特許第6622359号(P6622359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6622359
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】内燃機関用の燃料噴射システム
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/46 20060101AFI20191209BHJP
   F02M 55/02 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   F02M59/46 E
   F02M55/02 360G
   F02M59/46 U
   F02M59/46 Y
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-132394(P2018-132394)
(22)【出願日】2018年7月12日
(65)【公開番号】特開2019-19824(P2019-19824A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2018年7月12日
(31)【優先権主張番号】10 2017 211 981.0
(32)【優先日】2017年7月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マクス シェラー
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−173774(JP,U)
【文献】 特開2015−055230(JP,A)
【文献】 特開2013−167195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 59/46
F02M 55/02
F02M 37/00
F16K 15/04
F16K 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関用の燃料噴射システム(10)であって、
圧力室(30)を備えた燃料高圧ポンプ(18)を有し、前記圧力室(30)内で、運転時に、燃料(12)に高圧を付与するためにポンププランジャが運動するようになっており、
前記燃料高圧ポンプ(18)の下流側に接続された高圧領域(25)を有し、該高圧領域(25)に、前記燃料高圧ポンプ(18)が、高圧付与された前記燃料(12)を圧送するようになっており、
前記圧力室(30)を前記高圧領域(25)に接続するための弁装置(22)を有し、該弁装置(22)は流出弁(24)を有し、該流出弁(24)は、流出弁閉鎖エレメント(42)を備えており、該流出弁閉鎖エレメント(42)は、前記圧力室(30)から作用する押圧力に抗して、プリロードをかけられて流出弁座(46)に圧着されており、前記弁装置(22)は、圧力制限弁(38)をさらに有し、該圧力制限弁(38)は、圧力制限弁閉鎖エレメント(48)を備えており、該圧力制限弁閉鎖エレメント(48)は、前記高圧領域(25)から作用する押圧力に抗して、圧力制限弁座(50)に、プリロードをかけられて圧着されている、
燃料噴射システム(10)において、
前記流出弁(24)と前記圧力制限弁(38)とが、1つの共通の弁ハウジング(36)内で、それぞれ専用の収容孔(40)内に収容されており、該収容孔(40)は、前記弁ハウジング(36)の第1の長手方向端部(56)に配置された開口部表面(54)を起点として、ほぼ弁ハウジング長手方向軸線(52)に沿って、前記弁ハウジング(36)に突入するように延びており、
前記弁ハウジング(36)は、前記第1の長手方向端部(56)とは反対の側に配置された第2の長手方向端部(60)に、中央の流れ孔(62)を有しており、
前記収容孔(40)は、それぞれ、孔交差部(64)によって、前記流れ孔(62)に、前記流れ孔(62)との間で流体が流通するように接続されており、
前記収容孔(40)は、盲孔(58)として形成されており、互いに平行に、かつ前記弁ハウジング長手方向軸線(52)に対して平行に延びており、
