(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半導体ウエハがダイシングされて生産された複数のダイ部品を保持したウエハ保持部材をテーブルに固定する固定部材を有して、前記ダイ部品を供給するダイ部品供給装置と、
昇降動作して前記ダイ部品供給装置から前記ダイ部品を採取し基板に装着する装着ノズル、前記装着ノズルを昇降可能に保持する実装ヘッド、および前記実装ヘッドを水平二方向に駆動するヘッド駆動機構を有する部品移載装置と、
複数の電子部品を保持したキャリアテープを繰り出して、部品供給位置で前記キャリアテープから前記電子部品を前記部品移載装置に順次供給するフィーダ装置と、を備えた部品実装機であって、
前記ダイ部品供給装置は、
前記テーブルを昇降して前記ダイ部品の供給高さを変更する高さ変更部と、
前記ウエハ保持部材および前記固定部材の最上端の高さであるウエハ側高さが、前記ダイ部品供給装置から前記基板に移動するときの前記実装ヘッド、前記装着ノズル、および前記装着ノズルに採取された前記ダイ部品の最下端の高さであるヘッド側高さよりも低くなるように、前記供給高さを決定する供給高さ決定部と、をさらに有し、
前記供給高さ決定部は、前記部品供給位置の高さに前記供給高さを一致させる使用条件を常用し、前記使用条件下で前記ウエハ側高さが前記ヘッド側高さよりも低くならない場合に限り、前記部品供給位置の高さよりも前記供給高さを下げる部品実装機。
前記供給高さ決定部は、複数の前記ダイ部品の位置の変化に対応して移動する前記実装ヘッドの移動経路が前記ウエハ保持部材および前記固定部材に干渉しない間、前記部品移載装置による前記ダイ部品の採取および装着が効率良く行われる前記供給高さを採用し、前記実装ヘッドの移動経路が前記ウエハ保持部材および前記固定部材の少なくとも一方に干渉するおそれが生じると、前記ウエハ側高さが前記ヘッド側高さよりも低くなる前記供給高さを採用する請求項1〜3のいずれか一項に記載の部品実装機。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1.第1実施形態の部品実装機1の構成)
本発明の第1実施形態の部品実装機1について、
図1〜
図11を参考にして説明する。
図1は、第1実施形態の部品実装機1の構成を模式的に示す側面図である。
図2は、第1実施形態の部品実装機1の機台9上の構成の一部を模式的に示す平面図である。また、
図3は、第1実施形態の部品実装機1の制御の構成を示すブロック図である。部品実装機1は、基板搬送装置2、ダイ部品供給装置3、複数のフィーダ装置4、部品移載装置5、部品カメラ6、および制御装置7などが機台9に組み付けられて構成されている。
図1および
図2の左側を部品実装機1の前側とし、
図1および
図2の右側を部品実装機1の後側とする。
図1の紙面表側から裏側に向かう方向、および
図2の下側から上側に向かう方向が基板Kを搬入出する搬送方向となる。
【0012】
基板搬送装置2は、機台9の上面の前側に配設されている。基板搬送装置2は、一対のガイドレール21、一対のコンベアベルト22、およびバックアップ装置23などで構成されている。一対のガイドレール21は、搬送方向に平行に延在し、かつ互いに平行して機台9に組み付けられている。一対のガイドレール21の向かい合う内側に、無端環状の一対のコンベアベルト22が並設されている。一対のコンベアベルト22は、コンベア搬送面に基板Kの向かい合う長辺をそれぞれ戴置した状態で輪転して、基板Kを装着実施位置に搬入および搬出する。装着実施位置の下方には、バックアップ装置23が配設されている。バックアップ装置23は、バックアップピン24を突き上げることにより、基板Kを押し上げて水平姿勢でクランプし、装着実施位置に位置決めする。これにより、部品移載装置5が装着実施位置で装着動作を行えるようになる。
