(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記計算ユニットはさらに、前記第2の動作モード(MO2)において、蒸気(V)の動作状態を表す情報信号(SI)にさらに依存して、前記望ましい第2の動作状態が存在することを識別するように構成されている、
請求項5記載の麻酔時人工呼吸装置(BV)。
前記計算ユニットは、前記第2の動作状態が識別された場合、さらなる入力信号(E2)に応じてまたは自動的に、圧支持換気が行われるように前記計算ユニットが前記呼吸ガス圧送ユニットを駆動する第3の動作モード(MO3)へ移行するように構成されている、
請求項5記載の麻酔時人工呼吸装置(BV)。
前記計算ユニット(R)は、前記第3の動作モード(MO3)において、検出された圧力(P)および設定された目標圧力値(ΔP)に依存して、前記呼吸ガス圧送ユニット(AGF)を駆動するように構成されており、ここで、
前記計算ユニット(R)はさらに、前記第3の動作モードにおいて、検出された麻酔ガス濃度に依存して、目標圧力値(ΔP)の適応化を行うように構成されている、
請求項7記載の麻酔時人工呼吸装置(BV)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、麻酔時人工呼吸装置によって患者の従圧式換気を行い、この麻酔時人工呼吸装置が患者の自動換気だけでなく、複数の動作モード間の移行も有利に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の課題は、請求項1記載の麻酔時人工呼吸装置によって解決される。また、本発明の課題は、請求項11記載の麻酔時人工呼吸装置の動作方法によって解決される。さらに、本発明の課題は、請求項12記載の計算ユニットによって解決される。さらに、本発明の課題は、請求項13記載の方法によって解決される。
【0005】
本発明の有利な実施形態は、各従属請求項の対象となっており、部分的に図を参照して行う以下の説明において詳細に説明される。
【0006】
患者の自動換気のための麻酔時人工呼吸装置を提案する。当該麻酔時人工呼吸装置は、患者に向けられた呼吸ガス用換気チューブを接続するための、呼気ポートおよび吸気ポートと、呼吸ガス圧送ユニットと、呼吸ガスの体積流量を検出する少なくとも1つの体積流量センサ、二酸化炭素濃度を検出する少なくとも1つの呼吸ガスセンサ、および呼吸ガスの圧力を検出する少なくとも1つの圧力センサと、さらに、第1の動作モードにおいて、設定された換気頻度および検出された圧力および設定された目標圧力値に依存して呼吸ガス圧送ユニットを駆動するように構成された、少なくとも1つの計算ユニットとを備える。ここで、計算ユニットはさらに、検出された体積流量および検出された二酸化炭素濃度に基づいて、自動換気に関する望ましい動作状態が存在することを識別し、この動作状態が識別された場合、従圧式換気または圧支持換気が行われるように計算ユニットが呼吸ガス圧送ユニットを駆動する第2の動作モードへの移行を可能にするように構成されている。
【0007】
本発明の装置は、この装置により、検出された体積流量および検出された二酸化炭素濃度に基づいて、換気の望ましい動作状態が存在することを識別できるため、有利である。こうした動作状態は、体積流量から導出される量、好ましくは1回換気量と、二酸化炭素濃度から導出される量、好ましくは呼気終末二酸化炭素濃度とが、それぞれ望ましい相関関係を有するかまたは設定されたそれぞれの限界値に対する望ましい値位置を有する場合に得られる。このようにすれば、場合により、患者の換気の第2の動作モードへの移行を許容できることを導出可能である。
【0008】
好ましくは、計算ユニットは、設定された時間内で上記の動作状態が識別された場合に、第2の動作モードへの移行を可能にするように構成される。これにより、つねに連続して上記の動作状態の発生を試行または待機せずに、合理的なまたは設定された時間内で上記の動作状態が達成された場合にのみ方法が第2の動作モードへ移行することが保証される。この場合、好ましくは、計算ユニットは、第2の動作モードへの移行を自動で行える。好ましくは、こうした自動的な移行時にも、望ましい動作状態の存在または第2の動作モードへの移行を表す出力信号が出力される。これにより、医師には、動作状態が達成されたことおよび動作モードの移行が行われたことが報知される。
【0009】
好ましくは、計算ユニットは、上記の動作状態が識別された場合、望ましい動作状態の存在を表す出力信号を出力し、さらに入力信号に応じて第2の動作モードへ移行するように構成される。上記の動作状態が発生すると、このことは、医師にとって、患者がおそらく望ましい呼吸挙動を有することの示唆となりうる。この場合、装置の、自動換気に関する上記の動作状態の存在を表す出力信号の出力は、医師にとって、第1の動作モードから第2の動作モードへの移行を考慮すべきことの示唆となりうる。ついで、医師は、入力信号により、第2の動作モードへの移行を実行することができる。その後、第2の動作モードにおいて、従圧式換気または圧支持換気が実行可能となる。麻酔の範囲においては、患者が従圧式換気により換気されるのが通常の状況である。医師には、時折、人工呼吸装置によって完全に定められた動作モード、好ましくは第2の動作モードで患者を換気させるべき時点を定めなければならないというタスクが生じる。この場合、医師は、こうした第2の動作モードによる換気が可能となる程度に患者が充分に安定しているかどうかを考慮しなければならないので、このために可能であれば患者の呼吸活動の特性を考慮する必要がある。このとき、望ましい動作状態が存在していることの示唆は、医師のための補助見解となりうる。本発明の装置は、好ましくは特に有利に換気を自動で行う。なぜなら、装置は、体積流量および二酸化炭素濃度に基づいて、自動換気に関する動作状態が存在することを識別でき、この場合に、出力信号の出力によって医師にこれを示すことができるからである。医師が自ら実際に装置をさらなる第2の動作モードへ移行させるべきことを決定した場合、この医師は入力または入力信号により、自身の監視のもと、自動的に移行を生じさせることができる。このように、第2の動作モードを実行するかどうかは医師に委ねられており、一方、医師はその決定において出力信号の出力によるサポートを受ける。
