(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電磁誘導の相互誘導作用に基づき、送電側回路の送電コイルから受電側回路の受電コイルに、ギャップGapを存し非接触で近接対応しつつ電力を供給する、非接触給電装置において、
該送電側回路は、可変昇圧トランスを備えており、タップ切換えにより電圧の段階的切換えが可能となっており、タップ切換えは、該ギャップGap変動による該送電コイルと受電コイル間の結合係数Kの変化に、対応して実施され、
もって該可変昇圧トランスは、タップ切換えによる電圧の段階的切換えにより、該受電コイルの誘起電圧の増減変動抑制機能を発揮し、
該可変昇圧トランスのタップ切換えは、該ギャップGapの減増変動に逆比例する結合係数Kの増減変化に対応して、その2次コイルの巻数を減増変更するスイッチ切換えにより実施され、
かつ該送電側回路について、直列コンデンサ及び/又は並列コンデンサと該送電コイルとで共振回路が形成され、又、該受電側回路について、直列コンデンサ及び/又は並列コンデンサと該受電コイルとで共振回路が形成されており、
両該共振回路の共振周波数が等しく設定されると共に、該送電側回路の電源周波数が該共振周波数と等しく揃えられ、もって磁界共鳴方式が電磁誘導方式と併用されており、
該可変昇圧トランスは、該送電側回路の該並列コンデンサより上流側,電源側に配されるか、又は、該送電側回路の該直列コンデンサより下流側,該送電コイル側に配されており、
もって該可変昇圧トランスは、ギャップGapの減増そして結合係数Kの増減に対応して、その2次コイルの巻数を減増するタップ切換えにより、結合係数Kの変化に対し、結合係数Kと該可変昇圧トランスの巻数比とが相反することにより、共振周波数の変動抑制機能も発揮すること、を特徴とする非接触給電装置。
請求項1において、該送電側回路は、該電源としてマトリックスコンバータが用いられており、AC/AC直接変換法により、高周波電源として使用されると共に、該可変昇圧トランスで段階的に切換えられた電圧を、更に細かく減圧方向に微調整可能であり、
もって、該可変昇圧トランスによる段階的電圧調整と、該マトリックスコンバータによる微細電圧調整との組み合わせにより、該受電コイルの誘起電圧の増減変動抑制機能が発揮されること、を特徴とする非接触給電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような従来の非接触給電装置1については、次の問題が課題として指摘されていた。
《第1の問題点》
第1に、大ギャップGap変動により、受電コイル5の誘起電圧が変動する、という課題が指摘されていた。
まず前提として、非接触給電装置1では、送電側コイル3と受電側コイル5間の離間距離を表わすギャップGapが、通常は100mm〜150mm程度で給電可能とされている。他方、送電コイル3と受電コイル5の電磁結合度合をあらわす結合係数Kは、このギャップGapとは逆比例の関係にある(後述する
図3の(1)図を参照)。
そして、非接触給電装置1の受電側回路4の受電コイル5の誘起電圧は、結合係数Kに比例して、変化する(後述する数式1を参照)。
○ところで設計上、ギャップGap150mm,結合係数K0.1で、100%の誘起電圧が定格出力として発生すべく設定されるのが一般的である。
○このベストパワー状態に対し、ギャップGap100mm,結合係数K0.25の場合、受電コイル5に250%の誘起電圧が発生することになる。
○ギャップGap50mm,結合係数K0.5の場合、受電コイル5に500%の誘起電圧が発生してしまう。
【0006】
このように、ギャップGapが変動すると、→結合係数Kが逆比例して変動し、→もって誘起電圧が変動してしまう。そこで、誘起電圧が一定保持されない、安定せず大きな電圧変化が生じてしまう、もって確実な給電に支障が生じる、という問題が指摘されていた。
特に、50mm〜150mmという大きなギャップGap変動に対応できない、つまり0.5〜0.1の大きな結合係数K変動に対応できない、という問題が指摘されていた。
非接触給電装置1において、従来よりの使用ギャップGapは100mm〜150mm,結合係数K0.25〜0.1程度であるが、これをギャップGap50mm〜150mm,結合係数0.5〜0.1程度まで使用範囲を広げたい、というニーズが従来より強かった。
【0007】
《第2の問題点》
第2に、従来の非接触給電装置1において、このような問題に対処するためには、装置の大容量化を要する、という課題が指摘されていた。
