情報、流量情報、圧力情報及び電力情報の具体例を示す図である。
図7において、
図7(a)は運転情報の具体例を示す図である。
図7(b)は流量情報の具体例を示す図である。
図7(c)は圧力情報の具体例を示す図である。
図7(d)は電力情報の具体例を示す図である。
図7(a)、
図7(b)、
図7(c)及び
図7(d)の横軸は時間を表し、各図の時間軸は同じ時間を表す。
図7(a)の縦軸は、1号機〜4号機の4台のポンプの運転状況を表す。
図7(b)、
図7(c)及び
図7(d)の縦軸は、それぞれ流量、圧力及び電力を表す。
【0056】
各ポンプの運転状況は、ON又はOFFの2値で表され、ONはポンプの稼働を表し、OFFはポンプの非稼働を表す。
図7は、図中の単独運転期間には2号機のみが稼働していることを示している。
【0057】
図6の説明に戻る。
運転期間抽出部35は、運転情報取得部31から運転情報を取得する。運転期間抽出部35は、運転情報が示す各ポンプの運転状況に基づいて、運転情報が示す期間から1つのポンプが単独で運転されている期間(以下、「単独運転期間」という。)を抽出する。運転期間抽出部35は、抽出された単独運転期間と、その単独運転期間に運転されていたポンプと、を示す単独運転情報を運転効率推定部36に出力する。
【0058】
運転効率推定部36は、流量情報取得部32、圧力情報取得部33及び電力情報取得部34から、それぞれ流量情報、圧力情報及び電力情報を取得する。また、運転効率推定部36は、運転期間抽出部35から単独運転情報を取得する。運転効率推定部36は、取得された流量情報、圧力情報、電力情報及び単独運転情報に基づいて、各ポンプの運転効率を推定する。
【0059】
具体的には、運転効率推定部36は、流量情報、圧力情報及び電力情報のそれぞれから、単独運転期間における情報を抽出する。運転効率推定部36は、抽出された流量情報、圧力情報及び電力情報に基づいて、その単独運転期間に対応するポンプの運転効率を算出する。運転効率は、例えば次の式(6)によって算出される。
【0061】
式(6)におけるη(t)は時刻tにおける運転効率を表す。式(6)右辺の分子におけるQ(t)及びH(t)は、それぞれ時刻tにおける流量及び圧力を表し、これらの積は供給された電力の一部がポンプによって変換された水力学的エネルギーである。式(6)右辺の分母は時刻tにおける電力を表す。すなわち、運転効率η(t)は、時刻tにおいて供給された電力が水力学的エネルギーに変換された割合となる。
【0062】
運転効率推定部36は、前述した
図7に示される単独運転期間における流量情報、圧力情報及び電力情報を用いることによって、2号機の運転効率を算出することができる。このように、各ポンプについての単独運転期間を抽出することによって、ポンプ効率推定装置3は、ポンプごとの運転効率を算出することが可能となる。
【0063】
なお、
図7に示されるように、単独運転期間において複数の時刻の計測データ(流量、圧力及び電力)が取得される場合、運転効率も複数算出される。この場合、運転効率推定部36は、複数の運転効率の値の代表値を決定し、その代表値を運転効率の推定値とする。例えば、運転効率推定部36は、次の
図8のように複数の運転効率における重心の値を求めることにより運転効率の推定値を決定する。
【0064】
図8は、複数の運転効率における重心の値を運転効率の推定値として決定する具体例を示す図である。
図8において縦軸は運転効率の値を表し、横軸は時間を表す。
図8にプロットされた点は、単独運転期間における複数の計測データに基づいて算出された、複数の運転効率の値を示す。運転効率の各値は、各時刻における計測データから算出されたものである。
図8の例は、運転効率推定部36が、各点の重心における値を運転効率の推定値とすることを示している。各点の重心における運転効率の値は、例えば次の式(7)によって表される。
【0066】
なお、運転効率推定部36は、各点の重心における値の他、他の統計値を運転効率の推定値としてもよい。例えば、運転効率推定部36は、各点の平均値を運転効率の推定値としてもよいし、単独運転期間の中間点における値を運転効率の推定値としてもよい。
【0067】
図9は、ポンプ効率推定装置3がポンプの運転効率を推定する流れを示すフローチャートである。
まず、ポンプ効率推定装置3は、運転情報、流量情報、圧力情報及び電力情報を取得する(ステップS101)。具体的には、運転情報取得部31が制御システム60から運転情報を取得し、流量情報取得部32が流量計30から流量情報を取得し、圧力情報取得部33が圧力計40から圧力情報を取得し、電力情報取得部34が電力計70から電力情報を取得する。運転情報取得部31は、取得した運転情報を運転期間抽出部35に出力する。流量情報取得部32、圧力情報取得部33、電力情報取得部34は、それぞれ取得した流量情報、圧力情報及び電力情報を運転効率推定部36に出力する。
【0068】
運転期間抽出部35は、運転情報取得部31から出力された運転情報に基づいて、運転情報が示す期間から単独運転期間を抽出する(ステップS102)。運転期間抽出部35は、抽出した単独運転期間を示す情報を運転効率推定部36に出力する。
【0069】
運転効率推定部36は、流量情報取得部32、圧力情報取得部33及び電力情報取得部34からそれぞれ出力された、流量情報、圧力情報及び電力情報を取得する。運転効率推定部36は、運転期間抽出部35から出力された単独運転期間を示す情報に基づいて、流量情報、圧力情報及び電力情報のそれぞれから、単独運転期間の計測データを取得する(ステップS103)。
【0070】