【0013】
ダイ部品供給装置3は、ウエハパレット35を用いて、部品移載装置5にダイ部品Dを供給する。ダイ部品供給装置3は、図略の台車を用いて搬送され、機台9の上面の後側に着脱可能に装備される。ダイ部品供給装置3は、ウエハパレット35を収納する収納マガジン31、部品供給部32、パレット引き出し部33、および部品供給制御部38などが、架台39に組み付けられて構成されている。
【0014】
収納マガジン31は、架台39の上面の後側に配設されている。収納マガジン31は、概ね縦長の箱形状に形成されており、内部に複数段の収納棚311が設けられている。各収納棚311は、それぞれウエハパレット35を収納可能であり、かつウエハパレット35を前側に引き出せるようになっている。ウエハパレット35は、半導体ウエハがダイシングされて生産された複数のダイ部品Dが貼着されたダイシングシートSと、ダイシングシートSを保持するウエハリング36とを含む。ウエハリング36は、複数のダイ部品Dを保持した本発明のウエハ保持部材に相当する。
【0015】
部品供給部32は、架台39の上面の前側に配設されている。部品供給部32は、テーブル321、2個のクランプ部322、および昇降機構323などで構成されている。テーブル321の上面には、パレット引き出し部33によって引き出されたウエハパレット35が載置される。2個のクランプ部322は、引き出されたウエハパレット35を上側から下向きに押圧する。これにより、2個のクランプ部322は、ウエハリング36の向かいあった2箇所の上面に当接して、テーブル321との間にウエハパレット35を固定する。クランプ部322は、ウエハ保持部材(ウエハリング36)をテーブル321に固定する本発明の固定部材に相当する。昇降機構323は、テーブル321、クランプ部322、および固定されたウエハパレット35を一体的に昇降駆動する。昇降機構323は、ダイ部品Dの供給高さを変更する本発明の高さ変更部に相当する。
【0016】
パレット引き出し部33は、部品供給部32のテーブル321に配設されている。パレット引き出し部33は、引き出しレール331、昇降機構332、および引き出し部材333などで構成されている。引き出しレール331は、収納マガジン31の前側から部品供給部32の上空まで延在している。昇降機構332は、テーブル321に対して引き出しレール331を昇降駆動する。引き出し部材333は、引き出しレール331に装荷されており、前後方向に移動する。引き出し部材333の後ろ側の下方寄りには、ウエハパレット35に係脱可能なパレット係合部334が設けられている。引き出し部材333のパレット係合部334のすぐ上側に、ウエハパレット35の高さ位置を検出するパレット検出センサ335が設けられている。部品供給制御部38は、部品供給部32およびパレット引き出し部33の動作を制御する。
【0017】
複数のフィーダ装置4は、
図2に示されるように、ダイ部品供給装置3の側方に並んで配置されている。各フィーダ装置4は、複数の電子部品Pを保持したキャリアテープを繰り出して、部品供給位置41でキャリアテープから電子部品Pを部品移載装置5に順次供給する。
【0018】
部品移載装置5は、基板搬送装置2の上方から、ダイ部品供給装置3およびフィーダ装置4の上方にかけて配設されている。部品移載装置5は、装着ノズル51、実装ヘッド52、ヘッド駆動機構54、および装着制御部58などで構成されている。装着ノズル51は、昇降動作してダイ部品供給装置3からダイ部品Dを採取し、基板Kに装着する。また、装着ノズル51は、昇降動作してフィーダ装置4から電子部品Pを採取し、基板Kに装着する。装着ノズル51は、負圧を利用してダイ部品Dや電子部品Pを吸着する吸着ノズルとすることができ、これに限定されない。
【0019】
