特許第6622433号(P6622433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6622433包装用フィルム、フィルムバッグ、及びそれの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6622433
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】包装用フィルム、フィルムバッグ、及びそれの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20191209BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   B32B27/32 E
   B65D65/40 D
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-36311(P2019-36311)
(22)【出願日】2019年2月28日
【審査請求日】2019年3月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000100849
【氏名又は名称】株式会社アイセロ
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】特許業務法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩城 万里
【審査官】 芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−043714(JP,A)
【文献】 特開2004−350732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B65D 65/00−65/46,67/00−79/02,
81/18−81/30,81/38,85/88
C09J 1/00−5/10,9/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被包装品に接する内層、並びに第1接着層、ガスバリア層、第2接着層、及び外層がこの順に積層した包装用フィルムであって、
前記内層が、40質量%超かつ90質量%以下の直鎖状低密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレン及び/又は高密度ポリエチレンとを含有しかつ滲出成分非含有であり、密度及び厚さを少なくとも夫々0.920g/cm及び50μmとしていて、
前記第1接着層及び前記第2接着層が、酸化防止剤を含有しており、
前記第1接着層、前記ガスバリア層、及び前記第2接着層の厚さが、30μm未満であることを特徴とする包装用フィルム。
【請求項2】
前記第1接着層及び前記第2接着層が、夫々、カルボン酸変性ポリオレフィンを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の包装用フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の包装用フィルムが、前記内層を内側に、前記外層を外側に、夫々配置した袋形をなしていることを特徴とするフィルムバッグ。
【請求項4】
40質量%超かつ90質量%以下の直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレン及び/又は高密度ポリエチレンとを含有する内層用樹脂材、並びに酸化防止剤を含有する第1接着層用樹脂材、ガスバリア層用樹脂材、前記酸化防止剤を含有する第2接着層用樹脂材、及び外層用樹脂材を、筒状に積層するように環状ダイから吐出する空冷インフレーション成形によって、密度及び厚さを少なくとも夫々0.920g/cm及び50μmとしかつ被包装品に接する内層、並びに第1接着層、ガスバリア層、第2接着層、及び外層がこの順に積層していて、前記第1接着層、前記ガスバリア層、及び前記第2接着層の厚さが、30μm未満であるフィルムを成形することを特徴とする包装用フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体状や固形状の食品や医薬品、及び機械や機械部品を包装するためのフィルム及びそれを用いたフィルムバッグ、並びにそれの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品を包装するのにフィルムで形成されたフィルムバッグが用いられている。このフィルムバッグを形成する包装用フィルムは、被包装品である食品等が酸化したり汚染されたりしないよう、空気中の酸素を透過させないというガスバリア性や、フィルムに含まれる成分がフィルムの表面から滲み出て被包装品に付着したり溶出したりしないという低滲出性、さらに外力を受けたりフィルムバッグ内の圧力が高まったりしても破損しないという高い強度を有していることを要する。これらの要求を満足するため、包装用フィルムは複数種のフィルムが積層した多層構造を有している。
【0003】
このような包装用フィルムにおいて、被包装品に直に接する内層フィルムにはとりわけ高い清浄性が求められる。そのため内層フィルムの原材料として、滑剤や酸化防止剤のような添加剤を非含有としたポリエチレンが用いられる。ポリエチレンとして、重合したエチレン鎖が分岐鎖をほとんど有しておらず引張強度や耐薬品性に優れる高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン鎖から分岐した長い側鎖を有している低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレンと1−ブテンや1−ヘキセンとをチーグラー・ナッタ触媒の存在下で重合させて製造される直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、及びメタロセン触媒の存在下で製造されるメタロセン触媒重合型直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)が知られている。
【0004】
このようなポリエチレンを用いて製造されたフィルムバッグが特許文献1に開示されている。具体的に、LDPEを内層及び外層に、酸化防止剤及び触媒活性中和剤を含有するmLLDPEとLDPEとの混合樹脂を中間層に、夫々配置した三層構造のパリソンを押し出してブロー成形により製造したフィルムバッグが記載されている。
【0005】
上記のようなポリエチレンの酸化劣化を防止するのに、ポリエチレンに酸化防止剤を含有させることが多い。この酸化防止剤の被包装品への付着や溶出を防ぐ必要がある場合、酸化防止剤を含有するポリエチレンを内層として配置することができない。そのため、特許文献1のフィルムバッグは酸化防止剤を含むポリエチレンを中間層に配置することにより、酸化防止剤の被包装品への付着や溶出を抑止している。
【0006】
しかし、特許文献1のフィルムバッグのように酸化防止剤含有樹脂を中間層に配置しても、酸化防止剤が低結晶化度のLDPE製内層へと徐々に移動してそれの表面で滲出し、ひいては被包装品に付着したり溶出したりしてしまうため、被包装品の汚染を完全に防ぐことはできない。
【0007】
