特許第6622283号(P6622283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6622283共役ジオレフィン製造用触媒と、その製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6622283
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】共役ジオレフィン製造用触媒と、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/887 20060101AFI20191209BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20191209BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20191209BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20191209BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   B01J23/887 Z
   B01J35/08 Z
   B01J37/00 F
   B01J37/00 E
   B01J37/08
   B01J37/02 301M
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-503685(P2017-503685)
(86)(22)【出願日】2016年3月2日
(86)【国際出願番号】JP2016056416
(87)【国際公開番号】WO2016140265
(87)【国際公開日】20160909
【審査請求日】2018年9月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-41831(P2015-41831)
(32)【優先日】2015年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-41832(P2015-41832)
(32)【優先日】2015年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-41833(P2015-41833)
(32)【優先日】2015年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 成喜
(72)【発明者】
【氏名】中澤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】元村 大樹
(72)【発明者】
【氏名】西沢 文吾
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−202459(JP,A)
【文献】 特開2013−146655(JP,A)
【文献】 特開昭60−149534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子数4以上のモノオレフィンと分子状酸素を含む混合ガスから接触酸化脱水素反応により共役ジオレフィンを製造するための次の組成式を満たす複合金属酸化物触媒であって、下記式(A)で表されるX線回折ピークの相対強度範囲を有することを特徴とする複合金属酸化物触媒:
Mo12BiFeCoNi
(式中、MoはモリブデンBiはビスマス、Feは鉄、Coはコバルト、Niはニッケルを示し、Xはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属の少なくとも1種の元素を示し、Yはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムから選ばれるアルカリ土類金属の少なくとも1種の元素を示し、Zはランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロビウム、アンチモン、タングステン、鉛、亜鉛、セリウムおよびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Oは酸素を示し、a、b、c、d、e及びfは各々モリブデン12に対するビスマス、鉄、コバルト、ニッケル、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びZの原子比を示し、0.3<a<3.5、0.6<b<3.4、5<c<8、0<d<3、0<e<0.5、0≦f≦4.0、0≦g≦2.0の範囲にあり、hは他の元素の酸化状態を満足させる数値である。)
0≦Rh(=Ph1/Ph2)<0.8 (A)
(式中、Ph1はX線回折ピークにおける2θ=28.1°±0.2°の範囲内の最大ピーク高さ、Ph2はX線回折ピークにおける2θ=27.9°±0.2°の範囲内の最大ピーク高さであり、RhはPh2に対するPh1の相対強度比である。)。
【請求項2】
炭素原子数4以上のモノオレフィンと分子状酸素を含む混合ガスから接触酸化脱水素反応により共役ジオレフィンを製造するための次の組成式を満たす複合金属酸化物触媒であって、下記式(B)で表されるX線回折ピークの相対面積強度範囲を有することを特徴とする複合金属酸化物触媒:
Mo12BiFeCoNi
(式中、MoはモリブデンBiはビスマス、Feは鉄、Coはコバルト、Niはニッケルを示し、Xはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属の少なくとも1種の元素を示し、Yはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムから選ばれるアルカリ土類金属の少なくとも1種の元素を示し、Zはランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロビウム、アンチモン、タングステン、鉛、亜鉛、セリウムおよびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Oは酸素を示し、a、b、c、d、e及びfは各々モリブデン12に対するビスマス、鉄、コバルト、ニッケル、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びZの原子比を示し、0.3<a<3.5、0.6<b<3.4、5<c<8、0<d<3、0<e<0.5、0≦f≦4.0、0≦g≦2.0の範囲にあり、hは他の元素の酸化状態を満足させる数値である。)
0≦Ra(=Pa1/Pa2)<0.5 (B)
(式中、Pa1はX線回折ピークにおける2θ=28.1°±0.2°の範囲内でフィッティングにより得られるピーク面積、Pa2はX線回折ピークにおける2θ=27.9°の範囲内でフィッティングにより得られるピーク面積であり、RaはPa2に対するPa1の相対面積強度比である。)。
【請求項3】
成分のモル比が下記式(C)を満たす、請求項1または請求項2に記載の複合金属酸化物触媒:
0.02≦Re<0.80 (C)
(式中、Re=(Biの含有量(モル))/{(Moの含有量(モル))−(MoおよびBi以外の金属成分の含有量(モル))}である。)。
【請求項4】
