(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定の範囲は、前記モータのロータの1回転あたりの通電切替回数nに対応する電磁振動のn次成分と前記モータの固有振動数とが共振現象を生じる前記モータの回転速度を含む、請求項3に記載のモータ駆動制御装置。
前記制御回路部は、前記低下制御を実行しつつ前記駆動制御信号を出力することで、前記モータのロータの1回転あたりの通電切替回数nにmを乗じた次数の(m×n)次成分を含む電磁振動を発生させる、請求項1から4のいずれかに記載のモータ駆動制御装置。
前記制御回路部は、前記通電相の切り替えが行われてから、前記切り替え周期の2分の1の期間が経過した時に、前記低下制御を実行する、請求項1から5のいずれかに記載のモータ駆動制御装置。
前記制御回路部は、前記通電相の切り替えを行ってから次に前記通電相の切り替えを行うまでの時間を前記通電相の切り替えを行う度に計測し、前回計測された時間を前記切り替え周期として前記低下制御を実行する、請求項1から6のいずれかに記載のモータ駆動制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態におけるモータ駆動制御装置について説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるモータ駆動制御装置の回路構成を示すブロック図である。
【0021】
図1に示すように、モータ駆動制御装置1は、モータ20を駆動させる。本実施の形態において、モータ20は、例えば3相のブラシレスモータである。モータ駆動制御装置1は、モータ20の3相のコイルLu,Lv,Lwに周期的に駆動電流を流すことで、モータ20を回転させる。
【0022】
モータ駆動制御装置1は、モータ駆動部2と、制御回路部4とを有している。なお、
図1に示されているモータ駆動制御装置1の構成要素は、全体の一部であり、モータ駆動制御装置1は、
図1に示されたものに加えて、他の構成要素を有していてもよい。
【0023】
本実施の形態において、モータ駆動制御装置1は、その全部がパッケージ化された集積回路装置(IC)である。なお、モータ駆動制御装置1の一部が1つの集積回路装置としてパッケージ化されていてもよいし、他の装置と一緒にモータ駆動制御装置1の全部又は一部がパッケージ化されて1つの集積回路装置が構成されていてもよい。
【0024】
モータ駆動部2は、インバータ回路2a及びプリドライブ回路2bを有する。モータ駆動部2は、制御回路部4から出力された駆動制御信号Sdに基づいて、モータ20に駆動信号を出力し、モータ20を駆動させる。モータ駆動部2は、モータ20の複数相のコイルLu,Lv,Lwを選択的に通電する。
【0025】
プリドライブ回路2bは、制御回路部4による制御に基づいて、インバータ回路2aを駆動するための出力信号を生成し、インバータ回路2aに出力する。インバータ回路2aは、プリドライブ回路2bから出力された出力信号に基づいてモータ20に駆動信号を出力し、モータ20が備えるコイルLu,Lv,Lwに通電する。インバータ回路2aは、例えば、直流電源Vccの両端に設けられた2つのスイッチ素子の直列回路の対が、コイルLu,Lv,Lwの各相(U相、V相、W相)に対してそれぞれ配置されて構成されている。2つのスイッチ素子の各対において、スイッチ素子同士の接続点に、モータ20の各相の端子が接続されている(不図示)。プリドライブ回路2bは、出力信号として、例えば、インバータ回路2aの各スイッチ素子に対応する6種類の信号Vuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlを出力する。これらの信号Vuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlが出力されることで、それぞれの信号Vuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlに対応するスイッチ素子がオン、オフ動作を行う。これにより、モータ20に駆動信号が出力されて、モータ20の各相のコイルLu,Lv,Lwに電流が流される(不図示)。
【0026】
