特許第6622268号(P6622268)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6622268
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】グリルシャッタ装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20191209BHJP
   B60K 11/08 20060101ALI20191209BHJP
   B60R 19/48 20060101ALI20191209BHJP
   B60R 19/52 20060101ALI20191209BHJP
   F01P 7/12 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   B60K11/04 J
   B60K11/08
   B60R19/48 N
   B60R19/52 M
   F01P7/12 C
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-178031(P2017-178031)
(22)【出願日】2017年9月15日
(65)【公開番号】特開2019-51864(P2019-51864A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2018年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小松原 健
(72)【発明者】
【氏名】西岡 秀雄
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−221596(JP,A)
【文献】 特開2016−40158(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0159541(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102013107304(DE,A1)
【文献】 特開2014−80071(JP,A)
【文献】 特開2016−203867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
B60K 11/08
B60R 19/48
B60R 19/52
F01P 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のエンジンルーム内への空気を導入するための空気導入路を開閉する複数のフィンと、
前記複数のフィンを連動させる連動部材と、
前記複数のフィンのいずれか一つを開閉動作させる駆動装置と、
前記駆動装置の動作状態に応じて前記フィンの異常を検知する異常検知部と、
前記フィンの一部分である係止部と前記連動部材の一部分である係止部とからなる係止構造とを備え、
前記フィンに生じた異常に起因して異常が生じた前記フィンと前記連動部材との間の動力伝達が遮断されたとき、異常が生じた前記フィンの係止部に対して前記連動部材の係止部が当接することにより前記連動部材の移動が規制されるグリルシャッタ装置。
【請求項2】
前記複数のフィンは、前記空気導入路を横断する軸心の回りに回動自在に設けられるとともに前記軸心に直交する方向に沿って並列状に設けられ、
前記フィンの係止部は、前記フィンの前記軸心の延びる方向における両端部のうち一方に設けられて、前記連動部材に対して回動自在に連結される支持部であり、
前記連動部材の係止部は、前記フィンの回動に応じて前記連動部材とともに変位したときの移動軌跡に前記支持部が交わるように設けられたリブ突起である請求項1に記載のグリルシャッタ装置。
【請求項3】
前記連動部材は、前記フィンの回動に応じて前記フィンの開閉方向に沿った第1方向に変位するとともに、前記第1方向に直交する第2方向にも変位することで円弧状に変位するものであって、
前記リブ突起は、前記第2方向に沿って延びるとともに前記支持部を前記第1方向において挟みこむかたちで設けられる2つの第1部分と、前記第2方向に交わるように設けられる第2部分とを有し、
前記フィンに生じた異常に起因して異常が生じた前記フィンと前記連動部材との間の動力伝達が遮断された状態で、異常が生じた前記フィンが全閉状態の位置にあるとき、異常が生じた前記フィンの前記支持部に対して前記2つの第1部分のうち一方および前記第2部分の少なくともいずれかが当接し、異常が生じた前記フィンが全開状態の位置にあるとき、異常が生じた前記フィンの前記支持部に対して前記2つの第1部分のうち他方が当接することにより前記連動部材の移動が規制される請求項2に記載のグリルシャッタ装置。
【請求項4】
前記フィンの前記軸心の延びる方向に対応する両端部を前記フィンが回動自在となるように支持するとともに、前記車体の内部に固定されるフレームを有し、
前記リブ突起は、前記連動部材の前記第1方向における全長に亘って形成されるとともに前記フィンの前記支持部を囲うように設けられている請求項3に記載のグリルシャッタ装置。
【請求項5】
前記複数のフィンは、前記空気導入路を横断する軸心の回りに回動自在に設けられるとともに前記軸心に直交する方向に沿って並列状に設けられ、
前記フィンには、前記軸心の延びる方向における両端部のうち一方に設けられて、前記連動部材に対して回動自在に連結される支持部が設けられ、
前記連動部材は、前記フィンの回動に応じて前記フィンの開閉方向に沿った第1方向に変位するとともに、前記第1方向に直交する第2方向にも変位することで円弧状に変位するものであって、
前記連動部材および前記フィンの支持部のいずれか一方には、前記軸心の延びる方向に沿って突出する前記連動部材の係止部または前記フィンの係止部としての突部が設けられ、