受電コイル5の誘起電圧を定格にキープし安定化するためには、送電側回路2の電圧制御が必要となる。前述した例では、結合係数K0.25の場合、誘起電圧を前記250%から定格100%まで下げるためには、DC昇圧ブロック12にて電圧を、結合係数K定格0.1の場合の2.5分の1に下げることを要する。
すると、電流が定格の場合の250%増となる。つまり装置としては、結合係数K定格0.1の場合に対し、250%増の電気容量(電圧×電流)が必要となってしまう。
従って、ニーズが強いギャップGap50mm〜150mm,結合係数K0.5〜0.1まで使用可能な送電側回路2のためには、定格100%に対し500%の電気容量が必要となる。つまり電気容量を、ギャップGap変動幅に比例して、過大に増加させることが必要となる。
従って、従来の非接触給電装置1では、誘起電圧安定化のためには、送電側回路2のDC昇圧ブロック12およびDC/AC変換ブロック28について、電子回路の大容量化が必要となり、回路構成が複雑化し、コスト面や信頼性に大きな問題が指摘されていた。
【0008】
《第3の問題点》
第3に、ギャップGap変動そして結合係数K変動により、共振周波数が変動する、という課題も指摘されていた。
まず前提として、この非接触給電装置1では、前述したように送電側回路2,受電側回路4の共振周波数と、送電側回路2の電源周波数とが、等しく揃えられている。
そして、その共振角周波数ωは結合係数Kに比例して変化する(後述する数式2,3を参照)。そこで、ギャップGap変動,結合係数K変動により、共振回路の共振周波数が、所期の最適周波数から変動してしまい、もって共振点ずれが発生し、給電効率が低下する、という問題が指摘されていた。
電源10のインバータ効率が低下し、その出力電流の出力電圧に対する位相角が0°から大きくずれ、運転力率が1から大きく離隔する、という問題が指摘されていた。
【0009】
《本発明について》
本発明の非接触給電装置は、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、大ギャップ変動に対応可能であり、誘起電圧変動が抑制されると共に、第2に、共振周波数変動も抑制され、第3に、しかもこれらが、簡単な構成により、コスト面や信頼性に優れて実現される、非接触給電装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲に記載したように、次のとおりである。
請求項1については、次のとおり。
請求項1の非接触給電装置は、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、送電側回路の送電コイルから受電側回路の受電コイルに、ギャップGapを存し非接触で近接対応しつつ電力を供給する。
該送電側回路は、可変昇圧トランスを備えており、タップ切換えにより電圧の段階的切換えが可能となっている。タップ切換えは、該ギャップGap変動による該送電コイルと受電コイル間の結合係数Kの変化に、対応して実施される。
もって該可変昇圧トランスは、タップ切換えによる電圧の段階的切換えにより、該受電コイルの誘起電圧の増減変動抑制機能を発揮する。
そして、該可変昇圧トランスのタップ切換えは、該ギャップGapの減増変動に逆比例する結合係数Kの増減変化に対応して、その2次コイルの巻数を減増変更するスイッチ切換えにより実施される。
【0011】
更に、該送電側回路について、直列コンデンサ及び/又は並列コンデンサと該送電コイルとで共振回路が形成されている。又、該受電側回路について、直列コンデンサ及び/又は並列コンデンサと該受電コイルとで共振回路が形成されている。
両該共振回路の共振周波数が等しく設定されると共に、該送電側回路の電源周波数が該共振周波数と等しく揃えられ、もって磁界共鳴方式が電磁誘導方式と併用されている。
そして該可変昇圧トランスは、該送電側回路の該並列コンデンサより上流側,電源側に配されるか、又は、該送電側回路の該直列コンデンサより下流側,該送電コイル側に配されるか、又は、該送電側回路の該直列コンデンサより下流側,該送電コイル側に配されている。
もって該可変昇圧トランスは、ギャップGapの減増そして結合係数Kの増減に対応して、その2次コイルの巻数を減増するタップ切換えにより、結合係数Kの変化に対し、結合係数Kと該可変昇圧トランスの巻数比とが相反することにより、共振周波数の変動抑制機能も発揮すること、を特徴とする。
【0012】