【0010】
有利な構成によれば、計算ユニットは、第1の動作モードにおいて、検出された体積流量に基づいて患者に供給される1回換気量を求め、さらに、検出された二酸化炭素濃度に基づいて呼気終末二酸化炭素濃度を求め、さらに、求められた1回換気量、体積上方限界値、体積下方限界値、求められた呼気終末二酸化炭素濃度、濃度上方限界値および濃度下方限界値に依存して、目標圧力値の適応化および換気頻度の適応化を行うように構成される。装置のこの構成は、定められた限界値と、従圧式換気が行われる第1の動作モードの進行中に測定された1回換気量および呼気終末二酸化炭素濃度とに基づいて、目標圧力値および換気頻度の双方を適応化でき、これにより、患者が換気した1回換気量および呼気終末二酸化炭素濃度を、限界値によって定められた限界範囲内、すなわちコンフォートゾーン内で維持できるので、有利である。好ましくは、麻酔時人工呼吸装置は、1回換気量が体積上方限界値と体積下方限界値との間にあり、さらに呼気終末二酸化炭素濃度が濃度上方限界値と濃度下方限界値との間にある場合に、望ましい動作状態が存在することを識別する。
【0011】
好ましくは、麻酔時人工呼吸装置はさらに、呼吸ガスの麻酔ガス濃度を検出する少なくとも1つの呼吸ガスセンサを備え、望ましい動作状態は望ましい第1の動作状態であり、ここで、計算ユニットはさらに、第2の動作モードにおいて、検出された麻酔ガス濃度に基づいて自動換気に関する望ましい第2の動作状態が存在することを識別し、第2の動作状態が識別された場合、この望ましい第2の動作状態の存在を表す第2の出力信号を出力するように構成される。本発明のこの構成は、このようにすることで、第2の動作モード中、自動換気に関するさらなる望ましい第2の動作状態が達成されたことを医師に報知できるので、有利である。この場合、医師は、可能であれば自動換気の変更を考慮することができる。好ましくは、第2の動作状態が識別されると、第2の動作モードから、圧支持換気を実行するように計算ユニットが呼吸ガス圧送ユニットを駆動する第3の動作モードへの移行が自動的に行われる。
【0012】
好ましくは、計算ユニットはさらに、第2の動作モードにおいて、蒸気の動作状態を表す情報信号に依存して、自動換気に関する望ましい第2の動作状態が存在することを識別するように構成される。本発明のこの構成は、このようにすることで、第2の動作状態の有無の検査の進行中、麻酔薬の主源としての蒸気が望ましい動作状態を有するかどうかも考慮できるので、有利である。例えば、蒸気が望ましい動作状態で形成されている場合、出力信号は、医師によって、麻酔時換気の終末相が達成されうることの示唆として評価されうる。
【0013】
好ましくは、計算ユニットは、第2の動作状態が識別された場合、さらなる入力信号に応じて、圧支持換気が行われるように計算ユニットが呼吸ガス圧送ユニットを駆動する第3の動作モードへ移行するように構成される。本発明のこの構成は、第2の動作状態が存在することの示唆として出力信号を医師が評価でき、これにより、患者に圧支持換気のみが適用される第3の動作モードへの移行を考慮できるようになるので、有利である。圧支持換気は、患者自らが、さらなる麻酔薬の供給を遮断した後、麻酔時換気の終期でまさに所望される自発呼吸活動を示すことを考慮するものである。この場合、医師は、定められたパラメータの設定によって自ら圧支持換気のモードへの移行を行う必要はなく、計算ユニットが、医師の入力に基づきその監視のもとで、自動的にこうした圧支持換気のモードへの移行を行う。
【0014】
好ましくは、計算ユニットは、第2の動作モードにおいて、呼吸ガス圧送ユニットを、検出された圧力および従圧式換気または圧支持換気に対して設定された第2の目標圧力値に依存して駆動し、さらに検出された体積流量に基づいて、患者に供給される1回換気量を求め、検出された二酸化炭素濃度に基づいて呼気終末二酸化炭素濃度を求め、さらに、求められた1回換気量、体積上方限界値、体積下方限界値、求められた呼気終末二酸化炭素濃度、濃度上方限界値および濃度下方限界値に依存して、目標圧力値の適応化および換気頻度の適応化を行うように構成される。本発明のこの構成は、第2の動作モード中、1回換気量およびさらに呼気終末二酸化炭素濃度に依存して、目標圧力値に関してだけでなく換気頻度に関しても従圧式換気または圧支持換気が適応化されるので、有利である。
【0015】
好ましくは、計算ユニットは、第3の動作モードにおいて、検出された圧力および設定された目標圧力値に依存して、呼吸ガス圧送ユニットを駆動するように構成され、ここで、計算ユニットはさらに、第3の動作モードにおいて、検出された麻酔ガス濃度に依存して、目標圧力値の適応化を行うように構成される。本発明のこの構成は、このようにすることで、装置が、第3の動作モードにおいて、麻酔ガス濃度を考慮して圧支持換気相における目標圧力値を適応化できるので、有利である。
【0016】
さらに、患者の自動換気のための麻酔時人工呼吸装置を動作させる方法を提案する。この方法は、呼吸ガス圧送ユニットの駆動により、吸気ポートを介して患者に呼吸ガスを供給し、呼気ポートを介して呼吸ガスを戻すステップと、少なくとも1つの体積流量センサにより、呼吸ガスの体積流量を検出するステップと、少なくとも1つの呼吸ガスセンサにより、呼吸ガスの二酸化炭素濃度を検出するステップと、少なくとも1つの圧力センサにより、呼吸ガスの圧力を検出するステップと、少なくとも1つの計算ユニットにより、第1の動作モードにおいて、設定された換気頻度、検出された圧力および設定された目標圧力値に依存して、呼吸ガス圧送ユニットを駆動するステップとを含む。ここで、この方法は、検出された体積流量および検出された二酸化炭素濃度に基づいて、自動換気に関する望ましい動作状態が存在することを識別し、この動作状態が識別された場合、従圧式換気または圧支持換気が行われるように計算ユニットが呼吸ガス圧送ユニットを駆動する第2の動作モードへの移行を可能とすることを特徴とする。
