特許第6622659号(P6622659)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6622659持続可能なトナーのための連続的な融着プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6622659
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】持続可能なトナーのための連続的な融着プロセス
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20191209BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   G03G9/08 381
   G03G9/087 331
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-120458(P2016-120458)
(22)【出願日】2016年6月17日
(65)【公開番号】特開2017-16118(P2017-16118A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2019年6月11日
(31)【優先権主張番号】14/789,973
(32)【優先日】2015年7月1日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィット・ジェイダブリュ・ロートン
(72)【発明者】
【氏名】ケ・チョウ
(72)【発明者】
【氏名】キンバリー・ディー・ノッセラ
(72)【発明者】
【氏名】メラニー・エル・デイヴィス
(72)【発明者】
【氏名】ゲリーノ・ジー・サクリパンテ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ピーエヌ・ヴェアジン
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−081348(JP,A)
【文献】 特開2012−098617(JP,A)
【文献】 特開2015−081350(JP,A)
【文献】 特開2012−220950(JP,A)
【文献】 特開2008−281882(JP,A)
【文献】 特開2015−114666(JP,A)
【文献】 特開2007−156244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08−9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続反応器を用いて少なくとも1つの生物由来の樹脂を含むトナー粒子を30秒〜10分の滞留時間、少なくとも80℃の温度で連続的に融着し、持続可能なトナーを製造する工程を含み、
前記連続反応器は、前記融着の前に前記トナー粒子の温度を上げるための、温度制御デバイスを備える第1の部分と、前記滞留時間および前記温度で前記トナー粒子を融着するための反応器である第2の部分と、前記融着の後に前記トナー粒子の温度を下げるための、温度制御デバイスを備える第3の部分と有し、
この持続可能なトナーが、7重量%よりも少ない量の結晶性ポリエステル(CPE)樹脂を含み、ゲルを含まない、持続可能なトナーを製造するための連続的な融着プロセス。
【請求項2】
融着が、80℃〜95℃の温度での融着を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
融着が、7〜9のpHでの融着を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記滞留時間が40秒〜7分である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記持続可能なトナーが、3.5〜8μmのメジアン直径(D50)を有する融着された粒子を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記持続可能なトナーにおいてX線光電子分光法(XPS)によって決定するトナー粒子の表面における炭素原子と酸素原子との比(C/Oが4以上である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記トナー粒子が、前記生物由来の樹脂としてポリエステル樹脂を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記持続可能なトナーに含まれる樹脂の少なくとも50重量が前記生物由来の樹脂である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記持続可能なトナーが、ワックス、着色剤、または両者を含む、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、結晶性樹脂を必要とすることなく、そのため、処理費用が低く、低い溶融特性を示す生物由来の(持続可能な)試薬を含む乳化凝集(EA)トナーを調製するための連続的な融着プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
大部分のポリマー材料は、量に制限のある資源であり、環境に非分解性の材料を蓄積する可能性がある化石燃料の抽出および処理に由来する。近年、USDAは、すべてのトナー/インクが、生物成分(または持続可能な内容物)を少なくとも20%含むように提案した。生物から誘導される樹脂が開発されているが、このような試薬をトナーおよびインクに組み込むことには、解決すべき問題がある(「生物から誘導される樹脂」、「生物由来樹脂」、「持続可能な樹脂」という用語およびこれらの文法上の形態は、本明細書で相互に置き換え可能に用いられ、樹脂またはポリエステル樹脂が、石油化学物質または石油系供給源から得られる材料またはモノマーとは対照的に、天然源から得られるか、または容易に生分解可能であることを示すことを意味する。
【0003】
連続式または半連続式のプロセスで作られる、低い溶融特性、高いトナー表面の炭素酸素(C/O)比および/または低い結晶性ポリエステル樹脂(CPE)量を有する持続可能なEAトナーの調製は、有益であろう。
【0004】
これらの目標は、生物由来のトナー試薬を用いてトナーを製造するための連続的な融着プロセスで達成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、低い溶融特性、減少したCPE樹脂含有量、減少したゲル含有量、高いトナー表面の炭素酸素(C/O)比またはこれらの組み合わせを有する持続可能なトナーを調製するための連続的な融着プロセスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、トナー粒子を約30秒〜約10分の融着時間、少なくとも約80℃の温度で連続的に融着し、持続可能なトナーを製造する工程を含む、持続可能なトナーを製造するための連続的な融着プロセスが開示され、この持続可能なトナーは、場合により、結晶性ポリエステル(CPE)樹脂、ゲルまたは両者を含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、すでに記載されているか、またはバッチ式の融着を用いて得ることができるものよりも低い溶融特性、例えば、低い最低固定温度(MFT)および/または高いトナーの表面C/O比を有する生物由来のトナーのための連続的な融着プロセスに関する。低いMFTは、CPE樹脂の必要性を減らすか、またはなくし、そのため、トナーの費用を下げる。本開示は、高温での連続的な融着を含む、トナーを製造するための新規プロセスを利用し、滞留時間を短くし、迅速かつ再現可能な様式で固有のトナー粒子の均一な集合を形成する。融着条件は、短期間の高い温度での粒子の形状、表面組成、トナー粒子中の成分間の粒子内の化学などに影響を与える。