前記収容孔(40)は、第1の孔直径(78)を備えた第1の孔領域(76)と、第2の孔直径(82)を備えた第2の孔領域(80)とを有しており、前記第2の孔直径(82)は、前記第1の孔直径(78)よりも小さく、それぞれ前記第2の孔領域(80)は、盲孔端部(88)を形成しており、前記収容孔(40)は、幾何学的に同一に形成されている、
燃料噴射システム(10)。
【請求項2】
前記流れ孔(62)は、前記弁ハウジング長手方向軸線(52)を中心として対称に形成されており、前記収容孔(40)は、前記弁ハウジング長手方向軸線(52)を中心として対称に配置されていることを特徴とする、請求項記載の燃料噴射システム(10)。
【請求項3】
前記弁ハウジング(36)は、高圧蓄え管路(26)を前記燃料高圧ポンプ(18)のハウジングに接続するための高圧接続部(34)によって形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載の燃料噴射システム(10)。
【請求項4】
前記高圧接続部(34)は、該高圧接続部(34)を前記燃料高圧ポンプ(18)の前記ハウジングに高圧密に取り付けるための第1の取付け領域(90)と、前記高圧蓄え管路(26)を前記高圧接続部(34)に接続するための第2の取付け領域(92)とを有し、前記第1の取付け領域(90)は、前記弁ハウジング(36)の前記第1の長手方向端部(56)に形成されており、前記第2の取付け領域(92)は、前記弁ハウジング(36)の前記第2の長手方向端部(60)に形成されていることを特徴とする、請求項記載の燃料噴射システム(10)。
【請求項5】
前記高圧接続部(34)は、前記弁ハウジング長手方向軸線(52)に沿って、第1の接続部直径(70)を有する第1の高圧接続部領域(66)と、第2の接続部直径(72)を有する第2の高圧接続部領域(68)とを有し、前記第2の接続部直径(72)は、前記第1の接続部直径(70)よりも小さく、前記収容孔(40)は、前記第1の高圧接続部領域(66)にのみ配置されていることを特徴とする、請求項3または4記載の燃料噴射システム(10)。
【請求項6】
前記流れ孔(62)は、前記第2の高圧接続部領域(68)に配置されていて、該第2の高圧接続部領域(68)から、前記第1の高圧接続部領域(66)に突入して延びていることを特徴とする、請求項記載の燃料噴射システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用の燃料噴射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるコモンレール式の燃料噴射システムでは、内燃機関内で燃焼させるべき燃料における圧力形成と、内燃機関の燃焼室内への燃料噴射とが、分離されている。この場合、燃料高圧ポンプにより、低圧領域、たとえばタンクからこの燃料高圧ポンプに供給された燃料が圧縮される。次いで、燃料高圧ポンプの出口側からは、圧縮された燃料の体積流が、高圧領域、たとえば高圧蓄え管路、すなわちいわゆるコモンレールへと流れ、次いで、圧縮された燃料が、コモンレールから内燃機関の燃焼室内へ噴射される。
【0003】
燃料高圧ポンプは、たとえば燃料としてガソリンを用いる場合には、150バール〜400バールの範囲の圧力を形成し、燃料としてディーゼルを用いる場合には、1500バール〜3000バールの範囲の圧力を形成する。それぞれの燃料は、高圧領域において、この形成された高い圧力下にあり、たとえば高圧蓄え管路から、噴射弁を介して内燃機関の燃焼室に供給される。
【0004】
燃料噴射システムの適正な機能形式を確保し、かつ場合によっては特別な要求を満たすことができるようにするために、燃料噴射システムは、一般に、少なくとも2つの弁、すなわち流出弁と圧力制限弁とを有している。流出弁は、高圧弁として機能し、この高圧弁は、燃料高圧ポンプが、プランジャポンプとして構成されている場合には、ポンププランジャの上昇運動時に開くので、燃料を高圧領域へと圧送することができる。ポンププランジャの下降運動時では、流出弁は閉じるので、圧縮された燃料が高圧領域から圧力室へと逆流することが阻止される。
【0005】