前記連動部材および前記フィンの支持部のいずれか他方には、前記突部が前記フィンの回動に応じて移動可能に嵌合される前記連動部材の係止部または前記フィンの係止部としての嵌合部が設けられている請求項1に記載のグリルシャッタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリルシャッタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるグリルシャッタ装置においては、水平な回動中心を中心にして回動することで軸前部の外気導入路を開閉する複数のフィンと、複数のフィンを連動させる連動部材と、連動部材を介して複数のフィンを回動させるモータと、モータの駆動を制御する制御部とを有している。複数のフィンは、上下方向において並列状に配置されている。複数のフィンには、回動規制部が設けられている。複数のフィンと連動部材とは、操作ピンにより互いに回動自在に連結されている。何かしらの理由によりフィンと連動部材との間の動力伝達が遮断された場合、動力伝達の遮断されたフィンとそれに隣り合うフィンとの回動規制部同士が互いに干渉することにより、フィンの回動が規制される。それに伴い、モータの負荷が増大、ひいてはモータの電流値が増大する。制御部は、所定値を上回る電流値が検出されることによりフィンの異常を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5803976号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のグリルシャッタ装置では、複数のフィンのうちいずれかが全閉状態で連動部材との間に動力伝達が遮断されたとき、動力伝達が遮断されたフィンと、そのフィンの上方向に隣り合うフィンとの回動規制部同士が互いに干渉しあう。また、複数のうちいずれかが全開状態で連動部材との間の動力伝達が遮断されたとき、動力伝達が遮断されたフィンと、そのフィンの下方向に隣り合うフィンとの回動規制部同士が互いに干渉しあう。
【0005】
しかし、上記のグリルシャッタ装置における最上段のフィンには、上方向に隣り合うフィンが無く、最下段のフィンには、下方向に隣り合うフィンが存在しない。そのため、最上段のフィンが全閉状態で連動部材との間の動力伝達が遮断された場合、最下段のフィンが全開状態で連動部材との間の動力伝達が遮断された場合においては、最下段のフィンおよび最下段のフィンに隣り合うフィンの回動規制部同士が互いに干渉しない状態となる。そのため、最上段のフィンおよび最下段のフィンの異常が検知できないおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、フィンの異常をより適切に検知できるグリルシャッタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成し得るグリルシャッタ装置は、車体のエンジンルーム内への空気を導入するための空気導入路を開閉する複数のフィンと、前記複数のフィンを連動させる連動部材と、前記複数のフィンのいずれか一つを開閉動作させる駆動装置と、前記駆動装置の動作状態に応じて前記フィンの異常を検知する異常検知部と、前記フィンの一部分である係止部と前記連動部材の一部分である係止部とからなる係止構造とを備えることを前提としている。前記フィンに生じた異常に起因して異常が生じた前記フィンと前記連動部材との間の動力伝達が遮断されたとき、異常が生じた前記フィンの係止部に対して前記連動部材の係止部が当接することにより前記連動部材の移動が規制される。
【0008】
例えば、フィンの固着等の異常に起因してフィンが動作できない場合、駆動装置によりフィンおよび連動部材を連動させようとすると、異常の生じたフィンと連動部材との間の動力伝達が遮断されてしまうおそれがある。
【0009】
その点、上記構成によれば、異常の生じたフィンと連動部材との間の動力伝達が遮断されたとき、異常が生じたフィンの係止部と連動部材の係止部とが当接する係止構造によって、複数のフィンと連動部材との連動が規制される。それに伴い、駆動装置の動作が拘束され、ひいては異常検知部にてフィンの異常を検知できる。したがって、フィンの異常をより適切に検知できる。
【0010】
上記のグリルシャッタ装置において、前記複数のフィンは、前記空気導入路を横断する軸心の回りに回動自在に設けられるとともに前記軸心に直交する方向に沿って並列状に設けられ、前記フィンの係止部は、前記フィンの前記軸心の延びる方向における両端部のうち一方に設けられて、前記連動部材に対して回動自在に連結される支持部であり、前記連動部材の係止部は、前記フィンの回動に応じて前記連動部材とともに変位したときの移動軌跡に前記支持部が交わるように設けられたリブ突起であることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、フィンの固着等の異常に起因して異常が生じたフィンと連動部材との間の動力伝達が遮断される場合、連動部材に設けられたリブ突起と異常の生じたフィンの支持部とが当接することにより、フィンおよび連動部材の連動を規制する。それに伴い、駆動装置の動作が拘束され、ひいては異常検知部によりフィンの異常を検知できる。したがって、フィンの異常をより適切に検知することができる。
【0012】
上記のグリルシャッタ装置において、前記連動部材は、前記フィンの回動に応じて前記フィンの開閉方向に沿った第1方向に変位するとともに、前記第1方向に直交する第2方向にも変位することで円弧状に変位するものであって、前記リブ突起は、前記第2方向に沿って延びるとともに前記支持部を前記第1方向において挟みこむかたちで設けられる2つの第1部分と、前記第2方向に交わるように設けられる第2部分とを有し、前記フィンに生じた異常に起因して異常が生じた前記フィンと前記連動部材との間の動力伝達が遮断された状態で、異常が生じた前記フィンが全閉状態の位置にあるとき、異常が生じた前記フィンの前記支持部に対して前記2つの第1部分のうち一方および前記第2部分の少なくともいずれかが当接し、異常が生じた前記フィンが全開状態の位置にあるとき、異常が生じた前記フィンの前記支持部に対して前記2つの第1部分のうち他方が当接することにより前記連動部材の移動が規制されることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、例えば、全閉位置にあるフィンの固着等の異常に起因して異常が生じたフィンと連動部材との間の動力伝達が遮断される場合、異常の生じたフィンの支持部に対してリブ突起の2つの第1部分のうち一方が第1方向において当接する。それに伴い、連動部材の移動が規制されるため、フィンおよび連動部材の連動が規制される。