運転効率推定部36は、取得した単独運転期間の計測データに基づいて、各単独運転期間に運転されたポンプの運転効率を算出する(ステップS104)。ここで算出される運転効率の値は、各単独運転期間において計測データが取得された複数の時刻に対応して、時刻ごとの計測データに基づいて複数算出される。運転効率推定部36は、算出された複数の運転効率の値から代表値を決定する(ステップS105)。運転効率推定部36は、決定された代表値を各ポンプの運転効率の推定値として出力する(ステップS106)。
【0071】
このように構成された第1の構成例のポンプ効率推定装置3は、運転情報から各ポンプが単独で運転された単独運転期間を抽出し、抽出された単独運転期間の計測データに基づいて各ポンプの運転効率を推定する。そのため、ポンプ効率推定装置3は、複数のポンプについてまとめて計測された計測値から個々のポンプの運転効率を推定することができ、設備負担の増大を抑制しつつ個々のポンプの運転効率を推定することが可能となる。
【0072】
[第2の構成例]
以下、第2の構成例のポンプ効率推定装置3aについて説明する。第1の構成例のポンプ効率推定装置3は、運転情報から各ポンプの単独運転期間を抽出することにより、ポンプごとの運転効率を推定した。しかしながら、第1の構成例における推定方法では、計測データが存在する流量の範囲(以下、「流量範囲」という。)においては運転効率を推定することができるが、流量範囲外では運転効率を推定することができない場合がある。一般に、流量と圧力との間、及び流量と消費電力との間には相関があることが知られており、流量範囲が異なるポンプ同士の運転効率を単純に比較することができない。そのため、第2の構成例のポンプ効率推定装置3aは、流量範囲の異なるポンプについて運転効率を比較することが可能となるように、あるポンプについて取得された単独運転期間における計測データから流量に対する圧力及び電力を推定する。
【0073】
図10は、ポンプ効率推定装置3aの機能構成を示す機能ブロック図である。
なお、
図10では、
図6と同じ符号を付すことによって
図6と同様の機能部についての説明を省略する。
ポンプ効率推定装置3aは、運転効率推定部36に代えて運転効率推定部36aを備える点、圧力曲線推定部37及び電力曲線推定部38をさらに備える点で第1の構成例のポンプ効率推定装置3と異なる。
【0074】
圧力曲線推定部37は、流量から圧力(揚程)を推定するためのモデルのパラメータ(以下、「圧力パラメータ」という。)を決定する。具体的には、圧力曲線推定部37は、運転期間抽出部35から各ポンプの単独運転期間を示す情報を取得する。また、圧力曲線推定部37は、流量情報取得部32及び圧力情報取得部33から、それぞれ流量情報及び圧力情報を取得する。圧力曲線推定部37は、流量情報及び圧力情報における単独運転期間の計測データに基づいて、各ポンプの圧力パラメータを決定する。
【0075】
電力曲線推定部38は、流量から電力を推定するためのモデルのパラメータ(以下、「電力パラメータ」という。)を決定する。具体的には、電力曲線推定部38は、運転期間抽出部35から各ポンプの単独運転期間を示す情報を取得する。また、電力曲線推定部38は、流量情報取得部32及び電力情報取得部34から、それぞれ流量情報及び電力情報を取得する。電力曲線推定部38は、流量情報及び電力情報における単独運転期間の計測データに基づいて、各ポンプの電力パラメータを決定する。
【0076】
ここで、流量と圧力との相関関係は、例えば次の式(8)によって表され、流量と電力との相関関係は、例えば次の式(9)によって表される。
【0079】
式(8)のα、β及びγが圧力パラメータであり、式(9)のδ、ε、λ及びμが電力パラメータである。圧力曲線推定部37及び電力曲線推定部38は、流量情報、圧力情報及び電力情報における単独運転期間の計測データに基づいて、それぞれ式(8)及び式(9)を最適化する圧力パラメータ及び電力パラメータを推定する。このようなパラメータの最適化は、線形の最適化問題として次の式(10)〜(13)のように定式化することができ、最小二乗法などの方法によって求解することができる。
【0084】
なお、式(10)〜(13)における記号「^」を以下「ハット」と称し、ハット付きの変数は、その変数が推定値であることを意味するものとする。また、以下ではハット付きの記号を明細書中では「^記号」と記載する。
【0085】
圧力曲線推定部37及び電力曲線推定部38は、上記の最適化問題を解くことによって、それぞれ圧力パラメータ及び電力パラメータを決定する。圧力曲線推定部37及び電力曲線推定部38は、それぞれ決定した圧力パラメータ及び電力パラメータを運転効率推定部36aに出力する。
【0086】
運転効率推定部36aは、圧力曲線推定部37及び電力曲線推定部38からそれぞれ出力される圧力パラメータ及び電力パラメータを取得する。運転効率推定部36aは、取得した圧力パラメータ及び電力パラメータに基づいて、任意の流量に対する各ポンプの運転効率を示す運転効率推定モデルを構築する。運転効率推定部36aは、構築した運転効率推定モデルに基づいて各ポンプの運転効率を推定する。式(8)及び式(9)を用いた場合、運転効率推定モデルは次の式(14)のように表される。
【0088】
図11は、第2の構成例における運転効率の推定方法の具体例を示す図である。
図11における
図11(a)は、あるポンプの単独運転期間における圧力情報を示す図である。
図11(b)は、当該ポンプの単独運転期間における電力情報を示す図である。
図11(c)は、当該ポンプの単独運転期間における圧力情報及び電力情報に基づいて推定された、運転効率推定モデルを示す図である。このように、任意の流量範囲で取得される圧力情報及び電力情報に基づいて、任意の流量に対する運転効率を示す運転効率推定モデルが構築されることによって、ポンプ効率推定装置3aは、異なる流量範囲のポンプ同士で運転効率を比較することを可能にする。
【0089】
図12は、ポンプ効率推定装置3aがポンプの運転効率を推定する流れを示すフローチャートである。
なお、
図12では、
