特許第6622346号(P6622346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6622346
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】粉体モジュール
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/245 20170101AFI20191209BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20191209BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20191209BHJP
   B29C 64/205 20170101ALI20191209BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20191209BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20191209BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20191209BHJP
   B29C 64/307 20170101ALN20191209BHJP
【FI】
   B29C64/245
   B22F3/105
   B22F3/16
   B29C64/205
   B29C64/153
   B29C64/264
   B33Y30/00
   !B29C64/307
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-67206(P2018-67206)
(22)【出願日】2018年3月30日
(65)【公開番号】特開2019-93697(P2019-93697A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2018年3月30日
(31)【優先権主張番号】17203531.3
(32)【優先日】2017年11月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506154834
【氏名又は名称】ツェーエル・シュッツレヒツフェアヴァルトゥングス・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・ヘッツェル
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・シュミットバウアー
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第105538725(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第106735206(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次元的な物体(2)を付加的に製造する装置(1)のための粉体モジュール(5)であって、当該粉体モジュール(5)が、粉体空間を画成する少なくとも1つの壁部(11)を有する粉体チャンバ(10)を含み、前記粉体空間内には、前記粉体チャンバ(10)に対して可動に支持された搬送要素(9)が設けられており、当該粉体モジュールが、前記少なくとも1つの壁部(11)に対して前記搬送要素(9)の非位置決め支持を提供するために適合された少なくとも1つのサポートユニット(13)を含んでおり、
少なくとも1つのサスペンションユニット(14〜16)が、前記サポートユニット(13)を支持するために適合されているとともに、前記少なくとも1つの壁部(11)に抗して前記サポートユニット(13)を移動させる、前記サポートユニット(13)へのサスペンション力を発生させるために適合されており、
第1の向きを有する少なくとも1つの第1の壁部(11)と、第2の向きを有する少なくとも1つの第2の壁部(11)とを備え、前記搬送要素(9)を前記第1の壁部(11)に結合する少なくとも1つのサポートユニット(13)が少なくとも1つの第1のサスペンションユニット(14〜16)によって支持されており、前記搬送要素(9)を前記第2の壁部(11)に結合する少なくとも1つの第2のサポートユニット(13)が少なくとも1つの第2のサスペンションユニット(14〜16)によって支持されていることを特徴とする粉体モジュール。
【請求項2】
前記搬送要素(9)を前記少なくとも1つの壁部(11)と可動に結合する少なくとも1つのサポートユニット(13)が設けられており、該サポートユニット(13)が、前記少なくとも1つの壁部(11)及び前記搬送要素(9)に対して可動であることを特徴とする請求項1に記載の粉体モジュール。