一方、内層をLLDPE製としているフィルムバッグは、LLDPEが高いせん断発熱を生じることの所為で、フィルムバッグ製造時に過熱状態になり易く、酸化防止剤非含有の場合にはフィルムバッグにヤケやブツのような外観不良を生じ易い上、フィルムバッグを高い効率で製造することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−350732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、被包装品に接する内層において酸化防止剤のような添加剤の滲出を抑止でき、高い強度を発現するともに、空気中の酸素を透過させないという高いガスバリア性を有し、さらに製造し易い包装用フィルム及びそれを用いたフィルムバッグ、並びにそれの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するためになされた本発明の包装用フィルムは、内層、第1接着層、ガスバリア層、第2接着層、及び外層がこの順に積層した包装用フィルムであって、前記内層が、40質量%超かつ90質量%以下の直鎖状低密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレン及び/又は高密度ポリエチレンとを含有しかつ滲出成分非含有であり、密度及び厚さを少なくとも夫々0.920g/cm及び50μmとしていて、前記第1接着層及び前記第2接着層が、酸化防止剤を含有しており、前記第1接着層、前記ガスバリア層、及び前記第2接着層の厚さが、30μm未満であるというものである。
【0012】
包装用フィルムは、例えば、前記第1接着層及び前記第2接着層が、夫々、カルボン酸変性ポリオレフィンを含んでいるものが挙げられる。
【0013】
本発明のフィルムバッグは、上記いずれかに記載の包装用フィルムが、前記内層を内側に、前記外層を外側に、夫々配置した袋形をなしている。
【0014】
本発明の包装用フィルムの製造方法は、40質量%超かつ90質量%以下の直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレン及び/又は高密度ポリエチレンとを含有する内層用樹脂材、並びに酸化防止剤を含有する第1接着層用樹脂材、ガスバリア層用樹脂材、前記酸化防止剤を含有する第2接着層用樹脂材、及び外層用樹脂材を、筒状に積層するように環状ダイから吐出する空冷インフレーション成形によって、密度及び厚さを少なくとも夫々0.920g/cm及び50μmとしかつ被包装品に接する内層、並びに第1接着層、ガスバリア層、第2接着層、及び外層がこの順に積層していて、前記第1接着層、前記ガスバリア層、及び前記第2接着層の厚さが、30μm未満であるフィルムを成形するというものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の包装用フィルムは、空気中の酸素を透過しないガスバリア層を有していることにより、酸素が内層にまで到達し難いので、内層が酸化防止剤非含有であっても、内層の酸化劣化を抑制できる。さらに内層が直鎖状低密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレン及び/又は高密度ポリエチレンとを特定の質量比で含み、かつ添加剤非含有で特定の密度及び厚さを有する内層を備えているので、接着層に含まれる酸化防止剤を透過させず、被包装品を酸化防止剤で汚染しない。
【0016】
この包装用フィルムは、内層が直鎖状低密度ポリエチレンだけでなく低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンも含む混合樹脂で形成されているので、柔軟性に富んでいるとともに直鎖状低密度ポリエチレンの過度なせん断発熱を抑制して、成形時におけるポリエチレンの酸化劣化を防止することにより外観不良の発生を防ぎ、且つ高い効率で製造することができる。
【0017】
この包装用フィルムは、第1接着層及び/又は第2接着層の厚さが、30μm未満であると、フィルム成形時にヤケやブツのような外観不良を低減することができる。また、ガスバリア層の厚さが30μm未満であると、包装用フィルムが過度に硬くならずに、強度低下を防ぐことができる。
【0018】
本発明のフィルムバッグは、上記の包装用フィルムで形成されているので、特に高い清浄性及び強度が要求される医薬品、医療用品、及び食品の包装材に好適に用いることができる。
【0019】
本発明の包装用フィルムの製造方法によれば、包装用フィルムを高い歩留まりで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を適用する包装用フィルムの模式断面図である。
図2】本発明を適用する包装用フィルムの製造方法を示す模式斜視図である。
図3】本発明を適用した実施例、及び本発明を適用外である比較例において、内層の密度及び厚さごとの酸化防止剤溶出量を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されない。
【0022】
本発明の包装用フィルムは、液体状や固形状の食品や医薬品、及び機械や機械部品を被包装品とするものであり、少なくとも5層のフィルムの積層体である。図1にそれの一形態を示す。包装用フィルム1は、被包装品に接する内層10、第1接着層20、ガスバリア層30、第2接着層40、及び外装層となる外層50がこの順に積層されているものである。第1及び第2接着層20,40は、ともに酸化防止剤21,41を含んでいる。
【0023】
この包装用フィルム1の厚さは、100〜300μmであり、好ましくは120〜230μm、より好ましくは125〜225μmである。包装用フィルム1はこの範囲の厚さを有していることにより、高いフィルム強度(耐ピンホール性)と柔軟性とを両立させている。
【0024】
内層10は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とそれ以外の低密度ポリエチレン(LDPE)又は高密度ポリエチレン(HDPE)との混合樹脂からなり、滲出成分を非含有としている。滲出成分とは、樹脂に所望の特性を付与したり特定の機能を発現させたりすることを目的として意図的に加えられるものであって、内層10から滲出するものをいう。そのため、微量の不純物及びポリエチレンの製造に用いられる触媒のように、内層10を形成している樹脂に不可避に含まれる成分は、滲出成分に包含されない。この滲出成分として、具体的に例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、粘着防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸素吸収剤、酸吸収剤、難燃剤、核形成剤、衝撃強度増強剤、可塑剤、滑剤、離型剤、着色剤、蛍光剤、相溶化剤、防曇剤、充填剤、助色剤、分散剤、安定剤、改質剤、及び抗菌・防かび剤が挙げられる。内層10が滲出成分非含有であることにより、それによる被包装品の汚染を生じない。
【0025】
内層10はLLDPEを40質量%超かつ90質量%以下の範囲で含んでいる。具体的にLLDPEの含有率を50〜80質量%としていることが好ましく、55〜75質量%としていることがより好ましく、60〜70質量%としていることが一層好ましい。この含有率が上限値を超えると、LLDPEは高いせん断発熱を生じるため、包装用フィルムやフィルムバッグの成形に用いられるインフレーション成形において、押出機からの押出時に過熱してヤケのようなフィルム外観不良を生じてしまう。一方含有率が下限値未満であると、相対的にLDPEやHDPEの含有率が高くなり、包装用フィルムが満たすべき性能が損なわれてしまう。具体的に例えば、LLDPEの含有率が下限値未満であり、LDPEの含有率が相対的に過多であると、フィルム強度や清浄性が低下する。またLLDPEの含有率が下限値未満であり、HDPEの含有率が相対的に過多であると、フィルムの柔軟性が低下して耐ピンホール性が低下する。