【0017】
好ましくは、方法は、上記の動作状態が識別された場合、望ましい動作状態の存在を表す出力信号が出力され、さらに、入力信号に応じて、従圧式換気または圧支持換気が行われるよう計算ユニットが呼吸ガス圧送ユニットを駆動する第2の動作モードへの移行が行われることを特徴とする。
【0018】
さらに、患者の自動換気のための、麻酔時人工呼吸装置用の計算ユニットを提案する。この計算ユニットは、第1の動作モードにおいて、呼吸ガスの体積流量を表す体積流量信号を検出し、さらに呼吸ガスの二酸化炭素濃度を表す二酸化炭素濃度信号を検出し、さらに呼吸ガスの圧力を表す圧力信号を検出するように構成されている。計算ユニットはさらに、呼吸ガス圧送ユニットのための駆動信号を形成し、ここで、計算ユニットは、設定可能な換気頻度、検出された圧力信号および設定された目標圧力値に依存してこの駆動信号を形成するように構成されている。計算ユニットはさらに、検出された体積流量および検出された二酸化炭素濃度に基づいて、自動換気に関する望ましい動作状態が存在することを識別し、この動作状態が識別された場合、従圧式換気または圧支持換気が行われるように計算ユニットが呼吸ガス圧送ユニットを駆動する第2の動作モードへの移行を可能にするように構成されている。
【0019】
好ましくは、計算ユニットは、上記の動作状態が識別された場合、望ましい動作状態の存在を表す出力信号を出力し、さらに、入力信号に応じて、従圧式換気または圧支持換気が行われるように計算ユニットが呼吸ガス圧送ユニットを駆動する第2の動作モードへ移行するように構成される。
【0020】
さらに、患者の自動換気のための麻酔時人工呼吸装置を動作させる方法を提案する。この方法は、第1の動作モードにおいて、呼吸ガスの体積流量を表す体積流量信号を検出するステップと、呼吸ガスの二酸化炭素濃度を表す二酸化炭素濃度信号を検出するステップと、呼吸ガスの圧力を表す圧力信号を検出するステップと、計算ユニットが、設定された換気頻度、検出された圧力信号および設定された目標圧力値に依存して、呼吸ガス圧送ユニットのための駆動信号を求め、この駆動信号を供給するステップとを含む。ここで、この方法は、検出された体積流量および検出された二酸化炭素濃度に基づいて、自動換気に関する望ましい動作状態が存在することを識別し、その存在が識別された場合、従圧式換気または圧支持換気が行われるように計算ユニットが呼吸ガス圧送ユニットを駆動する第2の動作モードへの移行を可能とすることを特徴とする。
【0021】
好ましくは、上記の動作状態が存在することが識別された場合、望ましい動作状態の存在を表す出力信号が出力され、さらに、入力信号に応じて、従圧式換気または圧支持換気が行われるよう呼吸ガス圧送ユニットが駆動される第2の動作モードへの移行が行われる。
【0022】
さらに、上述した麻酔時人工呼吸装置の動作方法を、少なくとも1つの計算ユニット上でコンピュータプログラム手段によりこの方法が実行されるように構成することを提案する。
【0023】
以下に、本発明を、図の特定の実施形態に即して詳細に説明する。ただし、各実施形態は、全般的な発明思想を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1から
図4には従来技術から公知の曲線特性が示されており、これらの曲線特性に基づいて、トリガ制御、圧支持換気、自発呼吸トライアルを許容しない従圧式換気ならびに自発呼吸トライアルを許容する従圧式換気の動作方式を説明する。
【0026】
図1には、時間tに関する圧力特性Pおよび体積流量特性V
・(Vの微分)が示されている。フロートリガは、フロー閾値FTが体積流量V
・によってトリガ時点ZPで上方超過されることで行われ、これにより、ついで、圧力が、吸気相INP中、最小圧力PEEP(呼気終末陽圧)から圧力増大分ΔPだけ最大圧力Pmaxへ向かって調整される。吸気相INPに続いて、呼気相EXPが行われる。好ましくは、呼気相EXPの開始点は、体積流量V
・が負の信号特性によって必然的に通過する下方閾値USWによって定めることができる。
【0027】
図2には、吸気相での圧力が圧力最大値Pinspへ調整され、吸気相が時間Tiによって設定される純粋な従圧式換気の進行中の、圧力時間特性Pおよび体積流量特性V
・が示されている。患者の換気の頻度fまたはRRは、この場合、固定に設定されている。こうして、連続する各吸気相の各始点間の時間を定める時間Tが得られる。
【0028】
図3には、純粋な圧支持換気の範囲での、圧力特性Pおよび体積流量特性V
・が示されている。患者の呼吸頻度が所定の最小頻度fminまたはRRminを下回る場合、好ましくは警報信号の形態の警報を出力することができる。このように、各吸気相の各始点間の最大時間Tmaxは、最小呼吸頻度fminまたはRRminによって設定される。吸気相では、圧力Pが、最小圧力PEEPに基づき、圧力上昇量または目標圧力値ΔPだけ高められる。
【0029】
図4には、患者の自発呼吸に基づいて、都度の圧支持をともなう都度の吸気相を実行可能な従圧式換気の動作方式が示されている。
【0030】
従圧式換気または圧支持換気の動作方式は、2015年12月2日付にてドイツ特許商標庁へ提出された、出願人Draegerwerk AG & Co.KGaA、発明者Stefan Mersmann, Wilfried Buschke, Prof.Christoph Hoermannによる独国特許出願"Beatmungsvorrichtung und Verfahren zur automatisierten Beatmung eines Patienten"から知ることができる。また、こうした動作方式は、文献
・"Beatmungsmodi in der Intensivmedizin", Karin Deden, Draeger Medical GmbH
・取扱説明書"Zeus Infinity Empowered", Draeger Medical AG & Co.KG, 第1版, 2009年2月