【請求項3】
前記粉体チャンバ(10)が、向する壁部(11)の2つのセットを含む直方体であり、前記搬送要素(9)が、少なくとも1つのサポートユニット(13)によって、各セットの少なくとも1つの壁部(11)において支持されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粉体モジュール。
【請求項4】
前記搬送要素(9)の少なくとも1つの側が、サスペンションユニット(14〜16)と、非位置決め支持を提供する対応するサポートユニット(13)とを備えており、反対側が、位置決め支持提供するサポートユニット(12)を備えていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の粉体モジュール。
【請求項5】
少なくとも2つのサスペンションユニット(14〜16)が同一のサポートユニット(13)に割り当てられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉体モジュール。
【請求項6】
少なくとも2つのサポートユニット(13)が同一のサスペンションユニット(14〜16)によって支持されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の粉体モジュール。
【請求項7】
前記少なくとも1つのサスペンションユニット(14〜16)が、
−少なくとも1つのバネ要素及び/又は
−少なくとも1つの油圧要素及び/又は
−少なくとも1つの空圧要素及び/又は
−少なくとも1つの磁気要素
含んでいることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の粉体モジュール。
【請求項8】
前記少なくとも1つのサポートユニット(13)が、少なくとも1つの摺動要素、及び/又は少なくとも1つのガイド要素、含んでいることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の粉体モジュール。
【請求項9】
エネルギー源(4)によって凝固化され得る造形材料(3)の層の連続的で層ごとの選択的な照射及び凝固化によって三次元的な物体(2)を付加的に製造する装置(1)であって、粉体空間を区画する少なくとも1つの壁部(11)を有する粉体チャンバ(10)を含む少なくとも1つの粉体モジュール(5)を含んでおり、前記粉体空間内には、前記粉体チャンバ(10)に対して可動に支持された搬送要素(9)が設けられている、前記装置において、
前記少なくとも1つの壁部(11)に対して前記搬送要素(9)の非位置決め支持を提供するように適合された少なくとも1つのサポートユニット(13)が設けられており、
少なくとも1つのサスペンションユニット(14〜16)が、前記サポートユニット(13)を支持するために適合されているとともに、前記少なくとも1つの壁部(11)に抗して前記サポートユニット(13)を移動させる、前記サポートユニット(13)へのサスペンション力を発生させるために適合されており、
第1の向きを有する少なくとも1つの第1の壁部(11)と、第2の向きを有する少なくとも1つの第2の壁部(11)とを備え、前記搬送要素(9)を前記第1の壁部(11)に結合する少なくとも1つのサポートユニット(13)が少なくとも1つの第1のサスペンションユニット(14〜16)によって支持されており、前記搬送要素(9)を前記第2の壁部(11)に結合する少なくとも1つの第2のサポートユニット(13)が少なくとも1つの第2のサスペンションユニット(14〜16)によって支持されていることを特徴とする装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの粉体モジュール(5)が配量モジュール(6)及び/又は造形モジュール(7)として構成されていることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に三次元的な物体を付加的に製造する装置のための粉体モジュールであって、当該粉体モジュールが、粉体空間を画成する少なくとも1つの壁部を有する粉体チャンバを含み、粉体空間内には、粉体チャンバに対して相対的に可動に支持された搬送要素が設けられた、前記粉体モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
三次元的な物体を付加的に製造する装置のためのこのような粉体モジュールは、一般的に従来技術から知られている。各粉体モジュールは、造形材料が収容される粉体空間を画成する少なくとも1つの壁部、典型的には4つの壁を含む粉体チャンバにおいて(粉末状の)造形材料を収容するように適合されている。粉体空間の内部には、粉体空間内に収容される造形材料を搬送する、粉体チャンバに対して相対的に可動に支持された搬送要素が配置されている。
