(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
微粒子と、微粒子に封入された活性な薬剤と、テルペン成分とを含み、微粒子が、中空の酵母細胞粒子または中空のグルカン粒子を含み、微粒子は、微粒子に封入された、1%(w/w)未満の1種類以上のテルペンを含む、微粒子送達系。
ペストを殺す方法であって、方法は、微粒子成分内に封入された活性な薬剤を含む組成物の形態で、有効な量の活性な薬剤を投与することを含み;微粒子成分が中空の酵母細胞粒子または中空のグルカン粒子を含み、微粒子成分は、微粒子成分に封入された、1%(w/w)未満の1種類以上のテルペンを含み、活性な薬剤は、ペストに活性な薬剤である、方法。
治療に有効な量の封入された医薬的に活性な薬剤と、微粒子成分に封入された、1%(w/w)未満の1種類以上のテルペンとを含む医薬組成物を調製する方法であって、方法が、中空の酵母細胞粒子または中空のグルカン粒子を含む微粒子成分と、活性な薬剤および1%(w/w)未満のテルペン成分とを混合することを含む、方法。
ペストに有効な量の封入されたペストに活性な薬剤と、微粒子成分に封入された、1%(w/w)未満の1種類以上のテルペンとを含む殺虫組成物を調製する方法であって、中空の酵母細胞粒子または中空のグルカン粒子を含む微粒子成分と、活性な薬剤および1%(w/w)未満のテルペン成分とを混合することを含む、方法。
微粒子成分を含む組成物であって、微粒子成分は、微粒子成分に封入された、1%(w/w)未満の1種類以上のテルペンを含み、微粒子成分は、中空の酵母細胞粒子または中空のグルカン粒子を含む、組成物。
微粒子内の望ましくないカビ、酵母、および/または真菌の成長の阻害または防止におけるテルペン成分の使用であって、微粒子成分が中空の酵母細胞粒子または中空のグルカン粒子を含み、1%(w/w)未満のテルペン成分が微粒子に封入されている、使用。
中空の酵母細胞粒子または中空のグルカン粒子を含む微粒子内の望ましくないカビ、酵母、および/または真菌の成長を阻害または防止する方法であって、方法が、微粒子を、1%(w/w)未満のテルペン成分で処理することを含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好ましくは、本発明のこの態様の組成物は、微粒子成分中に封入された活性な薬剤を含む。
【0013】
防腐性となる量の1種類以上のテルペンは、一般的に、抗真菌性となる量であろうが、有効な量のテルペンであると従来から理解されている量よりも少ない量を含むだろう。従来から理解されている有効な量のテルペンは、治療に活性な薬剤、殺虫剤、例えば、殺昆虫剤、殺真菌剤、殺ダニ剤などとしてのテルペンの使用を具現化するだろう。
【0014】
従って、1種類以上のテルペンの「防腐性となる量」または「抗カビ性となる量」という用語は、抗カビ性または抗細菌性となる量、すなわち、微粒子内または微粒子組成物内の望ましくないカビ、酵母、および/または真菌の成長を阻害または防止するのに十分な量を意味すると解釈すべきであるが、例えば、微粒子に対して外側の環境に対してこれ以外の方法で有効であるほど十分な量ではない。従って、防腐性となる量または抗カビ性となる量であると考え得るテルペン成分の量は、組成物の1%(w/w)以下、すなわち、≦1%(w/w)、<1%(w/w)、≦0.9%(w/w)、≦0.8%(w/w)、≦0.7%(w/w)、≦0.6%(w/w)、≦0.5%(w/w)、≦0.4%(w/w)、≦0.3%(w/w)、≦0.2%(w/w)、≦0.1%(w/w)、≦0.09%(w/w)、≦0.08%(w/w)、≦0.07%(w/w)、≦0.06%(w/w)、≦0.05%(w/w)、≦0.04%(w/w)、≦0.03%(w/w)、≦0.02%(w/w)、≦0.01%(w/w)である。1種類以上のテルペンの防腐性となる量または抗カビ性となる量は、約0.01%(w/w)から約0.99%(w/w)であってもよい。
【0015】
テルペンの選択は、さまざまであってもよく、テルペンの混合物を適切な量で使用してもよい。従って、一実施形態において、テルペン成分は、酸素を含有する1種類以上のテルペンを含む。シトラール、例えば、シトラール95は、酸素化されたC
10H
16テルペン、C
10H
16O CAS番号5392−40−5(3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−アール)である。シトラールの安定な懸濁物は、約2500ppmまで作成することができる。シトラールは、約500ppmまでの溶液にて作成することができる。25pptのシトラールを組み込んだ中空のグルカン粒子の安定な懸濁物を作成することができる。
【0016】
本明細書で以下に記載する本発明の組成物の防腐性となる量または抗カビ性となる量で使用される1種類以上のテルペンは、天然に生じ、一般的に改質されていないものを含んでいてもよい。従って、好ましいテルペンは、米国の環境保護庁において、GRAS(一般的に安全と認められる。)と分類され、香味料および香料の産業で何年も使用されてきた。米国の規制から除外されており、EPA規制40C.F.R.Part152(全体的に本明細書に参考として組み込まれる。)に列挙されるテルペン類は、本発明に使用するのに適している。テルペンのビルディングブロックは、16炭化水素イソプレン(C
5H
8)
nである。
【0017】
「テルペン」という用語は、本明細書で使用する場合、(C
5H
8)
nのテルペンを指すだけではなく、テルペン誘導体、例えば、テルペンアルデヒドまたはテルペンポリマーも包含する。天然および合成のテルペン、例えば、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペンおよびテトラテルペンが含まれる。これに加え、ある1種類の化合物名称に対する言及は、この化合物の種々の異性体を包含するだろう。例えば、シトラールという用語は、cis−異性体シトラール−a(またはゲラニアール)およびtrans−異性体シトラール−b(またはネラール)を包含する。本発明で使用するのに特に適切なテルペンとしては、シトラール、ピネン、ネロール、b−イオノン、ゲラニオール、カルバクロール、オイゲノール、カルボン(例えば、L−カルボン)、テルペニオール(terpeniol)、アネトール、ショウノウ、メントール、チモール、リモネン、ネロリドール、ファルネソール、フィトール、カロテン(ビタミンA
1)、スクアレン、チモール、トコトリエノール、ペリリルアルコール、ボルネオール、ミルセン、シメン、カレン、テルペネン、リナロールおよびこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。
【0018】
本発明で使用されるテルペンは、一般的な構造C
10H
16を有していてもよい。
【0019】
テルペン成分は、ゲラニオール、チモール、シトラール、カルボン(例えば、L−カルボン)、オイゲノールおよびb−イオノンの1つ以上、またはこれらの混合物からなる群から選択されるテルペンを含んでいてもよい。従って、テルペン成分は、ゲラニオールを含んでいてもよい。または、テルペン成分は、チモールを含んでいてもよい。または、テルペン成分は、シトラールを含んでいてもよい。または、テルペン成分は、カルボン(例えば、L−カルボン)を含んでいてもよい。または、テルペン成分は、オイゲノールを含んでいてもよい。または、テルペン成分は、b−イオノンを含んでいてもよい。
【0020】
なお、テルペンは、テルペンを含有する抽出物または精油の名称、例えば、レモングラス油(シトラールを含有する。)によっても知られている。
【0021】
本発明のテルペン成分は、本明細書で以下に定義するような1種類のテルペンまたはテルペン混合物を含んでいてもよい。適切なテルペンの一例は、シトラールである。別の適切なテルペンは、テルペンの組み合わせである。ゲラニオール、チモールおよびオイゲノールのうち1つ以上の組み合わせは、例えば、ゲラニオールおよびチモール;またはゲラニオールおよびオイゲノール;またはチモールおよびオイゲノール;またはゲラニオール、チモールおよびオイゲノールが適切であってもよい。テルペンの組み合わせを使用する場合、テルペンの比率は、さまざまであってもよい。
【0022】
適切であり得る特定のテルペン配合物は、以下のものを含む(パーセントは、w/wである。):
100%のチモール;
100%のゲラニオール;
100%のオイゲノール;
100%のシトラール;および
100%のL−カルボン。
【0023】
適切であり得る他のテルペン配合物は、以下のものを含む(パーセントは、w/wである。):
100%のチモール;
50%のゲラニオールおよび50%のチモール;
50%のオイゲノールおよび50%のチモール;
33%のゲラニオール、33%のオイゲノールおよび33%のチモール;
33%のオイゲノール、33%のチモールおよび33%のシトラール;
25%のゲラニオール、25%のオイゲノール、25%のチモールおよび25%のシトラール;および
20%のゲラニオール、20%のオイゲノール、20%のシトラール、20%のチモールおよび20%のL−カルボン。
【0024】
従って、上述のいずれかの配合物を含むテルペン成分は、本発明で使用するのに特に適している。
【0025】
別の実施形態において、テルペン成分は、酸素を含有する1種類以上のテルペンを含む。シトラール、例えば、シトラール95は、酸素化されたC
10H
16テルペン、C
10H
16O CAS番号5392−40−5(3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−アール)である。シトラールの安定な懸濁物は、約2500ppmまで作成することができる。シトラールは、約500ppmまでの溶液にて作成することができる。25pptのシトラールを組み込んだ中空のグルカン粒子の安定な懸濁物を作成することができる。
【0026】
テルペン防腐剤成分は、ゲラニオール、チモール、シトラール、カルボン(例えば、L−カルボン)、オイゲノールおよびb−イオノンからなる非限定的な群から選択されるテルペンを含んでいてもよい。テルペン防腐剤成分は、適切には、チモールを含んでいてもよい。
【0027】
別の特に適切なテルペンは、防腐剤として特に効能があることが示されているシトラールである。
【0028】
ゲラニオール、チモールおよびオイゲノールの組み合わせは、特に効能があることが示されている。
【0029】
