特許第6622637号(P6622637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6622637
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】ダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/48 20060101AFI20191209BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   F16F9/48
   F16F9/32 H
   F16F9/32 L
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-63048(P2016-63048)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-180479(P2017-180479A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】304039065
【氏名又は名称】カヤバ システム マシナリー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(72)【発明者】
【氏名】榊原 健人
(72)【発明者】
【氏名】中原 学
(72)【発明者】
【氏名】磯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】濱 智貴
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4058298(JP,B2)
【文献】 特開2003−278820(JP,A)
【文献】 特開2006−161842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H9/00−9/16
F16F9/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に移動可能に挿入されて、前記シリンダ内を伸側室と圧側室に区画するピストンと、
前記ピストンに連結されて、前記ピストンの前記伸側室側から前記シリンダ外へ延びるロッドと、
前記伸側室と前記圧側室との間を移動する液体の流れに抵抗を与える減衰通路と、
タンクと、
前記タンクから前記圧側室へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路と、
前記圧側室から前記タンクへ向かう液体の流れに抵抗を与える排出通路と、
前記シリンダと別体であって、前記シリンダと離れて前記シリンダの軸方向に延びるとともに、前記ピストンを軸方向に貫通する挿通孔に挿通されて、前記ピストンに摺接する円柱状の第一バイパス用ロッドと、
前記第一バイパス用ロッドの外周に形成されて軸方向に延びる溝と前記ピストンとの間に形成されて、前記ピストンの位置に依存して前記減衰通路を迂回し、前記伸側室と前記圧側室とを連通する第一バイパス路と、
前記ピストンの位置に依存して前記減衰通路を迂回し、前記圧側室から前記伸側室へ向かう流体の流れのみを許容する第二バイパス路とを備える
ことを特徴とするダンパ。
【請求項2】
前記シリンダ内に設けられ、軸方向に延びる第二バイパス用ロッドを備え、
前記第二バイパス路は、前記第二バイパス用ロッドに形成されるとともに、前記第二バイパス路の両端開口が前記ピストンで開閉される
ことを特徴とする請求項1に記載のダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、免震装置の中には、構造物と地盤との間に、構造物の重量を支えつつ構造物の水平方向への移動を許容するアイソレータと、構造物の水平方向の移動を抑制するダンパとを介在させたものがある。このような免震装置では、地震が発生した場合、ダンパの発生する減衰力が小さいほど地盤の振動が構造物へ伝達し難くなり、高い振動絶縁性を確保できるので免震効果が高くなる。そうかといって、ダンパの減衰力が小さいと、大地震の発生等により大きな揺れが入力された場合に構造物の移動を抑制できず、構造物の振幅が大きくなり過ぎて隣接する建物又は擁壁等に干渉する虞がある。しかし、大地震に備えてダンパの減衰力を大きくしたのでは、中小規模の地震又は風によって建物が揺れる場合に、ダンパの減衰力が効きすぎて免震装置の効果を減殺してしまう。
【0003】