本実施の形態において、制御回路部4には、速度指令信号Scが入力される。制御回路部4は、それらに基づいてモータ20の駆動制御を行う。
【0027】
速度指令信号Scは、例えば、制御回路部4の外部から入力される。速度指令信号Scは、モータ20の回転速度に関する信号である。例えば、速度指令信号Scは、モータ20の目標回転速度に対応するPWM(パルス幅変調)信号である。換言すると、速度指令信号Scは、モータ20の回転速度の目標値に対応する情報である。なお、速度指令信号Scとして、クロック信号が入力されてもよい。
【0028】
また、本実施の形態において、制御回路部4には、モータ20から、3つのホール信号(位置検出信号の一例)Hu,Hv,Hwが入力される。ホール信号Hu,Hv,Hwは、例えば、モータ20に配置された3つのホール素子25u,25v,25wの出力である。ホール信号Hu,Hv,Hwは、モータ20のロータの回転に対応する信号である。制御回路部4は、ホール信号Hu,Hv,Hwを用いてモータ20の回転状態を検出し、モータ20の駆動を制御する。すなわち、制御回路部4は、ホール信号Hu,Hv,Hwを用いてモータ20のロータの実際の回転数に関する実回転数情報を得て、モータ20の駆動を制御する。また、制御回路部4は、ホール信号Hu,Hv,Hwを用いてモータ20のロータの回転位置を検出し、モータ20の駆動を制御する。
【0029】
3つのホール素子25u,25v,25w(以下、これらをまとめてホール素子25ということがある)は、例えば、互いに略等間隔(隣り合うものと120度の間隔で)でモータ20の回転子の回りに配置されている。ホール素子25u,25v,25wは、それぞれ、ロータの磁極を検出し、ホール信号Hu,Hv,Hwを出力する。
【0030】
なお、制御回路部4には、このようなホール信号Hu,Hv,Hwに加えて、又はホール信号Hu,Hv,Hwに代えて、モータ20の回転状態に関する他の情報が入力されるように構成されていてもよい。例えば、モータ20の回転子の回転に対応するFG信号として、回転子の側にある基板に設けたコイルパターンを用いて生成される信号(パターンFG)が入力されるようにしてもよい。また、モータ20の各相(U、V、W相)に誘起する逆起電圧を検出する回転位置検出回路の検出結果に基づいてモータ20の回転状態が検知されるように構成されていてもよい。エンコーダやレゾルバなどを設け、それによりモータ20の回転速度等の情報が検出されるようにしてもよい。
【0031】
制御回路部4は、例えば、マイクロコンピュータやデジタル回路等で構成されている。制御回路部4は、実回転数情報と、速度指令信号Scとに基づいて、モータ20を駆動させるための駆動制御信号Sdを出力する。具体的には、制御回路部4は、ホール信号Hu,Hv,Hwと、速度指令信号Scとに基づいて、駆動制御信号Sdをプリドライブ回路2bに出力する。制御回路部4は、駆動制御信号Sdを出力することで、モータ20が速度指令信号Scに対応する回転数で回転するようにモータ20の回転制御を行う。すなわち、制御回路部4は、モータ20を駆動させるための駆動制御信号Sdをモータ駆動部2に出力し、モータ20の回転制御を行う。モータ駆動部2は、駆動制御信号Sdに基づいて、モータ20に駆動信号を出力してモータ20を駆動させる。
【0032】
制御回路部4は、モータ駆動部2にPWM(パルス幅変調)信号である駆動制御信号Sdを出力することで、モータ駆動部2により通電される複数相のコイルLu,Lv,Lwの通電相を所定の順序で切り替えながら、モータの駆動を制御する。具体的には、モータ20は3相のコイルLu,Lv,Lwを有しており、6通りの通電相の組み合わせ(通電パターン)がある。制御回路部4は、ホール信号Hu,Hv,Hwの位相の変化に応じて、6通りの通電パターンを、モータ20を回転させる方向に対応する所定の順序で切り替える。
【0034】
図2は、制御回路部4の構成を示すブロック図である。
【0035】
図2に示すように、制御回路部4は、回転数算出部31と、通電期間監視部32と、PWM指令部33と、設定デューティ変更指示部34と、PWM信号生成部35とを有している。詳細は後述するが、PWM指令部33は、モータ20のロータの位置に対応するホール信号Hu,Hv,Hwに基づいて、駆動制御信号Sdのデューティ比を設定する。通電期間監視部32は、ホール信号Hu,Hv,Hwに基づいて、コイルLu,Lv,Lwの通電相の切り替え(通電切替)が行われてから経過した時間を監視する。設定デューティ変更指示部34は、通電期間監視部32による通電相の切り替えが行われてから経過した時間の監視結果に基づいてPWM指令部33に指示信号を出力することで、一時的に、PWM指令部33に駆動制御信号Sdのデューティ比を低下させる。