【0014】
また、例えば、リブ突起の2つの第1部分のうち一方が、異常が生じたフィンの支持部に当接することにより、フィンの固着が解消され、フィンが回動自在となることが考えられる。
【0015】
その点、上記構成によれば、異常の生じたフィンが回動しても、異常の生じたフィンの支持部がリブ突起の第2部分に第2方向において当接する。そのため、異常の生じたフィンと連動部材との間の動力伝達が遮断されている状態で、異常の生じたフィンが回動しようとしてもリブ突起の第2部分により回動が規制される。すなわち、異常が生じたフィンの支持部に対してリブ突起の2つの第1部分のうち一方と第2部分とにより協働して当接する。それに伴い、フィンおよび連動部材の連動が規制される。
【0016】
また、全開位置にあるフィンの固着等の異常に起因して異常が生じたフィンと連動部材との間の動力伝達が遮断される場合、異常の生じたフィンの支持部に対してリブ突起の2つの第1部分のうち他方が第1方向において当接する。それに伴い、フィンおよび連動部材の連動が規制される。したがって、フィンの異常をより適切に検知することができる。
【0017】
上記のグリルシャッタ装置において、前記フィンの前記軸心の延びる方向に対応する両端部を前記フィンが回動自在となるように支持するとともに、前記車体の内部に固定されるフレームを有し、前記リブ突起は、前記連動部材の前記第1方向における全長に亘って形成されるとともに前記フィンの前記支持部を囲うように設けられていることが好ましい。
【0018】
フレームに複数のフィンを回動自在となるように支持される場合、複数のフィンとフレームとの間には、隙間が形成されるおそれがある。そのため、空気導入路を通過する空気が複数のフィンが全閉状態となっていたとしても、その隙間を通過してしまうおそれがある。
【0019】
その点、上記構成によれば、フレームと複数のフィンとの間の隙間を空気が通過したとしても、連動部材の第1方向に沿って設けられているリブ突起は、該空気の流れを干渉する壁部として機能する。したがって、複数のフィンが全閉状態であるときのエンジンルーム内の気密性能をより向上させることができる。
【0020】
上記のグリルシャッタ装置において、前記複数のフィンは、前記空気導入路を横断する軸心の回りに回動自在に設けられるとともに前記軸心に直交する方向に沿って並列状に設けられ、前記フィンには、前記軸心の延びる方向における両端部のうち一方に設けられて、前記連動部材に対して回動自在に連結される支持部が設けられ、前記連動部材は、前記フィンの回動に応じて前記フィンの開閉方向に沿った第1方向に変位するとともに、前記第1方向に直交する第2方向にも変位することで円弧状に変位するものであって、前記連動部材および前記フィンの支持部のいずれか一方には、前記軸心の延びる方向に沿って突出する前記連動部材の係止部または前記フィンの係止部としての突部が設けられ、前記連動部材および前記フィンの支持部のいずれか他方には、前記突部が前記フィンの回動に応じて移動可能に嵌合される前記連動部材の係止部または前記フィンの係止部としての嵌合部が設けられていることが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、フィンの固着等の異常に起因してフィンが回動できない状態で、異常の生じたフィンと連動部材との間の動力伝達が遮断される状態で、フィンを回動させようとすると、突部と嵌合部の内壁とが当接することにより、フィンおよび連動部材の連動が規制される。それに伴い、駆動装置の動作が拘束され、ひいては異常検知部によりフィンの異常を検知できる。したがって、フィンの異常をより適切に検知することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のグリルシャッタ装置によれば、フィンの異常をより適切に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】グリルシャッタ装置が搭載された車両の概略構造図。
図2】(a)は、第1の実施形態におけるグリルシャッタ装置が全閉状態であるときの後方斜視図、(b)は、第1の実施形態におけるグリルシャッタ装置が全開状態であるときの後方斜視図。
図3】(a)は、第1の実施形態におけるグリルシャッタ装置が全閉状態であるときのフィンおよびリンクの位置を示した端面図、(b)は、第1の実施形態におけるグリルシャッタ装置が全開状態であるときのフィンおよびリンクの位置を示した端面図。
図4】フレームおよびフィンの概略構成図。
図5図2(a)の5−5線で切断したときの断面図。
図6】(a)は、第1の実施形態のグリルシャッタ装置が全閉状態である場合におけるフィンおよびリンクの連動が規制されている状況を示した端面図、(b)第1の実施形態のグリルシャッタ装置が全開状態である場合におけるフィンおよびリンクの連動が規制されている状況を示した端面図、(c)第1の実施形態におけるフィンおよびリンクの連動が規制される例を示した端面図。
図7】(a)は、第2の実施形態におけるグリルシャッタ装置が全閉状態であるときの後方斜視図、(b)は、第2の実施形態における係止構造を示した概略図。
図8】(a)は、第2の実施形態におけるグリスシャッタ装置が全閉状態であるときのフィンおよびリンクの位置を示した端面図、(b)は、第2の実施形態におけるグリルシャッタ装置が全開状態であるときのフィンおよびリンクの位置を示した端面図。
図9】(a)は、変形例のグリルシャッタ装置が全閉状態である場合におけるフィンおよびリンクの連動が規制されている状況を示した端面図、(b)は、変形例のグリルシャッタ装置が全開状態である場合におけるフィンおよびリンクの連動が規制されている状況を示した端面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1の実施形態>
以下、グリルシャッタ装置の第1の実施形態を説明する。
