(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御回路部は、前記第2のタイミングより後で、前記モータに流れる電流と前記第2電流閾値よりも大きい第3電流閾値との比較結果に基づいて前記モータが過電流状態であるか否かを判定する、
請求項5に記載のモータ駆動制御装置。
前記制御回路部は、前記モータが前記異常状態であると判定しなかったとき、前記指令回転数を前記制御回路部に入力される入力指令回転数に決定して前記モータ駆動部を制御する、
請求項1から8のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態におけるモータ駆動制御装置について説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるモータ駆動制御装置1の構成を示す図である。
【0027】
図1に示されるように、モータ駆動制御装置1は、制御回路部3と、位置検出器5と、モータ駆動部9とを備える。モータ駆動制御装置1は、同期モータ
(モータの一例)10に駆動電力を供給し、同期モータ10を駆動させる。なお、本実施の形態における同期モータ10は、U相、V相、W相のコイルLu,Lv,Lwを有する3相モータである。
【0028】
位置検出器5は、同期モータ10の複数相のうちいずれか1相に対応し、同期モータ10のロータの位置に対応して位相が変化する位置信号を出力する。具体的には、位置検出器5は、例えば、ホール素子やホールICなどの磁気センサであり、位置信号としてホール信号が出力される。位置検出器5から出力される位置信号は、制御回路部3に入力される。位置検出器5は、同期モータ10の1箇所においてロータの位置を検出し、位置信号を出力する。例えば、位置検出器5は、U相のコイルLuに対して1つが設けられている。位置信号は、ロータが1回転する間に、所定の位置をロータが通過したとき(ロータが第1の回転位置になったとき)にローからハイになり(立上り;立上りエッジ)、それとは別の所定の位置をロータが通過したとき(ロータが第2の回転位置になったとき)にハイからローに戻る(立下り;立下りエッジ)。位置信号は、ロータの回転に応じて周期的にハイ、ローとなる信号である。位置検出器5は、同期モータ10のU相、V相、W相のいずれか1相に対応している。すなわち、第1の回転位置と第2の回転位置は、同期モータ10のいずれか1相に対応する位置である。位置信号は、ロータの位置に応じて、すなわち同期モータ10のいずれか1相とロータとの位置関係に応じて、位相が変化する信号である。なお、位置信号として、周期的にハイ、ローを繰り返す信号が直接位置検出器5から出力されてもよいし、位置検出器5から出力されたアナログの位置信号が制御回路部3に入力された後に、周期的にハイ、ローとなる信号に変換されるようにしてもよい(以下の説明において、このようにアナログの位置信号が変換された後の信号も位置信号と呼ぶ)。
【0029】
本実施の形態において、1つの位置検出器5のみが設けられている。すなわち、同期モータ10のうち1箇所のみで検出された位置信号が制御回路部3に入力される。なお、複数の相のそれぞれに対応する複数の位置検出器5が設けられており、そのうち1箇所の位置検出器5のみから出力された位置信号が制御回路部3に入力されて用いられるようにしてもよい。すなわち、本実施の形態においては、1つの位置検出器5から出力された位置信号が制御回路部3に入力される。モータ駆動制御装置1は、ロータの位置を検出するための位置検出器5を1つのみ使用する1センサ方式で、同期モータ10を駆動する。
【0030】
モータ駆動部9は、同期モータ10の複数相のコイルLu,Lv,Lwを選択的に通電する。モータ駆動部9は、インバータ回路2と、プリドライブ回路4とを有している。モータ駆動部9には、制御回路部3から出力される駆動制御信号C1が入力される。
【0031】
インバータ回路2は、プリドライブ回路4から出力される6種類の駆動信号R1−R6に基づいて同期モータ10の3相のコイルLu,Lv,Lwを選択的に通電し、同期モータ10の回転を制御する。
【0032】