にも、詳細に説明されている。
【0031】
図13には、ここで提案している麻酔時人工呼吸装置を好ましくは駆動しうる、可能な種々の動作モードの概観が示されている。第1の動作モードMO1では、患者の自発呼吸トライアルを許容しない純粋な従圧式換気が行われる。このタイプの換気については、
図2に関連して先に詳細に説明した。さらに、自動換気に関する望ましい動作状態が存在することが識別された場合、第2の動作モードMO2への移行が可能となる。これは、好ましくは、設定された時間内で上記の動作状態が識別された場合に可能となる。この場合、好ましくは、第2の動作モードMO2への移行が自動的に行われる。好ましくは、望ましい第1の動作状態の存在を表す出力信号の出力が行われる。この場合、好ましくは、医師の入力Eによる動作開始があったときに、第2の動作モードMO2への移行が行われる。好ましくは、医師の入力Eは、この場合に第2の動作モードMO2の可能な種々の実行形態M1もしくはM2もしくはM3のうち定められた実行形態を実行するという選択であってもよい。種々の実行形態M1,M2,M3は自動換気の各形態であり、第1の実行形態M1では、患者の自発呼吸トライアルを許容しない純粋な従圧式換気が行われ、また第2の実行形態M2では、患者の自発呼吸トライアルを許容する従圧式換気が行われ、さらに第3の実行形態M3では、患者の自発呼吸トライアルの範囲の純粋な圧支持換気が行われる。
【0032】
第2の動作モードMO2では、換気を実行する装置の計算ユニットが、検出された圧力と設定された目標圧力値とに依存して呼吸ガス圧送ユニットを駆動するように構成されており、ここで、計算ユニットはさらに、検出された体積流量または求められた1回換気量に依存して、かつ検出された二酸化炭素濃度または求められた呼気終末二酸化炭素濃度に依存して、目標圧力値の適応化および換気頻度の適応化を行うように構成されている。純粋な従圧式換気、自発呼吸トライアルを許容する従圧式換気ならびに純粋な圧支持換気のこうした実行形態M1,M2,M3については、2015年12月2日付にてドイツ特許商標庁へ提出された、出願人Draegerwerk AG & Co.KGaA、発明者Stefan Mersmann, Wilfried Buschke, Prof.Christoph Hoermannによるドイツ国特許出願"Beatmungsvorrichtung und Verfahren zur automatisierten Beatmung eines Patienten"に詳細に示されている。
【0033】
第2の動作モードMO2において、
図8に即して後に詳述する方法を用いて、自動換気に関する望ましい第2の動作状態が存在することが識別されると、第2の動作モードMO2から第3の動作モードMO3への移行が好ましくは自動的に行われる。好ましくは、望ましい第2の動作状態の存在を表す相応の出力信号が出力される。好ましくは、医師のさらなる入力E2に応じて、第2の動作モードMO2から第3の動作モードMO3への移行が行われる。当該第3の動作モードMO3では、患者の自発呼吸トライアルの範囲での純粋な圧支持換気が行われる。
【0034】
図5には、患者PTの自動換気のための本発明の麻酔時人工呼吸装置BVが示されている。本発明の麻酔時人工呼吸装置BVは、患者PTに向けられた換気チューブBSに接続可能な吸気ポートIPおよび呼気ポートEPを有する。当該換気チューブBSを介して、呼吸ガスが患者に供給され、また患者から再び装置BVへ排出される。供給は吸気ポートIPを介して、排出は呼気ポートEPを介して行われる。換気チューブBSは、各ポートIP,EPの端子を、通常、患者PTの肺LUを介した換気のためにこの患者PTに導入されるチューブの終端部となるいわゆるYピースYSへ連通している。
【0035】
また、麻酔時人工呼吸装置BVは、呼吸ガス圧送ユニットAGFを有する。好ましくは、呼吸ガス圧送ユニットAGFは、ピストンKOをモータMによって往復運動させることのできるピストンユニットKEである。
【0036】
さらに、装置BVは少なくとも1つの計算ユニットRを有し、この計算ユニットRは、複数の計算ユニットの複合体によっても実現可能である。計算ユニットRは、駆動信号ANSによって呼吸ガス圧送ユニットAGFを駆動するように構成されている。
【0037】
さらに、麻酔時人工呼吸装置BVは、呼吸ガスの圧力を検出する圧力センサDSを有する。圧力センサDSは、圧力センサ信号DSSを計算ユニットRへ供給する。
【0038】
人工呼吸装置BVは、呼吸ガスの体積流量を検出する少なくとも1つの体積流量センサVSを有する。体積流量センサVSは、体積流量センサ信号VSSを計算ユニットRへ供給する。
【0039】
好ましくは、最小圧力PEEPは、好ましくは呼気ポートEPの領域に配置される弁PVによって形成される。
【0040】
さらに、麻酔時人工呼吸装置BVは、少なくとも1つの呼吸ガスセンサASを有する。センサASは、好ましくは、YピースYSで呼吸ガスの測定プローブを導出しかつ測定ガスポートLTPに接続された測定ガス導管LTの後方に設けられる。
【0041】
少なくとも1つの呼吸ガスセンサASは、呼吸ガスの二酸化炭素濃度を検出するように構成されている。呼吸ガスセンサは、二酸化炭素濃度信号KSSを計算ユニットRに供給する。さらに、少なくとも1つの呼吸ガスセンサASは、好ましくは、呼吸ガスの麻酔ガス濃度を検出するように構成されている。呼吸ガスセンサは、好ましくは麻酔ガス濃度信号AGSを計算ユニットRへ供給する。少なくとも1つの呼吸ガスセンサASは、好ましくは個別のセンサでなく、1つのセンサユニットASである。こうしたセンサユニットASは、上述した各濃度の検出のためにそれぞれ専用に構成された複数のセンサを含む。
【0042】
麻酔時人工呼吸装置BVは、二酸化炭素吸収器CAと麻酔ガス混合ユニットNGとを有する。麻酔ガス混合ユニットNGは、好ましくは蒸気Vを含む。麻酔ガス混合ユニットNGを介して、麻酔に必要な混合ガスが呼吸循環系へ導入される。この場合、こうした混合ガスは、少なくとも1種類の麻酔薬を含む。
【0043】