このため、上記免震装置では、減衰係数をピストン位置に応じて切換えて、ピストンが中立位置近傍の所定の範囲を移動する場合の減衰係数を小さく、上記範囲を逸脱して移動する場合の減衰係数を大きくできるダンパ(例えば、特許文献1)を利用することがある。なぜなら、このようなダンパでは、小振幅時には減衰係数を小さく維持できて、中小規模の地震の揺れに対しては小さい減衰力しか発揮しないので、振動絶縁性を阻害せず、高い免震効果を得られる一方、振幅が大きくなると減衰係数が大きくなるので、大地震の際には大きな減衰力で構造物の振動を抑制し、振幅が大きくなり過ぎるのを防止できるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4058298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ピストン位置に応じて減衰係数を切換えられる従来のダンパは、例えば、図4に示すダンパD2のように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されるピストン200と、一端がピストン200に連結されて他端がシリンダ1外に延びるロッド3と、シリンダ1の反ロッド側端部に固定されるベース部材500と、シリンダ1の外周に設けた外筒4と、シリンダ1の軸方向に延びてピストン200を貫通するスプール9とを備える。
【0006】
そして、シリンダ1内には、ピストン200で区画される伸側室R1と圧側室R2が形成されており、シリンダ1の周囲には、外筒4との間に作動油を貯留するタンクTが設けられている。また、ピストン200には、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側通路201及び圧側通路202が設けられており、ベース部材500には、圧側室R2とタンクTとを連通する吸込通路501及び排出通路502が設けられている。そして、伸側通路201には、伸側室R1から圧側室R2へ向かう作動油の流れに抵抗を与える伸側減衰弁210が設けられ、圧側通路202には、圧側室R2から伸側室R1へ向かう作動油の流れに抵抗を与える圧側減衰弁211が設けられている。また、吸込通路501には、タンクTから圧側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容する逆止弁510が設けられ、排出通路502には、圧側室R2からタンクTへ向かう作動油の流れに抵抗を与える減衰弁511が設けられている。
【0007】
さらに、スプール9には、軸方向の一定の範囲に連続する縦長の溝9bが形成されており、当該溝9bによりピストン200との間に上記伸側減衰弁210及び圧側減衰弁211を迂回するバイパス路9aが形成される。より詳しくは、溝9bの軸方向長さはピストン200の軸方向長さよりも長く、ピストン200が溝9bの図4中左右両端の間に位置する場合には、バイパス路9aが伸側室R1と圧側室R2とを連通する。しかし、ピストン200が溝9bの図4中左端よりも図4中左方へ移動したり、右端よりも右方へ移動したりすると、バイパス路9aの連通が遮断される。
【0008】
上記構成によれば、ダンパD2が伸長する場合には、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに伸側減衰弁210で抵抗を与えるので、ダンパD2が伸側の減衰力を発揮する。反対に、ダンパD2が収縮する場合には、圧側室R2から伸側室R1とタンクTへ向かう液体の流れに圧側減衰弁211と減衰弁511で抵抗を与えるのでダンパが圧側の減衰力を発揮する。そして、ピストン200がバイパス路9aの連通を許容する位置にある場合には、伸側室R1と圧側室R2との間を移動する作動油の一部がバイパス路9aを通り、伸側減衰弁210及び圧側減衰弁211を迂回するので、これらを通過する作動油の流量が減少し、減衰係数が小さくなる。
【0009】
しかし、バイパス路9aが連通されていても、ダンパD2の収縮時に減衰弁511を通過する液体の流量は、シリンダ1から退出するロッド体積分であって、バイパス路9a遮断時と略変わらない。このため、バイパス路9a連通時における圧側(収縮時)の減衰係数は、バイパス路9a遮断時よりは小さくなるものの減衰弁511を迂回できない分大きくなり、伸側(伸長時)の減衰係数ほどの低減効果を得られない。よって、上記ダンパD2では、バイパス路9a連通時における伸長作動時と収縮作動時とで減衰性能が大きく異なってしまう。そうかといって、上記ダンパD2のような片ロッド型のダンパを両ロッド型にすると、大がかりな設計変更が必要になるとともに、シリンダ1の両側にロッド3のストロークスペースを確保しなければならず、ダンパの設置場所の確保が難しいことがある。また、上記ダンパD2に、ピストン位置に応じて減衰弁511を迂回して圧側室R2とタンクTを結ぶバイパス路を設けようとすると、構造が複雑になる。
