特許第6622600号(P6622600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6622600異種材料間接着用接着剤、車両構造材接着用接着剤及び建築物構造材接着用接着剤
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  • 特許6622600-異種材料間接着用接着剤、車両構造材接着用接着剤及び建築物構造材接着用接着剤 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6622600
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】異種材料間接着用接着剤、車両構造材接着用接着剤及び建築物構造材接着用接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20191209BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20191209BHJP
   C09J 129/14 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   C09J133/00
   C09J163/00
   C09J129/14
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-8312(P2016-8312)
(22)【出願日】2016年1月19日
(65)【公開番号】特開2017-128652(P2017-128652A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野本 博之
(72)【発明者】
【氏名】永井 康晴
(72)【発明者】
【氏名】河田 晋治
(72)【発明者】
【氏名】野村 高弘
(72)【発明者】
【氏名】新城 隆
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−072027(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/057663(WO,A1)
【文献】 特開2015−199932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系接着剤成分又はエポキシ系接着剤成分と、イミン構造を有する変性ポリビニルアセタールとを含有し、
前記(メタ)アクリル系接着剤成分は、単官能又は2官能の(メタ)アクリルモノマー、及び、光重合開始剤を含み、
前記エポキシ系接着剤成分は、エポキシモノマー、及び、イミダゾール系熱重合開始剤を含む
ことを特徴とする異種材料間接着用接着剤。
【請求項2】
イミン構造を有する変性ポリビニルアセタールは、イミン構造を有する構成単位の含有量が0.1モル%以上であることを特徴とする請求項1記載の異種材料間接着用接着剤。
【請求項3】
(メタ)アクリル系接着剤成分又はエポキシ系接着剤成分100重量部に対して、イミン構造を有する変性ポリビニルアセタールを1〜100重量部含有することを特徴とする請求項1又は2記載の異種材料間接着用接着剤。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の異種材料間接着用接着剤からなることを特徴とする車両構造材接着用接着剤。
【請求項5】
請求項1、2又は3記載の異種材料間接着用接着剤からなることを特徴とする建築物構造材接着用接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属−プラスチック間、ガラス−プラスチック間のような異種材料間でも充分な接着力を発揮できる異種材料間接着用接着剤、及び、該異種材料間接着用接着剤からなる車両構造材接着用接着剤、建築物構造材接着用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル系接着剤成分を含有する(メタ)アクリル系接着剤や、エポキシ系接着剤成分を含有するエポキシ系接着剤は、代表的な接着剤として種々の分野に用いられている。とりわけ、自動車等の車両や建築物等の構造材の接着に、(メタ)アクリル系接着剤やエポキシ系接着剤は欠くことができないものとなっている。(例えば、特許文献1)
【0003】
近年の車両や建築物等の構造材は、ガラスや、鉄、アルミニウム等の金属や、ポリアミド、アクリル、ポリエステル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン (ABS)樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックからなるもの等、多岐に渡っている。従って、車両や建築物等の構造材の接着の用途においては、同種材料間での接着のみならず、異種材料間での接着性も要求されるようになってきている。しかしながら、従来の(メタ)アクリル系接着剤やエポキシ系接着剤は、例えば、ガラス−ガラス間、金属−金属間、プラスチック−プラスチック間のような同種材料間の接着には優れた接着力を発揮できるものがあるものの、例えば、金属−プラスチック間、ガラス−プラスチック間のような異種材料間では充分な接着力を発揮できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−117011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、金属−プラスチック間、ガラス−プラスチック間のような異種材料間でも充分な接着力を発揮できる異種材料間接着用接着剤、及び、該異種材料間接着用接着剤からなる車両構造材接着用接着剤、建築物構造材接着用接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(メタ)アクリル系接着剤成分又はエポキシ系接着剤成分と、イミン構造を有する変性ポリビニルアセタールとを含有する異種材料間接着用接着剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、(メタ)アクリル系接着剤成分又はエポキシ系接着剤成分に、イミン構造を有する変性ポリビニルアセタールを配合することにより、ガラス−ガラス間、金属−金属間、プラスチック−プラスチック間のような同種材料間の接着のみならず、金属−プラスチック間、ガラス−プラスチック間のような異種材料間であっても優れた接着性を発揮できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明の異種材料間接着用接着剤(以下、単に「接着剤」ともいう。)は、(メタ)アクリル系接着剤成分又はエポキシ系接着剤成分を含有する。上記(メタ)アクリル系接着剤成分又はエポキシ系接着剤成分としては特に限定されず、従来公知の(メタ)アクリル系接着剤成分又はエポキシ系接着剤成分を用いることができる。