図9と同じ符号を付すことによって
図9と同様の処理についての説明を省略する。
圧力曲線推定部37は、運転期間抽出部35から各ポンプの単独運転期間を示す情報を取得する。また、圧力曲線推定部37は、流量情報取得部32及び圧力情報取得部33から、それぞれ流量情報及び圧力情報を取得する。圧力曲線推定部37は、流量情報及び圧力情報における単独運転期間の計測データに基づいて、各ポンプの圧力パラメータを決定する(ステップS201)。圧力曲線推定部37は、決定した各ポンプの圧力パラメータを運転効率推定部36aに出力する。
【0090】
電力曲線推定部38は、運転期間抽出部35から各ポンプの単独運転期間を示す情報を取得する。また、電力曲線推定部38は、流量情報取得部32及び電力情報取得部34から、それぞれ流量情報及び電力情報を取得する。電力曲線推定部38は、流量情報及び電力情報における単独運転期間の計測データに基づいて、各ポンプの電力パラメータを決定する(ステップS202)。電力曲線推定部38は、決定した各ポンプの電力パラメータを運転効率推定部36aに出力する。
【0091】
運転効率推定部36aは、圧力曲線推定部37及び電力曲線推定部38からそれぞれ出力される圧力パラメータ及び電力パラメータを取得する。運転効率推定部36aは、取得した圧力パラメータ及び電力パラメータに基づいて、任意の流量に対する各ポンプの運転効率を示す運転効率推定モデルを構築する(ステップS203)。運転効率推定部36aは、構築した運転効率推定モデルに基づいて各ポンプの運転効率を推定する。
【0092】
このように構成された第2の構成例のポンプ効率推定装置3aは、各ポンプの単独運転期間における計測データに基づいて、ポンプの任意の流量範囲における圧力及び電力を表すモデルを得るための圧力パラメータ及び電力パラメータをポンプごとに決定し、決定された圧力パラメータ及び電力パラメータを用いて、各ポンプの任意の流量範囲における運転効率を推定する運転効率推定モデルを構築する。この運転効率推定モデルの構築により、ポンプ効率推定装置3aは、流量範囲の異なるポンプについて運転効率を比較することを可能にする。
【0093】
[第3の構成例]
以下、第3の構成例のポンプ効率推定装置3bについて説明する。ポンプ効率推定装置3aは、ある流量範囲について取得された計測データに基づいて、任意の流量範囲における運転効率を推定する運転効率推定モデルを構築することによって、流量範囲の異なるポンプについて運転効率を比較することを可能にした。しかしながら、第2の構成例における推定方法では、各ポンプについて単独運転期間の計測データが十分に得られない場合、運転効率推定モデルの圧力パラメータ及び電力パラメータを決定できない可能性がある。そのため、ポンプ効率推定装置3bは、複数のポンプが同時に運転された状況で取得された計測データに基づいて、圧力パラメータ及び電力パラメータを決定することを可能にする。
【0094】
図13は、ポンプ効率推定装置3bの機能構成を示す機能ブロック図である。
なお、
図13では、
図10と同じ符号を付すことによって
図10と同様の機能部についての説明を省略する。
ポンプ効率推定装置3bは、運転期間抽出部35を備えない点、圧力曲線推定部37に代えて圧力曲線推定部37bを備える点、電力曲線推定部38に代えて電力曲線推定部38bを備える点でポンプ効率推定装置3aと異なる。
【0095】
圧力曲線推定部37bは、運転情報取得部31から運転情報を取得する。運転情報は、時刻tにおける各ポンプの運転情報d
i(t)(iは各ポンプの識別番号)と表せば、次の式(15)のように表すことができる。
【0097】
このとき、圧力パラメータを求めるための最適化問題は次の式(16)〜式(19)のように定式化できる。以下、識別番号iで表されるポンプをポンプiと記載する。
【0098】
【数16】
Subject to
【数17】
【0101】
式(17)及び式(18)における^q
i(t)は、ポンプiにおいて時刻tに計測された流量の推定値を表す。また、式(18)及び(19)におけるα
i、β
i及びγ
iは、ポンプiの圧力パラメータを表す。また、圧力は輸送路のいずれの地点においても一定であることから、^q
i(t)は圧力H(t)を用いて式(18)のように表される。
【0102】
電力曲線推定部38bは、運転情報取得部31から運転情報を取得する。圧力パラメータと同様に、電力パラメータを求めるための最適化問題は次の式(20)〜(22)のように定式化できる。
【0103】
【数20】
Subject to
【数21】
【0105】
上記のように定式化された式(17)〜式(19)の最適化問題は、非線形最適化問題となるため、圧力曲線推定部37b及び電力曲線推定部38bは、遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm)や焼きなまし法(Simulated Annealing)、粒子群最適化(Particle Swarm Optimization)などのメタヒューリスティックな手法を用いて上記の最適化問題を解くことにより、それぞれ圧力パラメータ及び電力パラメータを推定する。圧力曲線推定部37b及び電力曲線推定部38bは、上記推定によりそれぞれ決定した各ポンプの圧力パラメータ及び電力パラメータを運転効率推定部36aに出力する。
【0106】
なお、非線形最適化問題の定式化の方法では解の公式を用いているため、最適化問題の評価中に複素数が現れる場合がある。上記の定式化では、制約条件によって複素数の発生を抑制しているが、この複素数の発生を抑止する手法には他の手法が用いられてもよい。例えば、評価関数において複素数が出現した時点で評価関数の値を無限大にするなどの手法が考えられる。その場合、上述した最適化問題は次の式(23)〜(28)のように定式化することができる。
【0107】
【数23】
Subject to