モリブデンを含有する化合物;ビスマスを含有する化合物;鉄を含有する化合物;コバルトを含有する化合物;ニッケルを含有する化合物;リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属の少なくとも1種の元素を含有する化合物;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムから選ばれるアルカリ土類金属の少なくとも1種の元素を含有する化合物;ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロビウム、アンチモン、タングステン、鉛、亜鉛、セリウムおよびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素Zを含有する化合物を含有するスラリーを調製する工程、
ここで、a、b、c、d、e及びfは各々モリブデン12に対するビスマス、鉄、コバルト、ニッケル、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びZの原子比を示し、0.3<a<3.5、0.6<b<3.4、5<c<8、0<d<3、0<e<0.5、0≦f≦4.0、0≦g≦2.0の範囲にあり、
前記スラリーを乾燥して乾燥粉体とする工程、および
前記乾燥粉体を200℃以上600℃以下の温度で焼成する工程
を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の共役ジオレフィン製造用複合金属酸化物触媒の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の複合金属酸化物触媒を担体に担持した、共役ジオレフィン製造用担持触媒。
【請求項6】
担体が球状担体である、請求項に記載の担持触媒。
【請求項7】
平均粒径が3.0mm以上10.0mm以下であり、複合金属酸化物触媒の担持率が20重量%以上80重量以下である、請求項またはに記載の担持触媒。
【請求項8】
担体に複合金属酸化物触媒をバインダーとともにコーティングする成形工程を有する、請求項のいずれか一項に記載の共役ジオレフィン製造用担持触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素原子数4以上のモノオレフィンと分子状酸素を含む混合ガスから接触酸化脱水素反応により共役ジオレフィンを製造する複合金属酸化物触媒(以降、触媒とも記載する)とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成ゴム等の原料であるブタジエンは、工業的にはナフサ留分の熱分解および抽出により製造されているが、今後市場への安定供給の悪化が懸念されることから、新たなブタジエンの製造方法が求められている。そこで、n−ブテンと分子状酸素を含む混合ガスから、触媒の存在下でn−ブテンを酸化脱水素する方法が注目されている。しかし、反応生成物および/または反応副生成物によるコーク状物質が触媒表面、イナート物質、反応管内や後工程設備内に析出または付着することによって、工業プラントにおいて反応ガスの流通の阻害、反応管の閉塞やそれらに伴うプラントのシャットダウンや収率の低下等さまざまなトラブルを引き起こす点が懸念される。前記トラブルを回避する目的で、工業プラントでは一般的に閉塞が生じる前に反応を中止し反応浴温度の昇温等により前記コーク状物質を燃焼除去する再生処理を行うが、定常運転である反応を中止して再生処理を行うことは工業プラントにおける経済性の悪化につながるため、前記コーク状物質の生成は可能な限り抑制されることが望まれている。そこで、前記コーク状物質の発生を抑制することを目的として、以下に示すような触媒組成や反応条件等の改良が知られている。
【0003】
触媒組成に関する特許文献として、特許文献1ではコーク状物質の副生を抑制し安定に反応を継続できる触媒組成や、特許文献3では高い共役ジオレフィン収率を示す触媒組成及び触媒の酸量、さらに特許文献4ではコーク状物質の発生を抑制できる触媒のX線回折ピーク比が規定されている。また、反応条件に関する特許文献として、特許文献2ではコーク状物質が触媒上に蓄積するのを防止する反応条件が規定されている。これら特許文献はいずれも、工業プラントでの経済性すなわち反応継続時間に対するコーク状物質の析出量及び再生頻度等を考慮すると、コーク状物質の生成を十分抑制できたとは言い難く、よりコーク状物質の生成を抑制し、反応の長期安定性を改善できる触媒組成およびその反応条件の提示が望まれていた。
【0004】
また、工業プラントでの経済性の観点からは、目的生成物であるブタジエンを高い収率で得られる点も当然重要である。ブタジエン収率が低いことは相対的に副生成物の収率が高いことを意味するが、この場合工業プラントにおける最終製品として純度の高いブタジエンを得るためには、より高い性能の精製系が必要となり、それらの設備コストが高くなる点が懸念される。
【0005】
更に、工業プラントにおける反応の長期安定性の別の観点からは、触媒そのものの機械的強度が高い点も重要である。触媒に機械的強度が不足すると、前記コーク状物質の生成による触媒の破損および/または前記再生処理における燃焼ガスによる触媒の破損および/または触媒の劣化等のトラブルが考えられ、さらに破損した触媒が反応器内に蓄積し圧力損失の増大、反応器内に局所的に蓄積した触媒による望ましくない反応、および後段の精製系への混入等のトラブルに繋がる点が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−100244号公報
【特許文献2】特開2011−148765号公報
【特許文献3】特開2013−146655号公報
【特許文献4】特開2013−202459号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】M.E.Levin,et al.(2004)J.Haz.Mat.,115,71−90
【非特許文献2】W.Martir,et al.(1981)J.Am.Chem.Soc.,103,3728−3732
【非特許文献3】J.H.Lunsford(1989)Langmuir,5,12−16
【非特許文献4】M.T.Le,et al.(2005)App.Cat.A,282,189−194
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、炭素原子数4以上のモノオレフィンと分子状酸素を含む混合ガスから接触酸化脱水素により共役ジオレフィンを製造する反応において、コーク状物質の生成を抑制し反応の長期安定性を改善できる触媒とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、複合金属酸化物触媒のX線回折ピークにおける特定の結晶相の相対強度比が特定の範囲を満たすことによって前記コーク状物質の生成を大きく抑制でき、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明は以下の(1)から(10)の特徴を単独または組み合わせて有するものである。即ち、本発明は、以下の態様を含みうる。
(1) 炭素原子数4以上のモノオレフィンと分子状酸素を含む混合ガスから接触酸化脱水素反応により共役ジオレフィンを製造するための複合金属酸化物触媒であって、下記式(A)で表されるX線回折ピークの相対強度範囲を有することを特徴とする複合金属酸化物触媒:
0≦Rh(=Ph1/Ph2)<0.8 (A)
(式中、Ph1はX線回折ピークにおける2θ=28.1°±0.2°の範囲内の最大ピーク高さ、Ph2はX線回折ピークにおける2θ=27.9°±0.2°の範囲内の最大ピーク高さであり、RhはPh2に対するPh1の相対強度比である。)、