最も好ましくは、テルペン防腐剤成分は、ゲラニオール、オイゲノール、カルボン、シトラールおよびチモールのうち1種類以上を含む群から選択されるテルペンを含む。従って、テルペン防腐剤成分は、ゲラニオールを含んでいてもよい。テルペン防腐剤成分は、オイゲノールを含んでいてもよい。テルペン防腐剤成分は、カルボンを含んでいてもよい。テルペン防腐剤成分は、シトラールを含んでいてもよい。テルペン防腐剤成分は、チモールを含んでいてもよい。
【0030】
従って、上述のいずれかの配合物を含むテルペン防腐剤成分を含む組成物は、本発明で使用するのに特に適している。
【0031】
一実施形態において、テルペン成分は、酸素を含有する1種類以上のテルペンを含む。シトラール、例えば、シトラール95は、酸素化されたC
10H
16テルペン、C
10H
16O CAS番号5392−40−5(3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−アール)である。シトラールの安定な懸濁物は、約2500ppmまで作成することができる。シトラールは、約500ppmまでの溶液にて作成することができる。25pptのシトラールを組み込んだ中空のグルカン粒子の安定な懸濁物を作成することができる。
【0032】
場合により、組成物は、本明細書に述べられているテルペンに加え、他の防腐剤または抗カビ剤、例えば、パラ−ヒドロキシ安息香酸メチル、エチルまたはn−プロピル、アスコルビン酸、ソルビン酸などを含む既知の防腐剤を含んでいてもよい。
【0033】
本発明の微粒子は、限定されないが、マイクロカプセル、マイクロ球、リポソーム、酵母細胞粒子、グルカン粒子などおよびこれらの混合物を含め、種々のこのような粒子を含んでいてもよい。
【0034】
微粒子は、通常は、例えば、直径が2mm以下、通常は直径が500μm以下の実質的に球状の粒子からなるマイクロカプセルおよび/またはマイクロ球を含んでいてもよい。粒子が直径で1μm未満の場合、ナノカプセルまたはナノ球と呼ばれることが多い。マイクロカプセルおよびマイクロ球は、一般的に、マトリックス材料(マイクロカプセル)の構造を封入することによって取り囲む中心コア中で活性な薬剤が作られるかどうか、または、マトリックス材料粒子(マイクロ球)全体に活性な薬剤が分散しているかどうかによって互いに区別することができる。マトリックス材料の構造内に封入された活性な薬剤、およびマトリックス材料全体に分散した活性な薬剤を含め、本発明の範囲内であると理解すべきである。
【0035】
マイクロ球およびマイクロカプセルを製造し、使用する方法の記載は、例えば、本明細書に参照により組み込まれる国際特許出願第WO09/013361号に見出すことができる。
【0036】
マイクロカプセルまたはマイクロ球からの活性な薬剤の遊離は、マトリックス材料の生分解によって制御されることが多い。特によく知られている種類のマイクロカプセルはリポソームであり、活性な薬剤のコアが脂質膜によって囲まれているマイクロカプセルを含むと考えることができる。リポソームは、脂質層からなる人工的な脂質小胞であり、活性な薬剤は、リポソームの水性区画の中に封入されていてもよく、または、表面カップリング技術によってリポソーム表面に会合していてもよい。リポソームは、大スケールで、穏和な条件で容易に安価に調製することができる。
【0037】
他の形態の微粒子は、酵母細胞壁粒子またはグルカン粒子である。このような粒子は、簡単に入手可能であり、生分解性であり、実質的に球状である。酵母細胞壁粒子およびグルカン粒子は、一般的に直径が約2μmから4μmである。抽出された酵母細胞壁粒子の調製は、当該技術分野で知られており、例えば、国際特許出願第WO2007/063268号に記載されており、本明細書に参照により組み込まれる。
【0038】
酵母細胞壁粒子またはグルカン粒子は、「全グルカン粒子」と呼ばれてもよく、多くは、WGPと呼ばれる。抽出された酵母細胞壁粒子は、β−グルカン粒子と呼ばれてもよい。
【0039】
このような酵母細胞壁粒子は、成長した形態であってもよく、すなわち、この培地から収穫されてもよく、無傷で、すなわち、溶解していなくてもよく、すなわち、微小生物体が生きていてもよい。
【0040】
抽出された酵母細胞壁粒子は、中空のグルカン粒子または中空の細胞壁粒子を含んでいてもよい。「中空のグルカン粒子」という用語は、本明細書で使用する場合、構造的要素としてグルカンを含む任意の中空の粒子を含む。従って、特に、この用語は、中空の酵母細胞壁(精製した形態または未精製の形態)または中空の全グルカン粒子を含む。「細胞壁粒子」という用語は、細胞壁(精製した形態または未精製の形態)を含む粒子を指し、グルカンは、構造的な要素ではない。適切な粒子は、植物、藻類、真菌または細菌細胞の細胞壁を含む。細胞壁粒子は、一般的に、誘導元の細胞の形状を保持し、これにより、中空のグルカン粒子と同様に、テルペン成分を封入するのに適した中空の中央部の空洞を与える。特に適切な中空のグルカン粒子または中空の細胞壁粒子は、真菌の細胞壁、好ましくは、酵母細胞壁である。酵母細胞壁は、誘導元の酵母細胞の三次元構造を保持する酵母細胞の調製物である。従って、これらは、テルペン成分または活性な薬剤を酵母細胞壁内に封入することができる中空の構造を有する。中空のグルカン粒子または中空の酵母細胞壁粒子という用語は、細胞内成分が実質的に除去されたグルカン微粒子または酵母細胞粒子を意味することを意図している。酵母壁は、適切には、特に、パン酵母細胞(Sigma Chemical Corp.、セントルイス、MOから入手可能)から誘導されてもよい。望ましい特性を有する酵母細胞壁粒子は、Nutricell MOS 55の商標名でBiorigin(サンパウロ、ブラジル)からも得ることができる。これらの粒子は、S.cerevisiaeのスプレー乾燥された抽出物である。
【0041】
代替となる粒子は、SAF−Mannan(SAF Agri、ミネアポリス、MN)およびNutrex(Sensient Technologies、ミルウォーキー、WI)の商標名によって知られている粒子である。これらは、酵母抽出物製造方法からの不溶性廃棄物流である中空のグルカン粒子である。酵母抽出物の製造中、部分的に自己融解した酵母細胞の可溶性成分を除去し、不溶性残渣は、テルペン保持のための適切な材料である。これらの中空のグルカン粒子は、約25%から35%のベータ1,3−グルカン(w/w)を含む。これらの材料の鍵となる属性は、10%(w/w)を超える脂質を含有していてもよく、テルペンの吸収に非常に効果的であることである。これに加え、廃棄物流として、これらは、比較的安価な中空のグルカン粒子源である。
【0042】
1種類以上のテルペンは、防腐性または抗カビ性となる量が取り込まれ、中空の微粒子、例えば、中空のグルカン粒子または中空の酵母細胞壁粒子に安定に封入することができる。このような粒子は、特に、このような粒子への防腐性または抗カビ性となる量のテルペンの封入が、粒子とテルペンとをインキュベートすることによって達成することができる点で有利である。
【0043】
「中空のグルカン粒子」という用語は、本明細書で使用する場合、構造的な要素としてグルカン、例えば、β−グルカンを含む任意の中空の粒子を含む。従って、特に、この用語は、中空の酵母細胞壁(精製した形態または未精製の形態)または中空の全グルカン粒子を含む。グルカン粒子は、一般的に、2μmから4μmの球状であり、酵母、例えば、パン酵母サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisae)から抽出された中空の多孔性シェルである。グルカン粒子の表面は、主に、1,3−β−グルカンおよびこの粒子で構成される。グルカン粒子の中空の空洞は、活性な薬剤としてホスト分子の効率的な吸収および封入を可能にする。「細胞壁粒子」という用語は、細胞の壁(精製した形態または未精製の形態)を含む粒子を指し、グルカンは、構造的な要素ではないか、または、主な構造的な要素ではない。
【0044】
酵母細胞壁粒子は、例えば、パン酵母細胞から誘導されるパン酵母細胞壁を含んでいてもよく、不溶性のバイオポリマーβ−1,3−グルカン、β−1,6−グルカン、マンナンおよびキチンで構成される。これらの粒子は、典型的には、直径が2μmから4μmのマイクロ球であり、開放した空洞を取り囲む厚みがわずか0.2μmから0.3μmのシェル壁を有する。この材料は、かなりの量の液体を保持する能力を有し、典型的には、その重量の5倍から25倍の液体を吸収する。シェルは、粒径で150,000ダルトンまでの有効搭載量が、外側シェルを通過することができ、球状粒子の中空の空洞に吸収され得るように十分に多孔性である。パン酵母細胞壁は、熱安定性(例えば、121℃まで)、剪断安定性、pH安定性(例えば、pH2から12)および高濃度で顕著な粘度上昇がないといういくつかの固有の特性を有する。その物理特性に加え、この組成物は、心血管系および免疫強化といった健康上の利点を与える天然の健康的な食物繊維を含有する。
【0045】
酵母細胞壁は、一般的に、酵母細胞の可溶性成分から不溶性粒状フラクションを抽出し、精製することによって酵母細胞から調製される。真菌細胞壁は、酵母抽出物製造の不溶性副産物から製造することができる。さらに、酵母細胞を、酵母細胞壁を破壊することなく水酸化物水溶液で処理することができ、細胞のタンパク質および細胞内部分を消化し、顕著なタンパク質汚染がなく、β(1−6)とβ(1−3)が接続したグルカンの実質的に改変されていない細胞壁構造を有する酵母細胞壁成分が残る。全グルカン粒子およびこの調製方法のさらに詳細な記載は、Jamasら、米国特許第4,810,646号および米国特許第5,082,936号、および米国特許第4,992,540号に記載されている。Novogen Research Pty Ltd.に帰属する米国特許第6,242,594号は、アルカリ抽出、酸抽出、次いで、有機溶媒で抽出し、最後に乾燥させることによって酵母グルカン粒子を調製する方法を記載する。AS Biotech−Mackzymalに帰属するUS5,401,727は、酵母グルカン粒子を得る方法およびこれを使用し、水生動物における耐性を促進し、ワクチン化のためのアジュバントとして使用する方法を開示する。Alpha−Beta Technology Inc.に帰属するUS5,607,677は、種々の医薬薬剤を送達するための送達パッケージおよびアジュバントとしての中空の全グルカン粒子の使用を開示する。上述の特許の教示は、本明細書に参照により組み込まれる。
【0046】
他の種類の酵母および真菌の細胞は、グルカンを含有しない細胞壁を有する。このような酵母および真菌の細胞壁は、細胞壁粒子を得るために上に述べたものと同様の技術によって単離することができる。
【0047】