圧力制限弁は、高圧領域、特に高圧蓄え管路内での、過度に大きな圧力上昇を阻止する機能を有する。高圧領域内の圧力が規定の値を上回ると、圧力制限弁を介して、一定量の燃料体積流が圧力室または低圧領域へ逃がされる。
【0006】
上で挙げた弁、すなわち流出弁および圧力制限弁は、それぞれ、公知の使用形態においては、たとえば燃料高圧ポンプのハウジング内に別個に取り付けられる。これにより、極めて大きな構成スペースが必要となり、これにより燃料高圧ポンプの効率が低下し、また、高いシステム圧においては、燃料高圧ポンプへの接続が「困難」ないし「もはや不可能」となる。
【0007】
代わりに、たとえば、圧力制限弁と流出弁とを、互いに前後して直列に配置することも知られているが、しかしこのことは、流体である燃料を複数回の方向転換を経て不連続的に案内する結果となり、さらには、望ましくない圧力低下や、キャビテーションおよびエロージョンによる耐久性の低下を招くおそれがある。さらに、このことは、特に必要とされるべき弁座に関して、過度に複雑な、したがって極めて不経済でかつ高価な構成要素を生み出す結果となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、相応する弁装置を備えた、改良された燃料噴射システムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1に記載の特徴の組み合わせを有する燃料噴射システムによって解決される。
【0010】
本発明の有利な実施態様は、従属形式の請求項の対象である。
【0011】
内燃機関用の燃料噴射システムが、圧力室を備えた燃料高圧ポンプを有し、圧力室内で、運転時に、燃料に高圧を付与するためにポンププランジャが運動するようになっており、さらに、燃料噴射システムが、燃料高圧ポンプの下流側に接続された高圧領域を有し、この高圧領域に、燃料高圧ポンプが、高圧付与された燃料を圧送するようになっている。燃料噴射システムはさらに、圧力室を高圧領域に接続するための弁装置を含んでおり、この弁装置は、流出弁を有し、この流出弁は、流出弁閉鎖エレメントを備えており、この流出弁閉鎖エレメントは、圧力室から作用する押圧力に抗して、流出弁座に、プリロードをかけられて圧着されており、さらに弁装置は、圧力制限弁を有し、この圧力制限弁は、圧力制限弁閉鎖エレメントを備えており、この圧力制限弁閉鎖エレメントは、高圧領域から作用する押圧力に抗して、圧力制限弁座に、プリロードをかけられて圧着されている。流出弁と圧力制限弁とは、1つの共通の弁ハウジング内で、それぞれ専用の収容孔内に収容されており、収容孔は、弁ハウジングの第1の長手方向端部に配置された開口部表面を起点として、ほぼ弁ハウジング長手方向軸線に沿って、弁ハウジングに突入するように延びている。弁ハウジングは、第1の長手方向端部とは反対の側に配置された第2の長手方向端部に、中央の流れ孔を有している。両収容孔は、それぞれ、孔交差部によって、流れ孔に、この流れ孔との間で流体が流通するように接続されている。
【0012】
この場合、「孔交差部」とは、アンダカット部を意味し、このアンダカットによって、両弁のための個々の収容孔が、流れ孔に接続されている。したがって、これらの収容孔は、流れ孔と整合するように配置されているのではなく、弁ハウジング長手方向軸線に対して相対的に、流れ孔に対してずらされて配置されているので、これらの収容孔の端部は、部分的にしか流れ孔に突入していない。したがって、流れ孔は、各収容孔の部分領域と交差している。
【0013】
流れ孔と収容孔とのこの特別な配置により、弁装置の両弁を、実質的に平行にかつ相並んで弁ハウジング内に配置し、しかも弁装置全体のための構成スペースを節約することが可能である。
【0014】
これにより、構成アセンブリ全体を可能な限り小さく形成することができ、かつ、幾何学的な直列接続を採用した場合にもたらされるハイドロリック的な不都合を回避することができる。
【0015】
好適には、流れ孔は常に高圧を案内するようになっている。すなわち、流れ孔は、流出弁に関して流出側に配置されていて、燃料高圧ポンプの下流側に接続された高圧領域に通じている。これに対して開口部表面は、有利には、燃料高圧ポンプの吐出行程ではたしかに同じく高圧が生じるが、しかし燃料高圧ポンプが吸込行程にある時には、開口部表面に低圧も生じるように、配置されている。