(2) 炭素原子数4以上のモノオレフィンと分子状酸素を含む混合ガスから接触酸化脱水素反応により共役ジオレフィンを製造するための複合金属酸化物触媒であって、下記式(B)で表されるX線回折ピークの相対面積強度範囲を有することを特徴とする複合金属酸化物触媒:
0≦Ra(=Pa1/Pa2)<0.5 (B)
(式中、Pa1はX線回折ピークにおける2θ=28.1°±0.2°の範囲内でフィッティングにより得られるピーク面積、Pa2はX線回折ピークにおける2θ=27.9°の範囲内でフィッティングにより得られるピーク面積であり、RaはPa2に対するPa1の相対面積強度比である。)、
(3) モリブデン(Mo)およびビスマス(Bi)並びにアルカリ金属(AM)および必要によりアルカリ土類金属(AEM)を含有し、各成分のモル比が下記式(C)を満たす、請求項1または請求項2に記載の複合金属酸化物触媒:
0.02≦Re<0.80 (C)
(式中、Re=(Biの含有量(モル))/{(Moの含有量(モル))−(MoおよびBi以外の金属成分の含有量(モル))}である。)、
(4) 次の組成式を満たす、上記(1)から(3)のいずれかに記載の複合金属酸化物触媒:
Mo12BiFeCoNi
(式中、MoはモリブデンBiはビスマス、Feは鉄、Coはコバルト、Niはニッケルを示し、Xはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属の少なくとも1種の元素を示し、Yはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムから選ばれるアルカリ土類金属の少なくとも1種の元素を示し、Zはランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロビウム、アンチモン、タングステン、鉛、亜鉛、セリウムおよびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Oは酸素を示し、a、b、c、d、e及びfは各々モリブデン12に対するビスマス、鉄、コバルト、ニッケル、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びZの原子比を示し、0.3<a<3.5、0.6<b<3.4、5<c<8、0<d<3、0<e<0.5、0≦f≦4.0、0≦g≦2.0の範囲にあり、hは他の元素の酸化状態を満足させる数値である。)、
(5) モリブデンを含有する化合物;ビスマスを含有する化合物;少なくとも1種のアルカリ金属を含有する化合物;必要により少なくとも1種のアルカリ土類金属を含有する化合物を含有するスラリーを調製し、乾燥して乾燥粉体とする工程、および前記乾燥粉体を200℃以上600℃以下の温度で焼成する工程を含む、上記(3)に記載の共役ジオレフィン製造用複合金属酸化物触媒の製造方法、
(6) モリブデンを含有する化合物;ビスマスを含有する化合物;鉄を含有する化合物;コバルトを含有する化合物;ニッケルを含有する化合物;リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属の少なくとも1種の元素を含有する化合物;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムから選ばれるアルカリ土類金属の少なくとも1種の元素を含有する化合物;ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロビウム、アンチモン、タングステン、鉛、亜鉛、セリウムおよびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素Zを含有する化合物を含有するスラリーを調製する工程、
ここで、a、b、c、d、e及びfは各々モリブデン12に対するビスマス、鉄、コバルト、ニッケル、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びZの原子比を示し、0.3<a<3.5、0.6<b<3.4、5<c<8、0<d<3、0<e<0.5、0≦f≦4.0、0≦g≦2.0の範囲にあり、
前記スラリーを乾燥して乾燥粉体とする工程、および
前記乾燥粉体を200℃以上600℃以下の温度で焼成する工程
を含む、上記(4)に記載の共役ジオレフィン製造用複合金属酸化物触媒の製造方法、
(7) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載の複合金属酸化物触媒を担体に担持した、共役ジオレフィン製造用担持触媒、
(8) 担体が球状担体である、上記(7)に記載の担持触媒、
(9) 平均粒径が3.0mm以上10.0mm以下であり、複合金属酸化物触媒の担持率が20重量%以上80重量以下である、上記(7)または(8)に記載の担持触媒、
(10) 担体に複合金属酸化物触媒をバインダーとともにコーティングする成形工程を有する、上記(7)〜(9)のいずれかに記載の共役ジオレフィン製造用担持触媒の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、炭素原子数4以上のモノオレフィンと分子状酸素を含む混合ガスから接触酸化脱水素により共役ジオレフィンを製造する反応において、コーク状物質の生成を抑制し反応の長期安定性を改善できる触媒とその製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明におけるX線回折ピークの測定方法を説明する。X線回折ピークはX線回折角2θの特定の値に対する散乱強度のチャートを意味し、その測定装置や測定条件等は一般に公知であれば詳細は問わない。
【0013】
次に、本発明におけるX線回折ピークの相対強度比Rhの算出方法を記載する。
X線回折測定における2θ=27.9°±0.2°の範囲内の回折ピークをピーク2、2θ=28.1°±0.2°の範囲内の回折ピークをピーク1とし、各ピークにおいて前記2θの範囲内で各々極大値を与える2θの値をピーク中心として、ピーク2およびピーク1の前記ピーク中心におけるピークの高さを、それぞれPh2およびPh1とする。こうして得られたPh1およびPh2より相対強度比Rhを下記式により算出する。
Rh(=Ph1/Ph2)
【0014】
次に、本発明におけるX線回折ピークの相対面積強度比Raの算出方法を記載する。
まず、前記ピーク1および前記ピーク2のピーク面積が必要となるが、その算出方法は一般に公知な方法であればその詳細を問わない。
以下に好ましい例を記載する。得られたX線回折ピークを電子データとしてパソコンに取り込み、前記ピーク2およびピーク1の各々の前記ピーク中心に対して、ピーク形状を分割型擬Voigt関数と仮定し、非対称因子を1と固定した条件でフィッティングする。フィッティングにより得られたピーク2およびピーク1のピーク面積をそれぞれPa2およびPa1とし、相対面積強度比Raを下記式により算出する。
Ra(=Pa1/Pa2)
【0015】
本発明の触媒は、X線回折の前記相対強度比Rhが、下記式(A)で表されることを特徴とする複合金属酸化物触媒である。さらにRhは、下記式(A’)が好ましく、さらに(A’’)が最も好ましい。
0≦Rh(=Ph1/Ph2)<0.8 (A)
0.08≦Rh(=Ph1/Ph2)<0.8 (A’)
0.12≦Rh(=Ph1/Ph2)<0.75 (A’’)
【0016】
本発明の触媒は、また、X線回折の前記相対面積強度比Raが、下記式(B)で表されることを特徴とする、複合金属酸化物触媒である。さらにRaは、下記式(B’)が好ましく、さらに(B’’)が最も好ましい。