請求項2については、次のとおり。
請求項2の非接触給電装置は、請求項1において、該送電側回路は、該電源としてマトリックスコンバータが用いられており、AC/AC直接変換法により、高周波電源として使用されると共に、該可変昇圧トランスで段階的に切換えられた電圧を、更に細かく減圧方向に微調整可能である。
もって、該可変昇圧トランスによる段階的電圧調整と、該マトリックスコンバータによる微細電圧調整との組み合わせにより、該受電コイルの誘起電圧の増減変動抑制機能が発揮されること、を特徴とする。
【0013】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)非接触給電装置では給電に際し、受電コイルが送電コイルに、ギャップを存し近接対応位置する。
(2)そして送電コイルが通電され、受電コイルとの間に磁路が形成され、電磁誘導の相互誘導作用に基づき電力が供給される。
(3)更に、このような電磁誘導方式に加え、磁界共振を利用して給電する磁界共鳴方式も併用されている。
(4)さて給電に際しては、送電コイルと受電コイル間のギャップが変動する可能性がある。給電毎にギャップが異なっている可能性がある。
(5)これに対し、送電コイルと受電コイル間の結合係数は、ギャップ変動と逆比例関係にある。ギャップが減増変動すると、結合係数は増減変動する。受電コイルの誘起電圧は、送電コイル電圧がそのままでは、結合係数に比例して変動する。
(6)そこで本発明では、送電側回路に可変昇圧トランスを採用してなり、結合係数の増減変動に対し、多段タップの切換えにより、その2次コイル巻数を減増変動し、出力電圧を減増変更する。もって可変昇圧トランスは、大きなギャップ変動そして結合係数変動があっても、受電コイルの誘起電圧の変動抑制機能を発揮する。
(7)又、送電側回路には、マトリックスコンバータが採用されており、AC/AC直接変換法による高周波電源として使用されると共に、上述により可変昇圧トランスで切換えられた電圧を更に微調整する。
(8)ところで可変昇圧トランスは、共振周波数の変動抑制機能も発揮する。すなわち、可変昇圧トランスを、送電側回路の共振回路のコンデンサ上流側や下流側に配設すると共に、前述により2次コイルの巻数をタップ切換えすることにより、ギャップ変動,結合係数変動があっても、共振周波数変動は抑制される。
すなわち、結合係数の増減に対し、可変昇圧トランスの2次コイルの巻数が減増されることにより、共振周波数の変動は抑制される。
(9)そして、この非接触給電装置は、上述したところを簡単な構成により容易に実現する。
(10)そこで、本発明は次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0014】
《第1の効果》
第1に、大ギャップ変動に対応可能であり、誘起電圧変動が抑制される。
本発明の非接触給電装置は、送電側回路にタップ切換え式の可変昇圧トランスを採用してなり、タップ切換えにより2次コイルの巻数を変更する。電源としては、マトリックスコンバータを併用している。
もって、ギャップ変動があり結合係数が変動しても、受電コイルの誘起電圧変動は抑制される。変動は生じないか、最小化される。前述したこの種従来技術のように大きな誘起電圧変動は回避され、誘起電圧は安定化され定格出力が維持され、もって確実な給電が実現される。
そして特に、大ギャップ変動に対応可能となる。非接触給電装置において、代表的な使用ギャップは、従来100mm〜150mm,結合係数0.25〜0.1程度であったが、これを例えばギャップ50mm〜150mm,結合係数0.5〜0.1程度まで、使用範囲を広げることができ、最近のニーズに十分対応可能となる。
【0015】
《第2の効果》
第2に、共振周波数変動も抑制される。
本発明の非接触給電装置は、送電側回路において、可変昇圧トランスを共振回路のコンデンサ上流側や下流側に配設してなると共に、タップ切換えを2次コイルの巻数変更により実施する。
そこで、ギャップ変動があり結合係数が変動しても、共振周波数変動は抑制される。変動は生じないか、最小化される。昇圧トランスの巻数比を変えることにより、共振周波数が調整され、前述したこの種従来技術で指摘されていた共振点ずれ発生は、回避される。
もって、電源の出力電流の出力電圧に対する位相差が0°近くとなり、無効電力が減少し、運転力率が1近くとなる等、電源効率が向上する。
【0016】
《第3の効果》
第3に、しかもこれらは、簡単な構成により、コスト面や信頼性に優れて実現される。