【0009】
上記(メタ)アクリル系接着剤成分は、単官能、2官能又は3官能以上の(メタ)アクリルモノマーや、これらの(メタ)アクリルモノマーが複数個結合した(メタ)アクリルオリゴマーを含有することが好ましい。
上記単官能(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−メタクロイルオキシエチル−2−ヒドロキシルプロピルフタレート、アクリル酸2ヒドロキシエチル、グリシジル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記2官能(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記3官能以上の(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリ(2−アクリロイルオキシエチル)フォスフェート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体等が挙げられる。
これらの(メタ)アクリルモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、上記イミン構造を有する変性ポリビニルアセタールとの相溶性に特に優れることから、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸2ヒドロキシエチル、グリシジル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が好適である。
【0010】
上記(メタ)アクリル系接着剤成分は、上記(メタ)アクリルモノマーや(メタ)アクリルオリゴマーを反応させるための重合開始剤を含有することが好ましい。
上記重合開始剤としては、例えば、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,6−ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド等のモノアシルフォスフィンオキシド系化合物や、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキシド系化合物や、ベンゾフェノール、アセトフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンフェノン、カンファーキノン、ジベゾスベロン、2−エチルアントラキノン、4’,4’’−ジエチルイソフタロフェノン、9,10−フェナントレンキノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−エトキシカルボニルオキシム、ベンゾフェノン、オルソベンゾイル安息香酸メチル、オルソベンゾイル安息香酸、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ビス(4−n−デカニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、ビス(a−n−ドデカニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミド、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセナート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンサルフォネート、2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、4−イソプロピル−4’−メチルヂフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、トリフェニルサルフォニウムテトラフルオロボレート、トリ−p−トリルサルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリ−p−トリルサルフォニウムトリフルオロメタンサルフォネート、ニフェジピン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3−ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキシピバレート、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、クロロヘキサノンパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクトエート、コハク酸パーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、m−トルオイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート及び2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等の熱重合開始剤、又は、過硫酸塩、有機過酸化物、アゾ化合物等の光重合開始剤が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
上記(メタ)アクリル系接着剤成分における上記重合開始剤の配合量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリルオリゴマー100重量部に対する好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限は10重量部であり、より好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0012】
上記エポキシ系接着剤成分は、エポキシモノマーや、これらのエポキシモノマーが複数個結合したエポキシオリゴマーを含有することが好ましい。