さらに、麻酔時人工呼吸装置は、麻酔ガス送管ANFまたは麻酔ガス送管ANFへの端子を有する。
【0044】
計算ユニットRは、調整信号NGASにより、麻酔ガス混合ユニットNGを調整する。麻酔ガス混合ユニットNGは、好ましくは、麻酔ガス混合ユニットNGが麻酔薬を呼吸ガスに導入しているか否かを表すステータス信号SIを計算ユニットRへ供給する。好ましくは、当該ステータス信号SIは、蒸気Vが開放されているか否かを表す。
【0045】
麻酔時人工呼吸装置BV内のガス流は、好ましくは逆止弁RVによってコントロールされる。
【0046】
図5の麻酔時人工呼吸装置BVは、オペレータまたは医師が行うことのできる麻酔時人工呼吸装置BVでの入力を受信可能な入力ユニットEEまたは入力ユニットEEへのインタフェースを有する。
【0047】
計算ユニットRは、好ましくは、本発明の方法を実行するために、メモリユニットMEMにアクセスする。
【0048】
計算ユニットRは、好ましくは、純粋な圧支持換気の進行中、最小の換気頻度を下回る換気頻度が生じたことを表す警報信号WSを出力する。当該出力は、好ましくは、装置BVのデータインタフェースDASを介して行われる。好ましくは、装置BV自体が、好ましくは光学的かつ/または音響的に警報を出力する警報信号出力ユニットWSEを備える。
【0049】
計算ユニットRは、好ましくは、識別された動作状態の存在を表す出力信号AUSを出力する。こうした出力は、好ましくは、データインタフェースDASを介して図示されていない表示ユニットへ出力される。好ましくは、出力は、装置BVの一部である表示ユニットAEを介して行われる。
【0050】
本発明の麻酔時人工呼吸装置BVは、第1の動作モードで、患者PTの純粋な従圧式換気を行うように構成されている。また、本発明の麻酔時人工呼吸装置BVは、第2の動作モードにおいて、実行形態M1もしくはM2もしくはM3のいずれかにしたがい、
図13に関連して説明したごとく換気を行うように構成されている。
【0051】
図6には、本発明の方法を実行するために
図5の麻酔時人工呼吸装置BVをトリガ可能とするための動作開始ステップが示されている。ステップS1では、ユーザまたは医師による設定の入力が行われる。
【0052】
図10の表T1に、
図6のステップS1の範囲で可能な種々の入力または設定の可能性が示されている。第1列SP1には、患者の望ましい換気度または望ましいガス交換率を選択可能にするための種々の入力または設定が見出される。ここでは、好ましくは、正常換気または軽度の過換気のバリエーションが見られる。このような入力は、
図5に示されている麻酔時人工呼吸装置BVのインタフェースEEまたは入力ユニットEEによって受信することができる。当該入力ユニットEEは、好ましくは、麻酔時人工呼吸装置BVに属するものであってよく、または、麻酔時人工呼吸装置BVと通信するキーボード、タッチパネルおよび/またはコンピュータマウスの形態の入力ユニットであってよい。
【0053】
図10の第2列SP2には、さらに、患者の肺特性("lung mechanic")に関する入力または設定の種々の可能性が見出される。この設定では、正常な肺、拘束性の肺または閉塞性の肺という肺特性を表すことができる。
【0054】
図6に戻って、ステップS2では、換気に関するパラメータの初期化を行うことができる。この場合、好ましくは、換気頻度RRが12呼吸回数/min、最小圧力PEEPが5mbar、最大圧力値Pinspが18mbarに設定される。なお、当業者には、ここに示した値が例としての値にすぎず、本発明の方法が実行される際および本発明の装置が実現される際に別の値も選定可能であることは明らかである。
【0055】
方法ステップS3では、好ましくはいわゆるコンフォートゾーンKOZを表す限界値が定められる。これにつき、ステップS3に対応して
図7を考察する。
【0056】
図7には、コンフォートゾーンKOZが示されている。このコンフォートゾーンKOZは、計算ユニットRが、検出された体積流量から、患者が呼吸した1回換気量VTを求める際につねに定められ、ここで、この1回換気量VTは、体積上方限界値VTO1と体積下方限界値VTU1との間にある。さらに、コンフォートゾーンKOZを得るためには、計算ユニットRにより、二酸化炭素濃度信号KSSに基づいて、呼気終末二酸化炭素濃度etCO
2を求め、この呼気終末二酸化炭素濃度etCO
2が濃度上方限界値etCO
2O1と濃度下方限界値etCO
2U1との間にあることも必要である。
【0057】
好ましくは方法の達成すべき目的は、換気によって患者が体積限界値VTO1,VTU1内にある1回換気量VTを有するかまたはこれを呼吸し、同時に濃度限界値etCO
2O1,etCO
2U1内にある呼気終末二酸化炭素濃度etCO
2が形成されるよう、患者の換気を行うことである。
【0058】
図6のステップS3に関連して、
図11の表T2を参照すると、患者の肺特性("Lung mechanic")に関する設定ならびにガス交換率または換気度(「正常換気」「軽度の過換気」)に関する設定を選択することにより、各体積限界値VTO1,VTU1および各濃度限界値etCO
2U1,etCO
2O1をどのように選定できるかが見て取れる。
【0059】
図5の計算ユニットRは、検出された体積流量に基づいて、患者が呼吸した1回換気量VTを求める。このために、計算ユニットRは、好ましくは、検出された体積流量および吸気相の期間Tiに基づいて、期間Tiにわたる体積流量の積分値としての1回換気量を求める。これに代えて、体積流量閾値が上方超過された際に吸気相の開始が推定され、体積流量閾値が下方超過された際に吸気相の終了が推定されるように、吸気相の期間を求めてもよい。
【0060】
計算ユニットRは、検出された二酸化炭素濃度に基づいて、呼気終末二酸化炭素濃度etCO
2を求める。好ましくは、
図1に示されているような、体積流量と下方閾値または負の閾値USWとの比較により、検出された体積流量が下方閾値を下方側から通過した際に、呼気終末相の終了が推定される。
【0061】