0≦Ra(=Pa1/Pa2)<0.5 (B)
0.08≦Ra(=Pa1/Pa2)<0.5 (B’)
0.12≦Ra(=Pa1/Pa2)<0.48 (B’’)
【0017】
本発明において、上記式(A)および/または上記式(B)を満たす複合金属酸化物触媒が何故、炭素原子数4以上のモノオレフィンと分子状酸素を含む混合ガスから共役ジオレフィンを製造する反応において前記コーク状物質の生成を抑制できるのか、その詳細は不明であるが、原因の一つとして以下が考えられる。前記コーク状物質生成の一因として、非特許文献1にあるようにブタジエン特有のラジカル重合反応によるポリマー化が考えられる。一方、本反応の触媒活性成分として公知であるモリブデンおよびビスマスより形成されるビスマスモリブデートにおいて、結晶相にはαビスマスモリブデート、βビスマスモリブデート、及びγビスマスモリブデートが挙げられ、このうちγビスマスモリブデートが、αビスマスモリブデートと比較してラジカル活性種の生成量が多いことが、非特許文献2および非特許文献3より公知である。すなわち、ビスマスモリブデートを含む複合金属酸化物触媒において、γビスマスモリブデート(前記ピーク1に相当)の含有量がαビスマスモリブデート(前記ピーク2に相当)の含有量と比較して少なければブタジエンのラジカル重合反応が抑制され、前記コーク状物質の生成も抑制されると推測される。しかしながら、本発明のようにモリブデンとビスマス以外の金属元素を加えた複合金属酸化物触媒において、具体的にX線回折パターンのどのピークの相対強度比が、どの範囲に入れば前記コーク状物質の生成の抑制に好ましいのかといった知見は知られていなかった。
【0018】
上述のようにモリブデンとビスマス以外の金属元素を加えた複合金属酸化物触媒において、γビスマスモリブデートとαビスマスモリブデートの含有量の比を変化させるには、後述する複合金属酸化物触媒の各元素の組成比および触媒調製における各種製造パラメーターの任意の調節により達成が可能であるが、例えば以下の方法が好ましい。複合金属酸化物触媒の各元素の組成比として、下記式で表現されるReを仮定する。Reの分母は、各金属元素とモリブデンが原子比で1対1により結合すると仮定した場合の、ビスマス以外の金属元素と結合した結果の残余モリブデンの原子比を表しており、Reとはモリブデンとビスマス以外の金属元素を加えた複合金属酸化物触媒において、前記残余モリブデンと、ビスマスの原子比率を表す。
Re=(Biの含有量(モル))/{(Moの含有量(モル))−(MoおよびBi以外の金属成分の含有量(モル)}
なお、本発明の触媒が担持触媒である場合、この計算に、担体を構成する元素(Si、Al等)の含有量は含まれない。
【0019】
本発明の触媒は、Reが下記式(C)で表されるものが好ましい。
0.02≦Re<0.80 (C)
Reは、0.26以上0.62以下が好ましく、0.37以上0.51以下がさらに好ましい。非特許文献4において、モリブデンとビスマスのみから成る触媒においてはビスマスが少ないほどγビスマスモリブデートの含有率が減少することが公知であることから、本発明のように複合金属酸化物触媒においては前記Reの値が低いほど、前述同様γビスマスモリブデートの含有率が減少し、前記コーク状物質の生成の抑制が期待できる。しかしながら、本発明のようにモリブデンとビスマス以外の金属元素を加えた複合金属酸化物触媒において、工業的に有意な触媒の活性および収率を有しながら、具体的にReをどの範囲に指定すれば前記Rhおよび前記Raを調節でき、さらに前記コーク状物質の生成の抑制に好ましいのかといった知見は、これまで公知ではなかった。
【0020】
γビスマスモリブデートとαビスマスモリブデートの含有量の比を変化させる他の方法としては、非特許文献4にあるように焼成条件も挙げられる。好ましい焼成条件(焼成温度、焼成時間、昇温時間、および焼成時の雰囲気)は後述するが、触媒の活性および収率に影響を及ぼすため、コーク状物質生成の抑制とあわせて最適な条件が選定されるべきである。γビスマスモリブデートとαビスマスモリブデートの含有量の比を変化させるための焼成条件の選定は、式(C)によるRe調節(複合金属酸化物触媒の組成比の調節)とは無関係または関連して行われる。
【0021】
本発明の触媒は、式(1)で表される組成式を満たすものが好ましい。
Mo12BiFeCoNi・・・(1)
(式中、MoはモリブデンBiはビスマス、Feは鉄、Coはコバルト、Niはニッケルを示し、Xはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属の少なくとも1種の元素を示し、Yはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムから選ばれるアルカリ土類金属の少なくとも1種の元素を示し、Zはランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロビウム、アンチモン、タングステン、鉛、亜鉛、セリウムおよびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Oは酸素を示し、a、b、c、d、e及びfは各々モリブデン12に対するビスマス、鉄、コバルト、ニッケル、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びZの原子比を示し、0.3<a<3.5、0.6<b<3.4、5<c<8、0<d<3、0<e<0.5、0≦f≦4.0、0≦g≦2.0の範囲にあり、hは他の元素の酸化状態を満足させる数値である。)。
【0022】
本発明の触媒を得るための各金属元素の原料としては特に制限はないが、各金属元素を少なくとも一種含む硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩、有機酸塩、酢酸塩、炭酸塩、次炭酸塩、塩化物、無機酸、無機酸の塩、ヘテロポリ酸、ヘテロポリ酸の塩、水酸化物、酸化物、金属、合金等、またはこれらの混合物を用いることができる。このうち好ましいのは硝酸塩原料である。
【0023】
本発明の触媒の調製法としては特に制限はないが、大別すると以下の通り2種類の調製法があり、便宜的に本発明において(A)法および(B)法とする。(A)法は触媒の活性成分を粉末として得た後、これを成形する方法であり、(B)法は予め成形された担体上に、触媒の活性成分の溶解した溶液を接触させて担持させる方法である。以下で(A)法および(B)法の詳細を記載する。
【0024】
以下では(A)法による触媒調製方法を記載する。以下で各工程の順を好ましい例として記載しているが、最終的な触媒製品を得るための各工程の順番、工程数、各工程の組み合わせについて制限はないものとする。
【0025】
工程(A1) 調合と乾燥
原料化合物の混合溶液またはスラリーを調製し、沈殿法、ゲル化法、共沈法、水熱合成法等の工程を経た後、乾燥噴霧法、蒸発乾固法、ドラム乾燥法、凍結乾燥法等の公知の乾燥方法を用いて、本発明の乾燥粉体を得る。ここで前記混合溶液または前記スラリーは、溶媒として水、有機溶剤、またはこれらの混合溶液のいずれでも良く、触媒の活性成分の原料濃度も制限はなく、更に、前記混合溶液または前記スラリーの液温、雰囲気等の調合条件および乾燥条件について特に制限はないが、最終的な触媒の性能、機械的強度、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択されるべきである。このうち本発明において最も好ましいのは、20〜90℃の温度範囲で触媒の活性成分の原料のスラリーを形成させ、これを噴霧乾燥器に導入して乾燥器出口温度が70〜150℃、得られる乾燥粉体の平均粒径が10〜700μmとなるよう熱風入口温度、噴霧乾燥器内部の圧力、およびスラリーの流量を調節する方法である。