さらに、多くの植物、藻類、細菌類および他の微生物の細胞は、細胞壁も含む。細胞壁の構造および組成は、微生物間で異なるが、一般的に、丈夫で、比較的不活性な構造である。従来の技術、例えば、酵母に関連して上に述べた技術によって、このような細胞から誘導される細胞壁粒子を得ることができる。従って、「細胞壁粒子」という用語は、酵母細胞壁粒子、および本明細書で以下に記載するような植物、藻類、細菌類などの細胞から誘導される細胞壁粒子を含むものとする。
【0048】
「中空のグルカン粒子」という用語は、本明細書で使用する場合、構造的な要素としてグルカンを含む任意の中空の粒子を含む。従って、特に、この用語は、酵母細胞壁(精製した形態または未精製の形態)または中空の全グルカン粒子を含む。「細胞壁粒子」という用語は、細胞の壁(精製した形態または未精製の形態)を含む粒子を指し、グルカンは、構造的な要素ではない。
【0049】
適切な粒子は、植物、藻類、真菌または細菌細胞の細胞壁を含む。細胞壁粒子は、一般的に、誘導元の細胞の形状を保持し、これにより、中空のグルカン粒子と同様に、テルペン成分を封入するのに適した中空の中央部の空洞を与える。
【0050】
本発明のこの態様のために、中空のグルカン粒子または細胞壁粒子が、テルペン成分を安定に封入することできることが必要である。一般的に、このことは、中空のグルカン粒子または細胞壁粒子が、テルペン成分(一般的に、テルペン成分は比較的高濃度である。)と共にインキュベートする間、その構造を維持することができなければならないこと、およびテルペン成分が、粒子内に移動することができなければならないことを意味する。中空のグルカン粒子および細胞壁粒子は、一般的に、比較的不活性な材料から作られ、多孔性であり、従って、一般的に、中空のグルカン粒子および細胞壁粒子が、テルペン成分を封入することができると推定することができる。
【0051】
細胞壁粒子は、一般的に、誘導元の細胞の形状を保持し、これにより、中空のグルカン粒子と同様に、テルペン成分を封入するのに適した中空の中央部の空洞を与える。好ましい細胞壁粒子は、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisae)から誘導される酵母細胞壁粒子である。
【0052】
本発明のこの態様のために、中空のグルカン粒子または細胞壁粒子が、活性な薬剤成分を安定に封入することができることが必要である。一般的に、このことは、中空のグルカン粒子または細胞壁粒子が、活性な薬剤成分(一般的に、活性な薬剤成分は比較的高濃度である。)と共にインキュベートする間、その構造を維持することができなければならないこと、および活性な薬剤成分が、中空の粒子内に移動することができなければならないことを意味する。中空のグルカン粒子および中空の細胞壁粒子は、一般的に、比較的不活性な材料から作られ、多孔性であり、従って、一般的に、中空のグルカン粒子および細胞壁粒子が、活性な薬剤成分を封入することができると推定することができる。
【0053】
本発明は、特に、本明細書で上に記載したような組成物を提供し、ここで、微粒子は、本明細書で上に記載したようなグルカン粒子または細胞壁粒子である。このようなグルカン粒子または細胞壁粒子は、生きた粒子または無傷の粒子を含んでいてもよい。しかし、本発明の特に好ましい実施形態において、粒子は、中空のグルカン粒子または中空の酵母細胞壁粒子を含み、すなわち、細胞内成分が実質的に除去され、グルカン粒子または酵母細胞粒子が死んでいるグルカン粒子または酵母細胞粒子を含む。
【0054】
従って、本発明のこの態様によれば、活性な薬剤を封入する中空のグルカン粒子または中空の酵母細胞壁粒子成分を含み、防腐性となる量の1種類以上のテルペンを含む組成物が提供される。
【0055】
酵母細胞は、一般的に、細胞エンベロープを含み、細胞エンベロープは、細胞壁、血漿膜および細胞周辺腔の3つの主な構成要素からなる保護カプセルである。細胞エンベロープは、細胞の等張性および透過特性を制御するという主要な役割を有する。S.cerevisiaeにおいて、細胞エンベロープは、細胞の体積全体の約15%含まれる。中空の微粒子、例えば、防腐性または抗カビ性となる量の1種類以上のテルペンを含む中空のグルカン粒子または中空の酵母細胞壁粒子を提供する本発明の実施形態において、防腐剤であるテルペン成分は、中空の微粒子内に封入されていてもよい。または、防腐剤であるテルペン成分は、細胞エンベロープ内に保持されていてもよい。本明細書で上に記載するような細胞壁に封入されるべき防腐剤であるテルペン成分の部分および格納されるべき部分について、本発明の範囲内であることが当業者によって理解されるだろう。
【0056】
特に適切な中空のグルカン粒子または細胞壁粒子は、真菌細胞壁、好ましくは、酵母細胞壁である。酵母細胞壁は、誘導元の酵母細胞の三次元構造を保持する酵母細胞の調製物である。従って、これらは、活性な薬剤成分を酵母細胞壁内に封入することができる中空の構造を有する。酵母壁は、適切には、パン酵母細胞(Sigma Chemical Corp.、セントルイス、MOから入手可能)から誘導されてもよい。望ましい特性を有する酵母細胞壁粒子は、Nutricell MOS 55の商標名でBiorigin(サンパウロ、ブラジル)からも得ることができる。これらの粒子は、S.cerevisiaeのスプレー乾燥された抽出物である。
【0057】
代替となる粒子は、SAF−Mannan(SAF Agri、ミネアポリス、MN)およびNutrex(Sensient Technologies、ミルウォーキー、WI)の商標名によって知られている粒子である。これらは、酵母抽出物製造方法からの不溶性廃棄物流である中空のグルカン粒子である。酵母抽出物の製造中、部分的に自己融解した酵母細胞の可溶性成分を除去し、不溶性残渣は、活性な薬剤保持のための適切な材料である。これらの中空のグルカン粒子中のベータ1,3−グルカンの量は、さまざまであってもよく、約25%から約90%のベータ1,3−グルカン(w/w)であってもよい。SAF−Mannan中空グルカン粒子は、約25%から35%のベータ1,3−グルカン(w/w)を含む。これらの材料の鍵となる属性は、10%(w/w)を超える脂質を含有し、活性な薬剤の吸収に非常に効果的であることである。これに加え、廃棄物流生成物として、これらは、比較的安価な中空のグルカン粒子源である。
【0058】
もっと純度が高い代替的な中空のグルカン粒子は、Nutricepts(Nutricepts Inc.、バーンズビル、MN)およびASA.Biotechによって製造される粒子である。これらの粒子は、アルカリ抽出され、さらなる細胞内成分を除去し、細胞壁の外側のマンノタンパク質層を除去し、50%から65%(w/w)のグルカンを含む粒子を得る。
【0059】
もっと純度の高い中空のグルカン粒子は、Biopolymer Engineering製のWGP粒子である。これらの粒子は、酸抽出され、さらなる酵母成分を除去し、75%から85%(w/w)のグルカン生成物を与える。
【0060】
非常に純度の高い中空のグルカン粒子は、Alpha−beta Technology,Inc.(ウースター、MA)製のAdjuvax(R)およびNovogen(スタンフォード、CT)製の微粒子状のグルカンである。これらの粒子は、有機溶媒抽出され、残留脂質を除去し、このため、この粒子は、90%(w/w)を超えるグルカンを含んでいてもよい。
【0061】
ある実施形態において、高純度の中空のグルカン粒子または中空の細胞壁粒子が必要な場合がある(例えば、可能な混入を厳格に制御することが必要な場合)。これらの場合において、純度の低い生成物よりも、もっと純度が高い粒子が好ましいだろう。他の実施形態について、経済的な理由のためにもっと純度が低い粒子が好ましい場合もあり、これらの粒子は、特定の活性な薬剤を吸収させるときにもっと効果的であることもわかっている。
【0062】
好ましくは、中空のグルカン粒子または細胞壁粒子は、わずかな脂質含有量を有し、例えば、1%(w/w)または2%(w/w)の脂質を有する。わずかな脂質含有量にすると、粒子がテルペン成分を封入する能力を高めることができる。中空のグルカン粒子または細胞壁粒子の脂質含有量は、5%(w/w)以上、または10%(w/w)以上である。
【0063】
従って、微粒子、例えば、中空のグルカン粒子または中空の細胞壁粒子の脂質含有量は、≧1%(w/w)、または≧2%(w/w)、または≧3%(w/w)、または≧4%(w/w)、または≧5%(w/w)、または≧6%(w/w)、または≧7%(w/w)、または≧8%(w/w)、または≧9%(w/w)、または≧10%(w/w)、または≧15%(w/w)、または≧20%(w/w)、または≧25%であってもよい。従って、脂質含有量は、約1%から約25%(w/w)、または約2%から約20%(w/w)、または約5%から約15%(w/w)、例えば、約10%(w/w)であってもよい。
【0064】
単なる例として、本発明のマイクロカプセルに使用するための活性な薬剤としては、限定されないが、生物学的に活性な薬剤、例えば、医薬的に活性な薬剤および殺虫剤が挙げられる。生物学的に活性な薬剤としては、例えば、植物栄養物質または植物成長制御剤も挙げられ得る。または、活性な薬剤は、生物学的に活性でなくてもよく、例えば、植物栄養物質、食品香味料、香料などであってもよい。
【0065】
以下、微粒子送達系との言及は、防腐処理された微粒子、すなわち、防腐性となる量のテルペン成分を含む微粒子を含むものとする。
【0066】
医薬的に活性な薬剤は、1つ以上の物理的効果、化学的効果および/または生物学的効果をin vitroおよび/またはin vivoで直接的または間接的に誘発することができる天然に存在するか、合成または半合成の材料(例えば、化合物、発酵物、抽出物、細胞構造)を指す。このような活性な薬剤は、例えば、寄生生物を破壊することによって、宿主または寄生主の生理を大きく変えることによって疾患または異常の影響を制限することによって、生体の異常な状態および/または病的な状態を予防し、軽減し、治療し、および/または治癒することができる場合がある。このような活性な薬剤は、身体の生理学的機能を維持し、増大させ、減少させ、制限し、または破壊することができる場合がある。活性な薬剤は、in vitro試験および/またはin vivo試験によって生理学的な状態または状況を診断することができる場合がある。活性な薬剤は、動物または微生物を引き寄せ、能力をなくさせ、阻害し、殺し、改変し、退け、および/または妨害することによって、環境または生体を制御または保護することができる場合がある。活性な薬剤は、身体を他の方法で処理する(例えば、消臭し、保護し、飾り、手入れする)ことができる場合がある。その効果および/または用途に依存して、活性な薬剤は、さらに、生体活性な薬剤、医薬薬剤(例えば、予防薬剤または治療薬剤)、診断薬剤、栄養補助物質、および/または化粧品薬剤を指していてもよく、限定されないが、プロドラッグ、アフィニティ分子、合成有機分子、ポリマー、分子量が2kD以下(例えば、1.5kD以下、または1kD以下)の分子、高分子(例えば、分子量が2kD以上、好ましくは、5kD以上のもの)、タンパク質系化合物、ペプチド、ビタミン、ステロイド、ステロイド類似体、脂質、核酸、炭水化物、これらの前駆体および誘導体が挙げられる。活性な薬剤は、イオン性、非イオン性、中性であってもよく、正に帯電していてもよく、負に帯電していてもよく、または両性イオン性であってもよく、単独で、またはこれら2種類以上の組み合わせで使用されてもよい。活性な薬剤は、水不溶性であってもよく、または水溶性であってもよい。