【0008】
初期または未完成のトナー粒子は、例えば、乳化凝集(EA)プロセスを用い、任意の既知のプロセス(例えば、バッチプロセスまたは連続的なプロセス)によって得られる。粒子を新しく製造してもよく、すなわち、中断することなく、目的の連続融着反応器および反応に導入してもよく、または、粒子をあらかじめ製造し、例えば、低い温度に維持される粒子スラリーとして保存してもよい。保存される調製の場合には、融着の前にスラリーを室温(RT)まで加温してもよく、または約40℃〜約50℃まで加熱してもよい。EA法の凝集後に粒子の成長を凍結させている間に使用される、加熱し、保存された粒子スラリーの温度を概算することができる。
【0009】
粒子を目的の連続融着反応器に移動し、粒子は、任意の既知のデバイスを用い、反応が、任意の手段(例えば、導路、管など)によって連続的な流体の流れとして起こり、また、連続的な流体の流れの中で起こる限り、任意の形態をしていてもよい。スラリーを任意の手段によって(例えば、重力により)移動してもよく、例えば、駆動するデバイス(例えば、インペラ、ポンプなど)を用いて、または任意の他の手段によって補助されてもよい。
【0010】
スラリーは、温度制御デバイス、例えば、熱交換器(HEX)を備える目的の融着デバイスの第1のデバイス、セクション、部分、反応器など(以下、「第1の部分」または「第1のデバイス」)を通って流れ、スラリーの温度は、少なくとも約80℃、少なくとも約85℃、少なくとも約87.5℃、少なくとも約90℃、またはもっと高く、または約80℃〜約98℃、約82.5℃〜約97℃、約83℃〜約95℃に上げられ、さらに迅速な融着および粒子表面の研磨を可能にする。スラリーのpHは、約7〜約10、約7〜約9、約7〜約8.5であってもよい。
【0011】
目的の反応器の滞留時間のデバイス、セクション、部分、反応器など(以下、「第2の部分」または「第2のデバイス」)は、スラリー中でトナー粒子を迅速に融着させるための温度を生じさせるように構成された温度制御デバイスを備える。
【0012】
当該技術分野で知られているように、連続反応器の任意の部分中のスラリーの滞留時間は、スラリーの粘度、スラリーを移動させるために用いられる任意の圧力、任意の導路の穴、任意の導路の長さなどに依存して変わってもよい。従って、スラリーが、温度制御デバイスを備える目的の連続デバイスの第1の部分に存在する間に、または温度制御デバイスを備える目的のデバイスの第1の部分から移動した後の導路または容器に存在する間に、融着を完結させてもよい。
【0013】
滞留時間、すなわち、スラリーの一部が融着温度で連続反応器内に存在する時間は、約30秒〜約10分、約40秒〜約7分、約50秒〜約5分であってもよいが、例えば、第2の部分の容積容量、第1の部分を出ていく導路の容積容量、流速、粘度などに依存して、これらの範囲からはずれた時間を使用してもよい。目的の新規トナー粒子を得るための目的の特徴は、粒子が高温の融着温度にさらされる時間が短いことである。
【0014】
いくつかの実施形態において、加熱された粒子スラリーは、場合により、滞留時間の反応器または第2の部分の中へ、および/またはこれらを通って流れ、粒子は、所定の時間またはもっと長い時間で融着する。一般的に、滞留時間の反応器の温度は、第1の部分に与えられるのと同じ温度、または目的のデバイスの第1の部分を出ていくスラリーと同じ温度であり、温度の管理は、第2の温度制御デバイスによって与えられてもよく、または、中を流れている間は反応剤の温度が維持されるように絶縁された容器および導路を提供することによって与えられてもよい。滞留時間の反応器中の滞留時間は、粒子の融着を完結させるのに必要な合計時間によって決定される。融着の終了は、例えば、真円度、表面C/O比などの望ましい特徴に基づく設計上の選択肢として決定される。
【0015】
次いで、融着された粒子スラリーは、温度制御デバイス(例えば、HEX)を備える第2の(または、滞留時間の反応器が存在する場合には第3の)部分、反応器など(以下、「第3の部分」または「第3のデバイス」)を備えるデバイスの部分を通って流れ、トナー粒子の融着を止めるためにスラリーの温度を下げ、この温度は、約40℃、RT(約20℃〜約25℃)、または粒子中の樹脂のTより少なくとも低い温度であってもよい。別の実施形態において、融着された粒子スラリーは、融着を止めるための低い温度の収集容器に直接流れ、例えば、連続反応器の出口流、例えば、第1の部分または第2の部分からの出口流は、存在する場合、融着完結時に温度を迅速に下げるために、氷水浴に移されてもよい。
【0016】
融着の迅速さおよび融着の迅速な終了は、トナー粒子表面のC/O比を上げることに寄与する。C/O比は、約4以上、約4.1以上、約4.2以上、またはこれらの範囲より大きくてもよい。
【0017】
目的のトナー中のCPEの量は、従来のトナーでみられる量(例えば、7重量%)よりも小さい。従って、目的のトナーは、CPE量が6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、またはもっと少ない。いくつかの実施形態において、トナーは、トナーにCPEが含まれない場合、CPEを含まない(0% CPE、無CPEなど)。従って、トナーは、場合により、CPEを含んでいてもよい。
【0018】
目的のトナーは、最低固定温度が、融着がバッチ反応器で起こることを除いて同様のトナーの最低固定温度よりも少なくとも約4℃低く、少なくとも約5℃低く、少なくとも約6℃低く、またはバッチ反応器で融着した従来のトナーの最低固定温度よりも低い。
【0019】
目的のトナーは、従来のトナーでみられる量(例えば、約8重量%)と比較して、少ない量のゲルを含む。従って、目的のトナーは、ゲルの量が約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、またはもっと少ない量であり、0%、ゲルなし、無ゲル、すなわち、目的のトナーにゲルを使用しないか、またはゲルが含まれない状態を含む。従って、トナーは、場合により、ゲルを含んでいてもよい。
【0020】
連続的なプロセスは、もっと少ないデバイスを必要とし、もっと均一な結果(例えば、低い幾何標準偏差(GSD)を有する粒子)を与え、製造費用を下げ、所定の期間(一般的に、バッチ融着プロセスと共に用いるよりも短い期間)で高い収率を与える。一度に少ない量の材料が処理されるため、品質の制御を管理するのが容易である。ロットごとの変動は、温度の制御、反応条件の均一さ、短い処理時間、他の処理パラメータの良好な制御に起因して減少させることができる。例えば、バッチプロセスの反応容器中の反応条件は、多くは、バッチの領域によって変動し、例えば、望ましい温度は、攪拌した場合であっても、反応容器の内部表面に沿った部分のみ、または温度を制御するデバイスまたは要素の付近のみで得られる場合があり、バッチ反応器の種々の範囲および領域で、例えば、反応容器の壁付近の材料と、反応容器の中央部の材料との間で、領域的に異なる条件の微細環境を生じる。