【数24】
【0109】
【数26】
Subject to
【数27】
【0111】
このように構成された第3の構成例のポンプ効率推定装置3bは、複数のポンプが同時に運転された状況で取得された計測データに基づいて定式化される非線形最適化問題を解くことで、圧力パラメータ及び電力パラメータを決定する。圧力パラメータ及び電力パラメータを非線形最適化問題として解くことで決定することにより、ポンプ効率推定装置3bは、各ポンプについて単独運転期間の計測データが十分に得られない場合であっても、運転効率推定モデルの圧力パラメータ及び電力パラメータを決定することが可能となる。
【0112】
[第4の構成例]
以下、第4の構成例のポンプ効率推定装置3cについて説明する。第3の構成例のポンプ効率推定装置3bは、複数のポンプが同時に運転された状況で取得された計測データに基づいて定式化される非線形最適化問題を解くことで、圧力パラメータ及び電力パラメータを決定した。しかしながら、第3の構成例におけるパラメータの決定方法では、最適化問題において推定すべきパラメータの数が多いため、可同定性が低下したり、最適解が得られない場合があった。そのため、第4の構成例のポンプ効率推定装置3cは、まず計測データの近似直線を決定し、決定された近似直線のパラメータをもとに、ポンプの特性を考慮して外挿することで圧力パラメータ及び電力パラメータを決定する。
【0113】
図14は、ポンプ効率推定装置3cの機能構成を示す機能ブロック図である。
なお、
図14では、
図13と同じ符号を付すことによって
図13と同様の機能部についての説明を省略する。
ポンプ効率推定装置3cは、圧力曲線推定部37bに代えて圧力曲線推定部37cを備える点、電力曲線推定部38bに代えて電力曲線推定部38cを備える点、直線近似部39をさらに備える点で第3の構成例のポンプ効率推定装置3bと異なる。以下、圧力パラメータ及び電力パラメータのそれぞれについて、各パラメータの決定における各機能部の構成について説明する。
【0114】
<圧力パラメータの決定>
直線近似部39は、運転情報取得部31から運転情報を取得する。また、直線近似部39は、流量情報取得部32及び圧力情報取得部33から、それぞれ流量情報及び圧力情報を取得する。直線近似部39は、取得した運転情報、流量情報及び圧力情報に基づいて、各ポンプにおける流量によって圧力を表す近似直線を決定する。狭い流量範囲について計測データが取得される場合、圧力H(t)を示す近似直線は次の式(29)のように表される。
【0116】
この場合、式(29)によって示される近似直線のパラメータa
i及びb
iは、次の式(30)〜式(32)のように定式化される最適化問題を解くことにより決定することができる。
【0117】
【数30】
Subject to
【数31】
【0119】
上記のように定式化される最適化問題は、線形最適化問題となるため、最小二乗法などの手法を用いて解くことができる。直線近似部39は、上記の最適化問題を解くことにより決定した近似直線のパラメータを圧力曲線推定部37cに出力する。
【0120】
圧力曲線推定部37cは、直線近似部39によって決定された近似直線のパラメータに基づいて、各ポンプの圧力パラメータを決定する。具体的には、圧力曲線推定部37cは、次の式(33)〜(35)で表される前提条件を連立方程式として解くことによって、圧力パラメータを決定する。
【0124】
図15は、推定される圧力曲線が満たすべき前提条件を説明する図である。
図15の横軸は流量を表し、縦軸は圧力を表す。
図15の点群401は、圧力曲線(揚程曲線)を求める対象となるポンプについて取得された計測データがプロットされた点の集合を表す。ここでは、点群401に示される計測データに対応する単独運転しているポンプを仮にポンプAと記載する。また、点群402は、ポンプA単独ではなく、複数台のポンプが運転する計測データがプロットされた点の集合を表す。
【0125】
また、
図15におけるH
1は、計測された全圧力情報のうちの圧力の最大値を表す。同様に、H
2は、計測された全圧力情報のうちの圧力の最小値を表す。
図15の例の場合、H
1は点群402に属し、H
2は点群401に属している。
【0126】
このとき、直線近似部39は、式(30)〜式(32)で定式化された最適化問題を解くことにより、点群401の近似直線を表すパラメータ(図中のa及びb)を決定する。このパラメータの決定により、
図15の近似直線403が得られる。
【0127】
圧力曲線推定部37cは、直線近似部39により決定された近似直線のパラメータa及びbを用いて式(33)〜式(35)を連立方程式として解くことにより、圧力曲線404を表す圧力パラメータを決定する。
【0128】
式(33)におけるH
ini_maxは締切圧を表す。締切圧とは、全てのポンプが送水を行わない場合、換言すれば全てのポンプを締め切った場合の圧力のことである。すなわち、H
ini_maxは、Q=0のときの圧力であり、式(33)はこの締切圧がポンプ効率によらず劣化しないという前提条件を表している。
【0129】
式(34)及び(35)におけるQ
1は、決定される圧力曲線404上の点であり、圧力がH
1のときの流量を表す。同様に、Q
2は、決定される圧力曲線404上の点であり、圧力がH
2のときの流量を表す。つまり、Q
1からQ
2までの範囲が計測データが取得されたタイミングにおける流量範囲を表す。すなわち、式(34)は、流量範囲の中心(図中のg
Q)における圧力曲線404の接線405の傾きが近似直線403の傾きと同じであるという仮定を表している。また、式(35)は、圧力曲線404が、流量範囲の最大値において近似直線403上の点を通るという前提条件を表している。
【0130】
また、圧力曲線推定部37cは、上記の3つの前提条件を次の式(36)〜式(38)のように設定することによって圧力パラメータを決定してもよい。