本発明の非接触給電装置は、送電側回路について、所定の可変昇圧トランス,マトリックスコンバータ等を備えた簡単な構成によりなる。もって、前述した誘起電圧変動抑制や共振周波数変動抑制の効果を、容易に実現する。
前述した従来技術のように、装置の大容量化,電子回路の大容量化,回路構成の複雑化等を伴うことなく実現する。もって、コスト面や信頼性に優れている。
このように、この種従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
《非接触給電装置14について》
まず、本発明の前提として、非接触給電装置(WPT)14について、
図1,
図5を参照して、一般的に説明しておく。
非接触給電装置14は、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、送電側回路15の送電コイル3から、負荷13に接続された受電側回路14の受電コイル5に、エアギャップGapを存して近接対応位置しつつ、非接触で電力を供給する。
【0019】
このような非接触給電装置14について、更に詳述する。まず、1次側の送電側回路15は、給電スタンド16等の給電エリアにおいて、地面,路面,その他の地上17側に定置配置される。
これに対し、2次側の受電側回路4は、電気自動車(EV),電動台車(AGV),電車等の車輌18,その他の移動体側に搭載される。車載の受電側回路4は、
図5のように、バッテリー19に接続されるのが代表的であるが、その他の負荷13に直接接続される場合もある。
給電に際し、送電側回路15の送電コイル3と受電側回路4の受電コイル5とは、例えば100mm〜150mm程度の僅かなギャップGapを存して、対応位置する。
そして
図5の(1)図に示したように、受電コイル5が送電コイル3に対し、上側等から対応位置して停止される停止給電方式が代表的である。停止給電方式の場合、受電コイル5と送電コイル3とは、上下等で対をなす対称構造よりなる。これに対し、受電コイル5が送電コイル3上を低速走行されつつ給電を行う、移動給電方式も可能である。
送電側回路15の送電コイル3は、電源10に接続されており、電源10は、例えば数kHz〜数10kHz〜数100kHz程度の高周波交流を、送電コイル3に向けて通電する。
受電側回路4の受電コイル5からの出力は、
図5ではバッテリー19に供給され、充電されたバッテリー19にて走行用モータ20が駆動される。
図5中21は、交流を直流に変換するコンバータ(整流部や平滑部)、22は、直流を交流に変換するインバータ、23は、受電側回路4の出力ラインに設けられたスイッチである。
【0020】
電磁誘導の相互誘導作用については、次のとおり。給電に際しては、送電コイル3での磁束形成により、受電コイル5に誘起電力を生成させ、もって送電コイル3から受電コイル5に電力を供給することは、公知公用である。
すなわち送電コイル3に、電源10から給電交流,励磁電流を印加,通電することにより、自己誘導起電力が発生して磁界が送電コイル3の周囲に生じ、磁束がコイル面に対して直角方向に形成される。そして形成された磁束が、受電コイル5を貫き錯交することにより、誘起電力が生成され磁界が誘起される。
このように誘起生成された磁界を利用して、数kW以上〜数10kW〜数100kW程度の電力供給が可能となる。送電コイル3側の磁束の磁気回路と、受電コイル5側の磁束の磁気回路は、相互間にも磁束の磁気回路つまり磁路が形成されて、電磁結合される。非接触給電装置1では、このような電磁誘導の相互誘導作用に基づき、非接触給電が行われる。
【0021】
ところで、この非接触給電装置1では、このような電磁誘導方式により給電が行われるが、磁界共鳴方式も併用され、もって重なる給電効率の向上が図られている。
すなわち、送電側回路15について、直列コンデンサ6及び/又は並列コンデンサ7と送電コイル3とで、共振回路が形成され、又、受電側回路4について、直列コンデンサ8及び/又は並列コンデンサ9と受電コイル5とで、共振回路が形成されている。
図示例では、送電側回路15について、送電コイル3,直列コンデンサ6,並列コンデンサ7等により、共振回路が形成されている。又、受電側回路4について、受電コイル5,直列コンデンサ8,並列コンデンサ9等により、共振回路が形成されている。
そして、両共振回路の共振周波数が等しく設定されると共に、送電側回路15の電源10の電源周波数も、この共振周波数と等しく揃えられている。もって、送電コイル3と受電コイル5間に生じる磁界共振(磁界共鳴)現象をも利用して給電する、磁界共鳴方式が併用されている。