【0067】
本明細書で使用される「高分子」という用語は、三次元(例えば、三級および/または四級)構造を与えることができる材料を指す。
【0068】
多種多様な医薬的に活性な薬剤を本発明に利用してもよい。従って、医薬的に活性な薬剤は、ポリヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、低分子有機活性な薬剤、低分子無機活性な薬剤のうち1つ以上、およびこれらの混合物を含んでいてもよい。
【0069】
ポリヌクレオチド活性な薬剤は、オリゴヌクレオチド、アンチセンス構築物、siRNA、酵素RNA、組換えDNA構築物、発現ベクターのうち1つ以上、およびこれらの混合物を含んでいてもよい。本発明の微粒子送達系は、活性な薬剤、例えば、アミノ酸、ペプチドおよびタンパク質のin vivoまたはin vitroでの送達に有用であり得る。ペプチドは、シグナル伝達分子、例えば、ホルモン、神経伝達物質または神経調整剤であってもよく、より大きな分子、例えば、受容体、酵素または核酸に結合するタンパク質の活性フラグメントであってもよい。タンパク質は、酵素、構造タンパク質、シグナル伝達タンパク質または核酸に結合するタンパク質、例えば、転写因子であってもよい。
【0070】
医薬的に活性な薬剤が低分子有機活性な薬剤を含む場合、治療薬剤または診断薬剤を含んでいてもよい。特定の実施形態において、低分子有機活性な薬剤は、配列特異的なDNA結合オリゴマー、ヘテロ環ポリアミドのオリゴマー、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,506,906号に開示されるものを含んでいてもよい。他の低分子有機活性な薬剤は、参照によって本明細書に組み込まれるDervanによる「Molecular Recognition of DNA by Small Molecules,Bioorganic & Medicinal Chemistry(2001)9:2215−2235」に開示されるものを含んでいてもよい。特定の実施形態において、オリゴマーは、N−メチルイミダゾールカルボキサミド、N−メチルピロールカルボキサミド、β−アラニンおよびジメチルアミノプロピルアミドからなる群から選択されるモノマーサブユニットを含んでいてもよい。
【0071】
本発明の別の実施形態において、本発明の微粒子送達系は、無機の活性な薬剤、例えば、胃腸治療薬剤、例えば、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウムなどを含んでいてもよい。
【0072】
本発明の別の実施形態において、1種類より多いポリヌクレオチドが微粒子送達系に包まれていてもよい。このようなポリヌクレオチドは、制御下で複数の遺伝子産物を発現する能力を与え、特定の実施形態において、少なくとも1つの発現可能な遺伝子産物は、膜タンパク質、例えば、膜受容体、最も好ましくは、シグナル伝達分子のための膜結合受容体である。ある実施形態において、少なくとも1つの発現可能な遺伝子産物は、可溶性タンパク質、例えば、分泌されるタンパク質、例えば、シグナル伝達タンパク質またはペプチドである。他の実施形態において、本発明は、マクロファージ細胞に薬物を送達する方法であって、β−グルカンを含む実質的に球状の抽出された中空の酵母細胞壁を与え、中空の酵母細胞壁が内部空間の輪郭を形成する工程と;抽出された中空の酵母細胞壁と、医薬的に活性な薬剤とを接触させ、医薬的に活性な薬剤が、その内部空間に少なくとも部分的に包まれ、粒状の薬物送達系を生成する工程と;マクロファージ細胞と、粒状の薬物送達系とを接触させる工程とを含む、方法を提供する。この方法は、マクロファージによって微粒子の薬物送達系を取り込む工程も含んでいてもよい。別の実施形態において、この方法は、マクロファージによって薬物送達系を輸送する工程も含んでいてもよい。マクロファージは、マクロファージを引き寄せる部位、例えば、感染、炎症反応、低酸素症または過形成の部位に微生物の薬物送達系を送達してもよい。特定の実施形態において、マクロファージは、微粒子の薬物送達系を腫瘍に送達してもよい。別の実施形態において、この方法は、薬物または医薬的に活性な薬剤を微粒子の薬物送達系から放出する工程を含んでいてもよく、場合により、薬物または医薬的に活性な薬剤を細胞外の空間に放出する工程をさらに含んでいてもよい。特定の実施形態において、薬物または医薬的に活性な薬剤を放出する工程は、組換えタンパク質を発現する工程と、このタンパク質を細胞外の空間に分泌する工程とを含む。
【0073】
本発明は、病原体に対して個体を免疫化する方法も提供する。この方法は、個体の細胞と、微粒子を含む微粒子送達系、例えば、β−グルカンおよび核酸組成物を含む抽出された中空の酵母細胞壁とを接触させ、これにより、抗原として病原体の上に表出するエピトープに同一、または実質的に同様のエピトープを少なくとも含むペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を細胞に投与する工程を含んでいてもよく、このヌクレオチド配列は、制御配列に作動可能に接続しており、核酸分子は、個体の細胞内で発現することができる。別の実施形態において、本発明は、微粒子を含む微粒子送達系、例えば、β−グルカンおよび毒素を含む抽出された中空の酵母細胞壁を提供する工程と、食細胞と、微粒子送達系とを接触させる工程と、微粒子送達系の食作用を誘発する工程とを含む、毒素に対する免疫を生じさせる方法を提供する。食細胞は、マクロファージ、パイエル板のM細胞、単核細胞、好中球、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、クッパー細胞、肺胞食細胞、腹膜マクロファージ、ミルクマクロファージ、小膠細胞、好酸球、顆粒球、糸球体食細胞および滑膜A細胞のうち、1つ以上であってもよい。
【0074】
本発明は、過剰増殖性疾患または自己免疫性疾患に対して個体を免疫化する方法を提供する。この方法は、個体の細胞と、微粒子を含む微粒子送達系、例えば、β−グルカンおよび核酸組成物を含む抽出された中空の酵母細胞壁とを接触させ、これにより、それぞれ過剰増殖性疾患に関連するタンパク質または自己免疫性疾患に関連するタンパク質の上に表出するエピトープに同一、または実質的に同様のエピトープを少なくとも含むペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を細胞に投与する工程を含んでいてもよく、制御配列に作動可能に接続しており、核酸分子は、個体の細胞内で発現することができる。
【0075】
本発明は、さらに、個体の細胞と、微粒子を含む微粒子送達系、例えば、β−グルカンおよび核酸組成物を含む抽出された中空の酵母細胞壁とを接触させ、これにより、存在しない遺伝子、欠陥遺伝子または阻害された遺伝子の活性を復活させるヌクレオチド配列、または、個体に治療効果を生じさせるタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を細胞に投与する工程を含み、制御配列に作動可能に接続しており、核酸分子は、前記細胞内で発現することができる、自己免疫性疾患を患う個体を治療する方法も提供する。さらなる実施形態において、本発明は、個体の細胞と、微粒子を含む微粒子送達系、例えば、β−グルカンと、過剰増殖性疾患に関連するタンパク質の上に表出するエピトープに同一、または実質的に同様のエピトープを含むペプチドをコードするオープンリーディングフレームに作動可能に接続したコントロール配列を含むポリヌクレオチドとを含む抽出された中空の酵母細胞壁とを接触させる工程を含み、コードされたペプチドは、個体の細胞内で発現することができる、過剰増殖性疾患に対して個体を免疫化する方法を提供する。
【0076】
別の実施形態において、本発明は、個体の細胞と、微粒子を含む微粒子送達系、例えば、β−グルカンおよびポリヌクレオチドを含む抽出された中空の酵母細胞壁とを接触させることによって、存在しない遺伝子、欠陥遺伝子または阻害された遺伝子の活性を復活させるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを細胞に投与する工程を含む、遺伝疾患を患う個体を治療する方法を提供する。ポリヌクレオチドは、個体に治療効果を生じさせるタンパク質をコードするオープンリーディングフレームに作動可能に接続した制御配列を含んでいてもよく、タンパク質は、前記細胞内で発現することができる。
【0077】
本発明は、個体の細胞と、微粒子を含む微粒子送達系、例えば、β−グルカンおよび核酸組成物を含む抽出された中空の酵母細胞壁とを接触させることによって、存在しない遺伝子、欠陥遺伝子または阻害された遺伝子の機能を復活させるヌクレオチド配列を含む核酸分子、または、個体に治療効果を生じさせるタンパク質をコードする核酸分子を細胞に投与する工程を含み、制御配列に作動可能に接続しており、核酸分子は、前記細胞内で発現することができる、自己免疫疾患を患う個体を治療する方法にも関する。
【0078】