【0010】
そこで、本発明は、片ロッド型のダンパであっても、伸長作動時と収縮作動時とで減衰性能を容易に近づけられるダンパの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する請求項1に記載の発明は、シリンダと、前記シリンダ内に移動可能に挿入されて、前記シリンダ内を伸側室と圧側室に区画するピストンと、前記ピストンに連結されて、前記ピストンの前記伸側室側から前記シリンダ外へ延びるロッドと、前記伸側室と前記圧側室との間を移動する液体の流れに抵抗を与える減衰通路と、タンクと、前記タンクから前記圧側室へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路と、前記圧側室から前記タンクへ向かう液体の流れに抵抗を与える排出通路と、前記シリンダと別体であって、前記シリンダと離れて前記シリンダの軸方向に延びるとともに、前記ピストンを軸方向に貫通する挿通孔に挿通されて、前記ピストンに摺接する円柱状の第一バイパス用ロッドと、前記第一バイパス用ロッドの外周に形成されて軸方向に延びる溝と前記ピストンとの間に形成されて、前記ピストンの位置に依存して前記減衰通路を迂回し、前記伸側室と前記圧側室とを連通する第一バイパス路と、前記ピストンの位置に依存して前記減衰通路を迂回し、前記圧側室から前記伸側室へ向かう流体の流れのみを許容する第二バイパス路とを備える。このため、減衰通路を迂回する迂回路が、伸長時には第一バイパス路のみであるのに対して、収縮時には第一バイパス路と第二バイパス路の両方になる。よって、ダンパが片ロッド型であって、収縮時に圧側室からタンクへ向かう液体が排出通路の抵抗を受けても、ピストンが所定の範囲にある場合の圧側の減衰係数を小さくして伸側の減衰係数に近づけられる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成を備えるとともに、前記シリンダ内に設けられ、軸方向に延びる第二バイパス用ロッドを備え、前記第二バイパス路は、前記第二バイパス用ロッドに形成されるとともに、前記第二バイパス路の両端開口が前記ピストンで開閉される。このため、ピストンの位置に依存して、第二バイパス路と伸側室及び圧側室を接続・遮断するのが容易であり、第二バイパス路に逆止弁を設ければ、ピストンの位置に依存して圧側室から伸側室へ向かう液体の流れのみを許容できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のダンパによれば、片ロッド型のダンパであっても、伸長作動時と収縮作動時とで減衰性能を容易に近づけられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態に係るダンパの取付状態を示した正面図である。
図2】本発明の一実施の形態に係るダンパの縦断面を示した概略図である。
図3】(a)は、図2に示すダンパの第一バイパス用ロッドの一部を拡大して示した縦断面図である。(b)は、(a)のXX線断面の第一の例であり、(c)は、(a)のXX線断面の第二の例であり、(d)は、(a)のXX線断面の第三の例である。(e)は、第一バイパス用ロッドの第一の変形例であり、当該変形例に係る第一バイパス用ロッドを直径方向に切断したときの断面を示す。(f)は、第一バイパス用ロッドの第二の変形例であり、当該変形例に係る第一バイパス用ロッドを直径方向に切断したときの断面を示す。
図4】従来のダンパの縦断面を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るダンパD1は、免震装置に利用されている。当該免震装置は、構造物Sと地盤Gとの間に介装されており、構造物Sの重量を支えつつ構造物Sの水平方向への移動を許容するアイソレータIと、構造物Sの水平方向の移動を抑制する上記ダンパD1とを備える。当該構成によれば、地震により地盤Gが揺れると、当該揺れをアイソレータIで吸収し、構造物Sに伝わる揺れを軽減できるとともに、ダンパD1で構造物Sが揺れ続けるのを防止できる。図1に示すアイソレータIは、鋼板と、弾性を有するゴムとを交互に積層させた積層ゴムであるが、ボールアイソレータであってもよく、適宜変更できる。
【0017】