【0036】
このような構成により、制御回路部4は、コイルLu,Lv,Lwの通電相の切り替えが行われてから、通電相の切り替え周期のm分の1(mは、2以上の整数)の期間が経過する度に、一時的に駆動制御信号Sdのデューティ比を低下させる低下制御を実行する。換言すると、制御回路部4は、通電相の切り替えが行われてから経過した時間を計測する計測ステップと、通電相の切り替えが行われてから通電相の切り替え周期のm分の1(mは、2以上の整数)の期間が経過する度に、一時的に駆動制御信号Sdのデューティ比を低下させる低下制御ステップとを含むモータの駆動制御方法を実行する。
【0037】
なお、以下の説明において、通電期間とは、コイルLu,Lv,Lwの通電相の切替えが行われてから次の通電相への切替えが行われるまでの期間をいう。
【0038】
回転数算出部31には、ホール信号Hu,Hv,Hwが入力される。回転数算出部31は、入力されたホール信号Hu,Hv,Hwに基づいて、ロータの実回転数情報を生成して出力する。すなわち、回転数算出部31は、モータ20のロータの実際の回転数に関する実回転数情報を出力する。
【0039】
PWM指令部33には、回転数算出部31から出力された実回転数情報と、速度指令信号Sc(図示せず)とが入力される。PWM指令部33は、実回転数情報と、速度指令信号Scとに基づいて、設定デューティを出力する。設定デューティは、駆動制御信号Sdを出力するためのデューティ比を示す信号である。PWM指令部33は、例えば、速度指令信号Scと、実回転数情報とに基づいて、モータ20の回転速度が速度指令信号Scに対応するものとなるように、設定デューティを生成する。すなわち、PWM指令部33は、モータ20のロータの位置に対応するホール信号Hu,Hv,Hwに基づいて、駆動制御信号Sdのデューティ比を設定する。なお、設定デューティは、通電する通電相に対応して出力される。すなわち、ホール信号Hu,Hv,Hwに基づいて、ロータの位置に対応する通電パターンで通電が行われるように、設定デューティが出力される。例えば、回転数算出部31でホール信号Hu,Hv,Hwに基づいてロータの位置を示す信号が生成され、PWM指令部33が、その信号に応じて、通電する通電相に対応する設定デューティを出力する。
【0040】
設定デューティは、PWM信号生成部35と、設定デューティ変更指示部34とに出力される。PWM信号生成部35は、入力された設定デューティに基づいて、モータ駆動部2を駆動させるためのPWM信号S2を生成する。PWM信号S2は、例えば、デューティ比が設定デューティと同一となる信号である。換言すると、PWM信号S2は、設定デューティに対応するデューティ比を有する信号である。モータ駆動制御装置1及びモータ20が通常の動作状態で駆動されているとき、PWM信号生成部35から出力されたPWM信号S2が、駆動制御信号Sdとして制御回路部4からモータ駆動部2に出力される。これにより、モータ駆動部2からモータ20に駆動信号が出力され、モータ20が駆動される。また、ホール信号Hu,Hv,Hwに基づいて、ロータの位置に応じてコイルLu,Lv,Lwの通電相が切り替えられる。
【0041】
通電期間監視部32には、ホール信号Hu,Hv,Hwが入力される。通電期間監視部32は、ホール信号Hu,Hv,Hwに基づいて、コイルLu,Lv,Lwの通電相の切り替えが行われてから経過した時間を監視する。本実施の形態においては、通電期間監視部32は、後述するように、通電相の切り替えが行われたとき、それまでの通電期間(第1通電期間)dt1の計測を終了し、切り替え後の通電期間(第2通電期間)dt2の計測を開始する。第1通電期間dt1は、電気角360度の6分の1が経過するのに相当する時間である。第2通電期間dt2は、現在の通電期間が開始してから経過した時間である。
【0042】