本実施の形態において、インバータ回路2は、同期モータ10のコイルLu,Lv,Lwのそれぞれに駆動電流を供給するための6個のスイッチング素子Q1−Q6を備えている。スイッチング素子Q1,Q3,Q5は、直流電源Vccの正極側に配置されたPチャンネルのMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field Effect Transistor)からなるハイサイドスイッチング素子である。スイッチング素子Q2,Q4,Q6は、直流電源Vccの負極側に配置されたNチャンネルのMOSFETからなるローサイドスイッチング素子である。スイッチング素子Q1,Q2の組み合わせ、スイッチング素子Q3,Q4の組み合わせ、及びスイッチング素子Q5,Q6の組み合わせのそれぞれにおいて、2つのスイッチング素子が直列に接続されている。そして、これらの3組の直列回路が並列に接続されて、ブリッジ回路が構成されている。スイッチング素子Q1,Q2の接続点がU相のコイルLuに接続され、スイッチング素子Q3,Q4の接続点がV相のコイルLvに接続され、スイッチング素子Q5,Q6の接続点がW相のコイルLwに接続されている。
【0033】
プリドライブ回路4は、インバータ回路2の6個のスイッチング素子Q1−Q6のそれぞれのゲート端子に接続される複数の出力端子を備えている。各出力端子から駆動信号R1−R6を出力して、スイッチング素子Q1−Q6のオン/オフ動作を制御する。制御回路部3から出力される駆動制御信号C1は、プリドライブ回路4に入力される。プリドライブ回路4は、駆動制御信号C1に基づいて、駆動信号R1−R6を出力することにより、インバータ回路2を動作させる。すなわち、インバータ回路2は、駆動制御信号C1に基づいて、同期モータ10の各相のコイルLu,Lv,Lwに選択的に通電する。
【0034】
制御回路部3は、後述のように内部で決定した指令回転数に基づいて生成した駆動制御信号C1をモータ駆動部9に出力することにより、モータ駆動部9の動作を制御する。制御回路部3は、モータ駆動部9に駆動制御信号C1を出力することにより、複数相のコイルLu,Lv,Lwの通電相を所定の順序で切り替える。制御回路部3は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、マイクロコンピュータなどのプログラマブルデバイスを用いて構成することができるが、これに限られるものではない。詳細は後述するが、制御回路部3は、
同期モータ10の起動を開始するとき、位置信号に基づいて求めた実回転数に応じて指令回転数を決定するとともに、所定の期間中に、所定の判定条件に基づいて
同期モータ10が異常状態であるか否かを判定し、
同期モータ10が異常状態であると判定したとき、駆動制御信号C1をモータ駆動部9に出力することによりモータ10を停止させる制御を行う。
【0035】
制御回路部3は、回転数監視部31と、電流監視部32と、回転数制御部33と、状態判定部34と、モータ制御部35とを有している。
【0036】
回転数監視部31には、位置検出器5から出力される位置信号が入力される。回転数監視部31は、位置信号に基づいて実回転数情報S1を出力する。実回転数情報S1は、同期モータ10の実際の回転数に対応する実回転数を表す。
【0037】
電流監視部32は、同期モータ10に流れる電流を監視してモータ電流情報S2を出力する。モータ電流情報S2は、同期モータ10のコイルLu,Lv,Lwに流れるコイル電流の大きさを表す。
【0038】
回転数制御部33は、判定情報S5と、実回転数情報S1とに基づいて、駆動指令信号Scを生成して出力する。回転数制御部33には、実回転数情報S1が入力される。また、回転数制御部33には、モータ電流情報S2が入力される。また、回転数制御部33には、外部から入力指令回転数Ssが入力される。回転数制御部33は、状態判定部34に、同期モータ10についての状態情報S3を出力する。状態情報S3には、例えば、実回転数情報S1と、モータ電流情報S2と、駆動指令信号Scとが含まれる。回転数制御部33には、状態判定部34から出力された計時情報S4と判定情報S5とが入力される。
【0039】
状態判定部34は、状態情報S3に基づいて、同期モータ10が異常状態であるか否かを判定し、判定情報S5を出力する。状態判定部34には、回転数制御部33から出力された状態情報S3が入力される。状態判定部34には、過電流状態を判定するための過電流閾値(第1電流閾値、第2電流閾値、第3電流閾値)や、回転数について判定を行うための回転数閾値(第1回転数閾値、第2回転数閾値)が設定されている。状態判定部34は、例えば、クロック信号等を計数することにより計時を行うことができる。状態判定部34は、後述のようにして同期モータ10が異常状態であるか否かを判定する。そして、判定結果に対応する判定情報S5と、計時情報S4とを出力する。
【0040】
モータ制御部35は、駆動指令信号Scに基づいて駆動制御信号C1を出力する。すなわち、モータ制御部35は、駆動指令信号Scに基づいて駆動制御信号C1を生成し、生成した駆動制御信号C1をモータ駆動部9のプリドライブ回路4に出力する。
【0041】