なお図示例によらず、送電側回路15について、直列コンデンサ6と並列コンデンサ7のいずれか一方のみが用いられ、もって共振回路が形成される側も可能である。同様に、受電側回路4についても、直列コンデンサ8と並列コンデンサ9のいずれか一方のみが用いられ、もって共振回路が形成される側も可能である。
非接触給電装置14について、一般的説明は以上のとおり。
【0022】
《本発明の概要》
以下、本発明の非接触給電装置14について、
図1,
図2の(1)図,
図3の(1)図,(2)図等を参照して、説明する。まず、本発明の概要については次のとおり。
本発明の非接触給電装置14は、送電側回路15に可変昇圧トランス24を備えており、タップ切換えにより電圧の段階的切換えが可能となっている。
タップ切換えは、ギャップGap変動による送電コイル3と受電コイル5間の結合係数Kの変化に、対応して実施される。すなわち、ギャップGap変動に逆比例する結合係数Kの増減に対応して、その2次コイルの巻数を変更すべく、スイッチ切換えにより実施される。
もって可変昇圧トランス24は、結合係数Kの変化に対し、受電コイルの誘起電圧の変動抑制機能を発揮する。又、結合係数Kの変化に対し、共振周波数の変動抑制機能も発揮する。
なお送電側回路15は、電源10としてマトリックスコンバータ25が用いられており、AC/AC直接変換法により、高周波交流が電圧調整されて生成される。
本発明の概要については、以上のとおり。以下、このような本発明の非接触給電装置14について、更に詳述する。
【0023】
《マトリックスコンバータ25について》
まず、送電側回路15のマトリックスコンバータ25について、
図1,
図2の(1)図を参照して説明する。
マトリックスコンバータ25は、複数の双方向スイッチの切換制御により、入力された交流を、異なる任意の周波数や電圧の交流に直接変換して出力する、AC/AC直接変換法よりなる。なお、特開2006−14550号公報,特開2011−30409号公報,特開2014−143825,その他多数の特許出願も存在している。
そして、マトリックスコンバータ25は、非接触給電装置14の送電側回路15の電源10として用いられ、商用電源交流を電圧調整された高周波交流に変換して出力する。例えば、三相200V,50Hzの商用電源交流を、単相200V,85kHzに変換,出力する。
電圧調整に関しては次のとおり。すなわち送電側回路15では、後述により可変昇圧トランス24にて電圧の段階的切換えが実施されるが(例えば大きく200V単位毎で切換え)、その切換えられた電圧の範囲内で、マトリックスコンバータ25にて、細かい電圧微調整(200Vの範囲内で微細に調整)が、減圧方向限定で実施される。そしてこの電圧調整は、受電側回路4の出力電圧を把握し、これに対応して双方向スイッチを切換制御することにより、実施される。
マトリックスコンバータ25については、以上のとおり。
【0024】
《可変昇圧トランス24について》
次に、可変昇圧トランス24について、
図1,
図2の(1)図,
図3の(1)図を参照して説明する。
送電側回路15には、可変昇圧トランス24が設けられており、多段(図示例では3段)タップ切換えにより、2次側出力電圧を段階的に切換える。
可変昇圧トランス24のタップ切換えは、ギャップGap変動に逆比例する結合係数Kの増減変化に対応して実施され、その2次コイルSの巻数を変更すべくスイッチ切換えする。
【0025】
これらについて詳述する。ギャップGapは、送電側回路15の送電コイル3と受電側回路4の受電コイル5の離間距離を示し、一般的には、100mm〜150mm程度で給電可能とされている。結合係数Kは、送電コイル3と受電コイル5間の電磁結合度合をあらわす係数であり、0〜1間の数値をとる。
図3の(1)図は、このようなギャップGapと結合係数Kとの関係を示す特性図である。同図にも示されたように、ギャップGapと結合係数Kとは、逆比例の関係にある。ギャップGapの大小と結合係数Kの大小とは、逆比例する。
○勿論、ギャップGapが過大の場合、結合係数Kは0である。
○そしてギャップGap100mmが、結合係数K0.25に対応する。
○ギャップGap150mmが、結合係数K0.1に対応する。
○そして一般的には、ギャップGap100mm〜150mm,結合係数K0.25〜0.1程度で、例えば電気自動車への電力供給が可能に設計されている。
【0026】
さて、受電コイル5の誘起電圧V