また、通電期間監視部32は、通電相の切り替えが行われてから経過した時間の監視結果に基づいて、制御タイミング信号S1を出力する。制御タイミング信号S1は、上述の低下制御を行うための信号であり、設定デューティ変更指示部34に入力される。通電期間監視部32は、通電相の切り替えが行われてから通電相の切り替え周期のm分の1(mは、2以上の整数)の期間が経過する度に、制御タイミング信号S1を出力する。通電期間監視部32は、第1通電期間dt1を通電相の切り替え周期として、第2通電期間dt2の計測開始から第1通電期間dt1のm分の1の期間が経過する毎に、制御タイミング信号S1を出力する。すなわち、制御回路部4は、通電相の切り替えを行ってから次に通電相の切り替えを行うまでの時間を通電相の切り替えを行う度に計測し、前回の通電期間において計測された時間である第1通電期間dt1を切り替え周期として、第1通電期間dt1のm分の1の期間が経過する度に低下制御を実行する。
【0043】
本実施の形態においては、通電期間監視部32は、通電相の切り替えが行われてから通電相の切り替え周期の2分の1の期間が経過した時に、制御タイミング信号S1を出力し、制御回路部4は、低下制御を実行する。すなわち、本実施の形態においては、mは2である。通電期間監視部32は、通電相の切替えが行われてから第1通電間隔dt1の半分の期間が経過したとき、制御タイミング信号S1を出力する。
【0044】
なお、通電期間監視部32は、各通電期間において、制御タイミング信号S1の出力を、出力した回数がmから1を減じた回数に達するまで、第1通電期間dt1のm分の1の期間が経過する度に行う。すなわち、例えばmが3であるとき、通電相の切り替えが行われてから第1通電期間dt1の3分の1の期間が経過すると、その通電期間における1回目の制御タイミング信号S1の出力が行われる。そして、1回目の制御タイミング信号S1の出力が行われてからさらに第1通電期間dt1の3分の1の期間が経過すると、その通電期間における2回目の制御タイミング信号S1の出力が行われる。その後、2回目の制御タイミング信号S1の出力が行われてからさらに第1通電期間dt1の3分の1の期間が経過しても、その通電期間においては制御タイミング信号S1が出力されない。本実施の形態においては、mは2であるので、制御タイミング信号S1の出力は、1回のみ行われる。
【0045】
このようにして制御タイミング信号S1が出力されると、設定デューティ変更指示部34により、設定デューティのデューティ比が低くなるように制御が行われる。これにより、制御回路部4から出力される駆動制御信号Sdのデューティ比が一時的に低くなる。
【0046】
すなわち、設定デューティ変更指示部34は、制御タイミング信号S1が入力されたとき、設定デューティ変更指示信号(指示信号の一例)S3をPWM指令部33に出力する。設定デューティ変更指示信号S3は、PWM指令部33に対して、設定デューティのデューティ比の変更を指示する信号である。本実施の形態において、設定デューティ変更指示信号S3は、PWM指令部33に対して、設定デューティのデューティ比を低く切り替えること、及び元のデューティ比に戻すこと、を指示する信号である。
【0047】
また、設定デューティ変更指示部34は、PWM指令部33から出力された設定デューティを監視する。設定デューティ変更指示部34は、設定デューティ変更指示信号S3を出力して設定デューティのデューティ比を低く切り替えるように指示を行ったとき、監視結果に基づいて、設定デューティのデューティ比を元に戻す。設定デューティ変更指示部34は、設定デューティ変更指示信号S3を出力して設定デューティのデューティ比を低く切り替えるように指示を行ったとき、設定デューティ変更指示信号S3を再度出力することにより、設定デューティのデューティ比を元に戻すように指示を行う。
【0048】
なお、本実施の形態において、制御回路部4は、低下制御を行うとき、所定時間だけ駆動制御信号Sdのデューティ比を低下させる。すなわち、設定デューティ変更指示部34は、設定デューティ変更指示信号S3を出力して設定デューティのデューティ比を低く切り替えるように指示を行ったとき、実際にデューティ比が低く変更されたことを確認し、それから所定時間が経過したときに、設定デューティのデューティ比を元に戻す。
【0049】
