【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1に記載の特徴の組み合わせを有する燃料噴射システムによって解決される。
【0010】
本発明の有利な実施態様は、従属形式の請求項の対象である。
【0011】
内燃機関用の燃料噴射システムが、圧力室を備えた燃料高圧ポンプを有し、圧力室内で、運転時に、燃料に高圧を付与するためにポンププランジャが運動するようになっており、さらに、燃料噴射システムが、燃料高圧ポンプの下流側に接続された高圧領域を有し、この高圧領域に、燃料高圧ポンプが、高圧付与された燃料を圧送するようになっている。燃料噴射システムはさらに、圧力室を高圧領域に接続するための弁装置を含んでおり、この弁装置は、流出弁を有し、この流出弁は、流出弁閉鎖エレメントを備えており、この流出弁閉鎖エレメントは、圧力室から作用する押圧力に抗して、流出弁座に、プリロードをかけられて圧着されており、さらに弁装置は、圧力制限弁を有し、この圧力制限弁は、圧力制限弁閉鎖エレメントを備えており、この圧力制限弁閉鎖エレメントは、高圧領域から作用する押圧力に抗して、圧力制限弁座に、プリロードをかけられて圧着されている。流出弁と圧力制限弁とは、1つの共通の弁ハウジング内で、それぞれ専用の収容孔内に収容されており、収容孔は、弁ハウジングの第1の長手方向端部に配置された開口部表面を起点として、ほぼ弁ハウジング長手方向軸線に沿って、弁ハウジングに突入するように延びている。弁ハウジングは、第1の長手方向端部とは反対の側に配置された第2の長手方向端部に、中央の流れ孔を有している。両収容孔は、それぞれ、孔交差部によって、流れ孔に、この流れ孔との間で流体が流通するように接続されている。
【0012】
この場合、「孔交差部」とは、アンダカット部を意味し、このアンダカットによって、両弁のための個々の収容孔が、流れ孔に接続されている。したがって、これらの収容孔は、流れ孔と整合するように配置されているのではなく、弁ハウジング長手方向軸線に対して相対的に、流れ孔に対してずらされて配置されているので、これらの収容孔の端部は、部分的にしか流れ孔に突入していない。したがって、流れ孔は、各収容孔の部分領域と交差している。
【0013】
流れ孔と収容孔とのこの特別な配置により、弁装置の両弁を、実質的に平行にかつ相並んで弁ハウジング内に配置し、しかも弁装置全体のための構成スペースを節約することが可能である。
【0014】
これにより、構成アセンブリ全体を可能な限り小さく形成することができ、かつ、幾何学的な直列接続を採用した場合にもたらされるハイドロリック的な不都合を回避することができる。
【0015】
好適には、流れ孔は常に高圧を案内するようになっている。すなわち、流れ孔は、流出弁に関して流出側に配置されていて、燃料高圧ポンプの下流側に接続された高圧領域に通じている。これに対して開口部表面は、有利には、燃料高圧ポンプの吐出行程ではたしかに同じく高圧が生じるが、しかし燃料高圧ポンプが吸込行程にある時には、開口部表面に低圧も生じるように、配置されている。
【0016】
好適には、収容孔は、盲孔として形成されており、特に互いに平行に、かつ弁ハウジング長手方向軸線に対して平行に延びている。
【0017】
すべての孔が、弁ハウジング内において実質的に互いに平行に延びているような配置形式により、構成スペースを最も多く節約することができる。
【0018】
有利には、収容孔は、第1の孔直径を備えた第1の孔領域と、第2の孔直径を備えた第2の孔領域とを有しており、第2の孔直径は、第1の孔直径よりも小さい。この場合、それぞれ第2の孔領域は、盲孔端部を形成している。
【0019】
このことは、収容孔は実質的に、開口部表面から大径の孔直径を持って弁ハウジングに突入するように延び、次いで盲孔の端部に向かって先細りしていることを意味する。このことにより、収容孔内に段部を形成することが可能になり、これらの段部には、たとえば各弁のエレメント、たとえば戻しばねやまたは閉鎖エレメントも支持される。
【0020】
先細りにより、収容孔と流れ孔との孔交差部を、それぞれ比較的小さく保持することができるので、弁ハウジングは、全体的に、ある一定の基本安定性を維持する。
【0021】
有利な実施態様では、両収容孔が幾何学的に同一に形成されている。このことは、製造プロセスのために有利である。なぜならば、このことにより、同一の孔を弁ハウジング内に簡単に形成するだけで済むからである。
【0022】
収容孔に関して「同一」という用語は、そのように同一に形成されている場合、両収容孔が、弁ハウジング長手方向軸線に沿って同じ長さを有し、かつ同じ孔直径をも有することを意味する。さらに両収容孔は、同じ形状、つまり特に盲孔の形状を有することが望ましい。好適には、両収容孔が同一に形成されている場合には、これら両収容孔は、同じ表面、すなわち弁ハウジング長手方向軸線に対して垂直に延びる開口部表面を起点とする。有利には、両収容孔の端部も、弁ハウジング長手方向軸線に対して垂直の、同じ高さに位置している。