実装ヘッド52は、下側に筒状のノズルカバー53(図には断面を示す)を有する。実装ヘッド52は、装着ノズル51をノズルカバー53内に昇降可能に保持する。なお、実装ヘッド52は、ノズルカバー53を有さなくてもよい。ヘッド駆動機構54は、実装ヘッド52を水平二方向に駆動する。ヘッド駆動機構54は、公知の技術を適宜用いて構成できる。装着制御部58は、装着ノズル51およびヘッド駆動機構54の動作を制御する。
【0020】
部品カメラ6は、機台9の上面の基板搬送装置2と、ダイ部品供給装置3およびフィーダ装置4との間に上向きに設けられている。部品カメラ6は、実装ヘッド52がダイ部品供給装置3やフィーダ装置4から基板Kに移動する途中で、装着ノズル51の下端に採取されているダイ部品Dおよび電子部品Pの状態を撮像して検出する。部品カメラ6がダイ部品Dおよび電子部品Pの吸着位置の誤差や回転角のずれなどを検出すると、制御装置7は、必要に応じて部品装着動作を微調整する。
【0021】
制御装置7は、CPUを有してソフトウェアで動作するコンピュータ装置である。
図3に示されるように、制御装置7は、基板搬送装置2、ダイ部品供給装置3の部品供給制御部38、フィーダ装置4、部品移載装置5の装着制御部58、および部品カメラ6と通信接続されている。制御装置7は、これらの装置2〜6と適宜情報を交換しつつ指令を発して、部品実装機1の動作の全般を制御する。
【0022】
(2.ダイ部品供給装置3の供給準備動作)
次に、第1実施形態の部品実装機1の動作について説明する。
図1において、ウエハパレット35はテーブル321上に固定されており、ダイ部品Dの供給高さHDは既に変更されて調整済みである。すなわち、常用の使用条件として、ダイ部品Dの供給高さHDは、フィーダ装置4の部品供給位置41の高さHPに一致するように調整されている。また、ダイ部品Dの供給高さHDは、位置決めされた基板Kの上面高さにも概ね一致している。厳密に言うと、供給高さHDは、ダイ部品Dの上面の高さで表され、部品供給位置41の高さHPは、電子部品Pの上面の高さで表される。後述するように、ウエハパレット35の構造によっては、常用の使用条件を使用できない場合もある。なお、基板搬送装置2における基板Kの搬入および位置決めの動作は、従来技術と同様であるので、位置決めされた状態を示して動作の説明は省略する。
【0023】
初期状態から
図1の状態に至るまでのダイ部品供給装置3の供給準備動作について説明する。この供給準備動作は、部品供給制御部38からの制御によって進められる。
図4は、初期状態からダイ部品供給装置3が動作して、ウエハパレット35の引き出し操作を行う状態を模式的に示した側面図である。
図5は、
図4に続いて、ウエハパレット35が引き出された状態を模式的に示した側面図である。
図6は、
図5に続いて、ウエハパレット35の高さが変更された状態を模式的に示した側面図である。
図7は、
図1に続いて、部品移載装置5が装着動作を行う状態を示した側面図である。
【0024】
初期状態において、全てのウエハパレット35は、収納マガジン31の収納棚311に収納されている。まず、パレット引き出し部33の引き出し部材333が、後側寄りに移動して収納マガジン31に接近する。次に、昇降機構332からの駆動によって、引き出し部材333が昇降する。この動作により、パレット検出センサ335は、所望するウエハパレット35(
図4の例では、3個のうちの下側のウエハパレット35)の下面高さHLを検出する。
【0025】
次に、昇降機構323からの駆動によりテーブル321が昇降して、その上面の高さがウエハパレット35の下面高さHLに揃えられる。さらに、昇降機構332からの駆動により、パレット係合部334の高さがウエハパレット35に正対するように調整される。次に、引き出し部材333が最も後側まで移動して、パレット係合部334がウエハパレット35を係止し、