従って、本発明は、病原体または疾患に関連する異常な細胞に対し、個体を予防的および/または治療的に免疫化する組成物および方法も提供する。遺伝子材料は、標的とすべき病原体または細胞上に見出される免疫原性タンパク質を有するエピトープを少なくとも共有するペプチドまたはタンパク質をコードする。遺伝子材料は、個々の細胞によって発現され、免疫応答を誘発することに対し、免疫原性標的として役立つ。得られる免疫応答は、広範囲にわたっており、液性免疫応答に加え、細胞免疫応答の両方のアームを誘発する。本発明の方法は、予防的および治療的な免疫を与えるのに有用である。従って、免疫化する方法は、個体を病原体の問題から保護するか、または特定の細胞の発生または増殖から保護する方法と、病原体の感染、過剰増殖性疾患または自己免疫性疾患を患う個体を治療する方法の両方を含む。従って、本発明は、標的タンパク質(すなわち、病原体または個体自身の「異常な」細胞に特異的に会合するタンパク質)に対する広範囲の免疫応答を誘発するために有用である。本発明は、過剰増殖性細胞と特異的に関連する標的タンパク質に対する免疫応答を誘発することによって、過剰増殖性疾患および障害、例えば、癌と戦うのにも有用である。このような癌としては、限定されないが、原発性の癌、乳癌、結腸癌、前立腺癌、非小細胞肺癌、神経膠芽腫、リンパ腫、中皮腫、肝癌、肝内胆管癌、食道癌、膵臓癌、胃癌、喉頭癌、脳癌、卵巣癌、精巣癌、子宮頸癌、口腔癌、咽頭癌、腎癌、甲状腺癌、子宮癌、膀胱癌、肝細胞癌、甲状腺癌、骨肉腫、小細胞肺癌、白血病、骨髄腫、胃癌腫および転移性癌の1つ以上から選択される。
【0079】
本発明は、さらに、自己免疫状態に関与する細胞に特異的に会合する標的タンパク質に対する免疫応答を誘発することによって、自己免疫性疾患および障害と戦うのに有用である。
【0080】
本発明は、核酸組成物、タンパク質組成物、低分子有機分子およびこれらの混合物からなる群から選択される医薬的に活性な薬剤を含む容器と、微粒子、例えば、中空の酵母細胞壁粒子を含む容器とを備える医薬キットも提供する。場合により、このようなキットは、医薬組成物に関して本明細書に記載した種類の1つ以上の賦形剤、担体、防腐剤およびビヒクルを含んでいてもよい。医薬キットという用語は、本発明の方法に使用される複数の接種剤を含むことも意図している。このようなキットは、異なる接種剤および輸送部分を含む別個の容器を備えている。本発明のこの態様にかかる医薬キットは、本明細書に記載するように、処理および免疫化方法および/または治療方法に用いられる一連の接種剤を含むことも想定している。
【0081】
微粒子を作成するために用いられる非限定的な高分子としては、特に、ポリマー、コポリマー、タンパク質(例えば、酵素、組換えタンパク質、アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体)、ペプチド、脂質、炭水化物(例えば、単糖類、二糖類、多糖類)、核酸、ベクター(例えば、ウイルス、ウイルス粒子)およびこれらの複合体および接合体(例えば、2つの高分子間の共有結合および/または非共有結合による会合、例えば、炭水化物−タンパク質の複合体または接合体、または、活性な薬剤と高分子との共有結合および/または非共有結合による会合、例えば、ハプテン−タンパク質の複合体および接合体)が挙げられる。高分子は、中性であってもよく、正に帯電していてもよく、負に帯電していてもよく、または両性イオン性であってもよく、単独で、またはこれら2種類以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0082】
「タンパク質系化合物」は、天然、合成、半合成または組換えの化合物、またはタンパク質に構造的および/または機能的に関連する化合物、例えば、ペプチド結合を介して共有結合によって会合するα−アミノ酸を含むもの、またはこのα−アミノ酸から本質的になるものを指す。非限定的なタンパク質系化合物としては、球状タンパク質(例えば、アルブミン、グロブリン、ヒストン)、線維状タンパク質(例えば、コラーゲン、エラスチン、ケラチン)、混合したタンパク質(1つ以上の非ペプチド成分、例えば、糖タンパク質、核タンパク質、ムコタンパク質、リポタンパク質、メタロタンパク質を含有するものを含む。)、治療用タンパク質、融合タンパク質、受容体、抗原(例えば、合成または組換えの抗原)、ウイルス表面タンパク質、ホルモンおよびホルモン類似体、抗体(例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体)、酵素、Fabフラグメント(フラグメント抗原結合)、環状ペプチド、直鎖ペプチドなどが挙げられる。非限定的な治療用タンパク質としては、骨形成タンパク質、薬物耐性タンパク質、毒素、エリスロポエチン、血液凝固カスケードのタンパク質(例えば、VII因子、VIII因子、IX因子)、ズブチリシン、オボアルブミン、α−1−アンチトリプシン(AAT)、DNase、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、リゾチーム、リボヌクレアーゼ、ヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼ、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン、インスリンおよびインスリン様成長因子またはこれらの類似体、インターフェロン、グラチラマー、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、デスモプレシン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト(例えば、ロイプロリド、ゴセレリン、ブセレリン、ゴナドレリン、ヒストレリン、ナファレリン、デスロレリン、フェルチレリン、トリプトレリン)、LHERアンタゴニスト、バソプレシン、シクロプロリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモンペプチド、インスリン、グルコーゲン様ペプチドおよびこれらの類似体が挙げられる。
【0083】
タンパク質系化合物は、中性であってもよく、正に帯電していてもよく、負に帯電していてもよく、または両性イオン性であってもよく、単独で、またはこれら2種類以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0084】
「ペプチド」は、2種類以上の同じか、または異なるアミノ酸および/またはイミノ酸から少なくとも部分的に作られる天然、合成または半合成の化合物を指す。ペプチドの非限定的な例としては、オリゴペプチド(例えば、ジペプチドおよびトリペプチドなどを含め、50未満のアミノ酸/イミノ酸モノマー単位を有するもの)、ポリペプチド、本明細書に定義するようなタンパク質系化合物、およびこれらの前駆体および誘導体(例えば、グリコシル化されたもの、ハイパーグリコシル化されたもの、PEG化されたもの、FIT C標識されたもの、およびこれらの塩)が挙げられる。ペプチドは、中性であってもよく、正に帯電していてもよく、負に帯電していてもよく、または両性イオン性であってもよく、単独で、またはこれら2種類以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0085】
「脂質」は、一般的に両親媒性である天然、合成または半合成の化合物を指す。脂質は、典型的には、親水性成分と疎水性成分とを含む。非限定的な例としては、脂肪酸、天然の脂肪、ホスファチド、油、糖脂質、界面活性剤、脂肪族アルコール、ワックス、テルペンおよびステロイドが挙げられる。脂質は、イオン性、非イオン性、中性であってもよく、正に帯電していてもよく、負に帯電していてもよく、または両性イオン性であってもよく、単独で、またはこれら2種類以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0086】
「核酸」は、2種類以上の同じか、または異なるヌクレオチドから少なくとも部分的に作られる天然、合成、半合成または組換えの化合物を指し、一本鎖または二本鎖であってもよい。核酸の非限定的な例としては、オリゴヌクレオチド(例えば、20未満の塩基対を有するもの、例えば、センス、アンチセンスまたはミスセンス)、アプタマー、ポリヌクレオチド(例えば、センス、アンチセンスまたはミスセンス)、DNA(例えば、センス、アンチセンスまたはミスセンス)、RNA(例えば、センス、アンチセンスまたはミスセンス)、siRNA、ヌクレオチド酸構築物、これらの一本鎖または二本鎖のセグメント、およびこれらの前駆体および誘導体(例えば、グリコシル化されたもの、ハイパーグリコシル化されたもの、PEG化されたもの、FIT C標識されたもの、ヌクレオシド、およびこれらの塩)が挙げられる。核酸は、中性であってもよく、正に帯電していてもよく、負に帯電していてもよく、または両性イオン性であってもよく、単独で、またはこれら2種類以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0087】
「炭水化物」は、モノマー糖単位から少なくとも部分的に作られる天然、合成または半合成の化合物を指す。非限定的な炭水化物としては、多糖、糖類、デンプンおよびセルロース、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ヘタスターチ、シクロデキストリン、アルギネート、キトサン、コンドロイチン、ヘパリン、およびこれらの前駆体および誘導体(例えば、グリコシル化されたもの、ハイパーグリコシル化されたもの、PEG化されたもの、FIT C標識されたもの、およびこれらの塩)が挙げられる。炭水化物は、イオン性、非イオン性、中性であってもよく、正に帯電していてもよく、負に帯電していてもよく、または両性イオン性であってもよく、単独で、またはこれら2種類以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0088】
適切な殺虫剤としては、例えば、除草剤、殺昆虫剤および殺真菌剤が挙げられる。生物学的に活性な化合物として、殺昆虫性化合物、殺真菌性化合物、殺線虫性化合物、除草性化合物などが特に挙げられ得る。
【0089】
活性な薬剤が殺昆虫剤である場合、適切な殺昆虫性剤としては、限定されないが、ピレスロイド、ピレトリン、またはこれらの組み合わせが挙げられる。場合により、殺昆虫剤は、少なくとも1つのピレスロイド、例えば、アレスリン、d−アレスリン、d−transアレスリン、アルホキシレート、ビオレスメトリン、シフルトリン、β−シフルトリン、シハロトリン、ラムダシハロトリン、ガンマシハロトリン、ビフェントリン、シペルメトリン、ベータシペルメトリン、ゼータシペルメトリン、シフェノトリン、デルタメトリン、テトラメトリン、エスフェンバレレート、フェンフルトリン、フェノプロパトリン、フェンピレトリン、フェンバレレート、フルオロシトリン、フラメトリン、フルバリネート、イミプロスリン、ペルメトリン、フェンシクラート、フェノトリン、プラレトリン、レスメトリン、s−ビオアレスリン、tau−フルバリネート、テフルトリン、テトラメトリン、トラロシトリンおよびトラロメトリンまたはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。さらに、上述の殺虫剤の任意の組み合わせを使用してもよい。
