特許第6622189号(P6622189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6622189疼痛及び/又は線維症の調節において脂肪組織由来細胞を使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6622189
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】疼痛及び/又は線維症の調節において脂肪組織由来細胞を使用する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/35 20150101AFI20191209BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20191209BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20191209BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20191209BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20191209BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20191209BHJP
【FI】
   A61K35/35
   A61P25/02 101
   A61P19/02
   A61P17/00
   A61P25/04
   !A61P29/00 101
【請求項の数】18
【全頁数】61
(21)【出願番号】特願2016-515549(P2016-515549)
(86)(22)【出願日】2014年9月17日
(65)【公表番号】特表2016-530214(P2016-530214A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】US2014056145
(87)【国際公開番号】WO2015042182
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2017年9月15日
(31)【優先権主張番号】61/977,466
(32)【優先日】2014年4月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/880,086
(32)【優先日】2013年9月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008281
【氏名又は名称】サイトリ・セラピューティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(72)【発明者】
【氏名】フレイザー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】マガロン ギー
【審査官】 六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/043136(WO,A1)
【文献】 Cell Transplantation,2013年 5月,22(5),p.779-795
【文献】 Annals of the Rheumatic Diseases,2013年 6月,72(Suppl. 3),p.649
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00−35/768
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における強皮症の治療で用いるための、脂肪由来幹細胞(ADSCs)及び脂肪由来再生細胞(ADRCs)を含む医薬組成物であって、前記ADRCsがCD45陽性細胞を含み、かつ、成熟幹細胞(ASCs)、内皮細胞、内皮先駆細胞、内皮前駆細胞、マクロファージ、線維芽細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、前脂肪細胞、分化した又は脱分化した脂肪細胞、角化細胞、単能性及び多能性前駆及び先駆細胞並びにリンパ球からなる群から選択される、任意の異種又は同種の細胞である、前記医薬組成物。
【請求項2】
強皮症の治療が、強指症の治療、強皮症由来の線維症の抑制、強皮症の血管徴候の治療、又は強皮症由来の疼痛の抑制を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
強皮症が限局型強皮症又はびまん型強皮症である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
線維症が皮膚の線維症又は内臓の線維症であり、内臓は、肺、心臓、腎臓、食道、胃腸管の任意の部分及び関節からなる群より選ばれてもよい、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
強皮症の治療がレイノー現象の治療を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
細胞がさらに添加剤を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
強皮症の治療が、改変Rodnan皮膚スコアの改善、ピンチ力の改善、コーチン手機能スコアの改善、握力の改善、指の伸展又は屈曲の改善、指の潰瘍の低減、新しい指の潰瘍の発生の低減、又は対象の全体的な健康状態の改善を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
疼痛がレイノー現象由来である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項9】
強皮症の血管の症状の治療が、指の毛細血管係蹄の数の低減、指の巨大毛細血管の数の増加、ジストロフィー毛細血管の数の低減、沈殿物の低減、及び無血管スコアの低減からなる群より選ばれる爪郭毛細血管顕微鏡検査のパラメータの改善を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項10】
強皮症の血管徴候の治療がレイノー現象の治療又は皮膚浮腫の改善を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項11】
脂肪由来幹細胞及び脂肪由来再生細胞が対象の指への直接注入用に調合される、又は静脈内注射用に調合される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
脂肪由来幹細胞及び脂肪由来再生細胞が複数用量での投与用に調合される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
細胞が、対象に投与する前に培養することなく、対象に投与される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
脂肪由来細胞の少なくとも一部が凍結保存されている、請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
細胞が、移植されるヒトの脂肪組織から抽出される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
手の機能障害の改善のための、強皮症の治療で用いるための請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
強皮症の治療が、全身性硬化症を伴う対象における、レイノー現象又はレイノー現象由来の疼痛の治療を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記細胞が培養されていない細胞である、請求項1から17のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、医学の分野、具体的には、疼痛の研究及び線維症の研究並びに疼痛及び/又は線維症の調節及び/又は寛解に対する脂肪組織及びその構成成分の効果に関する。
【背景技術】
【0002】
推定8600万人又は全米国人の3分の1が、慢性疼痛を患っている。急性疼痛が、可能性のある傷害のシグナルを送るきっかけとなる正常な感覚であることが多い一方、慢性疼痛は異なる。慢性疼痛は、持続する。疼痛シグナルは、神経系において何週間、何カ月、さらには何年も発生し続ける。
疼痛の起源は、(ぎっくり腰などの)身体的外傷、重篤な感染症又は疼痛の継続的な原因、例えば、関節炎、癌、耳感染症のような特定の事象であってよい。ある人々は、いかなる過去の傷害又は肉体損傷の痕跡がなくても慢性疼痛を患う。一般的な慢性疼痛の訴えは、頭痛、腰痛、癌性疼痛、関節痛、神経原性疼痛(末梢神経又は中枢神経系自体への損傷から生じる疼痛)及び心因性疼痛(過去の疾患若しくは傷害又は神経系内部若しくは外部の損傷の目に見える兆候によるものでない疼痛)を含む。
人は、2つ以上の共存する慢性疼痛状態を有し得る。これらの異常が共通の原因を有するか否かは、はっきりしないことが多い。
強皮症(scerloderma)は、線維症及び慢性疼痛を伴う自己免疫性リウマチ疾患であり、多様な他の合併症を引き起こし得る。全身性硬化症又は強皮症は、微小血管の異常並びに皮膚及び内部器官の進行性の線維症を特徴とする。強皮症に罹った個体は、しばしば手の病変に関連した日常活動における障害を訴える。強皮症の手に対する治療的介入は、主に、線維症でなく血管徴候の治療に集中する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、強皮症に関連する疼痛又は線維症の有効な処置はない。したがって、医学の分野において、例えば、強皮症並びに線維症及び/又は慢性疼痛を特徴とする他の障害において疼痛を抑制し、線維症を調節する、改善された組成物及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、本明細書に提供されるのは、個体における疼痛、線維症又はその両方を処置又は調節する方法であって、個体に治療有効量の脂肪由来幹細胞及び再生細胞を投与することを含み、治療有効量が、前記疼痛、線維症、又は疼痛及び線維症における検出可能な改善をもたらすために十分な量である方法である。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、個体における感覚異常、アロジニア及び痛覚過敏のような異常な感覚状態を処置する方法であって、個体に治療有効量の脂肪由来幹細胞及び再生細胞を投与することを含み、治療有効量が、前記疼痛における検出可能な改善をもたらすために十分な量である方法である。
具体的な実施形態において、前記方法は、疼痛緩和を必要とする個体又は疼痛を患っている個体を同定することを含む。別の具体的な実施形態において、前記方法は、前記脂肪由来幹細胞及び再生細胞の投与前に、前記個体における疼痛の1つ又は複数の第1のレベルを決定すること、及び前記脂肪由来幹細胞及び再生細胞の投与後に、前記個体における疼痛の1つ又は複数の第2のレベルを決定することを含み、前記治療有効量の脂肪由来幹細胞及び再生細胞が、前記疼痛の前記1つ又は複数の第2のレベルを、疼痛の前記1つ又は複数の第1のレベルに比べて低減させる方法である。
より具体的な実施形態において、前記治療有効量の脂肪由来幹細胞及び再生細胞は、プラセボの投与による改善よりも大きな又はより長期持続性の、前記疼痛における検出可能な改善をもたらす。
【0005】
より具体的な実施形態において、疼痛の前記1つ又は複数の第1のレベル及び疼痛の前記1つ又は複数の第2のレベルは、疼痛評価スケールにより決定される。より具体的な実施形態において、前記疼痛評価スケールは、数的疼痛強度スケール(Numeric Pain Intensity Scale);疼痛の質評価スケール(the Pain Quality Assessment Scale);簡易型記述式疼痛強度スケール(Simple Descriptive Pain Intensity Scale);視覚的アナログスケール(Visual Analog Scale);ウォング−ベーカーFACES疼痛評価スケール(Wong−Baker FACES Pain Rating Scale);FLACCスケール;CRIESスケール;又はCOMFORTスケールである。
【0006】
別の具体的な実施形態において、前記方法は、前記脂肪由来幹細胞及び再生細胞の投与前に、前記個体における疼痛の1つ又は複数の生理学的指標の第1のレベルを決定すること、及び前記脂肪由来幹細胞及び再生細胞の投与後に、前記個体における疼痛の1つ又は複数の生理学的指標の第2のレベルを決定することをさらに含み、前記治療有効量の脂肪由来幹細胞及び再生細胞が、前記第2のレベルを、前記第1のレベルに比べて低減させる。
より具体的な実施形態において、前記疼痛の生理学的指標は、個体における心拍数である。より具体的な実施形態において、前記個体における前記心拍数は、前記投与後に、前記投与前の前記個体における前記心拍数に比べて低い。別のより具体的な実施形態において、疼痛の前記生理学的指標は、前記個体の収縮期のものである。より具体的な実施形態において、前記個体の収縮期のものは、前記投与後に、前記投与前の前記個体における収縮期のものに比べて低い。別のより具体的な実施形態において、疼痛の前記生理学的指標は、前記個体の拡張期のものである。より具体的な実施形態において、前記個体の拡張期のものは、前記投与後に、前記投与前の前記個体における拡張期のものに比べて低い。
【0007】
疼痛を処置する方法の別の実施形態において、前記疼痛は、神経障害性疼痛である。具体的な実施形態において、前記神経障害性疼痛は、糖尿病性神経障害によって引き起こされる。別の具体的な実施形態において、前記神経障害性疼痛は、前記個体における神経への傷害によって引き起こされる。別の具体的な実施形態において、前記神経障害性疼痛は、薬物によって引き起こされる。ある特定の具体的な実施形態において、前記薬物は、プラチナ含有抗癌剤、例えば、オキサリプラチン、カルボプラチン若しくはシスプラチン、又はパクリタキセル若しくはビンクリスチンのような別の化学療法剤であるか或いはそれを含む。別の実施形態において、神経障害性疼痛は、ウイルス、例えば、バリセラゾスター、ヘルペス(例えば、単純ヘルペス)又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)のようなウイルス性疾患により引き起こされる。さらに別の実施形態において、疼痛は、放射線障害、例えば、癌の処置の一部である放射線障害により引き起こされる。別の具体的な実施形態において、前記神経障害性疼痛は、炎症、例えば、神経炎症、神経炎、により引き起こされる。
【0008】
疼痛を処置する方法の別の実施形態において、前記疼痛は、炎症性疼痛である。別の実施形態において、前記疼痛は、骨痛である。具体的な実施形態において、前記骨痛は、癌に伴うか又は癌により引き起こされる。別の実施形態において、前記疼痛は、癌により引き起こされる。別の実施形態において、前記疼痛は、外陰部痛により引き起こされるか若しくはそれに伴う疼痛、間質性膀胱炎により引き起こされるか若しくはそれに伴う疼痛又は骨関節炎のような変形性関節疾患により引き起こされる疼痛である。ある特定の実施形態において、前記疼痛は、ステロイド療法に無応答性である。他のある特定の実施形態において、前記疼痛は、非ステロイド抗炎症療法に無応答性である。他のある特定の実施形態において、前記疼痛は、オピオイド療法に無応答性である。他のある特定の実施形態において、前記疼痛は、非特異的又はミュー/デルタオピオイド混合療法に無応答性である。
【0009】
任意の前記実施形態の具体的な実施形態において、前記脂肪由来幹細胞及び再生細胞は、CD31−である細胞を含む。より具体的な実施形態において、前記脂肪由来幹細胞及び再生細胞は、さらにCD34+であり、例えば、前記脂肪由来幹細胞及び再生細胞は、CD31−かつCD34+である。より具体的な実施形態において、前記脂肪由来幹細胞及び再生細胞は、さらにCD45−である。言い換えれば、いくつかの実施形態において、細胞は、CD31−、CD34+、CD45−である。別の実施形態において、前記脂肪由来幹細胞及び再生細胞は、CD146+である。いくつかの実施形態において、細胞は、CD31−、CD34+、CD45−、CD146+である。別の実施形態において、前記脂肪由来幹細胞及び再生細胞は、CD45+であり、より具体的な実施形態において、CD45+かつCD206+である細胞を含む。
【0010】
ある特定の実施形態において、前記脂肪由来幹細胞及び再生細胞は、局所的に、例えば、局部的に又は局所注射(皮下、筋肉内など)によって投与されるように処方される。他のある特定の実施形態において、前記脂肪由来幹細胞及び再生細胞は、全身性に、例えば、静脈内に若しくは動脈内に又はリンパ系を介して投与されるように処方される。
好ましい実施形態は、それを必要とする対象における疼痛を調節する方法であって、治療有効量の脂肪由来幹細胞及び再生細胞を該対象に投与することを含む方法を含む。いくつかの態様において、これらの方法は、疼痛を経験している個体として、前記対象を選択し、同定し又は分類することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記選択、同定又は分類は、医師によって又は臨床若しくは診断評価によって行われる。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記脂肪由来再生細胞の投与の前、後又はその間に、前記対象における疼痛を決定又は測定することをさらに含む。
【0011】
他の実施形態は、それを必要とする対象における線維症を調節する方法であって、再生細胞を含む脂肪由来細胞の治療有効量を前記対象に投与することを含む方法に関する。いくつかの実施形態において、前記方法は、線維症を経験しているか又は繊維性疾患を有する個体として、前記対象を選択し、同定し又は分類することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記選択、同定又は分類は、医師によって又は臨床若しくは診断評価によって行われる。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記脂肪由来再生細胞の投与の前、後又はその間に、線維症又はTNFαの量若しくはレベルのようなそのマーカーを、前記対象において又は前記対象から得られた生体サンプルにおいて決定又は測定することをさらに含む。さらなる実施形態は、それを必要とする対象における関節の可動域を改善する方法であって、再生細胞を含む脂肪由来細胞の治療有効量を前記対象に投与することを含む方法に関する。いくつかの実施形態において、前記方法は、関節可動性の喪失又は関節の可動域の低減を経験している個体として、前記対象を選択し、同定し又は分類することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記選択、同定又は分類は、医師によって又は臨床若しくは診断評価によって行われる。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記脂肪由来再生細胞の投与の前、後又はその間に、前記対象の関節の可動性又は可動域を決定又は測定することをさらに含む。任意の前記実施形態において、前記脂肪由来再生細胞は、幹細胞を含み得る。任意の前記実施形態において、前記脂肪由来再生細胞は、先駆細胞を含み得る。任意の前記実施形態において、前記脂肪由来再生細胞は、前駆細胞を含み得る。任意の前記実施形態において、前記対象は、強皮症を有し得る。
【0012】
定義
本明細書中で使用されるように、用語「約」は、記述された数値に関する場合、記述された数値のプラス又はマイナス10%以内の値を示す。
【0013】
本明細書中で使用されるように、用語「由来する」は、単離されたか又はそうでなければ精製されたことを意味する。例えば、脂肪由来幹細胞及び再生細胞は、脂肪組織から単離される。用語「由来する」は、脂肪組織などの組織から直接単離された細胞又は初代培養物から培養された若しくは増殖された細胞から大規模に培養された(例えば、分裂細胞の大多数が3、4、5回以下の細胞倍加を起こす培養条件に置かれた)細胞を包含しない。したがって、「脂肪由来幹細胞及び再生細胞」は、脂肪組織から得られた細胞を指し、該細胞は、大規模に培養されない。
本明細書中で使用されるように、細胞は、特別なマーカーが検出可能である場合に、そのマーカーに関して「陽性」である。例えば、脂肪由来再生細胞は、例えば、CD73に関して陽性であり、それは、脂肪由来幹細胞又は再生細胞上で、CD73がバックグラウンドよりも(例えば、アイソタイプ対照又は任意の所与のアッセイのための実験上の陰性対照に比較して)検出可能に大きな量で検出できるからである。細胞は、マーカーが、該細胞を少なくとも1つの他の細胞タイプから識別するために使用可能である場合又は存在するか若しくは該細胞によって発現されるときに細胞を選択若しくは単離するために使用可能である場合にも、該マーカーに関して陽性である。
【0014】
いくつかの場面において、用語「脂肪組織」は、脂肪細胞及び血管細胞を含む複数の細胞タイプを含有する組織を指す。脂肪組織は、成人幹細胞(ASC)並びに内皮前駆及び先駆細胞を含む、複数の再生細胞タイプを含む。したがって、脂肪組織は、脂肪を貯蔵する結合組織を含む脂肪を指す。
いくつかの場面において、用語「脂肪組織の単位」は、分離した又は測定可能な脂肪組織の量を指す。脂肪組織の単位は、該単位の質量及び/又は体積を決定することによって測定されてよい。本明細書の開示を参照すると、脂肪組織の単位は、対象から除去された脂肪組織の全量又は対象から除去された脂肪組織の全量未満の量を指してもよい。したがって、脂肪組織の単位は、脂肪組織の別の単位と併合されて、個々の単位の合計である質量又は体積を有する脂肪組織の単位を形成してもよい。
いくつかの場面において、用語「一部」は、全体よりも少ない量の材料を指す。小さいほうの部分は、50%未満の量を指し、大きなほうの部分は、50%超の量を指す。したがって、対象から除去された脂肪組織の全体量未満の脂肪組織の単位は、除去された脂肪組織の一部である。
【0015】
本明細書中で使用されるように、「再生細胞」は、それによって治療的、構造的又は美容上の利益を提供するための、器官、組織又は生理学的単位若しくは系の構造又は機能の完全な又は部分的な再生、修復又は置換を引き起こすか又はそれに寄与する、本明細書に開示された実施形態の系及び方法を用いて得られた任意の異種の又は同種の細胞を指す。再生細胞の例としては、ASC、内皮細胞、内皮先駆細胞、内皮前駆細胞、マクロファージ、線維芽細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、前脂肪細胞、分化した又は脱分化した脂肪細胞、角化細胞、単能性及び多能性前駆及び先駆細胞(及びそれらの子孫)並びにリンパ球が挙げられる。
【0016】
いくつかの場面において、用語「前駆細胞」は、1つ又は複数の特異的な機能を発揮し、限定された自己再生能を有するか又は自己再生能を有さない、1つ又は複数の細胞タイプに分化する能力を有する単能性、二能性又は多能性細胞を指す。本明細書に開示された前駆細胞のいくつかは、多能性であり得る。
いくつかの場面において、用語「脂肪組織由来細胞」は、成熟脂肪細胞からの活性細胞成分と結合組織を分離するために処理された脂肪組織から抽出された細胞を指す。分離は、部分的又は完全なものであってよい。すなわち、「脂肪組織由来細胞」は、いくつかの脂肪細胞及び結合組織を含有してもしなくてもよく、凝集体又は部分的に凝集した形態(例えば、細胞外マトリックスにより結合された2つ以上の細胞を含む、血管又はリンパ管の断片)で存在するいくつかの細胞を含有してもしなくてもよい。この画分は、本明細書において「脂肪組織由来細胞」、「脂肪由来細胞」、「脂肪由来再生細胞」又は「ADC」と呼ばれる。典型的に、ADCは、脂肪組織からの細胞を洗浄し、分離することによって得られた細胞のペレットを指す。該ペレットは、典型的に、細胞が遠心容器の底で凝集するように細胞懸濁液を遠心分離するか、或いは異なるやり方で細胞を濃縮することによって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】以下の例1に記載した、脂肪由来細胞の注射部位に印をつけた患者の指を示す写真である。
図2】以下の例1に記載した、注射部位に作られた切開を示す写真である。
図3】以下の例1に記載した、注射部位への脂肪由来細胞の送達を示す写真である。
図4】以下の例1に記載した、処置時及び処置後の2カ月における患者のレイノー重症度スコアを示すグラフである。
図5】30%超のレイノー重症度スコアの悪化、10〜33%のレイノー重症度スコアの悪化、無変化のレイノー重症度スコア(−10%〜+10%)、改善されたレイノー重症度スコア(10%〜33%)及びレイノー重症度スコアにおける大きな改善(33%超)を示す被験患者の数を示す棒グラフである。
図6】以下の例1に記載した、ベースライン(処置時)及び処置後2カ月における患者の強皮症健康評価アンケート(Scleroderma Health Assessment Questionnaire(SHAQ))スコアを示すグラフである。
図7】30%超のSHAQスコアの悪化、10〜33%のSHAQスコアの悪化、無変化のSHAQスコア(−10%〜+10%)、改善されたSHAQスコア(10%〜33%)及びSHAQスコアにおける大きな改善(33%超)を示す被験患者の数を示す棒グラフである。
図8】以下の例1に記載した、処置時及び処置後2カ月における患者のコーチン(Cochin)スコアを示すグラフである。
図9】以下の例1に記載した、処置後2カ月のタイピングに関連した動きを示す、被験患者の手の写真である。
図10】以下の例1に記載した、処置後2カ月のはさみの操作に用いられる手の動きを示す、被験患者の手の写真である。
図11】以下の例1に記載した、手の疼痛(視覚的アナログスケール(「VAS」);コーチン手機能スケール(Cochin Hand Function Scale(「CHFS」)、レイノー状態スコア(Raynaud’s Condition Score(「RCS」));及び強皮症健康評価アンケート(「SHAQ」)に関する、ベースライン、2カ月フォローアップ及び6カ月フォローアップスコアを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
疼痛の処置方法