図4に示された状態となる。係止が完了すると、今度は引き出し部材333が最も前側まで駆動される。これにより、ウエハパレット35は、テーブル321の上面に引き出される。次いで、クランプ部322が動作して、ウエハパレット35が固定され、
図5に示された状態となる。
【0026】
次に、昇降機構323からの駆動により、テーブル321の高さが調整される。これにより、ダイ部品Dの供給高さHDが部品供給位置41の高さHPに一致して、
図6に示された状態となる。次に、パレット係合部334とウエハパレット35との係止が解除される。そして、昇降機構332からの駆動により、引き出しレール331および引き出し部材333が上昇駆動される。さらに、引き出し部材333は、後方に移動して退避し、
図1に示された状態となる。この後、
図7に示されるように、部品移載装置5の実装ヘッド52がウエハパレット35の上方に駆動される。次に、装着ノズル51が下降して、ダイ部品Dを採取する。
【0027】
(3.部品供給制御部38の供給高さ決定部の機能)
図1の状態におけるダイ部品Dの供給高さHDは、部品供給制御部38の供給高さ決定部の機能によって決定される。これに限定されず、制御装置7が供給高さ決定部の機能を有してもよい。以下、供給高さ決定部の機能について、複数種類あるウエハパレット35の構造を例示しながら説明する。
【0028】
図8は、ウエハリング36(ウエハ保持部材)が相対的に低いウエハパレット35Lを用いる場合に、供給高さ決定部によって決定されたダイ部品Dの供給高さHDを示した後面図である。低いウエハパレット35Lでは、ウエハリング36の内側にグリップリング37が追設されている。グリップリング37は、ダイシングシートSおよびダイ部品Dをウエハリング36よりも高く保持している。グリップリング37も、本発明のウエハ保持部材に相当する。なお、
図8において、ウエハリング36およびグリップリング37は、断面が示されている(
図9以降も同様)。
【0029】
部品供給制御部38は、まず、ヘッド側の最下端の高さであるヘッド側高さHHを求める。ヘッド側高さHHは、ダイ部品供給装置3から基板Kに移動するときの実装ヘッド52、装着ノズル51、および装着ノズル51に採取されたダイ部品Dのうち最下端の高さとなる。実装ヘッド52がダイ部品供給装置3から基板Kに移動するとき、装着ノズル51は、上昇駆動されてノズルカバー53内に収納される。したがって、
図8の例で、ヘッド側高さHHは、ノズルカバー53の下端の高さで示される。仮に、上昇位置の
装着ノズル51に採取されているダイ部品Dの下端がノズルカバー53の下端よりも低い場合、ヘッド側高さHHは、ダイ部品Dの下端の高さで示される。
【0030】
なお、ヘッド側高さHHおよび部品供給位置41の高さHPは、フィーダ装置4での電子部品Pの採取、および基板Kへの装着が効率良く行われるように予め定められているのが一般的である。したがって、部品供給制御部38は、ヘッド側高さHHの情報、および部品供給位置41の高さHPの情報を制御装置7から受け取ることができる。
【0031】
次に、部品供給制御部38は、
図8に示されるように、部品供給位置41の高さHPにダイ部品Dの供給高さHDを一致させる常用の使用条件を仮定する。そして、部品供給制御部38は、ウエハ側の最上端の高さであるウエハ側高さHWを求める。ウエハ側高さHWは、ウエハリング36、グリップリング37、およびクランプ部322のうち最上端の高さとなる。
図8の例で、ウエハ側高さHWは、クランプ部322の上面高さで示される。低いウエハパレット35Lにおいて、ウエハ側高さHWは、ダイ部品Dの供給高さHDよりも少しだけ高い。
【0032】