【0134】
図16は、推定される圧力曲線が満たすべき前提条件を説明する図である。
図15に示された前提条件と、
図16が示す前提条件との違いは、式(34)が式(37)に置き換えられた点である。そして、式(38)は、圧力曲線404が、流量範囲の最大値において近似直線403上の点を通るという前提条件を表しているのに対して、式(37)は、圧力曲線404が、流量範囲の最小値において近似直線403上の点を通るという前提条件を表している。
【0135】
このように、圧力曲線推定部37cは、直線近似部39によって決定された近似直線のパラメータに基づいて、式(33)〜式(35)又は式(36)〜(38)によって表される前提条件を連立方程式として解くことによって、圧力曲線が上記の前提条件を満たすように圧力パラメータを決定する。
【0136】
<電力パラメータの決定>
直線近似部39は、運転情報取得部31から運転情報を取得する。また、直線近似部39は、流量情報取得部32及び電力情報取得部34から、それぞれ流量情報及び電力情報を取得する。直線近似部39は、取得した運転情報、流量情報及び電力情報に基づいて、各ポンプにおける流量によって電力を表す近似直線を決定する。狭い流量範囲について計測データが取得される場合、電力P(t)を示す近似直線は次の式(39)のように表される。
【0138】
この場合、式(39)によって示される近似直線のパラメータc
i及びe
iは、次の式(40)〜式(42)のように定式化される最適化問題を解くことにより決定することができる。この最適化問題を解くにあたり、ポンプごとの流量q
i(t)には、圧力パラメータの決定により式(32)によって得られる流量の推定値を用いる。
【0139】
【数40】
Subject to
【数41】
【0141】
上記のように定式化される最適化問題は、線形最適化問題となるため、最小二乗法などの手法を用いて解くことができる。直線近似部39は、上記の最適化問題を解くことにより決定した近似直線のパラメータを電力曲線推定部38cに出力する。
【0142】
電力曲線推定部38cは、直線近似部39によって決定された近似直線のパラメータに基づいて、各ポンプの電力パラメータを決定する。具体的には、電力曲線推定部38cは、次の式(43)〜式(46)で表される前提条件を連立方程式として解くことによって、電力パラメータを決定する。
【0147】
図17は、推定される電力曲線が満たすべき前提条件を説明する図である。
図17の横軸は流量を表し、縦軸は電力を表す。
図17の点群411は、電力曲線(消費電力曲線)を求める対象となるポンプAについて取得された計測データがプロットされた点の集合を表す。また、点群412−1及び点群412−2は、ポンプAについて異なるタイミングで取得された計測データがプロットされた点の集合を表す。以下、説明を簡単にするために、特に区別しない限り点群412−1及び点群412−2を点群412と記載する。
【0148】
また、
図17におけるP
1は、点群411に含まれる点が示す電力の最大値を表す。同様に、P
2は、点群411に含まれる点が示す電力の最小値を表す。
【0149】
このとき、直線近似部39は、式(40)〜式(42)で定式化された最適化問題を解くことにより、点群411の近似直線を表すパラメータ(図中のc及びe)を決定する。このパラメータの決定により、
図17の近似直線413が得られる。
【0150】
電力曲線推定部38cは、直線近似部39により決定された近似直線のパラメータc及びeを用いて式(43)〜(46)を連立方程式として解くことにより、電力曲線414を表す電力パラメータを決定する。
【0151】
式(43)におけるP
ini_maxはQ=0のときの電力であり、式(43)は流量がゼロのときの電力は変化しないという前提条件を表している。
【0152】
式(44)〜(46)におけるQ
1は、決定される電力曲線414上の点であり、電力がP
1のときの流量を表す。同様に、Q
2は、決定される電力曲線414上の点であり、圧力がP
2のときの流量を表す。つまり、Q
1からQ
2までの範囲が、計測データが取得されたタイミングにおける流量範囲を表す。すなわち、式(44)は、電力曲線414が、流量範囲の最小値において近似直線413上の点を通るという前提条件を表している。同様に、式(45)は、電力曲線414が、流量範囲の最大値において近似直線413上の点を通るという前提条件を表している。また、式(46)は、流量範囲の中心(図中のg
Q)における電力曲線414の接線415の傾きが近似直線413の傾きと同じであるという前提条件を表している。
【0153】
このように、電力曲線推定部38cは、直線近似部39によって決定された近似直線のパラメータに基づいて、式(43)〜(46)によって表される前提条件を連立方程式として解くことによって、電力曲線が上記の前提条件を満たすように電力パラメータを決定する。
【0154】
このように構成された第4の構成例のポンプ効率推定装置3cは、ある流量範囲について取得された計測データを直線で近似することによって、圧力パラメータ及び電力パラメータの決定を線形最適化問題に定式化することができる。そのため、ポンプ効率推定装置3cは、圧力パラメータ及び電力パラメータの決定をより精度良く行うことが可能となる。
【0155】
[第5の構成例]
以下、第5の構成例のポンプ効率推定装置3dについて説明する。上述した第2〜第4の構成例では、運転効率を推定するための圧力パラメータ及び電力パラメータの決定を最適化問題として定式化した。最適化問題を解くことにより運転効率を推定する場合、決定すべきパラメータの可同定性が重要となる。そして、上述した最適化問題の可同定性に本質的に影響を与えるのはポンプの運転情報である。
【0156】
例えば、ポンプiの運転状態(稼働又は非稼働)を示す運転情報d
