【文献】
Subrata Sanyal,et al.,”Anisotropy of optical absorption and fluorescence in Al2O3:C,Mg crystals”,Journal of Applied Physics, 2005年8月8日,Vol.98,No.3,p.033518−1〜033518−12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
当該デバイスは更に、前記LEDダイの一部として前記LED半導体層の上に位置する蛍光体層を有し、前記LEDダイの発光は、前記一次光、前記発光サファイアからの前記二次光、及び前記蛍光体層からの光を含む、請求項1に記載のデバイス。
前記LEDダイが形成された後に、前記発光サファイアの発光性を高めるために、前記発光サファイアをアニールすることによって前記LEDダイ内の前記発光サファイアを活性化するステップ、を更に有する請求項15に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発光サファイアの説明
サファイアは、ここでは、単結晶の形態にある酸化アルミニウムコランダム(鋼玉)を呼ぶものである。主たる化学組成はAl
2O
3である。サファイアは、ドーパント及び不純物として他の元素を含有することができるが、依然としてサファイアであると見なされる。サファイアの単結晶は典型的にチョクラルスキープロセスのバリエーションを用いて成長される。
【0020】
ここで使用されるとき、発光サファイアなる用語は、後述する少なくとも1つのそのF
2ライク(F
2-like)中心に対応する蛍光発光(ルミネッセンス)を呈するサファイアを呼ぶものである。
【0021】
Fライク(F-like)中心は、発光サファイアの色中心(カラーセンター)である。Fライク中心は、ここでは、サファイアの格子内の単一の酸素空孔の異なる化学的変異として定義される。このような酸素空孔は典型的に、サファイアの結晶成長又はその後のアニールにおいて高度に還元性の雰囲気を用いることによって作り出される。高濃度のFライク中心を含有するサファイアは一般に、Al
2O
3:C、又はTCR(thermochemically reduced;熱化学的に還元された)サファイアと呼ばれている。
【0022】
Fライク中心の最も一般的なバリエーションは以下である。
・F中心は、2つの電子を捕捉(トラップ)した酸素空孔である。
・F
+中心は、1つの電子を捕捉した酸素空孔である。
・F(Mg)中心は、それを囲む1つ又は幾つかのMgカチオンが存在するF中心である。
・F
+(Mg)中心は、それを囲む1つ又は幾つかのMgカチオンが存在するF
+中心である。
・Fライク中心を囲むMgカチオンの存在は、吸収及び発光のシフトをもたらす。
【0023】
以上にて識別したセンター(中心)は、
図1の表に報告されるように、主としてそれらの光吸収帯及びルミネッセンス発光帯によって識別されている。
図1は、発光サファイア内の既知のFライク中心及びF
2ライク中心の光学的な特徴を特定している。
【0024】
我々は、F
2ライク中心を、集まった2つのFライク中心の異なる組み合わせとして定義する。よく報告されているF
2ライク中心のバリエーションは以下である。
・F
2中心は、2つのF中心のクラスターである。
・F
2+中心は、1つのF
+中心と1つのF中心とのクラスターである。
・F
2+(2Mg)中心は、それを囲む2つのMgカチオンが存在する1つのF
2+中心のクラスターである。
・F
22+中心は、2つのF
+中心のクラスターである。
・F
22+(2Mg)中心は、それを囲む2つのMgカチオンが存在する1つのF
2+中心のクラスターである。
【0025】
F
2ライク中心の一部は、可視スペクトル(緑を含む)で発光(放射)し、故に、本発明に最も関連がある。
【0026】
酸素空孔の互いに対する位置は、
図1に示すように、光吸収帯の異方性によって識別される。F
2ライク中心を囲むMgカチオンの存在は、吸収及び発光のシフトをもたらす。また、様々なF
2ライク中心の複数の異なる組み合わせが、サファイア内で存在することができ、サファイアの僅かに異なる光学的な特徴を生じさせることになる。
【0027】
発光サファイアを作り出すために、サファイアの熱処理が使用される。この熱処理を、サファイア活性化(アクティベーション)と称する。この処理は、F
2ライク中心を形成するようにFライク中心の集合(アグリゲーション)を生じさることで、本発明において使用される発光サファイアを作り出す。
【0028】