次に、モータ駆動制御装置1の動作について説明する。同期モータ10の起動時において、モータ駆動制御装置1は、大まかに、通電タイミング調整を行った後、1センサ駆動を行って通常駆動へと移行する。
【0042】
モータ駆動制御装置1は、同期モータ10の起動時において、同期モータ10の強制転流を行う。この同期モータ10の起動時に、モータ駆動制御装置1は、通電タイミング調整を行う。すなわち、制御回路部3は、同期モータ10の起動時に、位置信号に基づいて通電相を調整することにより、位置信号の位相の変化タイミングと通電相とを適合させる。すなわち、制御回路部3は、同期モータ10のロータの回転と各通電相の通電タイミングとの同期をとる。そして、モータ駆動制御装置1は、1センサ駆動(1センサ方式による同期モータ10の通常駆動)を行う。すなわち、制御回路部3は、位置信号の周期に応じて駆動制御信号C1を出力する(通常駆動を開始する)。これにより、制御回路部3は、モータ駆動部9により通電されるコイルLu,Lv,Lwの通電相を、所定の順序で切り替える。
【0043】
ここで、本実施の形態において、制御回路部3は、同期モータ10の起動を開始するとき、後述するように、位置信号に基づいて求めた実回転数に応じて、指令回転数を決定する処理を行う。また、制御回路部3は、所定の判定条件に基づいて、同期モータ10が異常状態であるか否かを判定する処理を行う。制御回路部3は、同期モータ10が異常状態であると判定したとき、駆動制御信号C1をモータ駆動部9に出力することにより、同期モータ10を停止させる制御を行う。
【0044】
なお、本実施の形態において、異常状態とは、同期モータ10の起動成功時の回転方向とは逆の方向にロータが回転する逆回転状態を含む。
【0045】
また、異常状態とは、同期モータ10がハンチング状態である状態を含むようにすることも可能である。ハンチング状態は、モータを駆動させるための駆動指令がある場合において、モータのロータが特定の回転位置より先には回転しないまま、特定の回転位置とその手前の位置との間で往復回転動作を繰り返し、モータが完全に停止するには至らなくなった状態をいう。例えば、モータによりファン等の被駆動体を回転させる場合において、被駆動体が、順方向に回転して特定の回転位置まで来たときに障害物などに当たり、その反動でわずかに逆回転し、再びモータの駆動力により障害物などに当たるまで順方向に回転することを繰り返すような場合に、ハンチング状態となる。
【0046】
すなわち、本実施の形態において、制御回路部3は、所定の判定条件に基づいて、同期モータ10がハンチング状態又は逆回転状態であるか否かを判定する。同期モータ10がハンチング状態又は逆回転状態であると判定したとき、制御回路部3は、同期モータ10を停止させる。回転数制御部33が通電停止指令を行うための駆動指令信号Scを出力することにより、モータ制御部35が、駆動制御信号C1をモータ駆動部9に出力する。なお、本実施の形態において、異常状態は、少なくともロータの逆回転状態を含むものであるが、ハンチング状態を検出対象として含めるか否かは特に限定しない。
【0047】
本実施の形態において、所定の判定条件は、同期モータ10に流れる電流の大きさに関する条件を含む。具体的には、所定の判定条件は、同期モータ10が過電流状態であるか否かを含む。
【0048】
また、所定の判定条件は、所定の期間における実回転数の大きさに関する条件を含む。具体的には、所定の判定条件は、所定の期間に実回転数が第1回転数閾値未満であるか否かを含む。所定の期間は、例えば、第1のタイミングT1(同期モータ10の起動を開始してから第1所定時間が経過したタイミング)から第2のタイミングT2(同期モータ10の起動を開始してから第1所定時間が経過し、さらに第2所定時間が経過したタイミング)までの期間である。すなわち、所定の判定条件は、第1のタイミングT1から第2のタイミングT2までに、実回転数が第1回転数閾値未満であるか否かを含む。
【0049】
制御回路部3において、状態判定部34は、第1のタイミングT1から第2のタイミングT2までの期間(所定の期間の一例)について、同期モータ10が過電流状態であり、かつ、同期モータ10の実回転数が所定値未満(第1回転数閾値未満)であるとき、同期モータ10が異常状態であると判定する。すなわち、制御回路部3は、所定の期間において、同期モータ10が過電流状態であり、かつ、同期モータ10の実回転数が所定値未満であるとき、所定の判定条件が満たされた(所定の停止条件が成立した)と判定する。制御回路部3は、このように同期モータ10が過電流状態であり、かつ、同期モータ10の実回転数が所定値未満であるとき、同期モータ10を停止させる制御を行う。
