(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は一例であり、本発明はこの実施の形態により限定されるものではない。
【0012】
図1は、二元冷凍装置1の全体構成図である。なお、
図1では、カスケードコンデンサ2が組み込まれる前の状態を示している。二元冷凍装置1は、前面が開口した本体3と、本体3の前面開口に開閉自在に設けられた前面扉4と、本体3の下方に設けられた機械室5とを備える。
【0013】
本体3は、前方が開口した鉄板製の内箱31(後述。
図2参照。)と、内箱31の外側に間隔をあけて配置され、前方が開口した鉄板製の外箱32と、内箱31及び外箱32間の空間に発泡充填された断熱材としての発泡ウレタン断熱材33(後述。
図2参照。)と、を備える。
【0014】
図1に示すように、本体3の背面には、凹部34が形成されている。凹部34には、高温側冷媒回路及び低温側冷媒回路間の熱交換を行うカスケードコンデンサ2が組み込まれる。
【0015】
図1に示すように、カスケードコンデンサ2は、その本体部が断熱材としての発泡ウレタンで囲まれ、略直方体形状に形成されている。本体3の背面の凹部34にカスケードコンデンサ2が配置された後、鉄板製の第1の背面パネル6が、外箱32の背面(以下、「外箱背面」という。)32aに不図示のネジを用いて固定される。
【0016】
さらに、断熱材としての発泡ウレタンを鉄板で取り囲むことで形成された第2の背面パネル7が、第1の背面パネル6の背面側に、不図示のネジを用いて固定される。このようにして、カスケードコンデンサ2が本体3に組み込まれる。
【0017】
図1に示すように、前面扉4は、外箱32の前面に、ヒンジ8を用いて開閉自在に固定されている。本実施の形態では、ヒンジ8は外箱32の側面に3箇所固定されている。前面扉4は、断熱材としての発泡ウレタンを鉄板で取り囲むことで形成されている。
【0018】
図1に示すように、機械室5は、外箱32の底面全体を支えるように配置されており、本体3の台座として機能する。機械室5内には、不図示の高温側冷媒回路及び低温側冷媒回路の一部を形成する圧縮機、凝縮器等が配置されている。
【0019】
図2は、カスケードコンデンサ2が組み込まれた状態の凹部34を示す断面図である。
図2に示すように、内箱31の背面(以下、「内箱背面」という。)31a及び外箱背面32a間の空間に発泡充填された発泡ウレタン断熱材33には、外箱背面32aの開口部32bにおいて、凹部34が形成されている。
【0020】
発泡ウレタン断熱材33における凹部34の表面には、ポリウレタンエラストマー製で、可撓性及び伸縮性を有し、水等の液体の透過を防ぐ弾性シート9が密着固定されている。弾性シート9は、−90℃の低温下でも可撓性及び伸縮性を有するシートである。弾性シート9の厚さは、例えば0.05mmである。
【0021】
ここで、弾性シート9について、
図3Aを用いて説明する。
図3Aは、組み付け前の弾性シート9を示す上面図である。
図3Aに示すように、弾性シート9は矩形であり、
図3Aにおける左下部に位置決め用孔9aが設けられている。また、
図3Aに示すように、弾性シート9には、位置決め用孔9aとは別に、縦横に整列した複数の孔9bが設けられている。
【0022】
さらに、孔9bには、メッシュシート9cが貼付されている。
図3Aに示す例では、横方向に整列した複数の孔9bを1枚のメッシュシート9cで塞いでいる。メッシュシート9cにおけるメッシュサイズは、空気等の気体は透過可能であるが、水等の液体の透過を防ぐものが好適である。これにより、後述する発泡ウレタンの発泡時に、孔9bを利用した空気抜きを行うことができるとともに、弾性シート9における水等の液体の透過を防ぐ機能が担保される。
【0023】
