【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (2)2015年6月22日に日経BP社により発行された「日経コンストラクション 2015年6月22日号(通巻第618号)」において発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
煙突を解体する方法としては、長尺のブームを有した重機を利用して煙突の上部から破砕する方法や、煙突の周囲を囲うように仮設足場を組み立てて、この足場上において人力により煙突をはつる方法がある。
ところが、重機を利用した解体方法は、アーム先端の圧砕具が届く範囲(ブームの長さ)に限界があるため、施工可能な煙突が限られていた。
また、仮設足場を利用した解体方法は、仮設足場の設置および撤去に手間がかかり、工期短縮化の妨げとなっていた。
そのため、特許文献1には、煙突に沿って立設された鋼管ロッドを昇降する作業床に載置された解体ロボットを利用して、煙突を解体する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の施工方法は、解体に伴う煙突の変位等を確認する場合や、作業床への資材や装置等を搬入する際には、作業床を昇降させる必要がある。そのため外径が変化する煙突(例えば、上部よりも下部の外径が大きい煙突等)の場合には、作業床を昇降させるたびに作業床と煙突外面との間の隙間養生を撤去または設置する必要があり、手間がかかる。
【0005】
このような観点から、本発明は、煙突解体時の点検等を簡易に行うことが可能な煙突解体用足場および煙突解体工法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の煙突解体用足場は、煙突に沿って立設されたマストと、前記煙突に周設された作業床と、前記作業床の下方に配設された点検用作業床とを備えるものであって、前記作業床は前記マストをガイドレールとして昇降し、前記点検用作業床は前記マストをガイドレールとして前記作業床とは独立して昇降
し、前記点検用作業床には前記作業床の直下に配設した際に前記作業床と当該点検用作業床との間で移動を可能とする昇降階段または昇降はしごが設けられていることを特徴としている。
【0007】
かかる煙突解体用足場は、独立して昇降する点検用作業床を有しているため、作業床を上部に据え付けた状態で、煙突の変位や変形等を確認することができるとともに、必要に応じて資材等の作業床への輸送を行うこともできる。そのため、従来の施工方法に比べて作業性が向上する。
【0008】
本発明の煙突解体工法は、煙突の外面に沿って昇降する作業床を設置する作業床設置工程と、前記作業床を利用して前記煙突を解体する解体工程とを備えており、前記作業床設置工程は、前記煙突に沿ってマストを立設する作業と、
昇降階段または昇降はしごを有し、前記マストを昇降可能な作業床を前記煙突に周設する作業と、前記マストを昇降する点検用作業床を作業床の下方に設ける作業とを有し、前記解体工程では、前記作業床上において前記煙突を解体
し、前記点検用作業床を利用して前記煙突の状況を確認する
とともに、必要に応じて前記昇降階段または前記昇降はしごを利用して前記点検用作業床から前記作業床へ資材を輸送することを特徴としている。
【0009】
かかる煙突解体工法によれば、点検用作業床を利用して、煙突の状況を確認するので、より安全に煙突の解体工事を行うことができる。
また、点検用作業床を利用すれば、作業床への資材等の輸送を簡易に行うこともできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の煙突解体用足場および煙突解体工法によれば、煙突解体時における煙突の点検等を簡易に行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態では、
図1に示すように、煙突解体用足場1を利用して、既存の煙突2を解体する場合について説明する。
本実施形態の煙突2は、円筒状に形成されたコンクリート構造物であって、下部から上部に向うに従って徐々に縮径する円錐台状を呈している。
【0013】
煙突解体用足場1は、一対のマスト3,3と、主作業床4と、点検用作業床5とを備えている。
一対のマスト3,3は、煙突2を挟んで対向するように立設されている。
本実施形態のマスト3は、複数の角柱状のマスト部材を上下方向に連結することにより煙突2以上の高さに形成されている。なお、マスト3の構成は限定されるものではなく、例えば、マスト部材が円柱状や三角柱状の部材であってもよい。また、マスト3の本数は2本に限定されるものではなく、例えば1本でもよいし3本以上であってもよい。