【0026】
内層10の厚さは少なくとも50μmであり、具体的に50〜200μmであることが好ましく、70〜150μmであることがより好ましく、75〜100μmであることが一層好ましい。内層10の厚さがこの範囲であることにより、包装用フィルム1の内層10同士をヒートシールして袋体を製造する際、内層10同士を強固に熱融着させることができるので、シール強度を高めることができる。
【0027】
また内層10の密度は少なくとも0.920g/cmであり、好ましくは0.920〜0.940g/cm、より好ましくは0.920〜0.930g/cm、より一層好ましくは0.922〜0.928g/cmである。この密度は、JIS K6922−1(1997)に準拠して測定された値である。
【0028】
内層10の密度及び厚さが上記の下限値未満であると、第1及び第2接着層20,40に含有される酸化防止剤21,41が内層10から滲出してしまうことを効果的に抑止できない。一方上記の上限値を超えると、柔軟性の低下を招来し包装用フィルムが取扱い難くなってしまう。
【0029】
内層10を形成しているLLDPEは、エチレンと炭素数3〜13のα−オレフィンとの共重合体であり、重合したエチレンの主鎖から分岐した側鎖がLDPEのそれよりも短い。このα−オレフィンとしては1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、及び1−オクテンが挙げられ、LLDPE中のα−オレフィンの含有率は概ね5〜50mol%である。LLDPEは、例えば、トリメチルアルミニウムのような有機アルミニウム化合物と三塩化チタン又は四塩化チタンとを組み合わせた触媒、所謂チーグラー・ナッタ触媒の存在下、0.1〜30MPaの比較的低圧条件で製造されるものが挙げられる。
【0030】
上記のLLDPEに代えて又はこれとともに、メタロセン触媒の存在下でエチレンとα−オレフィンとを重合させたメタロセン触媒重合型直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)を用いてもよい。メタロセン触媒であるメタロセン化合物を用いて製造されるmLLDPEは、透明性、柔軟性、清浄性、及び強度に優れていることから、内層10の主成分として好適に用いることができる。mLLDPEは、狭隘な分子量分布を有していることからそこに残存する低分子量オリゴマーが極めて少量であるため、とりわけ清浄性及び強度に優れる。メタロセン触媒とは、ビス(シクロペンタジエニル)の金属化合物であり、その中心原子としてV、Cr、Fe、Co、Ni、Ru、Os、Zr、Ti、及びHfの少なくとも一種が挙げられ、なかでもZr、Ti、及びHfが好ましい。
【0031】
内層10に含有されるLLDPE及びmLLDPEは、いずれか一方でも両方の混合であってもよい。また、夫々異なる密度やメルトマスフローレイトを有するLLDPE及びmLLDPEの複数種を混合して用いてもよい。
【0032】
LLDPE又はmLLDPEと混合されるLDPEは、重合したエチレンの主鎖から比較的長い側鎖が伸びた構造を有しており、結晶化度がLLDPEやHDPEよりも低く、高い透明性を有している。LDPEは、コモノマーの存在なしに300℃以上の高温下、100〜400MPaの高圧で製造されることから高圧低密度ポリエチレンとも呼ばれる。
【0033】
LLDPE又はmLLDPEと混合されるHDPEは、重合したエチレンの主鎖とそこから分岐した短い側鎖とを有している。HDPEは、LLDPEやLDPEよりも高い結晶化度を有していることにより、高い引張強度を発現する。前述のチーグラー・ナッタ触媒やCr触媒のような遷移金属触媒の存在下、エチレンとα−オレフィンとを1〜10MPaの比較的低圧で重合させることにより製造される。
【0034】
内層10がLLDPEとLDPE及び/又はHDPEとを上記の質量比で含み、滲出成分非含有であり、かつ上記の密度及び厚さを有していることによって、包装用フィルム1は、第1及び第2接着層20,40に含有される酸化防止剤の滲出抑止、耐ピンホール性向上、動摩擦係数低減、及び高清浄性という包装用フィルムに要求される複数の特性を同時に満足することができる。また溶融時に比較的高いせん断熱を発生するLLDPEと、LLDPEよりもせん断熱を発生し難いLDPE及び/又はHDPEとを混合することにより、押出によるフィルム成形時のせん断発熱を抑え、ヤケやブツのような外観不良を発生させない。
【0035】
内層10を構成する各ポリエチレンの密度は、上記した内層10の密度の範囲を満足することができれば特に限定されないが、LLDPE、mLLDPE、及びLDPEは密度を、0.900〜0.940g/cmとしていることが好ましく、0.910〜0.930g/cmとしていることがより好ましく、0.920〜0.925g/cmとしていることが一層好ましい。またこれらのメルトマスフローレイトは、0.30〜4.00g/10min.、好ましくは0.50〜3.00g/10min.、より好ましくは0.50〜2.00g/10min.、一層好ましくは1.00〜2.00g/10min.である。
【0036】
一方、HDPEは密度を、0.940〜0.965g/cmとしていることが好ましく、0.940〜0.955g/cmとしていることがより好ましく、0.943〜0.953g/cmとしていることが一層好ましい。またメルトマスフローレイトは、0.01〜1.00g/10min.、好ましくは0.02〜0.35g/10min.、より好ましくは0.05〜0.35g/10min.である。これらのメルトマスフローレイトは、JIS K6922−1(1997)に準拠して測定された値である。
【0037】
第1及び第2接着層20,40は、上記したいずれかのポリエチレンとカルボン酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂又はカルボン酸変性ポリオレフィンからなる樹脂に酸化防止剤を含有させたものである。第1及び第2接着層20,40の厚さは30μm未満であり、具体的に1〜25μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましく、10〜20μmであることが一層好ましい。第1及び第2接着層がこの30μm以上であると、外観不良となるフィッシュアイ数が増加して包装用フィルムの外観が悪化してしまう。具体的にフィッシュアイ数は、0.5mmの大きさのものが5個/m以下であることが好ましい。なおフィッシュアイ数は、単位面積当たりのフィッシュアイを目視でカウントすることにより求められる。
【0038】