【0090】
活性な薬剤が殺真菌剤である場合、適切な殺真菌性剤としては、限定されないが、スルフェンアミド、例えば、ジクロフルアニド、トリルフルアニド、フォルペットおよびフルオロフォルペット;ベンズイミダゾール、例えば、カルベンダジム(MBC)、ベノミル、フベリダゾールおよびチアベンダゾール、およびこれらの塩;チオシアネート、例えば、チオシアナトメチルチオベンゾ−チアゾール(TCMTB)およびメチレンビスチオシアネート(MBT);四級アンモニウム化合物、例えば、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルドデシル−アンモニウムクロリドおよびドデシル−ジメチルアンモニウムクロリド;モルホリン誘導体、例えばトリデモルフ、フェンプロピモルフおよびファリモルフ;フェノール、例えば、o−フェニルフェノール、トリブロモフェノール、テトラクロロフェノール、ペンタクロロフェノール、3−メチル−4−クロロフェノール、ジクロロフェンおよびクロロフェンおよびこれらの塩;アゾール、例えばトリアジメホン、トリアジメノール、ビテルタノール、テブコナゾール、プロピコナゾール、アザコナゾール、ヘキサコナゾール、プロクロラズ、シプロコナゾール;ヨードプロパルギル誘導体、例えば、ヨードプロパルギル−ブチルカルバメート(IPBC)およびヨード−プロパルギルオキシエチルフェニルカルバメート;ヨード誘導体、例えば、ジヨードメチル−p−アリール−スルホン、例えば、ジヨードメチル−p−トリル−スルホン;ブロモ誘導体、例えば、ブロモポール;イソチアゾリン、例えば、N−メチルイソチアゾリン−3−オン、オクチリノン、ベンズイソチアゾリノンおよびシクロペンテン−イソチアゾリン;ピリジン、例えば、1−ヒドロキシ−2−ピリジンチオンおよびテトラクロロ−4−メチルスルホニルピリジン;ニトリル、例えば、クロロタロニル;ベンゾチアゾール、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール;ジカルボキシイミド、例えば、イプロジオン、ビンクロゾリン、プロシミドンおよびダゾメット;およびキノリン、例えば、8−ヒドロキシキノリンが挙げられる。
【0091】
活性な薬剤が除草剤である場合、このような除草性化合物は、望ましくない植物(例えば、低木および茂み)の成長を制御するのに適している。適切な除草性剤としては、限定されないが、2,4−D,アミノピラリド、アトラジン、クロピラリド、ジカンバ、グルホシネートアンモニウム、フルロキシピル、グリホサート、イマザピル、イマザピック、イマザモックス、リニュロン、メタラクロル、パラコート、ペンディメタリン、ピクロラム、塩素酸ナトリウムおよびトリクロピルが挙げられる。
【0092】
以下の化合物が植物栄養物質の例として述べられてもよく、本発明のカプセル調剤薬中に存在していてもよい。クロロフィルに由来する構造を有する水溶性金属化合物、例えば、ナトリウムクロロフィリンおよびナトリウム銅クロロフィリン;例えば、水溶性鉄化合物、塩化第一鉄、硝酸第一鉄、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄アンモニウム、酢酸第二鉄、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、クエン酸第二鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グリセロリン酸鉄、酒石酸第二鉄、乳酸第二鉄、グリコール酸第二鉄などを含め、鉄、亜鉛およびマグネシウムからなる群から選択される元素を与える水溶性化合物;これらの水溶性鉄化合物に対応する水溶性マグネシウム化合物および水溶性亜鉛化合物;およびクエン酸および硫酸の第二鉄−亜鉛複塩、第二鉄−マンガン複塩、または亜鉛−マンガン複塩などが挙げられる。
【0093】
本発明の微粒子調剤薬は、1種類の生物学的に活性な化合物または2種類以上のこのような化合物の組み合わせを含有していてもよい。
【0094】
本発明の微粒子調剤薬は、生物学的に活性な化合物をそのまま、または1つ以上の医薬的または農業的に許容される補助物質、例えば、担体、増量剤、安定化剤、表面活性剤および着色剤との混合物の状態で含有していてもよい。
【0095】
本発明の特定の態様において、微粒子と、封入された活性な薬剤と、防腐性となる量のテルペン成分とを含む微粒子送達系が提供される。本発明のこの態様によれば、微粒子は、酵母細胞粒子またはグルカン粒子、好ましくは、中空の酵母細胞粒子または中空のグルカン粒子を含んでいてもよい。
【0096】
本発明の別の態様において、溶媒系が必要な場合、溶媒系は、水を含んでいてもよい。
【0097】
本発明のこの態様の微粒子送達系は、活性な薬剤のin vivo送達およびin vitro送達に特に有用であり得る。従って、本発明の組成物および/または微粒子送達系は、限定されないが、例えば、ヒト、ウシ、ヒツジ、イノシシ、ウマ、イヌおよびネコの種を含む哺乳動物;鳥類、魚類、節足動物、および/または植物の治療を含め、ヒトおよび/または動物の医薬および/または農業福祉の分野に有用であり得る。
【0098】
特定の実施形態において、抽出された酵母細胞壁は、90重量%未満のβ−グルカンを含む。特定の実施形態において、抽出された酵母細胞壁は、50重量%を超えるキチンを含む。別の実施形態において、抽出された酵母細胞壁は、さらに、30重量%を超えるマンナンを含む。他の特定の実施形態において、抽出された酵母細胞壁は、1重量%を超えるタンパク質を含む。誤りを避けるために、抽出された酵母細胞壁は、細胞内成分が除去された酵母細胞、すなわち、中空の酵母細胞と考えるものとする。
【0099】
本発明の微粒子組成物は、1つ以上の生物学的に活性な薬剤、または2種類以上のこのような薬剤の組み合わせを含有していてもよい。
【0100】
本発明の微粒子組成物は、生物学的に活性な化合物をそのまま、または1つ以上の医薬的または農業的に許容される補助物質、例えば、担体、増量剤、安定化剤、表面活性剤および着色剤との混合物の状態で含有していてもよい。
【0101】
組成物中の活性な薬剤の量は、特に、活性な薬剤の性質、意図する組成物の使用などに依存してさまざまであってもよい。
【0102】
従って、本発明の組成物は、組成物全体を基準として、約1ppmから約25ppt(25,000ppm)の活性な薬剤成分、好ましくは、約10ppmから約5,000ppm、約10ppmから約5,000ppm、約100ppmから約4,000ppm、約200ppmから約3,000ppm、約300ppmから約2,000ppm、約400ppmから約1,500ppm、約500ppmから約1,000ppmの活性な薬剤成分を含有していてもよい。例えば、250ppm、500ppm、1000ppm、2000ppm。または、本発明の組成物中の活性な薬剤成分の量は、組成物全体を基準として、組成物の約0.1%(w/w)から約90%(w/w)含まれていてもよい。従って、組成物中の活性な薬剤の量は、組成物の約1%(w/w)から約90%(w/w)、約2%(w/w)から約90%(w/w)、約3%(w/w)から約90%(w/w)、約4%(w/w)から約90%(w/w)、約5%(w/w)から約90%(w/w)、約6%(w/w)から約90%(w/w)、約7%(w/w)から約90%(w/w)、約8%(w/w)から約90%(w/w)、約9%(w/w)から約90%(w/w)、約10%(w/w)から約90%(w/w)、約15%(w/w)から約90%(w/w)、約20%(w/w)から約90%(w/w)、約25%(w/w)から約90%(w/w)、約30%(w/w)から約90%(w/w)、約35%(w/w)から約90%(w/w)、約40%(w/w)から約90%(w/w)、約45%(w/w)から約90%(w/w)、約50%(w/w)から約90%(w/w)、約60%(w/w)から約90%(w/w)、約70%(w/w)から約90%(w/w)、約80%(w/w)から約90%(w/w)であってもよい。
【0103】
場合により、本発明の組成物のテルペン成分および/または生物学的に活性な薬剤成分は、界面活性剤と会合してもよい。界面活性剤は、非イオン性、カチオン性またはアニオン性であってもよい。
【0104】
適切な界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリソルベート40、ポリソルベート60ポリグリセリルエステル、ポリグリセリルモノオレエート、デカグリセリルモノカプリレート、プロピレングリコールジカプリレート、トリグリセロールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレエート、Tween(R)、Span(R)20、Span(R)40、Span(R)60、Span(R)80、Brig 30、またはこれらの混合物が挙げられる。界面活性剤は、エマルション中にテルペン成分および/または生物学的に活性な成分を保持するように作用し、さらに、テルペン成分を、微粒子、例えば、中空のグルカン粒子または中空の細胞壁粒子に封入させるのにも役立つ。
【0105】
本発明の組成物の封入された活性な薬剤成分、すなわち、組成物の微粒子/生物学的に活性な薬剤成分は、1%(w/w)から99%(w/w)の活性な薬剤および1%(w/w)から99%(w/w)の微粒子、例えば、中空のグルカン粒子または中空の細胞壁粒子を含んでいてもよい。さらに具体的には、組成物は、約10%(w/w)の微粒子および約90%(w/w)の活性な薬剤、約15%(w/w)の微粒子および約85%(w/w)の活性な薬剤、約20%(w/w)の微粒子および約80%(w/w)の活性な薬剤、約25%(w/w)の微粒子および約75%(w/w)の活性な薬剤、約30%(w/w)の微粒子および約70%(w/w)の活性な薬剤、約35%(w/w)の微粒子および約65%(w/w)の活性な薬剤、約40%(w/w)の微粒子および約60%(w/w)の活性な薬剤、約45%(w/w)の微粒子および約55%(w/w)の活性な薬剤、例えば、約50%(w/w)の微粒子および約50%(w/w)の活性な薬剤を含んでいてもよい。組成物は、場合により、約0.1%(w/w)から約10%(w/w)の界面活性剤を含んでいてもよい。
【0106】