つづいて、ダンパD1は、図2に示すように、シリンダ1と、このシリンダ1内に摺動自在に挿入されるピストン2と、図2中右端がピストン2に連結されて左端がシリンダ1外へ延びるロッド3と、シリンダ1の外周に設けた有底筒状の外筒4と、シリンダ1の反ロッド側端部に固定されたベース部材5と、ロッド3を摺動自在に軸支するとともにシリンダ1及び外筒4の図2中左側開口を塞ぐ環状のヘッド部材6と、ピストン2を貫通し、シリンダ1の軸方向に延びる第一バイパス用ロッド7及び第二バイパス用ロッド8とを備える。このように、上記ダンパD1では、ロッド3がピストン2の片側からシリンダ1外へと延びており、ダンパD1は片ロッド型とされている。また、シリンダ1と外筒4が内外二重に配置されて、ダンパD1は複筒型とされている。
【0018】
さらに、ダンパD1の軸方向の両端には、それぞれ取付部材30,40が設けられており、ロッド3が取付部材30を介して地盤G(図1)に連結され、シリンダ1が取付部材40を介して構造物S(図1)に連結されている。よって、地震の影響で構造物Sに対して地盤Gが図1中左右に揺れたり、風等の影響で地盤Gに対して構造物Sが図1中左右に揺れたりすると、ロッド3がシリンダ1に出入りしてダンパD1が伸縮する。なお、ダンパD1は、ロッド3が構造物Sに連結され、シリンダ1が地盤Gに連結されていてもよく、ダンパD1の取付方法及び位置は適宜変更できる。また、ダンパD1の利用目的も免震装置に限定されない。
【0019】
図2に示すように、ダンパD1の内筒であるシリンダ1内は、ピストン2で仕切られており、シリンダ1内にはピストン2を境にロッド3側の伸側室R1と、反ロッド側の圧側室R2が形成されている。また、シリンダ1外には、外筒4との間にタンクTが形成されており、液体が貯留されるとともに、その液面の上方に気体が封入される気室が形成されている。
【0020】
なお、気室に圧縮気体を充填してタンクT内を加圧状態にしてもよいが、ダンパD1ではこのようにする必要はない。さらに、ダンパD1では、内外二重に配置されるシリンダ1と外筒4との間の筒状の空間をタンクTとして利用しているが、外筒4を廃してシリンダ1内にタンクを設けたり、シリンダ1外に別置き型のタンクを設けたりして、ダンパD1を単筒型にしてもよい。
【0021】
つづいて、ピストン2は、図示しないボルト等の利用によりロッド3の軸回りに回転可能に取り付けられており、伸側室R1と圧側室R2とを区画する。このピストン2には、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側通路2a及び圧側通路2bと、ピストン2を軸方向に貫通し、第一バイパス用ロッド7及び第二バイパス用ロッド8の挿通を可能にする挿通孔2c,2dが形成される。さらに、ピストン2には、伸側通路2aを開閉する伸側減衰弁20と、圧側通路2bを開閉する圧側減衰弁21が装着されている。
【0022】
伸側減衰弁20は、伸側通路2aに設けた伸側の減衰力発生要素であり、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与えるとともに、その逆向きの流れを阻止する。また、圧側減衰弁21は、圧側通路2bに設けた圧側の減衰力発生要素であり、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに抵抗を与えるとともに、その逆向きの流れを阻止する。このように、伸側通路2a及び圧側通路2bには、減衰力発生要素が設けられており、伸側通路2aと圧側通路2bは、伸側室R1と圧側室R2との間を移動する液体の流れに抵抗を与える減衰通路として機能する。
【0023】
伸側減衰弁20及び圧側減衰弁21として、リリーフバルブ、ポペット弁、オリフィス等の公知のバルブを利用できる。また、ダンパD1では、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路が、一方通行に設定されて逆方向の流れを許容する伸側通路2aと圧側通路2bの二種類の流路を有して構成される。このため、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに与える抵抗と、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに与える抵抗を独立して設定できるが、減衰通路は双方向流れを許容する一種類の流路からなるとしてもよい。
【0024】