【0026】
工程(A2) 予備焼成
こうして得られた前記乾燥粉体を200〜600℃で予備焼成し、本発明の予備焼成粉体を得ることができる。ここで、前記予備焼成の条件に関しても、焼成時間や焼成時の雰囲気について特に制限はなく、焼成の手法も流動床、ロータリーキルン、マッフル炉、トンネル焼成炉など特に制限はなく、最終的な触媒の性能、機械的強度、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択されるべきである。このうち本発明において最も好ましいのは、トンネル焼成炉において300〜600℃の温度範囲で1〜12時間、空気雰囲気下による方法である。
【0027】
工程(A3) 成形
こうして得られた前記予備焼成粉体をそのまま触媒として使用することもできるが、成形して使用することもできる。成形品の形状は球状、円柱状、リング状など特に制限されないが、一連の調製で最終的に得られる触媒における機械的強度、反応器、調製の生産効率等を考慮して選択するべきである。成形方法についても特に制限はないが、以下段落に示す担体や成形助剤、強度向上剤、バインダー等を前記予備焼成粉体に添加して円柱状、リング状に成形する際には打錠成形機や押出成形機などを用い、球状に成形する際には造粒機などを用いて成形品を得る。このうち本発明において最も好ましいのは、不活性な球状担体に前記予備焼成粉体を転動造粒法によりコーティングさせ担持成形する方法である。
【0028】
前記担体の材質としてはアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、シリカアルミナ、炭化ケイ素、炭化物、およびこれらの混合物など公知の物を使用でき、さらにその粒径、吸水率、機械的強度、各結晶相の結晶化度や混合割合なども特に制限はなく、最終的な触媒の性能、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択されるべきである。前記担体と前記予備焼成粉体の混合の割合は、各原料の仕込み重量により、下記式より担持率として算出される。
担持率(重量%)=(成形に使用した前記予備焼成粉体の重量)/{(成形に使用した前記予備焼成粉体の重量)+(成形に使用した前記担体の重量)}×100
【0029】
前記成形に使用する前記予備焼成粉体以外の原料として、前記予備焼成粉体と結晶性セルロ−スなどの成形助剤、またはセラミックウィスカ−などの強度向上剤、バインダ−としてアルコ−ル、ジオ−ル、トリオ−ル、およびそれらの水溶液等を任意の種類および混合割合で用いて成形することができ、特に制限はない。また、このバインダーに前記触媒原料の溶液を使用することで、前記工程(A1)とは異なる態様で触媒の最表面に元素を導入することも可能である。
【0030】
工程(A4) 本焼成
このようにして得られた前記予備焼成粉体または前記成形品は、反応に使用する前に200〜600℃で再度焼成(本焼成)することが好ましい。本焼成に関しても、焼成時間や焼成時の雰囲気について特に制限はなく、焼成の手法も流動床、ロータリーキルン、マッフル炉、トンネル焼成炉など特に制限はなく、最終的な触媒の性能、機械的強度や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択されるべきである。このうち本発明において最も好ましいのは、トンネル焼成炉において300〜600℃の温度範囲で1〜12時間、空気雰囲気下による方法である。
【0031】
次に、以下では(B)法による触媒調製方法を記載する。以下では各工程を順に記載しているが、最終的な触媒を得るための各工程の順番、工程数、各工程の組み合わせについて制限はないものとする。
【0032】
工程(B1) 含浸
触媒の活性成分が導入された溶液またはスラリーを調製し、ここに成形担体または(A)法で得た触媒を含浸させ、成形品を得る。ここで、含浸による触媒の活性成分の担持手法はディップ法、インシピエントウェットネス法、イオン交換法、PHスイング法など特に制限はなく、前記溶液または前記スラリーの溶媒として水、有機溶剤、またはこれらの混合溶液のいずれでも良く、触媒の活性成分の原料濃度も制限はなく、更に、前記混合溶液または前記スラリーの液温、液にかかる圧力、液の周囲の雰囲気についても特に制限はないが、最終的な触媒の性能、機械的強度、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択されるべきである。また、前記成形担体および前記(A)法で得た触媒のいずれも形状は球状、円柱状、リング状、粉末状など特に制限はなく、さらに材質、粒径、吸水率、機械的強度も特に制限はない。
【0033】
工程(B2) 乾燥
こうして得られた前記成形品を、蒸発乾固法、ドラム乾燥法、凍結乾燥法等の公知の乾燥方法を用いて20〜200℃の範囲において熱処理を行い、本発明の触媒成形乾燥体を得る。焼成時間や焼成時の雰囲気について特に制限はなく、焼成の手法も流動床、ロータリーキルン、マッフル炉、トンネル焼成炉など特に制限はなく、最終的な触媒の性能、機械的強度、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択されるべきである。
【0034】
工程(B3) 本焼成
こうして得られた前記触媒成形乾燥体を、蒸発乾固法、ドラム乾燥法、凍結乾燥法等の公知の乾燥方法を用いて200〜600℃の範囲において熱処理を行い、本発明の触媒を得る。ここで、焼成時間や焼成時の雰囲気について特に制限はなく、焼成の手法も流動床、ロータリーキルン、マッフル炉、トンネル焼成炉など特に制限はなく、最終的な触媒の性能、機械的強度、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択されるべきである。このうち本発明において最も好ましいのは、トンネル焼成炉において300〜600℃の温度範囲で1〜12時間、空気雰囲気下による方法である。
【0035】
以上の調製により得られた触媒は、その形状やサイズに特に制限はないが、反応管への充填の作業性と充填後の反応管内の圧力損失等を勘案すると、形状は球形状、平均粒径は3.0〜10.0mm、また複合金属酸化物触媒の担持率は20〜80重量%が好ましい。
【0036】
本発明の触媒は以下に示すように、少なくとも反応開始前において一定の機械的強度を有することが好ましい。前述の通り、炭素原子数4以上のモノオレフィンから共役ジオレフィンを製造する反応を、特に工業プラントで実施する場合にはコーク状物質の生成およびコーク状物質の燃焼のための再生処理を行う場合が多く、触媒に機械的強度が不足すると、それぞれ触媒内部でコーク状物質が生成することによる触媒の破損および再生処理における燃焼ガスによる触媒の破損および/または触媒の劣化が考えられ、さらには破損した触媒が反応器内に蓄積し圧力損失の増大、反応器内に局所的に蓄積した触媒による望ましくない反応および/または収率の低下、および後段の精製系への混入等、諸々のトラブルに繋がる点が懸念される。ここで、触媒の機械的強度は成形時に添加した各種強度向上剤やバインダーの種類や量、またはそれらの組み合わせや、触媒組成の原子比や各結晶相の相形態およびそれらの割合、更に調合工程や乾燥工程で形成される複合金属酸化物触媒の二次粒子の直径、幾何学的構造、および凝集形態等さまざまな調製工程で影響を受け、触媒の性能とも密接な関係がある。すなわち、本発明の課題はより詳細には、炭素原子数4以上のモノオレフィンから共役ジオレフィンを製造する反応において、前記コーク状物質の生成の抑制、高い共役ジオレフィンの収率、および高い機械的強度を同時に満たす触媒が求められていたと言える。