L2は、下流の数式1につて与えられる。
すなわち誘起電圧V
L2は、送電コイル3の電圧V
L1や結合係数Kに、正比例して変化する。給電に際し、受電コイル5に誘起される誘導起電力は、結合係数Kが増加すれば、増加すべく変化する関係にある。数式1中、
L1は送電コイル3のインダクタンス、
L2は受電コイル5のインダクタンスである。
このように、ギャップGapが減増変動すると、→結合係数Kが逆比例して増減変動する。→もって、送電コイル3の電圧V
L1がそのままなら、→受電コイル5の誘起電圧V
L2が大きく変動してしまう。
【0028】
そこで、このような誘起電圧V
L2の増減変動を抑制すべく、可変昇圧トランス24等が採用されており、変動抑制機能を発揮する。
すなわち、可変昇圧トランス24は、ギャップGapが減増変動し、→結合係数Kが増減変動すると、→2次コイルS巻数が、多段タップの切換えにより、減増変更される。
→そこで、その出力電圧が段階的に切換えられ、もって誘起電圧V
L2の増減変動が抑制される。誘起電圧V
L2は、変動しないか又は変動しても少なく最小化され、安定化される。
タップ切換えは、スイッチ切換えにより行われ、高周波用なので、
図2(2)図に示した半導体による双方向スイッチが使用される。
そして、2次コイルSの巻数変更は、巻数の異なる図示例では3種の2次コイルS1(巻数多3/3),S2(巻数中2/3),S3(巻数少1/3)を、それぞれの双方向スイッチSW1,SW2,SW3で、タップ切換えすることにより行われる。
なお、このような可変昇圧トランス24の誘起電圧V
L2の変動抑制機能は、前述したようにマトリックスコンバータ25による電圧微調整により、補完される。
可変昇圧トランス24については、以上のとおり。
【0029】
《共振周波数の変動抑制機能について》
可変昇圧トランス24は、上述したように誘起電圧V
L2の変動抑制機能を発揮するが、更に共振周波数の変動抑制機能も発揮する。
まず、その前提として、この非接触給電装置14では、送電側回路15の共振周波数と受電側回路4の共振周波数と電源周波数とが、等しく揃えられている。
そして、その共振角周波数ωは、結合係数Kに比例して変化,変動する。すなわち、送電コイル3の共振角周波数ω
1は、下記の数式2にて与えられる。受電コイル5の共振角周波数ω
2は、下記の数式3にて与えられる。
もって共振角周波数ωは、結合係数Kにより変化する。数式2中、C
1は直列コンデンサ6のキャパシタンス、C
1′は並列コンデンサのキャパシタンス、L
1は送電コイル3のインダクタンスである。数式3中、C
2は直列コンデンサ8のキャパシタンス、C
2′は並列コンデンサ9のキャパシタンス、L
2は受電コイル5のインダクタンスである。
【0032】
さて、このままでは共振周波数が結合係数K変動に伴い、変動することになるが、この非接触給電装置14では、可変昇圧トランス24により、このような共振周波数変動が抑制される。
すなわち可変昇圧トランス24は、その2次コイルSの巻数変更によりタップ切換えを実施すると共に、送電側回路15において、並列コンデンサ7より上流側,電源10側に配されている。もって結合係数Kの変化に対し、共振回路のC値つまりキャパシタンス値を変えることにより、共振周波数の変動抑制機能を発揮する。
又、可変昇圧トランス24は、送電側回路15において、共振回路の直列コンデンサ6より下流側,送電コイル3側に配されている。もって上述に準じ同様の理由により、結合係数Kの変化に対し共振周波数の変動抑制機能を発揮する。
このように可変昇圧トランス24は、タップ切換えによる2次コイルSの巻数変更により、共振周波数の変動抑制機能を発揮する。共振周波数は変動しないか、変動しても少なく最小化される。このように共振周波数が調整されて、所期の最適周波数が維持され、共振点ずれ発生は回避される。
【0033】
ここで、上述した変動抑制機能を裏付け説明しておく。
まず、送電側回路15の共振回路の直列コンデンサ6のキャパシタンスC
1を、可変昇圧トランス24の2次コイルS側で見たキャパシタンスC
1″は、下記の数式4にて与えられる。数式4中、Pは可変昇圧トランス24の1次コイル巻数、Sは2次コイル巻数である。
そして送電コイル3の共振角周波数ωは、下記の数式5に基づいて、下記の数式6にて与えられる。数式5,6中C
1′は並列コンデンサ7のキャパタンス、L
1は送電コイル3のインダクタンスである。
【0038】