i(t)が常にゼロであった場合、ポンプiのパラメータを決定することができない。また、d
i(t)が常にはゼロでない場合であっても、d(t)が取り得る運転状態のパターンが限られている場合にはパラメータを決定することができない。なお、このような場合、仮にパラメータを決定することができたとしても、そのパラメータの信頼性は低いものとなる。
【0157】
図18は、運転状態のパターンが限られている場合の例を示す図である。
図18は、3台のポンプの運転状態を示すd(t)が{1、1、0}又は{1、1、1}の2パターンの値しかとらない場合を示している。
図18における全体流量は、各ポンプの流量の総和を表し、全体消費電力は、各ポンプの消費電力の総和を表す。この場合、ポンプ3については稼働及び非稼働の切り替わりが運転情報に含まれるため、パラメータの推定が可能である。しかしながら、ポンプ1及びポンプ2については、稼働及び非稼働の切り替わりが運転情報に含まれないため、パラメータを推定することができない。
【0158】
そこで、ここでは、運転効率の推定をより精度良く行うための指標としてカバー率を定義する。カバー率は、運転情報が、取り得るパターンをどの程度網羅しているかを示す値である。そして、ポンプ効率推定装置3dは、運転情報がより高いカバー率を示す期間において取得された計測データを用いて最適化問題を解くことにより、より精度良く運転効率の推定を行うことを可能とする。
【0159】
図19は、ポンプ効率推定装置3dの機能構成を示す機能ブロック図である。
なお、
図19では、
図14と同じ符号を付すことにより、
図14と同様の機能部についての説明を省略する。
ポンプ効率推定装置3dは、カバー率向上部3Aをさらに備える点でポンプ効率推定装置3cと異なる。
【0160】
カバー率向上部3Aは、運転情報取得部31から運転情報を取得する。カバー率向上部3Aは、取得した運転情報のカバー率を向上させるカバー率向上処理を行うことによって、カバー率が向上された運転情報を生成する。カバー率向上部3Aは、生成した運転情報を圧力曲線推定部37c及び電力曲線推定部38cに出力する。
以下、カバー率向上部3Aが行うカバー率向上処理の詳細について説明する。
【0161】
<カバー率向上処理>
カバー率Rは、例えば次の式(47)のように定義される。
【0163】
式(47)の分母において、考えられるパターンの数から減算される1は、全てのポンプが非稼働である場合を表す。例えば、
図18の例の場合、考えられるパターンの数は、2
3=8であり、d(t)に含まれるパターンの数は2である。よって、この場合カバー率R=2/(8−1)≒0.29となる。
【0164】
カバー率向上部3Aは、運転情報からカバー率を低くする要因となっているポンプの運転情報を間引くことによって、運転情報のカバー率を向上させる。例えば、カバー率向上処理前における4台のポンプの運転情報d(t)が次の式(48)で表される場合について説明する。
【0166】
式(48)右辺の列は各ポンプに対応し、行は各ポンプの運転状態のパターンに対応する。ここでは、式(48)右辺の列に対応するポンプを、左の列から順にポンプ1、ポンプ2、ポンプ3及びポンプ4と記載する。この場合、ポンプ4台でのカバー率は、5/(2
4−1)≒0.33となる。
【0167】
この場合、例えば、カバー率向上部3Aは、ポンプ1及びポンプ2について運転情報を間引く。具体的には、カバー率向上部3Aは、式(48)右辺の行列からポンプ1又はポンプ2の稼働を示す行を間引く。その結果、運転情報は、次の式(49)のようになる。
【0169】
その結果、式(49)で表される運転情報のカバー率は、2/(2
2−1)≒0.67となり、カバー率が向上される。
【0170】
図20は、間引きの対象となるポンプを変化させた場合のカバー率を示す図である。
図20は、式(48)で表される運転情報に対して、間引きの対象となるポンプの組み合わせを変えてカバー率向上処理を行った結果を示す。
図20の間引きパターンは、間引きの対象となるポンプの組み合わせを表す。間引きパターンに「×」が記載されたポンプが間引きの対象となるポンプである。対象ポンプ台数は、カバー率向上処理後の運転情報でパラメータの推定が可能となるポンプの台数を表す。
図20から、間引きの対象となるポンプが多くなるほど、カバー率が向上することが分かる。なお、
図20において、対象ポンプ台数が1台の場合にカバー率をゼロとしているのは、式(48)で表される運転情報において、ポンプ1、ポンプ2及びポンプ3の全てが稼働しない運転状態を示すパターンがないことを表している。
【0171】
このように構成された第5の構成例のポンプ効率推定装置3dでは、カバー率向上部3Aによってカバー率が向上された運転情報が圧力曲線推定部37c及び電力曲線推定部38cに出力される。圧力曲線推定部37c及び電力曲線推定部38cが、カバー率向上部3Aから出力された運転情報に基づいて最適化問題を解くことで、ポンプ効率推定装置3dは、運転効率の推定をより精度よく行うことが可能となる。
【0172】
上記のポンプ効率推定装置は、計測データから不要なデータを除去した上で、運転効率の推定を行うように構成されてもよい。例えば、ポンプ効率推定装置は、次の第1の方法又は第2の方法により、不要データの除去を行ってもよい。
【0173】
図21は、不要データを削除する第1の方法を示す図である。
第1の方法は、計測データから、ポンプの起動時や停止時に計測される過渡的なデータを除去する方法である。この場合、ポンプ効率推定装置は、例えば
図21のように、ポンプの起動時又は停止時を含む所定期間のデータを計測データから削除する。
【0174】
第2の方法は、計測データから、外れ値を除去する方法である。外れ値とは、センサの異常や通信のビットエラーなどによって、本来計測されるべき値と異なって取得された計測データである。このような外れ値を除去する方法として、計測データの中央値Q