【0023】
好適には、流れ孔が、弁ハウジング長手方向軸線を中心として対称に形成されている。この場合、両収容孔は、弁ハウジング長手方向軸線を中心として対称に配置されていると、特に有利である。相応する孔を弁ハウジング内に対称に配置または形成することにより、一方では、弁ハウジングの安定性が高まり、他方では、弁ハウジング内に提供されている構成スペースを特に良好に利用することができる。
【0024】
好適な実施態様では、弁ハウジングが、高圧蓄え管路を燃料高圧ポンプのハウジングに接続するための高圧接続部によって形成されている。高圧付与された燃料を、燃料高圧ポンプから、燃料高圧ポンプの下流側に接続されたエレメントへ引き続き案内する高圧接続部は、大抵の場合、もともと燃料高圧ポンプのハウジングに設けられている。したがって、もともと使用されていたこの構成スペースを利用して、ここに弁装置を設けることは、特に有利である。
【0025】
好適には、高圧接続部が、高圧接続部を燃料高圧ポンプのハウジングに高圧密に取り付けるための第1の取付け領域と、高圧蓄え管路を高圧接続部に接続するための第2の取付け領域とを有し、この場合、第1の取付け領域は、弁ハウジングの第1の長手方向端部に形成されており、第2の取付け領域は、弁ハウジングの第2の長手方向端部に形成されている。
【0026】
高圧蓄え管路は、有利には、いわゆるコモンレールによって形成される。このコモンレールからは、大抵の場合は複数のインジェクタが分岐しており、これらのインジェクタは、高圧付与された燃料を、内燃機関の燃焼室内へ噴射する。
【0027】
高圧接続部は、第1の取付け領域によって燃料高圧ポンプのハウジングに取り付けられ、したがって第1の取付け領域は、弁ハウジングの開口部表面を形成しており、この開口部表面を起点として、収容孔が弁ハウジングに突入するように延びている。第2の取付け領域には、高圧蓄え管路が接続され、したがって第2の取付け領域は、弁ハウジングの、流れ孔が配置されている領域を形成している。
【0028】
したがって、好適には、第2の取付け領域は雄ねじ山を有し、この雄ねじ山を介して、螺合によって高圧蓄え管路を高圧接続部に取り付けることができる。
【0029】
高圧接続部は、たとえば溶接結合によって、燃料高圧ポンプのハウジングに取り付けることができる。しかし、高圧接続部を、相応する回転防止部を備えたねじ込み結合部を介して、燃料高圧ポンプのハウジングに取り付けることも考えられる。
【0030】
両弁の個々の部材、たとえば弁座を形成するスリーブ、弁座と協働して弁を閉鎖する閉鎖エレメント、閉鎖エレメントにプリロードをかけて弁座に圧着させる戻しばね、および戻しばねを支持することができるスリーブは、好適には、個別部材として設けられており、これらの個別部材は、個々にそれぞれの収容孔内に導入されて、収容孔内に取り付けられる。このことは、たとえば締まり嵌めおよび/またはクリンプによって行うことができる。
【0031】
これにより、弁ハウジングとしての高圧接続部に、両弁の個別部材を装備することができ、こうして全体的には高圧接続部をいわゆるカートリッジ式の構造体として提供することができる。このカートリッジ式の構造体は、燃料高圧ポンプのハウジングの外部で検査され、次いで、全体構成部材として、燃料高圧ポンプに取り付けることができる。
【0032】
好適には、高圧接続部は、弁ハウジング長手方向軸線に沿って、第1の接続部直径を有する第1の高圧接続部領域と、第2の接続部直径を有する第2の高圧接続部領域とを有し、第2の接続部直径は、第1の接続部直径よりも小さい。両収容孔は、この場合、第1の高圧接続部領域にのみ配置されている。したがって好適には、高圧接続部は、段付けされて形成されていて、大小異なる接続部直径を有しており、大径の接続部直径の領域に収容孔が設けられている。これにより、相応して、第1の高圧接続部領域に、両弁を収納するための構成スペースを提供することができる。
【0033】
好適には、流れ孔は、第2の高圧接続部領域に配置されていて、この第2の高圧接続部領域から、第1の高圧接続部領域に突入して延びている。
【0034】
したがって、高圧接続部の大径の接続部直径は、収容孔が設けられている箇所にしか設定されていない。高圧接続部は、収容孔のための構成スペースがもはや必要とされなくなる箇所を超えたのちに、すなわち流れ孔の領域において先細りになっており、この領域において、高圧接続部は高圧蓄え管路へ移行する。これにより、高圧蓄え管路を接続するための構成スペースを提供することができる。相応して、両収容孔と交差している流れ孔は、第1の高圧接続部領域へ突入して延びており、こうして、できるだけ大きな構成スペースが提供されている領域、すなわち第1の高圧接続部領域において、両収容孔と流れ孔との間の流体を流通させる接続が可能になる。
【0035】
以下に、本発明の実施形態を添付の図面に基づき詳しく説明する。