図2に示すように、表面に弾性シート9が密着固定された凹部34に、カスケードコンデンサ2が配置される。そして、第1の背面パネル6及び第2の背面パネル7が外箱背面32aに固定されることで、凹部34からの脱落が防止され、また、外気とも遮断される。
【0024】
図2に示すように、弾性シート9の縁部は、不図示のシール材を介して開口部32bを取り囲むように外箱背面32aの表面上に延在している。第1の背面パネル6が外箱背面32aに固定されることで、弾性シート9の縁部は、外箱背面32a及び第1の背面パネル6により挟まれる。これにより、カスケードコンデンサ2が配置された空間が密閉される。
【0025】
第1の背面パネル6が外箱背面32aに固定された状態で、カスケードコンデンサ2は、凹部34の底部及び第1の背面パネル6に密着している。また、カスケードコンデンサ2の側面形状は、凹部34の側面に倣った形状をしている。これにより、カスケードコンデンサ2と凹部34との間にはほとんど隙間がなくなり、結露が抑制される。
【0026】
図3Bは、本実施の形態に係る凹部の形成に用いられる治具を示す断面図である。
図3Bに示すように、治具10は、挿入部10aと、フランジ部10bとを備える。
【0027】
挿入部10aの基端側は、外箱背面32aの開口部32bと略同形状である(
図2参照)。挿入部10aは、先端側が基端側よりもすぼまったテーパ形状をなしている。挿入部10aにおいて基端側から先端側へ向かうテーパ角は、例えば10°である。フランジ部10bは、挿入部10aの基端側の側面から突出しており、フランジ部10bの背面側の表面積は、外箱背面32aの開口部32bの開口面積よりも大きい。
【0028】
次に、本実施の形態に係る凹部34の形成方法について、
図4及び
図5Aないし
図5Eを用いて説明する。
図4は、凹部34の形成方法を示すフローチャートである。
図5Aないし
図5Eは、凹部34を形成する各工程における断面図である。
【0029】
ステップS1で、内箱31の外側に、内箱31と間隔をあけて外箱32が配置される。具体的には、
図5Aに示すように、内箱背面31aの背面側に、開口部32bを有する外箱背面32aが、例えば70mmの間隔をあけて配置される。このとき、
図5Aに示すように、カスケードコンデンサ2との接続配管11が、内箱背面31aから背面側に突出している。
【0030】
ステップS2で、弾性シート9が、外箱背面32aの背面側から、開口部32bを覆うように被せられる(
図5B)。このとき、上述のとおり、内箱背面31aから背面側に、接続配管11が突出しており、弾性シート9に設けられた位置決め用孔9aを接続配管11に挿通させることで、開口部32bに対する弾性シート9の位置決めが行われる。
【0031】
なお、弾性シート9の背面側には、低摩擦テープが貼付されてもよい。これにより、後述するステップS5における治具の取り外しを円滑に行うことができる。
【0032】
ステップS3で、治具10が、外箱背面32aの背面側から、開口部32bに挿入される(
図5C)。具体的には、治具10の挿入部10aが、外箱背面32aの背面側から開口部32bに挿入され、治具10のフランジ部10bが、弾性シート9を介して、外箱背面32aと当接させられる。
【0033】
この際、接続配管11は、治具10に設けられた不図示の貫通孔に挿入される。これにより、
図5Cに示すように、弾性シート9は、治具10の挿入部10aによって、内箱背面31a及び外箱背面32a間の空間に押し込まれる。
【0034】
本実施の形態では、治具10の挿入に先立って、外箱背面32aに、開口部32bを取り囲むように外箱背面32a側にスポンジ等のシール材が配置される。これにより、後述するステップS4における発泡の際に、外箱背面32aと治具10との隙間から発泡ウレタンが漏れ出すのを抑制することができる。
【0035】
なお、治具10のフランジ部10bと外箱背面32aとの間で、密着性が確保できるのであれば、シール材は配置されなくてもよい。
【0036】