med及び中央値絶対偏差Q
madを用いる方法がある。中央値Q
med及び中央値絶対偏差Q
madは、次の式(50)及び式(51)で表される。
【0177】
式(51)におけるcは修正係数を表し、正規分布を仮定した場合、c=1/0.6745である。このような、中央値Q
med及び中央値絶対偏差Q
madを用いれば、式(52)に示されるように計測データから不要データを除去することができる。
【0179】
式(52)においてκは調整パラメータを表し、通常2〜3の値に設定される。
【0180】
上記の第1の方法又は第2の方法により、計測データから不要データを削除することにより、ポンプ効率推定装置は、運転効率の推定をより精度よく行うことが可能となる。
【0181】
(第2の実施形態)
図22は、第2の実施形態における運転支援装置1aの機能構成を示す機能ブロック図である。
運転支援装置1aは、計画水量取得部15に代えて計画水量取得部15aを備える点、可視化部17をさらに備える点で、第1の実施形態の運転支援装置1と異なる。その他の機能部は、運転支援装置1と同様である。運転支援装置1と同様の機能部については、
図2と同じ符号を付すことにより説明を省略する。
【0182】
計画水量取得部15aは、現在の計画給水人口に加えて給水人口減少率を取得する。給水人口減少率は、将来給水人口が現在の計画給水人口に対して減少すると予想される割合[%/年]である。計画水量取得部15aは、現在の計画給水人口及び給水人口減少率に基づいて、将来の計画給水人口の予測値(以下、「将来給水人口」という。)を算出する。計画水量取得部15aは、現在の計画給水人口に給水人口減少率を乗算することによって将来給水人口を算出する。計画水量取得部15aは、現在の計画給水人口と算出した将来計画給水人口とを、運転支援情報生成部16に出力する。運転支援情報生成部16は、現在の計画給水人口と将来計画給水人口とのそれぞれに基づいて、現在及び将来に関する運転支援情報を生成する。
【0183】
可視化部17は、現在の計画給水人口と、将来給水人口とに基づいて生成された運転支援情報を時系列に比較可能な態様で表示装置に表示させる。
【0184】
図23は、可視化された運転支援情報の具体例を示す図である。
図23に示されるグラフ501は、計画給水人口の遷移と、計画水量の遷移とを示すグラフである。グラフ501の横軸は現在からの経過年数を示す。グラフ501の左の縦軸は計画水量を表し、右の縦軸は計画給水人口を表す。また、
図23に示されるグラフ502は、指定された経過年数における各ポンプ20の最適水量の加算値を示す棒グラフである。グラフ502の縦軸は、グラフ501の縦軸に対応する。
【0185】
このような可視化情報が生成されることによって、水処理施設の担当者は、時系列に変化する計画水量に対して、ポンプの最適水量と必要なポンプの台数がどのように変化するのか、不要となるポンプが何年後に発生するのかなどを容易に把握することが可能となる。
【0186】
(第3の実施形態)
図24は、第3の実施形態の投資支援装置2の機能構成を示す機能ブロック図である。
投資支援装置2は、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、投資支援装置プログラムを実行する。投資支援装置2は、投資支援装置プログラムの実行によって記憶部21、通信部22、特性情報取得部23、最適流量推定部24、削減コスト算出部25及び回収期間算出部26を備える装置として機能する。なお、投資支援装置2の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されてもよい。投資支援装置プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。投資支援装置プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0187】
記憶部21、通信部22、特性情報取得部23及び最適流量推定部24は、運転支援装置1における記憶部11、通信部12、特性情報取得部13及び最適流量推定部14と同様である。特性情報取得部23は、取得した各ポンプ20の特性情報を、削減コスト算出部25に出力する。最適流量推定部24は、取得した各ポンプ20の最適流量情報を、削減コスト算出部25に出力する。
【0188】
削減コスト算出部25は、特性情報取得部23によって取得された特性情報と、最適流量推定部24によって取得された最適流量情報とに基づいて、インバータを導入した場合に得られる電力削減効果を取得する。インバータの導入によりポンプ20の回転数を制御することが可能となる。回転数の変化は、ポンプ20の揚程曲線及び消費電力曲線を変化させ、一般に回転数Nの変化に対する、吐出流量、揚程及び消費電力の変化は次の式(53)の関係にある。
【0190】
図25は、回転数の変化に伴う揚程曲線の変化の具体例を示す図である。
図25において、曲線501−1は、ポンプ20が回転数を変化させる前の定格回転数N
0で動作する場合の揚程曲線である。すなわち、揚程曲線501−1は定格回転数で動作するポンプ20の揚程を示し、インバータを導入しない場合の揚程曲線と同じである。ポンプ20の回転数を減少させた場合、吐出流量の減少に伴い揚程も減少する。そのため、揚程曲線は、回転数の減少に伴って揚程曲線501−2に変化する。一般に、揚程曲線は、ポンプ20の回転数N及び定格回転数N
0を用いて次の式(54)のように表される。
【0192】
インバータの導入により、ポンプ20の吐出流量を、弁開度ではなくポンプ20の回転数で制御することが可能となる。そのため、エネルギー損失の要因となる吐出弁を全開(弁開度最大)にした運用が可能となる。このような運用では、ポンプ20の動作点は揚程曲線と抵抗曲線との交点で表される。