【0037】
本発明において機械的強度を表す指標である磨損度は、以下方法により算出される。装置として林理化学社製錠剤磨損度試験器を用い、回転数を25rpm、処理時間を10分間として触媒サンプル50gを処理した後、目開きが1.70mmの標準ふるいで摩損した分をふるい、前記ふるい上に残った触媒重量を測定し、下記式により算出する。磨損度の値は小さいほど機械的強度が優れており、好ましい範囲としてはたとえば3重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。
磨損度(重量%)=100×〔(触媒重量−ふるい上に残った触媒重量)/触媒重量〕
【0038】
本発明の触媒による炭素原子数4以上のモノオレフィンから共役ジオレフィンを製造する反応の条件は、原料ガス組成として1〜20容量%のモノオレフィン、5〜20容量%の分子状酸素、0〜60容量%の水蒸気及び0〜94容量%の不活性ガス、例えば窒素、炭酸ガスを含む混合ガスを用い、反応浴温度としては200〜500℃の範囲であり、反応圧力としては常圧〜10気圧の圧力下、本発明の触媒成形体に対する前記原料ガスの空間速度(GHSV)は350〜7000hr−1の範囲となる。反応の形態として固定床、移動床、および流動床の中で制約はないが、固定床が好ましい。
【0039】
本発明の触媒は、炭素原子数4以上のモノオレフィンと分子状酸素を含む混合ガスから接触酸化脱水素反応により共役ジオレフィンを製造する反応に使用できる。より狭義には、本発明の触媒はn−ブテンと分子状酸素を含む混合ガスから接触酸化脱水素反応によりブタジエンを製造する反応に使用できる。
【0040】
本発明においてn−ブテンとは1−ブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、イソブチレンのうち、単一成分のガス、もしくは少なくとも一つの成分を含む混合ガスを意味するものとし、ブタジエンとはより厳密には1,3−ブタジエンを意味するものとする。
【0041】
本発明においてコーク状物質とは前記共役ジオレフィンを製造する反応において、反応原料または反応生成物または反応副生成物の少なくともいずれかにより生じるものであり、その化学的組成や生成メカニズムの詳細は不明であるが、触媒表面、イナート物質、反応管内や後工程設備内に析出または付着することによって、特に工業プラントにおいては反応ガスの流通の阻害、反応管の閉塞やそれらに伴う反応のシャットダウン等さまざまなトラブルを引き起こす原因物質であるものとする。さらに、前記トラブルを回避する目的で、工業プラントでは一般的に閉塞が生じる前に反応を中止し反応浴温度の昇温等により前記コーク状物質を燃焼除去する再生処理を行う。また、前記コーク状物質の生成メカニズムとしては、たとえば以下が想定される。すなわち、モリブデンを含む複合金属酸化物触媒の使用の際には昇華し反応器内に析出したモリブデン化合物を起点とした各種オレフィン類の重合および高沸点化合物の凝縮によるもの、触媒および反応器内の異常酸塩基点やラジカル生成点を起点とした各種オレフィン類の重合および高沸点化合物の凝縮によるもの、共役ジエンおよびその他オレフィン化合物によるディールスアルダー反応による高沸点化合物の生成および反応器内で局所的に温度が低い点における凝縮によるもの、などが挙げられ、前記以外にも種々のメカニズムが知られている。
【0042】
本発明により、炭素原子数4以上のモノオレフィンと分子状酸素を含む混合ガスから接触酸化脱水素により共役ジオレフィンを製造する反応において、コーク状物質の生成を抑制し反応の長期安定性を改善できる触媒とその製造方法を得ることができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において、%は特に断りがない限りmol%を意味する。また、以下においてn−ブテン転化率、ブタジエン収率、TOSの定義とは、以下の通りである。
【0044】
n−ブテン転化率(モル%)
=(反応したn−ブテンのモル数/供給したn−ブテンのモル数)×100
ブタジエン収率(モル%)
=(生成したブタジエンのモル数/供給したn−ブテンのモル数)×100
TOS=混合ガス流通時間(時間)
【0045】
また、実施例、比較例における触媒サンプルのX線回折ピークは以下のようにして測定した。
X線結晶構造解析装置:リガク社製UltimaIV
光源:Cu−Kα線
管電圧:40kV
管電流:30mA
入射スリットおよび受光スリット:開放
スキャン速度:10°/min
サンプリング幅:0.02°
なお、触媒サンプルが粉末でなく成形品の場合には、メノウ乳鉢で10分以上粉砕、混合してから測定した。
【0046】
実施例1
(触媒1の調製)
ヘプタモリブデン酸アンモニウム800重量部を80℃に加温した純水3000重量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸セシウム11重量部を純水124mlに溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸第二鉄275重量部、硝酸コバルト769重量部及び硝酸ニッケル110重量部を60℃に加温した純水612mlに溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス165重量部を60℃に加温した純水175mlに硝酸(60重量%)42重量部を加えて調製した硝酸ビスマス水溶液に溶解させ、母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、5時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた球状成形品を、500℃、5時間の条件で焼成し、本発明の触媒1を得た。仕込み原料から計算される触媒1の原子比は、Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:0.9:1.8:7.0:1.0:0.15であり、磨損度は0.41重量%であった。また、触媒1のX線回折ピークの相対強度比はRh=0.08、Ra=0.10、さらにRe=0.44であった。
【0047】
実施例2
(触媒3の調製)
実施例1において、母液1に加えた硝酸ビスマス水溶液を以下のように調製した以外は触媒1と同じように調製し、本発明の触媒3を得た。硝酸ビスマス46重量部を60℃に加温した純水49mlに硝酸(60重量%)12重量部を加えて調製した。仕込み原料から計算される触媒3の原子比は、Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:0.3:1.8:7.0:1.0:0.15であり、X線回折ピークの相対強度比はRh=0.44、Ra=0.32、さらにRe=0.12であった。
【0048】
実施例3
(触媒4の調製)
実施例1において、母液1に加えた硝酸ビスマス水溶液を以下のように調製した以外は触媒1と同じように調製し、本発明の触媒4を得た。硝酸ビスマス83重量部を60℃に加温した純水88mlに硝酸(60重量%)21重量部を加えて調製した。仕込み原料から計算される触媒4の原子比は、Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:0.5:1.8:7.0:1.0:0.15であり、X線回折ピークの相対強度比はRh=0.65、Ra=0.35、さらにRe=0.22であった。