図1に示す車両1において、車体2の内部に形成されたエンジンルーム3には、エンジン4、エンジン4を冷却するためのラジエータ5、およびファン6が収容されている。また、車体2の前部(図1中の左端部)には、車両前方の外部空間と車体2のエンジンルーム3を連通するグリル開口部7が形成されている。ラジエータ5は、このグリル開口部7からエンジンルーム3に流れ込む空気が当たるように、エンジン4の前方に配置されている。ファン6は、エンジン4とラジエータ5との間に設けられている。ファン6が駆動することにより、効率良くラジエータ5に空気が供給される。また、エンジンルーム3には、グリルシャッタ装置10が収容されている。グリルシャッタ装置10は、グリル開口部7とラジエータ5との間に設けられている。グリルシャッタ装置10は、グリル開口部7から流れ込む空気をエンジンルーム3内へ導入するための空気導入路Rを開閉することによりエンジンルーム3内に流入する空気の流量を制御する。
【0025】
グリルシャッタ装置10は、複数のフィン20と、連動部材としてのリンク30と、駆動装置としてのアクチュエータ40と、フレーム50と、制御部60とを有している。
フレーム50は、その上端部が車体2の内部のバンパーリインフォース8に固定されている。
【0026】
図4に示すように、フレーム50は、四角枠状をなしている。フレーム50は、中央支持部53を有している。中央支持部53は、フレーム50の上壁の中央部分と下壁の中央部分との間に連結されている。中央支持部53が設けられることにより、2つの開口部51,52が区画形成されている。中央支持部53は、箱状をなしている。中央支持部53は、車両後方側に開口している(図1参照)。
【0027】
複数のフィン20は、板状をなしている。複数のフィン20は、それぞれ2つの開口部51,52を、図4中の左右方向に横断するかたちで設けられた複数の回転軸23と一体回転可能に支持されている。開口部51において、回転軸23は、中央支持部53の左壁部53aとフレーム50の左壁部51aとの間に回動自在に連結されている。開口部52において、回転軸23は、中央支持部53の右壁部53bとフレーム50の右壁部52aとの間に回動自在に連結されている。すなわち、複数のフィン20は、フレーム50に対して回転軸23の軸心mの回りに回動自在に設けられている。複数のフィン20は、軸心mに直交する方向(図4中の上下方向)に沿って並列状に設けられている。2つの開口部51,52の内部にそれぞれ設けられた3枚のフィン20は、中央支持部53を基準として鏡面対称に設けられている。複数のフィン20は、回転軸23の軸心mの回りに回動することによりフレーム50の2つの開口部51,52(正確には、空気導入路R)を開閉する。複数のフィン20は、全開位置と全閉位置との間を回動する。
【0028】
図3(a)に示すように、複数のフィン20が全閉位置にある場合、上下方向に隣り合うフィン20の上下の先端が重なり合うことによりフレーム50の2つの開口部51,52を閉塞する。尚、この状態において、最上段のフィン20の上先端とフレーム50の上端部との間には、空隙が存在する。しかし、フレーム50の内頂面には、上壁部54が設けられている。上壁部54は、最上段のフィン20の上先端の後方に位置している。上壁部54が干渉することにより、上記の空隙から流入する空気のエンジンルーム3への進入が抑制される。また、最下段のフィン20の下先端は、フレーム50の下端部に当接している。
【0029】
図3(b)に示すように、複数のフィン20が全開位置にある場合、上下方向に隣り合うフィン20が互いに平行をなすことによりフレーム50の2つの開口部51,52を開放する。尚、この状態において、後述するリンク30の上端部がフレーム50の上端部に当接することにより、複数のフィン20が回動し過ぎることが規制されている。
【0030】
また、図4に示すように、フィン20におけるフレーム50の中央支持部53側の端部には、係止部としての板状の支持部21が設けられている。支持部21は、フィン20の後面(図4中の上面)に対して直交するかたちで突出している。尚、フィン20におけるフレーム50の中央支持部53側とは、フィン20の軸心mの延びる方向における両端部のうち一方である。
【0031】
図2(a)に示すように、フィン20が全閉位置にある場合、支持部21は、車両後方側へ向けて延出する。
図2(b)に示すように、フィン20が全開位置にある場合、支持部21は、フレーム50の上端部に向けて(図2(b)中の上方)延出する。
【0032】
図4に示すように、複数のフィン20の各支持部21の中央支持部53側の側面には、軸心mの延びる方向に沿って突出する円柱状の係合突起22が設けられている。
図2(a)および図5に示すように、リンク30は、軸心mに直交する方向(図2(a)中の上下方向)に延びるとともに、軸心mに直交する方向から見たときの端面形状が略U字状をなしている。リンク30は、そのU字形状の開口部が、フレーム50の中央支持部53の開口部に対向するように設けられている。リンク30は、複数のフィン20と連動する。具体的に、リンク30の左壁面36(図2(a)中の左側面)には、係合突起22を介してフィン20の支持部21が回動自在に連結されている。リンク30の右壁面35(図2(a)中の右側面)には、係合突起22を介してフィン20の支持部21が回動自在に連結されている。
【0033】
図2(a)および図2(b)に示すように、リンク30は、複数のフィン20の回動に応じてフィン20の開閉方向である第1方向A(図2(a)中の上下方向)に沿って変位する。
【0034】
また、図3(a)および図3(b)に示すように、フィン20(支持部21)は、軸心mを中心に第3方向Cに向けて回動する。そのため、リンク30は、フィン20の回動に応じて第1方向Aに直交する方向である第2方向B(図3(a)中の左右方向)にも変位する。すなわち、リンク30は、フィン20の回動に応じて第1方向Aに変位するとともに第2方向Bにも変位することにより見かけ上円弧状に変位する。
【0035】
図2(a)および図2(b)に示すように、リンク30の左壁面36および右壁面35には、軸心mの延びる方向に沿って突出する係止部としてのリブ突起31が設けられている。リブ突起31は、リンク30を基準として鏡面対称に設けられている。