【0016】
好適には、収容孔は、盲孔として形成されており、特に互いに平行に、かつ弁ハウジング長手方向軸線に対して平行に延びている。
【0017】
すべての孔が、弁ハウジング内において実質的に互いに平行に延びているような配置形式により、構成スペースを最も多く節約することができる。
【0018】
有利には、収容孔は、第1の孔直径を備えた第1の孔領域と、第2の孔直径を備えた第2の孔領域とを有しており、第2の孔直径は、第1の孔直径よりも小さい。この場合、それぞれ第2の孔領域は、盲孔端部を形成している。
【0019】
このことは、収容孔は実質的に、開口部表面から大径の孔直径を持って弁ハウジングに突入するように延び、次いで盲孔の端部に向かって先細りしていることを意味する。このことにより、収容孔内に段部を形成することが可能になり、これらの段部には、たとえば各弁のエレメント、たとえば戻しばねやまたは閉鎖エレメントも支持される。
【0020】
先細りにより、収容孔と流れ孔との孔交差部を、それぞれ比較的小さく保持することができるので、弁ハウジングは、全体的に、ある一定の基本安定性を維持する。
【0021】
有利な実施態様では、両収容孔が幾何学的に同一に形成されている。このことは、製造プロセスのために有利である。なぜならば、このことにより、同一の孔を弁ハウジング内に簡単に形成するだけで済むからである。
【0022】
収容孔に関して「同一」という用語は、そのように同一に形成されている場合、両収容孔が、弁ハウジング長手方向軸線に沿って同じ長さを有し、かつ同じ孔直径をも有することを意味する。さらに両収容孔は、同じ形状、つまり特に盲孔の形状を有することが望ましい。好適には、両収容孔が同一に形成されている場合には、これら両収容孔は、同じ表面、すなわち弁ハウジング長手方向軸線に対して垂直に延びる開口部表面を起点とする。有利には、両収容孔の端部も、弁ハウジング長手方向軸線に対して垂直の、同じ高さに位置している。
【0023】
好適には、流れ孔が、弁ハウジング長手方向軸線を中心として対称に形成されている。この場合、両収容孔は、弁ハウジング長手方向軸線を中心として対称に配置されていると、特に有利である。相応する孔を弁ハウジング内に対称に配置または形成することにより、一方では、弁ハウジングの安定性が高まり、他方では、弁ハウジング内に提供されている構成スペースを特に良好に利用することができる。
【0024】
好適な実施態様では、弁ハウジングが、高圧蓄え管路を燃料高圧ポンプのハウジングに接続するための高圧接続部によって形成されている。高圧付与された燃料を、燃料高圧ポンプから、燃料高圧ポンプの下流側に接続されたエレメントへ引き続き案内する高圧接続部は、大抵の場合、もともと燃料高圧ポンプのハウジングに設けられている。したがって、もともと使用されていたこの構成スペースを利用して、ここに弁装置を設けることは、特に有利である。
【0025】
好適には、高圧接続部が、高圧接続部を燃料高圧ポンプのハウジングに高圧密に取り付けるための第1の取付け領域と、高圧蓄え管路を高圧接続部に接続するための第2の取付け領域とを有し、この場合、第1の取付け領域は、弁ハウジングの第1の長手方向端部に形成されており、第2の取付け領域は、弁ハウジングの第2の長手方向端部に形成されている。
【0026】
高圧蓄え管路は、有利には、いわゆるコモンレールによって形成される。このコモンレールからは、大抵の場合は複数のインジェクタが分岐しており、これらのインジェクタは、高圧付与された燃料を、内燃機関の燃焼室内へ噴射する。
【0027】
高圧接続部は、第1の取付け領域によって燃料高圧ポンプのハウジングに取り付けられ、したがって第1の取付け領域は、弁ハウジングの開口部表面を形成しており、この開口部表面を起点として、収容孔が弁ハウジングに突入するように延びている。第2の取付け領域には、高圧蓄え管路が接続され、したがって第2の取付け領域は、弁ハウジングの、流れ孔が配置されている領域を形成している。
【0028】
したがって、好適には、第2の取付け領域は雄ねじ山を有し、この雄ねじ山を介して、螺合によって高圧蓄え管路を高圧接続部に取り付けることができる。