また、本実施の形態において、ダンパD1は、第一バイパス路7aが形成される一本の第一バイパス用ロッド7と、第二バイパス路8aが形成される一本の第二バイパス用ロッド8の計二本のバイパス用ロッドを備えている。このため、バイパス用ロッドの数に合わせてピストン2には、二つの挿通孔2c,2dが設けられているが、第一バイパス用ロッド7及び第二バイパス用ロッド8は、それぞれ複数設けられていてもよく、その数に応じて挿通孔の数は変更される。
【0025】
また、前述のように、ピストン2はロッド3の軸回りに回転可能なので、外力によりロッド3がシリンダ1に対してねじり方向に回転したとしても、ピストン2がロッド3とともに回転しようとして第一バイパス用ロッド7及び第二バイパス用ロッド8に負荷がかかるのを抑制できる。なお、ロッド3の軸回りの回転が阻止されている場合には、ピストン2とロッド3の回転が阻止されていてもよい。
【0026】
つづいて、ベース部材5は、シリンダ1と外筒4の底部との間に挟持されている。ベース部材5には、圧側室R2とタンクTとを連通する吸込通路5a及び排出通路5bが形成されるとともに、吸込通路5aを開閉する逆止弁50と、排出通路5bを開閉する減衰弁51が装着されている。
【0027】
逆止弁50は、吸込通路5aに設けられ、タンクTから圧側室R2へ向かう液体の流れを許容するとともに、逆向きの流れを阻止する。その一方、減衰弁51は、排出通路5bに設けた圧側の減衰力発生要素であり、圧側室R2からタンクTへ向かう液体の流れに抵抗を与えるとともに、逆向きの流れを阻止する。このように、排出通路5bにも減衰力発生要素が設けられており、当該排出通路5bが圧側室R2からタンクTへ向かう液体の流れに抵抗を与える減衰通路として機能する。
【0028】
逆止弁50として、リリーフバルブ、ポペット弁等の公知のバルブを利用でき、減衰弁51として、リリーフバルブ、ポペット弁、オリフィス等の公知のバルブを利用できる。また、ダンパD1では、圧側室R2とタンクTとを連通するベース通路が、一方通行に設定されて逆方向の流れを許容する吸込通路5aと排出通路5bの二種類の流路を有して構成される。このため、タンクTから圧側室R2へ向かう液体の流れを絞らないようにして、シリンダ1内の液体が不足してエアレーションが生じるのを防ぐとともに、圧側室R2からタンクTへ向かう液体の流れに対しては抵抗を与えられる。
【0029】
つづいて、ピストン2を貫通する第一バイパス用ロッド7及び第二バイパス用ロッド8は、それぞれヘッド部材6とベース部材5の間に挟持されてシリンダ1の軸方向に沿って延びており、シリンダ1に対して少なくとも軸方向へ動かないように固定されている。前述のように、第一バイパス用ロッド7に第一バイパス路7aが形成され、第二バイパス用ロッド8に第二バイパス路8aが形成されている。そして、第一バイパス路7a及び第二バイパス路8aは、ピストン2の位置に依存して伸側室R1及び圧側室R2に接続される。このピストン2の位置とは、シリンダ1内でのピストン2の軸方向(図2中左右)の位置のことである。
【0030】
より詳しくは、第一バイパス用ロッド7は、円柱状であり、その外周には、軸方向に連続する縦長の溝7bが形成されている。当該溝7bの軸方向長さは、ピストン2の軸方向長さよりも長い。また、第一バイパス用ロッド7における溝7bが無い部分の外周形状は、挿通孔2cの壁面形状と符合する。このため、第一バイパス用ロッド7における溝7bの無い部分にピストン2が重なる場合には、当該部分で第一バイパス用ロッド7の外周が全周に亘り挿通孔2cの壁面に摺動可能に接する。しかし、第一バイパス用ロッド7における溝7bがある部分にピストン2が重なると、当該部分では第一バイパス用ロッド7の外周と挿通孔2cの壁面との間に溝7bによる隙間ができる。この隙間が第一バイパス路7aとして機能し、ピストン2が溝7bの一端7cと他端7dとの間に位置する場合には、伸側室R1と圧側室R2との連通を許容する。その一方、ピストン2の図2中左端が溝7bの左端となる一端7cよりも左方に位置する場合、及び、ピストン2の図2中右端が溝7bの右端となる他端7dよりも右方に位置する場合には、第一バイパス路7aの少なくとも片方の開口がピストン2で塞がれるので、伸側室R1と圧側室R2の連通が遮断される。
【0031】
また、第二バイパス用ロッド8には、一端と他端が第二バイパス用ロッド8の側方に開口する第二バイパス路8aが形成されている。そして、第二バイパス路8aの両端開口8b,8cは、第二バイパス用ロッド8の軸方向に所定の間隔を開けて配置されている。この第二バイパス路8aの開口8b,8cの間隔は、ピストン2の軸方向長さよりも長い。また、第二バイパス用ロッド8は、円柱状であり、その外周形状は、挿通孔2dの壁面形状と符合し、第二バイパス用ロッド8の外周が挿通孔2dの壁面に摺動可能に接する。さらに、第二バイパス路8aの途中には、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れを許容し、その逆向きの流れを阻止する逆止弁80が設けられている。