マスト3は、つなぎ部材31を介して煙突2に固定されている。つなぎ部材31は、アンカー(図示せず)により煙突2の側面に固定されている。なお、マスト3の固定方法は限定されるものではない。
マスト3には、歯切りしたラック(図示せず)が取り付けられている。
【0014】
主作業床4は、
図1および
図2に示すように、煙突2に周設されていて、一対のマスト3,3をガイドレールとして昇降する。
本実施形態の主作業床4は、
図2に示すように、本体足場41と、張出足場42とを備えている。
本体足場41は、煙突2の最大外径(最大幅)よりも大きな幅の開口44を中央部に有し、平面視枠状を呈している。また、本体足場41には、マスト3を挿通するための凹部45,45が開口44に面して開口している。
【0015】
本体足場41には、凹部45に隣接してモータ6が配設されている。モータ6にはマスト3のラックに歯合されたギア(図示せず)が設けられている。モータ6の動力でギアを回転させることにより、本体足場41(主作業床4)がマスト3に沿って昇降する。
各凹部45に隣接して設けられたモータ6,6は、同期して駆動するように構成されている。
【0016】
張出足場42は、本体足場41の開口44の縁から煙突2に向けて張り出している。
本実施形態では、
図3に示すように、本体足場41から張り出した支持梁42a上に足場板42bを敷き並べることにより張出足場42を形成する。
支持梁42は、本体足場41の下面に摺動可能に設けられており、張出足場42の設置時には煙突2に向けて進出し、張出足場42撤去時(開口44の解放時)には煙突から後退するように構成されている。
なお、張出足場42の構成は限定されるものではなく、例えば、鋼板を開口44に張り出させてもよい。
【0017】
隙間養生部材43は、
図2および
図3に示すように、煙突2の外面に周設されることで本体足場41または張出足場42と煙突2の外周との隙間を閉塞する。
隙間養生部材43の構成は限定されるものではないが、例えば、隙間を覆うようにシートを設置すればよい。
【0018】
点検用作業床5は、
図1に示すように、主作業床4の下方に配設されている。
点検用作業床5は、一対のマスト3,3のうちのいずれか一方のマスト3をガイドレールとして作業床4とは独立して昇降する。
本実施形態では、一方のマスト3のみに点検用作業床5を配設した場合について説明したが、各マスト3に点検用作業床5を配設してもよい。
【0019】
点検用作業床5は、
図4(a)および(b)に示すように、足場本体51と、昇降階段52とを備えている。
足場本体51には、マスト3の位置に対応して凹部53が形成されている。また、足場本体51には、凹部53に隣接してモータ6が上載されている。モータ6にはマスト3のラックに歯合されたギア(図示せず)が設けられている。モータ6の動力でギアを回転させることにより、点検用作業床5がマスト3に沿って昇降する。
昇降階段52は、足場本体51上に設けられている。昇降階段52は、点検用作業床5を主作業床4の直下に配設した際に、作業床4の昇降階段(図示せず)に近接し、主作業床4と点検用作業床5との間で作業員の移動が可能となる。なお、昇降階段52に代えて、昇降はしごを設けてもよい。
【0020】
次に、煙突解体用足場1を利用した煙突解体工法について説明する。
本実施形態では、煙突2の上端から地上20m付近までの上部区間21を、煙突解体用足場1を利用した人力施工により行い、地上20m付近から下の下部区間22を、重機を利用した機械施工により行う。
人力施工による煙突解体工法は、作業床設置工程と、解体工程とを備えている。
【0021】
作業床設置工程は、煙突解体用足場1を設置する工程である。
作業床設置工程では、まず、一対のマスト3,3を、煙突2を挟んで対向するように立設する。マスト3は、煙突2に隣接して据え付けたベース部分32上に最下段のマスト部材を立設させた後、所定数のマスト部材を連結することにより形成する。
マスト3の施工には、クレーンを使用してもよいし、マスト3に沿って昇降する主作業床4を利用して随時延長させてもよい。
マスト3,3の施工の伴い、主作業床4および点検用作業床5を設置する。
まず、点検用作業床5をマスト3に設置し、続いて、点検用作業床5の上方に主作業床4を設置する。主作業床4は、マスト3に設置しつつ、煙突2に周設する。