【0029】
高圧接続部は、たとえば溶接結合によって、燃料高圧ポンプのハウジングに取り付けることができる。しかし、高圧接続部を、相応する回転防止部を備えたねじ込み結合部を介して、燃料高圧ポンプのハウジングに取り付けることも考えられる。
【0030】
両弁の個々の部材、たとえば弁座を形成するスリーブ、弁座と協働して弁を閉鎖する閉鎖エレメント、閉鎖エレメントにプリロードをかけて弁座に圧着させる戻しばね、および戻しばねを支持することができるスリーブは、好適には、個別部材として設けられており、これらの個別部材は、個々にそれぞれの収容孔内に導入されて、収容孔内に取り付けられる。このことは、たとえば締まり嵌めおよび/またはクリンプによって行うことができる。
【0031】
これにより、弁ハウジングとしての高圧接続部に、両弁の個別部材を装備することができ、こうして全体的には高圧接続部をいわゆるカートリッジ式の構造体として提供することができる。このカートリッジ式の構造体は、燃料高圧ポンプのハウジングの外部で検査され、次いで、全体構成部材として、燃料高圧ポンプに取り付けることができる。
【0032】
好適には、高圧接続部は、弁ハウジング長手方向軸線に沿って、第1の接続部直径を有する第1の高圧接続部領域と、第2の接続部直径を有する第2の高圧接続部領域とを有し、第2の接続部直径は、第1の接続部直径よりも小さい。両収容孔は、この場合、第1の高圧接続部領域にのみ配置されている。したがって好適には、高圧接続部は、段付けされて形成されていて、大小異なる接続部直径を有しており、大径の接続部直径の領域に収容孔が設けられている。これにより、相応して、第1の高圧接続部領域に、両弁を収納するための構成スペースを提供することができる。
【0033】
好適には、流れ孔は、第2の高圧接続部領域に配置されていて、この第2の高圧接続部領域から、第1の高圧接続部領域に突入して延びている。
【0034】
したがって、高圧接続部の大径の接続部直径は、収容孔が設けられている箇所にしか設定されていない。高圧接続部は、収容孔のための構成スペースがもはや必要とされなくなる箇所を超えたのちに、すなわち流れ孔の領域において先細りになっており、この領域において、高圧接続部は高圧蓄え管路へ移行する。これにより、高圧蓄え管路を接続するための構成スペースを提供することができる。相応して、両収容孔と交差している流れ孔は、第1の高圧接続部領域へ突入して延びており、こうして、できるだけ大きな構成スペースが提供されている領域、すなわち第1の高圧接続部領域において、両収容孔と流れ孔との間の流体を流通させる接続が可能になる。
【0035】
以下に、本発明の実施形態を添付の図面に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】燃料高圧ポンプと、高圧蓄え管路と、これらの間に配置された弁装置とを備えた燃料噴射システムを示す概略的な概観図である。
図2図1に示した弁装置の長手方向断面図である。
図3図2に示した弁装置を上から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、燃料噴射システム10の概略的な概観図を示している。この燃料噴射システム10では、燃料12が、プレフィードポンプ14によって、タンク16から燃料高圧ポンプ18へと圧送される。燃料高圧ポンプ18内では、燃料12に高圧が付与され、この場合、燃料高圧ポンプ18内で加圧される燃料12の量を、流入弁20の相応するアクティブな制御によって調節することができる。加圧された燃料12は、次いで、流出弁24を有する弁装置22を介して、高圧領域25、特に高圧蓄え管路26に供給される。高圧蓄え管路26には複数のインジェクタ28が配置されており、加圧されかつ蓄えられた燃料12は、これらのインジェクタ28を介して、内燃機関の燃焼室内へ噴射することができる。
【0038】
燃料高圧ポンプ18は、有利にはプランジャポンプとして形成されており、したがってポンププランジャを有しており、このポンププランジャは、圧力室30内で運転時に並進的に昇降運動し、この運動によって、圧力室30内に存在する燃料12を圧縮し、こうして燃料12を加圧する。加圧された燃料12は、次いで、流出弁24を介して、圧力室30から高圧蓄え管路26内へ流入する。