【0050】
同期モータ10が過電流状態であるか否かは、次のようにして判定される。制御回路部3は、同期モータ10の起動を開始してから第1のタイミングT1の前まで、同期モータ10に流れる電流と、第1電流閾値との比較結果に基づいて同期モータ10が過電流状態であるか否かを判定する。また、制御回路部3は、第1のタイミングT1から、同期モータ10に流れる電流と、第1電流閾値よりも小さい第2電流閾値との比較結果に基づいて同期モータ10が過電流状態であるか否かを判定する。この場合、具体的には、制御回路部3は、第1のタイミングT1から第2のタイミングT2まで、同期モータ10に流れる電流と第2電流閾値との比較結果に基づいて同期モータ10が過電流状態であるか否かを判定する。制御回路部3は、第2のタイミングT2より後においては、同期モータ10に流れる電流と第2電流閾値よりも大きい第3電流閾値との比較結果に基づいて同期モータ10が過電流状態であるか否かを判定する。これらの判定は、例えば状態判定部34によって行われる。
【0051】
本実施の形態においては、第1のタイミングT1から第2のタイミングT2までの期間に、状態判定部34は、同期モータ10に流れる電流が第2電流閾値に到達した回数が所定の回数よりも多いとき、同期モータ10が過電流状態であると判定する。状態判定部34は、同期モータ10に流れる電流が第2電流閾値に到達した回数を過電流カウンタによってカウントし、上記の判定を行う。換言すると、第1のタイミングT1から第2のタイミングT2までの期間においては、状態判定部34は、同期モータ10に流れる電流が第2電流閾値に到達しても、必ずしも過電流状態であるとは判定しない。
【0052】
図2は、同期モータ10の起動時に行われる制御回路部3の動作を説明するフローチャートである。
【0053】
図2に示されるように、制御回路部3において、状態判定部34は、同期モータ10の起動が開始されると、ステップS11において、第1のタイミングT1の計時を行うためのカウントを開始する。
【0054】
ステップS12において、状態判定部34は、カウントを開始してから第1所定時間が経過したか否かを判断する。すなわち、同期モータ10の起動を開始してから第1所定時間が経過したか否か(第1のタイミングT1が到来したか否か)を判断する。第1所定時間が経過した場合(YES)、ステップS13に進む。第1所定時間が経過していない場合(NO)、ステップS12の動作を一定周期毎に繰り返す。
【0055】
なお、第1のタイミングT1が到来するまでに、同期モータ10に流れる電流が第1電流閾値に到達した場合には、状態判定部34は、同期モータ10が過電流状態であると判定する。この場合、状態判定部34は、同期モータ10が異常状態であると判定する。これにより、制御回路部3によって、同期モータ10への通電を停止させる制御が行われる。
【0056】
ステップS13において、状態判定部34は、第1のタイミングT1から第2のタイミングT2までの期間(所定の期間)において、過電流状態の判定を行うための過電流閾値の設定を行う。すなわち、本実施の形態においては、第1電流閾値から、第1電流閾値よりも低い第2電流閾値に、過電流閾値を変更する。
【0057】
ステップS14において、状態判定部34は、第2のタイミングT2の計時を行うためのカウントを開始する。
【0058】
ステップS15において、状態判定部34は、同期モータ10に流れる電流が第2電流閾値に到達したか否かを判断する。電流が第2電流閾値に到達した場合には、ステップS16に進み、到達していない場合には、ステップS17に進む。
【0059】
ステップS16において、状態判定部34は、過電流カウンタをインクリメントする(過電流カウンタアップ)。なお、このとき、制御回路部3は、モータへの通電を一時的に停止させる。
【0060】
ステップS17において、状態判定部34は、計時カウントを開始してから第2所定時間が経過したか否かを判断する。すなわち、同期モータ10の起動を開始してから第1所定時間が経過し、さらに第2所定時間が経過したか否か(第2のタイミングT2が到来したか否か)を判断する。第2所定時間が経過した場合(YES)、ステップS18に進む。第2所定時間が経過していない場合(NO)、モータへの通電を行ってステップS15からの処理を行う。ステップS15からの処理は、例えば、一定周期(例えば2ミリ秒)毎に行われればよい。
【0061】
ステップS18において、状態判定部34は、第2のタイミングT2より後における過電流閾値(第3電流閾値)を設定する。第3電流閾値は、
同期モータ