本明細書に記載されるのは、疼痛を処置する方法であって、脂肪由来幹細胞及び再生細胞、例えば、本明細書及び米国特許第7,390,484号に記載され、調製された脂肪由来幹細胞及び再生細胞の投与を含む方法である。
【0019】
一般に、疼痛は、実際の若しくは潜在的な組織損傷に伴う不快な感覚的及び感情的経験として定義されるか、又はそのような損傷に関して記述される。Merskey H, Bogduk N, eds., Classification of Chronic Pain, International Association for the Study of Pain (IASP) Task Force on Taxonomy, IASP Press: Seattle, 209-214, 1994。疼痛の知覚は非常に主観的なものであるため、それは、診断し、効果的に処置することが最も困難な病態の一つである。疼痛は、それが刺激に続いて直ちに誘発されることを意味する、急性であるか(例えば、炎への曝露、鋭い又は鈍い衝撃又は突然の虚血事象)、或いは持続性及び/又は比較的頻繁な間隔で再発することを意味する、慢性であってよい。
【0020】
一態様において、本明細書に提供されるのは、疼痛を有する個体を処置する方法であって、該個体に治療有効量の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞を投与することを含み、該治療有効量が、前記疼痛又は前記疼痛に伴う症状における検出可能な改善をもたらすのに十分な量である、方法である。一実施形態において、患者は、疼痛の抑制又は処置を必要としているものとして同定される。一実施形態において、前記方法は、前記脂肪由来幹細胞及び再生細胞の投与前に、前記個体における疼痛の第1のレベルを決定すること、及び前記脂肪由来幹細胞及び再生細胞の投与後に、前記個体における疼痛の第2のレベルを決定することをさらに含み、前記治療有効量の脂肪由来幹細胞及び再生細胞が、前記疼痛の第2のレベルを、前記疼痛の第1のレベルに比べて低減させる。
【0021】
ある特定の実施形態において、治療有効量の脂肪由来幹細胞及び再生細胞は、投与された場合、プラセボの投与に比べて、個体における疼痛のより大きな又はより長期持続性の改善をもたらす。
ある特定の実施形態において、疼痛は、侵害受容性疼痛である。侵害受容性疼痛は、典型的に、組織傷害、疾患又は炎症に続いて、炎症性化学伝達物質のような侵害性刺激が放出され、傷害部位における正常に機能する感覚受容器(侵害受容器)により検出される場合に誘発される。例えば、Koltzenburg, M. Clin. J. of Pain 16:S131-S138 (2000)を参照されたい。侵害受容性疼痛の原因の例としては、化学熱傷又は熱傷、皮膚の切り傷及び挫傷、骨関節炎、リウマチ関節炎、腱炎及び筋膜痛が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、侵害受容性疼痛は、炎症により刺激される。
【0022】
他のある特定の実施形態において、疼痛は、神経障害性疼痛である。神経障害性疼痛は、神経系の傷害又は機能障害を反映し、「神経系における初期病変又は機能不全により惹起される又は引き起こされる疼痛」と定義されてきた。Merskey H, Bogduk N, eds., Classification of Chronic Pain, International Association for the Study of Pain (IASP) Task Force on Taxonomy, IASP Press: Seattle, 209-214, 1994。具体的な実施形態において、神経障害性疼痛は、末梢ニューロンの変更された興奮性を特徴とする。他の具体的な実施形態において、神経障害性疼痛は、糖尿病性神経障害、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、炎症(例えば、神経炎症、神経炎)に伴う疼痛及び卒中後痛を含むが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、神経障害性疼痛は、持続性、突発性であり、例えば、灼けつくような、ヒリヒリする、チクチクする、刺すような、電気ショックのような、突き刺すような、締め付けられるような、深部痛の又は発作的などと記述される。他のある特定の実施形態において、神経障害性疼痛を有する個体は、部分的又は完全な感覚消失、異常な若しくは珍しい不快な感覚(異常感覚)、非侵害性刺激により引き起こされる疼痛、又は閾値を超えた刺激に対する不釣り合いな疼痛の知覚(痛覚過敏)をさらに経験する。
【0023】
別の具体的な実施形態において、神経障害性疼痛は、複合性局所疼痛症候群(CRPS)である。具体的な実施形態において、CRPSは、神経損傷の不存在下で四肢に影響を及ぼす(I型CRPS)。より具体的な実施形態において、前記I型CRPSは、反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)を含む。より具体的な実施形態において、前記RSDは、ステージIのRSD又は「早期RSD」である。早期RSDにおいて、疼痛は、損傷から予想されるよりも重度であり、灼けつくような又はずきずきする質のものである。それは、肢の依存性、身体的接触又は感情的なみだれにより増大される可能性がある。患部は典型的に、浮腫性となり、体温上昇又は体温低下する可能性があり、爪及び毛の成長増加を示し得る。X線写真は、早期の骨変化を示す可能性がある。別のより具体的な実施形態において、前記RSDは、ステージIIのRSD又は「確立されたRSD」である。より具体的な実施形態において、前記確立されたRSDは、疼痛に加えて、浮腫性組織の硬化;網状皮斑又はチアノーゼを伴う皮膚の発汗過多;脱毛;爪の隆起、割れ又は脆化;乾燥した手の発生;及び/又は皮膚及び皮下組織の顕著な委縮を含む。疼痛は依然として優勢な特徴である。別のより具体的な実施形態において、前記RSDは、ステージIIIのRSD又は「末期RSD」である。より具体的な実施形態において、前記末期RSDは、近位に広がる疼痛;不可逆的な組織損傷;薄く光沢のある皮膚;及びX線写真において見ることのできる骨脱灰を含む。
【0024】
別の具体的な実施形態において、神経障害性疼痛は、薬物、例えば、化学療法剤又は抗癌剤によって引き起こされる。具体的な実施形態において、薬物は、プラチナ含有薬物、タキサン、エポチロン、植物アルカロイド又はサリドマイドであるか又はそれを含む。より具体的な実施形態において、薬物は、ボルテゾミブ、カルボプラチン(例えば、PARAPLATIN(登録商標))、シスプラチン(例えば、PLATINOL(登録商標))、シタラビン(例えば、CYTOSAR(登録商標)、Ara−C)、ドセタキセル(例えば、TAXOTERE(登録商標))、エトポシド/VP−16(VEPESID(登録商標))、ゲムシタビン(gemcitibin)(例えば、GEMZAR(登録商標))、HALAVEN(登録商標)(エリブリンメシル酸塩)、ヘキサメチルメラミン(例えば、HEXALIN(登録商標))、パクリタキセル(例えば、TAXOL(登録商標);ABRAXANE(商標))、オキサリプラチン(例えば、ELOXATIN(登録商標))、スラミン、サリドマイド(例えば、THALOMID(登録商標))、ビンブラスチン(例えば、VELBAN(登録商標);ALKABAN−AQ(登録商標))、ビンクリスチン(例えば、ONCOVIN(登録商標)、VINCASAR PFS(登録商標)、Vincrex)、又はビノレルビン(NAVELBINE(登録商標))であるか或いはそれを含む。
【0025】
他のある特定の具体的な実施形態において、薬物は、抗生物質である。他のある特定の実施形態において、薬物はスタチンである。
【0026】
他のある特定の具体的な実施形態において、薬物は、アムロジピン(例えば、NORVASC(登録商標)、Lotril又はLotrel)、アトルバスタチン(例えば、LIPITOR(登録商標))、デュロキセチン(例えば、CYMBALTA(登録商標))、プレガバリン(LYRICA(登録商標))、アロプリノール(例えば、LOPURIM(登録商標)、ZYLOPRIM(登録商標))、アミノジピンベルグレート(aminodipinberglate)、アミオダロン(例えば、CORDERONE(登録商標)、PACERONE(登録商標))、アミオジピン、アミトリプチリン(例えば、ELAVIL(商標)、ENDEP(商標)、VANATRIP(商標))、メトロニダゾール(例えば、FLAGYL(登録商標)、METROGEL(商標))、ニトロフラントイン(例えば、FURADANTIN(登録商標)、MACROBID(登録商標)、MACRODANTIN(登録商標)、NITRO MACRO)、ペルヘキシリン、VYTORIN(登録商標)、シプロフロキサシン(例えば、CIPRO(登録商標)、PROQUIN(登録商標))、ジスルフラム(例えば、ANTABUSE)、ゾルピデム(例えば、AMBIEN(登録商標))、ブスピロン(例えば、BUSPAR)、クロナゼパム(例えば、KLONOPIM、CEBERKLON、VALPAX)、アラプラゾラム(例えば、XANAX(登録商標))、フェニロイン(DILANTIN(登録商標))、シタロプラム(例えば、CELEXA)、デュロキセチン(例えば、CYMBALTA(登録商標))、ベンラキサフィン(例えば、EFFEXOR、EFFEXOR XR(登録商標))、ノルトリプチリン(例えば、AVENTYL HCL, PAMELOR)、セルトラリン(例えば、ZOLOFT(登録商標))、パロキセチン(例えば、PAXIL、PAXIL CR(登録商標))、アテノロール(例えば、TENORMIN、SENORMIN)、ペリンドプリル(例えば、ACEON)、アルテース(例えば、RAMIPRIL(登録商標))、ロサルタン(例えば、COZAAR(登録商標)、HYZAAR(登録商標))、ヒドララジン(例えば、APRESOLINE(登録商標))、ヒドロクロロチアジド(例えば、HYDRODIURIL(商標)、EZIDE(商標)、HYDROPAR(商標)、MICROZIDE(商標))、リシノプリル(例えば、PRINOVIL(登録商標)、ZESTRIL(登録商標))、テルミサルタン(例えば、MICARDIS(商標))、ペルヘキシリン、プラゾシン(例えば、MINIPRESS(登録商標))、リシノプリル(例えば、PRINIVIL(登録商標)、ZESTRIL(登録商標))、ロバスタチン(例えば、ALTOCOR(登録商標)、MEVACOR(登録商標))、CADUET(登録商標)、ロスバスタチン(rosuvatatin)(例えば、CRESTOR(登録商標))、フラバスタチン(例えば、LESCOL(登録商標)、LESCOL(登録商標) XL))、シンバスタチン(例えば、ZOCOR(登録商標))、セリバスタチン(例えば、LIPOBAY(商標))、ゲムフィブロジル(例えば、LOPID(登録商標))、プラバスタチン(例えば、PRAVACHOL(登録商標)、PRAVIGARD PAC(商標))、d4T(スタブジン、例えば、ZERIT(登録商標))、ddC(ザルシタビン;例えば、HIVID(登録商標))、ddI(ジダノシン、例えば、VINDEX(登録商標) EC)、イソニアジド(例えば、TUBIZID(登録商標))、ジアミノジフェニルスルホン(DDS、ダプソン)であるか又はこれを含む。
【0027】
ある特定の実施形態において、神経障害性疼痛は薬物、例えば、化学療法剤又は抗癌剤、によって引き起こされる疼痛ではない。具体的な実施形態において、神経障害性疼痛は、プラチナ含有薬物、タキサン、エポチロン、植物アルカロイド又はサリドマイドにより引き起こされる疼痛ではない。より具体的な実施形態において、神経障害性疼痛は、ボルテゾミブ、カルボプラチン(例えば、PARAPLATIN(登録商標))、シスプラチン(例えば、PLATINOL(登録商標))、シタラビン(例えば、CYTOSAR(登録商標)、Ara−C)、ドセタキセル(例えば、TAXOTERE(登録商標))、エトポシド/VP−16(VEPESID(登録商標))、ゲムシタビン(例えば、GEMZAR(登録商標))、HALAVEN(登録商標)(エリブリンメシル酸塩)、ヘキサメチルメラミン(例えば、HEXALIN(登録商標))、パクリタキセル(例えば、TAXOL(登録商標);ABRAXANE(商標))、オキサリプラチン(例えば、ELOXATIN(登録商標))、スラミン、サリドマイド(例えば、THALOMID(登録商標))、ビンブラスチン(例えば、VELBAN(登録商標);ALKABAN−AQ(登録商標))、ビンクリスチン(例えば、ONCOVIN(登録商標)、VINCASAR PFS(登録商標)、Vincrex)、又はビノレルビン(NAVELBINE(登録商標))により引き起こされる疼痛ではない。
【0028】
別の具体的な実施形態において、前記CRPSは、神経損傷の存在下で四肢に影響を及ぼす(II型CRPS)。より具体的な実施形態において、前記II型CRPSは、灼熱痛を含む。別の具体的な実施形態において、前記CRPSは、交感神経依存性疼痛症候群を含む。ある特定の実施形態において、CRPSの症状は、疼痛、自律神経障害、浮腫、運動障害、ジストロフィー、委縮、灼けつくような疼痛、アロジニア(軽い接触による疼痛)を含むが、それに限定されない。ある特定の実施形態において、CRPS関連の疼痛は、膨潤及び関節圧痛、発汗増加、温度に対する敏感性及び/又は皮膚の色変化を伴う。
【0029】
他のある特定の具体的な実施形態において、神経障害性疼痛は、食事障害により引き起こされるか又はそれに関連する神経障害性疼痛である。より具体的な実施形態において、食事障害は、ビタミンB12(コバラミン、シアノコバラミン)欠乏症である。別のより具体的な実施形態において、食事障害は、ビタミンB6(ピリドキシン、リン酸ピリドキサール)欠乏症である。別のより具体的な実施形態において、食事障害は、ビタミンB1(チアミン)欠乏症である。別の具体的な実施形態において、食事障害により引き起こされた神経障害性疼痛を有する個体は、肥満外科手術を受けたことがある。別の具体的な実施形態において、神経障害性疼痛は、アルコール依存症又は疼痛を有する個体によるアルコール消費により引き起こされるか又はそれに関連する。
【0030】
ある特定の実施形態において、疼痛は、外陰部痛により引き起こされるか又はそれに関連する。外陰部痛は、外陰部の疼痛、例えば、外陰部若しくは膣感染又は皮膚疾患によって説明できない疼痛である。一実施形態において、外陰部痛の疼痛は、外陰部前庭炎又は膣前庭痛のような、外陰部領域、例えば、前庭領域に限局される。別の実施形態において、外陰部痛の疼痛は、クリトロジニア(clitorodynia)など、クリトリスに広がる可能性がある。外陰部痛の原因としては、性交困難症、外陰部を支配する神経の傷害又は刺激、炎症の遺伝的素因、アレルギー、自己免疫障害(例えば、全身性エリテマトーデス又はシェーグレン症候群)、感染(例えば、酵母感染、HPV又は細菌性膣症)及び神経障害が挙げられるが、それに限定されない。外陰部痛の代表的症状としては、非限定的に、外陰部、大陰唇、小陰唇又は膣前庭の又はその周囲のびまん性疼痛又は灼熱感が挙げられる。
【0031】
ある特定の実施形態において、疼痛は、間質性膀胱炎により引き起こされるか又はそれに関連する。膀胱痛症候群としても知られる間質性膀胱炎は、例えば、膀胱に関連する疼痛又は圧迫感、排尿痛、刺激性の排尿、頻尿、緊急性又は骨盤内の疼痛又は圧迫感をしばしば特徴とする、慢性の状態である。間質性膀胱炎の病態及び病態形成は明確に理解されていない。しかしながら、数種の可能性のある原因、例えば、血管閉塞、自己免疫、炎症、漏洩膀胱内膜、マスト細胞、ストレス並びに遺伝的、神経原性及び内分泌性の原因が提案されている。一実施形態において、間質性膀胱炎の診断は、例えば、骨盤痛緊急性/頻度(PUF)患者調査(Pelvic Pain Urgency/Frequency(PUF)Patient Survey)又はカリウム感受性試験としても知られるKCl試験によって行うことができる。
【0032】
他のある特定の実施形態において、疼痛は内臓痛である。
他のある特定の実施形態において、疼痛は、手術中に引き起こされた組織への外傷から生じたもののような術後痛である。
他のある特定の実施形態において、疼痛は、混合疼痛、例えば、侵害受容性及び神経障害性の要素を有する慢性疼痛である。具体的な実施形態において、前記混合疼痛は、癌性疼痛又は腰痛である。
他のある特定の実施形態において、疼痛は、片頭痛の疼痛又は頭痛、例えば、血管性頭痛、群発性頭痛又は毒性頭痛(toxic headache)、による疼痛である。
【0033】
いくつかの実施形態において、疼痛は、全身性硬化症又は強皮症、例えば、びまん性若しくは全身性強皮症、によるものである。さらに他の実施形態において、疼痛は、レイノー病によるものである。
具体的な実施形態において、疼痛に関連する前記症状は、自律神経障害、運動を開始する能力のないこと、虚弱、振戦、筋肉の痙攣、ジストニア、ジストロフィー、委縮、浮腫、こわばり、関節圧痛、発汗増加、温度に対する敏感性、軽い接触(アロジニア)、皮膚の色変化、体温上昇又は体温低下、爪及び毛の成長増加、早期の骨変化、網状皮斑又はチアノーゼを伴う発汗過多、脱毛、隆起した、割れた又は脆化した爪、乾燥した手、びまん性骨粗しょう症、不可逆的な組織損傷、薄く光沢のある皮膚、関節拘縮及び顕著な骨脱灰のうちの1つ又は複数を含むが、それに限定されない。
【0034】
ある特定の実施形態において、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などを、本明細書に記載の方法に従って個体に投与することは、ガバペンチンなどの疼痛の処置に適用/使用される1つ又は複数の薬物に関連する副作用を伴わずに、該個体における疼痛の低減をもたらす。具体的な実施形態において、本明細書に記載の方法に従う、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来幹細胞、再生細胞を含む脂肪由来幹細胞、幹細胞及び再生細胞などを含む脂肪由来幹細胞の使用は、脂肪由来幹細胞及び再生細胞が投与される個体における疼痛の低減をもたらすが、該個体における感覚及び/又は運動協調欠乏を引き起こさない。
【0035】
疼痛評価スケール
一実施形態において、疼痛を有する個体に投与される、治療有効量の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、該個体における疼痛の検出可能な低減をもたらす量である。該低減は、該個体に検出可能であり、観察者に検出可能であり、又はその両方であることができる。本明細書に提供される処置方法のある特定の実施形態において、個体における疼痛のレベルは、該個体によって、例えば、医師によって導かれた通りに又は処置前の精密検査の一部として、1つ又は複数の個体疼痛スケール(individual pain scales)に従って評価される。他のある特定の実施形態において、個体における疼痛のレベルは、観察者によって、1つ又は複数の観察者疼痛スケール(observer pain scales)を用いて評価される。疼痛のレベルが脂肪由来の幹細胞及び再生細胞の投与の前及び後に、該方法に従って評価される場合、各評価のために同じスケールが使用されることが好ましい。個体における疼痛は、脂肪由来幹細胞及び再生細胞の投与の前に1回又は1回より多く、例えば、2、3、4若しくは5回評価し、脂肪由来幹細胞及び再生細胞の投与の後に1回又は1回より多く、例えば、2、3、4若しくは5回評価することができる。
【0036】
一実施形態において、個体における疼痛は、0〜10の数的疼痛強度スケールによって評価される。このスケールにおいては、ゼロは疼痛無しに等しく、10は、最悪の疼痛に等しい。ある特定の実施形態、例えば、疼痛の質評価スケールにおいては、疼痛は1つを超える数的記述子、例えば、いかに疼痛が「熱く」感じるかについて0〜10に、いかに疼痛が「強く」感じるかについて0〜10に、いかに疼痛が「鋭く」感じるかについて0〜10に、いかに疼痛が「鈍く」感じるかについて0〜10に、いかに疼痛が「冷たく」感じるかについて0〜10に、いかに疼痛が「敏感に」感じるかについて0〜10に、いかに疼痛が「触ると痛く」感じるかについて0〜10に、いかに疼痛が「かゆく」感じるかについて0〜10に、いかに疼痛が「刺すように」感じるかについて0〜10に、いかに疼痛が「しびれて」感じるかについて0〜10に、いかに疼痛が「ヒリヒリと」感じるかについて0〜10に、いかに疼痛が「電気的に」感じるかについて0〜10に、いかに疼痛が「痙攣性に」感じるかについて0〜10に、いかに疼痛が「ずきずき」感じるかについて0〜10に、いかに疼痛が「放射性」に感じるかについて0〜10に、いかに疼痛が「うずくように」感じるかについて0〜10に、いかに疼痛が「重く」感じるかについて0〜10に及び/又はいかに疼痛が「不快に」感じるかについて0〜10に分類される。
【0037】
別の実施形態において、個体における疼痛は、簡易型記述式疼痛強度スケールにより評価される。このスケールにおいて、疼痛は、例えば、「疼痛無し」、「軽度の疼痛」、「中程度の疼痛」、「強度の疼痛」、「非常に強度の疼痛」又は「考えられる限り最悪の疼痛」のように記述される。
別の実施形態において、個体における疼痛は、視覚的アナログスケールにより評価される。視覚的アナログスケールにおいて、垂直の線からなるグラフが個体に示され;線の一方の端は、「疼痛無し」とラベルされ、他方の端は「考えられる限り最悪の疼痛」とラベルされる。個体は、該個体によって知覚された疼痛のレベルを示す、2つの端の間の地点において線に印をつけるように求められる。
別の実施形態において、個体における疼痛は、ウォング−ベーカーFACES疼痛評価スケールにより評価される。該FACES疼痛評価スケールにおいては、疼痛のレベルが、楽しく見えるものから段々により不幸に見える、典型的に6つの一連の顔の漫画により示される。具体的な実施形態において、顔は、「痛み無し」、「わずかに痛い」、「もう少し痛い」、「さらに痛い」、「かなり痛い」及び「最悪に痛い」のような句により意味合いが付されている。別の具体的な実施形態において、顔は、「痛み無し」、「弱い、うっとうしい痛み」、「しつこく、不快な煩わしい痛み」、「つらく、悲惨な痛み」、「強い、ひどく不愉快な恐ろしい痛み」及び「考えられる限り最悪の、耐えられない極度の痛み」のような句により意味合いが付され、それ単独か又は数値0〜10のスケールを伴う。
【0038】
ある特定の実施形態において、個体における疼痛は、FLACC(顔、足、活動性、啼泣、精神的安定(Face, Legs, Activity,Cry and Consolability))スケールにより評価される。具体的な実施形態において、各5つの特徴は、例えば、2が疼痛を示し、0が疼痛無しを示す、0〜2に格付けされる。スコアは、別個に又は合計して使用されてよい。
他のある特定の実施形態において、個体における疼痛は、CRIES(泣くこと、ヘモグロビン飽和のためにO2を必要とする(Crying, Requires O2 for SaO2)、バイタルサイン増加(血圧及び心拍数、表情及び不眠)スケールにより評価される。具体的な実施形態において、各5つの特徴は、例えば、2が疼痛を示し、0が疼痛無しを示す、0〜2に格付けされる。スコアは、別個に又は合計して使用されてよい。
ある特定の実施形態において、個体における疼痛は、COMFORTスケールにより評価され、これは、9つの異なる特徴(覚醒、平穏、呼吸困難、泣くこと、身体の動き、筋緊張、顔の張り、血圧及び心拍数)を評価し、それぞれが、1が疼痛が無いか又は最小であり、5が最大の疼痛を示す、1〜5のスケールで格付けされる。スコアは、別個に又は合計して使用されてよい。
【0039】
疼痛の生理学的指標
本明細書中で使用されるように、「疼痛の処置」などは、疼痛を完全に除去すること;疼痛を患う個体による疼痛の顕著な低減;客観的基準(例えば、心拍数、血圧、筋緊張など)による疼痛若しくは疼痛の指標の検出可能な低減;又は任意の2つ若しくは3つすべての組合せを含むことができる。他のある特定の実施形態において、個体における疼痛は、脂肪由来幹細胞及び再生細胞の投与の前若しくは後のいずれか又はその両方において、生理学的基準、例えば、ストレスの生理学的基準、により評価することができる。そのような生理学的基準は、心拍数又は血圧のような客観的に測定可能な基準、例えば、個体における無疼痛状態に比べた又は予想される正常値(例えば、収縮期の120及び拡張期の80;1分あたり60拍)に比べた心拍数又は血圧の上昇、或いは上昇したレベルのストレスホルモン、例えば、コルチゾール、ノルエピネフリンなどを含むことができる。そのような生理学的基準は、さらに又はその代わりに、顔の表情、筋肉伸長(筋緊張)、発汗、震えなどの、主観的に測定可能な基準を含むことができる。
【0040】
したがって、ある特定の実施形態において、疼痛を有する個体に投与される治療有効量の脂肪由来幹細胞及び再生細胞は、該個体における心拍数の検出可能な低減、例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%又は50%の低減;1分あたり120拍(bpm)以上から110bpm未満までの心拍数の低減;110bpm以上から100bpm未満までの低減;100bpm以上から90bpm未満までの低減;90bpm以上から80bpm未満までの低減;120bpm以上から100bpm未満までの低減;以上から90bpm未満までの低減;100bpm以上から80bpm未満までの低減;130bpm以上から100bpm未満までの低減;120bpm以上から90bpm未満までの低減;110bpm以上から80bpm未満までの低減;又は120bpm以上から80bpm未満までの低減をもたらす。
【0041】