【0021】
本開示の連続的な融着プロセスを実施するために、任意の連続装置を使用してもよい。連続デバイスは、デバイス内のスラリー温度を操作するために、1つ以上の温度を制御または調整するデバイスを備えていてもよい。例えば、当該技術分野で知られているように、シェル−管型の熱交換器、スパイラル型の熱交換器、プレート−フレーム型の熱交換器、加熱コイルまたは要素などの任意の既知の温度を制御または調整するデバイスを使用してもよい。保持タンク、ポンプおよび受け器となるタンクを、目的の装置とともに使用してもよい。保持タンクは、粒子が製造されたバッチ反応器であってもよい。
【0022】
従って、粒子スラリーが、保持タンクから、またはバッチ反応器、または目的の連続融着反応器の中、または目的の連続融着反応器にスラリーが直接流れる連続反応器から与えられてもよい。粒子スラリーが保存される場合、スラリーを処理し、例えば、EAプロセス後の粒子の成長を止める条件を概算することができる。従って、例えば、スラリーが低温に維持される場合、スラリーを、例えば、RTまたは約40℃〜約50℃の温度まであたためてもよい。温度を上げると、適切な流体の流れを促進することができる。
【0023】
例えば、目的の反応器の第1の部分の中にある粒子中に存在する樹脂のTより高い温度に温度を上げて融着を行うことができるようにスラリーがさらされ、次いで、粒子は、目的の反応器の第3の部分の中で融着を止めるために粒子のTより低い温度にさらされ、融着は連続的である。
【0024】
粒子スラリーは、反応器から、または保持タンクから抜き取られ、任意の手段によって目的の連続反応器に移動され、スラリーは、第1の温度制御デバイス(第1の部分)を通って流れ、スラリーの温度は、迅速な融着を可能にするために、例えば、少なくとも約80℃、少なくとも約85℃、少なくとも約87.5℃、少なくとも約90℃、またはもっと高い温度まで上がる。
【0025】
凝集し、加熱された粒子スラリーは、融着を可能にするための第1の高い温度を有し、場合により、滞留反応器(第2の部分)を通って流れ、望ましいレベルの融着が起こるのに適切な時間を与える。滞留時間の反応器は、第2の温度制御デバイスを備えていてもよい。滞留時間の反応器は、流路または導路の内側の直径を大きくするように改変された部分であってもよく、この場所で、第1の部分または第1の部分からの導路から流速を下げることができる。滞留時間の反応器中のスラリーの局所的な滞留時間は、約0.5分〜約10分、約35秒〜約9分、約40秒〜約8分、約50秒〜約5分、約1分〜約4分であってもよいが、これらの範囲からはずれた時間を設計上の選択肢として使用してもよい。
【0026】
流速、流路の大きさまたは直径、流路の長さ、スラリーの粘度などに依存して、目的のデバイスの滞留時間の反応器または第2の部分を必要とすることなく、融着を行ってもよい。従って、第1の温度制御デバイスを備える目的のデバイスの第1の部分からの流路および導路は、第1の温度制御デバイスを備える第1の部分から、スラリーの温度を下げるために第3の部分に移動するときに、内部を通るスラリーが確実に高い融着温度に維持されるように第2の温度制御デバイスを備えていてもよい。本明細書に記載されるように、例えば、目的のデバイスのパラメータ、容量、駆動するデバイス、スラリーの流速、スラリーの粘度、滞留時間など、目的のデバイスの構造および構成の中心がスラリーの温度および融着のための時間である目的の反応器の設計上の選択肢に依存して、第2の部分は任意要素である。
【0027】
滞留時間の反応器(目的のデバイスの任意要素の第2の部分)に滞留した後、または融着が完結したときに流路または導路を通った後、融着された粒子スラリーが、別の温度制御デバイスを備える連続デバイスの一部である第3のデバイス(第3の部分)を通ってもよい。ここで、融着を止めるために、スラリーの温度を、例えば、樹脂のTより下の温度まで下げる。この温度は、約40℃未満またはRT(例えば、約20℃〜約25℃)、またはもっと低くてもよい。次いで、融着された粒子スラリーが急冷され、連続装置を出て、例えば、受け器であるタンクへと出ていく。
【0028】
または、高温で急冷された粒子スラリーは、連続融着反応器の第1の部分または第2の部分から、低温で受け器であるタンク(例えば、樹脂のTより低い温度またはRT付近に冷やされた水を含むか、またはジャケットが付いたタンク)へと直接放出されてもよい。
【0029】
目的のデバイスの3つの部分は、それぞれ、スラリーの温度を所望の温度に到達させ、これを維持し、望ましい温度を望ましい期間維持するために、1つ以上の個々のデバイスを備えていてもよい。特定の融着温度に達し、融着を行うための特定の時間の長さであれば、本明細書に教示するように条件を変えることができる。これらの2つの条件は、例えば、スラリーの流速、デバイスの寸法、スラリーの粘度などを考慮することによって達成することができる。従って、例えば、目的のデバイスの第1の部分は、スラリーの温度を融着温度まで上昇させるか、または上げるために1つ、2つ、またはもっと多いHEXデバイスを備えていてもよい。
【0030】
最終的な融着された粒子スラリーは、メジアン直径(D50)が約3μm〜約9μm、約3.5μm〜約8μm、約4μm〜約7μmの範囲の融着された粒子を含む。融着された粒子スラリーは、GSDおよび/またはGSDが約1.05〜約1.35、約1.05〜約1.3、1.35未満、約1.3未満、約1.25未満であってもよい。GSDおよび他の粒子パラメータおよび粒子の集合のパラメータは、例えば、市販のデバイス、例えば、製造業者によって推奨されるように使用されるBeckman Coulter MULTISIZER3を用い、既知の材料および方法を実施して得ることができる。粒子の累積割合84%が得られる粒子直径は、体積D84またはDv84と定義される。いくつかの実施形態において、集合は、約16μmより大きな粒子、約17μmより大きな粒子、約18μmより大きな粒子を含まず、これは、粒子のD50の約2倍より大きい。粒径がD50よりも少なくとも約2μm小さい微粒子の量は、粒子の集合の約10%未満、約8%未満、約6%未満であってもよい。融着された粒子は、真円度が約0.90〜約0.99、約0.91〜約0.98であってもよい。真円度は、例えば、Sysmex Corporationから市販されるFlow Particle Image Analyzerを用いて測定されてもよい。
【0031】
明確にするために特定の用語を以下の記載で使用しているが、これらの用語は、説明のために選択された実施形態の特定の構造のみを指すことを意図しており、本開示の範囲を定義したり、または限定したりすることを意図していない。以下の記載において、同様の数字表示は、同様の機能を有する構成要素を指す。
【0032】