適切には、本発明の組成物は、約500ppmから約10,000ppmの微粒子、例えば、中空のグルカン粒子または中空の細胞壁粒子を含み、ここで、粒子は、本明細書で上に記載したような防腐性となる量の1種類以上のテルペンを含有する。好ましくは、組成物は、約1,000ppmから約2,000ppmの微粒子、例えば、中空のグルカン粒子または中空の細胞壁粒子を含み、ここで、粒子は、防腐性となる量の1種類以上のテルペンおよび約0.1%(w/w)から約90%(w/w)の活性な薬剤成分を含有する。
【0107】
本発明の組成物中の中空のグルカン粒子または中空の細胞壁粒子の濃度は、活性な薬剤を封入するために、約1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、125、130、140、150、160、175、190、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1100、1250、1375、1425、1500、1600、1750、または2000ppmを、本発明の組成物および方法において有効な濃度として使用することができる。もっと高い濃度(25ppt(すなわち、パーツパーサウザンド)まで)を作ることができ、本発明に有用であり得る。
【0108】
場合により、組成物は、本明細書に具体的に述べられるものに加え、他の活性化合物、例えば、他の抗菌性剤、酵素などを含んでいてもよい。
【0109】
本発明の組成物は、マイクロカプセルおよび/または活性な薬剤の酸化を減少させるために酸化防止剤成分も含んでいてもよい。このような酸化防止剤の例は、ローズマリー油、ビタミンCまたはビタミンEであってもよい。
【0110】
本発明の組成物は、乾燥粉末の形態であってもよい。組成物は、液体、固体またはゲル状の形態で、農業的、食品または医薬として許容される担体または賦形剤との組み合わせた状態で与えられてもよい。
【0111】
固体組成物のために、適切な担体としては、医薬グレードまたは農業グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。適切には、組成物は、錠剤またはペレットの形態になるように配合されてもよい。
【0112】
組成物のペレット、錠剤または他の固体の形態は、好ましくは、液体(例えば、水)に入れられる場合、組成物の分散を促進する分散剤も含有していてもよい。適切な分散剤としては、キサンタンゴム、マルトデキストリン、アルギネートなどが挙げられる。
【0113】
液体組成物は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール、エタノールなどに組成物に分散させることによって調製し、溶液または懸濁物を作成することができる。所望な場合、これらの組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化剤(例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウムまたはトリエタノールアミンオレエート)を含有していてもよい。このような液体組成物を調製する方法が知られているか、または、当業者には明らかである。液体組成物は、液体の食品用または飲料用の材料に組成物を分散させることによって調製することができる。さらに、適切な液体の医薬として許容されるか、または農業的に許容される賦形剤を使用することができる。
【0114】
必要な場合、または所望な場合、従来の既知の担体、水溶液、粉末または油性基剤、増粘剤などを使用してもよい。
【0115】
本発明は、さらに、
受容者に活性な薬剤を送達する方法であって、
(i)防腐性となる量の1種類以上のテルペンを含む微粒子成分を提供する工程と;
(ii)微粒子と活性な薬剤とを接触させ、この活性な薬剤が、少なくとも部分的に微粒子内に封入されるようになる工程と;
(iii)受容者と、活性な薬剤を封入する微粒子成分とを接触させる工程とを含む、方法を提供する。
【0116】
受容者は、例えば、ヒト、ウシ、ヒツジ、イノシシ、ウマ、イヌおよびネコの種;鳥類、魚類、節足動物を含め、1つ以上の細胞または哺乳動物、および/または植物を含んでいてもよい。
【0117】
本発明は、さらに、個体の細胞と、防腐性となる量の1種類以上のテルペンおよび活性な薬剤を含む微粒子成分を含む組成物とを接触させることによって、細胞に有効な量の活性な薬剤を投与する工程を含む、活性な薬剤を用いて身体を治療する方法を提供する。
【0118】
本発明のこの態様の治療方法において、活性な薬剤が医薬的に活性な薬剤である場合、身体は、哺乳動物、例えば、ウシ、ヒツジ、イノシシ、ウマ、イヌおよびネコの種を含んでいてもよい。哺乳動物は、特に、ヒトを含んでいてもよい。
【0119】
活性な薬剤が医薬的に活性な薬剤である場合、本発明は、さらに、ある障害を患う患者を治療する方法を提供してもよく、この方法は、微粒子成分内に封入された活性な薬剤を含む組成物の形態で、有効な量の活性な薬剤を投与することを含み;前記微粒子成分は、防腐性となる量の1種類以上のテルペンを含む。
【0120】
活性な薬剤が、殺虫剤、例えば、殺昆虫剤である場合、本発明は、さらに、ペスト、例えば、節足動物を殺す方法を提供してもよく、この方法は、微粒子成分内に封入された活性な薬剤を含む組成物の形態で、有効な量の活性な薬剤を投与することを含み;前記微粒子成分は、防腐性となる量の1種類以上のテルペンを含む。
【0121】
本発明のこの態様の方法は、殺虫剤を身体、植物などに投与することを含んでいてもよい。活性な薬剤が殺虫剤(例えば、殺昆虫剤)である場合、本発明は、さらに、ペスト、例えば、節足動物を殺す方法を提供してもよく、この方法は、微粒子成分内に封入された活性な薬剤を含む組成物の形態で、有効な量の活性な薬剤を投与することを含み;前記微粒子成分は、防腐性となる量の1種類以上のテルペンを含む。
【0122】
本発明のこの方法は、本発明の組成物を、本明細書で上に記載するような身体、または植物、またはペストに直接塗布することを含んでいてもよいことが当業者に理解されるだろう。
【0123】
殺虫剤という用語は、殺真菌剤、殺昆虫剤、殺ダニ剤、殺菌剤、除草剤、殺鼠剤などを含んでいてもよい。
【0124】
本発明のこの態様によれば、「節足動物」という用語は、昆虫およびクモ、例えば、限定されないが、マダニ、ダニ、ノミ、蚊、ブヨなどを含む。
【0125】
投与される組成物の量は、もちろん、投与様式、標的などに依存して変わるだろう。適切な組成物は、上にもっと詳細に定義されるものである。
【0126】
上述の方法において投与される活性な薬剤の量は、明確に、望ましい結果を達成するために、すなわち、ペスト、例えば、節足動物、例えば、昆虫またはクモ、真菌類、細菌類などを死に至らしめるために十分な量であるべきであるが、哺乳動物、特にヒトに重大な毒性の影響を誘発しない量であるべきである。
【0127】
微粒子、例えば、中空のグルカン粒子または細胞壁粒子に活性な薬剤成分を組み込むと、活性な薬剤の放出および/または分解の速度を下げることによって、活性な薬剤の作用の持続時間を長くすることができる。
【0128】
活性な薬剤を、微粒子、例えば、中空のグルカン粒子または中空の細胞壁粒子の中に取り込み、安定に封入することができる。このような粒子に活性な薬剤を封入するのは、この粒子を活性な薬剤と共にインキュベートすることによって達成することができる。
【0129】
本発明の組成物は、限定されないが、以下の利点を与えることができる:
−活性な薬剤の封入を最大にする。
−封入されていない活性な薬剤を最小限にする。
−活性な薬剤の安定性を制御する。
−活性な薬剤の放出速度を制御する。
−質量および均質性を増加させるために、液体活性な薬剤の固体形態の作成。
−活性な薬剤の取扱いおよび塗布を単純化する。
−活性な薬剤の臭気および味をマスキングする。
−望ましくないカビ、酵母および/または真菌類の成長に起因する組成物の腐敗または分解を阻害する。
【0130】
本発明の活性な薬剤成分は、1種類の活性な薬剤または活性な薬剤の混合物を含んでいてもよい。
【0131】
本発明の組成物の微粒子、活性な薬剤、テルペン防腐剤成分、界面活性剤および他の成分は、容易に購入されてもよく、または、合成化学者に一般的に知られている技術を用いて合成されてもよい。
【0132】
本発明で使用するテルペンは、安全性および規制の理由のために、少なくとも食品グレードのテルペン(米国FDAまたは米国以外の同等の国立の規制機関によって定義されるようなもの)であることがきわめて好ましい。
【0133】
本発明の組成物は、乾燥粉末の形態であってもよい。組成物は、液体、固体またはゲル状の形態で、許容される担体または賦形剤と組み合わせた状態で提供されてもよい。
【0134】
固体組成物のために、適切な担体としては、限定されないが、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0135】
組成物は、液体(例えば、水)に入れられる場合、組成物の分散を促進する分散剤も含有していてもよい。適切な分散剤としては、キサンタンゴム、マルトデキストリン、アルギネートなどが挙げられる。
【0136】
液体組成物は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール、エタノールなどに組成物を分散させることによって調製し、溶液または懸濁物を作成することができる。所望な場合、これらの組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化剤(例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン酢酸ナトリウムまたはトリエタノールアミンオレエート)を含有していてもよい。このような液体組成物を調製する方法が知られているか、または、当業者には明らかである。液体組成物は、医薬として許容されるか、または農業的に許容される賦形剤に組成物を分散させることによって調製することができる。
【0137】
本発明の組成物は、バインダーおよび滑沢剤を含有していてもよい。微細な粉末または顆粒は、希釈剤、分散剤および/または表面活性剤を含有していてもよく、水中またはシロップ中に存在していてもよい。
【0138】
組成物は、簡便には、乾燥状態であってもよい。組成物の非水溶液または懸濁物は、適切でもあり、懸濁剤を含有していてもよい。望ましい場合、または必要な場合、防腐剤、懸濁剤、増粘剤または乳化剤が含まれていてもよい。
【0139】
組成物は、バッファー、希釈剤および他の適切な添加剤も含有していてもよい。
【0140】