発光サファイアの発光を調整(チューニング)するために、光処理が使用される。これをサファイア調整(コンディショニング)と称する。この処理は、複数の異なるF
2ライク中心の濃度を変える。
【0029】
従って、発光サファイアを用いる後述のdcLEDの様々な実施形態は、好適なサファイア活性化及びサファイア調整によって、多様な色を放出するようにチューニングされることができる。
【0030】
サファイア内でのF
2ライク中心の生成及び破壊は熱的に行われる。
図2は、650nmレーザ誘導(一次光)の下での発光サファイアの750nm発光(二次光)の温度安定性のグラフである。
図2が示すことには、750nmで発光するF
2ライク中心(
図1を参照するに、F
2+(2Mg)中心は750nmの発光を有する)の発光(発光強度)は、約600℃より上でアニールした後に急速に低下する。
図2での特定の発光波長及び誘導波長は一般にLED実装で使用されるものではないが、
図2は、高い温度が発光サファイアの光学特性に一般的にどのように影響するかを示している。
【0031】
図3は、773K(500℃)での等温アニールの時間に対する2.87eV帯及び4.8eV帯の吸収係数のグラフである。2.87eV帯及び4.8eV帯はどちらも、LEDで典型的に使用されるものより短い波長である。
図3は、500℃でのアニール中のF
2ライク中心の濃度の増加(これは、グラフに描かれたF
22+吸収係数の上昇に相関がある)を示している。
図3はまた、それと同時にF
+吸収係数がアニール時間とともに低下することを示している。
【0032】
図2及び3により示されるように、およそ600℃でF
2ライク中心の破壊が開始するが、それらの個体数は、500℃でのサファイアの長期化されたアニールによって増加され得る。500℃でのアニール中、F
+中心が集まってF
22+中心を形成する。アニール時間が増加するにつれ、F
22+中心の吸収係数が上昇し、F
+中心の吸収係数が低下する。吸収係数は、関連する中心の個体数に相関する。このような(熱を用いる)アグリゲーションステップを、ここでは、サファイア活性化(アクティベーション)と称する。
【0033】
図2及び3は、論文:Ramirez,R.等, Photochromism of vacancy-related defects in thermochemically reduced alpha-Al
2O
3:Mg single crystals, Applied Physics Letters, AIP, 2005, 86, 081914、及びRamirez,R.等, Optical properties of vacancies in thermochemically reduced Mg-doped sapphire single crystals, Journal of Applied Physics, AIP, 2007, 707, 123520から得たものであり、これらをここに援用する。
【0034】
Mgの役割はF
2ライク中心が集まることを助けることであると報告されている。このようなサファイアはAl
2O
3:C,Mgとも呼ばれている。サファイアは、Al
2O
3:C,Mg組成を有するように、既知の方法を用いて成長され得る。
【0035】
サファイア内のF
2ライク中心の、報告されている特性の1つは、十分な放射照度の光子束の下でのフォトクロミック変換である。報告されていることには、440nmの波長での高ピークパワーのレーザによる発光サファイアの励起は、青色吸収/緑色発光するF
22+(2Mg)中心の濃度を低下させて、F
2+(2Mg)中心を増加させることができる(下記の式1)。これは、その発光特性を更に調整するサファイアの光処理である。その他のセンターの濃度も同時に変化して、荷電平衡が保存されたままとなる。これまた報告されていることには、F
22+(2Mg)中心の濃度は、330nmの波長の高ピークパワーのレーザで発光サファイアを励起することによって低下させることができる(式2)。
【0036】
このような光処理によるF2ライク中心濃度の調整を、ここでは、サファイア調整(コンディショニング)として定義する。
【0037】
F
22+(2Mg)+hν
440 → F
2+(2Mg)+その他のセンター (式1)
F
2+(2Mg)+hν
330 → F
22+(2Mg)+その他のセンター (式2)。
【0038】
サファイアのフォトクロミズム特性は、440nm及び330nmでの励起に限定されない。好ましくはF2ライク中心の吸収帯にある、その他の波長も使用され得る。フォトクロミズム特性を制御する基礎となる“2光子吸収過程”は、文献に十分に記載されており、ここに記載される必要のないものである。
