特許第6622061号(P6622061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6622061-荷電粒子線装置 図000004
  • 特許6622061-荷電粒子線装置 図000005
  • 特許6622061-荷電粒子線装置 図000006
  • 特許6622061-荷電粒子線装置 図000007
  • 特許6622061-荷電粒子線装置 図000008
  • 特許6622061-荷電粒子線装置 図000009
  • 特許6622061-荷電粒子線装置 図000010
  • 特許6622061-荷電粒子線装置 図000011
  • 特許6622061-荷電粒子線装置 図000012
  • 特許6622061-荷電粒子線装置 図000013
  • 特許6622061-荷電粒子線装置 図000014
  • 特許6622061-荷電粒子線装置 図000015
  • 特許6622061-荷電粒子線装置 図000016
  • 特許6622061-荷電粒子線装置 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6622061
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/252 20060101AFI20191209BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20191209BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20191209BHJP
   H01J 37/26 20060101ALI20191209BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20191209BHJP
   H01J 37/10 20060101ALI20191209BHJP
   H01J 37/256 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   H01J37/252 A
   H01J37/244
   H01J37/20 A
   H01J37/26
   H01J37/28 B
   H01J37/28 C
   H01J37/10
   H01J37/256
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-216654(P2015-216654)
(22)【出願日】2015年11月4日
(65)【公開番号】特開2017-91652(P2017-91652A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】川合 修司
【審査官】 橘 皇徳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−76661(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/037277(WO,A1)
【文献】 特開2015−056301(JP,A)
【文献】 特開2005−327710(JP,A)
【文献】 特開2001−236917(JP,A)
【文献】 米国特許第03629579(US,A)
【文献】 特開2013−114763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00−37/02
37/05
37/09−37/18
37/21
37/24−37/244
37/252−37/295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子を発生させる荷電粒子源と、
試料を保持する試料ホルダーと、
前記試料に前記荷電粒子を照射することにより前記試料で発生した信号を分析位置において検出する検出器と、
前記検出器を前記分析位置に移動させるための移動機構部と、
前記移動機構部を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記試料ホルダーの種類の情報を取得する処理と、
取得した前記試料ホルダーの種類の情報に基づいて、前記分析位置を決定する処理と、
前記移動機構部を制御して、決定された前記分析位置に前記検出器を移動させる処理と、
を行う、荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記試料ホルダーは、前記制御部と複数の信号線を介して接続され、
前記制御部は、前記複数の信号線間の電気的接続状態に基づいて、前記試料ホルダーの種類の情報を取得する、荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記試料ホルダーは、前記試料ホルダーの種類の情報が記憶されている記憶部を有し、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている前記試料ホルダーの種類の情報を読み出して、前記試料ホルダーの種類の情報を取得する、荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1において、
ユーザーが前記試料ホルダーの種類の情報を入力するための操作部を含み、
前記制御部は、前記操作部を介して入力された前記試料ホルダーの種類の情報に基づいて、前記試料ホルダーの種類の情報を取得する、荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
対物レンズをさらに含み、
前記制御部は、対物レンズの種類の情報を取得する処理を行い、