PWM指令部33は、設定デューティ変更指示信号S3が入力されたとき、それまでの通常時(低下制御を行っていないとき)よりもデューティ比が低い設定デューティを出力する。そして、その後に設定デューティ変更指示信号S3が入力されたとき、元のデューティ比の設定デューティを出力する。
【0050】
PWM指令部33が出力する設定デューティのデューティ比は、通常時には、上述のように、速度指令信号Scに対応する回転速度でモータ20が駆動されるように設定される。他方、設定デューティ変更指示信号S3が出力されたときには、PWM指令部33は、設定デューティのデューティ比を、例えば0パーセントに設定する。なお、低下制御が行われるときの設定デューティのデューティ比は0パーセントに限られない。例えば、通常時よりも低い5パーセント程度に設定されるようにしてもよい。また、通常時の設定デューティのデューティ比よりも所定の割合だけ低いデューティ比に設定されるようにしてもよい。
【0051】
図3は、制御回路部4の動作を示すフローチャートである。
【0052】
図3においては、制御回路部4が行う動作のうち、特に低下制御に関する処理が示されているものである。
【0053】
モータ20の駆動を行っているとき、ステップS11において、制御回路部4は、通電切替要求があるか否かを判断する。通電期間監視部32は、ホール信号Hu,Hv,Hwに基づいて、コイルLu,Lv,Lwの通電相が切り替えられるべきタイミングが到来したときに通電切替要求があると判断する。通電期間監視部32が通電切替要求があると判断すると(YES)、ステップS12に進む。一方、通電期間監視部32が通電切替要求があると判断しない場合(NO)、ステップS11の処理を繰り返す。
【0054】
ステップS12において、通電期間監視部32は、それまでの通電期間の計測を終了する。これにより、通電期間監視部32は、直前の通電期間についての第1通電期間dt1を取得する。
【0055】
ステップS13において、通電期間監視部32は、次の通電期間の計測を開始する。すなわち、通電期間監視部32は、第2通電期間dt2の計測を開始する。
【0056】
ステップS14において、制御回路部4は、通電期間切替要求に応じて、コイルLu,Lv,Lwの通電相を切り替える。
【0057】
ステップS15において、通電期間監視部32は、通電相の切替えが行われてから、通電相の切り替え周期の2分の1の期間が経過したか否かを判断する。具体的には、通電期間監視部32は、通電相の切り替えが行われた後、直前の通電期間である第1通電期間dt1の半分の時間が経過したか否かを判断する。この判断は、第1通電期間dt1と、計測中の第2通電期間dt2とに基づいて行うことができる。第1通電期間dt1の半分の時間が経過していると判断されると(YES)、ステップS16に進む。このとき、通電期間監視部32から設定デューティ変更指示部34に制御タイミング信号S1が出力される。一方、第1通電期間dt1の半分の時間が経過していると判断されない場合(NO)、ステップS15の処理を繰り返す。
【0058】
ステップS16において、設定デューティ変更処理が行われる。設定デューティ変更処理は、主に、設定デューティ変更指示部34と、PWM指令部33とによって行われる。
【0059】
ステップS17において、制御回路部4は、モータ20の駆動を停止させるモータ停止要求があるか否かを判断する。モータ停止要求があったときには(YES)、一連の処理を終了する。このとき、モータ20の駆動が停止される。他方、モータ停止要求がなければ(NO)、ステップS11に戻る。
【0060】
図4は、設定デューティ変更処理を示すフローチャートである。
【0061】
設定デューティ変更処理が開始されると、ステップS31において、制御回路部4は、設定デューティのデューティ比を低くする。すなわち、設定デューティ変更指示部34は、設定デューティ変更指示信号S3を出力する。これにより、PWM指令部33が、デューティ比が通常時よりも低い設定デューティを出力する。
【0062】
ステップS32において、設定デューティ変更指示部34は、PWM指令部33から出力される設定デューティを監視し、設定デューティのデューティ比が低い値になったか否かを判断する。設定デューティのデューティ比が低い値になると(YES)、ステップS33に進む。一方、設定デューティのデューティ比が低い値になっていない場合(NO)、ステップS32の処理を繰り返す。