図5の計算ユニットRによって求められた1回換気量の値および呼気終末二酸化炭素濃度の値は、好ましくは、4秒ごとに測定値として供給される。
【0062】
図6のステップS4によれば、さしあたり15秒間が待機される。
【0063】
ついで、方法ステップS5では、第1の動作モードMO1が既に、好ましくは5分超の最大時間にわたって、または最大時間未満の時間にわたって持続しているかどうかが検査される。設定された、好ましくは5分の最大時間が上方超過された場合、この方法は、好ましくはこの方法を中止する方法ステップS30へ移行する。つまり、設定された最大時間、好ましくは5分以内に、自動換気に関する望ましい動作状態が識別されなかった場合、第1の動作モードMO1から第2の動作モードMO2への移行は可能とはならない。好ましくは、計算ユニットにより、望ましい動作状態が最大時間以内に達成されなかったことを表す出力信号が出力される。このことは、場合により医師が、第2の動作モードにより安定に換気するための適正な呼吸挙動を患者が設定された時間内に有さないことの示唆として評価できる。
【0064】
第1の動作モードMO1が好ましくは5分の設定時間未満しか持続しない場合、方法は方法ステップS6へ移行する。
【0065】
ついで、ステップS6の範囲において、考慮すべき1回換気量VTが、最後の60秒間に生じたかまたは測定された1回換気量の測定値の前処理によって、好ましくはメディアンフィルタリングによって、求められる。同様に、考慮すべき呼気終末二酸化炭素濃度etCO
2も、最後の60秒間に生じたかまたは最後の60秒間以内に測定された呼気終末二酸化炭素濃度の測定値の前処理によって、好ましくはメディアンフィルタリングによって、求められる。
【0066】
1回換気量VTおよび呼気終末二酸化炭素濃度etCO
2が求められた後、ステップS7の範囲において、1回換気量に基づく換気度、さらに呼気終末二酸化炭素濃度に基づく換気度が求められる。
【0067】
これについて、1回換気量VTと先行して求められた限界値との比較による種々の換気度を表T3に定めている
図12を参照されたい。ここでは、先に表T2に示したような上方および下方の限界値VTO1,VTU1だけでなく、さらなる第2の限界値VTO2,VTU2も用いられている。これら第2の限界値VTO2,VTU2は、同様に
図7にも記されている。つまり、第1の限界値VTO1,VTU1からの10%または20%の偏差を考慮する各第2の限界値VTO2,VTU2が用いられる。
【0068】
相応のことが、濃度値etCO
2U1,etCO
2O1、ならびに、これら第1の濃度値etCO
2U1,etCO
2O1から5%または10%偏差した、同様に
図7に記されているさらなる第2の濃度値etCO
2U2,etCO
2O2との比較における、呼気終末二酸化炭素濃度に基づく換気度についても当てはまる。したがって、
図12の表T4に基づいて、呼気終末二酸化炭素濃度に基づく換気度を求めることができる。
【0069】
ついで、方法ステップS8では、求められた1回換気量VTが体積限界値内に入るかどうかが検査される。言い換えれば、測定された1回換気量が上方限界値VTO1と下方限界値VTU1との間にあるかどうかが検査される。入っていない場合、方法ステップS9へ分岐し、そこで、方法ステップS10とともに、目標圧力値Pinspが適応化される。
【0070】
方法ステップS9では、望ましい圧力変化量Pdiffが求められる。当該圧力変化量Pdiffを用いて、場合により、それぞれの患者に適する分当たり体積MV、すなわち
MV=RR×VT
を得ることができる。
【0071】
これは、目標1回換気量TVTが設定されるように行われる。このことは、好ましくは上方体積限界値VTO1および下方体積限界値VTU1に依存して、
TVT:=(VTO1−VTU1)/2
にしたがって行われる。
【0072】
こうして、設定された圧力適応化値DEP、目標1回換気量TVTおよび測定された1回換気量VTに基づいて、望ましい圧力変化量PdiffをステップS10で求めることができる。これは、
Pdiff:=((TVT−VT)×DEP)/VT
にしたがって行われる。
【0073】
ステップS10では、ついで、目標圧力値Pinspの適応化が、好ましくは
Pinsp:=Pinsp+Pdiff
にしたがって行われる。その後、方法は、方法ステップS4へ戻る。
【0074】
方法ステップS8での検査により、測定された1回換気量VTが既に設定された体積限界値内すなわちコンフォートゾーン範囲KOZ内に入ることが識別されると、方法はさらに、ついで呼気終末二酸化炭素濃度etCO
2を検査する方法ステップS11へ進行する。
【0075】
方法ステップS11での検査により、呼気終末二酸化炭素濃度etCO
2が濃度限界値内または
図7のコンフォートゾーンKOZ内に入らないことが識別されると、方法は、呼吸頻度RRの適応化を行うさらなる方法ステップS12〜S15へ分岐する。言い換えれば、測定された呼気終末二酸化炭素濃度etCO
2が二酸化炭素下方限界値etCO
2U1と二酸化炭素上方限界値etCO
2O1との間にない場合、換気頻度RRの適応化が行われる。
【0076】
続いて、ステップS11からステップS12〜ステップS15への分岐では、まず、
図12の表T4を用いて、患者の過換気度、正常換気度または低換気度のいずれが生じているかが求められる。表T4の項目に基づいて、患者の相応の状態を求めることができる。当該状態は、測定された呼気終末二酸化炭素濃度etCO
2および対応する限界値etCO
2U2,etCO
2U1,etCO
2O1,etCO
2O2に依存する。
【0077】
重度の低換気("severe hypoventilated")が生じている場合、方法ステップS12において、換気頻度RRが1分当たり値2ずつ増大されるよう、換気頻度RRの適応化が行われる。
【0078】
軽度の低換気、軽度の過換気および重度の過換気の相応の換気度に依存する相応の適応化は、代替方法ステップS13もしくはS14もしくはS15にしたがって行われる。ステップS12〜S15で換気頻度が適応化された後、方法は、方法ステップS4へ分岐して戻る。