カルボン酸変性ポリオレフィンは、内層10及び外層50、並びにガスバリア層30と高い親和性を有しているので、これら各層10,30,50に対して高い接着力を発現する。カルボン酸変性ポリオレフィンは、ベースポリオレフィンに不飽和カルボン酸、又はその無水物がグラフト重合したものである。ベースポリオレフィンとして、ポリエチレン(エチレンのホモポリマー及び/又はエチレンとα−オレフィンとのコポリマー)が好ましい。具体的にLLDPE、LDPE、及びHDPEが挙げられるが、なかでもα−オレフィンを1〜10mol%含むLDPEが好ましい。このα−オレフィンとして、上記した内層10に用いられるものと同一のものが挙げられる。またグラフト重合に用いられる不飽和カルボン酸として、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、メチレンコハク酸、シトラコン酸、シトラコン酸無水物が挙げられる。カルボン酸変性ポリオレフィンは、なかでもマレイン酸変性LLDPEが好ましい。カルボン酸変性ポリオレフィンの含有率は、第1及び第2接着層20,40中、10〜100質量%、好ましくは50〜100質量%であることが好ましい。
【0039】
酸化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、及びトリス(3',5'−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートのようなフェノール系酸化防止剤;ジラウリル−3',3'−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3',3'−チオジプロピオネート、ジステアリル−3',3'−チオジプロピオネート、及びペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)のようなチオエーテル系酸化防止剤;トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、及びテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4',4'−ビフェニレン−ジ−ホスファイトのようなリン系酸化防止剤;2−tert−ブチル−6−メチル−4−{3−[(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]プロピル}フェノールのようなフェノールリン系酸化防止剤が挙げられる。これらは単独で用いても、複数種用いてもよい。また、第1接着層20と第2接着層40とに含まれる酸化防止剤は、互いに同種であっても異種であってもよい。
【0040】
また、第1及び第2接着層20,40中の酸化防止剤の含有率は、100〜3000ppm、好ましくは500〜2000ppm、より好ましくは1000〜2000ppmである。酸化防止剤がこの下限値未満であると、第1及び第2接着層20,40がインフレーション成形時の熱により酸化して劣化してしまい、ヤケ(焦げ)やブツ(未溶融や未架橋等)のような外観不良を生じてしまう。一方この上限値を超えると、酸化防止剤が内層10の表面で滲出する恐れがある。第1接着層20と第2接着層40との組成及び厚さは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0041】
ガスバリア層30は、空気中の酸素が包装用フィルム1を透過することを抑止し、被包装品の酸化を防止している。ガスバリア層30として、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、シクロオレフィンホモポリマー、及びシクロオレフィンコポリマーが挙げられるが、なかでもポリエチレンを主成分とする第1及び第2接着層20,40と接着し易いこと、ガスバリア性に優れること、及び適度の柔軟性が得られることから、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂が好ましい。ガスバリア層30の密度は1.00〜1.25g/cmであることが好ましく、1.10〜1.20g/cmであることがより好ましく、1.12〜1.18g/cmであることが一層好ましい。また厚さは、1μm以上かつ30μm未満、好ましくは5〜20μmである。さらに密度及び厚さがこれらの下限値に満たないとガスバリア性が不足する。一方、この上限値を超えると、フィルムの柔軟性が損なわれて耐ピンホール性が低下してしまう。
【0042】
なお、ガスバリア層30としてのエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂は、エチレンの含有率を25〜50mol%、好ましくは30〜45mol%とし、メルトマスフローレイト(JIS K6922−2(1997)に準拠し210℃21.618Nで測定)を3.0〜4.0g/10min.、好ましくは3.0〜3.5g/10min.としている。
【0043】
包装用フィルム1が、内層10の厚さを少なくとも50μmとしているので、液状の被包装品の水分が、内層10により遮断されてガスバリア層30に到達し難い。それにより、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂製ガスバリア層30に水分が吸着して生じるガスバリア性の低下という不具合が防止されている。
【0044】
外層50は、第2接着層40を介してガスバリア層30を覆っている。それにより、ガスバリア層30が表面に露出している積層フィルムに比較して、低い酸素透過性を包装用フィルム1に付与している。外層50は、内層10と異なる組成、密度、及び厚さを有していてもよい。
【0045】
包装用フィルム1は、内側に内層10を、外側に外層50を夫々配置した筒形に成形され、開口した一辺をヒートシールにより閉じたフィルムバッグとして用いられる。このフィルムバッグの用途は特に限定されないが、包装用フィルム1が酸化防止剤を内層10の表面で滲出させないこと、低い酸素透過度を有していることから、医薬品、医療用品、及び飲食料品(特に乳製品)の包装、並びにバイオテクノロジーの用途に特に好適に用いることができる。
【0046】
このような包装用フィルム1及びそれにより成形されたフィルムバッグは、図2に示すようなインフレーション成形機を用いた多層空冷インフレーション成形法によって製造することができる。空冷インフレーション成形によれば、幅100〜1500mmという広い範囲の幅を有する高清浄性の包装用フィルム1を、高い効率でかつ低コストで製造できる。
【0047】
まず、LLDPEとLDPE又はHDPEとを所定の質量比で混合した原材料である滲出成分非含有の内層用樹脂材は、第1押出機62aに投入されて熱溶融される。同様にして第1接着層用樹脂材が第2押出機62bに、バリア層用樹脂材が第3押出機62cに、第2接着層用樹脂材が第4押出機62dに、外層用樹脂材が第5押出機62eに、夫々投入されて熱溶融される。溶融した各樹脂材の温度は180〜230℃、好ましくは190〜210℃である。第1〜5押出機62a〜62eは、共押出機62に接続している。第1〜5押出機62a〜62e内にて溶融された各樹脂材が共押出機62へ押し出される。共押出機62で、内側から外側に向かって内層用樹脂材、第1接着層用樹脂材、バリア層用樹脂材、第1接着層用樹脂材、及び外層用樹脂材の順に積層した同心円状に共押出しされる。各層10〜50の厚さを所望の値とするのに、第1〜第5押出機62a〜62eにおける夫々の単位時間当たり押出量が設定される。
【0048】
溶融状態で共押出しされた各樹脂材は、積層したまま共押出機62の上部に接続した環状ダイ63に送られる。環状ダイ63はリング形をなしている上面と下面とを有しており、中央部に空気Aを導く空気導入管61に連通した内空を有している。環状ダイ63の上面で5連の第1〜第5環状吐出口63a〜63eが上向きに開口している。第1〜第5環状吐出口63a〜63eは、環状ダイ63の上面で、それの中心から外周に向かって順に同心円状に位置されている。最も内側(すなわち最小径)の第1環状吐出口63aは第1押出機62aに連通しており、内層用樹脂材を吐出する。同様に第2環状吐出口63bが第2押出機62bに、第3環状吐出口63cは第3押出機62cに、第4環状吐出口63dは第4押出機62dに、第5環状吐出口63eは第4押出機62eに、夫々連通している。