前記分析位置を決定する処理では、前記試料ホルダーの種類の情報および前記対物レンズの種類の情報に基づいて前記分析位置を決定する、荷電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノレベルの材料や、デバイス、生体試料などの構造情報を得る手段として、透過電子顕微鏡(TEM)や、走査透過電子顕微鏡(STEM)、走査電子顕微鏡(SEM)等の電子顕微鏡が用いられている。また、このような試料の組成情報を得る場合には、電子顕微鏡には、例えばエネルギー分散型X線検出器(energy dispersive X−ray spectrometer、以下「EDS検出器」ともいう)が搭載される。
【0003】
EDS検出器が搭載された電子顕微鏡では、EDS分析を行う場合には、EDS検出器を試料室内の試料近傍に挿入する(インサート動作)。また、EDS分析を行わない場合には、EDS検出器を試料室から退避させる(リトラクト動作)。このような動作を行うことにより、EDS分析を行わない場合には、電子顕微鏡を、試料の観察や試料ホルダーの交換作業に支障がない状態にすることができる(例えば特許文献1参照)。
【0004】
EDS検出器のインサート動作およびリトラクト動作は、EDSコントローラで制御される。例えばユーザーがEDSコントローラの操作部を介してEDS検出器の「IN」または「OUT」を選択することで、EDS検出器のインサート動作またはリトラクト動作が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−153846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子顕微鏡は、電子線を試料に照射して、試料から放出される二次電子や反射電子、試料を透過する透過電子や散乱電子を検出して電子顕微鏡像を結像する。ここで、試料に電子線を照射すると、試料を構成する材料(元素)に起因する特性X線が放出される。試料から放出される特性X線は、元素によってエネルギー帯が異なる。そのため、特性X線を検出することで、試料の組成情報を得ることができる。
【0007】
EDS検出器を含むEDSシステムでは、特性X線を検出してエネルギー別の特性X線強度を得ることができる。EDSシステムでは、点分析や、ライン分析、走査像と組み合わせたマップ分析等を行うことができる。
【0008】
近年、EDS検出器として、シリコンドリフト検出器(silicon−drift detector、以下「SDD」ともいう)が実用化されたことによって、EDS分析の高感度化、高速化が実現しつつある。SDDでは、検出素子を大面積化して検出立体角を大きくすることにより、検出効率を向上させることができる。
【0009】
検出立体角Ωは、次式で表される。
【0010】
【数1】
【0011】
ただし、Sは検出素子の面積、θは取り込み角、Lは試料上における電子線照射位置から検出素子中心までの距離を示す。
【0012】
上記式からわかるように、EDS検出器において検出立体角を大きくするためには、素子面積Sを大きくし、距離Lを短くしなければならない。そのため、EDS検出器において検出立体角を大きくするためには、EDS検出器を挿入する際に、EDS検出器をできるだけ試料に近づけることが望ましい。
【0013】
しかしながら、EDS検出器を試料に近づけると、EDS検出器と試料ホルダーとが干渉してしまう場合がある。試料ホルダーには様々な種類があり、その種類によって形状も異なるため、EDS検出器を適切な分析位置に配置することは困難である。
【0014】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、検出器を適切な分析位置に配置することができる荷電粒子線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本発明に係る荷電粒子線装置は、
荷電粒子を発生させる荷電粒子源と、
試料を保持する試料ホルダーと、
前記試料に前記荷電粒子を照射することにより前記試料で発生した信号を分析位置において検出する検出器と、
前記検出器を前記分析位置に移動させるための移動機構部と、
前記移動機構部を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記試料ホルダーの種類の情報を取得する処理と、
取得した前記試料ホルダーの種類の情報に基づいて、前記分析位置を決定する処理と、
前記移動機構部を制御して、決定された前記分析位置に前記検出器を移動させる処理と、
を行う。
【0016】
このような荷電粒子線装置では、制御部が上記処理を行うため、試料ホルダーの種類に応じて検出器を適切な分析位置に配置することができる。そのため、このような荷電粒子線装置では、検出器と試料ホルダーとの干渉を防止しつつ、検出器と試料との間の距離を小さくして検出立体角を大きくすることができる。したがって、このような荷電粒子線装置では、検出器の検出効率を向上できる。
【0017】
(2)本発明に係る荷電粒子線装置において、
前記試料ホルダーは、前記制御部と複数の信号線を介して接続され、
前記制御部は、前記複数の信号線間の電気的接続状態に基づいて、前記試料ホルダーの種類の情報を取得してもよい。
【0018】
このような荷電粒子線装置では、簡易な構成で試料ホルダーの種類を特定することができる。
【0019】
(3)本発明に係る荷電粒子線装置において、
前記試料ホルダーは、前記試料ホルダーの種類の情報が記憶されている記憶部を有し、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている前記試料ホルダーの種類の情報を読み出して、前記試料ホルダーの種類の情報を取得してもよい。