ステップS4で、発泡ウレタンが、内箱背面31a及び外箱背面32a間の空間に注入され、発泡される。ここで、上述のとおり、弾性シート9は可撓性を有しているので、発泡ウレタンの発泡圧により、弾性シート9は治具10の挿入部10aの表面に沿って変形する。
【0037】
発泡ウレタンの発泡に伴い、内箱背面31a及び外箱背面32a間の空間の空気は、外箱背面32aに設けられた不図示の空気抜き孔から排出される。
図5Dは、発泡ウレタンの発泡後の様子を示している。
【0038】
ステップS5で、治具10が取り外され、外箱背面32aの背面側に延在する弾性シート9の縁部のうち、余分な部分が切り取られる(
図5E)。これにより、開口部32bには、弾性シート9が密着した状態で凹部34が形成される。
【0039】
上述の方法で形成された凹部34には、この後、カスケードコンデンサ2が配置される。その際、内箱背面31aから突出した接続配管11は、カスケードコンデンサ2と接続される。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態によれば、外箱32を内箱31の外側に間隔をあけて配置し、外箱32の開口部32bを弾性シート9で外箱32の外側から覆い、治具10を外箱32の外側から開口部32bに挿入して弾性シート9を内箱31と外箱32との間の空間に押し込み、発泡ウレタン断熱材33を内箱31及び外箱32間の空間に注入し、発泡させて弾性シート9と密着させるようにしたので、真空成形で加工されたトレイを用いずに断熱箱体を製造することができる。その結果として、生産性を向上することができる。
【0041】
また、可撓性及び伸縮性を有し、水等の液体の透過を防ぐ弾性シート9を、発泡ウレタン断熱材33と密着させたことで、以下のような効果が得られる。
【0042】
弾性シート9は、水等の液体の透過を防ぐので、二元冷凍装置1の使用時において、カスケードコンデンサ2が低温になることに伴って発生する結露による水が、発泡ウレタン断熱材33に浸入するのを防止することができる。これにより、発泡ウレタン断熱材33の加水分解を抑制することができ、継続的に良好な断熱性能を得ることが可能となる。
【0043】
また、弾性シート9は、熱変化による収縮等により割れることがない為、カスケードコンデンサの熱変化により発生する結露が割れ目から発泡ウレタンに付着して断熱性能を劣化させることを防ぐことができる。
【0044】
弾性シート9は、可撓性及び伸縮性を有するので、容易に変形が可能である。そのため、カスケードコンデンサ2を押し込みながら第1の背面パネル6を外箱背面32aにネジ止めする際、発泡ウレタン断熱材33及び弾性シート9は、カスケードコンデンサ2との接触面においてカスケードコンデンサ2の形状に倣って変形する。これにより、カスケードコンデンサ2及び凹部34間の隙間をなくすことができ、凹部34内での結露を抑制することが可能となる。
【0045】
なお、本実施形態では、凹部34にカスケードコンデンサ2を配置するものを例に挙げて説明を行ったが、これに限らない。例えば、凹部34に、装置を制御する電装品を配置してもよい。
【0046】
また、本実施形態では、二元冷凍装置における断熱箱体を例に挙げて説明を行ったが、これに限らない。本発明に係る断熱箱体は、冷蔵庫、保冷庫等、物品を保温して保存するのに用いる様々な用途に適用が可能である。
【0047】
また、本実施形態では、弾性シート9としてポリウレタンエラストマー製のものを示して説明を行ったが、これに限らない。可撓性及び伸縮性を有し、水等の液体の透過を防ぐものであって、凹部34に配置されたカスケードコンデンサ2などの部材が到達する温度に対して、可撓性及び伸縮性を有するシートであればよい。
【0048】
本出願は、日本国特許庁に2016年7月8日付で提出した特許出願2016−135697に基づく優先権を主張する。特許出願2016−135697の内容は、参照により本出願に取り込まれる。