【0003】
例えば搬送要素を上方へ、又は下方へ移動させることで造形材料を提供し、粉体空間内へ収容されるべき新たな造形材料を許容するために、搬送要素の移動によって粉体チャンバ内に造形材料を位置決めすることが可能である。
【0004】
また、搬送要素を正確に支持すること、特に搬送要素を正確に位置決めすること及び正確に移動させることが物体及びプロセスの品質にとって重要であることが従来技術から知られている。したがって、粉体チャンバに対する搬送要素、例えば粉体テーブルの公差はできる限り小さく維持されるべきである。付加的な製造プロセス中には、例えば搬送要素への変化する負荷によって、及びプロセスチャンバ内の変化する環境条件、特に温度差により、搬送要素へ加えられる力が変化し得る。例えば、エネルギー源のエネルギー入力により生じる熱膨張により、搬送要素及び/又は粉体チャンバは膨張する可能性があり、したがって、粉体チャンバに対して相対的な搬送要素の移動がまだ可能であるように公差が選択される必要があり、これにより、搬送要素とチャンバ壁部又は搬送要素が案内して入れられる各ガイドの間の大きな摩耗をもたらすオーバーサイズフィット(oversize fit)が回避され得る。したがって、オーバーサイズフィットと、粉体チャンバと搬送要素の間の過大な公差との間で妥協がなされる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
課題は、搬送要素の支持、特に移動及び位置決めが改善される、特に三次元的な物体を付加的に製造する装置のための粉体モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、本発明により、請求項1による粉体モジュールによって達成される。本発明の有利な実施例は、従属請求項の主題である。
【0007】
ここで述べられる粉体モジュールは、エネルギー源、例えばエネルギービーム、特にレーザビーム又は電子ビームによって凝固化され得る粉末化された造形材料(「造形材料」)の層の連続的で選択的な層ごとの凝固化によって、三次元的な物体、例えば技術的な構成要素を付加的に製造する装置のための粉体モジュールである。各造形材料は、金属、セラミック又はポリマの粉末であり得る。各エネルギービームは、レーザビーム又は電子ビームであり得る。各装置は、例えば、選択的レーザ焼結装置、選択的レーザ溶融装置又は選択的電子ビーム溶融装置であり得る。これに代えて、造形材料の連続的で層ごとの選択的な凝固化は、少なくとも1つの結合材によって行われることが可能である。結合材は、対応する塗布ユニットによって塗布され、例えば適当なエネルギー源、例えば紫外線源によって照射され得る。
【0008】
装置は、その動作中に動作される多数の機能ユニットを含むことが可能である。典型的な機能ユニットは、プロセスチャンバ、装置のプロセスチャンバの造形平面における造形材料の層を塗布するために適合された造形材料塗布装置、プロセスチャンバに配置された造形材料層を少なくとも1つのエネルギービームで選択的に照射するために適合された照射装置、及び流れ発生装置であり、この流れ発生装置は、所定の流れ特性、例えば処理の流れプロファイル、流速などによってプロセスチャンバを通って少なくとも部分的に流れる気体状の流体の流れを発生させるために適合されている。気体状の流体の流れは、プロセスチャンバを通って流れつつ、凝固化されていない微粒子状の造形材料、特に装置の動作中に生じるスモーク又はスモーク残滓を帯びることがある。気体状の流体の流れは、典型的には不活性の、すなわち典型的には不活性ガス、例えばアルゴン、窒素、二酸化炭素などの流れである。
【0009】
粉体モジュールは、粉体チャンバによって区画された粉体空間内での(粉末化された)造形材料の体積を搬送するために設けられている。粉体チャンバは、粉体空間を区画する壁部を含んでいる。各粉体モジュールは造形材料を搬送する搬送要素を更に含んでおり、搬送要素は、粉体空間を例えば底側で区画する。粉体モジュールは粉体チャンバの内部に可動に配置されており、搬送要素は、特に、粉体モジュール、例えば造形モジュール又は配量モジュールのタイプに依存して、粉体空間から新たな造形材料を提供するために、又は粉体空間により多くの造形材料を収容するために下方へ、又は上方へ移動することが可能である。
【0010】