10が定常駆動している状態を想定した過電流閾値として、第2電流閾値よりも大きい値に設定される。なお、本実施の形態においては、第3電流閾値は、具体例として、元の第1電流閾値と同じ値となるように変更している(
図6及び以降の図参照)。ただし、第3電流閾値は、必ずしも、第1電流閾値と同じである必要はない。なお、ステップS18の処理は、この順番に限られず、ステップS20,S21の後に行われるようにしてもよい。
【0062】
ステップS19において、状態判定部34は、後述するように、第1のタイミングT1から第2のタイミングT2までの期間について、所定の判定条件が満たされるか否か、すなわち所定の停止条件が成立するか否かを判断する。判定条件が成立したときには、状態判定部34から判定結果に対応する判定情報S5が出力され、ステップS20に進む。他方、判定条件が成立していないときには、その旨の判定情報S5が出力され、ステップS21に進む。
【0063】
ステップS20において、回転数制御部33には、状態判定部34から出力された、判定条件が成立したことに対応する判定情報S5が入力される。そうすると、回転数制御部33は、同期モータ10への通電が停止されるように、駆動指令信号Scを出力する。これにより、モータ制御部35から駆動制御信号C1が出力され、同期モータ10の駆動が停止される。
【0064】
ステップS21において、回転数制御部33は、同期モータ10への通電が行われるように、後述のようにして決定した指令回転数と実回転数とに基づいて、駆動指令信号Scを出力する。
【0065】
なお、ステップS21の動作が行われ、その後同期モータ10の駆動が継続して行われるとき、同期モータ10に流れる電流が第3電流閾値(本実施の形態では、第1電流閾値と同じ値)に到達した場合には、状態判定部34は、同期モータ10が過電流状態であると判定する。
【0066】
図3は、第1のタイミングT1から第2のタイミングT2までの期間について所定の判定条件が満たされるか否かの判断手順について説明するフローチャートである。
【0067】
ステップS31において、状態判定部34は、過電流カウンタが所定値(例えば1以上の整数)以上であるか否かを判断する。過電流カウンタが所定値以上であれば、ステップS32に進む。
【0068】
ステップS32において、状態判定部34は、実回転数が所定の第1回転数閾値未満であるか否かを判断する。実回転数が第1回転数閾値未満で
あれば、ステップS33に進む。
【0069】
ステップS33において、状態判定部34は、判定条件が成立したと判定する。すなわち、状態判定部34は、同期モータ10が異常状態であると判定する。
【0070】
他方、ステップS31において過電流カウンタが所定値以上でないとき(NO)、又はステップS32において回転数が第1回転数未満でないとき(NO)、ステップS34において、状態判定部34は、判定条件が不成立であると判断する。すなわち、状態判定部34は、同期モータ10が異常状態ではないと判定する。
【0071】
このようにして第1のタイミングT1から第2のタイミングT2までの期間について判定条件が満たされるか否かの判断が状態判定部34で行われることにより、
図2のステップS19のように判定が行われる。
【0072】
本実施の形態においては、回転数制御部33は、以下のようにして、位置信号に基づいて求めた実回転数に応じて、指令回転数を決定する処理を行う。すなわち、制御回路部3は、同期モータ10の起動を開始するとき、同期モータ10の実回転数が第2回転数閾値よりも小さいときには、指令回転数を制御回路部3に入力される入力指令回転数に決定する。また、同期モータ10の実回転数が第2回転数閾値以上であるときには、指令回転数を予め設定された設定回転数に決定する。本実施の形態において、予め設定された設定回転数は、第2回転数閾値と同一であるが、これに限られるものではない。
【0073】
図4は、指令回転数を決定する処理について説明するフローチャートである。
【0074】
図4に示されるように、同期モータ10の起動が開始されるとき、ステップS41において、回転数制御部33は、指令回転数決定処理を行う。これにより、指令回転数が、設定回転数以上に維持される。
【0075】
図5は、指令回転数決定処理について説明するフローチャートである。
【0076】
図5に示されるように、ステップS51において、回転数制御部33は、同期モータ10の実回転数が、第2回転数閾値(本実施の形態においては、設定回転数)以上であるか否かを判断する。
【0077】
ステップS51において実回転数が設定回転数以上であるとき(YES)、ステップS52において、回転数制御部33は、指令回転数を制御回路部3に入力される入力指令回転数Ssに決定する。