【0049】
共押出機62の底部から環状ダイ63の内空までを貫いている空気導入管61から導かれた空気Aが、環状ダイ63の下方から上方へと向かって吹き出している。第1環状吐出口63aから内層用樹脂材が、第2環状吐出口63bから第1接着層用樹脂材が、第3環状吐出口63cからバリア層用樹脂材が、第4環状吐出口63dから第2接着層用樹脂材が、第5環状吐出口63eから外層用樹脂材が夫々吐出され、さらに空気Aの流れによって、内側から外側に向かって内層、第1接着層、ガスバリア層、第2接着層、及び外層が積層しチューブ形をなした包装用フィルム1が、上昇しながら形成される。
【0050】
環状ダイ63の上方に一対のガイド板64が、このガイド板64の直上に一対の締付ロール65が、夫々設置されている。ガイド板64は矩形の板であり、一対の板の面同士が対向しつつ下方に向かって漸次離反するように傾斜して配置されている。一対の締付ロール65はともに円柱形をなしており、この円柱の側面同士を僅かの隙間を有して対向させつつ平行に並んでいる。包装用フィルム1は、空気Aによって冷却されながらガイド板64の傾斜に沿って締付ロール65の隙間へと誘導される。包装用フィルム1は、締付ロール65の隙間を通過することにより扁平に圧延されてガイドロール66に送られる。ガイドロール66を経た包装用フィルム1は、巻取ロール67によって巻き取られる。
【0051】
この包装用フィルム1からなるフィルムバッグは、巻取ロール67から包装用フィルム1を繰り出し、包装用フィルム1を垂直に横切るようにかつ所定の間隔で内層10同士を直線状に熱融着させた後、この熱融着部位の近傍を切断することにより製造される。
【0052】
また、チューブ形の包装用フィルム1を長さ方向に一直線に切断することにより、一枚のシートを得ることができる。用途に応じ、シート形の包装用フィルム1の多辺をヒートシールにより閉じたフィルムバックを成形してもよく、シート形の包装用フィルム1を他のシートと積層させてさらに多層のシートを成形してもよい。
【0053】
包装用フィルム1の具体的な製造方法として空冷インフレーション成形法を挙げたが、その他に、水冷インフレーション成形法、及びTダイ成形法によっても製造することができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を適用した包装用フィルムの実施例、及び本発明を適用外である比較例を示す。
【0055】
(実施例1)
内層用樹脂材及び外層用樹脂材:LLDPE1(密度0.930g/cm)とLDPE1(密度0.921g/cm)とを質量比「LLDPE1:LDPE1=80:20」で混合して滲出成分非含有の内層用樹脂材及び外層用樹脂材を調製した。
第1及び第2接着層用樹脂材:マレイン酸変性LLDPE(フェノール系酸化防止剤1000ppm含有)を用いた。
ガスバリア層用樹脂材:エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂を用いた。
【0056】
図2に示す多層空冷インフレーション成形機の第1〜第5押出機62a〜62eに、内層用樹脂材、第1接着層用樹脂材、ガスバリア層用樹脂材、第2接着層用樹脂材、及び外層用樹脂材を、夫々投入して溶融した。さらに共押出機62でこれらを積層させてさらに環状ダイ63に押し出した。
【0057】
空気導入管61から噴出された空気Aの流れに沿って、環状ダイ63の第1〜第5環状吐出口63a〜63eから溶融状態の各樹脂材を吐出させて、筒状の包装用フィルムを成形・冷却し、さらに締付ロール65で扁平に圧延して巻取ロール67で巻き取り、筒状の包装用フィルムを作製した。この包装用フィルムの内層10の密度は0.928g/cmであり、厚さは50μmであった。続けてこの包装用フィルムを適当な間隔で切断し、開口した両端の一辺に沿ってヒートシールを施し、実施例1のフィルムバッグを作製した。
【0058】
(実施例2〜4)
内層10の厚さを所望の値とするために内層用樹脂材の押出量を変更したこと以外は、実施例1と同様に操作して実施例2〜4の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。実施例2〜4の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表1に示す。
【0059】
(比較例1)
内層が10μm厚となるように、内層用樹脂材を変更したこと以外は、実施例1と同様に操作して比較例1の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。比較例1の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表1に示す。
【0060】
(比較例2)
内層が25μm厚となるように、内層用樹脂材を変更したこと以外は、実施例1と同様に操作して比較例2の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。比較例2の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表1に示す。
【0061】
(比較例3)
第2接着層用樹脂材及び外層用樹脂材を用いず、第2接着層及び外層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様に操作して比較例3の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。比較例3の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表1に示す。
【0062】
実施例1〜4及び比較例1〜3の包装用フィルム及びフィルムバッグについて、下記の試験及び測定を行った。
【0063】
(酸化防止剤溶出試験)
実施例1〜4及び比較例1〜3のフィルムバッグに、被包装品として液体クロマトグラフィー用メタノール100mLを入れ、フィルムバッグの開口部をヒートシールして閉じた。各フィルムバッグを40℃に保った恒温槽に入れ、24時間静置した。その後すべてのフィルムバッグを開封し、メタノールをビーカーに移した。これを、ソックスレーを用いて2〜10mgに濃縮して液体クロマトグラフ(日本分光株式会社製、型式:865−CO)を用いてクロマトグラムを得てピーク面積を求め、予め標準試料で作成した検量線によって酸化防止剤を定量した。なお、カラムは同社製の型式Finepak SIL C18Sを(「Finepak」は登録商標)、検出器は同社製の型式UV−970を、それぞれ使用した。得られた値をメタノールと接していた内層10の面積で除し、内層10の単位面積当たりの酸化防止剤の溶出量を求めた。結果を表1に示す。また、実施例1〜4並びに比較例1及び2における内層10の厚さと溶出量との関係を図3(a)に示す。図3(a)において、酸化防止剤の検出下限値未満である0.01mg/cm未満は、0mg/cmとしてプロットした。基準値を0.02mg/cm以下とした。
【0064】
(酸素透過度測定)