本発明は、少なくとも1つの壁部に対して相対的な搬送要素の非位置決め支持を提供することに適合された少なくとも1つのサポートユニットが提供されるというアイデアに基づいている。したがって、サポートユニットは、搬送要素及びチャンバ壁部に強固に取付又は結合されておらず、サポートユニット及び搬送要素とチャンバ壁部の間での移動が可能である。サポートユニットにより提供される非位置決め支持は、補償されるべき公差を許容する搬送要素の支持に自由度を加えるものであり、例えば壁部に対する支持部及び/又は搬送要素の熱膨張によりオーバーサイズフィットに至らない。なぜなら、対応するサポートユニットがチャンバ壁部及び/又は搬送要素に対する移動により寸法の変化を補償することができるためである。したがって、粉体モジュール、特に粉体チャンバ及び搬送要素を公差、遊び又はオーバーサイズフィットをもって構成することが不要である。なぜなら、サポートユニットが、搬送要素及び/又は粉体チャンバ壁部の現局面に適合する非位置決め支持、例えば粉体チャンバ壁部の少なくとも一部に対して相対的に搬送要素をガイドするガイドを提供するためである。
【0011】
非位置決め支持を提供することで、搬送要素と少なくとも1つの壁部の間に加えられる力は、温度条件又は搬送要素へ加えられる負荷の分配のような変化が生じても、一定に維持されることが可能である。さらに、非位置決め支持により、製造公差の改善された補償が可能である。なぜなら、各ガイド面が搬送要素(又は搬送要素を支持する対応する構造)に強固に結合(強固な接触)されていないためである。「搬送要素の非位置決め支持」という用語は、少なくとも1つのサポートユニットによって実現される非位置決め支持を含む粉体モジュールとしても理解され得る。したがって、各サポートユニットは非位置決め支持の一部とみなされ、搬送要素は粉体チャンバに対して相対的に支持される。
【0012】
さらに、少なくとも1つのサポートユニットは、搬送要素を少なくとも1つの壁部と可動に結合することができ、このサポートユニットは、少なくとも1つの壁部及び搬送要素に対して相対的に可動である。サポートユニットは、搬送要素をそれぞれプロセスチャンバの少なくとも1つの壁部と結合又は接触させるために用いられることが可能である。
【0013】
搬送要素の非位置決め支持を提供するために、サポートユニットは、搬送要素に対して相対的に、及び少なくとも1つの壁部に対して相対的に可動となっている。少なくとも1つの壁部に対する相対的な可動性により、壁部によって提供される各ガイド面へ本質的に一定の力を加えることが可能である。壁部又は搬送要素の製造公差は、サポートユニットが公差によって移動し、したがってガイド面に適合するように補償することを可能にする。加えて、負荷の変化又は粉体チャンバ内部の状態の変化、特に対応するエネルギー源、特にレーザ源のエネルギー入力による熱膨張のような製造プロセス中の変化も補償することができる。なぜなら、サポートユニットが搬送要素に強固に結合されておらず、したがって粉体チャンバ及び搬送要素の寸法の変化を調整することに適合されているためである。
【0014】
好ましい実施形態によれば、粉体モジュールは、サポートユニットを支持するために適合されているとともに、少なくとも1つの壁部に抗してサポートユニットを移動する、特に押す、サポートユニットへのサスペンション力を発生させるために適合されている少なくとも1つのサスペンションユニットを含んでいる。したがって、サポートユニットは、サスペンションユニットによって発生されるサスペンション力により、少なくとも1つの壁部に対して移動、特に少なくとも1つの壁部に対して押される。換言すれば、サポートユニットは、サスペンションユニットによって発生され、サポートユニットへ加えられるサスペンション力により、少なくとも1つの壁部に接触する。したがって、サスペンションユニット及びサポートユニットは、少なくとも1つの壁部によって提供される割り当てられたガイド面に接触し、製造公差を吸収し、寸法における変化、特に熱膨張及び負荷の変化を補償する「ダンパ」のように作用する。サポートユニット及びサスペンションユニットは、1つのアセンブリとみなされることが可能である。サポートユニットは、特にサスペンションユニットに統合されることができ、また逆も可能である。したがって、サポートユニットは、サスペンションユニットの一部、すなわちガイド面に接触し、ガイド面における搬送要素を支持するサスペンションユニットの一部とみなされることが可能である。
【0015】
サスペンションユニット及びサポートユニットは、サポートユニットが少なくとも1つの粉体チャンバ壁部に対してサスペンションユニットによって予負荷されているように配置されることが可能である。サスペンションユニットの剛性又はバネ定数及びこれに関連するサスペンションユニットに対するサポートユニットの移動へのサスペンション力の特性は、一般的に任意に選択されることが可能である。好ましくは、サスペンション力は、サポートユニットの典型的な移動へ本質的に一定に反応する。それゆえ、移動方向における搬送要素への所定の力により、現在のプロセス条件にかかわらず搬送要素が一定に移動する。なぜなら、サポートユニットによって転換される少なくとも1つの壁部へのサスペンション力が本質的に一定に維持されるためである。したがって、支持部により搬送要素へ加えられる力の変化は、低減又は回避されることが可能である。