【0078】
他方、ステップS51において実回転数が設定回転数以上でないとき(NO)、ステップS53において、回転数制御部33は、指令回転数を予め設定された設定回転数に決定する。
【0079】
このように指令回転数決定処理が行われることにより、指令回転数が設定回転数以上に維持される。
【0080】
図4に戻って、ステップS42において、後述のようにして回転数制御部33は、状態判定部34から出力される計時情報S4に基づき、第2のタイミングT2が到来したか否かを判断する。第2のタイミングT2が到来していないときには(NO)、ステップS41の処理を行う。第2のタイミングT2が到来すると(YES)、ステップS43の処理を行う。
【0081】
ステップS43において、回転数制御部33は、指令回転数を制御回路部3に入力される入力指令回転数Ssに決定する。すなわち、制御回路部3は、第2のタイミングT2において同期モータ10が異常状態であると判定しなかったとき、その後は、指令回転数を制御回路部3に入力される入力指令回転数Ssに決定してモータ駆動部9を制御する。
【0082】
図6は、同期モータ10の起動時の第1の動作例を示すタイミングチャートである。
【0083】
図6及び以降の図においては、上から、過電流閾値、モータ電流、指令回転数、実回転数のそれぞれの推移が示されている。時刻t0は同期モータ10の起動開始時である。時刻t1は、第1のタイミングT1すなわち時刻t0から第1所定時間が経過した時刻である。時刻t2は、すなわち第2のタイミングT2すなわち時刻t1から第2所定時間が経過した時刻である。本実施の形態において、第1所定時間は、例えば1秒であり、第2所定時間は、例えば3秒である。第1所定時間や第2所定時間はこれに限られず、適宜設定することができる。
【0084】
図6及び以降の図に示される動作例において、第1電流閾値は、例えば4アンペアであり、第2電流閾値は、例えば2アンペアである。第1電流閾値は、同期モータ10の巻線やその周囲の部材等が過熱されて同期モータ10が破損することがないような値に設定されている。また、先述したように、本実施の形態においては、第3電流閾値は、第1電流閾値と同じ値としている。第1回転数閾値は、例えば14000rpm(回転/分)である。第2回転数閾値は、例えば20000rpmである。入力指令回転数Ssは、例えば10000rpmであるとする。設定回転数は、例えば20000rpmである。
【0085】
なお、第1−3電流閾値や、設定回転数は、これらの値に限られず、適宜設定することができる。例えば、第1のタイミングT1から第2のタイミングT2までの期間において異常状態であるか否かを的確に判定することができるように、設定回転数を低すぎない値に設定し、また、第2電流閾値は、異常時に過電流と判定しやすい値に設定することができる。
【0086】
図6に示される第1の動作例は、起動時の実回転数が第1回転数閾値未満であるが、異常状態とは判定されない場合の例である。時刻t0に起動が開始されると、入力指令回転数Ssが設定回転数に満たないので、指令回転数を設定回転数に決定する。決定された指令回転数で回転するように、同期モータ10が通電され、同期モータ10が加速する。時刻t1において、第1電流閾値から第2電流閾値に
過電流閾値が下げられ、モータ電流が第2電流閾値に到達するか否かが判断される。時刻t2になると、過電流閾値が、第2電流閾値から、第1電流閾値(第3電流閾値の一例)に戻される。時刻t2において、状態判定部34によって、所定の判定条件が満たされたか否かが判断される。この場合、時刻t1から時刻t2までの間に(第1のタイミングT1から第2のタイミングT2までの間に)、実回転数が第1回転数閾値に達していないが、過電流は発生していない。そのため、判定条件が不成立であると判断され、異常状態であるとは判定されない。したがって、時刻t2以降は、指令回転数を入力指令回転数Ssに決定して、同期モータ10が駆動される。
【0087】
図7は、同期モータ10の起動時の第2の動作例を示すタイミングチャートである。
【0088】
第2の動作例は、起動時において第1のタイミングT1から第2のタイミングT2までの間に過電流が発生するが、異常状態であるとは判定されない場合の例である。
図7に示されるように、時刻t0に起動が開始されると、第1の動作例と同様に、同期モータ10が通電され、同期モータ10が加速する。時刻t1において、第1電流閾値から第2電流閾値に