【0039】
好適には燃料高圧ポンプ18のハウジング内に配置されている圧力室30に高圧蓄え管路26を接続するためには、高圧接続部34が設けられていると好適である。
【0040】
弁装置22は、高圧蓄え管路26内に存在する燃料12に所望の圧力を提供することができるように設けられており、この弁装置22は、本実施形態においては、有利には高圧接続部34内に配置されている。この場合、高圧接続部34は、弁装置22のための弁ハウジング36の機能を果たす。
【0041】
この弁ハウジング36として設けられている高圧接続部34は、図2に、長手方向断面図で詳細に図示されている。
【0042】
弁装置22は、流出弁24を有する。この流出弁24の働きにより、所望の圧力を有する燃料12のみが、圧力室30から、高圧蓄え管路26の方向へ流出するようになる。流出弁24はさらに、圧力室30内に、燃料高圧ポンプ18のポンププランジャの下降運動によって負圧が生じたときに、圧縮された燃料12が圧力室30内へと逆流することを阻止する。
【0043】
弁装置22はさらに、圧力制限弁38を含む。この圧力制限弁38は、高圧蓄え管路26内における過度に大きな圧力上昇を阻止する。なぜならば、高圧蓄え管路26内の圧力が規定の値を上回ると、圧力制限弁38を介して、一定量の燃料12の体積流が、圧力室30へと戻るように逃がされるからである。
【0044】
高圧接続部34は、流出弁24と圧力制限弁38とのための、共通の弁ハウジングを形成する。このためには、それぞれ1つの収容孔40が設けられており、この場合、両弁24,38のうちのそれぞれ一方の弁が、両収容孔40のうちのそれぞれ一方の収容孔内に配置されている。両弁24,38は、本実施形態では、パッシブ型の弁として形成されており、互いに対して逆並列に接続されている。したがって、流出弁24は、流出弁閉鎖エレメント42を有しており、この流出弁閉鎖エレメント42は、戻しばね44によって、圧力室30から作用する押圧力に抗して、流出弁座46に、プリロードをかけられて圧着されている。したがって、流出弁閉鎖エレメント42は、圧力室30から作用する押圧力が戻しばね44のばね力を克服すると開くので、燃料12は、収容孔40を通って高圧接続部34から流出することができる。
【0045】
圧力制限弁38には、圧力制限弁閉鎖エレメント48が設けられており、この圧力制限弁閉鎖エレメント48は、戻しばね44によって、高圧領域25から作用する押圧力に抗して、圧力制限弁座50にプリロードをかけられて圧着されている。したがって、圧力制限弁38は、高圧領域25から作用する押圧力が、戻しばね44のばね力よりも大きくなったあとでしか開かない。
【0046】
両収容孔40は互いに対して平行に、かつ弁ハウジング36の弁ハウジング長手方向軸線52に対して平行に配置されている。収容孔40は、弁ハウジング36の第1の長手方向端部56に設けられた開口部表面54を起点として、弁ハウジング36に突入するように延びている。両収容孔40は、この場合、盲孔58として形成されている。
【0047】
弁ハウジング36の、第1の長手方向端部56とは反対の側に配置された第2の長手方向端部60からは、流れ孔62が、中央で、特に弁ハウジング長手方向軸線52を中心として対称に形成されて、弁ハウジング36に突入するように延びている。両収容孔40は、孔交差部64を介して、流れ孔62に、この流れ孔62との間で流体が流通するように接続されている。
【0048】
流出弁24と圧力制限弁38とは、通常は、燃料高圧ポンプ18のハウジングの加工およびサイズを低減するために、両弁が同様の構成スペースを必要とするように、したがって相並んで平行に高圧接続部34内に配置することができるように、設計されている。両弁24,38は、流れ孔62によって、高圧接続部34内において、アンダカット部、すなわち孔交差部64を介して互いに接続され、かつ高圧領域25に接続される。したがって、両弁24,38は、互いに平行に配置されているが、互いに逆並列に接続されている。
【0049】