実施例1〜4及び比較例1〜3の包装用フィルムを切り出して、5層又は3層構造で一枚のフィルムからなる直径100mmの円形テストピースを作製した。JIS K7126−2(2003)の等圧法に準じて、ガス透過セルにテストピースを固定し、内層側のチャンバに窒素を、外層側のチャンバに酸素を夫々満たし、両チャンバの温度及び湿度を夫々23℃及び90%RHに保った。酸素透過度測定装置(イリノイ社製、型式:8001)を用いて、外層側のチャンバから包装用フィルムのテストピースを経て内層側のチャンバへ移動した酸素量を測定した。結果を表1に示す。基準値を20cc/(m・24h・atm)以下とした。
【0065】
(フィルム強度測定)
ASTM F392に準拠して測定を行った。各包装用フィルムを210×297mmの一枚のテストピースに切り出してゲルボフレックステスター(テスター産業株式会社製)にセットした。包装用フィルムを1000回屈曲させたのち、それの300cm当たりピンホール(穴)数をカウントした。カウントされたピンホールの数に応じて下記のように評価した。結果を表1に示す。基準をA〜Cとした。
A:ピンホール数0〜5個/300cm
B:ピンホール数6〜20個/300cm
C:ピンホール数21〜50個/300cm
D:ピンホール数51個/300cm以上
【0066】
(動摩擦係数測定)
万能引張圧縮試験機(ミネベアミツミ株式会社製、型式:TG−5kN)を用いて、JIS K7125(1999)に準拠し、各包装用フィルムの動摩擦係数を測定した。包装用フィルム表面の動摩擦係数が小さいほど、成形時に金属製やゴム製のガイド板64や各ロール25〜67との摩擦や、包装用フィルム同士の摩擦が小さく、成形性及び加工性に優れることを示す。結果を表1に示す。基準値を0.7以下とした。
【0067】
(パーティクル数測定)
内表面積500cmの各フィルムバッグに250mlの超純水を入れ、15秒振とうして超純水を振り混ぜた。40分静置した後、超純水中の直径0.2μm以上の微粒子数をパーティクルカウンター(リオン株式会社製、型式:KS−42B)を用いて測定した。包装用フィルムの単位面積当たりに測定されたパーティクルの数に応じて下記のように評価した。結果を表1に示す。基準をA〜Cとした。
A:パーティクル数0〜50個/cm
B:パーティクル数51〜200個/cm
C:パーティクル数201〜500個/cm
D:パーティクル数501〜1000個/cm
E:パーティクル数1001個/cm以上
【0068】
(外観観察)
包装用フィルムの外観を目視し、それの単位面積当たりに観察された0.5mm以上フィッシュアイ(包装用フィルム中に存在する球状の小塊)の数をカウントし、その数に応じて下記のように評価した。なおフィッシュアイのサイズは、きょう雑物測定図表(国立印刷局製造)に基づいて計測した。結果を表1に示す。
○:0.5mm以上のフィッシュアイ数が0〜5個/m
×:0.5mm以上のフィッシュアイ数が6個/m以上
【0069】
(成形時内層樹脂温度)
包装用フィルムのインフレーション成形法による成形し易さを評価するため、第1押出機62aから押し出される内層用樹脂材の温度を、第1押出機62aの先端部で温度センサにより測定した。この測定値と、第1押出機62aの設定温度との差を記録した。LLDPEを含有する内層用樹脂材は、高いせん断発熱を生じる。押出時のせん断発熱が過度に高い場合、ヤケやブツのような外観不良を生じやすいため、成形時内層樹脂温度は第1押出機62aの設定温度との差が小さいほど好ましい。結果を表1に示す。基準値を、設定温度に対し±20℃以内とした。
【0070】
(耐圧性評価)
実施例1〜4及び比較例1〜3のフィルムバッグ(内寸:縦5cm×横8cm)に10mLの水を入れ、それの一辺に沿った縁部をヒートシールテスター(テスター産業株式会社製、型式:TP−701−B)を用いてヒートシールし、水をフィルムバッグに封入したサンプルを作製した。なお、ヒートシール条件をシール温度190℃、シール圧0.2MPa、シール時間1.0秒とした。このサンプルについて、引張試験機(株式会社島津製作所製、型式:AG−IS MS)を用いて、テストスピード1mm/min.でサンプルを押し潰し、破袋する直前のピーク強度(kN)を測定した。結果を下記のように評価した。結果を表1に示す。
○:ピーク強度>2.5kN
×:ピーク強度≦2.5kN
【0071】
【表1】
【0072】
実施例1〜4の包装用フィルムは、すべての評価項目にわたって優れていた。特に酸化防止剤溶出量は0.02mg/cm以下という基準値を満たした。一方、比較例1及び2の包装用フィルムは夫々10μm及び25μmという薄い内層であるため、高い酸化防止剤溶出量を示した。比較例3の包装用フィルムは、外層を有していないため、高い酸素透過度を示した。特に図3(a)のグラフで示されるように、内層の厚さが50μm以上である実施例1〜4の包装用フィルムは、比較例1及び2のそれに比較して酸化防止剤の溶出量が著しく少ないことが分かる。比較例3の包装用フィルムは外層を有さず、ガスバリア層が剥き出しであるため、実施例1の酸素透過度に比較しておよそ半分のガスバリア性しか示さなかった。このことから、包装用フィルムが単にガスバリア層を有しているということのみでは、酸素透過を低減できないことが分かる。また、内層の厚さが薄い比較例1、及び第2接着層と外層とを有さず全体厚が薄い比較例2のフィルムバッグは、2.5kN以下という低い耐圧性しか示さなかった。
【0073】
(実施例5)
内層用樹脂材及び外層用樹脂材:LLDPE2(密度0.920g/cm)とLDPE2(密度0.928g/cm)とを質量比「LLDPE2:LDPE2=90:10」で混合して滲出成分非含有の内層用樹脂材及び外層用樹脂材を調製した。
第1及び第2接着層用樹脂材、並びにガスバリア層用樹脂材:実施例1と同一のものを用いた。
【0074】
上記の樹脂材を用いたこと以外は、実施例1と同様に操作して実施例5の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。実施例5の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表2に示す。
【0075】
(実施例6)
内層用樹脂材及び外層用樹脂材を「LLDPE2:LDPE2=50:50」の質量比に変更したこと以外は、実施例5と同様に操作して実施例6の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。実施例6の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表2に示す。
【0076】
(実施例7)
内層用樹脂材及び外層用樹脂材として、LDPE2に代えてHDPE1(密度0.943g/cm)を用いたこと以外は、実施例5と同様に操作して実施例7の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。実施例7の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表2に示す。
【0077】
(実施例8)
内層用樹脂材及び外層用樹脂材として、LDPE2に代えてHDPE1を用いたこと以外は、実施例6と同様に操作して実施例8の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。実施例8の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表2に示す。