他のある特定の実施形態において、治療有効量の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、疼痛を有する個体に投与された場合、該個体における血圧の検出可能な低減、例えば、該個体の収縮期、拡張期又はその両方における5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%又は50%の低減;該個体の収縮期における、200以上から190未満までの低減;収縮期における190以上から180未満までの低減;収縮期における180以上から170未満までの低減;収縮期における170以上から160未満までの低減;収縮期における160以上から150未満までの低減;収縮期における150以上から140未満までの低減;収縮期における140以上から130未満までの低減;収縮期における200以上から180未満までの低減;収縮期における190以上から170未満までの低減;収縮期における180以上から160未満までの低減;収縮期における170以上から150未満までの低減;収縮期における160以上から140未満までの低減;収縮期における150以上から130未満までの低減;収縮期における200以上から170未満までの低減;収縮期における190以上から160未満までの低減;収縮期における180以上から150未満までの低減;収縮期における170以上から140未満までの低減;収縮期における160以上から130未満までの低減;収縮期における200以上から160未満までの低減;収縮期における190以上から150未満までの低減;収縮期における180以上から140未満までの低減;収縮期における200以上から130未満までの低減;収縮期における200以上から150未満までの低減;収縮期における190以上から140未満までの低減;収縮期における180以上から130未満までの低減;収縮期における200以上から140未満までの低減;収縮期における190以上から130未満までの低減;又は収縮期における200以上から130未満までの低減;該個体の拡張期における140以上から130未満までの低減;拡張期における130以上から120未満までの低減;拡張期における120以上から110未満までの低減;拡張期における110以上から100未満までの低減;拡張期における100以上から90未満までの低減;拡張期における140以上から120未満までの低減;拡張期における110以上から90未満までの低減;拡張期における140以上から110未満までの低減;拡張期における130以上から100未満までの低減;拡張期における120以上から90未満までの低減;拡張期における140以上から100未満までの低減;拡張期における130以上から90未満までの低減;又は拡張期における140以上から90未満までの低減をもたらす。
【0042】
ある特定の実施形態において、治療有効量の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、疼痛を有する個体に投与された場合、該個体における1つ又は複数のサイトカイン(例えば、前炎症性サイトカイン)の量の検出可能な低減をもたらす。具体的な実施形態において、疼痛を有する個体への脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などの本明細書に記載の方法に従う投与は、該個体におけるTNF−α、IL−2、IL−3、IL−6、IL−12、IL−17、IL−18及び/又はインターフェロンγ、或いはその任意の組合せの量の減少をもたらす。個体におけるサイトカインの減少の評価は、本分野で知られた任意の方法を用いて達成することができ、例えば、個体の血漿中のサイトカインレベルは、例えば、ELISAを用いて測定可能である。
【0043】
ある特定の実施形態において、治療有効量の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、疼痛を有する個体に投与された場合、該個体における1つ又は複数のサイトカインの検出可能な増加をもたらす。具体的な実施形態において、疼痛を有する個体への脂肪由来幹細胞及び再生細胞の本明細書に記載の方法に従う投与は、該個体におけるIL−10の量の増加をもたらす。個体におけるサイトカインレベルの増加の評価は、本分野で知られた任意の方法を用いて達成されることができ、例えば、個体の血漿中のサイトカインレベルは、例えば、ELISAを用いて測定可能である。
【0044】
ある特定の実施形態において、治療有効量の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、疼痛を有する個体に投与された場合、該個体において1つ又は複数のストレスホルモンの検出可能な増加をもたらす。具体的な実施形態において、疼痛を有する個体への脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などの本明細書に記載の方法に従う投与は、該個体におけるコルチゾールの量の減少をもたらす。他の代表的なストレスホルモンは、コルチコトロフィン放出因子、アドレノコルチコトロピン、8−リポトロピン、3−エンドルフィン、バソプレッシン、プロラクチンなどを含むが、それに限定されない。個体におけるコルチゾールレベルの減少の評価は、本分野で知られた任意の方法を用いて達成されることができ、例えば、個体の唾液又は血漿又は血清中のコルチゾールレベルは、例えば、ELISA又は当業者に知られた任意の他の方法を用いて測定可能である。
【0045】
ある特定の実施形態において、治療有効量の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、疼痛を有する個体に投与された場合、該個体における1つ又は複数のケモカインの検出可能な低減をもたらす。具体的な実施形態において、疼痛を有する個体への脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などの本明細書に記載の方法に従う投与は、該個体におけるCCL2、CCL12及び/又はCXCL1或いはその任意の組合せの量の減少をもたらす。個体におけるケモカインの評価は、本分野で知られた任意の方法を用いて達成されることができ、例えば、個体の血漿中のケモカインレベルは、例えば、ELISA又は当業者(those int heart)に知られた任意の他の方法を用いて測定可能である。
【0046】
ある特定の実施形態において、治療有効量の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、疼痛を有する個体に投与された場合、該個体における1つ又は複数の細胞タイプにおける活性化及び/又は分化の検出可能な低減をもたらす。具体的な実施形態において、疼痛を有する個体への脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などの本明細書に記載の方法に従う投与は、該個体における樹状細胞、T細胞及び/又はマクロファージ或いはその任意の組合せの活性化及び/又は分化の減少をもたらす。個体における特定の細胞タイプの活性化及び/又は分化の評価は、本分野で知られた任意の方法、例えば、個体の特定の領域中に存在する特定の細胞マーカーの測定、例えば、血液の細胞に関連する又は特定の組織/器官中に認められる細胞に関連する特定の細胞マーカーの測定/評価を用いて達成可能である。
【0047】
疼痛に関連する又はその原因である炎症反応の抑制
炎症は、疼痛の唯一の起源ではない。しかしながら、ある特定の実施形態において、脂肪由来幹細胞及び再生細胞は、炎症に関連する又はそれにより引き起こされた疼痛を寛解させるために使用可能である。一実施形態において、本明細書に提供されるのは、個体における疼痛の寛解のための方法であって、該個体中の免疫細胞(複数可)を、有効量の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などと接触させることを含み、前記有効量が、(1)前記個体における免疫反応を検出可能に抑制し、(2)前記個体における疼痛を検出可能に低減する量である、方法である。具体的な実施形態において、前記脂肪由来幹細胞及び再生細胞は、混合リンパ球反応(MLR)アッセイ又は退行アッセイ(regression assay)においてT細胞増殖を検出可能に抑制する。接触は、例えば、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などを、個体に、例えば、局所的に、全身的に又は局部的に(又はその組合せにより)投与することによって達成可能である。したがって、本明細書に提供されるのは、個体における疼痛の寛解のための方法であって、該個体中の免疫細胞(複数可)を、有効量の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などと接触させることを含み、前記有効量が、(1)前記個体における免疫及び/又は炎症反応を検出可能に調節、例えば、抑制し、(2)前記個体における疼痛を検出可能に低減する量である、方法である。具体的な実施形態において、個体中の免疫細胞(複数可)を有効量の脂肪由来幹細胞及び再生細胞と接触させることは、該個体におけるTNF−α、IL−2、IL−3、IL−6、IL−12、IL−17、IL−18及び/又はインターフェロンγ、或いはその任意の組合せの量の減少をもたらす。別の具体的な実施形態において、個体中の免疫細胞(複数可)を有効量の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などと接触させることは、該個体におけるCCL2、CCL12及び/又はCXCL1、或いはその任意の組合せの量の減少をもたらす。別の具体的な実施形態において、個体中の免疫細胞(複数可)を有効量の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などと接触させることは、該個体におけるIL−10の量の増加をもたらす。
【0048】
別の実施形態において、本明細書に提供されるのは、個体における疼痛の寛解のための方法であって、該個体に、有効量の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などを投与することを含み、前記有効量が、(1)前記個体における免疫及び/又は炎症反応を検出可能に調節、例えば、抑制し、(2)前記個体における疼痛を検出可能に低減する、方法である。具体的な実施形態において、前記脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、混合リンパ球反応(MLR)アッセイ又は退行アッセイにおいてT細胞増殖を検出可能に抑制する。投与は、局所的に、全身的に又は局部的に(又はその組合せにより)実施され得る。具体的な実施形態において、有効量の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などを個体に投与することは、該個体におけるTNF−α、IL−2、IL−3、IL−6、IL−12、IL−17、IL−18及び/又はインターフェロンγ、或いはその任意の組合せの減少をもたらす。別の具体的な実施形態において、有効量の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などを個体に投与することは、該個体におけるCCL2、CCL12及び/又はCXCL1、或いはその任意の組合せの量の減少をもたらす。別の具体的な実施形態において、有効量の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などを個体に投与することは、該個体におけるIL−10の量の増加をもたらす。
【0049】
本方法の場面における「免疫細胞」は、(適応又は自然)免疫系の任意の細胞、特にT細胞及びNK(ナチュラルキラー)細胞、樹状細胞及びマクロファージを意味する。したがって、方法の多様な実施形態において、脂肪由来幹細胞及び再生細胞が、複数の免疫細胞と接触させられ、該複数の免疫細胞は、複数のT細胞(例えば、複数のCD3+T細胞、CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞)及び/又はナチュラルキラー細胞であるか又はそれを含む。方法の場面における「免疫反応」は、免疫細胞によって正常に知覚される刺激に対する免疫細胞による任意の反応、例えば、抗原の存在に対する反応であることができる。多様な実施形態において、免疫反応は、輸液若しくは移植片中に存在する抗原のような外来抗原又は自己免疫疾患におけるような自己抗原に反応したT細胞(例えば、CD3+T細胞、CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞)の増殖であることができる。免疫反応は、移植片中に含有されるT細胞の増殖であることもできる。免疫反応は、ナチュラルキラー(NK)細胞の任意の活性、樹状細胞の成熟、T細胞の分化、M1又はM2系統へのマクロファージの斜めの移動などであることもできる。
【0050】
例えば、炎症の低減による、疼痛の低減又は寛解のために使用される、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、単一種、例えば、目的のレシピエントの種若しくはその機能が低減されるか抑制されるべき免疫細胞の種、に由来するか、又は複数の種に由来することもできる。
【0051】
多様な実施形態において、脂肪由来細胞の前記接触又は投与は、疼痛に苦しむ個体における免疫機能(例えば、抗原に反応したT細胞増殖)又は炎症を、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などの不存在下における免疫機能に比べて、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%又は95%抑制するのに十分である。インビボの場面におけるそのような抑制は、例えば、個体からのT細胞のサンプルを用いるインビトロのアッセイ(以下を参照されたい)において決定することができ;すなわち、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などの具体的な数、及びレシピエントである個体中の免疫細胞の数に関して、インビトロのアッセイにおける抑制の程度が該個体における抑制の程度まで外挿することができる。
【0052】
脂肪由来幹細胞及び再生細胞は、例えば、CD4+又はCD8+T細胞、樹状細胞(DC)及び脂肪由来幹細胞及び再生細胞を、約10:1:2の比率で併合することを含み、T細胞が、例えば、娘細胞に分配されるCFSEのような色素で染色され、T細胞が約6日間増殖可能とされる、MLRにおいて試験することができる。T細胞及び/又はDC細胞は、処置されるべき個体から得ることができ、例えば、該個体に対して自家性であるか又は該個体に対して同種異系であることができる。脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、脂肪由来幹細胞及び再生細胞の存在下の6日目におけるT細胞増殖が、DCの存在下かつ脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などの不存在下におけるT細胞増殖に比べて検出可能に低減している場合には、免疫抑制的である。MLRの一実施形態において、例えば、脂肪細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、融解されるか又は培養から採取され得る。約20,000個の脂肪由来幹細胞及び再生細胞が、100μlの培地(RPMI 1640、1mM HEPESバッファー、抗生物質及び5%のヒトプール血清)中に再懸濁され、2時間、ウエルの底に接着可能とされる。CD4+及び/又はCD8+T細胞が、Miltenyi磁性ビーズによって全末梢血単核細胞から単離される。細胞がCFSE染色され、1ウエルあたり全部で100,000個のT細胞(CD4+T細胞単独、CD8+T細胞単独又は等量のCD4+及びCD8+T細胞)が添加される。ウエル中の体積を200μlとし、MLRを続行させる。
【0053】
ある特定の実施形態において、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などの抗炎症活性(すなわち、免疫抑制活性)が、疼痛を患う個体への投与の前に決定される。これは、例えば、疼痛の寛解のために投与される脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などのサンプルの免疫抑制活性を決定することによって達成可能である。そのような活性は、例えば、脂肪細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などのサンプルを、例えばMLR又は退行アッセイなどにおいて試験することによって決定可能である。一実施形態において、MLRがサンプルを用いて実施され、サンプル脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞など、によってアッセイ中で示される免疫抑制の程度が決定される。疼痛寛解の程度は、サンプリングされた脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などの免疫抑制活性と相関すると予想される。したがって、MLRは、本明細書に開示される実施形態において、脂肪由来幹細胞及び再生細胞又は脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などの特別な集団の、炎症に起因する疼痛を寛解させる絶対的及び相対的能力を決定する方法として使用可能な1つの代表的方法である。
【0054】
MLRのパラメータは、さらなるデータを提供するため又は脂肪由来幹細胞及び再生細胞のサンプル又は脂肪由来幹細胞及び再生細胞の、免疫を抑止し、ひいては疼痛を寛解させる能力を最もうまく決定するために、変更可能である。例えば、脂肪由来幹細胞及び再生細胞による免疫抑制は、アッセイ中に存在する脂肪細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などの数に大まかに比例して増加するように見えるため、MLRは、一実施形態においては、一反応あたり、2つ以上の数の脂肪由来幹細胞及び再生細胞、例えば、1×103、3×103、1×104及び/又は3×104個の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などを用いて実施可能である。アッセイ中のT細胞の数に呼応して、脂肪由来幹細胞及び再生細胞の数も変更可能である。例えば、アッセイ中の脂肪由来幹細胞及び再生細胞とT細胞は、例えば、約10:1から約1:10の任意の比率、好ましくは約1:5で存在することができるが、比較的多数の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞など、又はT細胞が使用可能である。
【0055】
同様の様式で退行アッセイ又はBTRアッセイが使用可能である。
いくつかの実施形態において、対象における免疫抑制及び/又は免疫調節が、脂肪由来細胞の対象への投与の前及び後に多様なサイトカイン、免疫細胞などのレベルを本明細書に記載のように試験することによって決定され得る。
【0056】
脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、個体中の既知の又は予想される数の免疫細胞、例えば、T細胞に対して、約10:1〜約1:10、好ましくは約1:5の比率で個体に投与され得る。しかしながら、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、非限定的な例において、約10,000:1、約1,000:1、約100:1、約10:1、約1:1、約1:10、約1:100、約1:1,000又は約1:10,000の比率で個体に投与され得る。一般に、レシピエント1キログラムあたり、約1×105〜約1×108個の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞など、好ましくは、レシピエント1キログラムあたり約1×106〜約1×107個の細胞が、免疫抑制を達成するために投与され得る。例えば、多様な実施形態において、レシピエント1キログラムあたり約1×105〜約1×108個の脂肪由来幹細胞が、免疫抑制のために投与される。多様な実施形態において、レシピエント1キログラムあたり約1×105〜約1×108個の脂肪由来再生細胞が、免疫抑制のために投与される。例えば、多様な実施形態において、レシピエント1キログラムあたり約1×105から約1×108個の脂肪由来前駆細胞が、免疫抑制のために投与される。多様な実施形態において、個体又は対象に投与された脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、少なくとも、約1×105、3×105、1×106、3×106、1×107、3×107、1×108、3×108、1×109、3×109個、又はそれ以下、若しくはそれを超える脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などを含む。
【0057】
脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、1つ又は複数の第2のタイプの幹細胞又は間質細胞、例えば、骨髄、臍帯血、筋肉、歯髄、羊膜など由来の間葉幹細胞又は間葉間質細胞とともに投与されることもできる。そのような第2の幹細胞は、前記脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などとともに、例えば、約1:10〜約10:1の間の比率で個体に投与され得る。
【0058】
脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などと免疫細胞とのインビボでの接触又は近接性を容易化するために、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などと免疫細胞を相互に接触させるために十分な任意の経路によって個体に投与され得る。例えば、脂肪由来幹細胞及び再生細胞は、個体の、例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、眼内、腸管外、髄腔内、皮下に、リンパ系中に(例えば、リンパ管若しくはリンパ節中に)、又は直接に器官、例えば、指、膵臓などの中へ投与され得る。脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、疼痛を患う個体の領域に、疼痛部位に又は疼痛を引き起こしている神経損傷部位に投与され得る。インビボでの投与のために、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、以下に記載の医薬組成物として処方され得る。
【0059】
別の態様において、疼痛を患う個体に投与される脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、1つ又は複数の抗炎症性サイトカインを発現するように遺伝子改変されている。具体的な実施形態において、前記抗炎症性サイトカインは、IL−10、IL)−1受容体アンタゴニスト、IL−4、IL−6、IL−10、IL−11、IL−13又はその任意の組合せを含む。
【0060】
第2の治療用組成物及び第2の治療法
個体における疼痛の任意の上記処置方法において、該方法は、第2の治療用組成物又は第2の治療法、例えば、抗疼痛薬物又は治療法の投与も含むことができる。好ましい実施形態において、第2の活性剤は、疼痛を緩和し、炎症反応を阻止若しくは調節し、鎮静効果若しくは抗神経痛効果を与え、又は患者の安楽を保証することができる。
ある特定の実施形態において、第2の治療用組成物は、オピオイド系鎮痛剤、非麻薬性鎮痛剤、抗炎症剤、cox−2阻害剤、アルファ−アドレナリン受容体アゴニスト若しくはアンタゴニスト、ケタミン、麻酔剤、NMDAアンタゴニスト、免疫調節剤、免疫抑制剤、抗うつ薬、抗痙攣薬、抗高血圧薬、抗不安薬、カルシウムチャネルブロッカー、筋弛緩薬、コルチコステロイド、高圧酸素、JNK阻害剤、疼痛を緩和することが知られている他の治療薬並びに医薬として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接体、プロドラッグ及び薬理学的に活性なその代謝物を含むが、それに限定されない。
【0061】
ある特定の実施形態において、第2の治療用組成物は、オピオイドである。オピオイドは、例えば、重篤な疼痛を処置するために使用され得る。オピオイド系鎮痛剤の例としては、オキシコドン(例えば、OXYCONTIN(登録商標))、硫酸モルヒネ(例えば、MS CONTIN(登録商標)、DURAMORPH(登録商標)及び/又はASTRAMORPH(登録商標))、メペリジン(例えば、DEMEROL(登録商標))及びフェンタニル経皮パッチ(例えば、DURAGESIC(登録商標))並びに他の知られた慣用の薬物が挙げられるが、それに限定されない。オキシコドン(例えば、OXYCONTIN(登録商標))は、オピオイドの長時間作用型であり、例えば、CRPSの初期及び後期段階において使用されてよい。
【0062】
非麻薬性鎮痛剤及び抗炎症剤は、例えば、妊娠中及び授乳中の疼痛の処置のために使用されてよい。非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)は、例えば、疼痛症候群の早期段階において使用されてよい。抗炎症剤の例としては、酢酸サリチル酸(salicylic acid acetate)(例えば、アスピリン)、イブプロフェン(例えば、MOTRIN(登録商標)、ADVIL(登録商標)など)、ケトプロフェン(例えば、ORUVAIL(登録商標))、ロフェコキシブ(例えば、VIOXX(登録商標))、ナプロキセンナトリウム(例えば、ANAPROX(登録商標)、NAPRELAN(登録商標)、NAPROSYN(登録商標)など)、ケトロラック(例えば、ACULAR(登録商標))又は他の知られた慣用の薬物が挙げられるが、それに限定されない。具体的なcox−2阻害剤は、セレコキシブ(例えば、CELBREX)である。
【0063】
抗うつ薬である第2の治療用化合物の例としては、ノルトリプチリン(PAMELOR(登録商標))、アミトリプチリン(ELAVIL(登録商標))、イミプラミン(TOFRANIL(登録商標))、ドキセピン(SINEQUANO)、クロミプラミン(ANAFRANIL(登録商標))、フルオキセチン(PROZAC(登録商標))、セルトラリン(ZOLOFT(登録商標))、ネファゾドン(SERZONE(登録商標))、ベンラファキシン(EFFEXOR(登録商標))、トラゾドン(DESYREL(登録商標))、ブプロピオン(WELLBUTRIN(登録商標))及び他の知られた慣用の薬物が挙げられるが、それに限定されない。例えば、Physician's Desk Reference, 329, 1417, 1831 及び3270 (57th ed., 2003)を参照されたい。
【0064】
抗痙攣薬である第2の治療用化合物の例としては、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、ガバペンチン(NEURONTIN(登録商標))、フェニロイン、バルプロ酸ナトリウム、クロナゼパム、トピラマート、ラモトリジン、ゾニサミド及びチアガビンが挙げられるが、それに限定されない。例えば、Physician's Desk Reference, 2563 (57th ed., 2003)を参照されたい。