なお、部品供給制御部38は、予め設定された各種部材の高さデータ、例えば、クランプ部322、ウエハリング36、およびグリップリング37の高さ寸法に基づいて、ウエハ側高さHWを求めることができる。さらに、部品供給制御部38は、ウエハ側高さHWを求める際に、一部の部材の実測された高さ実測値を用いることができる。例えば、ウエハリング36の高さ寸法は、パレット引き出し部33のパレット検出センサ335を用いて実測することができる。
【0033】
次に、部品供給制御部38は、ウエハ側高さHWとヘッド側高さHHとを比較する。低いウエハパレット35Lにおいて、ウエハ側高さHWはヘッド側高さHHよりも低く、かつ、ウエハ側高さHWとヘッド側高HHさとの間に所定の安全離間距離Dsが確保されている。安全離間距離Dsとして、0.5mmまたは1mmを例示でき、これらに限定されない。安全離間距離Dsが確保されることにより、装着ノズル51や実装ヘッド52などがクランプ部322などの障害物に干渉しないことが明らかになる。したがって、部品供給制御部38は、上記した常用の使用条件を採用する。
【0034】
次に、
図9は、ウエハリング36(ウエハ保持部材)が相対的に高いウエハパレット35Hを用いる場合に、供給高さ決定部によって取り消されたダイ部品Dの供給高さHDを示した後面図である。また、
図10は、
図9に示されたウエハパレット35Hに関して、供給高さ決定部によって決定されたダイ部品Dの供給高さHD1を示した後面図である。高いウエハパレット35Hでは、ウエハリング36が直接的にダイシングシートSおよびダイ部品Dを保持している。
【0035】
低いウエハパレット35Lのときと同様、部品供給制御部38は、
図9に示されるように、部品供給位置41の高さHPにダイ部品Dの供給高さHDを一致させる常用の使用条件を仮定する。そして、部品供給制御部38は、高いウエハパレット35Hのウエハ側高さHWを求める。高いウエハパレット35Hにおいて、ウエハ側高さHWは、クランプ部322の上面高さで示され、ダイ部品Dの供給高さHDよりもかなり高い。一方、ヘッド側高さHHは、ウエハパレット35、35L、35Hの構造に関係しない。したがって、装着ノズル51や実装ヘッド52が交換されない限り、ヘッド側高さHHは一定値としてよい。
【0036】
次に、部品供給制御部38は、ウエハ側高さHWとヘッド側高さHHとを比較する。高いウエハパレット35Hにおいて、ウエハ側高さHWがヘッド側高さHHよりも低くなっていない。これにより、装着ノズル51や実装ヘッド52などがクランプ部322などの障害物に干渉するおそれが明らかになる。したがって、部品供給制御部38は、上記した常用の使用条件を取り消す。
【0037】
代わりに、部品供給制御部38は、ウエハ側高さHWがヘッド側高さHHよりも低くなり、かつ安全離間距離Dsが確保されるまで、ダイ部品Dの供給高さHDを下げる。部品供給制御部38は、次式を用いて、必要とされるテーブル321の下降量Ldを求める。
下降量Ld=HW−HH+Ds
【0038】
部品供給制御部38は、昇降機構323に下降量Ldを指令し、昇降機構323は、
図9の状態からテーブル321を下降量Ldだけ下降させる。これにより、
図10に示された状態となる。図示されるように、最終的なウエハ側高さHW1は、
図9と比較して下降量Ldだけ低くなる。同様に、ダイ部品Dの供給高さHD1は、部品供給位置41の高さHPよりも下降量Ldだけ低くなる。
【0039】
他の種類のウエハパレット35に対しても、部品供給制御部38は、部品供給位置41の高さHPにダイ部品Dの供給高さHDを一致させる使用条件を常用する。そして、この使用条件下で安全離間距離Dsが確保されない場合に限り、部品供給位置41の高さHPよりもダイ部品Dの供給高さHD1を下げて、安全離間距離Dsを確保する。
【0040】