【0078】
(比較例4)
内層及び外層としてLLDPE3(密度0.920g/cm、酸化防止剤1000ppm含有)のみを用いたこと以外は、実施例1と同様に操作して比較例4の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。比較例4の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表2に示す。
【0079】
(比較例5)
内層用樹脂材及び外層用樹脂材として、LLDPE1及びLDPE1に代えてLLDPE4(密度0.910g/cm)のみを用いたこと以外は、実施例1と同様に操作して比較例5の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。比較例5の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表2に示す。
【0080】
(比較例6)
内層用樹脂材及び外層用樹脂材として、LLDPE4に代えてLLDPE2を用いたこと以外は、比較例5と同様に操作して比較例6の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。比較例6の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表2に示す。
【0081】
(比較例7)
内層用樹脂材及び外層用樹脂材として、LLDPE4に代えてLLDPE5(密度0.941g/cm)を用いたこと以外は、比較例5と同様に操作して比較例7の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。比較例7の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表2に示す。
【0082】
(比較例8)
内層用樹脂材及び外層用樹脂材を「LLDPE2:LDPE2=40:60」の質量比に変更したこと以外は、実施例5と同様に操作して比較例8の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。比較例8の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表2に示す。
【0083】
(比較例9)
内層用樹脂材及び外層用樹脂材として、LLDPE2に代えてLDPE2を用いたこと以外は、比較例6と同様に操作して比較例9の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。比較例9の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表2に示す。
【0084】
(比較例10)
内層用樹脂材及び外層用樹脂材を「LLDPE2:HDPE1=40:60」の質量比に変更したこと以外は、実施例8と同様に操作して比較例10の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。比較例10の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表2に示す。
【0085】
(比較例11)
内層用樹脂材及び外層用樹脂材として、LDPE2に代えてHDPE1を用いたこと以外は、比較例9と同様に操作して比較例11の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。比較例11の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表2に示す。
【0086】
実施例5〜8及び比較例4〜11の包装用フィルム及びフィルムバッグについて、耐圧性評価を除き、実施例1で行った試験及び測定と同一ものを行った。結果を表2に示す。さらに、実施例5〜8及び比較例5における内層10の密度と酸化防止剤溶出量との関係を、図3(b)に示す。図3(b)において、酸化防止剤の検出下限値未満である0.01mg/cm未満は、0mg/cmとしてプロットした。なお、比較例4は内層に酸化防止剤を含有しているため、比較例6〜11はフィルム強度等、酸化防止剤溶出量以外の評価項目において著しく低い評価であったため、夫々グラフに記載しなかった。
【0087】
【表2】
【0088】
実施例5〜8の包装用フィルムは、酸化防止剤溶出量をはじめ、すべての評価項目にわたって優れていた。一方、比較例4の包装用フィルムは、酸化防止剤を含有するLLDPEのみからなる内層を有しているため、酸化防止剤の溶出が多量であることに加え、高い動摩擦係数を示した。また表2及び図3(b)から分かるように、比較例5は0.910g/cmという0.920g/cmよりも低い密度のLLDPEのみからなる内層を有しているため、酸化防止剤の滲出が多量であることに加え、高い動摩擦係数を示した。また比較例6及び7は、内層の密度及び厚さの数値のみが実施例と同等の値であっても、LLDPEのみからなっていることにより、高い動摩擦係数や成形時内層樹脂温度を示した。このことから、これらは製造効率の向上を図ることが困難である。さらに比較例8〜11のように、LLDPE含有比が低い又はそれを非含有である場合、フィルム強度の低下、動摩擦係数の上昇、及びパーティクル数の増加がみられた。
【0089】
図3(a)及び(b)のグラフから分かるように、密度が0.920g/cm以上かつ厚さが50μm以上の内層10を有する実施例のフィルムバッグは、それよりも小さい密度又は厚さの内層を有する比較例に比して、酸化防止剤の溶出量(滲出量)が著しく少ない又は殆どないことが分かる。
【0090】
(実施例9)
内層用樹脂材及び外層用樹脂材を「LLDPE2:LDPE1=80:20」の質量比に変更したこと、及び内層10が75μm厚となるように内層用樹脂材の押出量を変更したこと以外は、実施例5と同様に操作して実施例9の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。実施例9の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表3に示す。
【0091】
(実施例10)
第1及び第2接着層20,40が20μm厚となるように第1及び第2接着層用樹脂材の押出量を変更したこと以外は、実施例9と同様に操作して実施例10の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。実施例10の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表3に示す。
【0092】
(実施例11)
第1及び第2接着層20,40に含まれるフェノール系酸化防止剤量を、1000ppmから1500ppmに増量したこと以外は、実施例9と同様に操作して実施例11の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。実施例11の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表3に示す。
【0093】
(比較例12)
第1及び第2接着層20,40のマレイン酸変性LLDPEを酸化防止剤非含有としたこと以外は、実施例9と同様に操作して比較例12の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。比較例12の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表3に示す。