【0036】
以下、リブ突起31について詳細に説明する。ここでは、リブ突起31は鏡面対称に設けられているため、説明の便宜上、リンク30の左壁面36に設けられたリブ突起31についてのみ説明する。
【0037】
図3(a)に示すように、リブ突起31は、リンク30の第1方向Aの全長に亘って設けられている。リブ突起31は、3つの突起32と、2つの連結突起33とを有している。3つの突起32は、各フィン20の支持部21を囲うように設けられている。
【0038】
3つの突起32は、同様の構成を有している。
突起32は、2つの第1部分32aと、第2部分32bと、連結部分32cとを有している。2つの第1部分32aは、第2方向Bに沿って設けられている。2つの第1部分32aは、各フィン20の支持部21を第1方向Aにおいて挟みこむかたちで設けられている。
【0039】
フィン20の開方向への回動に応じてリンク30とともに変位したとき、フィン20の支持部21の下側の第1部分32aは、円弧状の移動軌跡R1(図3(a)中の斜線部分)上を変位する。支持部21の下側の第1部分32aは、その移動軌跡R1に沿った方向にフィン20の支持部21が交わるように設けられている。尚、支持部21の下側の第1部分32aは、2つの第1部分32aのうち一方の一例である。
【0040】
図3(b)に示すように、フィン20の閉方向への回動に応じてリンク30とともに変位したとき、フィン20の支持部21の上側の第1部分32aは、円弧状の移動軌跡R2(図3(b)中の斜線部分)上を変位する。支持部21の上側の第1部分32aは、その移動軌跡R2に沿った方向にフィン20の支持部21が交わるように設けられている。尚、支持部21の上側の第1部分32aは、2つの第1部分32aのうち他方の一例である。
【0041】
図3(a)に示すように、突起32の第2部分32bは、第2方向Bに交わる方向(より正確には、第1方向A)に沿って延びている。第2部分32bは、支持部21の下側の第1部分32aに連結されている。第2部分32bは、第1部分32aと同様にフィン20の回動に連動してリンク30が変位したときの移動軌跡にフィン20の支持部21が交わるように設けられている。
【0042】
突起32の連結部分32cは、支持部21の上側に設けられている第1部分32aの端部と、第2部分32bのうち支持部21の下側の第1部分32aが連結されている端部と反対側の端部とを連結している。
【0043】
2つの連結突起33は、3つの突起32を互いに連結している。具体的には、連結突起33のうち1つは、最上段のフィン20に対応する突起32と、中間のフィン20に対応する突起32とを連結している。もう一つの連結突起33は、中間のフィン20に対応する突起32と、最下段のフィン20に対応する突起32とを連結している。
【0044】
図4に破線で示すように、アクチュエータ40は、フレーム50の中央支持部53の内部における最下段のフィン20に対応した位置に収容されている。アクチュエータ40は、モータを有している。アクチュエータ40は、モータの回転を最下段のフィン20の回転軸23の回動に変換する。最下段のフィン20の回動に伴いリンク30が変位し、この変位に連動して最上段のフィン20および中間のフィン20が回動する。そのため、複数のフィン20は、リンク30とともに連動して回動する。アクチュエータ40の駆動源となるモータは、制御部60が供給する駆動電力に基づいて回転する。尚、アクチュエータ40は、パルスセンサを有している。
【0045】
図1に示すように、制御部60は、アクチュエータ40のモータに対する駆動電力の供給を通じて複数のフィン20の回動を制御する。詳述すると、制御部60は、車速やエンジン4の冷却水温、あるいは雰囲気温度(外気温)等、車両の走行状態を推定するための各種の車両状態量を取り込む。制御部60は、その車両状態量に基づいてアクチュエータ40のモータへの駆動電力の供給を制御する。また、制御部60は、フィン20の全開位置および全閉位置のいずれか一方を初期位置Ps、他方を制御目標位置Ptとしてフィン20の作動を制御する。これにより、フィン20は、回動停止時に、基本的に全開状態または全閉状態のいずれかで状態で保持される。さらに詳述すると、制御部60は、フィン20が初期位置Psから制御目標位置Pt(例えば、全閉位置から全開位置)に到達するために必要なフィン20の基準回動量X0と、フィン20が回動停止状態に至るまでのフィン20の回動量X(初期位置Psからの回動量)を演算する。制御部60は、アクチュエータ40のパルスセンサから出力されるパルス信号(パルス間隔)に基づき所定周期で回動量Xを演算する。すなわち、基準回動量X0と回動量Xとが同じ値になるとき、フィン20が制御目標位置Ptに到達する。
【0046】
ここで、制御部60は、異常検知部61を有している。異常検知部61は、基準回動量X0と回動量Xとを比較することにより、フィン20が制御目標位置Ptに到達する前に停止状態となったか否かを判定する。異常検知部61は、回動量Xが基準回動量X0を下回った場合、フィン20が制御目標位置Ptまで到達していないと判定し、フィン20が途中で停止状態になったことを検知する。フィン20が途中停止するときのフィン20の状態としては、例えば、凍結によるフィン20の固着等やフィン20の異物の挟み込みが挙げられる。上記の事象によりフィン20が途中停止した場合、最下段のフィン20を駆動するアクチュエータ40のモータの駆動が拘束される。それに従い、アクチュエータ40のパルスセンサからのパルス信号も変化し、制御部60により演算される回動量Xが基準回動量X0を下回る。すなわち、異常検知部61によるフィン20の異常判定は、アクチュエータ40の動作状態によって決まるといえる。そのため、異常検知部61は、アクチュエータ40の動作状態(モータの駆動状態およびパルスセンサのパルス信号の変化)に基づいてフィン20の異常を検知している。
【0047】
次に、フィン20に生じる異常およびグリルシャッタ装置10の作用効果について詳細に説明する。尚、説明の便宜上、中間のフィン20に異常が生じた場合を一例として説明する。