なお、主作業床4および点検用作業床5は、マスト3,3が完成してから設置してもよいし、マスト3,3の下部分が形成された段階で設置してもよい。また、点検用作業床5は、主作業床4をマスト3,3に設置してから主作業床4の下方に設置してもよい。さらに、主作業床4は、地上において組み立てた状態でマスト3,3に取り付けてもよい。
【0022】
解体工程は、煙突解体用足場1を利用して煙突2を解体する工程である。
解体工程では、まず、主作業床4を煙突2の上端部に移動させる。主作業床4を所定の位置に配置したら、本体足場41の開口縁から張出足場42を煙突2に向けて張り出させる。そして、張出足場42上において、隙間養生部材43を煙突2の外面に周設して、張出足場42と煙突2との間に形成された隙間を閉塞する。
【0023】
隙間養生が完了したら、
図3に示すように、主作業床4上において煙突2をはつることにより、煙突2を解体する。煙突2の解体は、コンクリートブレーカM等を利用して、所定形状のコンクリートブロック片23(
図5(c)参照)に分割することにより行う。なお、煙突2の解体に使用する機械はコンクリートブレーカMに限定されるものではない。
煙突2の解体は、まず、
図5(a)に示すように、コンクリートブレーカMを利用して煙突2の上端から縦に切断して、2本のスリット24,24を煙突2に形成する。なお、スリット24の形状は限定されないが、本実施形態では、高さ1m、幅20cmとする。
【0024】
次に、スリット24の形成に伴って露出した煙突2の鉄筋(横筋)25を切断する。なお、横筋25の切断方法は限定されないが、本実施形態ではガス切断により行う。
続いて、
図5(b)に示すように、一方のスリット24の下端から他方にスリット24の下端に向けて、横スリット26を形成する。なお、スリット24の形状は限定されないが、本実施形態では幅20cmとする。
横スリット26を形成したら、
図5(c)に示すように、横スリット26の形成に伴って露出した鉄筋(縦筋)27を折り曲げて、コンクリートブロック片23を煙突2の内側に傾けさせる。
【0025】
そして、縦筋27を切断することで、煙突2からはつり取ったコンクリートブロック片23は、煙突2の内部を落下させる(
図5(d)参照)。ここで、煙突2の下部には、予めガラ排出口を設けておき、落下させたコンクリートブロック片23の搬出を可能に構成しておく。
【0026】
同様に、コンクリートブロック片23を煙突2の周方向に沿って撤去することにより、煙突2の上部をはつり取る。
なお、煙突2の解体に伴い、点検用作業床5を利用して煙突2の健全度(亀裂や変位の有無等)を確認する。また、必要な資材や用具等を、点検用作業床5を利用して、地上部から主作業床4間で輸送する。
煙突2の上部の切断が完了したら、張出足場42および隙間養生部材43を撤去して、主作業床4を下降させる。そして、主作業床4を所定の位置に下降させたら、隙間養生を行い、煙突2の解体を行う。なお、主作業床4の下降に伴い、マスト3の上端部のマスト部材を撤去してもよい。
このように、主作業床4の下降と煙突2の解体を繰り返すことにより、煙突2の上部区間を解体する。
【0027】
本実施形態の煙突解体用足場1および煙突解体工法によれば、独立して昇降する点検用作業床5を有しているため、主作業床4を上部に据え付けた状態で、煙突2の変位や変形等を確認することができるとともに、必要に応じて資材等の主作業床への輸送を行うこともできる。そのため、主作業床4を移動させる回数を減らすことで、養生(張出足場42や隙間養生部材43の設置・撤去)に要する手間を削減することができ、作業性に優れている。
また、枠組み足場を使用する従来の施工方法に比べて、足場の組み立てや解体時の高所作業量を大幅に削減することが可能となり、安全性および作業性に優れている。また、部材点数が少ないため、点検作業を簡易かつ確実に行うことができる。
強風時等の異常気象時には、主作業床4および点検用作業床5を降下させることで安全性を確保することができる。
マストは軽量なマスト部材を組み合わせることにより形成するため、施工性に優れている。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、煙突2の形状は限定されるものではなく、全長にわたって同一の外形を有した筒状構造物であってもよい。また、煙突2は必ずしも円筒状でなくてもよく、角筒状であってもよい。
張出足場42は、必要に応じて設ければよい。
同様に、隙間養生部材43も必要に応じて設ければよい。また、隙間養生部材43の構成は、前記実施形態で示したものに限定されない。