【0039】
一実施形態において、サファイアは、LEDのpnジャンクションによって生成された青色一次光の一部を吸収して緑色二次光を発するように、(熱的)活性化及び(光学的)調整に掛けられる。正確な活性化及び調整は、一次光のピーク波長、サファイアの厚さ/密度、狙いとする色点、及びその他の要因に依存する。狙った色を達成するのに必要とされる活性化及び調整は、具体的な用途に対して実験的に決定され得る。そして、白色光を作り出すために、LEDの頂部に赤色蛍光体を付加し得る。
【0040】
図4は、Al
2O
3:C,Mg及びAl
2O
3:Cに関するF中心、F
+中心、及びF
2+(2Mg)中心についての、波長に対する吸収のグラフである。挿入図は、波長300−700nmについての拡大図である。曲線20は、435nmレーザ光で“ブリーチ”されたサファイアに関し、曲線22は、“成長されたまま”又はアニールされたサファイアに関する。
図4は、以下の論文:Akselrod,M.S.等, New aluminum oxide single crystals for volumetric optical data storage, Optical Data Storage 2003, Optical data storage, SPIE, 2003, 5069, 244-251、及びAkselrod,M.S.等, Fluorescent aluminum oxide crystals for volumetric optical data storage and imaging applications, J. Fluoresc, 2003, 13, 503-511から取ったものであり、これら双方をここに援用する。
【0041】
特に関心があるのは、一般に青から赤の範囲を含むものである約450−650nmの波長域である。
【0042】
発光サファイアの特性、作製、及び調節はよく知られているが、ダウンコンバージョンのためにLEDダイに発光サファイアを統合(インテグレーション)することは本発明者が知らないことである。
【0043】
変換効率(conversion efficiency;CE)は、一次ソース光の量当たりの、LEDにより放出される(ダウンコンバートされた光を含む)光束(lm)である。CEは、二次ソース(蛍光発光材料)の効率及びLEDへのそのインテグレーションの良好な物差しである。以下の実施形態においては、発光サファイアをダウンコンバータとして用いて、得られるLEDのCEが、pcLEDのCEに対して向上される。
【0044】
実施形態1
第1の実施形態において、蛍光体粉末を用いることに代えて、あるいは加えて、発光サファイアが粉末形態で使用される。この第1の実施形態の一例が、
図5及び6によって表されている。
【0045】
準備事項として、従来からの技術を用いてバルク発光サファイア(関心ある波長に応じて、Al
2O
3:C,Mg、又はAl
2O
3:C)が成長され、そして、具体的な用途(例えば、LEDダイ及び狙い色)に対して望ましい光吸収及び発光特性を有するように、既知の技術によって上述のように、サファイアが活性化されて調整される。狙いとする吸収及び発光特性を達成するために、実験テストが行われてもよい。狙いとする吸収波長は、使用される実際のLEDのpnジャンクション(活性層)のピーク波長発光であり、典型的に、可視の青色波長域内である。一実施形態において、青色LED光でエネルギー供給されるとき、発光サファイアの発光は緑色である。従って、赤色蛍光体を付加することが、暖白色光を作り出すことになる。
【0046】
図5のステップ24にて、発光サファイア結晶が研削プロセスにかけられ、望ましい粒子サイズ範囲まで、ふるいにかけられる。1つの許容可能な粒子サイズ分布D50の範囲は10−50μmである。粒子サイズ分布D50は、粒子サイズ分布の中央径としても知られており、累積分布の50%位置の粒子径の値である。
【0047】
ステップ26にて、発光サファイア粉末が、適切な従来からの添加材とともに透明マトリクス(例えば、シリコーンなど)に注入され、均一に混ぜ合わされる。選択される添加材は用途に依存し、蛍光体粉末や分散剤などを含み得る。
【0048】
ステップ28にて、このミクスチャ(混ぜ合わせた物)が一次光を吸収してそれを所望の二次光にダウンコンバートすることができるように、ミクスチャがLEDにインテグレートされる。例えば、ミクスチャは、ラミネーション(例えば、プリフォームされたシート又はタイルを形成し、それをLEDウエハ又はダイの上に取り付ける)、オーバーモールド(例えば、ウエハ上にマウントされたLEDダイを、ミクスチャで充填された個々の金型凹部内に配置し、次いで、ミクスチャを硬化させる)、又はLEDダイの少なくとも頂面の上にミクスチャをスプレイコーティングすることによってインテグレートされ得る。その結果が、特定の色点によって特徴付けられるdcLEDである。このdcLEDは、蛍光体を、上記ミクスチャ内に、あるいは別個の層として、含んでいてもよいし含んでいなくてもよい。