本明細書に記載の実施形態において有用な他の第2の治療用化合物は、コルチコステロイド(例えば、プレドニソン、デキサメタゾン又はヒドロコルチゾン)、経口活性クラスIb抗不整脈剤(例えば、メキシレチン)、カルシウムチャネルブロッカー(例えば、ニフェジピン)、βブロッカー(例えば、プロプラノロール)、αブロッカー(例えば、フェノキシベンザミン)、及びアルファ2−アドレナリンアゴニスト(例えば、クロニジン)を含むが、それに限定されず、免疫調節化合物とともに使用されることもできる。例えば、Physician's Desk Reference, 1979, 2006及び2190 (57th ed., 2003)を参照されたい。
【0065】
上記治療薬の任意の組合せが投与され得る。そのような治療薬は、脂肪由来幹細胞及び再生細胞との任意の組合せで、同時に又は処置の別個の過程として、投与され得る。
いくつかの実施形態において、第2の治療薬は、(例えば、単一の組成物中で又は同時に投与される異なる組成物中で)脂肪由来細胞に付随して同時に投与される。いくつかの実施形態において、第2の治療薬は、脂肪由来細胞の投与の前又はその後に(subjsequently)投与される。好ましくは、第2の治療薬は、脂肪由来細胞の24時間以内に投与される。
上記列挙された第2の治療用化合物のいくつかは(例えば、フルオキセチン)、有益な効果を有するが、それ自体は、少数のレシピエントにおいて神経性障害性疼痛を副作用として引き起こすことに注意すべきである。一般に、そのような化合物は、投与するのに安全であると考えられるが、当業者(例えば、医師)は、さらなる神経障害性疼痛のリスクに比べたそのような第2の治療用化合物を投与する相対的な利益を決定することができる。
【0066】
本明細書に記載の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、医薬組成物、例えば、静脈内、筋肉内又は腹腔内注射に好適な医薬組成物の形態で疼痛を患う個体に投与され得る。脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、単一用量又は複数用量で個体に投与され得る。細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞など、が複数用量で投与される場合、該用量は、疼痛を緩和するために設計された治療レジメンの一部であることができ、又は疼痛の基礎をなす原因を処置するために設計された長期治療レジメンの一部であることができる。脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などが第2の治療薬とともに投与されるか又は第2のタイプの幹細胞とともに投与される実施形態において、脂肪由来細胞及び第2の治療薬及び/又は第2のタイプの幹細胞は、同時に(例えば、単一の組成物として、若しくは別個の組成物中で)又は異なるときに、例えば、投与は、お互いに1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40若しくは50分以内に、又はお互いに1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20若しくは22時間以内に、又はお互いに1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10日若しくはそれを超える期間以内に、投与され得る。
【0067】
強皮症
強皮症は、線維症及び慢性疼痛に関連する自己免疫性リウマチ疾患である。それは、限局性強皮症又は全身性強皮症のいずれかに分類される。限局性強皮症は、モルフェア(皮膚上の様々な大きさの蝋様の斑)又は線状強皮症(腕若しくは脚若しくは額上の硬化した蝋様の皮膚の筋又は線であって、関節の異常をもたらし得る)のいずれかに下位分類され;一方、全身性強皮症は、限局型(CREST症候群−石灰沈着症、レイノー現象、食道機能不全、強指症及び毛細血管拡張症)又はびまん型(限局型疾患よりも、皮膚肥厚が急速に発生し、より多くの皮膚領域を含み、「硬化症」又は内部器官の線維性硬化を発生するリスクがより高い)のいずれかに分類される。これらは、多くの異なる徴候を含む広いカテゴリーである。
最も重要なのは、限局型及びびまん型強皮症がどちらも、肺の血管が細くなって肺を通る血流の障害をもたらす結果として息切れする肺高血圧症並びに肺線維症を伴うことである。体の血管内の炎症はその狭窄をもたらす。炎症によるさらなる損傷及び増加した血圧の影響は、より小さな動脈の破壊に導き得る。結果として、線維症が起こる。このプロセスは、ひどい合併症に導き、心臓及び肺は効率の顕著な喪失を被る可能性がある。肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、強皮症患者における死の主因である。
【0068】
全身性サイン強皮症は、強皮症の一形態であり、これは、皮膚変化はないが、全身性の徴候を有する。強皮症の全身性形態は、心臓の(cardiac)(心臓(heart))の問題を引き起こし得る。全身性強皮症は、不整脈、心膜液貯留、瘢痕、左右の心室機能不全、心筋虚血、心臓リモデリング及び心不全を引き起こし得る。
強皮症による重篤な合併症は、以下のものを含む。
心臓:未処置の高血圧は、心臓を痛め;不規則な心臓のリズム及び心肥大は、心不全に導く。
腎臓:悪性の高血圧が発生し、急性腎不全を引き起こす、強皮症腎クリーゼ。
肺:全患者の3分の2が、息切れ、咳、呼吸困難、肺胞炎(肺胞の炎症)、肺炎及び癌のような呼吸器の問題を患う。
消化器系:食道の損傷、胃酸逆流、時には大量出血する可能性がある、胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)。
皮膚及び関節:手根管症候群、関節痛及びこわばり。
口:平坦な白斑、付着した歯肉粘膜の喪失、歯肉退縮及び歯周靭帯(PDL)スペースの散漫な広がり。舌及び食道粘膜下層におけるコラーゲン沈着の結果としての嚥下障害。下顎後枝、鉤状突起及び顆状突起の再吸収。口の弾力性欠如。
【0069】
いくつかの他の状態が、線維症の発生と関連する。そのような状態の例は、化学療法剤(例えば、ブレオマイシンなど)又は放射線治療による処置に続発する、局所的及び/又は全身性の線維症、外傷(例えば、火傷、事故による外傷、外科的切開若しくは介入など)に続発する線維症である。線維症は、そのような状態にしばしば関連し、患部の機能低下:例えば、関節又は皮膚表面の可動域減少、治癒障害、コンプライアンス低下をもたらすことが多い。いくつかの場合において、これは、瘢痕組織を侵襲的に切除し、(分層皮膚移植のような)正常組織を移植することにより又は瘢痕及び関連する癒着を隣接組織から離す他の外科的手順によって処置され得る。続発性線維症並びに機能障害及び疼痛の再発がこれらのアプローチに続くことが多い。したがって、侵襲性の低いアプローチ及び有効性の両方に関して改善されたアプローチが実質的に必要とされている。
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された脂肪由来細胞は、びまん型強皮症を有する対象における肺、心臓、腎臓及び関節の線維症を改善する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示された脂肪由来細胞は、限局型強皮症に関連する症状を改善又は処置する。
【0070】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された強皮症又は全身性硬化症を処置又は予防する方法は、脂肪由来細胞を複数用量で投与することを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示された強皮症又は全身性硬化症を処置又は予防する方法は、複数用量の脂肪由来細胞を、ある期間にわたって、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日毎に又はそれ以上毎に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12カ月毎に、1.5年毎に、2年毎に又はその間の任意の期間ごとに投与することを含む。
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された脂肪由来細胞による処置は、ベースライン(脂肪由来細胞の投与前)から本明細書に記載の脂肪由来細胞の対象への投与後、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、少なくとも11カ月、少なくとも1年、又はそれよりも長い期間までの、コーチンスコアにおける顕著な改善、例えば、5%超、10%超、20%超、30%超、40%超又は50%超をもたらす。
【0071】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された脂肪由来細胞による処置は、ベースライン(脂肪由来細胞の投与前)から本明細書に記載の脂肪由来細胞の対象への投与後、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、少なくとも11カ月、少なくとも1年、又はそれよりも長い期間までの、疼痛のVASスコアにおける顕著な改善、例えば、5%超、10%超、20%超、30%超、40%超又は50%超をもたらす。
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された脂肪由来細胞による処置は、ベースライン(脂肪由来細胞の投与前)から本明細書に記載の脂肪由来細胞の対象への投与後、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、少なくとも11カ月、少なくとも1年、又はそれよりも長い期間までの、SHAQスコア(強皮症健康評価アンケート)における顕著な改善、例えば、5%超、10%超、20%超、30%超、40%超又は50%超をもたらす。
【0072】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された脂肪由来細胞による処置は、ベースライン(脂肪由来細胞の投与前)から本明細書に記載の脂肪由来細胞の対象への投与後、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、少なくとも11カ月、少なくとも1年、又はそれよりも長い期間までの、mRodnan皮膚スコアにおける顕著な改善、例えば、5%超、10%超、20%超、30%超、40%超又は50%超をもたらす。
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された脂肪由来細胞による処置は、ベースライン(脂肪由来細胞の投与前)から本明細書に記載の脂肪由来細胞の対象への投与後、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、少なくとも11カ月、少なくとも1年、又はそれよりも長い期間までの、対象(subects)の爪郭中の巨大毛細血管(mega−capillaries)数の顕著な減少、例えば、5%超、10%超、20%超、30%超、40%超又は50%超をもたらす。
【0073】
レイノー現象
レイノー現象は、指、かかと及び時には他の領域の変色を引き起こす、寒冷又は感情的ストレスに反応して過度に低下した血流を特徴とする。この状態は、縦方向の隆線によって爪も脆性とし得る。レイノー症候群は、各領域への血液供給を減少させる血管攣縮の結果として発生する。レイノー現象自体は、症状(不快感)を伴う単なる兆候(低潅流)である。それは、病態形成と関連づけられたときに、(原発性レイノー現象としても知られる)原因不明のレイノー病の一部であるか、又はレイノー症候群(続発性レイノー現象)の一部であることができ、これは、最も一般的には全身性エリテマトーデスのような結合組織障害である既知の原因疾患により引き起こされる症候群である。
レイノー現象の現在の治療法は、(i)例えば、長期かつ頻繁な副作用(例えば、体位性高血圧)により望ましくない、カルシウムチャネルブロッカー又はベータブロッカーとともに経口又は静脈内で送達される、毎日の予防的薬物、或いは(ii)作用発現が遅く、症状が(急性に)発生するためにその処置が信頼できないことのいずれかを必要とする。したがって、レイノー現象における処置が必要とされている。
【0074】
続発性レイノー現象の多様な原因が知られており、例えば、強皮症、全身性エリテマトーデス、リウマチ関節炎、シェーグレン症候群、皮膚筋炎、多発性筋炎、混合性結合組織疾患、寒冷凝集素症、エーラース・ダンロス症候群などのような結合組織障害を含む。神経性食欲不振症のような摂食障害も、レイノー現象を起こし得る。アテローム性動脈硬化、バージャー病、高安動脈炎、鎖骨下動脈瘤、胸郭出口症候群などのような閉塞性疾患もレイノー現象を引き起こし得る。βブロッカー、化学療法剤(例えば、ブレオマイシンなど)、シクロスポリン、ブロモクリプチン、エルゴタミン、スルファサラジン、覚せい剤(例えば、ADHDの処置において使用される薬物)、炭疽ワクチンなどのような薬物もレイノー現象を起こし得る。しばしば、レイノーを有する患者において共存する、自動車事故又は他の外傷性イベントにおける持続性のもののような身体的外傷、ライム病、甲状腺機能低下症、クリオグロブリン血症、悪性腫瘍、慢性疲労症候群、反射性交感神経性ジストロフィー、手根管症候群、マグネシウム欠乏症、多発性硬化症及び紅痛症(レイノーとは反対であり、四肢が熱く、暖かい)も、レイノー現象を起こすことが知られている。本明細書に開示された脂肪由来細胞(例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び先駆細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び他の再生細胞を含む脂肪由来細胞など)は、上記のうちの任意の1つ又は複数から発生するレイノー現象の処置において有用である。したがって、本明細書に記載の細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、原発性又は続発性レイノー症候群を処置又は予防し得る。
【0075】
レイノー現象を診断するために、本分野で知られた多様な試験が使用可能である。当業者は、レイノー病の診断のために将来開発される試験が本明細書に記載の実施形態においても有用であることを容易に理解するであろうが、本明細書に開示された実施形態におけるレイノー病の診断において有用な試験の非限定的な例は、以下のものを含む。
(1)指動脈圧:手が冷却される前後において、指の動脈で圧力が測定される。少なくとも15mHgの低下が症状を示す(陽性)。
(2)ドップラー超音波:血流を評価するため。
(3)全血球数:これは、慢性疾患又は腎不全の貧血を示唆する、正球性貧血を明らかにし得る。
(3)尿素及び電解質に関する血液検査:これは、腎障害を明らかにし得る。
(4)甲状腺機能検査:これは、甲状腺機能低下症を明らかにし得る。
(5)リウマチ因子、赤血球沈降速度及びC反応性タンパク質に関する、自己抗体スクリーニング試験、これは、特定の原因疾患又は全般性の炎症過程を明らかにし得る、
(6)爪郭脈管構造:これは、顕微鏡下で検査され得る。
【0076】
脂肪由来細胞は、本明細書に開示された診断方法を用い、レイノー現象を有する対象がストレス又は冷気に曝露された場合に発生する血管収縮を予防するか又はその程度を低減させること;及び皮膚動脈循環の冷気誘発性又はストレス誘発性の血管収縮を反転させるか又は減少させることを含むが、それに限定されずに、(原発性又は続発性に関わらず)レイノー現象の1つ又は複数の症状、例えば、本明細書に記載のものを含むがそれに限定されない症状を処置又は予防することができる。
【0077】
線維症を処置する方法
線維症は、細胞外マトリックス成分の、腎臓、心臓、肺、肝臓、皮膚及び関節を含む内部器官における沈着を特徴とする状態である。
肺線維症は、主な線維性疾患の一つである。特発性肺線維症(IPF)は、進行性線維症を有する肺胞壁の病因不明の慢性炎症を特徴とする。IPF又は原因不明の線維化性肺胞炎は、特発性間質性肺疾患の50%〜60%の症例を引き起こす(IPFに関する総説については、Khalil and O'Connor 2004及びSelman et al. 2004を参照されたい)。
【0078】
間質性肺炎の特定の病理組織パターンである通常型間質性肺炎(UIP)は、IPFにおいて肺バイオプシーに認められる古典的パターンである。低倍率において、組織は、正常肺、間質性炎症、線維症及び蜂巣の領域を交互に有し、不均一に見える。間質性炎症は、II型肺細胞の肥厚に関連するリンパ球、形質細胞及び組織球の肺胞中隔浸潤物から成る。線維性ゾーンは、主に密な無細胞コラーゲンから構成されるが、初期及び活動性の病変部位である増殖中の線維芽細胞が散在する病巣(線維性病巣)も、通常、肺胞間位置に見られ得る。蜂巣領域は、しばしば細気管支上皮で覆われ、粘膜で満たされた嚢胞性線維性空隙から成る。好中球が粘膜内に溜まり得る。平滑筋過形成が、線維症及び蜂巣化領域においてしばしば起こる。胸膜下及び傍隔壁分布、パッチ状の特徴及び経時的不均質性は、UIPの同定において最も役に立つ特徴である。
同一パターンの間質性炎症及び線維症が、膠原血管病(例えば、RA、SLE、進行性全身性硬化症、混合性結合組織疾患、真性糖尿病)、塵肺症(例えば、石綿症)、放射線傷害及びある特定の(例えば、ニトロフラントインによる)薬物誘導性肺疾患において発生する。
【0079】
IPFの臨床経過は進行性であり;生存期間中央値は、診断後4〜6年である。プレドニソンは、IPFの場合の通常の処置である。処置に対する反応は可変であるが、より早期の疾患を有する患者は、瘢痕が優勢となる前のより細胞性の段階においては、コルチコステロイド又は細胞傷害性療法によって改善する可能性がより高いようである。支持療法及び緩和療法は、低酸素血症を緩和するために高濃度のO2を含み、細菌感染が起こると、抗生物質を含む。肺移植は、末期の肺疾患を有する患者において成功を収めている。肝臓の線維化は、細胞外マトリックスの産生及び分解のアンバランスにより生じた肝臓における結合組織の蓄積に関連し、既存の線維の崩壊及び濃縮によって強調される(総説については、Afdhal NH and Nunes D. 2004. Kershenobich and Weissbrod. 2003. Pinzani and Rombouts 2004を参照されたい)。
【0080】
肝線維症は、肝細胞の壊死又は傷害に対する共通の反応であり、これは、広く多様な作用物質、例えば、肝臓のホメオスタシスを妨害する任意のプロセス(特に、炎症、毒性傷害、糖尿病、脂肪性肝炎又は変更された肝臓の血流)及び肝臓の感染症(ウイルス性、細菌性、真菌性及び寄生性)によって誘導され得る。先天性代謝異常に起因する多数の貯蔵障害は、脂質異常(ゴーシェ病)、糖原病(特に、III形、IV型、VI型、IX型及びX型);アルファ1アンチトリプシン欠乏症;鉄過剰症候群(ヘモクロマトーシス)及び銅蓄積病(ウィルソン病)においてみられる外来物質の蓄積;(チロシン血病、果糖血症、ガラクトース血症におけるような)毒性代謝物の蓄積;及びペルオキシソーム病(ツェルヴェーガー症候群)を含む線維症に関連することが多い。多数の化学物質及び薬物、特に、アルコール、メトトレキセート、イソニアジド、オキシフェニサチン、メチルドーパ(methyidopa)、クロルプロマジン、トルブタミド及びアミオダロンが、線維症を引き起こす。肝循環の妨害(例えば、慢性心不全、バッド・キアリ症候群、静脈閉塞性疾患、門脈血栓症)及び胆汁流の慢性的閉塞は、線維症に導き得る。最後に、先天性肝線維症は、常染色体劣性奇形である。正常では門脈路にのみ見られる線維芽細胞は、コラーゲン、大きな糖タンパク質、及びプロテオグリカンを産生することができる。
【0081】
正常な肝臓は、コラーゲン(主に、I型、III形及びIV型)並びに糖タンパク質(例えば、フィブロネクチン、ラミニン)及び数種のプロテオグリカン(例えば、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸)を含む非コラーゲンタンパク質から成る細胞外マトリックス内に分布する肝細胞及び類洞から作られている。
他の肝臓の細胞(特に、星状細胞、肝細胞及び脂肪摂取性のクッパー細胞及び内皮細胞)も、細胞外マトリックス成分を産生することができる。ディッセ腔中の類洞内皮の下に位置する脂肪摂取細胞は、線維芽細胞の先駆体であり、増殖し、過剰の細胞外マトリックスを産生することができる。コラーゲンの活発な沈着による線維症の発生は、肝細胞の傷害、特に、壊死及び炎症細胞の結果である。これらの細胞から放出される正確な要素は知られていないが、1つ又は複数のサイトカイン又は脂質過酸化の産物の可能性がある。クッパー細胞及び活性化されたマクロファージは炎症性サイトカインを産生する。新しい線維芽細胞が壊死性の肝細胞周囲に形成し;増加したコラーゲン合成が瘢痕に導く。静止状態の星状細胞は、活性化して線維症の上方制御に導くことができる。線維症は、活発な繊維形成及び正常な又は変性コラーゲンの分解異常に由来し得る。脂肪摂取細胞、クッパー細胞及び内皮細胞は、I型コラーゲン、数種のプロテオグリカン及び変性コラーゲンのクリアランスにおいて重要である。これらの細胞の活性における変化は、線維症の程度を変更し得る。病理組織学者にとって、線維組織は、既存の線維の受動的崩壊及び凝縮からより明らかとなり得る。
したがって、コラーゲンの合成増加又は分解減少は、過剰の結合組織の活発な沈着をもたらし、これは、肝機能に影響を与える:(1)細胞周囲の線維症は、細胞栄養を障害し、肝細胞の委縮をもたらす。(2)ディッセ腔内では、繊維組織が類洞周囲に蓄積し、血液から肝細胞への物質の自由な通過を妨げる。(3)肝細静脈及び門脈路周囲の線維症は、肝臓の血流を妨害する。肝臓を横切る静脈抵抗は門脈分枝から類洞へ、そして最終的に肝静脈に向かって増加する。3つの経路すべてが関与し得る。
【0082】
門脈路と中心静脈を連結する線維帯も吻合部チャネルを促進し:正常な肝細胞をバイパスする動脈血が遠心性肝静脈に流され、これはさらに、肝機能を障害し、肝細胞壊死を強め得る。これらのプロセスが存在する範囲は、肝機能不全の大きさを決定し:例えば、先天性肝線維症においては、大きな線維帯は、主に門脈領域を含むが、通常は、肝実質を残す。こうして先天性肝線維症は、肝細胞機能が保存された門脈圧亢進症として現れる。
【0083】
強皮症は、臓器不全及び死に導く、皮膚及び内部器官の線維症を特徴とする結合組織の疾患である(Black et al. 1998; Clements and Furst, 1996;総説については、Varga J. 2004, Chung and Utz, 2004, Rhew and Barr, 2004を参照されたい)。強皮症は、ある範囲の徴候及び多様な治療への示唆を有する。それは、限局性強皮症、全身性硬化症、強皮症様の障害及びサイン強皮症(Smith, 2000)を含む。限局性強皮症が、皮膚に限定された線維症及び徴候に関連する希少皮膚疾患である一方、全身性硬化症は、内部器官の関与の可変リスク及び皮膚疾患範囲の変動を有する多系統疾患である。全身性硬化症は、びまん型又は限局型であり得る。限局型全身性硬化症は、CREST(石灰沈着症、レイノー食道機能不全、強指症、毛細血管拡張症)とも呼ばれる。硬化症様障害は、工業環境への曝露に関連すると考えられる。Sine疾患においては、皮膚変化を伴わない内部器官の関与がある。
強皮症、特に全身性硬化症の主な徴候は、線維症による不適当な過剰のコラーゲン合成及び沈着、内皮の機能不全、痙攣、崩壊及び閉塞である。
強皮症は、100万人に約19例の、発生率の安定した希少疾患である。強皮症の原因はわかっていない。しかしながら、遺伝的素因は重要である。異常は、自己免疫並びに内皮細胞及び線維芽細胞機能の変化を含む。実際に、全身性硬化症は、診断の5年以内の死亡率が50%と報告された(Silman, 1991)、自己免疫疾患のおそらく最も重篤なものである。
【0084】
診断に関して、重要な臨床パラメータは、中手指関節近位の皮膚肥厚である。レイノー現象は、高頻度でほとんど普遍的な硬化症の要素である。それは、寒さへの曝露に際した皮膚の色変化によって診断される。虚血及び皮膚の肥厚は、レイノー病の症状である。
上記疾患の発症、重症度及び進行に関係付けられる数種の基礎をなす生物学的プロセスは、血管機能不全、内皮細胞の活性化及び損傷、白血球蓄積、自己抗体産生、並びに重要なことに、死に導き得る制御されない線維化反応を含む(Clements and Furst, 1996)。線維芽細胞は、この疾患の発病において重要な役割を有する。強皮症を有する患者から得られた初代線維芽細胞は、インビボで見られるこの疾患の特徴的性質である、顕著に増加した細胞外マトリックス、特にコラーゲン及びフィブロネクチンの合成及び沈着、並びにTGF−β及びCTGFのような成長因子及びサイトカイン産生の変化のうちの多くを示す(Strehlow and Korn, 1998及びLeRoy, 1974)。
【0085】
本明細書に開示される実施形態は、強皮症に関連する線維症を含むが、それに限定されない線維症の、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などを用いる処置に関する。強皮症の異なるタイプがある。全身性硬化症とも呼ばれる多系統の線維化形態は、皮膚の関与の程度によって2つのサブタイプを含む:限局性の皮膚形態は、四肢に影響を及ぼすが、びまん性サブタイプも体躯を含む。全身性疾患の他に、例えば、皮膚のある特定の領域、時には関節及び筋肉を含むが内部器官は含まないモルフェアを含む限局性形態もある。全身性硬化症の主要な特徴は、広範な微小血管の損傷並びに皮膚及び内部器官の進行性の線維症である。最も明白な臨床症状は、通常、皮膚の硬化及び関連する瘢痕である。皮膚は、締まって赤みを帯び又は鱗状に見えることがある。ほとんど臓器不全によって起こる合併症の管理におけるこれまでの進歩にも関わらず、治療法も疾患特異的な処置もまだない。さらに、肝臓、腎臓、肺、心臓及び心膜、眼、皮膚、口、膵臓、胃腸管、脳、乳房、骨髄、骨、生殖器、腫瘍又は創傷が影響を受け得る。
【0086】