【0048】
複数のフィン20が全閉位置にある場合(図3(a)参照)、中間のフィン20がフレーム50に対して固着する異常が生じるときがある。
図6(a)に示すように、このとき、アクチュエータ40により複数のフィン20を開方向(図6(a)中の左下矢印方向)へ回動させようとすると、中間のフィン20の固着によりその回動が規制されるおそれがある。その状態で、アクチュエータ40が最下段のフィン20を回動し続けようとすると、中間のフィン20の係合突起22とリンク30との係合が外れてしまう、または、係合突起22が折損することにより中間のフィン20とリンク30との動力伝達が遮断された状態となることが考えられる。すなわち、最下段のフィン20、最上段のフィン20およびリンク30は連動するが、中間のフィン20は、回動できない状態となる。
【0049】
この状態でフィン20を開方向へ回動させようとするとき、最下段のフィン20および最上段のフィン20が開方向へ回動し、リンク30が円弧状に上方へ変位すると、全閉位置にある中間のフィン20の支持部21に対して、支持部21の下側の第1部分32aおよび第2部分32bが当接する係止構造Lが形成される。すなわち、中間のフィン20の支持部21は、支持部21の下側の第1部分32aに第1方向Aに沿って当接し、リブ突起31の第2部分32bに第2方向Bに沿って当接する。これにより、リンク30の第1方向A(図6(a)中の上方)への変位が規制される。すなわち、複数のフィン20およびリンク30の連動が規制されることにより、アクチュエータ40のモータの駆動が拘束される。それに伴い、制御部60の異常検知部61は、アクチュエータ40のパルスセンサからのパルス信号に基づき演算された回動量Xが基準回動量X0を下回っていると判定することでフィン20の異常を適切に検知することができる。
【0050】
ここで、中間のフィン20の支持部21が支持部21の下側の第1部分32aに当接することにより、中間のフィン20の固着が解消され、中間のフィン20が回動自在となってしまうことが考えられる。そのとき、中間のフィン20の支持部21が支持部21の下側の第1部分32aにより押し上げられる(図6(a)中の上方)ことにより、中間のフィン20が回動してしまう。このとき、中間のフィン20の支持部21と支持部21の下側の第1部分32aとの当接により、複数のフィン20およびリンク30の連動を規制することができない。しかし、中間のフィン20の支持部21が第2部分32bに第2方向Bに沿って当接することにより、中間のフィン20の開方向への回動が規制される。そのため、より適切にフィン20の異常を検知することができる。
【0051】
次に、図6(b)に示すように、複数のフィン20が全開位置にある場合、上記と同様に、中間のフィン20がフレーム50に対して固着することに起因して中間のフィン20とリンク30との間の動力伝達が遮断された状態となることが考えられる。すなわち、最下段のフィン20、最上段のフィン20およびリンク30は連動するが、中間のフィン20は、回動できない状態となる。
【0052】
この状態でフィン20を閉方向へ回動させようとするとき、最下段のフィン20および最上段のフィン20が閉方向(図6(b)中の右上矢印方向)へ回動し、リンク30が円弧状に下方へ変位すると、中間のフィン20の支持部21に対して、支持部21の上側の第1部分32aが第1方向Aに沿って当接することにより係止構造Lが形成される。これにより、リンク30の第1方向A(図6(b)中の下方)への変位が規制される。すなわち、複数のフィン20およびリンク30の連動が規制されることにより、アクチュエータ40のモータの駆動が拘束される。それに伴い、制御部60の異常検知部61は、アクチュエータ40のパルスセンサからのパルス信号に基づき演算された回動量Xが基準回動量X0を下回っていると判定することでフィン20の異常を適切に検知することができる。
【0053】
ここで、中間のフィン20の支持部21に対して支持部21の上側の第1部分32aに当接することにより、中間のフィン20の固着が解消され、中間のフィン20が回動自在となってしまうことが考えられる。そのとき、中間のフィン20の支持部21が支持部21の上側の第1部分32aにより押し下げられる(図6(b)中の下方)ことにより、中間のフィン20が回動してしまう。それに伴い、中間のフィン20は、一度全閉状態の位置まで戻るが、各フィン20を再度全開位置へ向けて回動させるとき、以下のような現象が起こりうる。
【0054】
図6(c)に示すように、中間のフィン20の支持部21は、支持部21の下側の第1部分32aの角部に第2方向Bに沿って当接し、第2部分32bの角部に第1方向Aに沿って当接することにより係止構造Lを形成する。このとき、中間のフィン20の支持部21は、第2部分32bにより第1方向Aに沿って押し上げられることにより、再度回動しようとするが、支持部21の下側の第1部分32aに第2方向Bに沿って当接していることにより、中間のフィン20の回動も抑制している。すなわち、中間のフィン20の支持部21に対して支持部21の下側の第1部分32aと第2部分32bとが協働して当接することにより、リンク30の第1方向Aおよび第2方向Bへの変位が規制される。そのため、より適切にフィン20の異常を検知することができる。
【0055】
尚、中間のフィン20に異常が発生した場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、最上段のフィン20および最下段のフィン20についても同様の作用効果が期待できる。
【0056】
ちなみに、本実施の形態において、複数のフィン20のいずれかが固着し、その固着に起因してフィン20とリンク30との動力伝達が遮断されていなくても、フィン20に固着に起因して全てのフィン20とリンク30との連動が規制される。それに伴い、アクチュエータ40のモータの駆動が拘束される。すなわち、フィン20の固着に起因してフィン20とリンク30との間の動力伝達が遮断されていない状態であっても、フィン20の異常を検知することもできる。
【0057】