【0049】
図6は、発光サファイアミクスチャが発光サファイア層30としてLEDの半導体表面の上に置かれて硬化された、1つのタイプのLED(フリップチップ)の断面図である。例えば縦型LED、横型LEDなどの他のタイプのLEDが用いられてもよい。この例において、サファイア成長基板(レーザリフトオフによって除去されている)の上にN型層32がエピタキシャル成長され、N型層32の上に活性層34がエピタキシャル成長され、そして、活性層34の上にP型層36がエピタキシャル成長される。層34及び36が、N型層32を露出させるようにエッチングされ、それぞれP型層36及びN型層32と電気的に接触するように金属コンタクト38及び40が堆積される。その後、LEDダイがサブマウント42又はその他の基板の上にマウントされる。サブマウント42は、金属コンタクト38及び40に直接的に接合される金属パッドを有しており、これらのパッドは最終的に電源に電気的に接続される。
【0050】
N型層32の露出面は、発光サファイア層30が置かれるのに先立って、光取り出しを向上させるために粗面化されてもよい。
【0051】
ダウンコンバージョンのために蛍光体のみを用いる従来技術に係るLEDにおいては、狙いの色点が達成されない場合、そのLEDは、排斥されるか、より低品質のLEDに格下げされるかの何れかである。これは、LED製造の全体コストを増大させる。
【0052】
しかし、発光サファイア層30をN型層32の上に位置させて用いることにより、dcLEDがサブマウント42に接合されながら又はウエハ形態でありながらにしてdcLEDがエネルギー供給されてテスト及び調査された後に、dcLEDの色点を調節し得る。テストはまた、外部のエネルギー供給光源を用いて実行されてもよい。色点調節は、サファイア調整(ステップ46)によることができ、色のシフトを生じさせるように、高ピークパワーのレーザを用いて発光サファイア層30のフォトクロミック特性が調節される。更なる詳細を以下にて提供する。このポストインテグレーション調節は、dcLEDの製造歩留りを高める(故に、製造コストを低減する)とともに、色点の制御を向上させる。
【0053】
最後に、dcLEDの光取り出しを向上させるために、dcLEDの上に例えば透明ドームレンズ(図示せず)などのその他の更なる光学系を配置あるいは成形し得る。
【0054】
以上のプロセスがウエハスケールで実行された場合には、LEDダイ/サブマウントが個片化される。
【0055】
LED半導体層と発光サファイア層30との間に1つ以上の他の層が存在してもよい。
【0056】
実施形態1の実施例
青色吸収/緑色発光するF
22+(2Mg)中心に富んだ(リッチな)発光サファイアが、20−40μmの範囲内の特定のサイズへと研削されてふるいにかけられる。その粉末が、得られるdcLEDの色点を暖白色である3000Kの色温度にさせるような比率で、シリコーン及び赤色蛍光体と混合される。使用されるシリコーンは、透明であるとともに、好ましくは、1.50より高い屈折率を有する。使用される赤色蛍光体は、例えば、蛍光体ファミリー(Ca,Sr)AlSiN
3:Eu又は蛍光体ファミリー(Ba,Sr)Si
5N
8:Euのメンバーである。シリコーンスラリーと、発光サファイア粉末と、赤色蛍光体とが均一に混ぜ合わされて、ダウンコンバータミクスチャ(
図6中の層30)が形成される。所望の暖白色dcLEDを作り出すため、このミクスチャが一次青色源(例えば、440−460nmの間のピーク波長を放出する青色発光GaNベースLEDダイ)とインテグレーションされる。これらのダイは、薄膜フリップチップ技術に基づくことができ、InGaN/GaNのpnジャンクションを有し得る。他のタイプのLEDが使用されてもよい。
【0057】
通常は蛍光体ミクスチャをディスペンスするために使用されるものである何らかの従来からの堆積プロセスを用いて、十分に制御された体積のミクスチャがダイの上にディスペンスされる。ミクスチャは、その後、熱又はUVによって硬化される。この段階では、一部のLEDの色点は、3000KのLEDのターゲットゾーンの外であり得る。
【0058】
図7の例において、円50は、最終的なdcLEDが呈するべき色点の許容範囲(ターゲットゾーン)を表している。u’軸及びv’軸は、CIE1976表色系における座標を表す。点52は、