【0020】
(4)本発明に係る荷電粒子線装置において、
ユーザーが前記試料ホルダーの種類の情報を入力するための操作部を含み、
前記制御部は、前記操作部を介して入力された前記試料ホルダーの種類の情報に基づいて、前記試料ホルダーの種類の情報を取得してもよい。
【0021】
このような荷電粒子線装置では、例えば、試料ホルダーと制御部とを信号線(通信用ケーブル)等で接続しなくても試料ホルダーの種類の情報を取得することができる。
【0022】
(5)本発明に係る荷電粒子線装置において、
対物レンズをさらに含み、
前記制御部は、対物レンズの種類の情報を取得する処理を行い、
前記分析位置を決定する処理では、前記試料ホルダーの種類の情報および前記対物レンズの種類の情報に基づいて前記分析位置を決定してもよい。
【0023】
このような荷電粒子線装置では、制御部が上記処理を行うため、試料ホルダーの種類および対物レンズの種類に応じて検出器を適切な分析位置に配置することができる。そのため、このような荷電粒子線装置では、検出器と試料ホルダーとの干渉および検出器と対物レンズの干渉を防止しつつ、検出器と試料との間の距離を小さくして検出立体角を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る荷電粒子線装置を模式的に示す図。
図2】通常の試料ホルダーの特定部を模式的に示す図。
図3】大立体角対応の試料ホルダーの特定部を模式的に示す図。
図4】第1実施形態に係る荷電粒子線装置のEDSコントローラの処理の一例を示すフローチャート。
図5】通常の試料ホルダーが挿入されている場合のEDS検出器の分析位置を示す図。
図6】大立体角対応の試料ホルダーが挿入されている場合のEDS検出器の分析位置を示す図。
図7】第1実施形態の第1変形例に係る荷電粒子線装置を模式的に示す図。
図8】第1実施形態の第2変形例に係る荷電粒子線装置を模式的に示す図。
図9】第1実施形態の第3変形例に係る荷電粒子線装置を模式的に示す図。
図10】第1実施形態の第3変形例に係る荷電粒子線装置の試料室を模式的に示す図。
図11】第1実施形態の第3変形例に係る荷電粒子線装置のEDSコントローラの処理の一例を示すフローチャート。
図12】第2実施形態に係る荷電粒子線装置を模式的に示す図。
図13】通常の試料ホルダーが挿入されている場合のEDS検出器の分析位置を示す図。
図14】大立体角対応の試料ホルダーが挿入されている場合のEDS検出器の分析位置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0026】
1. 第1実施形態
1.1. 荷電粒子線装置
まず、第1実施形態に係る荷電粒子線装置について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る荷電粒子線装置100を模式的に示す図である。
【0027】
荷電粒子線装置100は、図1に示すように、荷電粒子線装置本体部10と、試料ホルダー20と、像取得装置30と、走査透過電子検出器32と、二次電子検出器34と、EDS検出器40と、移動機構部42と、EDSシステム50と、制御システム60と、を含む。
【0028】
荷電粒子線装置本体部10は、電子源(荷電粒子源の一例)11と、照射レンズ系12と、試料ステージ13と、結像レンズ系16と、を有している。
【0029】
電子源11は、電子(荷電粒子の一例)を発生させる。電子源11は、例えば、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線を放出する電子銃である。
【0030】
照射レンズ系12は、電子源11で発生した電子線を集束して試料Sに照射する。試料室15において、試料Sに電子が照射される。
【0031】
荷電粒子線装置100は、図示はしないが、照射レンズ系12で集束された電子線(電子プローブ)を試料S上で走査するための偏向器を含んで構成されていてもよい。
【0032】
試料ステージ13は、試料ホルダー20を介して、試料Sを保持している。試料ステージ13は、試料ホルダー20(試料S)を移動および静止させることができる。試料ステージ13は、試料Sの位置決めを行うことができる。
【0033】
試料室15は、試料Sが配置される空間である。試料室15において試料Sに電子が照射される。試料室15内は、真空排気装置(図示せず)により真空排気される。
【0034】
結像レンズ系16は、試料Sを透過した電子を結像する。結像レンズ系16は、対物レンズ16aと、中間レンズ16bと、投影レンズ16cと、で構成されている。
【0035】
試料ホルダー20は、試料Sを保持する。試料Sを保持している試料ホルダー20が試料ステージ13の挿入部に挿入されることにより、試料Sが試料室15に収容される。図1では、試料ホルダー20が試料室15に挿入されている状態を図示している。
【0036】
試料ホルダー20は、通信用ケーブル2を介して、制御コンピュータ62およびEDSコントローラ52に接続されている。図示の例では、試料ホルダー20は、通信用ケーブル2および制御コンピュータ62を介してEDSコントローラ52に接続されている。なお、図示はしないが、試料ホルダー20とEDSコントローラ52とを、直接、通信用ケーブルで接続してもよい。
【0037】
通信用ケーブル2は、試料ホルダー20と制御コンピュータ62およびEDSコントローラ52との間の通信に用いられる。通信用ケーブル2は試料ホルダー20に付属してい
る。通信用ケーブル2はコネクタを介して制御コンピュータ62に接続される。通信用ケーブル2は、複数の信号線を備えている。
【0038】