これにより、パッシブ型の弁24,38が通常は配置されている、燃料高圧ポンプ18のハウジング内における両弁のための構成スペースを、削除することができる。さらに、こうすることによって、いわゆるカートリッジとしての外部の構成アセンブリが得られる。この外部の構成アセンブリは、燃料高圧ポンプ18に対して平行に組み立てられて、かつ燃料高圧ポンプ18の外部でも検査することができる。
【0050】
高圧接続部34は、弁ハウジング長手方向軸線52に沿って、第1の高圧接続部領域66と、第2の高圧接続部領域68とを有する。第1の高圧接続部領域66は、第1の接続部直径70を有し、第2の高圧接続部領域68は、第2の接続部直径72を有する。第1の接続部直径70は、第2の接続部直径72よりも大きく形成されている。なぜならば、大径の接続部直径70を有する第1の高圧接続部領域66には、両弁24,38のための収容孔40が配置されているからである。第2の高圧接続部領域68には、流れ孔62しか配置されていない。したがって、第1の高圧接続部領域66は、弁装置22を収納するための十分な構成スペースを提供し、そして高圧接続部34は、第2の高圧接続部領域68に向かって先細りになっている。この第2の高圧接続部領域68において、高圧接続部34は、有利には雄ねじ山74を有しており、この雄ねじ山74には、高圧領域25を形成するために高圧蓄え管路26を螺合させることができる。
【0051】
流れ孔62は、孔交差部64を介して両収容孔40に、流体が流通するように接続されているが、この孔交差部64は、大径の外径70を有する領域、すなわち第1の高圧接続部領域66に存在する。したがって、流れ孔62は、第2の高圧接続部領域68から、第1の高圧接続部領域66へ突入して延びている。これに対して、両収容孔40は、第1の高圧接続部領域66にのみ配置されている。
【0052】
両収容孔40は、段付けされた盲孔58として形成されており、したがって、両収容孔40とも、第1の孔直径78を有する第1の孔領域76と、第2の孔直径82を有する第2の孔領域80とを有する。第2の孔直径82は、第1の孔直径78よりも小さいので、各収容孔40には段部84が生じる。
【0053】
上記実施形態においては、弁装置22全体がカートリッジとして形成されているので、両弁24,38の部材は、個別部材として設けられており、これらの個別部材は、個々に収容孔40内に取り付けられる。したがって、両収容孔40内の段部84を、これらの個別部材のエレメントを支持するために用いることができる。たとえば、図2に示した流出弁24の戻しばね44の後端部が、この段部84に支持される。圧力制限弁38のための収容孔40に設けられた段部84は、弁座スリーブ86を収容するために用いられ、この弁座スリーブ86に圧力制限弁座50が形成されている。
【0054】
第2の孔領域80は、盲孔端部88を形成しており、この盲孔端部88に、流れ孔62との孔交差部64が配置されている。
【0055】
高圧接続部34内の構成スペースを効率良く利用できるようにするために、両収容孔40は、弁ハウジング長手方向軸線52を中心として対称に配置されており、かつ流れ孔62は、弁ハウジング長手方向軸線52を中心として対称に形成されている。
【0056】
高圧接続部34は、使用時に、開口部表面54の領域で、燃料高圧ポンプ18のハウジングに取り付けられている。したがって、高圧接続部34は、この開口部表面54の領域に、第1の取付け領域90を有する。高圧接続部34が雄ねじ山74を有している領域に、高圧接続部34は、第2の取付け領域92を有しており、この第2の取付け領域92には、高圧蓄え管路26を螺合させることができる。
【0057】
流出弁24および圧力制限弁38の構成に応じて、収容孔40は、特にその直径の点で、互いに異なるように形成されていてよい。
【0058】
図3は、図2に示した高圧接続部34の、開口部表面54の領域を上から見た平面図を示しており、この場合、圧力制限弁38は、流出弁24が配置されている収容孔40よりも大きな第1の孔直径78を有することが判る。
【0059】
しかし、両収容孔40が、完全に同一に、すなわち、その長さおよび形状に関してのみならず、その全体直径に関しても同一に形成されているように、両弁24,38を構成することも可能である。
図1
図2
図3