図5のステップ28の後のテスト後に測定されたLEDの色点を表している。その後、
図5の調整ステップ46において、ハイパワーのパルスレーザを用いて、この色点が円50内の点54へとシフトされる。適切な調整(コンディショニング)は経験的に決定され得る。テスト及び調整は、測定による色点を、色発光をターゲットゾーンの円50内にシフトさせるのに必要な調整に対して相互参照するルックアップテーブルを用いて自動的に実行され得る。そして、必要とされるレーザパワー及び/又は継続時間が決定され(やはりルックアップテーブルによる)、調整が実行される。調整は、行き過ぎた補償がないことを確実にするように、各増分ステップ後のテストを用いて、徐々に増やして実行されてもよい。
【0059】
発光サファイアによって生成される二次光が多すぎる場合、必要とされる調節は、発光サファイアのダウンコンバージョン力を低減することによって得ることができる。これは、調整ステップにおいて、発光サファイア内のF
22+(2Mg)中心の濃度を低下させることによって行われ得る。このため、発光サファイアが、経験的に決定される或る期間にわたって、440nmの波長の高ピークパワーのレーザにさらされ得る。上述の式1及び式2を参照のこと。
【0060】
その他の調節を用いて正確な色の発光を生じさせることで、LEDを“瓶分け”する必要がないようにすることができる。
【0061】
実施形態2
図8及び9に示す第2の実施形態においては、発光サファイアが、一次光源の頂面に取り付けられるプリフォームされた単結晶タイルとしてインテグレーションされる。
【0062】
図8において、一次光源LEDは、
図6のそれと同様であり、サファイア成長基板の上にN型層32がエピタキシャル成長され、N型層32の上に活性層34がエピタキシャル成長され、そして、活性層34の上にP型層36がエピタキシャル成長される。層34及び36が、N型層32を露出させるようにエッチングされ、それぞれP型層36及びN型層32と電気的に接触するように金属コンタクト38及び40が堆積される。サファイア成長基板がレーザリフトオフによって除去され、次いで、N型層32の露出面が粗面化され得る。その後、LEDダイがサブマウント42又はその他の基板の上にマウントされる。サブマウント42は、金属コンタクト38及び40に直接的に接合される金属パッドを有しており、これらのパッドは最終的に電源に電気的に接続される。
【0063】
露出したN型層32の上に、例えばシリコーンなどの接着層58が堆積される。次いで、接着層58の上に、発光サファイアタイル60が位置決めされて押し当てられる。その後、例えばフィルタ層又は光取り出しの向上のためのテクスチャ加工層などの必要に応じての光学機構層62が、タイル60の上に配置あるいは成形され得る。そして、更なる色点調節のために、必要に応じての蛍光体層64(例えば、シリコーンバインダ内の赤色蛍光体)が堆積され得る。層62及び64が置かれるのに先立って、タイル60を調整するためのレーザ露光ステップが実行され得る。レーザ露光ステップは、タイル60がLEDに取り付けられる前又は後にタイル60上で行われ得る。全てのステップが、LEDダイのアレイが装着されたサブマウント上でウエハスケールで実行され得る。
【0064】
他の一実施形態において、発光サファイアタイル60は、硬化されたバインダ内に発光サファイア粒子を有する。
【0065】
図9は、
図8のデバイスを製造するための様々なステップを特定している。
【0066】
先ず、平坦な発光サファイア結晶ウエハが形成され(ステップ68)、次いで、一次源のLED(例えば、1mm
2)に概して一致するサイズを有するタイルへと切断される(ステップ70)。そして、タイル60(典型的には個片化前)が、狙った濃度の所望のF
2ライク色中心を与えるように(上述の式1及び式2参照)、レーザを用いて調整される(ステップ72)。
【0067】
その後、接着層を用いて、タイル60がLEDダイに取り付けられる(ステップ74)。
【0068】
この段階において、様々なオプションが実行され得る。
【0069】
a. その他の蛍光体はデバイスに付加されず、それにより、全てのダウンコンバート発光が発光サファイアタイル60によって行われる。必要に応じて、調整ステップを更に用いて、色点を補正することができる。一例において、F
22+(2Mg)中心の個体数を増加させることによって、緑色発光が増大される。
【0070】
b. 発光を制御(角度的及びスペクトル的)するために、例えばダイクロイックフィルタなどの光学機構層62がタイル60の上に置かれ得る(ステップ76)。
【0071】
c.