本明細書に記載の細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、リウマチ関節炎、ループス、病原性線維症、線維化性疾患、日本住血吸虫感染症、放射線による損傷、自己免疫疾患、ライム病、化学療法誘発線維症、放射線誘発線維症、HIV又は乾癬誘発巣状硬化症、脊椎手術瘢痕化による腰椎術後疼痛症候群(failed back syndrome)、腹部癒着の術後瘢痕化、線維嚢胞形成、脊髄損傷後線維症、手術誘発性線維症、粘膜線維症、透析により引き起こされた腹膜線維症及びアダリムマブ関連肺線維症の後に形成されたもののような線維化病変を含むが、それに限定されない状態により引き起こされた線維症を処置又は予防し得る。
【0087】
具体的には、肝臓において、本明細書に記載の細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、アルコール、薬物及び/又は化学誘発性の肝硬変、肝臓移植後の虚血−再灌流傷害、壊死性肝炎、B型肝炎、C型肝炎、原発性胆管性肝硬変及び原発性硬化性胆管炎を含むが、それに限定されない状態により引き起こされた線維症を処置又は予防し得る。
腎臓に関して、本明細書に記載の細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、増殖性及び硬化性糸球体腎炎、腎性線維化性皮膚症、糖尿病性腎障害、腎臓尿細管間質性線維症及び巣状分節性糸球体硬化症を含むが、それに限定されない状態により引き起こされた線維症を処置又は予防し得る。
【0088】
肺に関して、本明細書に記載の細胞、例えば、ADC、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、肺間質性線維症、サルコイドーシス、肺線維症、特発性肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、びまん性肺胞障害性疾患、肺高血圧症、新生児気管支肺異形成症、慢性喘息、及び肺気腫を含むが、それに限定されない状態により引き起こされた線維症を処置又は予防し得る。肺線維症には、原因不明の線維化性胞隔炎、びまん性間質性線維症、特発性間質性肺炎、ハーマン−リッチ症候群、珪肺症、アスベスト症、ベリリウム症、炭鉱夫塵肺、炭塵肺、炭症、抗夫喘息、炭粉症及び炭粉珪肺症を含むが、それに限定されないいくつかのサブネーム又は類義語がある。
【0089】
心臓及び/又は心膜に関して、本明細書に記載の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、心筋線維症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈再狭窄、うっ血性心筋症、心不全及び他の虚血後状態を含むが、それに限定されない状態により引き起こされた線維症を処置又は予防し得る。
【0090】
眼に関して、本明細書に記載の脂肪由来細胞、細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、グレーブス病の眼球突出、増殖性硝子体網膜症、水晶体前嚢白内障、角膜線維症、手術による角膜瘢痕形成、線維柱帯切除誘発線維症、進行性網膜下線維症、多巣性肉芽腫性脈絡膜炎及び他の眼の線維症を含むが、それに限定されない状態により引き起こされた線維症を処置又は予防し得る。
皮膚に関して、本明細書に記載の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、デュピュイトラン拘縮、強皮症、ケロイド瘢痕、乾癬、火傷による肥厚性瘢痕、アテローム性動脈硬化症、網膜症、化学療法への曝露から生じた皮膚線維症及び脊髄損傷により引き起こされた仮性強皮症(pseudoscleroderma)を含むが、それに限定されない状態により引き起こされた線維症を処置又は予防し得る。
【0091】
口及び/又は食道に関して、本明細書に記載の細胞、細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、歯周病の瘢痕、薬物によって二次的に発生する歯肉肥厚及び先天性食道狭窄症を含むが、それに限定されない状態により引き起こされた線維症を処置又は予防し得る。
膵臓に関して、本明細書に記載の細胞、細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、膵線維症、間質リモデリング膵炎及び間質線維症を含むが、それに限定されない状態により引き起こされた線維症を処置又は予防し得る。
胃腸管に関して、本明細書に記載の細胞、細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、コラーゲン大腸炎、絨毛委縮、陰窩過形成、ポリープ形成、クローン病の線維症及び治癒中の胃潰瘍を含むが、それに限定されない状態により引き起こされた線維症を処置又は予防し得る。
【0092】
脳に関して、本明細書に記載の細胞、細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、グリア性瘢痕組織を含むが、それに限定されない状態により引き起こされた線維症を処置又は予防し得る。
乳房に関して、本明細書に記載の細胞、細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、線維嚢胞性疾患及び乳癌に対する繊維形成性の反応、乳房の悪性腫瘍の処置に対する二次的な癌及び線維症を含むが、それに限定されない状態により引き起こされた線維症を処置又は予防し得る。
骨髄に関して、本明細書に記載の細胞、細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、骨髄形成異常症における線維症及び新生物疾患を含むが、それに限定されない状態により引き起こされた線維症を処置又は予防し得る。
骨に関して、本明細書に記載の細胞、細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、リウマトイドパンヌス形成を含むが、それに限定されない状態により引き起こされた線維症を処置又は予防し得る。
生殖器系に関して、本明細書に記載の細胞、細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣筋腫及びペロニー病を含むが、それに限定されない状態により引き起こされた線維症を処置又は予防し得る。
【0093】
放射線誘発損傷に関して、本明細書に記載の細胞、細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、頭部頸部癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、胃腸癌、結腸癌及び乳癌の処置を含むが、それに限定されない処置に関連する線維症を処置又は予防し得る。
【0094】
幹細胞及び再生細胞を含む、脂肪由来細胞集団の作製方法
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された実施形態において有用な脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などの精錬された、富化された、濃縮された、単離された又は精製された集団を得るために、細胞処理ユニット、勾配沈降、ろ過又はこれらのアプローチの任意の1つ又は複数の組合せを用いて脂肪組織が処理される。一般に、脂肪組織が最初に対象(例えば、哺乳動物、家畜、げっ歯類、ウマ、イヌ、ネコ又はヒト)から除去され、次いで、細胞集団、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞の集団、再生細胞を含む脂肪由来細胞の集団、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞の集団などを得るために、それが処理される。同種間移植のために、本分野で知られた方法、例えば、骨髄ドナーを選択するために使用される方法を用いて適切なドナーが選択され得る。患者から収集される脂肪組織の体積は、約1ccから約2000ccまで変化可能であり、いくつかの実施形態においては、約3000ccまで変化可能である。除去された組織の体積は、患者ごとに異なり、年齢、体型、凝固プロフィール、血液動態安定性、欠乏又は傷害の重症度、併存疾患及び医師の選択を含むが、それに限定されない多くの要素に依存する。
【0095】
脂肪組織は、当業者に知られた任意の方法によって得られ得る。例えば、脂肪組織は、吸引補助された脂肪摘出(lipoplasty)、超音波補助された脂肪摘出又は切除による脂肪摘出によって対象から除去される。さらに、該手順は、切除による脂肪摘出及び吸引補助された脂肪摘出のような手順の組合せを含んでよい。組織又はその何らかの部分が、対象への再移植を目的とする場合、脂肪組織は、細胞成分の生存能を保存し、細菌及び/又はウイルスのような感染の可能性のある微生物による組織の汚染の可能性を最小化するやり方で集められるべきである。したがって、組織抽出は、汚染を最小化するために、滅菌又は無菌のやり方で実施されるべきである。吸引補助された脂肪摘出は、脂肪組織を患者から除去するために望ましい可能性があり、なぜなら、それは、超音波補助された脂肪摘出のような他の技術と関連し得る幹細胞損傷の可能性が最小限の、最小限に侵襲性の組織収集方法を提供するからである。
したがって、脂肪組織は、脂肪由来幹細胞、脂肪由来再生細胞、脂肪由来幹細胞及び再生細胞などに関して容易に富化される細胞集団の豊かな供給源を提供する。脂肪組織の収集は、より患者にやさしく、同様の体積の、例えば、皮膚又はもっと大きな体積の扁桃の収集よりも低い疾病率と関連する。
【0096】
吸引補助された脂肪摘出手順のために、脂肪組織は、患者内に存在する脂肪組織蓄積部位中に又はその近傍にカニューレを挿入し、続いて、吸引装置中へ脂肪が吸引されることによって収集される。いくつかの実施形態において、小さなカニューレがシリンジに連結され、脂肪組織が手動力を用いて吸引されてよい。シリンジ又は他の同様の装置を使用することは、比較的多くない量の脂肪組織(例えば、0.1mlから数百ミリリッターまでの脂肪組織)を採取するためには望ましいことがある。これらの比較的小さな装置を使用する手順は、局所麻酔のみを必要とする。より大量の(例えば、数百ミリリッター超の)脂肪組織は、ドナー及び収集手順を実施する人の判断で全身麻酔を必要とすることがある。より大きな体積の脂肪組織が除去される場合、比較的大きなカニューレ及び自動吸引装置が使用されてよい。
【0097】
切除による脂肪摘出手順は、手順の付随的部分として脂肪組織含有組織(例えば、皮膚)が除去される手順;すなわち、手術の主目的が組織(例えば、肥満外科手術又は美容外科手術における皮膚)の除去であり、脂肪組織が主目的の組織とともに除去されるものを含むが、それに限定されない。皮下脂肪組織も、付随する皮膚の除去なしに脂肪組織が皮下空間から切除される、切除による脂肪摘出によって取り出されてよい。
【0098】
収集された組織の量は、ドナーの肥満度指数、アクセスできる脂肪組織採取部位の利用可能性、(抗凝固療法のような)付随する及び事前の薬物療法及び状態、並びに該組織が収集される臨床目的を含むが、それに限定されない多くの変数に依存し得る。造血幹細胞(レシピエントの血液細胞形成能を再生させるために使用される骨髄又は臍帯血由来幹細胞)の移植の経験は、閾値効果により生着が細胞用量依存性であることを示している(どちらも参照することにより、本明細書に組み込まれる、Smith, et al., 1995; Barker, et al., 2001)。したがって、「多ければ多いほど良い」という一般原則が、他の変数により設定された限界以内で適用され、実行可能であれば、採取はできるだけ大量の組織を集めることが可能である。
【0099】
患者から除去される脂肪組織は、次いで、コラーゲン、脂肪細胞、血液及び食塩水を除去し、それによって脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などを含む細胞集団を得るように、さらなる処理のために装置(例えば、細胞処理ユニット、遠心分離又はろ過ユニット)中に集められる。好ましくは、ADRCを含む脂肪由来細胞の集団は、混入したコラーゲン、脂肪細胞、血液及び塩水を含まない。脂肪組織(脂肪細胞)中の主な混入細胞は、密度が低く、浮上分離法によって容易に除去される。
【0100】
精錬され、濃縮され、及び単離された脂肪由来細胞の集団、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞の集団、再生細胞を含む脂肪由来細胞の集団、幹細胞及び再生細胞などを含む脂肪由来細胞の集団を得るための脂肪組織の処理並びにそれに対する改変は、例えば、そのすべてが参照することにより全体として明示的に本明細書に組み込まれる、SYSTEMS AND METHODS FOR TREATING PATIENTS WITH PROCESSED LIPOASPIRATE CELLSと題された、2002年12月9日出願の米国特許出願第10/316,127号(米国特許出願公開第2003/0161816号)及びSYSTEMS AND METHODS FOR SEPARATING AND CONCENTRATING REGENERATIVE CELLS FROM TISSUEと題された、2004年6月25日出願の米国特許出願第10/877,822号(米国特許出願公開第2005/0084961号);PRESERVATION OF NON EMBRYONIC CELLS FROM NON HEMATOPOIETIC TISSUESと題され、2001年9月14日出願の米国特許出願第60/322,070号に基づく優先権の利益を主張する、2002年9月12日出願の米国特許出願第10/242,094号;SYSTEMS AND METHODS FOR ISOLATING AND USING CILINICALLY SAFE ADIPOSE DERIVED REGENERATIVE CELLSと題された、2004年7月2日出願の米国特許出願第10/884,638号;に記載された方法を用いて実施されることが好ましい。上記出願は、閉じた、滅菌流体/組織経路を維持するように構成された系における脂肪由来細胞の処理を開示する。これは、予め組み立てられた、閉じた滅菌容器並びに閉じた経路内の組織及び流体要素の移動を可能とする配管の連結された組の使用によって達成可能である。この処理用の組は、試薬の添加、温度及び加工のタイミングを制御することができ、こうして、オペレーターが手動でプロセスを管理する必要性を取り除く装置中に挿入される一連の処理用試薬(例えば、食塩水、酵素など)に繋げることができる。好ましい実施形態において、組織抽出から処理及びレシピエントへの配置への手順全体は、手順を受けている患者と同じ施設において、それどころか同じ室内で実施される。
【0101】
多くの用途のために、活性な細胞集団の調製は、脂肪組織の脂肪を蓄積した成熟脂肪細胞成分の枯渇を必要とする。これは、組織が最初にすすがれて(破裂した脂肪細胞から放出された)遊離の脂質及び(組織採取の間に断ち切られた血管から放出された)末梢血成分の存在を低減させ、次いで、脱凝集させて、結合組織マトリックスから無傷の脂肪細胞及び他の細胞集団を遊離させる、一連の洗浄及び脱凝集ステップによって達成され得る。いくつかの実施形態において、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、血管内皮細胞(BEC)、BEC前駆細胞(EPC)及び脂肪組織由来幹細胞、脂肪組織由来星状細胞及び他の細胞成分とともに提供される。いくつかの実施形態において、脂肪由来細胞、例えば、細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、凝集体又は部分的に凝集した断片の形態、例えば、細胞外マトリックスによって連結された2つ以上の血管細胞を含む。いくつかの実施形態において、そのような凝集体は、大きな凝集体又は細胞外マトリックスによって連結された10個超の細胞若しくは100個超の細胞を含む断片を含む。そのような凝集体は、その中で数個の細胞がそれらの元の配向性に近似して相互に連結したままの血管又はリンパ管断片(非限定的な例として、処理前の組織中でそれらを一緒にして結合させる、いくつかの又はすべての細胞外マトリックスにより連結された、血管内皮細胞及び周皮細胞又は平滑筋細胞を含む)を含むが、それに限定されない。特別な実施形態において、そのような凝集体は、処理前にそれらが組織中にあったよりも少ない脂肪細胞と接触又は会合する、数百個の細胞を含み得る。
【0102】
すすぎは、任意であるが、好ましいステップであり、ここでは、遊離の脂質及び血液中の成分のような単一細胞成分を洗い流し、後に無傷の脂肪組織断片を残すために、組織が溶液と混合される。一実施形態において、患者から除去された脂肪組織が等張の食塩水又は他の生理学的溶液(複数可)、例えば、Baxter Inc.のPlasmalyte(登録商標)又はAbbott Labs.のNormosol(登録商標)と混合される。無傷の脂肪組織断片が、ろ過、デカンテーション、沈降又は遠心分離を含むがそれに限定されない、本分野の当業者に知られた任意の手段によって、遊離の脂質及び細胞から分離され得る。いくつかの実施形態において、本明細書中で論じられるように、脂肪組織は、組織収集容器内に配置されるフィルターを使用することによって、非脂肪組織から分離される。他の実施形態において、脂肪組織は、材料を分離するためにデカンテーション、沈降及び/又は遠心分離技術を利用する組織収集容器を使用して、非脂肪組織から分離される。
【0103】
次いで、機械力(刻む力若しくはせん断力)、超音波若しくは他の物理的エネルギー、レーザー、マイクロ波、コラゲナーゼ、トリプシン、リパーゼ、リベラーゼH1、ヌクレアーゼ又は参照することによりその全体が明示的に本明細書に組み込まれる、米国特許第5,952,215号、「Enzyme composition for tissue dissociation」に開示されたBlendzymeファミリーのメンバーのようなタンパク質分解酵素及びペプシンのうちの単一の若しくは組合せのタンパク質分解酵素による酵素消化又は機械的及び酵素的方法の組合せを含む、任意の慣用技術又は方法を用いて、無傷の組織断片が脱凝集させられる。例えば、無傷の組織断片の細胞成分は、その全体が参照することにより明示的に本明細書に組み込まれる、米国特許第5,372,945号に開示された脂肪組織中の微小血管内皮細胞を収集するための方法に類似した、脂肪組織のコラゲナーゼ媒介性解離を用いる方法によって脱凝集させられ得る。使用されてよいコラゲナーゼを用いるさらなる方法は、例えば、どちらもそれらの全体が参照することによって明示的に本明細書に組み込まれる米国特許第5,830,741号、「Composition for tissue dissociation containing collagenase I and II from clostridium histolyticum and a neutral protease」及びWilliams, et al., 1995, "Collagenase lot selection and purification for adipose tissue digestion" Cell Transplant 4(3);281-9に開示されている。同様に、Twentyman, et al.(その全体が参照することによって明示的に本明細書に組み込まれるTwentyman et al., 1980, "Use of bacterial neutral protease for disaggregation of mouse tumors and multicellular tumor spheroids" Cancer Lett. 9(3):225-8)に記載の中性プロテアーゼがコラゲナーゼの代わりに使用されることができる。さらに、本明細書に記載の方法は、コラゲナーゼ及びトリプシンの組合せのような酵素の組合せ又はトリプシンのような酵素と機械的解離の組合せを使用してもよい。
【0104】
次いで、成熟脂肪細胞の数を低減させることによって、脂肪由来細胞、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などが脱凝集させられた組織断片から得られ得る。次いで、脱凝集させられた脂肪組織及びその中で脂肪組織が脱凝集させられた液体の懸濁液が、細胞収集容器のような他の容器に移される。該懸濁液は、懸濁液を組織収集容器から引き出し、それを細胞収集容器へ押し進める、ペリスタリックポンプのようなポンプを使用することによって、1つ又は複数の導管を通って、細胞収集容器に流れ込み得る。他の実施形態は、閉じた系を維持しながらの重力又は真空の使用を採用してよい。懸濁液中の細胞の分離は、浮遊密度沈降法、遠心分離法、溶出法、ろ過法、固相部分への差示的接着及びそこからの溶出、抗体媒介性選択、電荷の相違、免疫磁性ビーズ、蛍光標識細胞分取(FACS)又は他の手段によって達成されてよい。これらの多様な技術及び該技術を実行するための装置の例は、そのすべてが参照することにより全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第6,277,060号;同第6,221,315号;同第6,043,066号;同第6,451,207号;同第5,641,622号;及び同第6,251,295号に見出される。これらの装置の多くは、閉じた系を維持しつつ、細胞処理ユニット内に組み込まれ得る。
【0105】
いくつかの実施形態において、スピニングメンブレンフィルター(spinning membrane filter)を用いて、懸濁液中の細胞が懸濁液の無細胞成分から分離される。他の実施形態において、遠心分離法を用いて、懸濁液中の細胞が無細胞成分から分離される。そのような代表的な一実施形態において、細胞収集容器は、遠心分離機中に(例えば、手動で又はロボティクスによって)設置されるように構築された軟質バッグであってよい。他の実施形態において、軟質バッグは使用されない。遠心分離後、ADRCを含有する細胞成分がペレットを形成し、次いでこれが、本明細書中で論じられる通り細胞が混合容器まで1つ又は複数の導管を通過させられ得るように、緩衝溶液を用いて再懸濁される。再懸濁液は、任意の好適な手段によって提供されてよい。例えば、緩衝液は、細胞収集容器上のポート中へ注入されてよいか又は細胞収集容器は、それを破裂させることによって緩衝液が細胞のペレットと混合されることのできる貯留槽を含んでもよい。スピニングメンブレンフィルターが使用される場合、分離手順後、大量の液体中に細胞が留まるため、再懸濁は任意である。
【0106】
一実施形態において、脂肪由来細胞の亜集団、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、表面、例えば、プラスチックへの短時間の接着によって他の細胞から選択される。一実施形態において、選択という目的のための接着の持続時間は、約1時間である。第2の実施形態において接着の持続時間は、24時間である。
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、活性細胞を成熟脂肪細胞及び結合組織から分離するために、脂肪組織を完全に脱凝集させる方法を対象とするが、さらなる実施形態は、脂肪組織が部分的に脱凝集させられるのみである方法を対象とする。例えば、部分的脱凝集は、1つ又は複数の酵素によって実施されてよく、これは、そうでなければ、組織を完全に脱凝集させるために酵素がその上に残される時間よりも早く、脂肪組織の少なくとも一部から除去される。そのようなプロセスは、より短い加工時間を必要とし、複数の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などが、その中で部分的に又は完全に接触したままである、組織成分の断片を生成し得る。別の実施形態においては、細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞など及び/又は処理の前に組織中でそれらが会合していた成熟脂肪細胞のすべて又は一部から単離された脂肪由来細胞を含む断片を調製するために、機械力(例えば、超音波エネルギー又はせん断力)が加えられる。
【0107】
いくつかの実施形態において、組織は滅菌緩衝等張食塩水で洗浄され、適切な脱凝集を与えるために十分なコラゲナーゼ濃度、温度及び時間の間、コラゲナーゼとともにインキュベートされる。好ましい実施形態において、使用されるコラゲナーゼ酵素は、ヒトによる使用のために関連当局(例えば、米国食品医薬品局)によって許可されるだろう。好適なコラゲナーゼ製剤は、組換え及び非組み換えコラゲナーゼを含む。非組換えコラゲナーゼは、F.Hoffman−La Roche Ltd.,Indianapolis,IN及び/又はAdvance Biofactures Corp.,Lynbrook,NYから入手され得る。組換えコラゲナーゼも、米国特許第6,475,764号に記載の通りに得られ得る。
【0108】
一実施形態において、溶液は、約10μg/ml〜約50μg/ml(例えば、10μg/ml、20μg/ml、30μg/ml、40μg/ml又は50μg/ml)の濃度のコラゲナーゼを含有し、約30℃〜約38℃において約20分間〜約60分間、インキュベートされる。該系が、所望の細胞集団を適切な時間枠で抽出することにおいて効果的であることを確認するために、これらのパラメータは、コラゲナーゼ酵素の供給源によって変化し、実証的研究によって最適化される。具体的な好ましい濃度、時間及び温度は、(中性プロテアーゼディスパーゼ;Blendzyme 1, Rocheと混合された)20μg/mlコラゲナーゼ及び37℃において45分間インキュベートされることである。別の好ましい実施形態は、(中性プロテアーゼサーモリシン;Blendzyme 3と混合された)0.5単位/mLコラゲナーゼに当てはまる。特別に好ましい実施形態において、使用されるコラゲナーゼ酵素は、関連当局(例えば、米国食品医薬品局)によってヒトによる使用のために許可された材料である。使用されるコラゲナーゼは、微生物及びエンドトキシンのような混入物を含んではならない。
【0109】
脱凝集後、活性な細胞集団は、脱凝集プロセスの添加物及び/又は副生成物(例えば、コラゲナーゼ及び新たに放出された遊離脂質)を除去するために、洗浄/すすぎを受けることができる。活性な細胞集団は、次いで、遠心分離法又は上で論じたような本分野の当業者に知られた他の方法によって濃縮され得る。これらの処理後洗浄/濃縮ステップは、別個に又は同時に適用される。一実施形態において、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは濃縮され、細胞集団を、例えば、そのすべてが参照することにより全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,034,135号及び同第5,234,608号に開示された系のような連続フロースピニングメンブレン系(continuous flow spinning membrane system)などに通すことによって、コラゲナーゼが除去される。