部品供給制御部38は、ウエハパレット35、35L、35Hの構造の差異に応じて決定したダイ部品Dの供給高さHD、HD1の情報を制御装置7に伝送する。制御装置7は、ダイ部品Dの供給高さHD、HD1の情報を部品移載装置5の装着制御部58に伝送する。したがって、装着制御部58は、ダイ部品Dの供給高さHD、HD1の変化に対応して、装着ノズル51がダイ部品Dを採取するときの昇降ストローク量を調整できる。
【0041】
(4.第1実施形態の部品実装機1の態様および効果)
第1実施形態の部品実装機1は、半導体ウエハがダイシングされて生産された複数のダイ部品Dを保持したウエハリング36(ウエハ保持部材)をテーブル321に固定するクランプ部322(固定部材)を有して、ダイ部品Dを供給するダイ部品供給装置3と、昇降動作してダイ部品供給装置3からダイ部品Dを採取し基板Kに装着する装着ノズル51、装着ノズル51を昇降可能に保持する実装ヘッド52、および実装ヘッド52を水平二方向に駆動するヘッド駆動機構54を有する部品移載装置5と、を備えた部品実装機1であって、ダイ部品供給装置3は、テーブル321を昇降してダイ部品Dの供給高さHD、HD1を変更する昇降機構323(高さ変更部)と、ウエハリング36およびクランプ部322の最上端の高さであるウエハ側高さHWが、ダイ部品供給装置3から基板Kに移動するときの実装ヘッド52、装着ノズル51、および装着ノズル51に採取されたダイ部品Dの最下端の高さであるヘッド側高さHHよりも低くなるように、供給高さHD、HD1を決定する部品供給制御部38(供給高さ決定部)と、をさらに有する。
【0042】
これによれば、昇降機構323は、複数種類のウエハパレット35、35L、35Hの構造に応じ、テーブル321を昇降してダイ部品Dの供給高さHD、HD1を変更することができる。ここで、部品供給制御部38は、ウエハ側高さHWがヘッド側高さHHよりも低くなるように供給高さHD、HD1を決定する。つまり、部品供給制御部38は、装着ノズル51や実装ヘッド52などがウエハ側の障害物に干渉しない高さ条件を考慮して、実装工程の生産効率が高くなるダイ部品Dの供給高さHD、HD1を決定できる。したがって、複数種類のウエハパレット35、35L、35Hの構造の差異に対応して、装着ノズル51や実装ヘッド52などがクランプ部322などの障害物に干渉することを回避しつつ、実装工程の生産効率を高められる。
【0043】
さらに、部品供給制御部38は、ウエハ側高さHWとヘッド側高さHHとの間に所定の安全離間距離Dsを確保してダイ部品Dの供給高さHD、HD1を決定する。これによれば、仮に高さ方向の制御に多少の誤差が生じても、装着ノズル51や実装ヘッド52などが障害物に干渉することを確実に回避できる。
【0044】
さらに、第1実施形態の部品実装機1は、複数の電子部品Pを保持したキャリアテープを繰り出して、部品供給位置41でキャリアテープから電子部品Pを部品移載装置5に順次供給するフィーダ装置4をさらに備え、部品供給制御部38は、部品供給位置41の高さHPにダイ部品Dの供給高さHDを一致させる使用条件を常用し、この使用条件下でウエハ側高さTWとヘッド側高HHとの間に安全離間距離Dsが確保されない場合に限り、部品供給位置41の高さHPよりもダイ部品Dの供給高さHD1を下げる。
【0045】
これによれば、安全離間距離Dsが確保されるか否かに応じて、ダイ部品Dの供給高さHD、HD1が変更される。すなわち、安全離間距離Dsが確保されて干渉のおそれが生じないときに、生産効率の良いフィーダ装置4の部品供給位置41の高さHPに合わせてダイ部品Dの供給高さHDが決定される。したがって、実装工程の生産効率が確実に高められる。一方、生産効率の高いダイ部品Dの供給高さHDで安全離間距離Dsが確保されず干渉のおそれが生じるときに、供給高さHD1が下げられる。したがって、装着ノズル51や実装ヘッド52などが障害物に干渉することを確実に回避できる。