図8の蛍光体層64を形成するように、1つ以上の蛍光体がタイル60の上にディスペンスされ得る(ステップ78)。蛍光体層64とタイル60との間に、必要に応じて、例えばダイクロイックフィルタなどの光学機構層62が置かれ得る。必要に応じて、調整ステップ80を用いて、蛍光体の寄与を考慮に入れてLEDの色点を補正することができる。例えば、タイル60の上に赤色放出蛍光体層64をインテグレーションすることによって、3000Kの色温度を持つ暖白色LEDを製造し得る。
【0072】
d. バージョンcと同じであるが、最初にLEDダイ上への蛍光体層のインテグレーションであり、その後に蛍光体層上への発光サファイアタイル60の接着である。デバイスの封止前に、光学機構層及び/又は調整ステップを更に適用し得る。
【0073】
実施形態3
第3の実施形態においては、発光サファイアが、
図10及び11に例示されるように、その上にLED半導体層がエピタキシャル成長される成長基板として使用される。
【0074】
先ず、
図11に示すように、サファイア単結晶が、所望のFライク中心を含有するように選択される(ステップ84)。サファイア単結晶は、切断されて、その上でのエピタキシャル成長を可能にするように研磨されることによって、成長基板86(
図10)として準備される。
【0075】
ステップ88にて、サファイア基板86の片側上にIII族窒化物pnジャンクション(層32、34、36)が成長される。このステップにおいて、成長炉の内部の温度は、還元雰囲気の下で数時間にわたって700℃と1100℃との間に維持される。このような温度及び時間にて、サファイアの発光F
2ライク中心が破壊される(
図2参照)。故に、これらセンターが再活性化されることができない限り、発光サファイアを成長基板として使用することは無意味である。
【0076】
エピタキシャル成長後、ウエハが反応炉から取り出される。次いで、III族窒化物ジャンクションのP型層36内のPドーパントを活性化するため、500−600℃の範囲内で数分のアニールが実行される(ステップ90)。このアニールは、酸素含有雰囲気で行われる。
【0077】
さらに、プロセスのこの段階にて、Fライク中心を含有するサファイア基板86が活性化されて、発光サファイアが作り出される(ステップ92)。物理的には、サファイア活性化は、Fライク中心のアグリゲーションを生じさせてF
2ライク中心を形成する。サファイア基板86は、300−700℃(エピタキシャル成長温度より低い)の範囲内の温度での一回のアニール又は数回のアニールによって活性化され得る。例えば、サファイア基板86は、文献にて発表されているように、500℃の温度で数時間にわたってウエハをアニールすることによって活性化されることができる。アニールの時間及び温度を調節することにより、F
2ライク中心の濃度を制御することができる。また、サファイア基板86の活性化は、多種類のF
2ライク中心の生成をもたらす。ダウンコンバージョンに関して1つの特定種のF
2ライク中心のみに関心がある場合、サファイア基板86に調整(レーザ)ステップ94を適用することにより、所望のF
2ライク中心濃度を得ることができる。例えば、330nmの波長の高ピークパワーのレーザでサファイア基板86を励起することにより、青色吸収/緑色発光するF
22+(2Mg)中心の濃度を増加させることができる。このような調整の品質は、例えば、(例えば、外部ソースによる、あるいはLEDにエネルギー供給することによる)450nmでの励起下で発光サファイアのF
22+(2Mg)中心によって生成される発光強度を測定することによって制御され得る。
【0078】
狙った濃度の所望のF
2ライク中心が得られると、ウエハを、蛍光体インテグレーション(ステップ100)まで、従来からのウエハ製造ステップ(ステップ96にまとめている)からダイ製造ステップ(ステップ98にまとめている)へと進む通常のLED製造プロセスに戻すことができる。これら後続ステップにおいて、温度は600℃未満に維持され、故に、サファイア基板86の活性化が保存される。
【0079】
必要に応じて、発光サファイアのフォトクロミック特性を活用するために、プロセス中に追加の調整ステップ102及び104が付加され得る。調整ステップ102は、個片化されたダイがサブマウントウエハに取り付けられた後に、実際の一次光源の効率及び波長に合わせて所望のF
2ライク中心の濃度を調節して、製造されたLED個体群のvのバラつきを抑制するために実行され得る。蛍光体インテグレーションステップ100の後に、実施形態1において説明したように色点をチューニングするために、別の調整ステップ104がとり行われ得る。
【0080】
光学機構(ステップ106)もLEDダイに付加され得る。
【0081】
図10は、例えばダイクロイックフィルタ層及び白色光を作り出すための赤色蛍光体層などの、光学機構層108及び蛍光体層110を示している。フィルタ層は、LEDによる赤色光の吸収を回避するよう、蛍光体層110からの赤色光を反射し得るが、より短波長の光が通過することを可能にする。
【0082】
上述した様々な利益に加えて、蛍光体を用いずに発光サファイアによって全てのダウンコンバージョンを行うことにより、LEDは、例えば自動車のヘッドランプなどの過酷な環境で何年にもわたって使用され得る。蛍光体は、湿気の影響を非常に受けやすく、ヘッドランプ環境では最終的に劣化してしまい得る。
【0083】
以下の参考文献は、発光サファイアにおける最新技術を特定するとともに、当業者が知っているものを例示するものである。これらの参考文献は、当業者が本開示を読んだ後に発光サファイアを製造して、dcLEDの狙いの色点を達成するために必要とされる活性化及び調整を行うことができることを例証するものである。これらの参考文献をここに援用する。