上記に加えて、幹細胞、再生細胞、幹細胞及び再生細胞などを含む脂肪由来細胞集団をさらに精製するのに適用され得る、多くの知られた洗浄後の方法がある。これらは、正の選択(標的細胞を選択すること)、負の選択(望ましくない細胞の選択的除去)又はその組合せを含む。本明細書及び文献に記載のフローサイトメトリーによる分離に加えて、細胞は、電荷又はサイズを含むが、それに限定されない多くの異なるパラメータに基づいて分離され得る(例えば、誘電泳動法又は多様な遠心分離法など)。
細胞処理のために使用される段階的メカニズムの多くの他の構成が当業者に明らかであろう。例えば、洗浄及び脱凝集中の組織と食塩水の混合は、撹拌又は流体の再循環によって生じることができる。細胞の洗浄は、スピニングメンブレンアプローチ、差示的接着、(差示的沈降、速度又は勾配分離を含むが、それに限定されない)差示的遠心分離のような連続フローメカニズムにより又は手段の組合せによって仲介され得る。同様に、さらなる成分が、成長因子又は他の生物学的応答調節剤の添加及び細胞とともにレシピエントに移植されることを意図する天然又は合成の成分と細胞との混合を含む、細胞のさらなる操作を可能とする。
処理後操作は、細胞培養又はさらなる細胞の精製も含んでよい(Kriehuber, et al., 2001; Garrafa, et al., 2006)。いくつかの実施形態において、脂肪由来細胞集団、細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞など、が得られたら、それは、セルソーティング装置及び/又は勾配沈降を用いてさらに精錬され、濃縮され、富化され、単離され又は精製される。これらの機能を実行するためのメカニズムは、記載された装置内に統合されてよく、又は別個の装置に組み込まれてもよい。しかしながら、多くの実施形態において、治療有効量の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などの濃縮された集団は、(例えば、強皮症、レイノー症候群又は他の線維症に関連する疾患及び障害における)疼痛及び/又は線維症の低減のための薬物を調製するために使用され、前記濃縮された細胞集団は、細胞を患者に投与する前に細胞を培養することなく、それを必要とする患者に投与されるべきである。すなわち、いくつかの実施形態は、疼痛、線維症又はその両方を低減する方法に関し、治療有効量の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などの濃縮された集団が、該細胞を患者に投与する前にそれらを培養することなく、それを必要とする患者に投与される。
【0110】
好ましい実施形態において、組織除去系及び処理の組は、手術室又は外来患者処置室のような処置を受けている患者の近傍に(効果的には患者のベッドサイドに)存在する。これは、迅速で効率的な組織の採取及び処理を可能とし、検体の取扱い/ラベリングの間違いの機会を減少させ、それによって、1つの外科手術の過程におけるプロセス全体の遂行を可能とする。
【0111】
SYSTEMS AND METHODS FOR ISOLATING AND USING CILINICALLY SAFE ADIPOSE DERIVED REGENERATIVE CELLSと題された、2004年7月2日出願の米国特許出願第10/884,638号に記載のように、1つ又は複数の添加剤が処理の間及び/又は後に細胞に添加されてよい。添加剤のいくつかの例としては、洗浄及び脱凝集を最適化する作用物質、処理の間の活性な細胞集団(例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞など)の生存能を高める添加剤、抗微生物剤(例えば、抗生物質)、脂肪細胞及び/又は赤血球を溶解する添加剤、又は(固相部分への差示的接着によって又はそうでなければ細胞集団の実質的な低減若しくは富化を促進するために)着目の細胞集団に関して富化させる添加剤を含む。
【0112】
本明細書に記載の通りに得られた脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、本分野で知られたアプローチに従って培養されることができ、培養された細胞は、具体化された方法のいくつかにおいて使用可能である。例えば、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、低度又は高度ウシ胎仔血清又は参照することにより本明細書に組み込まれるNg, et al., Nov 2004, "Interstitial flow differentially stimulates blood and lymphatic endothelial cell morphogenesis in vitro," Microvasc Res. 68(3):258-64に記載された同様の製品の存在下、コラーゲンコーティングされたディッシュ又は内皮細胞基礎培地中の3Dコラーゲンゲル培養において培養され得る。或いは、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、他の細胞外マトリックスタンパク質コーティングされたディッシュにおいて培養可能である。使用されてよい細胞外マトリックスタンパク質の例としては、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン及びIV型コラーゲンが挙げられるが、それに限定されない。ゼラチン又は任意の他の化合物又は支持体であって、内皮細胞の培養容器への接着を同様に促進するものも、ADRCを培養するために同様に使用されてよい。
【0113】
脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などをインビトロで培養するために使用可能な基本培地の例としては、EGM、RPMI、M199、MCDB131、DMEM、EMEM、マッコイ5A、イスコフ培地、改変イスコフ培地又は血液内皮細胞の増殖を支持するための本分野で知られた任意の他の培地が挙げられるが、それに限定されない。ADRCを培養するために使用され得る基本培地に添加可能な追加の因子又は化合物の例としては、アスコルビン酸、ヘパリン、内皮細胞成長因子、内皮細胞成長補助剤、グルタミン、HEPES、Nu血清、ウシ胎仔血清、ヒト血清、ウマ血清、血漿由来ウマ血清、鉄添加ウシ血清、ペニシリン、ストレプトマイシン、アンフォテリシンB、塩基性及び酸性線維芽細胞成長因子、インスリン成長因子、星状細胞条件培地、線維芽細胞又は線維芽細胞様細胞条件培地、炭酸水素ナトリウム、上皮細胞成長因子、ウシ下垂体抽出物、硫酸マグネシウム、イソブチルメチルキサンチン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、ジブチリルサイクリックAMP、インスリン、トランスフェリン、亜セレン酸ナトリウム、エストラジオール、プロゲステロン、成長ホルモン、アンギオゲニン、アンギオポエチン−1、Del−1、フォリスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、エリスロポエチン、肝細胞成長因子(HGF)/分散因子(SF)、レプチン、ミドカイン、胎盤成長因子、血小板由来内皮細胞成長因子(PD−ECGF)、血小板由来成長因子BB(PDGF−BB)、プレイオトロフィン(PTN)、プログラニュリン、プロリフェリン、トランスフォーミング成長因子α(TGFα)、トランスフォーミング成長因子β(TGFβ)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)/血管透過性因子(VPF)、インターロイキン−3(IL−3)、インターロイキン7(IL−7)、インターロイキン−8(IL−8)、エフリン、(MMP2及びMMP9のような)マトリックスメタロプロテイナーゼ又は内皮細胞の生存、増殖又は分化を促進することが本分野で知られた任意の他の化合物が挙げられるが、それに限定されない。
【0114】
細胞のさらなる処理は、(1つ又は複数の再生細胞タイプの)細胞増殖及び(細胞シートのすすぎ及び培地交換を含む)細胞維持;継代培養;細胞シーディング;(バルク供給からトランスフェクトされた細胞のシーディングを含む)一過性トランスフェクション;(酵素的、非酵素的採取及び機械的に削り取ることによる採取を含む)採取;細胞の生存能を測定すること;(例えば、増殖のために個々のウエルから細胞を取り上げること、細胞を新たなウエルに増殖させることを含む、マイクロタイタープレートにおける)細胞播種;ハイスループットスクリーニング;細胞治療応用;遺伝子治療応用;組織工学応用;治療用タンパク質応用;ウイルスワクチン応用;バンキング又はスクリーニングのための再生細胞又は上清の採取、細胞の増殖、溶解、接種、感染又は誘導の測定;(ハイブリドーマ細胞を含む)細胞株の生成;透過性試験のための細胞の培養;RNAi及びウイルス耐性試験のための細胞;ノックアウト及びトランスジェニック動物試験のための細胞;アフィニティー精製試験;構造生物学応用;アッセイ開発及びタンパク質工学応用も含んでよい。
【0115】
一般に、脂肪由来細胞の集団、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞の集団、再生細胞を含む脂肪由来細胞の集団、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞の集団を単離するために有用な系は、a)組織収集容器であって、i)対象から除去された脂肪組織を受容するために構築された、組織収集入口ポート、及びii)組織収集容器内に配置されたフィルターであって、前記対象からの脂肪由来細胞集団を保持するように、及び脂肪細胞、血液及び食塩水を通過させるように構成されたフィルターを含む、組織収集容器;b)閉じた経路が維持されるように、導管によって組織収集容器に連結された、混合容器又は細胞処理チャンバーであって、前記混合容器が前記細胞集団を受容し、該混合容器が、少なくとも1つの添加剤を前記脂肪由来細胞の集団に導入するための、追加のポート;及び患者への投与のために、前記混合容器又は細胞処理チャンバーからの前記脂肪由来細胞の集団の除去を可能とするように構成された、出口ポートを含む、前記混合容器又は細胞処理チャンバーを含む。いくつかの実施形態において、前記混合容器又は細胞処理容器は、スピニングメンブレンフィルター及び/又は遠心分離機のような、細胞濃縮装置をさらに含む。本明細書に開示される実施形態の態様は、セルソーターも含み、これは、導管によって前記混合チャンバー又は細胞処理チャンバーに取り付けられ、閉じた経路を維持しつつ、前記混合チャンバー又は細胞処理チャンバーから細胞を受容するように構成されている。上記実施形態の態様は、導管によって前記混合チャンバー又は細胞処理チャンバーに取り付けられ、閉じた経路を維持しつつ、前記脂肪由来細胞の集団を受容するように構成された遠心分離機も含んでよく、ここで、前記遠心分離機は、前記脂肪由来細胞の集団のさらなる分離及び精製に好適な勾配(例えば、フィコール−ハイパック)を含む。前記脂肪由来細胞の集団を受容するように構成された前記勾配を含む前記遠心分離機は、前記混合容器又は細胞処理チャンバー内に含まれてもよい。
【0116】
単離された細胞集団中のADRC及びADRCサブセットの測定
本明細書に記載の脂肪由来細胞の集団中のある特定の細胞の存在を決定するための、該集団の測定、分析又は特徴づけは、細胞処理ユニットの閉じた系の内部又は細胞処理ユニットの閉じた系の外部で、本分野で利用可能な任意の数のタンパク質及び/又はRNA検出アッセイを用いて行われ得る。さらに、脂肪由来細胞又はある特定の細胞(例えば、幹細胞、前駆細胞、先駆細胞など)の測定、分析又は特徴づけは、単離手順(例えば、ある特定の細胞タイプ(例えば、再生細胞)に特異的な抗体を用いる細胞ソーティング又はある特定の細胞タイプに選択的な培地を用いる勾配分離)の一部であることができるか又はそれを伴うことができる。
【0117】
いくつかの実施形態において、単離された細胞集団の測定又は特徴づけは、ある特定の細胞タイプ(例えば、脂肪由来再生細胞、脂肪由来幹細胞、脂肪由来先駆細胞、脂肪由来前駆細胞、内皮細胞、内皮細胞先駆細胞など)にとって独自であるか、そうでなければ本分野の当業者によって着目の具体的な細胞タイプの存在を確認すると考えられるタンパク質マーカーの存在又は不存在を検出することによって実行される。前記タンパク質又はマーカーに特異的な抗体プローブを用いる慣用のウェスタンブロットに加えて、細胞表面マーカーの発現を利用する免疫選択技術が、本分野で知られ、文献に記載された多数の方法を用いて実施可能である。そのようなアプローチは、CD34陽性細胞の分離のための手動の、自動の又はWatts, et al., (Watts, et al., 2002, Variable product purity and functional capacity after CD34 selection: a direct comparison of the CliniMACS (v2.1) and Isolex 300i(v2.5)clinical scale devides, "Br J Haematol. 2002 Jul; 118(1): 117-23")に記載の、半自動の装置とともに固体基材(例えば、磁性ビーズ)に直接的又は間接的に連結された抗体を用い、パニングにより、蛍光励起セルソーター(FACS)又は他の手段の使用により、実施可能である。
【0118】
分離、測定及び特徴づけは、ある特定の細胞手段によって発現されるが、1つ又は複数の他の細胞タイプ又は細胞集団内に存在する亜集団によっては発現されない細胞表面マーカー又はマーカーの組合せを認識する抗体を用いる正の選択によっても達成可能である。分離、測定及び特徴づけは、負の選択によっても達成可能であり、ADRCへの明らかな結合を示さない抗体又は抗体の組合せを用いて、単離された脂肪由来細胞の集団から望ましくない細胞タイプが除去される。ADRCによって特異的に発現されるマーカーが記載されている。負の選択において使用されうる抗体の例としては、内皮細胞によって発現されるマーカーが挙げられるが、それに限定されない。負の選択に適用することができる本分野で周知の他の抗体が多数ある。ADRCのためのマーカーの相対的特異性も、精製及び/又は特徴づけ又は測定ストラテジーにおいて利用可能である。例えば、蛍光標識されたリガンドは、FACSに基づく細胞のソーティングにおいて使用可能であり、又は固体基材に直接的又は間接的にコンジュゲーションされたリガンドは、上記の免疫選択アプローチに類似したやり方で分離するために使用可能である。
【0119】
特定の細胞タイプ(例えば、再生細胞の特定のタイプ)の存在又は不存在を決定するための脂肪由来細胞集団の測定及び特徴づけは、ADRC特有のタンパク質又はそうでなければ、ADRCの存在又は不存在を示すマーカーであると本分野の当業者によって考えられるタンパク質をコードする1つ又は複数のRNAの分析も含み得る。いくつかの実施形態において、例えば、単離された細胞集団又はその一部が、例えば、CD45、CD11b、CD14、CD68、CD90、CD73、CD31及び/又はCD34のうちの1つ又は複数をコードするRNAの存在又は不存在について分析される。前記RNAの検出は、ノーザンハイブリダイゼーション、PCRに基づく方法論、転写ランオフアッセイ、遺伝子アレイ及び遺伝子チップを含むが、それに限定されない、本分野の当業者に利用可能な任意の技術によって達成可能である。
【0120】
ADRC及びADRCサブセットを含む組成物
成熟脂肪細胞及び結合組織を実質的に除去し、それによって、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などを含む、不均一な複数の脂肪組織由来細胞であって、対象の体内への設置に好適なものを得るために、上記アプローチに従って未加工の脂肪組織が処理される。抽出された脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、成熟脂肪細胞及び結合組織を実質的に含まないこれらの細胞又は不活性成分(例えば、担体)若しくは第2の活性成分(例えば、脂肪由来幹細胞及び/又は脂肪由来内皮細胞)との組合せを含む適切な組成物中で提供される。細胞は、レシピエント中に単独で或いは細胞、組織、組織断片又は細胞成長及び/又は分化の成長因子のような生物学的材料、支持体、装具又は医療装置との組合せ(例えば、単一の組成物で又は同時投与)で設置されてよい。組成物は、例えば、細胞分化因子、成長促進因子、免疫抑制剤又は本明細書中で論じられる医療装置のような追加の構成要素を含んでよい。いくつかの実施形態において、細胞は、上記の添加剤のうちのいずれかとともに、レシピエントへの治療的利益を提供することを目的とする単一の手術方法の場面でそれらが得られた人に設置される(例えば、自家組織の移動)。
【0121】
したがって、本発明の態様は、精錬された、富化された、濃縮された、単離された又は精製された脂肪由来細胞集団、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞など、及びこれらの細胞と未処理の脂肪組織、脂肪細胞、コラーゲンマトリックス又は担体、細胞分化因子、成長促進剤、免疫抑制剤、脂肪由来幹細胞及び/又は前駆細胞を含有する処理済み脂肪組織並びに既に富化された量のADRCを含有する細胞集団を含むが、それに限定されない、生物学的材料、添加物、担体、装具又は医療装置の混合物を含む、それから成る又は本質的にそれから成る組成物を含む。いくつかの実施形態において、上記の組成物は、総脂肪組織細胞集団に対して0.5%〜1%、1〜2%、2%〜4%、4%〜6%、6%〜8%、8%〜10%、10%〜20%、20%〜30%、30%〜40%、40%〜50%、50%〜60%、60%〜70%、70%〜80%、80%〜90%又は90%〜100%に等しいか又はそれより多い量又は濃度の、精錬された、単離された又は精製されたADRCを含む。いくつかの実施形態において、ADRCは、ある量の、例えば、CD45、CD11b、CD14、CD68、CD90、CD73、CD31及び/又はCD34を発現する。
【0122】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、任意の利用可能な薬化学技術を用いて、少なくとも1つの医薬として許容できる希釈剤、アジュバント又は担体物質を含む組成物に処方される。一般に、これは、ヒト又は動物に有害であり得る不純物を本質的に含まない組成物を調製することを必要とする。
ADRCを含む脂肪由来細胞集団を安定化させ、取り込みを容易化するために、適切な塩及び緩衝剤が使用可能である。本明細書において考慮される組成物は、有効量の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などを、医薬として許容できる担体又は水性媒体中に含むことができる。
【0123】
本明細書に記載の組成物の投与は、標的組織がその経路を介して利用可能である限り、任意の一般的経路を介することができる。本明細書に記載の方法に従って投与される組成物は、例えば、静脈内、動脈内、リンパ管内、皮下、皮内、筋肉内、乳房内、腹腔内、髄腔内、眼球後方、肺内(例えば、期間放出)により;経口、舌下、鼻内、肛門内、膣内又は経皮送達により、噴霧若しくは他の直接投与により又は特別な部位における外科的移植により、対象中に導入されてよい。これらの各投与方法において、組成物は、担体又は作用部位における組成物の滞留時間を増加させる又は作用部位への組成物の輸送を容易化する性質を有する他の材料を含んでも含まなくてもよい。導入は、単一用量又はある期間にわたる複数の用量から成ることができる。細胞治療薬のためのビヒクルは本分野で知られており、文献中に記載されている。例えば、参照することにより本明細書に組み込まれるRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. (1990, Mack Publ. Co, Easton Pa. 18042) pp 1435-1712を参照されたい。滅菌溶液は、必要量の脂肪由来細胞集団、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などを、本明細書に記載の1つ又は複数の他の成分を含むか又は含まない適切なバッファー中に取り込むことによって調製される。
【0124】
本明細書に記載の任意の2つ以上の作用物質による併用療法も、本発明の態様として考慮される。同様に、新しいキットとして一緒に包装されるか又は単一の組成物として一緒に処方される、本明細書に記載の作用物質の各組合せは、本発明の態様と考えられる。本発明の態様による使用のための組成物は、医薬として許容できる担体とともに処方された脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などを含むことが好ましい。該細胞は、目的の治療効果を高め、制御し又は方向づけるための添加剤とともに適用することもできる。例えば、いくつかの実施形態において、脂肪由来細胞集団、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、有効性を増大させ、疾病率を低減させ又は手順を容易化するために、細胞集団を富化するための抗体介在性の正の及び/又は負の細胞選択を使用することによってさらに精製され得る。同様に、細胞は、生物適合性のマトリックスとともに適用可能であり、これは、移植された細胞の運命を支援及び/又は方向づけることによってインビボの組織工学を容易化する。同じ方法で、細胞は、該細胞によって提供される治療反応を促進すると考えられるか又は意図される遺伝子産物をそれらが発現するように、遺伝子操作後に投与され得る。
【0125】
脂肪由来細胞集団、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、単独で又は他の細胞、組織、組織断片、成長因子、生物学的に活性な若しくは不活性な化合物、吸収性プラスチック足場又は該集団の送達、有効性、耐容性又は機能を高めることを目的とする他の添加剤とともに適用可能である。ADRCを含む脂肪由来細胞集団は、構造上又は治療上の目的の誘導のために細胞の機能を変化させ、高め又は補充するようなやり方で、DNAの挿入により又は細胞培養中への設置によって、改変することが可能である。
【0126】
さらなる実施形態において、脂肪由来細胞集団、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、細胞が移植部位内、すなわち、腫瘍内でプロドラッグを活性化することを可能とする、プロドラッグ変換酵素をコードする遺伝子と組み合わされる。遺伝子(又は遺伝子の組合せ)の添加は、アデノウイルス形質導入、「遺伝子銃」、リポソーム介在性形質導入及びレトロウイルス又はレンチウイルス介在性形質導入、プラスミド又はアデノ関連ウイルスを含むが、それに限定されない本分野で知られた任意のテクノロジーによってよい。細胞は、形質導入がインサイチュで持続又は開始可能であるように、経時的に細胞に遺伝子を放出及び/又は提示することのできる遺伝子送達ビヒクルを有する担体材料とともに移植可能である。特に、細胞及び/又は該細胞を含有する組織が、該細胞及び/又は組織が得られた患者以外の患者に投与される場合、移植物の拒絶を低減し、好ましくは予防する、1つ又は複数の免疫抑制剤が、細胞及び/又は組織を受容する患者に投与することができる。
【0127】
さらなる実施形態は、脂肪由来細胞集団、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などのエクスビボでのトランスフェクション、これらのトランスフェクトされた細胞の対象へのその後の転移に関する。そのような実施形態は、転移された遺伝子のインビボレベルを上方制御するため、及び遺伝子(複数可)の低発現によりもたらされた又はそうでなければ、遺伝子の上方制御に対して応答性である疾患又は障害からの解放を提供するための有効なアプローチであり得ると考えられる(例えば、すべてが参照することにより本明細書に組み込まれるGelse, et al., 2003, "Articular cartilage repair by gene therapy using growth factor-producing mesenchymal cells," Arthritis Rheum. 48:403-41; Huard, et al, 2002, "Muscle-derived cell-mediated ex vivo gene therapy for urological dysfunction," Gene Ther. 9: 1617-26; Kim, et al., 2002, "Ex vivo gene delivery of IL-1Ra and soluble TNF receptor confers a distal synergistic therapeutic effect in antigen-induced arthritis," Mol. Ther. 6: 591-600を参照されたい)。脂肪由来細胞集団、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などの、適切な細胞への送達は、エクスビボ、インサイチュ又はインビボで、ベクター、より具体的には、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス若しくはレトロウイルス)の使用により、又はエクスビボで、物理的DNA転移方法(例えば、リポソーム又は化学処理)の使用によりもたらされる。例えば、参照することにより本明細書に組み込まれるAnderson, 1998, "Human Gene Therapy," Nature Suppl.to vol. 392 (6679): 25-20を参照されたい。遺伝子治療テクノロジーは、そのすべてが参照することにより本明細書に組み込まれるFriedmann, 1989, "Progress toward human gene therapy," Sicence 244(4910): 1275-1281, Verma (1990), "Gene therapy" Scientific American 263(5):68-84及びMiller (1992), "Human gene therapy comes of age," Nature, 357: 455-460によっても総説される。脂肪由来細胞集団、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、増殖又はそのような細胞において所望の効果又は活性を生成するために、エクスビボにおいて添加剤(例えば、分化又は膵臓細胞形成を誘導する化合物)の存在下で培養され得る。次いで、処理された細胞は対象に導入され得る。