上記エポキシモノマーとしては、例えば、ビスフェノールA系、ビスフェノールF系、ビスフェノールAD系、ブロム含有ビスフェノールA系、フェノールノボラック系、クレゾールノボラック系、ポリフェノール系、直鎖脂肪族系、ブタジエン系、ウレタン等のグリシジルエステル型エポキシモノマーや、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー型グリシジルエステル、芳香族系、環状脂肪族系等の脂肪族グリシジルエステル型のエポキシモノマーや、ビスフェノール系、エステル系、高分子量エーテルエステル系、エーテルエステル系、ブロム系ノボラック系等のメチル置換型エポキシモノマーや、複素環型のエポキシモノマーや、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン型のエポキシモノマーや、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ大豆油等の線状脂肪族型エポキシモノマーや、環状脂肪族型エポキシモノマー、ナフタレン系ノボラック型エポキシモノマーや、ジグリシジルオキシナフタレン型エポキシモノマー等が挙げられる。これらのエポキシモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0013】
上記エポキシ系接着剤成分は、上記エポキシモノマーやエポキシオリゴマーを反応させるための重合開始剤を含有することが好ましい。
上記重合開始剤としては、例えば、イミダゾール類、4級アンモニウム塩類、リン化合物類、アミン類、ホスフィン類、ホスホニウム塩類、双環式アミジン類及びそれらの塩類、酸無水物、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾールシン等とホルムアルデヒドとを縮合反応して得られるノボラック型フェノール樹脂、液状ポリメルカプタンやポリサルファイド等のポリメルカプト樹脂、アミド等の熱重合開始剤、又は、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム、ビス〔4−(ジフェニルスルフォニオ)−フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)−フェニル〕スルフィド、η5−2,4−(シクロペンタジェニル)〔1,2,3,4,5,6−η−(メチルエチル)ベンゼン〕−鉄(1+)等のカチオンと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート等のアニオンとの組合せからなる化合物からなる光重合開始剤が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0014】
上記エポキシ系接着剤成分における上記重合開始剤の配合量は特に限定されないが、上記エポキシモノマー、エポキシオリゴマー100重量部に対する好ましい下限は1重量部、好ましい上限は300重量部であり、より好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は150重量部である。
【0015】
本発明の接着剤は、イミン構造を有する変性ポリビニルアセタール(以下、単に「変性ポリビニルアセタール」ともいう。)を含有する。これにより、本発明の接着剤は異種材料間の接着において高い接着性を発揮することができる。
上記変性ポリビニルアセタールは、イミン構造を有する構成単位を含む。
なお、本明細書においてイミン構造とは、C=N結合を有する構造を意味する。
上記イミン構造を有する構成単位としては、例えば、下記式(1)に示す構成単位が挙げられる。
【0016】
【化1】
【0017】
式(1)中、Rは、単結合、又は、アルキレン基を表し、Rは、イミン構造を有する基を表す。
【0018】
上記式(1)中、Rがアルキレン基である場合、該アルキレン基の炭素数の好ましい下限は1、好ましい上限は12である。上記アルキレン基の炭素数が12を超えると、最適な強度が得られないことがある。上記Rがアルキレン基である場合、上記アルキレン基の炭素数のより好ましい上限は5である。
【0019】
上記式(1)中、Rがアルキレン基である場合、該アルキレン基としては、例えば、メチレン基、ジメチレン基(エチレン基)、トリメチレン基(n−プロピレン基)、テトラメチレン基(n−ブチレン基)、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等の直鎖状アルキレン基、メチルメチレン基、メチルエチレン基、1−メチルペンチレン基、1,4−ジメチルブチレン基等の分岐状アルキレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロヘキシレン基等の環状アルキレン基等が挙げられる。なかでも、メチレン基、ジメチレン基(エチレン基)、トリメチレン基(n−プロピレン基)、テトラメチレン基(n−ブチレン基)等の直鎖状アルキル基が好ましく、メチレン基、ジメチレン基(エチレン基)がより好ましい。
【0020】
上記Rとしては、下記式(2)に示す官能基が挙げられる。
【0021】
【化2】
【0022】
式(2)中、Rは水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基を表し、Rは炭素数1〜18の炭化水素基を表す。
【0023】
上記炭化水素基としては、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族系炭化水素基等が挙げられる。なお、上記炭化水素基は、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族系炭化水素基のみからなるものであってもよく、これらが2種以上用いられたものであってもよい。
【0024】
上記飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、n−プロピル基が好ましい。
上記芳香族系炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、t−ブチルフェニル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0025】
上記変性ポリビニルアセタールは、上記イミン構造を有する構成単位中、Rが単結合、Rが水素原子、Rがメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0026】
上記変性ポリビニルアセタールは、イミン構造を有する構成単位の含有量の好ましい下限が0.1モル%、好ましい上限が20モル%である。
上記イミン構造を有する構成単位の含有量がこの範囲内であると、異種材料間の接着において充分な接着性を発揮でき、また、後述するアセタール化による変性ポリビニルアセタールの製造も容易である。上記イミン構造を有する構成単位の含有量のより好ましい下限は1.0モル%、より好ましい上限は15モル%である。