【0016】
粉体モジュールの他の実施例によれば、第1の向きを有する少なくとも1つの第1の壁部と、第2の向きを有する少なくとも1つの第2の壁部とを備えることができ、搬送要素を第1の壁部に結合する少なくとも1つの第1のサポートユニットが少なくとも1つの第1のサスペンションユニットによって支持されており、搬送要素を第2の壁部に結合する少なくとも1つの第2のサポートユニットが少なくとも1つの第2のサスペンションユニットによって支持されている。この実施例によれば、少なくとも2つの壁部が異なる向きを含んでおり、非位置決め支持が各第1及び第2のサポートユニットと結合する各第1及び第2のサスペンションユニットによって提供される。
【0017】
したがって、搬送要素は、それぞれ1つのサスペンションユニットによって支持された1つのサポートユニットによって少なくとも両壁部において支持されている。したがって、製造公差及び変化するプロセス条件の作用は、両方向において、又はそれぞれ壁部が向いた両方の向きに対して補償されることができる。2つの壁部は、並列に配置されておらず、例えば所定の角度をなすとみなされるべきであり、特に両壁部は、互いに垂直に配置されているとみなされることが可能である。
【0018】
粉体モジュールは、粉体チャンバが、本質的に、対向する壁部の2つのセットを含む直方体であるように更に改善されることができ、搬送要素は、少なくとも1つの可動なサポートユニットによって、各セットの少なくとも1つの壁部において支持されている。この実施例によれば、粉体チャンバは、粉体空間を包囲し、区画する4つの壁を含む直方体として構成されることが可能である。したがって、粉体チャンバは、長方形状の断面(搬送要素の移動方向に対して垂直)を含んでいる。粉体チャンバの4つの壁は、2つの対向する壁が本質的に平行に配置されるように配置されている。搬送要素は、各セットの対向する壁のうち1つにおいて、少なくとも1つの可動なサポートユニットによって支持されており、好ましくは対応するサスペンションユニットによって支持されている。したがって、粉体チャンバの壁部における搬送要素の支持は、クロスパターン(cross pattern)とみなされることが可能である。当然、粉体チャンバは、例えば配量プレート又は造形プレートとして構成された搬送要素によって底側を区画されている。
【0019】
粉体モジュールの他の実施例によれば、搬送要素の少なくとも1つの側が、サスペンションユニットと、好ましくは非位置決め支持を提供する対応するサポートユニットとを備えており、反対側が、位置決め支持、特に位置決め支持を提供する搬送要素と強固に結合されたサポートユニットを備えている。したがって、搬送要素の2つの対向する側のうち1つ、すなわち対応するチャンバ壁部において搬送要素が支持されている対向する側は非位置決め支持を備えており、他の側は位置決め支持を備えている。換言すれば、搬送要素は、搬送要素の対向する側に配置された2つのサポートユニットを介して粉体チャンバに結合、例えば接触している。サポートユニットのうち1つが搬送要素に強固に取り付けられているか、又は結合されている一方、他のサポートユニットは、搬送要素に対して相対的に、及び割り当てられた粉体チャンバ壁部に対して相対的に可動となっている。
【0020】
したがって、一方側は、割り当てられた粉体チャンバ壁部によって強固に支持されることができる一方、他の(対向する)側は、サスペンションユニットによって予負荷される可動のサポートユニットによって提供される非位置決め支持によって支持されている。当然、搬送要素の各側に非位置決め支持を設けることも可能であり、対向する側における非位置決め支持と位置決め支持の組合せは、より効率的であるとみなされる。
【0021】
好ましくは、搬送要素の対向する側における位置決め支持及び非位置決め支持の設置は、長手方向及び横方向の両方において、すなわち対向向きに配置された壁部の全てのセットにおいて提供される。特に、直方体の形状を有する粉体チャンバにより、位置決め支持及び非位置決め支持の設置が4つ全ての壁部のために提供されており、2つの対向する壁部は、上述のように壁部のセットを形成している。
【0022】
さらに、粉体モジュールは、同一の壁部を備えた少なくとも2つのサポートユニットを含むことが可能である。したがって、搬送要素は、2つ又はそれより多くのサポートユニットによって、各壁部に結合(接触、特に各壁部によって支持)されることが可能である。1つより多くのサポートユニットによる搬送要素の支持により、支持の機械的な安定性が向上し、加えて、搬送要素を支持するために必要なサポートユニットごとの力が、たった1つのサポートユニットによって提供される支持に比べて低減され得る。したがって、サポートユニットとガイドの間の摩耗が低減され得る。