非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)および注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)である。水性担体としては、生理食塩水および緩衝化された媒体を含め、水、アルコール/水溶液、エマルション、または懸濁物が挙げられる。他のビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンガー液、または固定化油が挙げられる。
【0141】
防腐剤および他の添加剤、例えば、抗菌性剤、酸化防止剤、キレート化剤なども存在していてもよい。
【0142】
必要な場合、または所望な場合、従来の担体、水性、粉末、または油性の基剤、増粘剤などを使用してもよい。
【0143】
本発明は、本明細書で上に記載されるような微粒子送達系を製造する方法であって、この方法は、
微粒子、例えば、β−グルカンを含む抽出された酵母細胞壁を提供し、酵母細胞壁が内部空間の輪郭を形成する工程と;
微粒子と防腐性となる量のテルペン成分とを接触させ、テルペン成分が微粒子と会合するようになる工程と;
微粒子と活性な薬剤とを接触させ、活性な薬剤が微粒子と会合するようになる工程とを含む、方法も提供する。
【0144】
本発明のこの態様の方法において、活性な薬剤と微粒子とを会合させる前、または会合させた後に、テルペン防腐剤成分が、微粒子と会合していてもよいことが当業者によって理解されるだろう。
【0145】
または、この方法は、活性な薬剤およびテルペン成分と、微粒子とを同時に会合することを含んでいてもよい。
【0146】
本発明は、さらに、治療に有効な量の封入された医薬的に活性な薬剤と、防腐性となる量の1種類以上のテルペンとを含む医薬組成物を調製する方法であって、この方法は、マイクロカプセル成分と、活性な薬剤および防腐性となる量のテルペン成分とを混合させることを含む方法を提供する。
【0147】
本発明は、ペストに有効な量の封入されたペストに活性な薬剤と、防腐性となる量の1種類以上のテルペンとを含む殺虫組成物を調製する方法であって、マイクロカプセル成分と、活性な薬剤および防腐性となる量のテルペン成分とを混合することを含む、方法も提供する。
【0148】
さらに具体的には、本発明のこの態様の方法は、活性な薬剤と、防腐性となる量のテルペン成分とを含む組成物を調製することを含み、少なくとも活性な薬剤は、封入された形態であり、活性な薬剤を封入する微粒子、例えば、中空のグルカン粒子または中空の細胞壁粒子を調製することを含み、この方法は、
(a)テルペン成分を提供する工程と;
(b)微粒子、例えば、中空のグルカン粒子または細胞壁粒子を提供する工程と;
(c)適切な条件下、例えば、テルペンを封入するために、テルペン成分を微粒子と共にインキュベートする工程と;
(d)場合により、微粒子/テルペン成分を回収する工程と;
(e)活性な薬剤成分を提供する工程と;
(f)適切な条件下、例えば、テルペンを封入するために、活性な薬剤を微粒子と共にインキュベートする工程と;
(g)微粒子/テルペン成分を回収する工程とを含む。
【0149】
活性な薬剤が、テルペン成分と同時に封入されてもよいことが当業者によって理解されるだろう。または、テルペン成分で処理する前に、活性な薬剤が封入されてもよい。好ましい実施形態において、マイクロカプセルを活性な薬剤で処理する前に、マイクロカプセルを防腐性となる量のテルペン成分で処理する。
【0150】
場合により、上の方法は、さらに、活性な薬剤成分を封入する粒子を乾燥させる工程を含んでいてもよい。乾燥は、多くの様式で達成されてもよく、凍結乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥またはスプレー乾燥から作られるものが述べられてもよく、これらはすべてよく知られた方法である。
【0151】
上の方法の工程(a)において、テルペン成分は、適切には、水性媒体中の懸濁物として、場合により界面活性剤存在下で提供される。適切には、溶媒は、水である。適切な界面活性剤は、Tween−80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)であり、好ましくは、界面活性剤は、反応混合物全体の約0.1体積%から10体積%、さらに好ましくは、約1体積%の濃度で存在する。または、テルペン成分は、溶媒(例えば、水)中の真の溶液として提供されてもよい。テルペンの真の水溶液は、真の溶液が得られるまで、高剪断状態でテルペンを水に混合することによって得ることができる。
【0152】
刊行物WO03/020024は、テルペンの真の水溶液を作成するさらなる詳細を与える。
【0153】
上の方法の工程(b)において、微粒子、例えば、中空のグルカン粒子または細胞壁粒子は、適切には、水または他の適切な液体中の懸濁物として与えられる。
【0154】
適切には、懸濁物は、1mlあたり約1mgから1000mgの粒子、好ましくは、200mg/mlから400mg/mlの粒子を含む。または、粒子は、乾燥粉末として与えられてもよく、テルペン−界面活性剤懸濁物に加えられてもよい。
【0155】
または、粒子は、粒子を最低限水和させるのに十分な液体の状態ではあるが、顕著に過剰ではない状態で与えられる。粒子を最低限水和させるのに必要な液体の体積を記述するために、「流体力学的体積」(HV)という用語を用いる。従って、適切には、粒子は、そのHVから、HVの1.5倍までの範囲の体積(1.5HV)で与えられる。これにより、その後の乾燥工程がもっと効率的になる。さらに、少ない体積の液体を使用する場合(すなわち、HV付近から1.5HVまで)、最終生成物をペレットまたは麺状の形態に押出成型することも可能であり、これは、流動床乾燥にとって簡便である。室温で、中空のグルカン粒子または細胞壁粒子によってテルペン成分を封入することができることがわかっている。しかし、封入速度は、37Cで大きくなるが、この温度は、組成物の任意の成分の沸点または変性温度より低い温度に維持されなければならない。従って、上の方法の工程(c)の適切な条件は、20から37Cの温度で大気圧である。特定の封入反応のための条件の最適化は、通常の実験の事項である。
【0156】
場合により、上の方法は、さらに、テルペン成分を封入する粒子を乾燥させる工程を含んでいてもよい。乾燥は、多くの様式で達成されてもよく、凍結乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥またはスプレー乾燥から作られるものが述べられてもよく、これらはすべてよく知られた方法である。
【0157】
活性な薬剤成分は、一般的に、テルペン成分と同様の様式で処理されてもよい。
【0158】
本発明の目的は、微粒子成分と、封入された活性な薬剤と、防腐性となる量の1種類以上のテルペンとを含む組成物を提供することであるが、防腐性となる量の1種類以上のテルペンを用いて与えられる微粒子は、すなわち活性な薬剤を提供する前の微粒子は、これ自体が新規であることが理解されるだろう。
【0159】
従って、本発明のさらなる態様によれば、微粒子と、防腐性となる量の1種類以上のテルペンとを含む組成物が提供される。このような組成物は、特に、本発明の第1の態様の組成物を作成するために活性な薬剤で処理するために有用である。
【0160】
本明細書で上に記載したように、微粒子、例えば、中空のグルカン粒子または細胞壁粒子に活性な薬剤成分を組み込むと、活性な薬剤の放出および/または分解の速度を下げることによって、活性な薬剤の作用の持続時間を長くすることができる。
【0161】
マイクロカプセル防腐剤としてのテルペン成分の使用は、これ自体が新規である。
【0162】
従って、本発明のさらなる態様によれば、微粒子内の望ましくないカビ、酵母、および/または真菌の成長の阻害または防止におけるテルペン成分の使用が提供される。
【0163】
本発明のこの態様によれば、微粒子は、好ましくは、グルカン粒子または酵母粒子、例えば、本明細書で上に記載したような中空のグルカン粒子または中空の酵母粒子である。
【0164】
本発明のこの態様によれば、防腐性となる量または抗カビ性となる量であると考え得るテルペン成分の量は、組成物の≦1%(w/w)、<1%(w/w)、≦0.9%(w/w)、≦0.8%(w/w)、≦0.7%(w/w)、≦0.6%(w/w)、≦0.5%(w/w)、≦0.4%(w/w)、≦0.3%(w/w)、≦0.2%(w/w)、≦0.1%(w/w)、≦0.09%(w/w)、≦0.08%(w/w)、≦0.07%(w/w)、≦0.06%(w/w)、≦0.05%(w/w)、≦0.04%(w/w)、≦0.03%(w/w)、≦0.02%(w/w)、≦0.01%(w/w)である。
【0165】
1種類以上のテルペンの防腐性となる量または抗カビ性となる量は、約0.01%(w/w)から約0.99%(w/w)であってもよい。
【0166】
本発明のさらなる態様によれば、微粒子(例えば、グルカン粒子または酵母粒子)内、例えば、本明細書で上に記載するような中空のグルカン粒子または中空の酵母粒子内の望ましくないカビ、酵母、および/または真菌の成長を阻害または防止する方法であって、この方法が、微粒子を、本明細書で上に記載したような防腐性または抗カビ性となる量のテルペン成分で処理することを含む、方法が提供される。
【0167】
本発明は、さらに、防腐処理された微粒子組成物の製造におけるテルペンの使用を提供する。本発明のこの態様によれば、微粒子組成物は、好ましくは、グルカン粒子または酵母粒子、例えば、本明細書で上に記載したような中空のグルカン粒子または中空の酵母粒子を含む。
【0168】
従って、本発明の組成物は、特に、種々の活性な薬剤が、防腐処理されたマイクロカプセルに封入され得るという点で有利であり得る。
【実施例】
【0169】
ここで、本発明を単なる実施例によって記載する。
【0170】
[実施例1]
6個の酵母懸濁物サンプルを以下の組成に調製した。
1.標準的な組成物である酵母グルカン粒子(テルペンを添加しない。)。
2.標準的な組成物と、1g/lゲラニオール。
3.標準的な組成物と、1g/lオイゲノール。
4.標準的な組成物と、1g/lカルボン。
5.標準的な組成物と、1g/lシトラール。
6.標準的な組成物と、1g/lチモール。
【0171】
それぞれの調剤薬のサンプルを20℃および35℃に保存した。それぞれを、物理的な変化、例えば、カビ成長の証拠について、週ごとに観察した。
【0172】
その評価が、カビ成長の徴候を示したら、試験を終了した。結果を表Iにまとめている。
【0173】
【表1】
【0174】
カビの成長が観察された唯一のサンプルは、20℃で保存したコントロールサンプル1番(テルペン添加せず)であった。