【0027】
上記変性ポリビニルアセタールは、更に、アミノ基又はアミド構造を有する構成単位を含んでもよい。上記アミノ基又はアミド構造を有することで、上記(メタ)アクリル系接着剤成分又はエポキシ系接着剤成分との間で架橋構造を形成させることもできる。なかでも、上記アミノ基又はアミド構造を側鎖に有することが好ましい。また、上記アミノ基又はアミド構造は、変性ポリビニルアセタールの主鎖を構成する炭素に直接結合してもよく、アルキレン基等の連結基を介して結合していてもよい。更に、上記アミノ基は第一級アミンでもよく、第二級アミンでもよい。
特に、上記アミノ基は、−NHであることが好ましい。
なお、本発明において、アミド構造とは、−C(=O)−NH−を有する構造をいう。
なかでも、上記アミノ基を有する構成単位は、下記式(3)に示す構造であることが好ましい。また、上記アミド基を有する構成単位は、下記式(4)に示す構造であることが好ましい。
【0028】
【化3】
【0029】
【化4】
【0030】
式(4)中、Rは水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。
なお、上記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基が挙げられる。
【0031】
上記変性ポリビニルアセタールがアミノ基又はアミド構造を有する構成単位を含む場合、上記アミノ基又はアミド構造を有する構成単位の含有量の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は20モル%である。上記アミノ基又はアミド構造を有する構成単位の含有量がこの範囲内であると、所期の効果を得ることができる。上記アミノ基又はアミド構造を有する構成単位の含有量のより好ましい下限は0.5モル%、より好ましい上限は10モル%である。
【0032】
上記変性ポリビニルアセタールのアセタール化度は特に限定されないが、好ましい下限が60モル%、好ましい上限は90モル%である。上記アセタール化度がこの範囲内であると、上記(メタ)アクリル系接着剤成分又はエポキシ系接着剤成分との相溶性に優れ、取り扱い性に優れる二液混合系接着剤とすることができ、また、沈殿法による合成工程において変性ポリビニルアセタールを容易に析出させることができる。上記アセタール化度のより好ましい下限は65モル%、より好ましい上限は85モル%である。
なお、変性ポリビニルアセタールのアセタール化度は、アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。アセタール化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、アセチル基量とビニルアルコール量(水酸基の含有率)とを測定し、得られた測定結果からモル分率を算出し、次いで、100モル%からアセチル基量とビニルアルコール量とを差し引くことにより算出され得る。
【0033】
上記変性ポリビニルアセタールの水酸基量は特に限定されないが、好ましい下限は15モル%、好ましい上限は35モル%である。上記水酸基量がこの範囲内であると、より高い接着性を発揮することができる。上記水酸基量のより好ましい下限は17モル%、より好ましい上限は25モル%である。
なお、変性ポリビニルアセタールの水酸基量は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により求めることができる。
【0034】
上記変性ポリビニルアセタールのアセチル基量は特に限定されないが、好ましい下限は0.0001モル%、好ましい上限は15モル%である。上記アセチル基量のより好ましい下限は0.01モル%、より好ましい上限は10モル%であり、更に好ましい下限は0.1モル%、更に好ましい上限は5モル%である。
なお、変性ポリビニルアセタールのアセチル基量は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。アセタール基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0035】
上記変性ポリビニルアセタールの重合度は特に限定されないが、好ましい下限は100、好ましい上限は4500である。上記変性ポリビニルアセタールの重合度がこの範囲内であると、接着性が高く、常温で取り扱い性に優れた接着剤を得ることができる。上記重合度のより好ましい下限は150、より好ましい上限は4000である。
【0036】
上記変性ポリビニルアセタールを調製する方法としては、例えば、上記イミン構造を有する単量体と、酢酸ビニルとを共重合させることによって得られたポリ酢酸ビニルをケン化し得られたポリビニルアルコールを、従来公知の方法によりアセタール化する方法が挙げられる。また、アミノ基又はアミド構造を有する構成単位を有するポリビニルアルコールを、従来公知の方法によりアセタール化することでイミン構造を導入する方法を用いてもよい。また、アミノ基又はアミド構造を有する構成単位を有するポリビニルアルコールを後変性して得られたイミン構造を有する変性ポリビニルアルコールを、従来公知の方法によりアセタール化する方法を用いてもよい。更に、未変性のポリビニルアセタールを後変性させることでイミン構造を導入してもよい。
【0037】
なかでも、アミノ基又はアミド構造を有する構成単位を有するポリビニルアルコールを、従来公知の方法によりアセタール化することでイミン構造を導入する方法が好ましい。このような方法によれば、アセタール化に使用するアルデヒド、酸触媒の量を過剰に添加することでイミン構造を容易に導入することができる。
なお、このような方法を用いる場合において、アミノ基又はアミド構造を有する構成単位、及び、イミン構造を有する構成要件を確認する方法としては、例えば、FT−IRを用いて、アミノ基のスペクトル(1600cm−1付近)を確認する方法や、13C−NMRを用いてイミン構造のスペクトル(160〜170ppm)を確認する方法等が挙げられる。
【0038】
上記アセタール化は、公知の方法を用いることが出来、水溶媒中、水と水との相溶性のある有機溶媒との混合溶媒中、あるいは有機溶媒中で行うことが好ましい。
上記水との相溶性のある有機溶媒としては、例えば、アルコール系有機溶剤を用いることができる。