図25の例において、インバータを導入しない場合と、導入した場合とを同じ吐出流量Q
4で比較した場合、インバータを導入しない場合の揚程がh
nowであるのに対して、インバータを導入した場合の揚程はh
ecoとなる。この場合、インバータの導入による電力削減率は、次の式(55)で表される。
【0194】
削減コスト算出部25は、式(55)によって算出される電力削減率と、特性情報取得部23によって取得された各ポンプ20の特性情報と、最適流量推定部24によって推定された各ポンプ20の最適流量と、電力単価とに基づいて、インバータの導入による削減電力コストを算出する。具体的には、削減コスト算出部25は、消費電力曲線及び最適流量から取得される消費電力量[kWh]に、電力削減率及び電力単価[円/kWh]を掛け合わせることで削減電力コスト[円/h]を算出する。削減コスト算出部25は、算出した削減電力コストを示す情報を回収期間算出部26に出力する。
【0195】
図24の説明に戻る。
回収期間算出部26は、インバータの導入に要する投資コストと、削減コスト算出部25によって算出された削減電力コストとに基づいて、投資コストを削減電力コストで回収するために要する投資回収期間を取得する。
【0196】
このように構成された第3の実施形態の投資支援装置2は、時間の経過に伴って変化する各ポンプ20の特性情報に基づいて、インバータ導入に要する投資コストを削減電力コストで回収するために要する投資回収期間を取得する。このような投資回収期間がその時点の各ポンプ20の特性情報に基づいて取得されることによって、水処理施設の担当者は、水処理プロセスに関する経時的な変化に適応して、水処理施設の省エネルギー化を目的とした投資の効果をより正確に判断することが可能となる。
【0197】
以下、第3の実施形態の投資支援装置2の変形例について説明する。
【0198】
[第1の変形例]
投資支援装置2は、インバータの導入に代えてモーターの交換を実施した場合の投資回収期間を取得してもよい。モーターは、インバータのように設定によって細かく回転数を変化させることはできないが、極数に応じた回転数の変化が可能である。モーターの極数pと回転数Nとの関係は次の式(56)によって表される。
【0200】
式(56)において、fは電源周波数を表す。日本では、東日本の電源周波数は50Hzであり、西日本の電源周波数は60Hzとなっている。極数pは2,4,6,8,・・・のような偶数であり、極数が高くなるほど回転数が低下する。最適流量に対する揚程が揚程必要下限を上回ることができる極数のうち、最大の極数がモーターの交換によって得られる省エネルギー効果を最大化する極数(以下、「最適極数」という。)となる。
【0201】
図26は、変形例の投資支援装置2aの機能構成を示す機能ブロック図である。
投資支援装置2aは、特性情報に基づいて、モーターの交換によって得られる最適極数を推定する最適極数推定部27をさらに備える点で、第2の実施形態の投資支援装置2はと異なる。他の機能部は、投資支援装置2と同様である。投資支援装置2aは、最適極数推定部27を備えることによって、モーターの交換に要する投資額の投資回収期間を投資支援装置2と同様の方法で取得することが可能となる。
【0202】
[第2の変形例]
図27は、変形例の投資支援装置2bの機能構成を示す機能ブロック図である。
投資支援装置2bは、投資判断部28をさらに備える点で投資支援装置2aと異なる。投資判断部28は、インバータの導入した場合の投資回収期間と、モーターを交換した場合の投資回収期間を比較して短い方の投資回収期間を選択する。投資判断部28は、選択した投資回収期間と、対応する施策(インバータ導入又はモーター交換)とを示す情報を投資支援情報として出力する。
【0203】
このような投資判断部28を備えることにより、利用者は、インバータの導入と、モーターの交換とのいずれを選択するかの判断を、投資回収期間で判断することが容易となる。
【0204】
また、投資支援装置2bは、取得した投資支援情報を可視化する可視化部(図示せず)を備えてもよい。この場合、可視化部は、投資判断部28によって生成された投資支援情報を、例えば次の
図28のような態様で表示させる。
【0205】
図28は、可視化された投資支援情報の具体例を示す図である。
図28(A)は、インバータを導入した場合の投資回収効果を示す図である。
図28(B)は、モーターを交換した場合の投資回収効果を示す図である。
図28(A)及び
図28(B)において、横軸は投資額を表し、縦軸は投資回収期間を表す。投資額は、導入するインバータの数や交換するモーターの数から算出される。
図28の例は、インバータを導入する方が、より早く投資額を回収することを表している。
【0206】
このように、可視化部がインバータの導入と、モーターの交換との投資回収効果を比較可能な態様で表示装置に表示させることによって、利用者は設備投資の意思決定をより容易に行うことが可能となる。
【0207】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、時間の経過に伴って変化するポンプごとの特性を示す特性情報と、ポンプの運転に関する制約を示す制約情報とに基づいて、ポンプの消費電力が制約を満たしつつ最小となる最適流量をポンプごとに推定する最適流量推定部と、ポンプごとの最適流量と、時間の経過に伴って変化する水の需要量を示す計画水量情報とに基づいて、需要量の給水を最小の消費電力で実現するポンプを複数のポンプから選択する選択部と、を持つことにより、経時的に変化する流体輸送装置ごとの動作特性に基づいて、流体輸送装置による消費電力を削減するための情報を提供することができる。
【0208】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。