また、図1および図2(a)に示すように、複数のフィン20が全閉位置にある場合、フィン20とフレーム50の中央支持部53の左壁部53aおよび右壁部53bとの間には、寸法交差等による隙間が形成されることが考えられる。そのため、複数のフィン20が全閉状態であっても、空気導入路Rを通過する空気がその隙間を通過してしまうおそれがある。
【0058】
その点、リブ突起31は、リンク30の第1方向Aの全長に亘って設けられるとともに、フィン20の支持部21を囲うように設けられている。そのため、複数のフィン20とフレーム50の中央支持部53との隙間を空気が通過したとしても、リンク30のリブ突起31は、当該空気の流れを遮る壁部として機能する。したがって、複数のフィンが全閉状態であるときのエンジンルーム3内の気密性を向上させることができる。
【0059】
また、車体2の内部には、水が浸入するおそれがある。浸入した水がグリルシャッタ装置10のフレーム50の上端部側から下端部側に向けて流動することが考えられる。
その点、リブ突起31は、フィン20の支持部21を囲うように設けられているため、浸入した水がフィン20の支持部21とリンク30の左壁面36および右壁面35との間に付着することを抑制できる。そのため、複数のフィン20とリンク30との凍結による固着が抑制できる。
【0060】
<第2の実施形態>
以下、グリルシャッタ装置の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態との主たる相違点は、フィン20およびリンク30との係止構造Lの構成が変更された点である。尚、第1の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を割愛する。
【0061】
図7(a)に示すように、リンク30の左壁面36および右壁面35は、複数のフィン20の支持部21に対応する部分にだけ設けられている。
図7(b)に示すように、リンク30の左壁面36には、軸心mの延びる方向に沿ってフィン20側に突出する係止部としての突部34が設けられている。尚、右壁面35に設けられる突部34は、左壁面36に設けられる突部34と鏡面対称に設けられている(図示略)。
【0062】
複数のフィン20の支持部21の左壁面36(または右壁面35)には、嵌合部としての溝部24が形成されている。溝部24には、突部34が嵌合されている。尚、溝部24は、フィン20の係止部の一例である。
【0063】
図8(a)に示すように、フィン20の溝部24は、円弧状をなしている。より具体的には、溝部24は、フィン20の係合突起22の軸心からの距離が等しい円弧状をなしている。
【0064】
フィン20の支持部21およびリンク30の左壁面36(または右壁面35)は、互いに係合突起22の軸心を回転中心として相対回転する。支持部21がフィン20の回動に応じてリンク30の左壁面36に対して相対回転したとき、突部34は、溝部24内を相対的に移動する。
【0065】
複数のフィン20が全閉状態である場合、突部34は、溝部24の第1の端部(図8(a)中の下方)に当接している。
また、図8(b)に示すように、複数のフィン20が全開状態である場合、突部34は、溝部24の第2の端部(図8(b)中の左方)に当接している。突部34が溝部24の第2の端部に当接することにより、フィン20が開方向へ回動し過ぎることが抑制される。
【0066】
次に、フィン20に生じる異常およびグリルシャッタ装置10の作用効果について詳細に説明する。尚、説明の便宜上、中間のフィン20に異常が生じた場合を一例として説明する。
【0067】
図8(a)に示すように、複数のフィン20が全閉位置にある場合、中間のフィン20がフレーム50に対して固着する異常に起因して第1の実施形態と同様に中間のフィン20とリンク30との間の動力伝達が遮断された状態となることが考えられる。すなわち、最下段のフィン20、最上段のフィン20およびリンク30は連動するが、中間のフィン20は、回動できない状態となる。
【0068】
この状態でフィン20を開方向へ回動させようとするとき、最下段のフィン20および最上段のフィン20が開方向へ回動し、リンク30が円弧状に上方へ変位すると、中間のフィン20の支持部21における溝部24の内壁24a(図8(a)中の右上方)に対してリンク30の突部34が当接することにより係止構造Lが形成される。これは、中間のフィン20が回動できない状態であることに伴い、溝部24の位置が変化しない状態となり、突部34が溝部24内を円滑に相対移動することができないためである。このようにしても、第1の実施形態と同様に、フィン20の異常を適切に検知することができる。
【0069】
図8(b)に示すように、複数のフィン20が全開位置にある場合、上記と同様に、中間のフィン20とリンク30との間の動力伝達が遮断された状態となることが考えられる。すなわち、最下段のフィン20、最上段のフィン20およびリンク30は連動するが、中間のフィン20は、回動できない状態となる。
【0070】
この状態でフィン20を閉方向へ回動させようとするとき、最下段のフィン20および最上段のフィン20が閉方向へ回動し、リンク30が円弧状に下方へ変位すると、中間のフィン20の支持部21における溝部24の内壁24a(図8(b)中の左下方)に対してリンク30の突部34が当接することにより係止構造Lが形成される。このようにしても、第1の実施形態と同様に、フィン20の異常を適切に検知することができる。
【0071】
尚、中間のフィン20の異常について具体化して説明したが、これに限るものではない。例えば、最上段のフィン20および最下段のフィン20についても同様の作用効果が期待できる。
【0072】
尚、第1および第2の実施形態は、技術的に矛盾が生じない範囲で以下のように変更してもよい。
・第2の実施形態では、嵌合部として溝部24を採用したが、例えば、フィン20の支持部21の板厚方向に貫通する孔部としてもよい。このようにしても、第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0073】