なお、図示はしないが、試料ホルダー20と制御コンピュータ62およびEDSコントローラ52との間の通信経路には、試料ホルダー20から出力された信号を制御コンピュータ62およびEDSコントローラ52で読み取り可能な信号に変換するための回路等(AD変換回路等)が設けられていてもよい。
【0039】
試料ホルダー20は、試料ホルダー20の種類を特定するための特定部22を有している。なお、特定部22の詳細については後述する。試料ホルダー20は、試料Sを傾斜させるための傾斜台や、試料Sを回転させるための回転台、試料Sの温度を制御するためのヒーター等を備えていてもよい。傾斜台等を制御するための制御信号は、制御コンピュータ62から通信用ケーブル2を介して試料ホルダー20に送られてもよい。
【0040】
像取得装置30は、結像レンズ系16によって結像された透過電子顕微鏡像(TEM像)を取得する。像取得装置30は、例えば、CCDカメラやCMOSカメラ等のデジタルカメラを用いてTEM像を取得する。
【0041】
走査透過電子検出器32は、電子プローブで試料S上を走査することにより試料Sの各点を透過した透過波(または回折波)の強度を検出する。走査透過電子検出器32の出力信号は、電子線の照射位置の情報と関連づけられて、走査透過電子顕微鏡像データ(STEM像データ)として記憶部(図示せず)に記録される。
【0042】
二次電子検出器34は、電子プローブで試料S上を走査することにより試料Sの各点から放出された二次電子を検出する。二次電子検出器34の出力信号は、電子線の照射位置の情報と関連づけられて、二次電子像データ(SEM像データ)として記憶部(図示せず)に記録される。
【0043】
EDS検出器40は、試料Sに電子を照射することにより試料Sで発生した特性X線(荷電粒子を照射することにより試料で発生した信号の一例)を検出する。EDS検出器40は、例えば、シリコンドリフト検出器である。
【0044】
EDS検出器40が試料Sで発生した特性X線を検出する分析位置は、試料室15内であって、試料Sの近傍の位置である。EDS検出器40の分析位置は、後述するように、EDSコントローラ52によって試料ホルダー20の種類の情報に基づいて決定される。
【0045】
移動機構部42は、EDS検出器40を分析位置に移動させる。移動機構部42は、EDS検出器40を試料室15内の分析位置に挿入する動作(インサート動作)、および、EDS検出器40を試料室15から退避させる動作(リトラクト動作)を行う。
【0046】
移動機構部42は、例えば、EDS検出器40がスライド可能に取り付けられるガイド部と、EDS検出器40をガイド部上で移動させるためのリニアアクチュエーターと、を含んで構成されている。また、ガイド部上にはEDS検出器40の位置を検出するための位置センサーが設けられている。位置センサーは、EDS検出器40の複数の分析位置に対応して複数設けられている。位置センサーは、当該位置センサーの検出位置にEDS検出器40が位置した場合に検出信号を出力する。なお、移動機構部42の構成は、インサート動作およびリトラクト動作を行うことができれば特に限定されない。
【0047】
EDSシステム50は、EDS分析を行うためのシステムである。EDSシステム50は、EDSコントローラ(制御部の一例)52と、EDSアナライザ54と、EDSコン
ピュータ56と、表示部58と、を有している。
【0048】
EDSコントローラ52は、移動機構部42を制御する。EDSコントローラ52の処理については後述する「1.2. 荷電粒子線装置の動作」で説明する。EDSコントローラ52の機能は、プロセッサ(CPU、DSP等)でプログラムを実行することにより実現してもよいし、ASIC(ゲートアレイ等)などの専用回路により実現してもよい。
【0049】
EDSアナライザ54は、複数のチャンネルを持った多重波高分析器である。EDSアナライザ54は、EDS検出器40の出力信号をX線のエネルギーごとに計数する。
【0050】
EDSコンピュータ56は、EDSアナライザ54で得られたX線のエネルギーごとの計数値に基づいて、EDSスペクトルを生成する処理を行う。
【0051】
表示部58は、例えばLCD、CRT等である。表示部58には、EDSコンピュータ56で生成されたEDSスペクトルが表示される。
【0052】
制御システム60は、荷電粒子線装置本体部10や、試料ホルダー20等の荷電粒子線装置100を構成している各部および各装置を制御する。制御システム60は、制御コンピュータ62と、表示部64と、を有している。
【0053】
制御コンピュータ62は、荷電粒子線装置本体部10や、試料ホルダー20等を制御するための処理を行う。
【0054】
表示部64は、例えばLCD、CRT等である。表示部64には、例えば、試料ホルダー20の位置,傾斜角度、撮影モード(TEMモード、STEMモード、SEMモード)、撮影倍率等の情報が表示される。
【0055】
荷電粒子線装置100は、上記のように、透過電子顕微鏡(TEM)、走査透過電子顕微鏡(STEM)、および走査電子顕微鏡(SEM)としての機能を有している。なお、荷電粒子線装置100は、透過電子顕微鏡(TEM)、走査透過電子顕微鏡(STEM)、および走査電子顕微鏡(SEM)のうちの少なくとも1つの機能を有していればよい。
【0056】
次に、試料ホルダー20の種類を特定するための特定部22について説明する。
【0057】
図2は、通常の試料ホルダー20aの特定部22aを模式的に示す図である。図3は、大立体角対応の試料ホルダー20bの特定部22bを模式的に示す図である。図2および図3は、試料ホルダー20a,20bに通信用ケーブル2が接続された状態を図示している。
【0058】