【0049】
実施例4
(触媒5の調製)
実施例1において、母液1に加えた硝酸ビスマス水溶液を以下のように調製した以外は触媒1と同じように調製し、本発明の触媒5を得た。硝酸ビスマス105重量部を60℃に加温した純水112mlに硝酸(60重量%)27重量部を加えて調製した。仕込み原料から計算される触媒5の原子比は、Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:0.6:1.8:7.0:1.0:0.15であり、X線回折ピークの相対強度比はRh=0.58、Ra=0.41、さらにRe=0.28であった。
【0050】
実施例5
(触媒6の調製)
実施例1において、母液1に加えた硝酸ビスマス水溶液を以下のように調製した以外は触媒1と同じように調製し、本発明の触媒6を得た。硝酸ビスマス120重量部を60℃に加温した純水127mlに硝酸(60重量%)31重量部を加えて調製した。仕込み原料から計算される触媒6の原子比は、Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:0.7:1.8:7.0:1.0:0.15であり、X線回折ピークの相対強度比はRh=0.37、Ra=0.41、さらにRe=0.32であった。
【0051】
実施例6
(触媒7の調製)
実施例1において、母液1に加えた硝酸ビスマス水溶液を以下のように調製した以外は触媒1と同じように調製し、本発明の触媒7を得た。硝酸ビスマス180重量部を60℃に加温した純水191mlに硝酸(60重量%)46重量部を加えて調製した。仕込み原料から計算される触媒7の原子比は、Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:1.0:1.8:7.0:1.0:0.15であり、X線回折ピークの相対強度比はRh=0.46、Ra=0.48、さらにRe=0.48であった。
【0052】
実施例7
(触媒8の調製)
実施例1において、母液1に加えた硝酸ビスマス水溶液を以下のように調製した以外は触媒1と同じように調製し、本発明の触媒8を得た。硝酸ビスマス195重量部を60℃に加温した純水207mlに硝酸(60重量%)50重量部を加えて調製した。仕込み原料から計算される触媒8の原子比は、Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:1.1:1.8:7.0:1.0:0.15であり、X線回折ピークの相対強度比はRh=0.71、Ra=0.33、さらにRe=0.52であった。
【0053】
実施例8
(触媒9の調製)
実施例1において、母液1に加えた硝酸ビスマス水溶液を以下のように調製した以外は触媒1と同じように調製し、本発明の触媒9を得た。硝酸ビスマス246重量部を60℃に加温した純水261mlに硝酸(60重量%)63重量部を加えて調製した。仕込み原料から計算される触媒9の原子比は、Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:1.3:1.8:7.0:1.0:0.15であり、X線回折ピークの相対強度比はRh=0.57、Ra=0.34、さらにRe=0.66であった。
【0054】
実施例9
(触媒10の調製)
実施例1において、母液1に加えた硝酸ビスマス水溶液を以下のように調製した以外は触媒1と同じように調製し、本発明の触媒10を得た。硝酸ビスマス302重量部を60℃に加温した純水321mlに硝酸(60重量%)77重量部を加えて調製した。仕込み原料から計算される触媒10の原子比は、Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:1.6:1.8:7.0:1.0:0.15であり、X線回折ピークの相対強度比はRh=0.79、Ra=0.50、さらにRe=0.80であった。
【0055】
実施例10
(触媒11の調製)
実施例1において、母液1に加えた硝酸第二鉄および硝酸コバルトおよび硝酸ニッケルの混合水溶液を以下のように調製した以外は触媒1と同じように調製し、本発明の触媒11を得た。硝酸第二鉄275重量部、硝酸コバルト880重量部及び硝酸ニッケル110重量部を60℃に加温した純水666mlに溶解させ、調製した。仕込み原料から計算される触媒11の原子比は、Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:0.9:1.8:8.3:1.0:0.15であり、X線回折ピークの相対強度比はRh=0.73、Ra=0.43、さらにRe=0.80であった。
【0056】
実施例11
(触媒12の調製)
実施例1において、母液1に加えた硝酸第二鉄および硝酸コバルトおよび硝酸ニッケルの混合水溶液を以下のように調製した以外は触媒1と同じように調製し、本発明の触媒12を得た。硝酸第二鉄275重量部、硝酸コバルト769重量部及び硝酸ニッケル210重量部を60℃に加温した純水665mlに溶解させ、調製した。仕込み原料から計算される触媒12の原子比は、Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:0.9:1.8:7.0:1.9:0.15であり、X線回折ピークの相対強度比はRh=0.22、Ra=0.17、さらにRe=0.79であった。
【0057】
実施例12
(触媒13の調製)
実施例1において、母液1に加えた硝酸セシウム水溶液を以下のように調製した以外は触媒1と同じように調製し、本発明の触媒13を得た。硝酸セシウム3.5重量部を純水40mlに溶解させて調製した。仕込み原料から計算される触媒13の原子比は、Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:0.9:1.8:7.0:1.0:0.05であり、X線回折ピークの相対強度比はRh=0.34、Ra=0.34、さらにRe=0.42であった。
【0058】
実施例13
(触媒14の調製)
実施例1において、硝酸ビスマス水溶液を母液1に加えた後、さらに以下の水溶液を調製して母液1に加えた以外は触媒1と同じように調製し、本発明の触媒14を得た。硝酸カルシウム80重量部を純水88mlに溶解させて調製した。仕込み原料から計算される触媒14の原子比は、Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs:Ca=12:0.9:1.8:7.0:1.0:0.15:0.9であり、X線回折ピークの相対強度比はRh=0.76、Ra=0.49、さらにRe=0.78であった。
【0059】
実施例14
(触媒15の調製)
実施例1において、硝酸ビスマス水溶液を母液1に加えた後、さらに以下の水溶液を調製して母液1に加えた以外は触媒1と同じように調製し、本発明の触媒15を得た。硝酸マグネシウム87重量部を純水96mlに溶解させて調製した。仕込み原料から計算される触媒15の原子比は、Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs:Mg=12:0.9:1.8:7.0:1.0:0.15:0.9であり、X線回折ピークの相対強度比はRh=0.76、Ra=0.48、さらにRe=0.78であった。
【0060】
実施例15
(触媒16の調製)