【0094】
(比較例13)
第1及び第2接着層20,40が30μm厚となるように第1及び第2接着層用樹脂材の押出量を変更したこと以外は、実施例9と同様に操作して比較例13の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。比較例13の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表3に示す。
【0095】
実施例9〜11、並びに比較例12及び13の包装用フィルム及びフィルムバッグについて、耐圧性評価を除き、実施例1で行った試験及び測定と同一のものを行った。結果を表3に示す。
【0096】
【表3】
【0097】
実施例9〜11の包装用フィルムは、酸化防止剤溶出量をはじめ、すべての評価項目にわたって優れていた。一方比較例12及び13の包装用フィルムは、酸化防止剤非含有であったり、接着層が過度に厚かったりすることの所為で、フィルム成形時の樹脂劣化によって、ヤケやブツの発生数が多く、外観を劣化させた。
【0098】
(実施例12)
内層用樹脂材及び外層用樹脂材としてLDPE1に代えてLDPE3(密度0.923g/cm)を用いたこと、及び第1及び第2接着層が5μm厚となるように第1及び第2接着層用樹脂材の押出量を変更したこと以外は、実施例9と同様に操作して実施例12の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。実施例12の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表4に示す。
【0099】
(実施例13)
ガスバリア層30が20μm厚となるようにガスバリア層用樹脂材の押出量を変更したこと以外は、実施例12と同様に操作して実施例13の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。実施例13の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表4に示す。
【0100】
(比較例14)
ガスバリア層が30μm厚となるようにガスバリア層用樹脂材の押出量を変更したこと以外は、実施例12と同様に操作して比較例14の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。比較例14の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表4に示す。
【0101】
(実施例14)
内層用樹脂材:LLDPE2(密度0.920g/cm)とHDPE2(密度0.953g/cm)とを質量比「LLDPE2:HDPE2=80:20」で混合して滲出成分非含有の内層用樹脂材を調製した。
第1及び第2接着層用樹脂材:マレイン酸変性LLDPE(フェノール系酸化防止剤1000ppm含有)を用いた。
ガスバリア層用樹脂材:エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂を用いた。
外層用樹脂材:LLDPE4(密度0.910g/cm)とLDPE1(密度0.921g/cm)とを質量比「LLDPE4:LDPE1=80:20」で混合して滲出成分非含有の外層用樹脂材を調製した。
【0102】
上記の樹脂材を用いたこと以外は、実施例1と同様に操作して実施例14の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。実施例14の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表4に示す。
【0103】
(実施例15)
外層用樹脂材としてLLDPE4に代えてLLDPE2(密度0.920g/cm)を用いたこと、及び外層50が150μm厚となるように外層用樹脂材の押出量を変更したこと以外は、実施例14と同様に操作して実施例15の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。実施例15の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表4に示す。
【0104】
(実施例16)
外層用樹脂材として、LLDPE4に代えてLLDPE3(密度0.920g/cm、酸化防止剤1000ppm含有)を用いたこと以外は、実施例14と同様に操作して実施例16の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。実施例16の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表4に示す。
【0105】
(実施例17)
外層用樹脂材として、LLDPE4及びLDPE1に代えてポリアミド樹脂(PA、密度1.020g/cm)を用いたこと以外は、実施例14と同様に操作して実施例17の包装用フィルム及びこれからなるフィルムバッグを作製した。実施例17の包装用フィルムの組成、密度、及び厚さを表4に示す。
【0106】
【表4】
【0107】
実施例12及び13の包装用フィルムは、酸化防止剤溶出量をはじめ、すべての評価項目にわたって優れていた。一方比較例14の包装用フィルムは、ガスバリア層が過度に厚いため、包装用フィルムが著しく硬くかつ脆くなり、強度が低下した。また、実施例16及び17によれば、外層50に酸化防止剤が含まれていたり、その原材料がポリアミド樹脂であったりしても、本発明の課題を解決し得ることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の包装用フィルム及びこれを用いたフィルムバッグは、医薬品、医療用品、飲食料品、及びバイオテクノロジーの分野に好適に用いられる。また、本発明の包装用フィルムの製造方法は、上記の用途に適した包装用フィルムを高い効率で製造できる。
【符号の説明】
【0109】
1は包装用フィルム、10は内層、20は第1接着層、30はガスバリア層、40は第2接着層、50は外層、61は空気導入管、62は共押出機、62aは第1押出機、62bは第2押出機、62cは第3押出機、62dは第4押出機、62eは第5押出機、63は環状ダイ、63aは第1環状吐出口、63bは第2環状吐出口、63cは第3環状吐出口、63dは第4環状吐出口、63eは第5環状吐出口、64はガイド板、65は締付ロール、66はガイドロール、67は巻取ロール、Aは空気である。
【要約】
【課題】被包装品に接する内層において酸化防止剤のような添加剤の滲出を抑止でき、透明性及び機械的強度に優れるともに、空気中の酸素を透過させないという低い酸素透過性を有し、速やかに製造することが可能な包装用フィルムを提供する。
【解決手段】包装用フィルム1は、被包装品に接する内層10、第1接着層20、ガスバリア層30、第2接着層40、及び外層50がこの順に積層しており、内層10が、40質量%超かつ90質量%以下の直鎖状低密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレン及び/又は高密度ポリエチレンとを含有しかつ滲出成分非含有であり、密度及び厚さを少なくとも夫々0.920g/cm及び50μmとしていて、第1接着層20及び第2接着層40が、酸化防止剤21,41を含有している。
【選択図】図1
図1
図2
図3