【0128】
いくつかの実施形態において、エクスビボでの遺伝子治療は、局所的に、例えば、線維性瘢痕の部位に対して行われる。例えば、カテーテル介在性の転移を用いて、脂肪由来細胞集団、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などが、哺乳動物対象に転移され得る。局所送達のための材料及び方法は、例えば、参照することにより明示的に本明細書に組み込まれるLincoff, et al., (1994), "Local drug delivery for the prevention of restenosis. Fact, fancy and future," Circulation, 90: 2070-2084に総説されている。例えば、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、冠内薬物輸注に関する文献中に記載されたもののような輸注−潅流バルーンカテーテル(好ましくは、微多孔質バルーンカテーテル)によって、対象に提供され得る。例えば、そのすべてが参照することにより全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,713,860号(Intravascular Catheter with Infusion Array);米国特許第5,087,244号;米国特許第5,653,689号;Wolinsky, et al. (1990) (Wolinsky Infusion Catheter), "Use of a perforated ballon catheter to deliver concentrated heparin into the wall of the normal canine artery," J. Am. Coll. Cardiol. 15: 475-481;及びLambert et al., 1993, "Local drug delivery catheters: functional comparison of porous and microporous designs," Coron. Artery Dis. 4: 469-475を参照されたい。部位特異的体細胞遺伝子治療のためのそのようなカテーテルの使用は、例えば、参照することにより明示的に本明細書に組み込まれるMazur, et al., 1994, "Coronary restenosis and gene therapy," Texas Heart Institute Journal 21: 104-111に記載されている。
【0129】
本発明の態様は、治療用ポリペプチドをコードする遺伝子による脂肪由来細胞、例えば、ADRC(幹細胞、前駆細胞、先駆細胞又は幹細胞と前駆細胞及び/又は先駆細胞の組合せ)のエクスビボでのトランスフェクション及びトランスフェクトされた細胞の哺乳動物対象への投与にも関する。遺伝子改変された内皮細胞で血管移植片をシーディングするための手順は、例えば、参照することによりその全体が明示的に本明細書に組み込まれる、米国特許第5,785,965号、「VEGF gene transfer into endothelial cells for vascular prosthesis」に記載されている。
【0130】
いくつかの実施形態において、投与ステップは、哺乳動物対象に装具又は医療装置(例えば、血管内ステント)を移植することを含み、該ステントは、ADRCを含む脂肪由来細胞集団でコーティング又は含浸されている。トランスフェクトされた内皮細胞でコーティング又はシーディングされた弁、ステント又は移植片を構築するための代表的な材料は、参照することにより本明細書に組み込まれるPavenik, et al., 2004, "Second-generation percutaneous bioprosthetic valve: a short-term study in sheep," Eur. J. Endovasc. Surg. 40: 1223-1227及びArts, et al., 2002, "Contaminants from the Transplant Contribute to Intimal Hyperplasia Associated with Microvascular Endothelial Cell Seeding, " Eur. J. Endovasc. Surg. 23: 29-38に記載されている。参照することにより本明細書に組み込まれる、CELL−LOADED PROSTHESIS FOR REGENERATIVE INTRALUMINAL APPLICATIONSと題された、2005年12月22日出願の米国特許出願第11/317,422号も参照されたい。例えば、一変形において、ADRCを含む脂肪由来細胞集団を含む合成弁が、四角形のステンレススチールステントに縫合される。四角形のステントは、設置の間に弁のためのアンカーを提供するために、各末端に短いとげを有し、粘膜下膜は、弁開口部を作るためにステントの対角軸において長い切り目が入っている。
【0131】
合成弁の表面は、例えば、細胞による弁表面の完全なコーティングを可能とするために、移植前の1〜3日間、適切な細胞培地中に合成弁を置くことによって、再生細胞を含むトランスフェクトされた又はトランスフェクトされていない脂肪由来細胞集団(例えば、幹細胞を含むもの、前駆細胞を含むもの、先駆細胞を含むもの又は他の再生細胞−その任意の組合せを含むもの)でコーティングされ得る。
【0132】
別の実施形態において、投与ステップは、哺乳動物対象に血管内ステントを移植することを含み、該ステントは、上記引用文献に記載され、Lincoff, et al., 1994に概説されたようにコーティング又は含浸される。ステントを形成するための金属又はポリマーワイヤーは、再生細胞を含むトランスフェクトされた又はトランスフェクトされていない脂肪由来細胞集団(例えば、幹細胞を含むもの、前駆細胞を含むもの、先駆細胞を含むもの又は他の再生細胞−その任意の組合せを含むもの)で含浸された(又はその中に浸漬され若しくは使用直前に容易にコーティングされ得る)多孔質生物適合性ポリマー又はゲルのような組成物でコーティングされる。ワイヤーは、巻かれ、織られ又はそうでなければ慣用の材料及び血管内血管形成カテーテル挿入のような技術を用いて血管の管腔中に移植されるための好適なステントに形成される。このやり方で改善され得る代表的なステントは、そのすべてが参照することにより全体として明示的に本明細書に組み込まれる米国特許第5,800,507号及び同第5,697,967号(Medtronic, Inc.,フィブリン及び再狭窄の処置を提供することのできる溶出可能な薬物を含む、管腔内ステントを記載する);米国特許第5,776,184号(Medtronic, Inc.,ポリマー及び固体中の又は固体/ポリマーを含む溶液中の治療用物質を含む多孔質コーティングを有するステントを記載する);米国特許第5,799,384号(Medtronic, Inc.,体腔に接触する生物適合性ポリマー表面を有するフレキシブルな円筒状の金属ステントを記載する);及び米国特許第5,824,048号、同第5,679,400号及び同第5,799,729号に記載され、描写される。
【0133】
本明細書に記載されるように、再生細胞を含む脂肪由来細胞集団(例えば、幹細胞を含むもの、前駆細胞を含むもの、先駆細胞を含むもの又は他の再生細胞−その任意の組合せを含むもの)は、さらなる処理又はさらに細胞を精製し、改変し、刺激し若しくは別の方法で変化させるための後続の追加の手順なしに、対象に提供され、又は損傷組織に若しくは損傷組織の近傍に直接適用されてよい。例えば、患者から得られた細胞は、投与の前に該細胞を培養することなく、前記患者に戻されてよい。数種の実施形態において、脂肪組織の収集及び処理並びにADRCを含む脂肪由来細胞集団の投与は、患者のベッドサイドで実施される。好ましい実施形態において、細胞は、それらが移植され、それによって移植組織に対する抗原性及び/又は免疫原性反応に伴う潜在的な合併症を低減するべき人の脂肪組織から抽出される。しかしながら、別の個体から抽出された細胞の使用も考慮される。
【0134】
本明細書に開示される発明に従って、脂肪組織由来細胞は、患者から脂肪組織を採取した後、すぐに該患者に送達され得る。例えば、細胞は、脂肪組織由来再生細胞(例えば、脂肪由来の幹細胞、前駆細胞、先駆細胞又は再生細胞の任意の組合せ)の組成物を得るために、脂肪組織を処理した直後に投与されてよい。一実施形態において、送達の好ましいタイミングは、浮腫の診断又は患者を浮腫が発生するリスクにさらす可能性のある手順のおよそ数時間から数日後に行われるべきである。別の実施形態において、採取及びある特定の場合には処置は、膵障害を誘発する可能性のある手順に先立って行うことができる。結局、送達のタイミングは、患者の入手可能性及び脂肪組織を処理するために必要な時間に依存する。別の実施形態において、送達のタイミングは、患者に送達される細胞が追加の改変、精製、刺激又は本明細書中で論じられる他の操作に供される場合、比較的長いことがある。さらに、ADRCを含む脂肪由来細胞集団は、複数回投与されてよい。例えば、細胞は、長期間(例えば、数時間)にわたって投与されてよく、又はある期間にわたって延長された複数の注射において投与されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、細胞は、1回又は複数回の注射(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10回又はそれ以上)において、対象の患部組織に投与され得る。例えば、いくつかの実施形態において、強皮症を有する対象は、本明細書に開示された脂肪由来細胞を、各指の1つ又は複数の異なる部位に投与され得る。したがって、いくつかの実施形態は、指の各側面、例えば、第1及び第2指節骨の隣の指の各側面、への細胞の投与を提供する。
患者に投与される脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び他の再生細胞を含む脂肪由来細胞などの数は、脂肪組織の処理後の細胞収率に関連し得る。さらに、送達される用量は、患者への細胞の送達経路に依存する。膵内送達系が使用される場合、必要な細胞はより少なく、それは、これらの系及び方法が、膵臓の状態を処置するための最も直接的な経路を提供できるからである。患者に投与される細胞の用量は、採取された脂肪組織及びドナーの(利用可能な脂肪組織の量の尺度としての)肥満度指数にも依存する。採取される組織の量は、損傷又は機能不全の程度によっても決定される。複数の組織採取物を使用するか又は投与の間での細胞の適切な貯蔵を伴う単一の採取物を使用する、複数の処置は、本発明の範囲内にある。
【0135】
脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び他の再生細胞を含む脂肪由来細胞などの総数の一部は、後の使用のために保持されるか又は凍結保存されてよい。処理された脂肪粗域の一部は、患者に投与される前に貯蔵されてよい。短期間の貯蔵(例えば、6時間未満)のためには、細胞は、栄養溶液の補給を含む又は含まない密封容器中に室温以下で貯蔵されてよい。中間の期間の貯蔵(例えば、48時間未満)は、細胞接着を防止する材料から成る又はそれでコーティングされた容器中の等張の緩衝溶液(例えば、Plasmalyte(登録商標))中で、2〜8℃において実施されることが好ましい。長期保存は、その内容がどちらも参照することにより明示的に本明細書に組み込まれる、2002年9月13日出願のPCT出願第PCT/US02/29207号及び2001年9月14日出願の米国特許出願第60/322,070号に開示されたような適切な凍結保存及び細胞機能の保持を促進する条件下での細胞の貯蔵によって実施されることが好ましい。
【0136】
いくつかの実施形態において、それを必要とする対象に提供される脂肪由来細胞(例えば、富化された、濃縮された、単離された又は精製された、ADRCを含む脂肪由来細胞集団)の量は、約10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、100,000、110,000、120,000、130,000、140,000、150,000、160,000、170,000、180,000、190,000又は200,000個以上の細胞であり、前記脂肪由来細胞集団中のADRC(例えば、幹細胞及び前駆細胞の組合せのような、幹細胞、前駆細胞、先駆細胞又は異なるタイプの再生細胞の組合せなど)の量は、全脂肪由来細胞集団の0.5%〜1%、1〜2%、2%〜4%、4%〜6%、6%〜8%、8%〜10%、10%〜20%、20%〜30%、30%〜40%、40%〜50%、50%〜60%、60%〜70%、70%〜80%、80%〜90%又は90%〜100%超であるか又はそれに等しいことが可能である。用量は、ある期間にわたって投与するため、又は局所注射などによる患部組織の異なる部分への注射のための数個のより小さな用量に分割され得る。しかしながら、この用量は、所望の治療効果を達成するための大きさによって調整され得る。
【0137】
脂肪由来細胞(例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び他の再生細胞を含む脂肪由来細胞など)は、移植される前に、足場材料上での細胞培養に供することもできる。したがって、組織工学による弁、膵管及び他の構造物が、レシピエントへの挿入又は移殖の前に、ADRCを用いて天然又は合成のマトリックス又は足場上に合成され得る。
【0138】
本明細書に記載の治療薬のために、多くの投与経路が好適であり得る。いくつかの変形において、経口、静脈内、動脈内及び他の全身投与が使用される。いくつかの変形において、浮腫の部位に皮下投与されるなどの、浮腫状肢又は他の体の部分への局所投与が考慮される。
いくつかの実施形態において、脂肪由来細胞(例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び他の再生細胞を含む脂肪由来細胞など)の、利益の意図される部位への直接投与が好ましい。これは、(逆流メカニズムを含む)動脈又は静脈輸注によるか又は本明細書に開示された若しくは本分野で知られた他の手段による好適なカニューレの挿入を介した、組織中への局所注射、膵臓の構造体又は膵管への直接注射によって達成され得る。
【0139】
脂肪由来細胞、例えば、幹細胞、再生細胞、幹細胞及び他の再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、(血管及び/又はリンパ管中への輸注を含む、逆流輸注を含む)静脈内又は動脈内輸注による全身投与を含む数種の経路、又は直接注射により適用され得る。特に末梢静脈アクセスによる全身投与は、血液から膵臓への細胞の自然の輸送に依存して、最小限に侵襲性であるという利点を有する。ADRCを含む脂肪由来細胞集団は、単回ボーラスにより、遅い輸注により、若しくは数時間離された一連の時間差投与によって注射され得るか、又は提供された細胞は、数日若しくは数週間、適切に貯蔵される。ADRCを含む脂肪由来細胞集団は、目的の領域を通る細胞の最初の通過がバルーンを用いることによって促進されるように、カテーテル挿入により適用することもできる。末梢静脈アクセスによるように、ADRCを含む脂肪由来細胞集団は、カテーテルを通して、単回ボーラス又は複数のより少量のアリコートで注射されてよい。細胞は、間質腔中に注射されるか又はスプレー若しくはシートの形態で適用することもできる。
【0140】
先に上記した通り、好ましい実施形態において、脂肪由来細胞集団、例えば、幹細胞、再生細胞、幹細胞及び他の再生細胞を含む細胞集団など、が患者に直接投与される。言い換えれば、活性な細胞集団(例えば、ADRC、前駆細胞、幹細胞及び/又はその組合せ)が、系から除去されたり又は患者に投与される前に系の外部環境に曝露されることなく、患者に投与される。閉じた系を提供することは、患者に投与される材料の汚染の可能性を低減させる。したがって、閉じた系中で脂肪組織を処理することは、既存の方法に比べた利益を提供し、それは、活性な細胞集団が無菌である可能性がより高いからである。いくつかの実施形態において、ADRCを含む脂肪由来細胞集団が外部環境に曝露されるか又は系から除去される唯一の時は、該細胞が投与装置中に引き込まれ、患者に投与されるときである。他の実施形態において、投与装置は閉じた系の一部であることもできる。したがって、完全な閉じた系は、対象からの脂肪組織の除去(例えば、カニューレ)から対象への導入(例えば、投与装置)まで維持される。したがって、これらの実施形態において使用される細胞は、培養又は凍結保存のために処理されてよく、さらなる処理なしに患者に投与されてよく、又は他の組織、細胞又は添加物と混合された後に患者に投与されてもよい。
【0141】
他の実施形態において、ADRCを含む脂肪由来細胞集団の少なくとも一部が、後の移植/輸注のために貯蔵され得る。該集団は、細胞集団の一部が後の投与のために保持される一方、一部は直ちに患者に適用されるように、1つ超のアリコート又は単位に分割されてよい。そのどちらの内容も参照することにより明示的に本明細書に組み込まれる、2001年9月14日出願の米国特許出願第60/322,070号の優先権の利益を主張する、PRESERVATION OF NON EMBRYONIC CELLS FROM NON HEMATOPOIETIC TISSUESと題された、2002年9月12日出願の米国特許出願第10/242,094号に記載されたような、細胞のすべて又は一部の細胞バンク中での中程度から長期の貯蔵も、本発明の範囲内にある。処理の最後に、本分野の当業者に知られた任意の手段によるレシピエント中への設置のために、シリンジのような送達装置に濃縮された細胞が充填される。添加物を含むか又は含まない、ADRCを含む脂肪由来細胞集団は、以下の項において説明される数種の治療方法において使用可能である。
【0142】
疼痛モデル
ある特定の実施形態において、本明細書に記載の脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、例えば、動物疼痛モデルにおいて、疼痛を低減又は寛解させるそれらの能力を特徴とする。例えば、脂肪由来幹細胞及び再生細胞のバッチ又はロットが産生される場合、疼痛の1つ又は複数の動物モデルを用いて該バッチ又はロットのサンプルが試験される。疼痛アッセイにおいて疼痛の許容できる低減をもたらすサンプルがそこから得られた脂肪由来幹細胞及び再生細胞は、次いで、さらなる用途に関して、例えば、任意のタイプの疼痛の寛解又は特定のタイプの疼痛の寛解に関して選択され得る。試験される脂肪由来幹細胞及び再生細胞は、治療的に有効であるとみなされるためには、1つのアッセイにおいて試験され及び/又は有効性を示すことのみが必要であり;複数の又はすべての疼痛の動物モデルにおける試験は必要でない。ある特定の実施形態において、サンプルの脂肪由来幹細胞及び再生細胞は、1つ又は複数の関連するタイプの疼痛又は特別な患者集団の処置に関連する疼痛に関連する疼痛アッセイにおいて試験され得る。
【0143】
ある特定の実施形態において、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などは、例えば、内臓痛の酢酸誘発モデルにおいて試験され得る。そのような試験は、例えば、酢酸の投与前に投与されるビヒクル又は脂肪由来幹細胞及び再生細胞(例えば、1×106〜1×108個)とともに、約10mL/kgの投与体積でマウスに酢酸を腹腔内投与することによって実施され得る。最初の5分間を除いた後の20分間のもがきの数が記録される。各実験は、以下の群:ビヒクル+2〜5用量の脂肪由来幹細胞及び再生細胞+陽性対照;n=10/群を含む。
【0144】
他のある特定の実施形態において、脂肪由来幹細胞及び再生細胞のサンプルは、L5及びL6脊髄神経がきつく結紮され、安定した長期持続性の神経障害性疼痛を生じる、Chung脊髄神経結紮モデルを用いて試験され得る。
他のある特定の実施形態において、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などのサンプルは、一連のタキソール注射の投与後にラットにおいて経時的に疼痛が発生する、末梢神経障害のタキソールアッセイを用いて試験され得る。
他のある特定の実施形態において、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などのサンプルは、坐骨神経のうちの1つの周囲を緩く結紮することによって誘発される疼痛が、弱い機械的刺激に対して患部後肢を急激に引っ込めることによって示される、神経障害性疼痛(アロジニア)のBennetモデルを用いて試験され得る。
【0145】
他のある特定の実施形態において、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などのサンプルは、疼痛のカラギーナン投与誘発モデルを用いて試験され得る。
他のある特定の実施形態において、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などのサンプルは、神経障害性疼痛(例えば、アロジニア)の完全フロイントアジュバントモデルを用いて試験され得る。例えば、1×106〜1×107個i.v.の初回用量で1群あたり5匹のラットが使用され、CFA誘発性の後肢痛覚過敏の低減によって有効性が決定されることができる。ビヒクル対照と処置群の間の比較のためにStudentの独立t検定が適用される。他の疼痛薬(osあたりmg/kg)、例えば、アスピリン>100;シクロスポリンA>100;デキサメタゾン>30;ガバペンチン約200;インドメタシン>10;又はモルヒネ30が、陽性対照として使用され得る。
【0146】
他のある特定の実施形態において、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などのサンプルが、疼痛発生化合物としてフェニルキノン(PQ)を用いて、例えば、1条件あたり5匹のマウス、処置1時間前に1×106〜1×107個i.v.の初回用量、続いて5分間の観察期間中のPQ(2mg/kgi.p.)誘発性のもがきの低減の決定を用いて、試験され得る。
他のある特定の実施形態において、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などのサンプルが、例えば、術後痛の後肢切開モデルを用いて試験され得る。
他のある特定の実施形態において、脂肪由来細胞、例えば、幹細胞を含む脂肪由来細胞、再生細胞を含む脂肪由来細胞、幹細胞及び再生細胞を含む脂肪由来細胞などのサンプルが、テールフリック疼痛刺激に対する反応が、脂肪由来幹細胞及び再生細胞の投与の前及び後に評価される、テールフリックモデルを用いて試験され得る。
本明細書に提供される疼痛アッセイは、非限定的な例のみであり、本分野で知られた他のアッセイも同様に使用されてよい。
【実施例】
【0147】
(例1)
強皮症は、皮膚又は他の器官における過剰なコラーゲン沈着を特徴とする慢性疾患である。強皮症は、限局性又は全般性であることができる。該疾患の限局性形態は、身体障害性であるが、非致死性の傾向がある。びまん性強皮症又は全身性硬化症として顕在化する該疾患の全身性形態は、心臓、腎臓、肺又は小腸の損傷の結果として致死性であり得る。強皮症の3つのタイプは、全身性であるびまん性強皮症及び限局型全身性強皮症(CREST症候群)並びに皮膚に限定されるモルフェア/線状強皮症である。犠牲者が急激な発症、広範な皮膚の硬化及び顕著な内部器官、特に肺及び胃腸管の損傷を経験する、びまん性強皮症が最も重篤な形態である。
【0148】
強皮症の限局型形態は、もっと穏やかで、よりゆっくりとした発症及び進行を示す。皮膚の硬化は通常、手及び顔に限られ、内部器官の関与は、びまん性形態よりも重篤でない。典型的に、レイノー現象が強皮症に数年先行する。レイノー現象は、寒さに曝露された末梢−特に、手及び脚−の小動脈の血管収縮によるものであり、古典的に、最初に白く、次に青く、そして最後に再び温めると赤い、三相の色変化を特徴とする。限局型形態は、CREST症候群と呼ばれることが多く、「CREST」は、5つの主要な特徴、石灰沈着(軟部組織、例えば、皮膚におけるカルシウム沈着)、レイノー症候群、食道運動障害、強指症(指の強皮症)及び毛細血管拡張症(くも状静脈)の頭字語である。
12人の強皮症患者(平均年齢54.5±10.3歳;範囲34〜68歳)を脂肪由来再生細胞で処置した、ヒト臨床試験を実施した。すべての患者は、罹患期間が14.3±7.7年(平均±標準偏差)(範囲5年〜34年)の、随伴性レイノー症候群を伴う強皮症の診断を受けた。
【0149】
インフォームドコンセント及びベースラインの処置前評価に続いて、患者を麻酔し、滅菌野に置いた。11刃メスを用いて少数の0.5cmの刺切創を作った。キシロカイン及びアドレナリンを添加した乳酸リンゲル液を含むツメッセント液を、吸引される1容の脂肪に対して約1容の溶液の割合で皮下組織に浸透させた。
エピネフリンが血管収縮を誘発するのに十分な時間をおいた後、直径2mmのメルセデス式脂肪吸引カニューレ(Mentor,Santa Barbara,CA)を用いて同じ切開部位を通して脂肪組織を吸引した。約120gの脂肪組織を吸引した。次いで、切開部位を縫合により閉じて、該領域に圧迫包帯をあてた。
脂肪由来細胞、例えば、再生細胞を含む脂肪由来細胞を本明細書に記載の方法を用いて処理した。次いで、5mLの生成物を乳酸リンゲル液で最終体積10mLに希釈した(指1本あたり1mL)。
【0150】
ブラントカニューレを通した注射によって皮下及び真皮下空間にADRCを注入した。各指に対して2回の注射を実施した(指の各側に指の長さに沿って外側に1つ;1側面あたり約0.5mLの注射)。最初に、各指の両背外側面の注射部位及び母指に、図1に示すように印をつけた。
図2に示すように、鋭い針(25G)を用いて第1の注射部位を切開した。