過電流閾値が下げられ、モータ電流が第2電流閾値に到達するか否かが判断される。第2の動作例では、時刻t2が到来するまでに、モータ電流が第2電流閾値に達し、過電流カウンタがインクリメントされる。時刻t2が到来するまでに、モータ電流が第2電流閾値に達する度に、モータ電流の通電が一時停止されてモータ電流が若干下がった後に再度通電されることが繰り返される。モータ電流が第2電流閾値に達する度に、過電流カウンタがインクリメントされる。時刻t2になると、過電流閾値が、第2電流閾値から、第1電流閾値(第3電流閾値の一例)に戻される。時刻t2に、状態判定部34により、所定の判定条件が満たされたか否かが判断される。この場合、時刻t1から時刻t2までの間に、実回転数が第1回転数閾値に達し、第1回転数閾値を超えている。そのため、過電流状態であると判定さる場合であっても、判定条件が不成立であると判断され、異常状態であるとは判定されない。したがって、時刻t2以降は、指令回転数を入力指令回転数Ssに決定して、同期モータ10が駆動される。
【0089】
図8は、同期モータ10の起動時の第3の動作例を示すタイミングチャートである。
【0090】
第3の動作例は、起動時において第1のタイミングT1から第2のタイミングT2までの間に、過電流が発生せず、かつ、実回転数が第1回転数閾値に達しており、異常状態であるとは判定されない場合の例である。
図8に示されるように、時刻t0に起動が開始されると、第1の動作例と同様に、同期モータ10が通電され、同期モータ10が加速する。時刻t1において、第1電流閾値から第2電流閾値に
過電流閾値が下げられ、モータ電流が第2電流閾値に到達するか否かが判断される。時刻t2になると、過電流閾値が、第2電流閾値から、第1電流閾値(第3電流閾値の一例)に戻される。時刻t2に、状態判定部34により、所定の判定条件が満たされたか否かが判断される。この場合、時刻t1から時刻t2までの間に、過電流は発生していない。また、時刻t1から時刻t2までの間に、実回転数が第1回転数閾値に達し、第1回転数閾値を超えている。そのため、判定条件が不成立であると判断され、異常状態であるとは判定されない。したがって、時刻t2以降は、指令回転数を入力指令回転数Ssに決定して、同期モータ10が駆動される。
【0091】
図9は、同期モータ10の起動時の第4の動作例を示すタイミングチャートである。
【0092】
第4の動作例は、起動時において第1のタイミングT1から第2のタイミングT2までの間に、過電流が所定回数以上発生し、かつ、実回転数が第1回転数閾値に達しておらず、異常状態であると判定される場合の例である。
図9に示されるように、時刻t0に起動が開始されると、第1の動作例と同様に、同期モータ10が通電され、同期モータ10が加速する。時刻t1において、第1電流閾値から第2電流閾値に
過電流閾値が下げられ、モータ電流が第2電流閾値に到達するか否かが判断される。第4の動作例では、第2の動作例と同様に、時刻t2が到来するまでに、モータ電流が第2電流閾値に達し、モータ電流が第2電流閾値に達する度に、過電流カウンタがインクリメントされる。時刻t2になると、過電流閾値が、第2電流閾値から、第1電流閾値(第3電流閾値の一例)に戻される。時刻t2に、状態判定部34により、所定の判定条件が満たされたか否かが判断される。この場合、時刻t1から時刻t2までの間に、過電流が所定回数以上発生しており、過電流状態であると判定される。また、時刻t1から時刻t2までの間に、実回転数が第1回転数閾値に達していない。そのため、判定条件が成立したと判断され、異常状態であると判定される。したがって、時刻t2以降は、通電が行われず、モータ電流がゼロとなる。同期モータ10は減速し、その後停止する。
【0093】
以上説明したように、本実施の形態においては、同期モータ10の起動時において、逆回転状態及びハンチング状態を含む異常状態を精度良く検出することができる。
【0094】
第1のタイミングT1から第2のタイミングT2までの過電流状態を判定するための期間において、過電流閾値が通常の第1電流閾値から、それより低い第2電流閾値に変更される。したがって、通常とは異なる異常状態であることに起因する過電流状態が発生することを確実に検出することができる。
【0095】
異常状態が判定される期間が開始される第1のタイミングT1の前に、第1所定期間が設けられている。第1所定期間は、同期モータ10への通電開始直後の電流変動(オーバーシュートなど)があってもこの期間内に電流変動が収束するように設定されている。そのため、同期モータ10への通電開始直後の電流変動があっても、第1のタイミングT1から第2のタイミングT2までの異常状態の判定期間にはその影響を受けず、安定した状態で正確に異常状態であるか否かを判定することが可能となる。
【0096】