【0063】
ステップS33において、設定デューティ変更指示部34は、所定時間が経過したか否かを判断する。設定デューティ変更指示部34は、例えば、設定デューティのデューティ比が低い値になった時点から所定時間が経過したか否かを判断する。なお、設定デューティ変更指示部34は、例えば、設定デューティ変更指示信号S3を出力した時点から所定時間が経過したか否かを判断するようにしてもよい。所定時間が経過したと判断されると(YES)、ステップS34に進む。一方、所定時間が経過したと判断されない場合(NO)、ステップS33の処理を繰り返す。
【0064】
ステップS34において、設定デューティ変更指示部34は、設定デューティのデューティ比を元に戻す制御を行う。すなわち、設定デューティ変更指示部34は、設定デューティ変更指示信号S3を出力する。これにより、PWM指令部33が、通常時のデューティ比の設定デューティを出力する。
【0065】
このようにして制御回路部4により低下制御が行われると、低下制御が行われない場合と比較して高い周波数成分を有する電磁振動が発生する。
【0066】
図5は、低下制御が行われない場合のモータ20の駆動電流の波形を示す図である。
図6は、低下制御が行われる場合のモータ20の駆動電流の波形を示す図である。
【0067】
図5及び
図6においては、モータ20の駆動電流の波形が示されており、それに合わせて、通電切替タイミングトグル信号及び上向き矢印で通電相の切り替えタイミングが示されている。
図6については、さらに、設定デューティのデューティ比が低く変更されるタイミングが上向き矢印で示されている。通電切替タイミングトグル信号において、ハイとローとが切り替わるタイミングで、通電相が切り替えられる。
【0068】
図5に示されるように、モータ20の駆動電流は、通電相が切り替わるタイミングで一時的に急激に小さくなり、その後、元の大きさに戻る。そのため、通電相が切り替わる度に、周期的に駆動電流が低下する。これにより、低下制御が行われない場合には、通電相が切り替わる周期に対応する周波数成分が大きい電磁振動が発生する。
【0069】
他方、低下制御が行われる場合においては、
図6に示されるようになる。すなわち、モータ20の駆動電流は、
図5と同様に、通電相が切り替わるタイミングで一時的に小さくなる。また、上記のように低下制御が行われ、設定デューティのデューティ比が一時的に低くなるため、通電相が切り替えられてから次に通電相が切り替えられるまでにモータ20の駆動電流が一時的に小さくなる。そのため、低下制御が行われる場合に発生する電磁振動において、通電相が切り替わる周期のm分の1(
図6においては、2分の1)に対応する周波数の周波数成分が大きくなる。
【0070】
低下制御が行われる場合に発生する電磁振動において、低下制御が行われない場合に周波数成分が大きくなる周波数のm倍の周波数の周波数成分が大きくなる。すなわち、制御回路部4は、低下制御を実行しつつ駆動制御信号Sdを出力することで、モータ20のロータの1回転(電気角360度)あたりの通電切替回数nにmを乗じた次数の(m×n)次成分を含む電磁振動を発生させる。モータ20のロータの1回転あたりの通電切替回数12回であるとき、本実施の形態のように低下制御を行う場合には、それに2を乗じた次数の24次成分を含む電磁振動が発生する。
【0071】
以上説明したように、本実施の形態においては、制御回路部4が、前の通電期間の周期に基づいて、そのm分の1の期間が経過する毎に、設定デューティ変更指示信号S2を出力して低下制御を行う。そのため、モータ20の固有振動数の周波数と電磁振動の周波数成分の周波数とが重ならないように、電磁振動の周波数成分を高い周波数帯にシフトさせることができるので、振動力が大きな共振が発生することを抑制することができる。すなわち、電磁振動成分の発生要因が、ロータの1回転あたりの通電切替回数nに対応するn次成分であるのに対して、低下制御を行うことにより、(m×n)次成分をもつ電磁振動を発生させることができる。したがって、安価な構成でありながら、所定の回転速度範囲で生じるモータ固有振動数との共振が発生することを防止することができる。mの値を適宜調整することで、モータ20の固有振動数の周波数に重なる電磁振動成分の振動値を低くすることができ、結果的に、大きな振動が発生するのを避けることができる。すなわち、本実施形態の駆動制御装置1およびモータ駆動制御方法は、簡素な回路構成で、振動の発生を低減させることができる。