【0032】
このため、第二バイパス路8aの両端開口8b,8cの間にピストン2が位置する場合には、図2中左側に位置する開口8bが伸側室R1に接続され、右側に位置する開口8cが圧側室R2に接続されて、第二バイパス路8aが圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する。しかし、ピストン2の図2中左端が開口8bの左端よりも左方に位置する場合、及びピストン2の図2中右端が開口8cの右端よりも右方に位置する場合には、第二バイパス路8aの少なくとも片方の開口がピストン2で塞がれるので、伸側室R1と圧側室R2の連通が遮断された状態に維持される。
【0033】
本実施の形態のダンパD1では、図2中、溝7bの一端7cと第二バイパス路8aの開口8bの左端が軸方向の同じ位置Aにあり、溝7bの他端7dと第二バイパス路8aの開口8cの右端が軸方向の同じ位置Bにある。そして、位置Aから位置Bまでの図2中矢印で示す範囲を範囲ABとすると、中立位置にあるピストン2が、範囲ABの中央に位置するように設定される。このため、ピストン2が中立位置から伸長側及び収縮側の何れに動いた場合にも、同じ距離を進んだときに、第一バイパス路7a及び第二バイパス路8aと、伸側室R1又は圧側室R2との接続が遮断される。
【0034】
なお、ピストン2の中立位置とは、ピストン2の軸方向の可動範囲の中央のことであるが、厳密な中央でなくてもよい。また、ピストン2が中立位置にあるときに、範囲ABの中央から図2中左右にずれていてもよい。さらに、ダンパD1では、第一バイパス路7aの連通を許容するピストン2の移動範囲と、第二バイパス路8aと伸側室R1及び圧側室R2との接続を許容するピストン2の移動範囲が一致するが、これらが一致しなくてもよい。
【0035】
以下、本実施の形態に係るダンパD1の作動について説明する。下記の説明において、図2中、ピストン2の左端が位置Aに未達で、且つ、ピストン2の右端が位置Bに未達である状態を、ピストン2が範囲AB内にあるとする。また、それ以外の状態、即ち、図2中、ピストン2の左端が位置Aよりも左側にある、又は、ピストン2の右端が位置Bよりも右側にある状態を、ピストン2が範囲AB外にあるとする。
【0036】
ダンパD1が伸長する場合、シリンダ1内をピストン2が図2中左方へ移動して、伸側室R1が縮小するとともに圧側室R2が拡大する。すると、縮小される伸側室R1の液体が伸側減衰弁20を開き、伸側通路2aを通って圧側室R2へ移動する。さらに、ダンパD1が伸長する場合、逆止弁50が開き、シリンダ1から退出するロッド体積分の液体が吸込通路5aを通ってタンクTから圧側室R2へ移動する。そして、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに対して、伸側減衰弁20で抵抗を与えるので、伸側室R1の圧力が高くなる。その一方、圧側室R2はタンクTに連通されて、圧側室R2の圧力がタンクTの圧力と等しくなる。このため、伸側室R1と圧側室R2の圧力に差圧が生じ、ダンパD1は、この差圧に応じて伸長作動を抑制する伸側減衰力を発揮する。
【0037】
さらに、ダンパD1が伸長する場合であって、ピストン2が範囲AB外にある場合には、第一バイパス路7aと第二バイパス路8aの両方の連通が遮断される。これに対して、ダンパD1が伸長する場合であって、ピストン2が範囲AB内にある場合には、第一バイパス路7aの連通が許容されるとともに、第二バイパス路8aの両端開口8b,8cが伸側室R1と圧側室R2にそれぞれ接続されるが、逆止弁80が閉じて第二バイパス路8aの連通は遮断されたままとなる。このため、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の一部が、伸側減衰弁20を迂回して第一バイパス路7aを通る。よって、ダンパD1の伸長作動時において、ピストン2が範囲AB内にある場合には、範囲AB外にある場合と比較して、ダンパD1の伸側の減衰係数が小さくなる。
【0038】