目的の樹脂は、「生物由来」であってもよく、全体的、または一部が(例えば、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも90重量%が)生物学的産物または再生可能な材料(植物、動物および微生物の材料を含む)で構成される。一般的に、生物由来の材料は、「生分解性」であり、すなわち、実質的に生分解性であるか、または完全に生分解性であり、実質的にとは、材料の50%より多く、60%より多く、70%より多く、またはもっと多くが、生物学的手段または環境的手段(例えば、数日間、数週間、1年またはもっと長い期間の微生物、動物、光、熱、植物などによる作用)によって、元々の分子から別の形態または分子へと分解することを意味する。生分解性の材料は、持続可能な材料である。
【0033】
特段の指示がない限り、句、節または文章において、ある値が「約」によって修正されておらず、他の値が「約」によって修正されている場合でない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される量、条件などを表現するあらゆる数字は、あらゆる場合に「約」という用語で修正されていると理解すべきである。この場合に、その特定の値が示される。従って、「約」という修飾語が使用されていない場合、等価な値は、その値に適用されず、実際に引用されている値のみを意図している。「約」は、述べられている値の10%以下の変位を示すことを意味する。さらに、本明細書で使用する場合、「等価」、「同様」、「本質的に」、「実質的に」、「おおよそ」、「〜と合う」という用語またはこれらの文法的な変形語は、一般的に受け入れられる定義を有するか、または少なくとも「約」と同じ意味であると理解される。「約」という修飾語は、2個の端点の絶対値によって定義される範囲を開示しているものと考えるべきである。例えば、「約2〜約4」という表現は、「2〜4」の範囲も開示する。
【0034】
「二次元」またはその文法上の形態(例えば、2−D)は、機械的な測定デバイスを使用せずに、実質的に測定可能または認識可能な深さを持たない構造または表面に関することを意味する。一般的に、表面は、平坦なものとして特定され、高さと幅を強調し、深さまたは厚みを含まない。従って、例えば、トナーが表面に塗布され、画像またはコーティングを生成し、一般的に、融合したトナーの層は、厚みが約1μm〜約10μmである。この場合でも、平坦な表面へのトナーの塗布は、本明細書では、二次元塗布と考えられる。表面は、例えば、シートまたは紙であってもよい。この定義は、分子レベルでの数学的または科学的な定義を意味しておらず、監視者または観察者の目によるものを意味し、厚みは含まれない。トナーの層が厚いほど(例えば、表面に「盛り上がったレタリング」を与えるものとして定義され得るもの)は、本明細書の目的のために、2−Dの定義に含まれる。
【0035】
「三次元」またはその文法上の形態(例えば、3−D)は、例えば、表面または構造に塗布される必要がなく、自動的に、および/または厚みもしくは深さを有し得る形態、形状、構築物、物体などを得るために凝集するか、または組み立てられるトナーの複数の層または粒子の堆積で構成される構造に関することを意味する。印刷は、本明細書で使用される場合、3−D構造を製造することも含む。表面または構造への印刷は、複数のトナー層の堆積によって3−D構造を作成することを含むように本明細書で使用される。多くは、第1の層は、支持材、表面、基材または構造などに印刷される。連続したトナー層がその上に配置され、すでに堆積した(場合により、接着または固化した)1つ以上のトナー層が、本明細書では、表面または基材と考えられる。
【0036】
重合後には、モノマーは変化することがあり、もはや元々の反応剤と同一ではない場合もあるが、ポリマーは、ポリマーを構築するために使用される1つ以上の構成モノマーによって本明細書で特定または命名することができる。従って、例えば、ポリエステルは、多くは、ポリ酸モノマーまたはポリ酸成分と、ポリアルコールモノマーまたはポリアルコール成分とで構成される。従って、トリメリット酸反応剤を使用してポリエステルポリマーを製造する場合、得られたポリエステルポリマーは、本明細書でトリメリット酸ポリエステルとして特定することができる。モノマーは、ポリマーを製造するための試薬であり、従って、ポリマーの構成成分および一体化部分であり、共有結合して化学部分の鎖を生成し、ポリマーを含む化学部分の骨格または線形の配列を構成する。
【0037】
「集合」は、目的の連続プロセスまたは半連続プロセスで得られる粒子の集合体を指す。粒子の集合体は、1種類以上のポリマーを含んでいてもよく、樹脂粒子を使用してトナーを構築する場合、用途に依存して、例えば、着色剤、ワックス、界面活性剤などの他の成分を含んでいてもよい。樹脂粒子の集合は、この集合が本明細書に教示される連続的な融着プロセスから直接得られる限り、シェル、表面添加剤および/または改変を含んでいてもよい。集合のパラメータは、本明細書に教示されるように、または当該技術分野で知られているように得ることができる。
【0038】
「分級されていない」とは、樹脂粒子の集合が、融着の後、粒子の集合の粒径の値を決定する前に、任意の様式で分けられておらず、分類されておらず、精製されておらず、または処理されていないことを意味する。
【0039】
「微粒子」または「微粒子含有量」は、望ましい粒子よりも小さい粒子を指す。従って、実質的な微粒子含有量は、右に向かって粒径が大きくなっていく曲線を有するグラフ上の分布において、1つより多い粒子ピークまたは単一のピークを含み、平均値または平均粒径の左側にショルダー部またはテール部を有するか、または、ピークが大きな標準偏差を有し、幅広く、左方向にゆがんだ曲線によって表すことができるような粒度分布を与えることがある。粒子の統計学的に許容可能な粒径より小さな粒子の比率の概算値として、粒子の集合の分布から得られるD50n/D16n比を使用してもよい。
【0040】
「粗粒子」または「粗粒子含有量」は、望ましい粒子よりも大きい粒子を指す。従って、実質的な粗粒子含有量は、右に向かって粒径が大きくなっていく曲線を有するグラフ上の分布において、1つより多い粒子ピークまたは単一のピークを含み、平均値または平均粒径の右側にショルダー部またはテール部を有するか、または、ピークが大きな標準偏差を有し、幅広く、右方向にゆがんだ曲線によって表すことができるような粒度分布を与えることがある。粒子の統計学的に許容可能な粒径より大きな粒子の比率の概算値として、粒子の集合の分布から得られるD84v/D50v比を使用してもよい。
【0041】
化合物の「C/O」比、またはトナーもしくは担体の表面での「C/O」比は、分子レベルで、化合物の炭素原子と酸素原子の相対量、またはトナーまたはコーティングされた担体表面での炭素原子と酸素原子の相対量である。複数の分子構造において、C/O比は、分子式がわかっている場合に確認することができる。例えば、担体コーティングまたはトナーの分子複合体について、C/O比は、コーティングまたはトナー中の成分およびその相対量の分析によって概算することができる。トナーまたは担体の表面のC/O比は、例えば、Physical Electronics(MN)、Applied Rigaku Technologies(TX)、Kratos Analytical(UK)などから入手可能なデバイスを用い、例えば、X線光電子分光法(XPS)によって決定することができる。適切なC/O比は、少なくとも約4、少なくとも約4.1、少なくとも約4.2、またはもっと大きい。