【0072】
なお、制御回路部4は、モータ20の回転速度が所定の範囲内であるときに、低下制御を行うようにしてもよい。すなわち、モータ20の回転速度が、低下制御を行わなければ電磁振動とモータ20の固有振動数とが共振現象を生じる可能性がある所定の範囲内であるときに、低下制御を行うようにしてもよい。所定の範囲は、モータ20のロータの1回転あたりの通電切替回数nに対応する電磁振動のn次成分とモータ20の固有振動数とが共振現象を生じるモータ20の回転速度を含む範囲である。この場合、モータ20の通電期間において、モータ20の回転速度が所定の範囲内でないときは低下制御が行われず、設定デューティが低デューティに変更されないので、効率良くモータ20を駆動させることができる。
【0074】
モータ駆動制御装置は、上述の実施の形態やその変形例に示されるような回路構成に限定されない。本発明の目的に適合するように構成された、様々な回路構成が適用できる。
【0075】
低下制御において、設定デューティのデューティ比を一時的に低くする所定時間は、モータ20の回転速度に応じて変更されてもよい。例えば、モータ20が高速で駆動している場合には、所定時間を短くし、すぐに設定デューティのデューティ比が通常時に戻されるようにしてもよい。所定時間は、固定値であってもよい。また、所定時間は、瞬間的な時間であってもよい。すなわち、設定デューティ変更処理において、PWM指令部から出力される設定デューティのデューティ比が低い値になったことが確認されたら、すぐに設定デューティのデューティ比が通常時の値に戻されてもよい。
【0076】
また、設定デューティ変更処理において、設定デューティのデューティ比を低くする制御が行われた後、PWM指令部から出力される設定デューティの監視が行われなくてもよい。この場合、他の条件(例えば、設定デューティ変更指示信号が出力されてから所定時間が経過したことなど)に基づいて、PWM指令部にて設定デューティのデューティ比を通常時の値に戻す処理が行われるようにしてもよい。
【0077】
通電期間監視部が制御タイミング信号を出力する基準となる、通電相の切り替え周期は、前回の通電期間に限られない。所定の期間の過去の通電期間の平均を通電相の切り替え周期としてもよいし、所定の時間を通電相の切り替え周期としてもよい。速度指令信号やモータの実回転数情報に応じて、通電相の切り替え周期が算出されるようにしてもよい。
【0078】
モータ駆動制御装置の各構成要素は、少なくともその一部がハードウエアによる処理ではなく、ソフトウエアによる処理であってもよい。
【0079】
本実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータは、ブラシレスモータに限られず、他の種類のモータであってもよい。モータの磁極数やスロット数も、特に限定されない。
【0080】
また、モータの相数は、3相に限定されない。ホール素子の数は、3個に限られない。また、位置検出器は、ホール素子とは異なる手段を用いて、モータの位置検出信号が得られるようにしてもよい。例えば、ホールIC等を用いてもよく、また、ロータの位置を検出するセンサを用いない、いわゆるセンサレス方式でモータを駆動するものであってもよい。
【0081】
上述のフローチャートなどは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではなく、例えば、各ステップの順番が変更されたり各ステップ間に他の処理が挿入されたりしてもよいし、処理を並列化してもよい。
【0082】
上述の実施の形態における処理の一部又は全部が、ソフトウエアによって行われるようにしても、ハードウエア回路を用いて行われるようにしてもよい。例えば、制御回路部は、マイコンに限定されない。制御回路部の内部の構成は、少なくとも一部がソフトウエアで処理されるようにしてもよい。
【0083】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。