反対に、ダンパD1が収縮する場合、シリンダ1内をピストン2が図2中右方へ移動して、圧側室R2が縮小するとともに伸側室R1が拡大する。すると、縮小される圧側室R2の液体が圧側減衰弁21を開き、圧側通路2bを通って伸側室R1へ移動するとともに、減衰弁51を開き、シリンダ1内へ進入するロッド体積分の液体が排出通路5bを通ってタンクTへ移動する。そして、圧側室R2から伸側室R1とタンクTへ向かう液体の流れに対して、圧側減衰弁21と減衰弁51で抵抗を与えるので、圧側室R2の圧力が高くなる。その一方、拡大される伸側室R1の圧力は低くなる。このため、圧側室R2と伸側室R1の圧力に差圧が生じ、ダンパD1は、この差圧に応じて収縮作動を抑制する圧側減衰力を発揮する。
【0039】
さらに、ダンパD1が収縮する場合であって、ピストン2が範囲AB外にある場合には、第一バイパス路7aと第二バイパス路8aの両方の連通が遮断される。これに対して、ダンパD1が収縮する場合であって、ピストン2が範囲AB内にある場合には、第一バイパス路7aの連通が許容されるとともに、第二バイパス路8aの両端開口8b,8cが伸側室R1と圧側室R2にそれぞれ接続される。このため、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の一部が、圧側減衰弁21を迂回して第一バイパス路7aと第二バイパス路8aの両方を通る。よって、ダンパD1の収縮作動時において、ピストン2が範囲AB内にある場合には、範囲AB外にある場合と比較して、ダンパD1の圧側の減衰係数が小さくなる。
【0040】
このため、ダンパD1を備える免震装置では、ピストン2の中立位置からの変位が小さく、ピストン2が範囲AB内を移動するような中小規模の地震の揺れに対しては、ダンパD1の減衰係数が小さいままに維持されて、ダンパD1が小さい減衰力を発揮する。よって、ダンパD1の減衰力により、アイソレータIによる振動絶縁性を阻害せず、加速度を大きく増加させることなく免震装置による高い免震効果を得られる。その一方、ピストン2の中立位置からの変位が大きく、ピストン2が範囲ABを逸脱するような大地震等の揺れに対しては、ダンパD1の減衰係数が大きくなって、ダンパD1の大きい減衰力で構造物Sの揺れを抑制し、構造物Sの振幅が大きくなり過ぎるのを防止できる。
【0041】
また、ダンパD1では、ピストン2が範囲AB内にある場合、伸長作動時には迂回路が第一バイパス路7aのみであるのに対し、収縮作動時には迂回路が第一バイパス路7aと第二バイパス路8aの両方になる。よって、ダンパD1では、迂回路が双方向流れを許容するバイパス路9aしかないダンパD2(図4)と比較して、ピストン2が所定の範囲ABにある場合に圧側室R2の圧力を伸側室R1へ逃がし易く、これらの差圧を小さく、或いは零にできる。よって、ダンパD1の圧側の減衰係数をより小さくして、伸側の減衰係数に近づけられるので、ダンパD1の減衰性能が伸側と圧側で大きく異なることがなく、伸側と圧側の減衰性能を近づけられる。
【0042】
以下、本実施の形態に係るダンパD1の作用効果について説明する。
【0043】
本実施の形態において、ダンパD1は、シリンダ1内に設けられ、シリンダ1の軸方向に延びるとともに、ピストン2を軸方向に貫通する挿通孔2cに挿通されて、ピストン2に摺接する第一バイパス用ロッド7を備える。そして、この第一バイパス用ロッド7の外周には、軸方向に延びる溝7bが形成されており、この溝7bにより第一バイパス用ロッド7とピストン2との間にできる隙間により第一バイパス路7aが形成される。当該構成によれば、ピストン2の位置に依存して第一バイパス路7aの連通を許容するのが容易である。また、シリンダ1と別体(別の部品)である第一バイパス用ロッド7等の円柱状のロッドの外周に溝を形成する加工は容易であり、第一バイパス路7aを容易に形成できて加工精度を高められる。このため、減衰力の変位依存特性に生じるバラツキを抑えられる。また、溝7bを機械加工により形成する場合、シリンダ1の内径よりも大きな工具を使用できる。さらに、溝7bの位置、深さ等を自由に設定できるので、第一バイパス路7aの設計自由度が高く、多様な減衰特性を設定できる。
【0044】
例えば、要求される減衰性能に応じて第一バイパス路7aの開口面積を設定するため、第一バイパス用ロッド7における溝7bがある部分を直径方向に切断したときの断面形状を図3(b)〜(d)の何れに示すようにしてもよい。さらに、図3(e)(f)に示すように、複数の溝7bを第一バイパス用ロッド7の周方向に並べて設けたり、図示しないが、複数の溝7bを第一バイパス用ロッド7の軸方向にずらして設け、ピストン位置に依存して、第一バイパス路7aを通過する液体の流量を増やすようにしたりしてもよい。
【0045】