【0046】
また、部品供給制御部38は、予め設定された各種部材の高さデータに基づいて、ダイ部品Dの供給高さHD、HD1を決定する。これによれば、部品供給制御部38の演算機能を利用して、装着ノズル51や実装ヘッド52などが障害物に干渉することを回避できる。
【0047】
さらに、部品供給制御部38は、少なくとも一部の部材の実測された高さ実測値に基づいて、ダイ部品Dの供給高さHD、HD1を決定する。これによれば、部品供給制御部38の演算で正確な高さ実測値を用いるので、装着ノズル51や実装ヘッド52などが障害物に干渉することを確実に回避できる。
【0048】
さらに、部品供給制御部38によって変更されたダイ部品Dの供給高さHD、HD1に対応して、装着ノズル51がダイ部品Dを採取するときの昇降ストローク量が調整される。これによれば、ダイ部品Dの供給高さHD、HD1が変更されても、装着ノズル51の部品採取動作は、いつも安定する。
【0049】
(5.第1実施形態の応用例)
次に、第1実施形態の部品実装機1の応用例について説明する。応用例において、
図9および
図10に示された高いウエハパレット35Hの使用時を想定する。
図11は、第1実施形態の部品実装機1の応用例を説明する機台9上の構成の一部の平面図である。高いウエハパレット35Hからダイ部品Dを採取および装着するときの実装ヘッド52の移動経路に着目すると、
図11に示される三角形状の移動経路になる。すなわち、実装ヘッド52の移動経路は、ダイ部品供給装置3から部品カメラ6に移動する第1移動経路M1、部品カメラ6から基板Kに移動する第2移動経路M2、基板Kからダイ部品供給装置3に戻る第3移動経路M3からなる。
【0050】
実装ヘッド52の概ね直線的な第1移動経路M1は、採取するダイ部品Dの位置に応じて変化する。そして、実装ヘッド52のクランプ部322への干渉のおそれが有るか無いかは、採取するダイ部品Dの位置に依存する。ここで、実装ヘッド52の外周面がクランプ部322にちょうど接しながら部品カメラ6の中央に移動するときの第1移動経路M1を干渉境界線JXとする。
【0051】
すると、干渉境界線JXの一方側の非干渉領域A1からダイ部品Dを採取して部品カメラ6に移動する第1移動経路M1において、実装ヘッド52がクランプ部322に干渉するおそれは無い。一方、干渉境界線JXの他方側の干渉領域A2からダイ部品Dを採取して部品カメラ6に移動する第1移動経路M1において、実装ヘッド52がクランプ部322に干渉するおそれが有る。また、基板Kから非干渉領域A1のダイ部品Dに戻る第3移動経路M3において、実装ヘッド52がクランプ部322に干渉するおそれは無い。
【0052】
つまり、高いウエハパレット35Hであっても、非干渉領域A1のダイ部品Dを採取および装着している間は、干渉のおそれを考慮しなくてよい。これに基づいて、部品供給制御部38は、非干渉領域A1に位置するダイ部品Dをまず供給し、次いで、少なくとも一部分が干渉領域A2に位置するダイ部品Dを供給する。部品供給制御部38は、非干渉領域A1のダイ部品Dを採取および装着している間、
図9に示されるように、部品供給位置41の高さHPにダイ部品Dの供給高さHDを一致させる。また、部品供給制御部38は、干渉領域A2のダイ部品Dを採取するようになって干渉のおそれが生じると、
図10に示されるように、ダイ部品Dの供給高さHD1を部品供給位置41の高さHPよりも下降量Ldだけ低くする。
【0053】
第1実施形態の部品実装機1の応用例において、部品供給制御部38(供給高さ決定部)は、複数のダイ部品Dの位置の変化に対応して移動する実装ヘッド52の第1移動経路M1がクランプ部322(固定部材)に干渉しない間、部品移載装置5によるダイ部品Dの採取および装着が効率良く行われる部品供給位置41の高さHPに一致したダイ部品Dの供給高さHDを採用し、実装ヘッド52の第1移動経路M1がクランプ部322(固定部材)に干渉するおそれが生じると、ウエハ側高さHWがヘッド側高さHHよりも低くなるダイ部品Dの供給高さHD1を採用する。