実施例1において、母液1に加えた硝酸ビスマス水溶液を以下のように調製した以外は触媒1と同じように調製し、本発明の触媒16を得た。硝酸ビスマス4.0重量部を60℃に加温した純水4.2mlに硝酸(60重量%)1.0重量部を加えて調製した。仕込み原料から計算される触媒16の原子比は、Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:0.02:1.8:7.0:1.0:0.15であり、X線回折ピークの相対強度比はRh=0.07、Ra=0.07、さらにRe=0.01であった。
【0061】
実施例16
(触媒17の調製)
実施例1において、母液1に加えた硝酸ビスマス水溶液を以下のように調製した以外は触媒1と同じように調製し、本発明の触媒17を得た。硝酸ビスマス10重量部を60℃に加温した純水11mlに硝酸(60重量%)2.5重量部を加えて調製した。仕込み原料から計算される触媒17の原子比は、Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:0.1:1.8:7.0:1.0:0.15であり、X線回折ピークの相対強度比はRh=0.10、Ra=0.11、さらにRe=0.03であった。
【0062】
比較例1
(触媒2の調製)
ヘプタモリブデン酸アンモニウム800重量部を80℃に加温した純水3000重量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸セシウム11重量部を純水124mlに溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸第二鉄275重量部、硝酸コバルト769重量部及び硝酸ニッケル110重量部を60℃に加温した純水612mlに溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス311重量部を60℃に加温した純水330mlに硝酸(60重量%)79重量部を加えて調製した硝酸ビスマス水溶液に溶解させ、母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、5時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた球状成形品を、520℃、5時間の条件で焼成し、比較用の触媒2を得た。仕込み原料から計算される触媒2の原子比は、Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:1.7:1.8:7.0:1.0:0.15であり、磨損度は0.31重量%であった。また、触媒2のX線回折ピークの相対強度比はRh=0.93、Ra=0.56、さらにRe=0.83であった。
【0063】
試験例1
(コーク析出反応)
実施例1で得られた触媒1を以下の方法により反応評価した。触媒53mlをステンレス鋼反応管に充填し、ガス体積比率が1−ブテン:酸素:窒素:水蒸気=1:1:7:1の混合ガスを用い、常圧下、GHSV1200hr−1の条件で、1−ブテン転化率=98.0±1.0%を保持できるよう反応浴温度を変化させてTOS290時間まで反応し、コーク状物質を触媒上に析出させた。反応管出口で、コンデンサーにより液成分とガス成分を分離し、ガス成分中の各成分を各々水素炎イオン化検出器と熱伝導検出器が装着されたガスクロマトグラフで定量分析した。ガスクロマトグラフにより得られた各データはファクター補正し、1−ブテン転化率およびブタジエン収率を算出した。TOS260時間におけるブタジエン収率は86.2%であった。
【0064】
(コーク燃焼反応)
前記コーク析出反応の後、触媒上に析出したコーク状物質を燃焼させる目的で、反応浴温度を400℃としてガス体積比率が酸素:窒素=1:3の混合ガスを用い、常圧下、空間速度400hr−1でTOS10時間程度燃焼反応させた。前記コーク析出反応と同様の定量分析を行い、反応管出口ガス中のCO2およびCOの累積生成量よりコーク状物質量を、充填した触媒の重量に対する百分率で算出した。
【0065】
試験例2
試験例1において、コーク析出反応のTOSを360時間とした以外は、同じ反応条件で析出したコーク状物質量の評価を行った。TOS330時間におけるブタジエン収率は86.2%であった。
【0066】
試験例3
試験例1において、評価する触媒を実施例2により得られた触媒3とした以外は、同じ反応条件で析出したコーク状物質量の評価を行った。
【0067】
試験例4
試験例1において、評価する触媒を実施例3により得られた触媒4とした以外は、同じ反応条件で析出したコーク状物質量の評価を行った。
【0068】
試験例5
試験例1において、評価する触媒を実施例4により得られた触媒5とした以外は、同じ反応条件で析出したコーク状物質量の評価を行った。
【0069】
試験例6
試験例1において、評価する触媒を実施例5により得られた触媒6とした以外は、同じ反応条件で析出したコーク状物質量の評価を行った。
【0070】
試験例7
試験例1において、評価する触媒を実施例6により得られた触媒7とした以外は、同じ反応条件で析出したコーク状物質量の評価を行った。
【0071】
試験例8
試験例1において、評価する触媒を実施例7により得られた触媒8とした以外は、同じ反応条件で析出したコーク状物質量の評価を行った。
【0072】
試験例9
試験例1において、評価する触媒を実施例8により得られた触媒9とした以外は、同じ反応条件で析出したコーク状物質量の評価を行った。
【0073】
試験例10
試験例1において、評価する触媒を実施例9により得られた触媒10とした以外は、同じ反応条件で析出したコーク状物質量の評価を行った。
【0074】
試験例11
試験例1において、評価する触媒を実施例10により得られた触媒11とした以外は、同じ反応条件で析出したコーク状物質量の評価を行った。
【0075】
試験例12
試験例1において、評価する触媒を実施例11により得られた触媒12とした以外は、同じ反応条件で析出したコーク状物質量の評価を行った。
【0076】
試験例13
試験例1において、評価する触媒を実施例12により得られた触媒13とした以外は、同じ反応条件で析出したコーク状物質量の評価を行った。
【0077】
試験例14
試験例1において、評価する触媒を実施例13により得られた触媒14とした以外は、同じ反応条件で析出したコーク状物質量の評価を行った。
【0078】
試験例15
試験例1において、評価する触媒を実施例14により得られた触媒15とした以外は、同じ反応条件で析出したコーク状物質量の評価を行った。
【0079】
試験例16
試験例1において、評価する触媒を実施例15により得られた触媒16とした以外は、同じ反応条件で析出したコーク状物質量の評価を行った。
【0080】
試験例17
試験例1において、評価する触媒を実施例16により得られた触媒17とした以外は、同じ反応条件で析出したコーク状物質量の評価を行った。
【0081】
比較試験例1
試験例1において、評価する触媒を比較例1により得られた触媒2とした以外は、同じ反応条件で析出したコーク状物質量の評価を行った。TOS260時間におけるブタジエン収率は87.5%であった。
【0082】
比較試験例2
比較試験例1において、コーク析出反応のTOSを360時間とした以外は、同じ反応条件で析出したコーク状物質量の評価を行った。TOS330時間におけるブタジエン収率は85.5%であった。
【0083】
以上の試験例、比較試験例によるコーク析出反応の結果を表1に示す。表1で明らかなように本発明の触媒において、X線回折ピークの相対強度比が本発明で規定した範囲内にあれば、前記コーク状物質の生成を大幅に抑制できることが分かる。
【0084】
【表1】