第2所定時間すなわち第1のタイミングT1から第2のタイミングT2までの期間(所定の期間の一例)内に第1電流閾値に到達した回数が所定回数以上となった場合に過電流状態と判定されるので、ノイズや一時的な外乱等の影響を受けにくく、高い判定精度で異常状態の判定が行われる。
【0097】
異常状態であるか否かを判定するための所定の判定条件に、実回転数が第1回転数閾値未満であるか否かが含まれているので、判定の精度を高くすることができる。例えば同期モータ10が起動開始時に逆回転をしている場合、実回転数が第1回転数閾値以上にならないため、これを異常状態であるとして判定できる。また、ハンチング状態であるとき、過電流状態と判定されやすく、かつ、実回転数が上がらずに第1回転数閾値以上にならないため、これを異常状態であるとして判定できる。
【0098】
同期モータ10が正転しているか逆転しているかを判断するためにコイル電圧を監視する必要がなくなるため、そのための回路を追加する必要がなくなる。したがって、モータ駆動制御装置1や同期モータ10の小型化や部品点数削減を実現することができる。
【0099】
本実施の形態においては、起動開始時に実回転数が第2回転数閾値以上のとき、指令回転数が第2回転数閾値以上の高い設定回転数に設定される。そのため、同期モータ10が逆回転時で回転させられている場合、負荷が通常よりも大きくかかることとなり、多くの電流が流れる。そうすると、特に、所定の期間である、第1のタイミングT1から第2のタイミングT2までの期間において、過電流状態と判定されやすくなるため、異常状態であることを容易にかつ速やかに検出できる。同期モータ10が起動開始時に正回転している場合は、負荷が小さくなるため、過電流制限にはかからない。
【0101】
モータ駆動制御装置は、上述の実施の形態やその変形例に示されるような回路構成に限定されない。本発明の目的に適合するように構成された、様々な回路構成が適用できる。
【0102】
図10は、同期モータ10の起動時の第5の動作例を示すタイミングチャートである。
【0103】
なお、指令回転数決定処理において、指令回転数を常に入力指令回転数Ssと決定するようにしてもよい。この場合において、入力指令回転数Ssが高いとき(本例では、25000rpm)には、指令回転数を、あえて設定回転数に変更せずに、入力指令時回転数に決定するようにしてもよい。
図10に示されるように、この場合においても、時刻t1から時刻t2までの間に、実回転数が第1回転数閾値に達しておらず、過電流状態であるとも判定されないときには、異常状態であるとは判定されない。したがって、時刻t2以降も、指令回転数を入力指令回転数Ssに決定して、同期モータ10が駆動される。
【0104】
また、他の変形例としては、第2所定期間中(第2のタイミングT2が到来するまでの期間)において、過電流の発生が所定回数カウントされ、過電流状態が成立した時点で、異常状態であるか否かの判定が行われるようにしてもよい。このとき、第2のタイミングT2が到来してから判定を行う場合よりも第1回転数閾値を低い回転数として、その時点における実回転数が第1回転数閾値以上であるかを判定するようにしてもよい。
【0105】
また、位置検出器を配置する相は、限定されない。本実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータは、3相のブラシレスモータに限定されず、2相以上の複数相のコイルを備える種々のモータであってもよい。また、例えばFGセンサ等によりモータの回転数を検出するモータなども、本実施の形態のモータ駆動制御装置の駆動制御対象とすることができる。
【0106】
モータが過電流状態であることのみを所定の判定条件として、異常状態であるか否かが判定されるようにしてもよい。また、他の条件が加えられていてもよい。
【0107】
過電流状態であるか否かを、過電流が発生した回数のカウントアップとカウントダウンとを組み合わせて判定するようにしてもよい。
【0108】
上述のフローチャートなどは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではなく、例えば、各ステップの順番が変更されたり各ステップ間に他の処理が挿入されたりしてもよいし、処理を並列化してもよい。
【0109】
上述の実施の形態における処理の一部又は全部が、ソフトウエアによって行われるようにしても、ハードウエア回路を用いて行われるようにしてもよい。例えば、制御
回路部は、マイコンに限定されない。制御
回路部の内部の構成は、少なくとも一部がソフトウエアで処理されるようにしてもよい。
【0110】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。