もって、この数式6に数式4を代入すると、上記数式7が得られる。数式7により、送電コイル3の共振角周波数ωは、結合係数Kと可変昇圧トランス24の巻数比P/Sとが相反するようにすれば、共振角周波数ωの変化を少なくすることができる。
例えば、ギャップGapが減少し、結合係数Kが増加した場合、巻数比P/Sが増加すれば、つまり2次コイルSの巻数が減少すれば、共振周波数ωの変動抑制機能が発揮されるようになる。
そして、前述した誘起電圧V
L2の変動抑制機能において前述したように、可変昇圧トランス24は、正にそのように2次コイルSの巻数が、タップ切換えにより増減変更される。
共振周波数の変動抑制機能については、以上のとおり。
【0039】
《距離センサ26や制御手段27について》
次に、距離センサ26や制御手段27について、
図1,
図3の(2)図を参照して説明する。
この非接触給電装置14は、送電側回路15に、距離センサ26と制御手段27とが付設されている。距離センサ26は、送電コイル3と受電コイル5間のギャップGap長を検出する。制御手段27は、距離センサ26の検出結果を、予め準備しておいた関係データに適用して結合係数Kを演算し、もって得られた結合係数Kに基づき、可変昇圧トランス24をタップ切換えせしめる。
【0040】
これらについて更に詳述する。前述したように、可変昇圧トランス24は、ギャップGapが減増変動し、→結合係数Kが増減変動すると、→2次コイルSの巻数を、タップ切換えにより減増変更せしめる。
そこで、まず距離センサ26が送電側回路15の送電コイル3付近に配設され、もって給電に際し近接対応位置せしめられた受電側回路4の受電コイル5とのギャップGap長を、検出可能となっている。
距離センサ26としては、例えば非接触式,反射式のものが用いられており、光,電波,超音波等を送電コイル3側から発射し、受電コイル5面での反射波を捉える方式によりなる。なお光使用の場合は、受電側に設けたバーコードの読み取り機能を付加しておくことにより、制御手段27等により受電側を識別,認識することも可能化する。
制御手段27は、距離センサ26のギャップGap長検出結果を、予め準備しておいたデータに適用する。
図3の(1)図に示されたような、ギャップGap長と結合係数Kとの関係データに適用し、もって結合係数Kを演算する。
そして、得られた結合係数Kに基づき、可変昇圧トランス24をタップ切換え制御し、2次コイルS巻数を変更させる。結合係数Kの増減変動に対応して、可変昇圧トランス24の2次コイルSの巻数を減増変更すべく、タップ切換えを行う。
例えば、結合係数0.1以上〜0.15以下の場合は、2次コイルS1のみをオンし、0.15超〜0.35以下の場合は、2次コイルS2のみをオンし、0.35超の場合は、2次コイルS3のみをオンとする、タップ切換え制御を行う。
このように、結合係数Kの値の変動をリアルタイムで把握することにより、可変昇圧トランス24のタップ切換え制御が自動化される。
距離センサ26や制御手段27については、以上のとおり。
【0041】
《作用等》
本発明の非接触給電装置14は、以上説明したように構成されている。そこで以下のようになる。
(1)非接触給電装置14では、給電に際し、車輌18等に搭載された受電側回路4の受電コイル5が、路面等の地上17側に定置配置された送電側回路15の送電コイル3上に、ギャップGapを存して近接対応位置する(
図5を参照)。
【0042】
(2)そして送電コイル3が、高周波交流を励磁電流として通電され、もって送電コイル3と受電コイル5間のギャップGapに、磁束の磁路が形成されて、両者が電磁結合される。このような電磁誘導の相互誘導作用に基づき、電力が送電側回路15から受電側回路4へと供給される(
図1を参照)。
【0043】
(3)更に、この非接触給電装置14では、このような電磁誘導方式に加え、磁界共鳴方式も併用されている。
すなわち、送電側回路15および受電側回路4には、それぞれ共振回路が形成されており、送電コイル3と受電コイル5間に生じる磁界共振を利用して、給電する(
図1を参照)。
【0044】
(4)さて、このような給電に際しては、送電コイル3と受電コイル5間のギャップGapが、車輌18等側の条件次第で種々変動している可能性がある(例えば同一車輌18でも、積載重量次第では変動する)。給電毎に、ギャップGapが異なっている可能性がある。
ギャップGapは、設計上は、100mm〜150mm程度で給電可能とされているが、実際上は、更に50mm〜150mm程度と大きく変動する可能性がある(
図5も参照)。
【0045】