【0079】
方法ステップS8での1回換気量VTの検査および方法ステップS11での呼気終末二酸化炭素濃度etCO
2の検査により、双方の値が対応する限界値VTO1,VTU1内もしくはetCO
2U1,etCO
2O1内にあることまたはコンフォートゾーンKOZ内にあることが識別された場合、自動換気に関する望ましい動作状態が存在すると見なすことができ、したがって、ステップS11から、さらなるステップS16等への移行により、この望ましい動作状態が識別される。この場合、方法は、方法ステップS11からさらなる方法ステップS16へ分岐し、好ましくは、望ましい動作状態の存在を表す出力信号(「ステータスOK」)が出力される。
【0080】
ついで、方法ステップS17では、好ましくは医師の入力信号Eが待機される。医師の入力Eが行われると、その後、好ましくは第2の動作モードMO2への移行が行われる。好ましくは、ステップS11からステップS18への移行は、ステップS17での入力信号Eへの検査なしで行われる。
【0081】
好ましくは、入力Eは、
図13に関連して先に詳述した、相応の換気形態の好ましい実行形態M1もしくはM2もしくはM3の選択を表す。第2の動作モードMO2では、好ましくはサブステップS18において、医師の入力Eに応じ、実行形態M1もしくはM2もしくはM3または相応のステップS21もしくはS22もしくはS23への分岐を行うことができる。
【0082】
第2の動作モードMO2では、さらに、いずれかの実行形態M1もしくはM2もしくはM3による換気プロセスと並行して、識別プロセスを実行することができる。このことを次に
図8を参照しながら詳述する。
【0083】
図8では、第2の動作モードの進行中に連続して行うことのできる、自動換気に関する望ましい第2の動作状態が存在することを識別するプロセスを表す方法部分ステップが示されている。この場合これは、好ましくは、医師の所見から患者が安定な呼吸活動を有し、これによりこの医師が、好ましくはさらなる入力E2により、圧支持換気による第3の動作モードを導入しうる動作状態である。
【0084】
第2の動作状態の識別のために、呼吸ガスの麻酔ガス濃度が考慮される。
【0085】
第1の方法部分ステップS100では、まず、15秒の時間が待機される。
【0086】
その後、方法部分ステップS101で、平均肺胞内麻酔ガス濃度が求められる。このような平均肺胞内麻酔ガス濃度は、「最小肺胞内濃度」とも称される。平均肺胞内麻酔ガス濃度MACは、好ましくは、文献
・"Primus Infinity Empowered", Draeger Medical GmbH, 3/2010/09版, 132頁−134頁
に開示されているような、正規化量xMACまたはMACの倍数である。
【0087】
このような平均肺胞内麻酔ガス濃度MACは、
図5に示されているような、麻酔ガス濃度信号AGSによって表される先行の測定値を、所定の時間ウィンドウで平均することで、求められる。
【0088】
これについて、計算ユニットRは、
図5の麻酔ガス濃度信号AGSに基づいて、好ましくは、呼気終末相中、麻酔ガスの濃度を求める。これについて、計算ユニットRは、好ましくは
図1の呼気相EXPの存在を、下方閾値USWを用いて、上掲または上述したように導出できる。
【0089】
ついで、
図8の部分ステップS102では、求められた、所定の時間にわたる平均肺胞内麻酔ガス濃度の時間特性が設定された条件を満足するかどうかが検査される。
【0090】
これについて、
図9には、時間tにわたる平均肺胞内麻酔ガス濃度MACの時間特性のこうした検査が示されている。測定値MWは、実際の時点tXと、時間インターバルΔtだけ戻った時点t1とで観察される。平均肺胞内麻酔ガス濃度MACは、好ましくは、上述した麻酔ガス濃度xMACである。
【0091】
先行の時点t1で、平均肺胞内麻酔ガス濃度xMACが、好ましくは値1.1である上方限界値OGを上回る場合、および好ましくは値0.9である下方限界値UGを下回る場合、平均肺胞内麻酔ガス濃度xMACの適切な低下が想定される。これは、麻酔ガス換気相の終期に予測されるような平均肺胞内麻酔ガス濃度の時間的低下であり、ここでは、
図5の麻酔ガスユニットNGによって、それ以上の麻酔ガスは呼吸ガスへ導入されない。
【0092】
平均肺胞内麻酔ガス濃度が、方法部分ステップS102で、所定の時間にわたり、要求される条件を満足する場合、方法は、
図5の麻酔ガス混合ユニットNGの一部としての蒸気の動作状態をさらに検査する方法ステップS104へ分岐する。
【0093】
蒸気がいまだオンである場合、患者の麻酔を真に終了させてよいとは必ずしも予測できないので、方法は、ステップS104から方法ステップS103へ分岐する。
【0094】
方法ステップS103では、可能な場合に出力されたメッセージ、例えば方法ステップS105からのメッセージ(「回復考慮」)が取り消される。方法ステップS102で平均肺胞内麻酔ガス濃度の検査が条件を満足しなかった場合にも、方法は、直接に方法ステップS102から方法ステップS103へ分岐する。
【0095】
方法は、方法ステップS103から方法ステップS100へ戻る。
【0096】
方法ステップS104で、蒸気が形成されていることが識別された場合には、第2の動作状態が存在し、よって、これが識別されることが推定される。したがって、ついで、方法ステップS105で、好ましくは、望ましい第2の動作状態(「回復考慮」)の存在を表す出力信号が出力される。つまり、患者のいわゆる治癒相または回復層を医師が考慮できる。こうした治癒相または回復相では、好ましくは、ついで、第3の動作モードMO3として純粋な圧支持換気が行われる。
【0097】
好ましくは方法ステップS106で、医師によるさらなる入力信号E2の入力が行われる場合、ステップS107で第3の動作モードMO3または方法ステップS108への移行が行われる。
【0098】
好ましくは、第2の動作状態が識別された際に、第2の動作モードMO2から第3の動作モードMO3への移行が、ユーザまたは医師による入力信号E2によらずに、自動的に行われる。したがって、この場合、方法は、ステップS104からステップS108へ直接に進行する。