【0023】
粉体モジュールは、少なくとも2つのサスペンションユニットが同一のサポートユニットに割り当てられるように、少なくとも2つのサスペンションユニットによって支持された少なくとも1つのサポートユニットを含むことも可能である。したがって、2つ又はこれより多くのサスペンションユニットの任意の組合せが適しており、例えば異なる剛性又はバネ定数を有する少なくとも2つのサスペンションユニットを組み合わせることが可能である。少なくとも2つのサスペンションユニットは、更に並列又は直列に配置されることができる。例えば、サスペンションユニットの第1のタイプが製造公差を補償するために設定されることができ、サスペンションユニットの第2のタイプがプロセス条件の変化、特に熱膨張を補償するために設定されることが可能である。
【0024】
これに加えて、又はこれに代えて、少なくとも1つのサスペンションユニットは、少なくとも2つのサポートユニットを支持するように設定されることが可能である。したがって、2つ又はこれより多くのサポートユニット、特に搬送要素の同一の側に割り当てられたサポートユニットは、共通のサスペンションユニットによって支持されている。このとき、必要な部材の数が低減され得る。
【0025】
粉体モジュールの他の実施例によれば、少なくとも1つのサスペンションユニットが、
−少なくとも1つのバネ要素、特に板バネ及び/又はコイルバネ及び/又は弾性要素及び/又は
−少なくとも1つの油圧要素及び/又は
−少なくとも1つの空圧要素及び/又は
−少なくとも1つの磁気要素
として構成されているか、若しくはこのようなものを含んでいる。
【0026】
一般的に、少なくとも1つのサスペンションユニットは、割り当てられたチャンバ壁部に対して少なくとも1つのサポートユニットを移動させるためのサスペンション力を提供することに適合されることが可能である。サスペンション力を、様々な要素によって、例えば機械的に、油圧的に、空圧的に又は磁気的に発生させることが可能である。当然、異なるサスペンションユニット、例えばバネ要素及び空圧要素の任意な組合せが実現可能である。
【0027】
さらに、少なくとも1つのサポートユニットが、少なくとも1つの摺動要素、特にパッド及び/又は少なくとも1つのガイド要素、特にレールとして構成されているか、又はこのようなものを含むことが可能である。摺動要素は、摺動要素が割り当てられた壁部の対応するガイド面に沿って摺動することが可能である。摺動要素は、例えばガイド要素、例えばレールとして構成されることができるとともに、追加的に搬送要素を壁部に沿ってガイドすることに適合され得る。
【0028】
そのほか、本発明は、エネルギー源によって凝固化され得る造形材料の層の連続的で層ごとの選択的な照射及び凝固化によって三次元的な物体を付加的に製造する装置であって、粉体空間を区画する少なくとも1つの壁部を有する粉体チャンバを含む少なくとも1つの粉体モジュールを含んでおり、粉体空間内には、粉体チャンバに対して相対的に可動に支持された搬送要素が設けられている、前記装置に関するものであり、少なくとも1つの壁部に対して相対的な搬送要素の非位置決め支持を提供するように適合された少なくとも1つのサポートユニットが設けられている。好ましくは、少なくとも1つの粉体モジュールは、配量モジュール及び/又は造形モジュールとして構成されることが可能である。
【0029】
本発明の典型的な実施例を図面を参照しつつ説明する。各図は、概略的な図である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】三次元的な物体を付加的に製造するための本発明による装置を示す図である。
図2】本発明による粉体モジュールの粉体チャンバの底面図である。
図3図1図2の粉体チャンバの断面図である。
図4】第1の実施例によるサスペンションユニット及びサポートユニットのアセンブリを示す図である。
図5】第2の実施例によるサスペンションユニット及びサポートユニットのアセンブリを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1には、エネルギー源4、例えばレーザビームによって凝固化され得る造形材料3の層の連続的で層ごとの選択的な照射及び凝固化によって三次元的な物体2を付加的に製造するための装置1が示されている。装置1は、配量モジュール6及び造形モジュール7として構成された2つの粉体モジュール5を含んでいる。それにもかかわらず、装置1は1つだけの粉体モジュール5を含むことも可能である。
【0032】
粉体モジュール5は、装置1と別々に結合され、例えば補充又は空にするために装置1から外されることが可能な別々の粉体モジュール5とみなされることが可能である。各粉体モジュール5は、搬送要素9、例えば各粉体モジュール5の粉体チャンバ10の内部で(粉末状の)造形材料3を搬送する高さ調整可能な配量プレート又は高さ調整可能な造形プレートを有する搬送装置8を含んでいる。