また、本実施の形態において、ダンパD1は、シリンダ1内に設けられ、軸方向に延びる第二バイパス用ロッド8を備える。そして、第二バイパス路8aは、第二バイパス用ロッド8に形成されるとともに、第二バイパス路8aの両端開口8b,8cがピストン2で開閉される。当該構成によれば、ピストン2の位置に依存して、第二バイパス路8aと伸側室R1及び圧側室R2を接続・遮断するのが容易であり、第二バイパス路8aに逆止弁80を設ければ、ピストン2の位置に依存して圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容できる。さらに、シリンダ1と別体である第二バイパス用ロッド8等の円柱状のロッドに通路を形成したり、バルブを取り付けたりするのは容易である。よって、上記構成によれば、第二バイパス路8aを容易に形成できて加工精度を高められるので、減衰力の変位依存特性に生じるバラツキを抑えられる。また、第二バイパス路8a及びバルブの設計自由度が高い。
【0046】
なお、第二バイパス用ロッド8は、円柱状であり、挿通孔2dに挿通されてピストン2に摺接するが、ピストン2の外周に切欠きを設け、この切欠きによりピストン2とシリンダ1との間にできる空間に第二バイパス用ロッド8を挿通してもよい。また、第二バイパス用ロッド8をロッド3に挿通し、第二バイパス路8aの片側の開口をロッド3で開口するようにしてもよく、シリンダ1に第二バイパス路8aの両端開口8b,8cを設け、シリンダ1の外周を第二バイパス路8aが通るようにしてもよい。そして、これらの変更は、第一バイパス路7aの構成によらず可能である。
【0047】
また、本実施の形態において、ダンパD1は、シリンダ1と、このシリンダ1内に移動可能に挿入されて、シリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2に区画するピストン2と、このピストン2に連結されて、ピストン2の図2中左側(伸側室R1側)からシリンダ1外へ延びるロッド3と、伸側室R1と圧側室R2との間を移動する液体の流れに抵抗を与える伸側通路(減衰通路)2a及び圧側通路(減衰通路)2bと、タンクTと、このタンクTから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路5aと、圧側室R2からタンクTへ向かう液体の流れに抵抗を与える排出通路5bと、ピストン2の位置に依存して伸側通路2a及び圧側通路2bを迂回し、伸側室R1と圧側室R2とを連通する第一バイパス路7aと、ピストン2の位置に依存して伸側通路2a及び圧側通路2bを迂回し、圧側室R2から伸側室R1へ向かう流体の流れのみを許容する第二バイパス路8aとを備える。
【0048】
上記構成によれば、伸側通路2a及び圧側通路2bに設けた減衰通路(伸側減衰弁20及び圧側減衰弁21)を迂回する迂回路が、伸長時には第一バイパス路7aのみであるのに対し、収縮時には第一バイパス路7aと第二バイパス路8aの二経路になる。よって、ダンパD1が片ロッド型であって、収縮時にシリンダ1に進入するロッド体積分の液体がシリンダ1内からタンクTへ向かう際、排出通路5bに設けた減衰弁51の抵抗を受けたとしても、圧側の減衰係数が小さくなる。したがって、ピストン2が所定の範囲AB内にある場合の圧側の減衰係数が、伸側の減衰係数に近くなり、伸長作動時と収縮作動時とで減衰性能を近づけられる。
【0049】
さらに、ダンパD1では、ピストン2が所定の範囲ABにある場合に、伸側室R1及び圧側室R2に接続されて、双方向流れを許容する第一バイパス路7aと、圧側室R2から伸側室R1へ向かう一方向流れを許容する第二バイパス路8aを備えているので、ピストン2が所定の範囲ABにある場合に、排出通路5bを迂回して圧側室R2とタンクTとを連通するバイパス路を設けずに、圧側の減衰係数を小さくできる。そして、第二バイパス路8aは、第一バイパス路7aと同様に、伸側室R1と圧側室R2とを連通する迂回路であって、ピストン2又はロッド3で開閉し易いので、ピストン2の位置に依存して開閉するのが容易であり、伸長作動時と収縮作動時とで減衰性能を近づけるのが容易である。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
D1・・・ダンパ、R1・・・伸側室、R2・・・圧側室、T・・・タンク、1・・・シリンダ、2・・・ピストン、2a・・・伸側通路(減衰通路)、2b・・・圧側通路(減衰通路)、2c・・・挿通孔、3・・・ロッド、5a・・・吸込通路、5b・・・排出通路、7・・・第一バイパス用ロッド、7a・・・第一バイパス路、7b・・・溝、8・・・第二バイパス用ロッド、8a・・・第二バイパス路、8b,8c・・・開口
図1
図2
図3
図4