1.Akselrod,M.S.等, New aluminum oxide single crystals for volumetric optical data storage, Optical Data Storage 2003, Optical data storage, SPIE, 2003, 5069, 244-251
2.Akselrod,M.S.等, Fluorescent aluminum oxide crystals for volumetric optical data storage and imaging applications, J. Fluoresc, 2003, 13, 503-511
3.Akselrod,M.S.及びAkselrod,A.E, New Al
2O
3:C,Mg crystals for radiophotoluminescent dosimetry and optical imaging, Radiat. Prot. Dosimetry, 2006, 779, 218-221
4.Ramirez,R.等, Electroluminescence in magnesium-doped Al
2O
3 crystals, Radiation Effects and Defects in Solids, 2001, 154, 295-299
5.Ramirez,R.等, Photochromism of vacancy-related defects in thermochemically reduced alpha-Al
2O
3:Mg single crystals, Applied Physics Letters, AIP, 2005, 86, 081914
6.Ramirez,R.等, Optical properties of vacancies in thermochemically reduced Mg-doped sapphire single crystals, Journal of Applied Physics, AIP, 2007, 707, 123520
7.Sykora,G.等, Novel Al
2O
3:C,Mg fluorescent nuclear track detectors for passive neutron dosimetry, Radiation Protection Dosimetry, 2007, 126, 1-4
8.Sykora,G.等, Spectroscopic properties of novel fluorescent nuclear track detectors for high and low LET charged particles, Radiation Measurements, 2008, 43, 422-426
9.Sykora,G.等, Properties of novel fluorescent nuclear track detectors for use in passive neutron dosimetry, Radiation Measurements, 2008, 43, 1017-1023
10.Sykora,G.J.及びAkselrod,M.S., Photoluminescence study of photochromically and radiochromically transformed Al
2O
3:C,Mg crystals used for fluorescent nuclear track detectors, Radiation Measurements, 2010, 45, 631-634
11.Tardio,M.等, High temperature semiconducting characteristics of magnesium-doped alpha-Al
2O
3 single crystals, Applied Physics Letters, AIP, 2001, 79, 206-208
12.Tardio,M.等, Electrical conductivity in magnesium-doped Al
2O
3 crystals at moderate temperatures, Radiation Effects and Defects in Solids, 2001, 155, 409-413
13.Tardio,M.等, Photochromic effect in magnesium-doped alpha-Al
2O
3 single crystals, Applied Physics Letters, AIP, 2003, 83, 881-883
14.Tardio,M.等, Enhancement of electrical conductivity in alpha-Al
2O
3 crystals doped with magnesium, Journal of Applied Physics, AIP, 2001, 90, 3942-3951
15.Tardio,M.等, Electrical conductivity in undoped alpha-Al
2O
3 crystals implanted with Mg ions, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B: Beam Interactions with Materials and Atoms, 2008, 266, 2932-2935。
【0084】
本発明の特定の実施形態を図示して説明したが、当業者に明らかなように、より広い観点での本発明を逸脱することなく変形及び変更が為され得るのであり、故に、添付の請求項は、その範囲内に、本発明の真の精神及び範囲に入るそのような変形及び変更の全てを包含するものである。