上記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系有機溶剤や、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、安息香酸メチル等の芳香族有機溶剤や、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等の脂肪族エステル系溶剤や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ベンゾフェノン、アセトフェノン等のケトン系溶剤や、ヘキサン、ペンタン、オクタン、シクロヘキサン、デカン等の低級パラフィン系溶剤や、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤や、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルテセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトアニリド等のアミド系溶剤、アンモニア水、トリメチルアミン、トリエチルアミン、n−ブチルアミン、ジn−ブチルアミン、トリn−ブチルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン等のアミン系溶剤等が挙げられる。これらは、単体で用いることもできるし、2種以上の溶媒を混合で用いることもできる。これらのなかでも、樹脂に対する溶解性および、精製時の簡易性の観点から、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフランが特に好ましい。
【0039】
上記アセタール化は、酸触媒の存在下において行うことが好ましい。
上記酸触媒は特に限定されず、塩酸等のハロゲン化水素や、硝酸、硫酸、リン酸等の鉱酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸や、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等のスルホン酸等が挙げられる。これらの酸触媒は、単独で用いられてもよく、2種以上の化合物を併用してもよい。なかでも、塩酸、硝酸、硫酸が好ましく、塩酸が特に好ましい。
上記アミノ基又はアミド構造を有する構成単位を有するポリビニルアルコールをアセタール化することでイミン構造を導入する方法においては、例えば、酸触媒を全体の1.0重量%以上添加することにより、イミン構造を容易に導入することができる。
【0040】
上記アセタール化に用いられるアルデヒドとしては、炭素数1〜10の鎖状脂肪族基、環状脂肪族基又は芳香族基を有するアルデヒドが挙げられる。これらのアルデヒドとしては、従来公知のアルデヒドを使用できる。上記アセタール化反応に用いられるアルデヒドは、特に限定されるものではなく、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、n−ヘプチルアルデヒド、n−オクテルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド等の脂肪族アルデヒドや、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等の芳香族アルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒドは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アルデヒドとしては、なかでも、アセタール化反応性に優れ、生成する樹脂に十分な内部可塑効果をもたらし、結果として良好な柔軟性を付与することができるブチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、n−ノニルアルデヒドが好ましく、ブチルアルデヒドがより好ましい。
【0041】
上記アルデヒドの添加量としては、目的とする変性ポリビニルアセタールのアセタール化度にあわせて適宜設定する事ができる。上記アルデヒドの添加量としては、目的とする変性ポリビニルアセタールのアセタール化度にあわせて適宜設定すればよい。特に、ポリビニルアルコール100モル%に対して、60〜95モル%、好ましくは70〜90モル%とすると、アセタール化反応が効率よく行われ、未反応のアルデヒドも除去しやすいため好ましい。
【0042】
本発明の接着剤において上記(メタ)アクリル系接着剤成分又はエポキシ系接着剤成分100重量部に対する上記変性ポリビニルアセタールの含有量の好ましい下限は1重量部、好ましい上限は100重量部である。上記変性ポリビニルアセタールの含有量がこの範囲内であると、高い反応性を維持しつつ、異種材料間の接着において優れた接着性を発揮することができる。上記変性ポリビニルアセタールの配合量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は50重量部である。
【0043】
本発明の接着剤は、更に、天然ゴムや、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリジエン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系、塩素化ポリエチレン系、ポリノルボルネン系、ポリスチレン・ポリオレフィン共重合体系、(水添)ポリスチレン・ブタジエン共重合体系、ポリスチレン・ビニルポリイソプレン共重合体系等のゴム弾性を示すエラストマーや、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレンアクリルゴム、二トリルゴム、クロロプレン重合体等の高分子量化合物を含有してもよい。このような高分子量化合物を含有することにより、接着剤の凝集力が向上する。
【0044】
本発明の接着剤が上記高分子量化合物を含有する場合、上記(メタ)アクリル系接着剤成分又はエポキシ系接着剤成分100重量部に対する上記高分量化合物の含有量の好ましい上限は200重量部である。上記高分子量化合物の含有量が200重量部未満であると、優れた反応性を維持しつつ、接着剤の凝集力を向上させることができる。上記高分子量化合物の配合量のより好ましい上限は35重量部である。
【0045】
本発明の接着剤は、更に、粘着付与樹脂、接着力調整剤、乳化剤、抗酸化剤、軟化剤、微粒子、充填剤、顔料、染料、シランカップリング剤、酸化防止剤、界面活性剤、ワックス等の公知の添加剤を含有していてもよい。
【0046】
本発明の接着剤は、ガラス−ガラス間、金属−金属間、プラスチック−プラスチック間のような同種材料間の接着においても優れた接着性を発揮できるが、従来の接着剤では困難であった、金属−プラスチック間、ガラス−プラスチック間のような異種材料間の接着において優れた接着性を発揮できる。本発明の接着剤は、特に自動車等の車両や建築物等の構造材のような多岐に渡る材料間の接着に好適に用いることができる。