【0042】
本出願の明細書および特許請求の範囲の数値は、数値を決定するために本出願で記載される種類の従来の測定技術の実験誤差より小さい値だけ述べられている値とは異なる有効桁数および数値を有する同じ数まで小さくすると同じであるような数値を含むと理解すべきである。
【0043】
本明細書に開示するすべての範囲は、引用している終点を含み、独立して組み合わせることができる(例えば、「2グラム〜10グラム」の範囲は、明示的に述べられているか否かによらず、終点である2グラムと10グラムを含み、すべての中間値を含む)。本明細書に開示される範囲の終点および任意の値は、正確な範囲または値に限定されず、これらの値は、これらの範囲および/または値を概算する値を含むほどには十分に不正確である。
【0044】
(トナー粒子スラリー)
目的のデバイスで融着させることが可能な粒子は、製造される様式によって制限されないが、以下の記載は、EAプロセスから得られる粒子に関するものであり、粒子の成長もしくは凝集を止めるか、または凍結させるものである。
【0045】
本開示のプロセスは、初期のトナー粒子のスラリーから始まり、この粒子を融着し、刺繍的なトナー粒子を与え、少なくとも1つの温度制御デバイスを通って移動し、スラリーの温度を融着温度まで上げ、粒子の融着を可能にし、次いで、別の融着制御デバイスを通り、スラリー温度を例えばRTまで下げる。次いで、最終的なトナー粒子を、トナーおよび画像形成の分野で知られているように、1種類以上の添加剤と合わせてもよく、担体などと合わせてもよい。
【0046】
目的の連続反応器で処理される粒子スラリーは、粒子が溶媒(例えば、水)の中に損じする初期の未完成で不完全なプレトナーを含む。粒子は、1種類以上の樹脂(すなわち、ラテックス)、場合により、乳化剤(すなわち、界面活性剤)、1種類以上の着色剤、1種類以上のワックス、凝集剤、凝固剤および/または1種類以上の添加剤などを含む。
【0047】
本開示の粒子は、トナーを製造するために使用可能な任意の既知のポリマー材料、例えば、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリエステルなど、およびこのような使用に適したこれらの組み合わせなどを含む。本発明の開示内容は、ポリエステルによって例示される。
【0048】
いくつかの実施形態において、樹脂粒子は、1種類の結晶性樹脂と、1種類以上のアモルファス樹脂、例えば、少なくとも2種類のアモルファス樹脂とを含んでいてもよい。ラテックスを作製するために利用されるポリマーは、米国特許第6,593,049号および同第6,756,176号に記載される樹脂、または米国特許第6,830,860号に記載されるアモルファスポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の混合物を含め、ポリエステル樹脂であってもよい。
【0049】
少なくとも2種類のアモルファスポリエステル樹脂が利用される場合、片方のアモルファスポリエステル樹脂が高い分子量(HMW)を有していてもよく、第2のアモルファスポリエステル樹脂が低い分子量(LMW)を有していてもよい。
【0050】
HMWアモルファス樹脂は、例えば、数平均分子量(M)が、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される場合、約55,000より大きくてもよい。HMWポリエステル樹脂は、酸価が約8〜約20mg KOH/グラムであってもよい。HMWアモルファスポリエステル樹脂は、多くの商業的な供給源から入手可能であり、種々の融点、例えば、約30℃〜約140℃を有していてもよい。
【0051】
LMWアモルファスポリエステル樹脂は、例えば、Mが50,000以下である。LMWアモルファスポリエステル樹脂は、商業的な供給源から入手可能であり、酸価が約8〜約20mg KOH/グラムであってもよい。LMWアモルファス樹脂は、開始Tが、例えば、示差走査熱量測定(DSC)によって測定される場合、例えば、約40℃〜約80℃であってもよい。
【0052】
ポリエステルラテックス(例えば、ポリ酸およびポリオール)を調製するのに適した任意のモノマーを使用してトナー粒子を作製してもよい。触媒を使用してもよい。あらかじめ作製したポリエステルポリマーを溶媒に溶解してもよい。
【0053】
結晶性樹脂の例としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイソブチレート、エチレンコポリマー、ポリプロピレン、これらの混合物などが挙げられる。具体的な結晶性樹脂は、ポリ(エチレン−アジペート)、ポリプロピレン−アジペート)、ポリ(ブチレン−アジペート)、ポリ(ペンチレン−アジペート)、ポリ(ヘキシレン−アジペート)、ポリ(オクチレン−アジペート)、ポリ(エチレン−サクシネート)、ポリ(プロピレン−サクシネート)、ポリ(ブチレン−サクシネート)、ポリ(ペンチレン−サクシネート)、ポリ(ヘキシレン−サクシネート)、ポリ(オクチレン−サクシネート)、ポリ(エチレン−セバケート)、ポリ(プロピレン−セバケート)、ポリ(ブチレン−セバケート)、ポリ(ペンチレン−セバケート)、ポリ(ヘキシレン−セバケート)、ポリ(オクチレン−セバケート)などを含んでいてもよい。ポリアミドの具体例としては、ポリ(エチレン−アジパミド)、ポリ(プロピレン−アジパミド)、ポリ(ブチレン−アジパミド)、ポリ(ペンチレン−アジパミド)、ポリ(ヘキシレン−アジパミド)、ポリ(オクチレン−アジパミド)、ポリ(エチレン−スクシンアミド)およびポリ(プロピレン−セベカミド)が挙げられる。ポリイミドの例としては、ポリ(エチレン−アジピミド)、ポリ(プロピレン−アジピミド)、ポリ(ブチレン−アジピミド)、ポリ(ペンチレン−アジピミド)、ポリ(ヘキシレン−アジピミド)、ポリ(オクチレン−アジピミド)、ポリ(エチレン−スクシンイミド)、ポリ(プロピレン−スクシンイミド)およびポリ(ブチレン−スクシンイミド)が挙げられる。
【0054】
結晶性樹脂は、トナー成分(すなわち、水相より少ないスラリー、すなわち、固形内容物)の約5〜約30重量%、約15〜約25重量%の量で存在していてもよい。結晶性樹脂は、約30℃〜約120℃、約50℃〜約90℃の種々の融点を有していてもよい。結晶性樹脂は、数平均分子量(M)が、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される場合、約1,000〜約50,000、約2,000〜約25,000であってもよく、Mが、GPCによって決定される場合、約2,000〜約100,000、約3,000〜約80,000であってもよい。樹脂の分子量分布(M/M)は、約2〜約6、約3〜約5であってもよい。
【0055】
アモルファス樹脂が知られており、当該技術分野で知られているように製造されてもよく、または商業的に購入することができる。
【0056】