・また、第2の実施形態では、フィン20の支持部21に溝部24が設けられ、リンク30の左壁面36(および右壁面35)に突部34が設けられたが、例えば、構成を逆にしてもよい。このようにしても第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0074】
・第1の実施形態において、中間のフィン20の支持部21に対してリブ突起31の第1部分32aを第1方向Aにおいて当接させ、第2部分32bを第2方向Bにおいて当接させていたが、これに限らない。中間のフィン20がリブ突起31に当接することにより中間のフィン20の固着が解消されない前提であれば、例えば、中間のフィン20の支持部21に対してリブ突起31の第1部分32aだけを第1方向Aにおいて当接させてもよい。また、例えば、中間のフィン20の支持部21に対してリブ突起31の第2部分32bだけを第1方向Aにおいて当接させてもよい。このようにしても、フィン20の異常を適切に検知することができる。
【0075】
・第1の実施形態において、最下段のフィン20の支持部21がリブ突起31に当接しなくても直接的に最下段のフィン20の固着を検知することができる。そのため、リブ突起31における最下段のフィン20に対応する突起32を割愛してもよい。
【0076】
・第1および第2の実施形態において、最下段のフィン20がアクチュエータ40により回動されるようにしていたが、最上段のフィン20または中間のフィン20をアクチュエータ40により回動させる構成としてもよい。また、例えば、中間のフィン20をアクチュエータ40により回動させる構成とした場合、最上段のフィン20および最下段のフィン20に対応する突起32の構成はそのまま採用し、中間のフィン20に対応する突起32を割愛してもよい。それに伴い、2つの連結突起33も割愛してもよい。
【0077】
・また、第1の実施形態において、リブ突起31は、2つの第1部分32aと、第2部分32bと、連結部分32cとを有していたが、以下のように変更してもよい。
図9(a)および図9(b)に示すように、リブ突起31を第1部分32aだけで構成してもよい。
【0078】
このようにしても、図9(a)に示すように、例えば、中間のフィン20が全閉位置にある状態で固着してしまい、ひいては中間のフィン20とリンク30との間の動力伝達が遮断される場合であっても、中間のフィン20の支持部21が支持部21の下側の第1部分32aに当接する。また、図9(b)に示すように、例えば、中間のフィン20が全開位置にある状態で固着してしまい、ひいては中間のフィン20とリンク30との間の動力伝達が遮断される場合であっても、中間のフィン20の支持部21が支持部21の上側の第1部分32aに当接する。このため、中間のフィン20とリンク30のリブ突起31とにより形成される係止構造Lによりリンク30の第1方向Aにおける変位が規制されるため、複数のフィン20とリンク30との連動が規制される。したがって、フィン20の異常を適切に検知することができる。
【0079】
・さらに、リブ突起31を第2部分32bだけで構成してもよい。この場合、リブ突起31の第2部分32bをフィン20の支持部21に対して第1方向Aに沿って当接させてもよいし、あるいはリブ突起31の第2部分32bをフィン20の支持部21に対して第2方向Bに沿って当接させるかは適宜変更してもよい。
【0080】
・第1および第2の実施形態において、異常検知部61は、回動量Xと、基準回動量X0とを比較することによるフィン20の回動位置ずれを検知することでフィン20の異常を検知していたが、これに限らない。例えば、アクチュエータ40のモータの駆動が拘束されたときの電流値が予め設定された所定値を上回るときに、フィン20の異常を検知するようにしてもよい。尚、例えば、フィン20が全閉位置にある場合、最下段のフィン20がフレーム50の下端部に当接することによりアクチュエータ40のモータの駆動を拘束されたとき、モータに流れる電流値を所定値としてもよい。また、フィン20が全開位置にある場合、リンク30の上端部がフレーム50の上端部に当接することによりアクチュエータ40のモータの駆動が拘束されたとき、モータに流れる電流値を所定値としてもよい。
【0081】
・第1および第2の実施形態において、グリルシャッタ装置10は、複数のフィン20が車両1の上下方向(車高方向)に開閉することで空気導入路Rを開閉させていたが、これに限らない。複数のフィン20を例えば、左右方向(車幅方向)に開閉するものであってもよい。
【0082】
・第1および第2の実施形態において、複数のフィン20は、リンク30が第1方向Aにおける上方に向けて変位したとき全開位置にあり、リンク30が第1方向Aにおける下方に向けて変位したとき全閉位置にあるように設定されていたが、これに限らない。例えば、リンク30の変位方向とフィン20の開閉位置を逆にしてもよい。
【0083】
この場合、例えば、第1の実施形態において、フィン20の支持部21は、フィン20が全閉位置にある場合、車両後方側へ向けて延出させ、フィン20が全開位置にある場合、フレーム50の下端部に向けて延出するように設定する。それに伴い、リブ突起31の突起32のうち、支持部21の下側の第1部分32aに連結されていた第2部分32bを、支持部21の上側の第1部分32aに連結するように変更する。
【0084】
・第1および第2の実施形態において、フィン20は、板状を成していたが、空気導入路Rを開閉できる形状であれば、適宜変更してもよい。
・第1および第2の実施形態において、フィン20の支持部21に係合突起22を形成したが、リンク30の左壁面36および右壁面35に設けてもよい。この場合、支持部21には、リンク30の係合突起22を係合させるための孔部を形成する。
【符号の説明】
【0085】
2…車体、3…エンジンルーム、10…グリルシャッタ装置、20…フィン、21…支持部、24…溝部、24a…内壁、30…リンク、31…リブ突起、32a…第1部分、32b…第2部分、34…突部、40…アクチュエータ、50…フレーム、61…異常検知部、A…第1方向、B…第2方向、m…軸心、R…空気導入路、R1,R2…移動軌跡。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9