ここで、大立体角対応の試料ホルダーとは、通常の試料ホルダーに比べて、EDS検出器40を試料Sに近づけて検出立体角を大きくすることができるように構成された試料ホルダーである。例えば大立体角対応の試料ホルダー20bでは、先端部の長さを小さくしている(図6参照)。試料ホルダー20の先端部の長さを小さくすることにより、EDS検出器40を試料Sに近づけることができる。
【0059】
通常の試料ホルダー20aの特定部22aは、図2に示すように、第1端子23aと第2端子23bとを有している。試料ホルダー20aに通信用ケーブル2が接続された場合、第1端子23aは通信用ケーブル2の第1信号線2aに接続される。また、試料ホルダー20に通信用ケーブル2が接続された場合、第2端子23bは通信用ケーブル2の第2信号線2bに接続される。特定部22aでは、第1端子23aと第2端子23bとの間は
、電気的に接続されていない。そのため、試料ホルダー20aに通信用ケーブル2が接続された状態において、第1信号線2aと第2信号線2bとの間は電気的に接続されない。すなわち、試料ホルダー20aに通信用ケーブル2が接続された状態における信号線2a,2b間の電気的接続状態は、「OPEN」である。
【0060】
大立体角対応の試料ホルダー20bの特定部22bは、図3に示すように、特定部22aと同様に、第1端子23aと第2端子23bとを有している。特定部22bでは、第1端子23aと第2端子23bとの間は、配線23cによって電気的に接続されている。そのため、試料ホルダー20bに通信用ケーブル2が接続された状態において、第1信号線2aと第2信号線2bとの間は電気的に接続される。すなわち、試料ホルダー20bに通信用ケーブル2が接続された状態における信号線2a,2b間の電気的接続状態は、「CLOSE」である。
【0061】
1.2. 荷電粒子線装置の動作
次に、荷電粒子線装置100の動作について説明する。ここでは、EDS検出器40を分析位置に移動させる動作(インサート動作)について説明する。図4は、EDSコントローラ52の処理の一例を示すフローチャートである。
【0062】
まず、EDSコントローラ52は、試料ホルダー20の種類の情報を取得する(ステップS100)。
【0063】
ここで、EDSコントローラ52が取得する試料ホルダー20の種類の情報とは、現在、試料室15に挿入されている試料ホルダー20の種類を特定するための情報である。
【0064】
EDSコントローラ52は、第1信号線2aと第2信号線2bとの間の電気的接続状態に基づいて、試料ホルダー20の種類の情報を取得する。すなわち、EDSコントローラ52は、信号線2a,2b間の電気的接続状態が「OPEN」の場合(図2参照)、現在、挿入されている試料ホルダー20が通常の試料ホルダー20aと特定する。また、EDSコントローラ52は、信号線2a,2b間の電気的接続状態が「CLOSE」の場合(図3参照)、現在、挿入されている試料ホルダー20が大立体角対応の試料ホルダー20bと特定する。
【0065】
次に、EDSコントローラ52は、取得した試料ホルダー20の種類の情報に基づいて、EDS検出器40の分析位置を決定する(ステップS102)。
【0066】
図5は、通常の試料ホルダー20aが挿入されている場合のEDS検出器40の分析位置P1を示す図である。図6は、大立体角対応の試料ホルダー20bが挿入されている場合のEDS検出器40の分析位置P2を示す図である。図5および図6では、EDS検出器40が分析位置に位置している状態を図示している。
【0067】
EDSコントローラ52は、現在、挿入されている試料ホルダー20が通常の試料ホルダー20aである場合には、EDS検出器40の分析位置を、分析位置P1(図5参照)とする。
【0068】
また、EDSコントローラ52は、現在、挿入されている試料ホルダー20が大立体角対応の試料ホルダー20bである場合には、EDS検出器40の分析位置を、分析位置P2(図6参照)とする。分析位置P2は、分析位置P1よりも試料Sに近い位置である。
【0069】
EDSコントローラ52は、試料ホルダー20の種類に応じたEDS検出器40の分析位置の情報が記憶されている記憶部(図示せず)を有している。EDSコントローラ52
は、取得した試料ホルダー20の種類の情報と記憶部に記憶されている情報とをマッチングして、EDS検出器40の分析位置を決定する。決定されたEDS検出器40の分析位置の情報は、EDSコントローラ52の記憶部に記憶される。
【0070】
次に、EDSコントローラ52は、移動機構部42を制御して、ステップS102で決定された分析位置にEDS検出器40を移動させる(ステップS104)。
【0071】
EDSコントローラ52は、ユーザーによるEDS検出器40の挿入指示、または自動シーケンスによるEDS検出器40の挿入指示が入力されると、EDS検出器40を分析位置に移動させるための制御を行う。EDSコントローラ52は、記憶部に記憶された分析位置の情報を読み出して、当該分析位置にEDS検出器40を移動させる処理を行う。EDSコントローラ52は、移動機構部42の位置センサーの検出信号に基づいて、EDS検出器40を分析位置に移動させる処理を行う。
【0072】
以上の処理により、EDS検出器40を試料ホルダー20の種類に応じた分析位置に移動させることができる。
【0073】
荷電粒子線装置100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0074】
荷電粒子線装置100では、EDSコントローラ52が、試料ホルダー20の種類の情報を取得する処理(ステップS100)と、取得した試料ホルダー20の種類の情報に基づいて、分析位置を決定する処理(ステップS102)と、移動機構部42を制御して、決定された分析位置にEDS検出器40を移動させる処理(ステップS104)と、を行う。
【0075】