次いで、ブラントカニューレを切開部位に挿入した。図3に示すように、カニューレに取り付けた1mLシリンジを、1つの指あたり1mLのADRCを送達するために使用した(指の各側に0.5mL)。正確な注射を実施するために、処置した外科医の必要に応じて拡大した。
次いで、乾燥包帯で注射部位を閉じ、20回のすべての注射が完了するまで、その後の注射を上記の通りに実施した。
【0151】
評価
この試験の主要エンドポイントは、(視覚的アナログスケール;VASにより評価した)疼痛、レイノー重症度スコア及び手の機能の2つの広範な評価;コーチンスコア及び強皮症健康評価アンケートであった。これらを、処置の前(ベースライン)及び処置後に間隔を置いて実施した。2及び6カ月のフォローアップポイントに関して、本明細書にデータを提供する。
【0152】
1.レイノー重症度スコア
レイノー症候群は、寒さのような刺激が血管収縮及び四肢、特に指の末端への血流の喪失を誘発する、有痛性状態である。重度の虚血の期間に、再灌流及び顕著な疼痛が続く。強皮症患者は、それぞれが1時間以上続くことの多いレイノーエピソードを、毎日、複数回有し得る。レイノースコア(RS)は、該疾患の重症度の有効な患者報告尺度である。
ベースラインにおける平均RSは、28±5(平均±標準偏差;範囲20〜34)であった。処置の2カ月後、RSは、平均12±8(範囲1.5〜26)まで改善した。この変化は、統計学的に有意であった(対応のあるT検定によりp<0.001)。各患者は、2カ月の時間枠にわたって、RSの改善を示した。2カ月における各患者のデータを平均及び標準偏差とともに示すグラフ(太線)を図4に示す。複合群のデータを示すグラフを図11に示す。
図5に示すように、データは、すべての患者が、彼らのレイノー状態スコア(「RCS」)において20%の最小限の改善を示したことをさらに示す。すべての患者にわたって、ベースラインから2カ月目までで、53.7%のRCSの低減を観察し(p<.0001)、6カ月目において67.5%の低減に達した(p<.0001)。図11を参照されたい。これらのデータ並びに手の疼痛に関するデータ(VAS)及び以下に論じる爪郭毛細血管顕微鏡検査は、本明細書に開示する脂肪由来再生細胞が、強皮症の血管徴候の改善において有用であることを実証する。
【0153】
2.疼痛
疼痛は、強皮症を有する患者にとってしばしば起こる問題である。これは、レイノー症候群、指の潰瘍の存在並びにこわばり及び限られた手の可動域のような他の要因から生じる。
標準的な視覚的アナログスケールを用いて疼痛を評価し、患者は、彼らの現在の痛みの感覚を、例えば、100mmの線上に印をつけることによって1〜100のスケールで報告する。これは、強皮症を含む多様な臨床状態における疼痛の評価のための、非常に広く使用され、よく有効化されたツールである。
ベースラインにおける疼痛の平均は、59.4±17.2(平均±標準偏差;範囲20〜80)であった。処置の2カ月後、疼痛スコアは、21.6±17.5(範囲0〜40)の平均まで改善した。この変化は、統計学的に有意であった(対応のあるT検定によりp<0.001)。12人の患者についての集約データを図11に提供する。
VASツールを用いて評価した疼痛における変化の妥当性の試験は、0〜4mmのスコアは、「疼痛無し」、5〜44mmは、「弱い疼痛」、45〜75は、「中程度の疼痛」及び75〜100は、「重度の疼痛」として評価されてよいことを示した。これらの基準によって、処置前に重度の疼痛を有する患者が2人あり;処置後ではなく、実際に、処置前に重度の疼痛を有した両患者は、処置の2カ月後には疼痛を有さなかった。同じ基準により、処置前に中程度の疼痛を有した患者が9人いたが、2カ月ではわずかに1人であった。2カ月において評価した12人のうちの11人(92%)は、ベースラインにあったただ1人の患者(8%)に比べて、弱い疼痛を有するか又は疼痛を有さなかった。VASツールの同じ試験は、33%の疼痛の変化が患者にとって臨床的に重要であることを示した。処置した12人の患者のうちの9人(75%)は、少なくとも33%の疼痛の減少を示した。
【0154】
3.健康評価アンケート
強皮症のような病状は、患者の全体的な健康及び生活の質に非常に大きな打撃を与える。強皮症健康評価アンケート(SHAQ)は、強皮症を有する患者において健康を評価するためのよく確立された有効なツールである。
標準的なSHAQを使用して健康を評価した。ベースラインにおける平均スコアは、1.28±0.31(平均±標準偏差;範囲0.8〜1.9)であった。処置の2カ月後に、平均SHAQスコアは、0.66±0.56(範囲0〜1.5)の平均まで改善した。この変化は、統計学的に有意であった(対応のあるT検定によりp<0.0001)。平均及び標準偏差とともに各患者に関するデータを示すグラフ(太線)を以下に示す。
【0155】
試験は、このタイプのスコアにおける0.2以上の変化が、患者にとって症状的に重要であることを示した。この試験において観察した改善の平均は、0.6であった。さらに、12人の患者のうちの10人が、0.2超のSHAQの改善を示した。この群におけるSHAQの改善の平均は、0.75±0.35(範囲0.3〜1.3)であった。2カ月におけるデータを図6及び7に表す。比較として、強皮症の処置のために欧州連合において認可された静注薬物、イロプロストの患者281人の臨床試験では、全体的なSHAQにおける改善の平均は、0.23±0.64であった。図11に提供する6カ月のデータを示すグラフによって評価して、患者が認識した健康状態における45.2%の改善を2カ月で観察し(p=0.001)、患者が認識した健康状態における42.4%の改善を6カ月で観察した。
図11に示すように、大多数の患者がSHAQスコアにおける大きな改善を示した。SHAQは、診療においてSSc状態の変化の有用なマーカーともみなされ、それは、SHAQ(HAQ)における改善が医師による全体的評価における改善と関連しているからである。この全体的側面は、処置部位(手)から遠い領域において患者に利益を与える介入の能力を示し、顔及び他の領域における強皮症症状の改善の患者報告と一致する。これらのデータは、本明細書に開示された脂肪由来再生細胞が、強皮症を有する対象の全体的な一般的健康状態における持続的な改善(例えば、6カ月超)のために有用であることを実証する。
【0156】
4.ADRCが手の障害を改善する:コーチンスケール、握力、ピンチ力、Kapandji指数、対角距離(Corners Distance)及び指の可動性
コーチン手機能スコア(「CHFS」)は、広く使用される有効な手の機能の患者報告尺度である。このツールは、ボタンを留め、ジッパーを上げて食物を準備するような、手による日常作業を行うための患者の能力を評価する。
【0157】
コーチンツールを用いて手の機能を評価した。ベースラインにおける平均スコアは、48.5±11.0(平均±標準偏差;範囲30〜69)であった。処置の2カ月後、平均コーチンスコアは、平均25.5±16.5(範囲2〜48)まで改善した。この変化は、統計学的に有意であった(対応のあるT検定によりp<0.001)。平均及び標準偏差とともに各患者の2カ月のデータを示すグラフ(太線)を、図8に示す。ベースラインに対する、CHFSにおける47.4%(p<0.001)及び56.0%(p<0.001)の減少を、処置後2カ月及び6カ月でそれぞれ観察した。データを以下の表1に表す。2及び6カ月のCHFSデータを、グラフで図11に表す。
CHFSにより評価した手の機能の改善は、手の力及び第1角部の距離の顕著な増加とも関連した。当分野で認められているJamarスコアによって握力を評価した。Schmidt, et al. (1970), Arch Phys Med Rehabil. 51: 321 7を参照されたい。6カ月目には、握力は、ベースラインに比べて、利き手について+4.8(±6.4)kg(p=0.033)及び非利き手について+4.0(±3.5)kg(p=0.033)、平均して増加した。さらに、ピンチ力スコアの顕著な増加を6カ月目に観察した。具体的には、ピンチ力は、利き手について+1.0(±1.1)kg(p=0.009)及び非利き手について+0.8(±1.2)kg(p=0.050)、平均して増加した。
対象は、ミリメーターで表した第1角部の距離の測定並びに第2、第3及び第4角部の距離の合計により評価した、手の機能の改善を示した。対象は、指腹から末端の手掌線(palmar line)までの距離により測定した指の屈曲の顕著な改善を示した。データを以下の表1に表す。
【0158】
【表1-1】
【表1-2】
5.ADRCが強皮症の血管徴候を改善する
指の潰瘍は、強皮症患者において比較的好発する。本試験における患者12人のうち5人が、ベースラインにおいて指の潰瘍を有した。指の潰瘍の治癒を、2及び6カ月のフォローアップ訪問において認めた。以下の表2にデータを表す。
【0159】
【表2】
強皮症の血管徴候は、例えば、Lee, et al. (1983) J. Rheumatol. 10: 930-938に記載された爪郭毛細血管顕微鏡検査を用いても評価し得る。この試験において、以下のパラメータ:(1)毛細血管係蹄の数/指;(2)沈殿物の存在又は不存在;(3)拡張した毛細血管係蹄の数/指(正常な求心、移行及び遠心脚の幅の4倍超);(4)巨大毛細血管係蹄の数/指(毛細血管脚の正常な幅の10倍以上;及び(5)無血管スコアを測定する。無血管スコアのために、各指を、0=無血管野無し;1=1〜2個の離れた無血管野;2=2超の離れた無血管野;3=広く、コンフルエントな無血管野、により0〜3に評価した。2及び6カ月のデータを以下の表3に表す。
【0160】
【表3-1】
【表3-2】
上記データは、ADRCが、強皮症の血管徴候を改善することを示す。
6.ADRCが強指症及び線維症を改善する
強指症(Sclerodactaly)及び線維症における顕著な改善も観察した。
改変Rodnan皮膚スコア(MRSS)は、皮膚厚みを評価するために最も広く使用される試験であり、びまん型皮膚全身性硬化症を有する患者における疾患重症度及び死亡リスクの本分野で認められた代替尺度であり:皮膚の肥厚の増加は、内部器官の関与及び死亡率増加と関連する。さらに、皮膚厚みスコアの改善は、より好ましいアウトカムと関連する。Czirjak, et al. (2008) Rheumatology 49(suppl. 5): 44-45を参照されたい。総皮膚表面積は、自由裁量で17の異なる領域:(対で)指、手、前腕、腕、足、下肢及び大腿並びに顔、胸及び腹部に分割される。これらの各領域において、皮膚スコアを手による触診で評価する。皮膚スコアは、0が未関与の皮膚、1が弱い肥厚、2が中程度の肥厚及び3が重度の肥厚(カサカサの皮膚)にあたる。総皮膚スコアは、個々の領域の皮膚スコアの合計であり、可能性のある最大スコアは51である。皮膚スコアは、皮膚線維症の程度と相関する傾向があり、これは、次に、肺線維症、強皮症、心疾患、腎疾患及び胃腸の合併症のような線維症及び内部器官の機能不全の程度と相関する。
【0161】
手に焦点をあてたMRSSの顕著な変化は、ベースラインから2カ月目又は6カ月目まで観察しなかった。しかしながら、手の甲部分に皮膚の軟化が注目される、少なくとも25%のMRSSの低減を4人の患者で観察した。全体的なMRSSは、ベースライン(平均±SD 13.9±9.8)から2カ月目(11.7±9.8;p=0.010)まで、そして6カ月目(11.5±10.1;p=0.013)までで顕著に減少した。5人の患者が少なくとも25%の全体的なMRSSの低減を6カ月目に示した。データを、以下の表4に表す。
【0162】
指輪のサイズとして測定される、指の直径も、強皮症の指の軟部組織変化の指標である。Serup, J. (1985) Dermatology 171:41-44を参照されたい。指輪のサイズとして測定される指の直径のベースラインに比べた顕著な改善を、患者(pa tents)において2カ月目及び6カ月目で観察した。データを表4に表す。データは、本明細書に開示された脂肪由来再生細胞による処置が、皮膚浮腫の改善に導き得ることを示唆する。
【0163】
【表4】
患者は、彼らの疾患の全身症状の改善、すなわち、処置部位(指)に対して遠位の解剖学的位置における症状の改善も報告した。
【0164】
患者A:引用
患者:私があなたに述べたように、処置後、私は自分が新しい10本の指を得たように感じました。私は、もはや以前と同じ感覚を持っていません。私はずっとフレキシブルに感じ;私にはもう痛みがなく、この電気的なタイプの痛みはもう私の手に、私の前腕に、そして私の肩にもないのです。私がレイノー症候群に罹っていたときに比べて、私の指の青みは少ないです。私の指はまだ少し白いですが、私は以前よりもずっと活動的です。私は痛みを伴わずに何事も自然に(無意識に)行うことができます。私は非常に幸福です。しかしながら、私は右手にまだいくらか「重さ」を感じ、指は左手に比べてまだ少し膨れています。
医師:それでは、あなたの日常生活における変化は何ですか?
患者:すべてが変わりました。以前には、私の髪を整えることも乾かすこともできず;手紙をタイプすることができず、缶箱のふたを開けること、野菜を剥くこと、肉を切ること、皿を洗うこと、メイクすることもできませんでした。絵を描くこと、縫物のような、私ができなかったことがたくさんありましたが、今はすべてを自然に、無意識にできます。
患者B:引用
患者:私は手を使うことができませんでした。昔はそのような肉を切ったりできたものです。私は肉を切ることができませんでした。
医師:そして、今は?
患者:今、私はなんでもすることができ、キーボードを使うことができ、私の指先にはもはやこの電気的な感覚がありません。以前には、私には、指先に痛みとこの「電気的な」感覚がありました。
医師:どんな種類の痛みがあなたの指先にあったのですか?
患者:それは、電気的な種類の痛みのようなもので、私は、常にこの電気的な痛みをいたるところに感じたものです。
他の引用:
私の指は、5年ぶりにその正常な色に戻りました。
私はもう全く痛みを感じません。
私はもう寒くなく、いつも手袋をはめていることをやめました。
私は私の子供達が食べる肉を切り、私の髪をブラッシングし、普通の生活に戻っています。
私は仕事(秘書)に復帰しています。
これらのデータは、本明細書に開示された脂肪由来細胞が、例えば、強皮症患者における、疼痛及び線維症を治療するために有用であることを実証する。特に、該データは、本明細書に開示された脂肪由来再生細胞が、強皮症患者における血管機能及び線維症を改善するために有用であることを実証する。
【0165】
(例2)
脂肪由来細胞を使用する、神経障害性疼痛の処置
慢性疼痛、例えば、米国人の少なくとも30%が罹患する状態である神経障害性疼痛は、神経障害としても知られる神経系の障害などによって引き起こされるものであり、損傷され、機能を障害され又は傷害された神経線維を含む、組織損傷を伴い又はそれにより引き起こされ得る。神経障害性疼痛は、例えば、病変、神経変性プロセス又は末梢若しくは中枢神経系の一部の長期の機能不全によっても引き起こされ得る。しかしながら、神経障害性疼痛は、識別できる組織損傷が明らかでない場合にも存在し得る。
【0166】
神経障害は、末梢神経系(脳及び脊髄の外部の神経系の部分)の神経が損傷されるときに発生する障害の一群である。該状態は、一般に、末梢神経障害と呼ばれ、最も一般的には神経軸索の損傷によるものである。神経障害は通常、手及び足の疼痛及びしびれをもたらす。それは、外傷、感染症、代謝障害及び毒物への曝露の結果として生じ得る。神経障害の最も一般的な原因の一つは、糖尿病である。神経障害は、筋肉の動きを制御する神経(運動神経)及び寒さ又は痛みのような感覚を検知するもの(感覚神経)に影響し得る。いくつかの場合−自律神経障害−において、それは、心臓、血管、膀胱又は小腸のような内部器官に影響を与える。
【0167】
したがって、別の態様において、本明細書に提供されるのは、慢性疼痛を有する個体を処置する方法であって、該個体にADRCを含む組成物の治療有効量を投与することを含む方法を含む。具体的な実施形態において、慢性疼痛、例えば、神経障害性疼痛は、神経炎(例えば、多発性神経炎、腕神経炎、視神経炎、前庭神経炎、脳神経炎又はヒ素神経炎)、真性糖尿病(例えば、糖尿病性神経障害)、末梢神経障害、反射性交感神経性ジストロフィー症候群、幻肢痛、切断後痛、ヘルペス後神経痛、帯状疱疹、中枢痛症候群(例えば、脳、脊髄及び/又は脳幹への損傷によって引き起こされた疼痛)、ギランバレー症候群、変性円板疾患、癌、多発性硬化症、腎障害、アルコール依存症、ヒト免疫不全ウイルス関連神経障害、ワルテンベルグ移動性感覚神経障害(Wartenberg’s Migratory Sensory Neuropathy)、線維筋痛症候群、灼熱痛、脊髄損傷又は化学物質、例えば、トリクロロエチレン若しくはダプソン(ジアミニル−ジフェニルスルホン)への曝露であるか又はそれにより引き起こされる。具体的な実施形態において、末梢神経障害は、単神経障害(単一の末梢神経への損傷);多発神経障害(しばしば体の異なる部分に位置する1つ超の末梢神経への損傷)、多発性単神経炎(不連続な神経幹への同時の又は連続した損傷)、又は自律神経障害である。末梢神経障害、例えば、多発単神経炎は、例えば、真性糖尿病、血管炎(例えば、結節性多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症若しくはチャーグストラウス症候群)、リウマチ関節炎、エリテマトーデス(SLE)、サルコイドーシス、アミロイドーシス又はクリオグロブリン血症によって引き起こされ得る。
【0168】
神経障害性疼痛のレベルは、例えば、視覚的アナログスケール(VAS)、数的疼痛強度スケール、図式評価スケール(Graphic Rating Scale)、口頭式評価スケール(Verbal Rating Scale)、疼痛表情スケール(Pain Faces Scale)(Faces Pain Scale)、数的疼痛強度及び疼痛苦痛スケール、簡便痛みの質問票(BPI)、メモリアル疼痛評価(Memorial Pain Assessment)、アルダー・ヘイ・トリアージ疼痛スコア(Alder Hey Triage Pain Score)、ダラス疼痛アンケート、ドロリメーター疼痛指数(DPI)、顔、足、活動性、啼泣、精神的安定スケール(Face Legs Activity Cry Consolability Scale)、Lequesneスケール、マクギル疼痛アンケート(MacGill Pain Questionnaire)(MPQ)、記述子ディファレンシャルスケール(Desriptor differential scale)(DDS)、頸部痛及び能力障害スケール(Neck Pain and disability Scale)(NPAD)、数的11ポイントボックス(Numerical 11−Point Box)(BS−11)、ローランド−モリス背部痛アンケート(Roland−Morris Back Pain Questionnaire)又はウォング−ベーカーFACES疼痛評価スケールによって評価されてよい。これらの疼痛評価の1つ又は複数における個体への組成物の投与後の改善は、治療的に有効であると考えられる。
【0169】
組成物は、例えば、局所的に、神経障害性疼痛の部位から遠位に、個体の体の損傷領域、例えば、個体が神経障害性疼痛を経験している体の領域、に貢献する神経又は神経の組に投与され得る。例えば、組成物は、脊椎骨に沿って、神経幹が脊柱から現れる任意のポイント、例えば、頸神経、胸神経又は腰神経のいずれかにおいて投与され得る。具体的な実施形態において、組成物は、脊髄に隣接して、神経がC1、C2、C3、C4、C5、C6若しくはC7又はT1、T2、T3、T4、T5、T6、T7、T8、T9、T10、T11若しくはT12又はL1、L2、L3、L4若しくはL5において現れるポイントで、又は仙骨において投与され得る。
【0170】
脂肪由来細胞を含む組成物により神経障害性疼痛を処置するためのインビボモデル
以下は、慢性の痛みのある末梢単神経障害のためのラットモデルである。
末梢単神経障害を、ラットにおいて以下のように外科的に誘発する。ペントバルビタールナトリウム(40mg/kgi.p.)でラットを麻酔する。総坐骨神経を、大腿部の中心のレベルにおいて、大腿二頭筋を通る鈍的切開により露出させる。坐骨神経の三分流地点の近くにおいて、約7mmの神経を癒着組織から取り外し、4本の結紮糸(4.0クロムガット)をその周りに、約1mmの間隔で緩く結ぶ。こうして冒された神経の長さは45mmである。40倍の倍率で見た時に、神経の直径がわずかに締め付けられて見えるように、結紮糸を結ぶ。所望の程度の締め付けは、表面の神経上膜脈管構造を通る循環を妨害するが、停止させない。切開部を層状に閉じる。各動物において、坐骨神経を結紮しないこと以外は同じ切開を反対側に行う。対照ラットの群を使用し、ここで、何頭かのラットは手術を受けず、他は両側の偽処置を受ける(結紮しない坐骨露出)。
【0171】
その後、各群をADRC又はプラセボで処置する。術後最初の14日間の間は1又は2日おきに、その後は約1週間の間隔で動物を検査する。これらの検査中、各ラットをテーブルに乗せ、注意深く1〜2分間観察する。動物の歩きぶり、患部後肢の姿勢、後肢皮膚の状態及び存在する場合には、自体損傷の大きさについて書き留める。むき出しの組織損傷を含む自体損傷は、爪の先端をかじることによって示され得るため、爪の状態には特別に注目する。食欲及び有害な放射熱及び化学物質誘発性の疼痛に対する痛覚過敏反応を含む、術後、投与後のラットの行動を観察する。
【0172】
有害な熱に対する反応の評価
逆さにした透明なプラスチックケージ(18×28×13cm)の下で、ラットを窓ガラスでできた高架床上に置く。ガラス床の下の放射熱源は、後肢足底に向ける。刺激開始が、後肢から反射した光を受けるように位置決めされた光電セルによって制御されたタイマーを作動させる。後肢の引っ込め反射が、光電セルの光を妨害し、自動的にタイマーを停止させる。潜時を最も近い0.1秒まで測定する。5分間隔の逐次試験で後肢を交互に試験する。各試験期間中、5回の潜時測定を各後肢について行う。1つの側面あたり5回の潜時を平均し、結紮した側の平均潜時から対照の側の平均潜時を除することによって相違スコアを計算で求める。各処置群について相違スコアを比較する。
【0173】
(例3)
再生細胞を含む脂肪由来細胞を用いる非限局型線維症の処置
広範な線維症と化学療法はしばしば関連する。この臨床観察は、ブレオマイシンのような薬剤が局所的又は全身的に送達されて、(組織学的評価によって測定可能な)顕著な皮膚厚みの増加によって証明される線維症を誘発する、動物モデルに伸展した。そのような1つのモデルにおいて、ブレオマイシンがマウスの皮膚中に注射される。ブレオマイシン処置したマウスへのADRCの局所的又は全身的(例えば、血管内)送達は、線維症の低減を示す処置区域における皮膚厚みの減少及び血管分布の改善をもたらす。
具体的には、ブレオマイシン(0.1mL;300μg/ml)を皮下注射によって肩甲骨間領域及び両脇腹に、26ゲージ針を用いて、週7日間、4週連続してマウスに送達する。ブレオマイシンによる傷害の完了の1週間後にマウスをADRCで処置する。BLM注射の5週間及び13週間後に、組織学的分析によって皮膚線維症を評価する。結果は、皮膚厚みが正常な傷害されない皮膚のそれから識別できなかったように、ADRCによる処置がブレオマイシンにより誘発された皮膚病変を矯正することを示す。同様に、ADRCによる処置は、血管分布の顕著な増加に関連する。
同様に、全身的なブレオマイシンの投与又は吸入による投与は、肺線維症のモデルである。この様式で傷害を受けた動物のADRCによる処置は、線維症の低減及び結果としての肺機能の改善に導くことができる。
【0174】
等価物
本明細書に開示された組成物及び方法は、本明細書に記載の具体的実施形態による範囲に限定されるべきでない。実際に、以上の記載及び付随する図面から、記載されたものに加えて、該組成物及び方法の多様な改変が本分野の当業者に明らかである。そのような改変は、添付の請求項の範囲内に属することを目的とする。
多様な出版物、特許及び特許出願が本明細書中で引用され、その開示は参照することにより全体として組み込まれる。
次に、本発明の好ましい態様を示す。
1. それを必要とする対象における疼痛を調節する方法であって、
治療有効量の脂肪由来再生細胞を前記対象に投与すること
を含む、方法。
2. 疼痛を経験している個体として、前記対象を選択し、同定し又は分類することをさらに含む、上記1に記載の方法。
3. 前記選択、同定又は分類が、医師又は臨床若しくは診断評価によって行われる、上記1又は2に記載の方法。
4. 前記脂肪由来再生細胞の投与の前、後又はその間に、前記対象における疼痛を決定又は測定することをさらに含む、上記1から3のいずれか1項に記載の方法。
5. それを必要とする対象における線維症を調節する方法であって、
再生細胞を含む脂肪由来細胞の治療有効量を前記対象に投与すること
を含む、方法。
6. 線維症を経験しているか又は繊維性疾患を有する個体として、前記対象を選択し、同定し又は分類することをさらに含む、上記5に記載の方法。
7. 前記選択、同定又は分類が、医師又は臨床若しくは診断評価によって行われる、上記5又は6に記載の方法。
8. 前記脂肪由来再生細胞の投与の前、後又はその間に、線維症又はTNFαの量若しくはレベルのようなそのマーカーを、前記対象において又は前記対象から得られた生体サンプルにおいて決定又は測定することをさらに含む、上記5から7のいずれか1項に記載の方法。
9. それを必要とする対象における関節の可動域を改善する方法であって、
再生細胞を含む脂肪由来細胞の治療有効量を前記対象に投与すること
を含む、方法。
10. 関節可動性の喪失又は関節の可動域の低減を経験している個体として、前記対象を選択し、同定し又は分類することをさらに含む、上記9に記載の方法。
11. 前記選択、同定又は分類が、医師又は臨床若しくは診断評価によって行われる、上記9又は10に記載の方法。
12. 前記脂肪由来再生細胞の投与の前、後又はその間に、前記対象の関節の可動性又は可動域を決定又は測定することをさらに含む、上記9から11のいずれか1項に記載の方法。
13. 前記脂肪由来再生細胞が、幹細胞を含む、上記1から12のいずれか1項に記載の方法。
14. 前記脂肪由来再生細胞が、先駆細胞を含む、上記1から13のいずれか1項に記載の方法。
15. 前記脂肪由来再生細胞が、前駆細胞を含む、上記1から14のいずれか1項に記載の方法。
16. 前記対象が強皮症を有する、上記1から15のいずれか1項に記載の方法。
図1
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図11