本発明の異種材料間接着用接着剤からなる車両構造材接着用接着剤もまた、本発明の1つである。
本発明の異種材料間接着用接着剤からなる建築物構造材接着用接着剤もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、金属−プラスチック間、ガラス−プラスチック間のような異種材料間でも充分な接着力を発揮できる異種材料間接着用接着剤、及び、該異種材料間接着用接着剤からなる車両構造材接着用接着剤、建築物構造材接着用接着剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】実施例における接着剤の引張せん断接着強さ試験方法に用いた試験片を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0050】
<変性ポリビニルブチラールの調製>
重合度600、鹸化度99モル%、上記式(3)に示すアミノ基(−NH)を有する構成単位を1.7モル%含有するポリビニルアルコール240gを純水1800gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸170gとn−ブチルアルデヒド275gとを添加し、液温を40℃に保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
その後、液温を40℃のまま3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、変性ポリビニルブチラールの粉末を得た。
【0051】
得られた変性ポリビニルブチラールをDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて分析したところ、ブチラール化度が77.5モル%、水酸基量が20.0モル%、アセチル基量が0.4モル%であり、下記式(5)に示すイミン構造(R及びRはメチル基)を有する構成単位の含有量が1.7モル%であることが確認できた。
【0052】
【化5】
【0053】
<ポリビニルブチラールの調製>
重合度650、鹸化度99モル%のポリビニルアルコール250gを純水1800gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸170gとn−ブチルアルデヒド275gとを添加し、液温を40℃に保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
その後、液温を40℃のまま3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルブチラールの粉末を得た。
【0054】
得られたポリビニルブチラールをDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて分析したところ、アセタール化度が65.0モル%、水酸基量が34.0モル%、アセチル基量が1.0モル%であることが確認できた。
【0055】
(実施例1)
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(二官能アクリレートモノマー、サートマー社製「SR833S」)34重量部、エチルアクリレート(単官能アクリレートモノマー、日本触媒社製)33重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(単官能アクリレートモノマー、和光純薬工業社製)33重量部と、光重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(日油社製「パーブチル355」)5重量部を加えてアクリル系接着剤成分を得た。
得られたアクリル系接着剤成分100重量部に対して、変性ポリビニルブチラール10重量部を加え、充分に攪拌・混合して接着剤を得た。
【0056】
(実施例2、比較例1〜3)
変性ポリビニルブチラール10重量部に代えて表1のようにした以外は実施例1と同様にした接着剤を得た。
【0057】
(評価)
実施例及び比較例で得られた接着剤について、以下の方法により評価を行った。
結果を表1に示した。
【0058】
(各種材料間の接着性の評価)
JIS K 6850の接着剤の引張せん断接着強さ試験方法に準じて、図1に示したように試験片を作製した。評価対象とする基板の組み合わせとしてポリアミド−アルミニウム、アクリル−アルミニウム、ABS樹脂−アルミニウム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)−アルミニウムの異種材料、及び、ガラス−ガラス、鉄−鉄、アルミニウム−アルミニウムの同種材料を選択した。接着剤を基板に塗布して接着した後、130℃、30分間オーブンで加熱した硬化させた。その後、テンシロン万能材料試験機(エー・アンド・デイ社製、RTC−1350A)を用いて、23℃における引張せん断接着強さを測定した。
【0059】
【表1】
【0060】
(実施例3)
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER828」、エポキシ当量190)80重量部に対して、イミダゾール系硬化触媒として2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(四国化成社製「C11Z−A」)20重量部を加えてエポキシ系接着剤成分を得た。
得られたエポキシ系接着剤成分100重量部に対して、変性ポリビニルブチラール1重量部を加え、充分に攪拌・混合して接着剤を得た。
【0061】
(実施例4、5、比較例4、5)
変性ポリビニルブチラール1重量部に代えて表2のようにした以外は実施例3と同様にした接着剤を得た。
【0062】
(評価)
実施例及び比較例で得られた接着剤について、上記の方法により評価を行った。
結果を表2に示した。
【0063】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、金属−プラスチック間、ガラス−プラスチック間のような異種材料間でも充分な接着力を発揮できる異種材料間接着用接着剤、及び、該異種材料間接着用接着剤からなる車両構造材接着用接着剤、建築物構造材接着用接着剤を提供することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 基板
2 支持体(基板材料と同一の厚さ、同質のもの)
3 接着部分
4 つかみ部分
図1