(5)これに対し、送電コイル3と受電コイル5間の電磁結合度合を表わす結合係数Kは、このように変動するギャップGapとは、逆比例の関係にある。ギャップGapが減増変動すると、結合係数Kは増減変動する(
図3の(1)図を参照)。
そして、給電のポイントとなる受電コイル5の誘起電圧は、送電コイル3の電圧がそのままとすると、このような結合係数Kに比例して、変動する関係にある(前記数式1を参照)。もって結合係数Kの増減変動に伴い、誘起電圧も増減変動する虞がある。
【0046】
(6)そこでこの非接触給電装置14では、送電側回路15について、多段タップ切換え式の可変昇圧トランス24を採用してなる(
図1,
図2の(1)図を参照)。そして結合係数Kの増減変動に対し、多段タップの切換えにより2次コイルSの巻数を減増変更させ、その出力電圧を段階的に切換える。
これにより、50mm〜150mmの大きなギャップGap変動があっても、もって0.5〜0.1の大きな結合係数K変動があっても、上述した受電コイル5の誘起電圧の増減変動は、確実に抑制されるようになる。このように可変昇圧トランス24は、誘起電圧の変動抑制機能を発揮する。
なお送電側回路15には、距離センサ26と制御手段27が付設されている(
図1,
図3の(2)図を参照)。そして距離センサ26がギャップGap長を検出し、これに基づき制御手段27が結合係数Kを演算することにより、リアルタイムで可変昇圧トランス24をタップ切換えせしめる。
【0047】
(7)又、この非接触給電装置14は、送電側回路15について、マトリックスコンバータ25を採用してなる(
図1,
図2の(1)図を参照)。
このマトリックスコンバータ25は、AC/AC直接変換法により高周波電源10として使用されると共に、前述により可変昇圧トランス24で切換えられた電圧を、その電圧範囲内で補完すべく、更に細かく減圧方向に微調整する。
このように、受電コイル5の誘起電圧の変動は、可変昇圧トランス24による段階的電圧調整と、マトリックスコンバータ25による微細電圧調整の組み合わせにより、確実に抑制される。
【0048】
(8)ところで、この非接触給電装置14では、磁界共鳴方式も採用されており(
図1等を参照)、共振回路の共振周波数や電源周波数が揃えられている。そして、共振周波数そしてその共振角周波数ωは、結合係数Kの変動に伴い変化する虞がある(前記数式2,3を参照)。
これに対し可変昇圧トランス24が、共振周波数の変動抑制機能を発揮する。送電側回路15において、可変昇圧トランス24を並列コンデンサ7上流側や直列コンデンサ6下流側に配すると共に、2次コイルSの巻数を前述によりタップ切換えすることにより、共振周波数の変動が確実に抑制されるようになる。
このように、結合係数Kの増減に対し、可変昇圧トランス24の2次コイルSの巻数が前述により減増されることにより、共振周波数の変動は抑制される(前記数式7等も参照)。
【0049】
(9)そして、この非接触給電装置14は、上述したところを簡単な簡略化された構成により、容易に実現する。
所定の可変昇圧トランス24,マトリックスコンバータ25,距離センサ26,制御手段27等を、組み合わせて採用したことにより(
図1等を参照)、装置の大容量化,電子回路の複雑化を伴うことなく、容易に実現する。
本発明の作用等については、以上のとおり。
【実施例】
【0050】
ここで、実施例について説明しておく。
下記の表1は、
図1に示した非接触給電装置14において、ギャップGap変動,結合係数K変動に対応して、可変昇圧トランス24をタップ切換えした際のデータである。
これによると、ギャップGap150mmの場合、マトリックスコンバータ25の出力電流が43Aであったものが、そのままギャップGapを40mmにすると、マトリックスコンバータ25の出力電流が200Aに激増することになる。これに対し、可変昇圧トランス24により1/3の電圧に切換えると、66Aに減少することが確認できた。
又、受電コイル5の誘起電圧の大幅変動も、抑制された。ギャップ150mmの場合の950Vに対し、ギャップ40mmの場合は860Vとなり、変化は少なく安定許容範囲内に収まった。もって、誘起電圧の変動抑制機能が確認された。
更に、電源10であるマトリックスコンバータ25の出力電流の出力電圧に対する位相角が、切換え前は進み55°であったものが、切換え後は進み9°となった。もって、共振周波数の変動抑制機能、そして大きな力率改善が確認された。
実施例については、以上のとおり。
【0051】
【表1】