そのため、荷電粒子線装置100では、試料ホルダー20の種類に応じてEDS検出器40を適切な分析位置に配置することができる。これにより、荷電粒子線装置100では、EDS検出器40と試料ホルダー20との干渉を防止しつつ、EDS検出器40と試料Sとの間の距離を小さくして検出立体角を大きくすることができる。したがって、荷電粒子線装置100では、EDS検出器40の検出効率を向上できる。
【0076】
荷電粒子線装置100では、EDSコントローラ52が、複数の信号線2a,2b間の電気的接続状態に基づいて、試料ホルダー20の種類の情報を取得する。そのため、荷電粒子線装置100では、簡易な構成で試料ホルダー20の種類を特定することができる。
【0077】
1.3. 荷電粒子線装置の変形例
次に、第1実施形態に係る荷電粒子線装置100の変形例について説明する。以下で説明する各変形例において、上述した荷電粒子線装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0078】
(1)第1変形例
まず、第1実施形態の第1変形例に係る荷電粒子線装置について、図面を参照しながら説明する。図7は、第1実施形態の第1変形例に係る荷電粒子線装置200を模式的に示す図である。
【0079】
上述した荷電粒子線装置100では、図3および図4に示すように、EDSコントローラ52は、複数の信号線2a,2b間の電気的接続状態に基づいて、試料ホルダー20の種類の情報を取得していた。
【0080】
これに対して、荷電粒子線装置200では、図7に示すように、EDSコントローラ5
2は、試料ホルダー20の記憶部24から試料ホルダー20の種類の情報を読み出して、試料ホルダー20の種類の情報を取得する。
【0081】
試料ホルダー20は、試料ホルダー20の種類の情報が記憶されている記憶部24を有している。記憶部24は、ROM等の記憶媒体である。
【0082】
EDSコントローラ52は、通信用ケーブル2および制御コンピュータ62を介して、記憶部24から試料ホルダー20の種類の情報を読み出す。なお、図示はしないが、試料ホルダー20とEDSコントローラ52とを、直接、通信用ケーブルで接続して、EDSコントローラ52が、直接、記憶部24から試料ホルダー20の種類の情報を読み出してもよい。
【0083】
荷電粒子線装置200の動作は、上述したようにEDSコントローラ52が試料ホルダー20の種類の情報を取得する処理(ステップS100)が異なる点を除いて、荷電粒子線装置100の動作と同様であり、その説明を省略する。
【0084】
荷電粒子線装置200では、EDSコントローラ52は、試料ホルダー20の記憶部24に記憶されている試料ホルダー20の種類の情報を読み出して、試料ホルダー20の種類の情報を取得する。そのため、荷電粒子線装置200では、荷電粒子線装置100と同様に、試料ホルダー20の種類に応じてEDS検出器40を適切な分析位置に配置することができる。
【0085】
(2)第2変形例
次に、第1実施形態の第2変形例に係る荷電粒子線装置について、図面を参照しながら説明する。図8は、第1実施形態の第2変形例に係る荷電粒子線装置300を模式的に示す図である。
【0086】
以下、荷電粒子線装置300において、上述した荷電粒子線装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0087】
上述した荷電粒子線装置100では、図3および図4に示すように、EDSコントローラ52は、複数の信号線2a,2b間の電気的接続状態に基づいて、試料ホルダー20の種類の情報を取得していた。
【0088】
これに対して、荷電粒子線装置300では、図8に示すように、EDSコントローラ52は、操作部66を介して入力された試料ホルダー20の種類の情報に基づいて、試料ホルダー20の種類の情報を取得する。
【0089】
制御システム60は、ユーザーが試料ホルダー20の種類の情報を入力するための操作部66を有している。操作部66は、ユーザーによる操作に応じた操作信号を取得し、制御コンピュータ62に送る処理を行う。操作部66は、例えば、ボタン、キー、タッチパネル型ディスプレイ、マイクなどである。
【0090】
制御コンピュータ62は、操作部66を介して入力された試料ホルダー20の種類の情報をEDSコントローラ52に送る処理を行う。EDSコントローラ52は、制御コンピュータ62からの試料ホルダー20の種類の情報を受け取り、試料ホルダー20の種類の情報を取得する。
【0091】
荷電粒子線装置300の動作は、上述したようにEDSコントローラ52が試料ホルダー20の種類の情報を取得する処理(ステップS100)が異なる点を除いて、荷電粒子
線装置100の動作と同様であり、その説明を省略する。
【0092】
荷電粒子線装置300では、EDSコントローラ52は、操作部66を介して入力された試料ホルダー20の種類の情報に基づいて、試料ホルダー20の種類の情報を取得する。そのため、荷電粒子線装置300では、荷電粒子線装置100と同様に、試料ホルダー20の種類に応じてEDS検出器40を適切な分析位置に配置することができる。
【0093】
さらに、荷電粒子線装置300では、上述した荷電粒子線装置100と異なり、試料ホルダー20と制御コンピュータ62とを通信用ケーブル2で接続しなくても試料ホルダー20の種類の情報を取得することができる。
【0094】
(3)第3変形例
次に、第1実施形態の第3変形例に係る荷電粒子線装置について、図面を参照しながら説明する。図9は、第1実施形態の第3変形例に係る荷電粒子線装置400を模式的に示す図である。
【0095】
上述した荷電粒子線装置100では、EDSコントローラ52は、試料ホルダー20の種類の情報に基づいてEDS検出器40の分析位置を決定していた。
【0096】