ラテックスは、生分解性の試薬(例えば、植物、動物または微生物から得られる試薬)を含んでいてもよく、環境への負荷が低く、持続可能であり、生分解性である樹脂粒子が得られる。天然に存在するポリオール、例えば、イソソルビド、エリトリトール、マンニトールなどと共に、例えば、アゼライン酸、クエン酸などの天然に存在するポリ酸が知られている。
【0057】
目的の粒子を製造するために使用可能な他の適切なモノマーは、スチレン、アクリレート、例えば、アクリル酸アルキル、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ブチル、2−クロロエチルアクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート(β−CEA)、アクリル酸フェニル、メタクリレートなど;ブタジエン、イソプレン、アクリル酸、アクリロニトリル、スチレンアクリレート、スチレンブタジエン、スチレンメタクリレートなど、例えば、α−クロロアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、ブタジエン、イソプレン、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、ビニルエーテル、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど;ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルおよびブチル酸ビニル;ビニルケトン、例えば、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなど;ハロゲン化ビニリデン、例えば、塩化ビニリデン、ビニリデンクロロフルオリドなど;N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン、メタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニル−N−メチルピリジニウムクロリド、ビニルナフタレン、p−クロロスチレン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンおよびこれらの混合物を含む。モノマー混合物を使用し、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー、交互コポリマー、グラフトコポリマーなどを製造してもよい。
【0058】
得られるラテックスは、酸基を有していてもよい。酸基としては、カルボン酸、無水カルボン酸、カルボン酸塩、これらの組み合わせなどが挙げられる。カルボン酸基の数は、望ましい特徴を有する樹脂を得るための出発物質および反応条件を調節することによって制御されてもよい。
【0059】
これらの酸基は、凝集前または凝集中に中和剤(例えば、塩基溶液またはバッファー)を導入することによって中和されてもよい。適切な塩基としては、限定されないが、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ピリジンおよび誘導体、ジフェニルアミンおよび誘導体、ポリ(エチレンアミン)および誘導体、これらの組み合わせなどが挙げられる。これらの化合物は、単独で、または組み合わせて、適切な溶媒(例えば、水)に溶解し、バッファーを生成することができる。中和後に、樹脂の親水性、従って、乳化性は、このような中和プロセスを行わなかった樹脂と比較して、向上していてもよい。
【0060】
分散物またはエマルション中に乳化剤または界面活性剤が存在していてもよく、乳化剤または界面活性剤は、樹脂ラテックス、着色剤、ワックスなどを作製するために使用するのに適した任意の界面活性剤を含んでいてよく、それぞれ、1種類以上の界面活性剤を用いた分散物またはエマルションであってもよい。利用可能な界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、非イオン系の界面活性剤またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0061】
アニオン系界面活性剤としては、サルフェートおよびスルホネート、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレン硫酸ナトリウム、ジアルキルベンゼンアルキルサルフェートおよびスルホネート、酸、例えば、アビエチン酸、これらの組み合わせなどが挙げられる。他の適切なアニオン系界面活性剤としては、Dow Chemical Company製のアルキルジフェニルオキシドジスルホネートDOWFAX(登録商標)2A1、および/またはTayca Corporation(日本)製の分枝鎖ナトリウムドデシルベンゼンスルホネートTAYCA POWER BN2060が挙げられる。
【0062】
非イオン系界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルおよびジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、例えば、Rhone−PoulencからIGEPALおよびANTAROX 897(商標)として入手可能なものが挙げられる。適切な非イオン系界面活性剤の他の例としては、SYNPERONIC(登録商標)PR/FおよびSYNPERONIC(登録商標)PR/F 108として市販されるものを含め、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのブロックコポリマーが挙げられる。
【0063】
カチオン系界面活性剤の例としては、例えば、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、ベンザルコニウムクロリド、セチルピリジニウムブロミド、トリメチルアンモニウムブロミド、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物塩、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、Alkaril Chemical Companyから入手可能なMlRAPOL(登録商標)およびALKAQUAT(登録商標)、Kao Chemicalsから入手可能なSANISOL(登録商標)(ベンザルコニウムクロリド)などが挙げられる。
【0064】
トナー試薬スラリー中に着色剤が存在していてもよく、着色剤としては、顔料、染料、顔料と染料の混合物、顔料混合物、染料混合物などが挙げられる。着色剤は、例えば、カーボンブラック、シアン、イエロー、マゼンタ、レッド、オレンジ、ブラウン、グリーン、ブルー、バイオレット、またはこれらの混合物であってもよい。
【0065】
着色剤は、トナー試薬スラリー中、固形分(すなわち、スラリーの固形分)の0重量%(透明または無色)〜約25重量%、約2〜約15重量%の量で存在していてもよい。
【0066】
トナー試薬スラリー中にワックスも存在していてもよい。適切なワックスとしては、例えば、約50〜約500nm、約100〜約400nmの範囲のミクロン未満のワックス粒子が挙げられる。ワックスは、低融点トナーまたは超低融点トナーに使用するために、もっと低い融点を有していてもよい。