【0033】
粉体チャンバ10は、例えば粉体空間すなわち造形材料3を受ける体積を区画する直方体として配置される4つの壁部11を含んでいる。これら4つの壁部11は、対向する壁部11の2つのセットを形成する。図1から更に分かるように、粉体チャンバ11は、搬送要素9、例えば配量プレート又は造形プレートによって底側で区画されている。
【0034】
図2には、搬送要素9の底面図が示されている。搬送要素9に加えて、粉体モジュール5はサポートユニット12,13を備えており、2つのサポートユニット12だけは搬送要素9に強固に取り付けられており、サポートユニット13は可動に取り付けられている。したがって、サポートユニット12は、搬送要素9と共に粉体チャンバ壁部11に対して特に垂直に相対的に可動であるだけであり、サポートユニット13は、(矢印で示されているように)更に搬送要素9に対して相対的に可動である。当然、配量モジュール6又は造形モジュール7の搬送要素9のみが可動に配置されたサポートユニット13によって支持されることも可能である。
【0035】
図2には、粉体モジュール5が、搬送要素9に対してサポートユニット13を支持するサスペンションユニット14を含むことが更に示されている。したがって、サスペンションユニット14は、非位置決め支持を生じさせる粉体チャンバ壁部11に対して割り当てられたサポートユニット13を移動させる(矢印Fで示された)サスペンション力を発生させ、サポートユニット12は、粉体チャンバ10に対する位置決め支持を提供する。したがって、粉体チャンバ10の製造公差並びに粉体モジュール5、特に搬送要素9及び搬送要素9に割り当てられたガイド表面の寸法の相違は、サスペンションユニット14によって支持されたサポートユニット13により提供される非位置決め支持によって補償されることが可能である。
【0036】
図3には、図2に示された断面III−IIIが示されている。搬送要素9は、側方へ、特に粉体チャンバ10の粉体チャンバ壁部11に対して相対的に垂直に移動することが可能である。サポートユニット13へのサスペンション力を発生させることで、サポートユニット13及びサスペンションユニット14のアセンブリは、粉体チャンバ10の製造公差を補償する「ダンパ」のように作用し、粉体チャンバ10の内部は、搬送要素9が移動するガイド表面として作用する。
【0037】
図4には、サスペンションユニット14,15,16によって支持された3つのサポートユニット13によって提供される典型的な非位置決め支持の詳細が示されている。最上のサポートユニット13は、直列に結合された2つのサスペンションユニット14,15によって支持されている。2つのサスペンションユニット14,15は、バネ定数又は剛性においてそれぞれ異なっていてよい。サスペンションユニット14,15は、例えばコイルバネのような機械的なバネ要素として構成されることが可能である。中央のサポートユニット13は並列に結合された3つのサスペンションユニット14によって支持されており、3つのサスペンションユニット14は、同一のサスペンションユニット14であることが可能であり、又は例えばバネ定数若しくは剛性に関して互いに異なっていることが可能である。
【0038】
加えて、最下のサポートユニット13は、例えば空圧要素として構成されたサスペンションユニット16によって支持されている。空圧要素における圧力に依存して、サスペンション力が最下のサポートユニット13へ加えられる。サポートユニット13は、摺動要素、特に摺動パッドとして構成されることが可能である。加えて、サポートユニット13は、例えば割り当てられた壁部11において相補的な要素と相互作用するガイドレールとしてサポートユニット13を構成することで1つのガイドを提供することができる。
【0039】
図5には、図2と類似した、2つのサポートユニット13と1つのサスペンションユニット14のアセンブリの底面図が示されている。図5から分かるように、1つのサスペンションユニット14が両サポートユニット13を支持している。当然、両サポートユニット13は、互いに上方に配置されることができるか、又は互いに隣り合って配置されることが可能である。自明なように、サポートユニット13の任意の数が、1つ又はより多くのサスペンションユニット14,15,16によって結合及び支持されることが可能である。
【0040】
図1図5に関して説明される全ての特徴、詳細及び利点は、1つの実施例へ任意に交換及び転換されることができ、すなわち、全ての実施例を任意に組み合わせることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5