これに対して、荷電粒子線装置400では、EDSコントローラ52は、試料ホルダー20の種類の情報および対物レンズ16aの種類の情報に基づいてEDS検出器40の分析位置を決定する。以下、その理由について説明する。
【0097】
図10は、荷電粒子線装置400の試料室15を模式的に示す図である。なお、図10は、試料ホルダー20が試料室15に挿入され、かつ、EDS検出器40が分析位置に位置している状態を図示している。
【0098】
図10に示すように、対物レンズ16aは、上部磁極片160と下部磁極片162とを有している。試料ホルダー20に保持された試料Sは、上部磁極片160と下部磁極片162との間の空間に配置される。そのため、EDS検出器40と対物レンズ16aとの干渉を防ぐためには、EDS検出器40の分析位置は、試料ホルダー20の種類に加えて対物レンズ16aの種類を考慮しなければならない。
【0099】
したがって、荷電粒子線装置400では、EDSコントローラ52は、試料ホルダー20の種類の情報および対物レンズ16aの種類の情報に基づいてEDS検出器40の分析位置を決定する。
【0100】
EDSシステム50は、図9に示すように、記憶部59を有している。記憶部59は、試料ホルダー20の種類および対物レンズ16aの種類に応じたEDS検出器40の分析位置の情報を記憶している。記憶部59は、例えば、ROMやハードディスク等の記憶装置である。
【0101】
下記表1は、試料ホルダー20の種類および対物レンズ16aの種類に応じたEDS検出器40の分析位置を表す表である。
【0102】
【表1】
【0103】
なお、「A」,「B」は、対物レンズ16aの種類を表している。例えば対物レンズ「A」は通常のポールピースを備えた対物レンズであり、対物レンズ「B」は高分解能用ポールピースを備えた対物レンズである。また、P1〜P4は、EDS検出器40の分析位置を表している。
【0104】
表1を用いることで、試料ホルダー20の種類および対物レンズ16aの種類からEDS検出器40の分析位置を決定することができる。
【0105】
次に、荷電粒子線装置400の動作について説明する。
【0106】
図11は、荷電粒子線装置400のEDSコントローラ52の処理の一例を示すフローチャートである。
【0107】
まず、EDSコントローラ52は、対物レンズ16aの種類の情報を取得する(ステップS200)。
【0108】
EDSコントローラ52は、制御コンピュータ62から対物レンズ16aの種類の情報を取得する。制御コンピュータ62は、ユーザーが操作部(図示せず)を介して入力した対物レンズ16aの種類の情報をEDSコントローラ52に送る処理を行う。EDSコントローラ52は、制御コンピュータ62からの対物レンズ16aの種類の情報を受け取り、現在用いられている対物レンズ16aの種類の情報を取得する。
【0109】
次に、EDSコントローラ52は、試料ホルダー20の種類の情報を取得する(ステップS202)。ステップS202の処理は、上述したステップS100の処理と同じであるため、その説明を省略する。
【0110】
次に、EDSコントローラ52は、取得した試料ホルダー20の種類の情報および対物レンズ16aの種類の情報に基づいて、EDS検出器40の分析位置を決定する(ステップS204)。
【0111】
EDSコントローラ52は、取得した試料ホルダー20の種類の情報および対物レンズ16aの種類の情報と、記憶部59に記憶されている試料ホルダー20の種類および対物レンズ16aの種類に応じたEDS検出器40の分析位置の情報(表1参照)と、をマッチングして、EDS検出器40の分析位置を決定する。決定されたEDS検出器40の分析位置の情報は、EDSコントローラ52の記憶部に記憶される。
【0112】
次に、EDSコントローラ52は、移動機構部42を制御して、ステップS204で決定された分析位置にEDS検出器40を移動させる(ステップS206)。ステップS206の処理は、上述したステップS104の処理と同じであるため、その説明を省略する。
【0113】
以上の処理により、EDS検出器40を試料ホルダー20の種類および対物レンズ16aの種類に応じた分析位置に移動させることができる。
【0114】
荷電粒子線装置400では、EDSコントローラ52は、EDS検出器40の分析位置を決定する処理(ステップS204)において試料ホルダー20の種類の情報および対物レンズ16aの種類の情報に基づいてEDS検出器40の分析位置を決定する。そのため、荷電粒子線装置400では、試料ホルダー20の種類および対物レンズ16aの種類に応じてEDS検出器40を適切な分析位置に配置することができる。これにより、荷電粒子線装置400では、EDS検出器40と試料ホルダー20との干渉、およびEDS検出器40と対物レンズ16aとの干渉を防止しつつ、EDS検出器40と試料Sとの間の距離を小さくして検出立体角を大きくすることができる。
【0115】
(4)第4変形例
次に、第1実施形態の第4変形例に係る荷電粒子線装置について説明する。第4変形例に係る荷電粒子線装置の構成は、図1に示す荷電粒子線装置100と同じであり、図示を省略する。以下、上述した荷電粒子線装置100の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0116】
第4変形例に係る荷電粒子線装置では、EDSコントローラ52は、試料ホルダー20と通信ができない場合には、EDS検出器40の分析位置を、あらゆる試料ホルダー20に対して干渉しない位置とする。
【0117】
試料ホルダーの中には、制御コンピュータ62と通信用ケーブル2で接続されないタイプも存在する。例えば、傾斜台や、回転台、ヒーター等を備えていない試料ホルダー等である。このような試料ホルダーは、制御システム60と通信する必要がないためである。