【0054】
これによれば、採取するダイ部品Dの位置の変化に応じて干渉のおそれが生じない間、部品供給制御部38は部品供給位置41の高さHPに一致したダイ部品Dの供給高さHDを採用して、実装工程の生産効率を高めることができる。そして、干渉のおそれが生じると、部品供給制御部38は、ダイ部品Dの供給高さHD1を下げて、干渉のおそれを解消できる。
【0055】
(6.第2実施形態の部品実装機)
次に、第2実施形態の部品実装機について、
図12および
図13を参考にして、第1実施形態と異なる点を主に説明する。
図12は、第2実施形態において、低いウエハパレット35Lを用いる場合に、供給高さ決定部によって決定されたダイ部品Dの供給高さHD2を示した後面図である。また、
図13は、第2実施形態において、高いウエハパレット35Hを用いる場合に、供給高さ決定部によって決定されたダイ部品Dの供給高さHD3を示した後面図である。第2実施形態の部品実装機は、フィーダ装置4を備えず、その他は第1実施形態と同様に構成されている。ただし、第2実施形態の部品供給制御部38は、供給高さ決定部としての機能が第1実施形態と異なる。
【0056】
第2実施形態において、フィーダ装置4を用いた生産効率は関係せず、ダイ部品供給装置3を用いた生産効率を高めることだけを考慮すればよい。このため、第2実施形態の部品供給制御部38は、ウエハ側高さHWとヘッド側高さHHとの差が安全離間距離Dsに概ね一致するように、ダイ部品Dの供給高さHD2、HD3を決定する。したがって、
図12および
図13に示されるとおり、ウエハパレット35、35L、35Hの構造に関係なく安全離間距離Dsがちょうど確保されるように、ダイ部品Dの供給高さHD2、HD3が可変に調整される。
【0057】
これによれば、安全離間距離Dsがちょうど確保されるので、装着ノズル51や実装ヘッド52などがクランプ部322などの障害物に干渉することを回避できる。加えて、安全離間距離Dsを越えた遊び寸法が設けられないので、装着ノズル51がダイ部品Dを採取するときの昇降ストローク量は小さくて済み、実装工程の生産効率が高められる。
【0058】
(7.実施形態の応用および変形)
なお、第1および第2実施形態において、供給高さ決定部に相当する部品供給制御部38は、ダイ部品Dの供給高さHDを段階的に決定するようにしてもよい。この場合、部品供給制御部38は、ウエハ側高さHWとヘッド側高さHHとの差に関して、安全離間距離Dsに段階幅以内の遊び寸法が加わることを許容する。供給高さHDが段階的に変化する構成では、部品供給部32のテーブル321を昇降する昇降機構323が簡素化される。加えて、装着ノズル51の昇降ストローク量も飛び飛びの限られた値となり、昇降制御が容易になる。逆に、供給高さHDを可変連続的に変化させ、かつ高さ方向の制御精度を向上すれば、安全離間距離Dsをゼロに近づけることができる。
【0059】
さらになお、実装ヘッド52が複数の装着ノズル51を有し、ダイ部品供給装置3およびフィーダ装置4の両方から部品D、Pを採取して、部品カメラ6および基板Kに移動する構成であってもよい。ただし、この構成では、第1実施形態の応用例は実施できない。また、本発明は、ウエハ保持部材に相当するウエハリング36およびグリップリング37、ならびに固定部材に相当するクランプ部322が実施形態と異なる任意の形状であっても、ウエハ側高さHWを求めて実施することができる。さらに、本発明は、ダイ部品供給装置がダイシングシートSとともにダイ部品Dを上方に突き上げる突き上げ機構を有する構成にも応用できる。本発明は、他にも様々な応用や変形が可能である。