【0099】
第3の動作モードMO3では、計算ユニットが、検出された圧力および設定された目標圧力値に依存して、純粋な圧支持換気の範囲で呼吸ガス圧送ユニットを駆動する。この場合、計算ユニットは、検出された麻酔ガス濃度に依存して目標圧力値ΔPの適応化を行う。検出された麻酔ガス濃度に依存して計算ユニットが目標圧力値の適応化をどのように行いうるかについては、
2015年12月2日付にてドイツ特許商標庁へ提出された、出願人Draegerwerk AG & Co.KGaA、発明者Stefan Mersmann, Wilfried Buschke, Prof.Christoph Hoermannによる出願"Anaesthesiebeatmungsvorrichtung zur automatisierten Beatmung eines Patienten"
に詳細に説明されている。
【0100】
多くの態様を装置に関連して説明したが、こうした各態様は相応の方法の説明にも該当し、装置のブロックまたは要素は、相応の方法ステップとしてまたは方法ステップの特徴としても理解されうることは自明である。これと同様に、方法ステップに関連してまたは方法ステップとして説明した態様も、相応の装置の相応のブロック/段または詳細もしくは特徴の説明に該当し、または方法ステップを実行するための装置もしくは相応の計算ユニットが構成される。
【0101】
図5に示されている計算ユニットRは、少なくとも1つの計算ユニットと見なすことができる。少なくとも1つの計算ユニットRの使用は、複数の計算ユニットの組み合わせによっても、好ましくはハードウェアに関連したソフトウェアの使用によっても、実現可能である。所定の構成要求に応じて、本発明の実施例は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアにおいて実現可能である。当該構成は、それぞれの方法が実行されるようにプログラミング可能なハードウェアコンポーネントと協働するかまたは協働可能な、電子的に読み出し可能な制御信号を記憶した、ディジタル記憶媒体、例えばフロッピーディスク、DVD,ブルーレイディスク、CD、ROM、PROM、EPROM、EEPROMまたはフラッシュメモリ、HDDまたは他の磁気メモリまたは光学メモリを用いて行うことができる。
【0102】
プログラミング可能なハードウェアコンポーネントは、プロセッサ、コンピュータプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)、グラフィックプロセッサ(GPU:Graphics Processing Unit)、コンピュータ、コンピュータシステム、特定用途向け集積回路(ASIC:Application-Specific Integrated Circuit)、集積回路(IC:Integrated Circuit)、システムオンチップ(SOC:System on Chip)、プログラマブル論理素子、またはマイクロプロセッサを備えたフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)によって形成可能である。
【0103】
したがって、ディジタル記憶媒体は、機械読み出し可能またはコンピュータ読み出し可能であってよい。つまり、多くの実施例に、ここで説明した方法のいずれかが実行されるようにプログラミング可能なコンピュータシステムまたはプログラミング可能なハードウェアコンポーネントと協働できる、電子的に読み出し可能な制御信号を含むデータ担体が含まれる。したがって、1つの実施例として、ここで説明した方法のいずれかを実行するためのプログラムを記憶したデータ担体(またはディジタル記憶媒体またはコンピュータ読み出し可能な媒体)が挙げられる。
【0104】
一般に、本発明の実施例は、プログラムコードを含むプログラム、ファームウェア、コンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム製品として、またはデータとして構成可能である。ここで、プログラムコードまたはデータは、プログラムがプロセッサ上またはプログラミング可能なハードウェアコンポーネント上で動作する際にいずれかの方法を実行するという意味において有効である。プログラムコードまたはデータは、例えば、機械読み出し可能な担体上またはデータ担体上に記憶することができる。プログラムコードまたはデータは、特にソースコード、機械コードまたはバイトコードとして、また他の中間コードとして設けることができる。
【0105】
別の実施例として、さらに、ここで説明したいずれかの方法を実行するプログラムを表すデータストリームまたは信号列または信号シーケンスが挙げられる。データストリームまたは信号列または信号シーケンスは、例えば、データ通信コネクション、例えばインタネットまたは他のネットワークを介して伝送されるように構成可能である。実施例として、プログラムを表すデータを表現した信号列も可能であり、これは、ネットワークまたはデータ通信コネクションを介した伝送に適する。
【0106】
一実施例のプログラムは、いずれかの方法を、実行中に、例えばプログラムがメモリ位置を読み出すかまたは内部に1つもしくは複数のデータを書き込むことにより使用可能であり、このようにすれば、場合により、トランジスタ構造において、増幅器構造においてまたは他の電気的もしくは光学的もしくは磁気的もしくは他の動作原理にしたがって動作する要素において切換過程または他の過程が呼び出される。相応に、メモリ位置の読み出しにより、データ、値、センサ値またはプログラムについての他の情報を検出もしくは決定もしくは測定することができる。したがって、プログラムは、1つもしくは複数のメモリ位置を読み出すことにより、パラメータ、値、測定量および他の情報を検出もしくは決定もしくは測定することができ、かつ1つもしくは複数のメモリ位置への書き込みにより、動作を喚起もしくはトリガもしくは実行し、また他の機器および機械および要素を駆動制御することができる。