【0118】
また、EDS分析に対応していない試料ホルダーも存在する。例えば、EDS検出器で検出が困難なベリリウム材で覆われていない試料ホルダー等である。
【0119】
通常、このような試料ホルダーが挿入されている状態で、EDS検出器40を試料室15内に挿入することは少ない。しかしながら、ユーザーの操作ミス等によりEDS検出器40が試料室15内に挿入されてしまう場合が考えられる。このような場合に備えて、EDSコントローラ52は、上述したように、試料ホルダー20と通信ができない場合には、EDS検出器40の分析位置を、あらゆる試料ホルダー20に対して干渉しない位置とする。
【0120】
2. 第2実施形態
次に、第2実施形態に係る荷電粒子線装置について、図面を参照しながら説明する。図12は、第2実施形態に係る荷電粒子線装置500を模式的に示す図である。図13は、通常の試料ホルダー20aが挿入されている場合のEDS検出器40a,40b,40cの分析位置を示す図である。図14は、大立体角対応の試料ホルダー20cが挿入されている場合のEDS検出器40a,40b,40cの分析位置を示す図である。図13および図14では、EDS検出器40a,40b,40cが分析位置に位置している状態を図示している。
【0121】
以下、第2実施形態に係る荷電粒子線装置500において、第1実施形態に係る荷電粒子線装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0122】
荷電粒子線装置500は、図12図14に示すように、EDS検出器40を複数有している。図示の例では、荷電粒子線装置500は、3つのEDS検出器(第1EDS検出器40a、第2EDS検出器40b、第3EDS検出器40c)を有している。また、荷
電粒子線装置500は、第1EDS検出器40aを移動させるための移動機構部42と、第2EDS検出器40bを移動させるための移動機構部(図示せず)と、第3EDS検出器40cを移動させるための移動機構部(図示せず)と、を有している。なお、荷電粒子線装置500におけるEDS検出器の数は特に限定されない。
【0123】
荷電粒子線装置500は、複数のEDS検出器40a,40b,40cを有するため、検出感度を向上させることができる。
【0124】
図13および図14に示すように、複数のEDS検出器40a,40b,40cは、互いに異なる方向に配置されている。
【0125】
ここで、図14に示す大立体角対応の試料ホルダー20cでは、通常の試料ホルダー20a(図13参照)と比べて、試料ホルダー20cの先端部の長さおよび先端部の幅が、小さくなっている。これにより、大立体角対応の試料ホルダー20cでは、通常の試料ホルダー20aと比べて、EDS検出器40a,40b,40cを試料Sに近づけることができる。
【0126】
荷電粒子線装置500のEDSコントローラ52の処理は、複数のEDS検出器40a,40b,40cの各々に対して、ステップS102の処理およびステップS104の処理を行う点を除いて、上述した荷電粒子線装置100のEDSコントローラ52の処理と同じであり、その説明を省略する。
【0127】
荷電粒子線装置500では、上述した荷電粒子線装置100と同様に、試料ホルダー20の種類に応じて複数のEDS検出器40a,40b,40cを適切な分析位置に配置することができる。
【0128】
なお、第2実施形態に係る荷電粒子線装置500に対しても、上述した第1実施形態の第1〜第4変形例は同様に適用できる。
【0129】
3. その他の実施形態
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0130】
例えば、上述した実施形態では、荷電粒子線装置が、透過電子顕微鏡や、走査透過電子顕微鏡、走査電子顕微鏡としての機能を有している例について説明したが、本発明に係る荷電粒子線装置は、荷電粒子(電子やイオン等)を試料に照射して観察や、分析、加工等を行うことが可能な装置であればよい。本発明に係る荷電粒子線装置は、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)、集束イオンビーム装置等であってもよい。
【0131】
また、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0132】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0133】
2…通信用ケーブル、2a…第1信号線、2b…第2信号線、10…荷電粒子線装置本体部、11…電子源(荷電粒子源)、12…照射レンズ系、13…試料ステージ、15…試料室、16…結像レンズ系、16a…対物レンズ、16b…中間レンズ、16c…投影レンズ、20…試料ホルダー、20a…試料ホルダー、20b…試料ホルダー、20c…試料ホルダー、22…特定部、22a…特定部、22b…特定部、23a…第1端子、23b…第2端子、23c…配線、24…記憶部、30…像取得装置、32…走査透過電子検出器、34…二次電子検出器、40…EDS検出器、40a…第1EDS検出器、40b…第2EDS検出器、40c…第3EDS検出器、42…移動機構部、50…EDSシステム、52…EDSコントローラ(制御部)、54…EDSアナライザ、56…EDSコンピュータ、58…表示部、59…記憶部、60…制御システム、62…制御コンピュータ、64…表示部、66…操作部、100…荷電粒子線装置、160…上部磁極片、162…下部磁極片、200…荷電粒子線装置、300…荷電粒子線装置、400…荷電粒子線装置、500…荷電粒子線装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14