【0067】
ワックスは、例えば、天然植物ワックス、天然動物ワックス、鉱物ワックスおよび/または合成ワックスであってもよい。天然植物ワックスの例としては、例えば、カルナバワックス、カンデリラワックス、日本ろう、ベーベリろうが挙げられる。天然動物ワックスの例としては、例えば、蜜ろう、カルタゴろう、ラノリン、ラックワックス、シェラックワックス、クジラろうが挙げられる。鉱物ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、微晶質ワックス、モンタンワックス、オゾケライトワックス、セレシンワックス、ペトロラタムワックス、石油ワックスが挙げられる。本開示の合成ワックスとしては、例えば、Fischer−Tropschワックス、アクリレートワックス、脂肪酸アミドワックス、シリコーンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0068】
ポリプロピレンワックスおよびポリエチレンワックスの例としては、Allied ChemicalおよびBaker Petroliteから市販されているもの、Michelman Inc.およびDaniels Products Companyから入手可能なワックスエマルション、Eastman Chemical Products,Inc.から市販のEPOLENE N−15、三洋化成工業株式会社から入手可能な低重量平均分子量ポリプロピレンViscol 550−Pおよび同様の材料が挙げられる。
【0069】
いくつかの実施形態において、ワックスは、官能基化されていてもよい。ワックスを官能基化するために加えられる基の例としては、アミン、アミド、イミド、エステル、四級アミン、および/またはカルボン酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、官能化されたワックスは、アクリルポリマーエマルション、例えば、Joncryl 74、89、130、537、538(すべてJohnson Diversey,Inc.から入手可能)、またはAllied Chemical、Petrolite CorporationおよびJohnson Diversey,Inc.から市販されている塩素化ポリプロピレンおよび塩素化ポリエチレンであってもよい。
【0070】
ワックスは、トナー試薬混合物中の固形分の約0.01〜約30重量%、約2〜約20重量%の量で存在していてもよい。
【0071】
凝集剤(または凝固剤)がトナー試薬混合物中に存在していてもよい。錯化を引き起こすことが可能な任意の凝集剤を使用してもよい。アルカリ土類金属または遷移金属の塩を凝集剤として利用してもよい。凝集剤の他の例としては、多価金属ハロゲン化物、多価金属スルホシリケート、場合により、カチオン系界面活性剤と組み合わせた一価、二価または多価の塩、これらの混合物などが挙げられる。無機カチオン系凝固剤としては、例えば、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリアルミニウムスルホシリケート(PASS)、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛または硫酸マグネシウムが挙げられる。例えば、スラリーは、アニオン系界面活性剤を含んでいてもよく、対イオンとなる凝固剤は、ポリハロゲン化金属塩またはポリスルホケイ酸金属塩であってもよい。凝固剤は、固形分の約0.01〜約2重量%、約0.1〜約1.5重量%の量で使用される。
【0072】
例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グルコナール、ヒドロキシル−2,2’イミノジコハク酸(HIDS)、ジカルボキシルメチルグルタミン酸(GLDA)、メチルグリシジル二酢酸(MGDA)、ヒドロキシジエチルイミノ二酢酸(HIDA)、グルコン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウムなどのpH制御剤は、pHの制御、カチオン封鎖に役立ってもよく、または凝集プロセス中および凝集プロセスの後の部分で役立ってもよい。
【0073】
固形分の約0〜約10重量%、約0.5〜約7重量%の量の電荷添加剤が、樹脂粒子および他のトナー試薬と共に存在していてもよい。このような電荷添加剤の例としては、ハロゲン化アルキルピリジニウム、硫酸水素塩、負電荷向上添加剤、例えば、米国特許第4,298,672号に開示されるものを含むアルミニウム錯体など;米国特許第4,338,390号に開示されているものを含む有機サルフェートおよび有機スルホネートの組成物;セチルピリジニウムテトラフルオロボレート;ジステアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェート;アルミニウム塩、例えば、BONTRON E84(商標)またはE88(商標)(Orient Chemical Industries,Ltd.)、これらの組み合わせなどが挙げられる。このような表面添加剤の例としては、例えば、金属塩、脂肪酸の金属塩、コロイド状シリカ、金属酸化物、チタン酸ストロンチウム、これらの混合物などが挙げられる。表面添加剤は、固形分の約0.1〜約10重量%、約0.5〜約7重量%の量で存在していてもよい。他の添加剤としては、ステアリン酸亜鉛およびDegussaから入手可能なAEROSIL R972(登録商標)が挙げられる。米国特許第6,190,815号および同第6,004,714号のコーティングされたシリカも、固形分の約0.05〜約5重量%、約0.1〜約2重量%の量で存在していてもよい。
【0074】
場合により、凝集した粒子にシェル樹脂が塗布されてもよい。任意の既知の1種類以上の樹脂を使用してシェルを作製してもよく、当該技術分野で知られている実施方法を適用してもよい。
【0075】
トナー粒子と、流動補助添加剤を含む外部添加剤粒子とがブレンドされてもよく、添加剤は、トナー粒子表面に存在していてもよい。添加剤の例としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化スズ、これらの混合物などのような金属酸化物;コロイド状シリカおよびアモルファスシリカ、例えば、AEROSIL(登録商標)、金属塩および脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸カルシウムを含む)、または長鎖アルコールの金属塩、例えば、UNILIN 700およびこれらの混合物が挙げられる。適切な添加剤としては、米国特許第3,590,000号、同第3,800,588号および同第6,214,507号に開示されるものが挙げられる。
【0076】
それぞれの外部添加剤は、トナーの約0.1〜約5重量%の量で存在していてもいが、添加剤の量は、この範囲からはずれていてもよい。
【0077】
粒子スラリーは、約10〜約50重量%、約20〜約40重量%の固形分を溶媒(例えば、水)中に含んでいてもよいが、これらの範囲からはずれた固形分の量を使用し、例えば、連続反応器を流れる流体の粘度および流量を制御してもよい。
【0078】
(連続的な融着プロセス)
初期のトナー粒子は、任意のプロセスによって、例えば、バッチプロセスまたは連続的なプロセスのいずれかで製造することができる。この粒子を、融着前に、例えば、低い温度で製造し、保存してもよく、または、製造後に直接使用してもよい。この粒子は、目的の連続反応器またはマイクロ反応器を通って流れ、高温で迅速な融着が得られる。上に提示したように、未完成のトナー粒子を高温に短時間さらし、目的の最終的なトナー粒子を得る。トナー粒子を集め、場合により、洗浄してもよく、次いで、画像形成に適切なトナー粒子、例えば、担体などと組み合わせて1種類以上の表面添加剤を含むトナー粒子などを得るために、さらに処理されてもよい。
【0079】
粒径の測定、表面積、孔の大きさおよび他の測定は、例えば、Quantachrome(UK)、Malvern Instruments(UK)、Micromeritics(Norcross、GA)などの入手可能なデバイスを用い、例えば、電気音響、キャピラリーフローポロメトリー、気体吸着(BET)などの既知の技術を実施して得ることができる。
【0080】
本開示の連続的な融着プロセスによって、サイクル時間が短くなり、装置の洗浄に起因する中断時間が短くなり、固有の形態および構造を有する粒径が小さな粒子の均一な集合の収量が増える。これに加え、スラリーの加熱に使用されるエネルギーを回収し、全体的なエネルギー消費を減らし、効率を上げることができる。
【0081】
目的の連続的なプロセスによって作られる粒子は、例えば、高い温度、短い融着時間などのために、バッチ融着プロセスによって製造される粒子とは構造的に異なっている。これらの条件によって、例えば、トナー表面、トナー粒子内で異なる構造、トナー内部の異なる構造などが得られる。
【0082】
トナー粒子は、担体粒子と混合することによって、二成分現像剤組成物に配合されてもよい。現像剤中のトナー濃度は、現像剤の合計重量の約1〜約25重量%であってもよく、残りは担体である。しかし、望ましい特徴を有する現像剤組成物を達成するために、異なる割合のトナーおよび担体を使用してもよい。
【0083】
トナー粒子と混合するための担体粒子の例としては、トナー粒子とは反対の極性の電荷を静電的に与えることができる粒子が挙げられる。適切な担体粒子の具体例としては、顆粒状ジルコン、顆粒状ケイ素、ガラス、鋼鉄、ニッケル、フェライト、鉄フェライト、二酸化ケイ素、1種類以上のポリマーなどが挙げられる。他の担体としては、米国特許第3,847,604号、第4,937,166号、第4,935,326号に開示されるものが挙げられる。
【0084】
担体粒子は、コアと、コアの上にコーティングとを有していてもよく、コーティングは、帯電列に近接していないポリマーまたはポリマー混合物から作られてもよく、例えば、本明細書に教示されるもの、または当該技術分野で既知のものであってもよい。コーティングは、フルオロポリマー、スチレン、シランのターポリマーなどを含んでいてもよい。コーティングは、重量が、例えば、担体の約0.1〜約10重量%であってもよい。
【0085】
種々の手段、例えば、カスケードロール混合、タンブリング、粉砕、振とう、静電粉末雲噴霧、流動床混合、静電ディスク処理、静電カーテン処理などを使用し、担体コア表面にポリマーを塗布してもよい。次いで、担体コア粒子およびポリマーの混合物を、例えば、液体または粉末として加熱し、ポリマーを溶融し、担体コアに融合することができる。次いで、コーティングされた担体粒子を冷却し、その後、望ましい粒径になるように分級してもよい。
【0086】
目的のトナーは、電子写真式またはゼログラフィー式の画像形成デバイス、または例えば、粉末、紐状物、シートなどの形態で配置された構造またはデバイスがトナーから作られ、トナーを繰り返し堆積させ、例えば、加熱して、前に塗布された層に新しく塗布された層を溶け込ませることによって、新しく塗布された層に圧力を加えることなどによって、隣接するすでに塗布されたトナー層に、堆積したトナーを接着することによって、構造またはデバイスが、例えば、層状に徐々に作られる、3−Dを作成する実施形態での用途を見いだすことができる。
【実施例】
【0087】
以下の実施例は、本開示をさらに説明するためのものである。実施例は、単なる例示であり、ここに記載される材料、条件または処理パラメータに本開示を限定することを意図していない。
【0088】
(生物由来の樹脂の合成)
1LのBuchi反応器に、主にデヒドロアビエチン酸(195.7g)、グリセリンカーボネート(83.4g)および臭化テトラエチルアンモニウム触媒(1.63g)で構成されるロジン組成物を加えた。この混合物を170℃まで加熱し、酸価が1mg KOH/kg未満になるまで9時間維持した。次いで、この混合物に、ネオペンチルグリコール(63.9g)、ジプロピレングリコール(47.4g)、トリプロピレングリコール(28.3g)、テレフタル酸(215.8g)、コハク酸(20.85g)およびFASCAT 4100触媒(2.0g)を加えた。この混合物を5時間かけて165℃〜205℃に加熱し、pH約8で一晩維持した後、樹脂の軟化点が113℃〜123℃になるまで温度を215℃まで上げた。得られた生物由来の樹脂を分離した。
【0089】
20gal反応器中、バイオ樹脂、6%のカーボンブラック、9%のワックスおよび6.8%のCPEを合わせて誘導されたトナー凝集物を、凝集および凍結の後に得て、5.57μmの粒子(投入 D50v)を得た。
【0090】
次いで、表1に提示する種々の条件で、連続的な融着を行った。ベンチスケールの連続的な融着装置は、供給タンクと、2つの加熱する熱交換器と、滞留時間のセクションと、2つの熱を下げる熱交換器とからなっていた。「浴温度(bath temp)」は、2つの加熱する熱交換器の上のシェルの設定温度である。滞留時間の部分またはデバイスの大きさは、3つの実験すべて同じ240mLであり、流速は240mL/分であり、これは滞留時間1分間に等しい。次いで、国内の冷水(〜10℃)に入れた2つの熱を下げる熱交換器によって、トナーをほぼRTまで急冷した。粒子を、MULTISIZERおよびSysmex FPCA 2100デバイスを用いて分析した。
【0091】
この表において、浴温度は、目的の反応器の第1の部分を備える2つの加熱するHEXデバイスのジャケットの水温である。HEX2温度は、連続反応器または目的の第1の部分の第2の加熱するHEXを出ていくスラリーの温度であり、その内部のスラリーおよび粒子の融着温度を表す。「投入」は、目的のデバイスに入る粒子を示し、すなわち、デバイスの第1の部分に入る粒子を示し、「出力」は、目的のデバイスを出ていく粒子、すなわち、融着された粒子を示す。
【0092】
【表1】
【0093】
コントロールトナーとして、20ガロンのバッチ反応器からの凍結した凝集物を、Buchiバッチ反応器中、pH8、約90℃で1時間融着させた。
【0094】
融合の結果を以下の表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
3種類の実験トナーのMFTは、コントロールのバッチ式で融着されたトナーのMFTよりも約4〜7℃低かった。MFTが低いと、CPE樹脂の含有量を減らすことができ、そのため、連続的なEAプロセスの利点(例えば、処理時間の短縮)を達成しつつ、トナーの費用を下げることができる。