【課題を解決するための手段】
【0007】
課題の解決策は、請求項1の特徴によって定義される。本発明によれば、金属またはプラスチック加工工具用の圧力センサは、工具に接続可能なセンサハウジングを備える。さらに、圧力センサは、センサハウジング内に配置された圧力変換器を備える。さらに、圧力センサは、第1の鋳造適合性マークを有する第1の前面を有する。さらに、圧力センサは、第2の鋳造適合性マークを有する第2の前面を有する。第1の前面と第2の前面は、互いに対して調整可能である。
【0008】
本発明の圧力センサは、金属またはプラスチック加工工具内の1つの凹部または穿孔のみに取り付けることができるので、省スペースである。さらに、工具内への本発明の圧力センサの取り付けは、工具内に形成しなければならないのが1つの穿孔のみであるので、時間を節約し、費用を節約し、より簡単である。本発明の圧力センサは、これまでの従来の圧力センサまたは従来の日付スタンプのみを含む工具の後付けにも適している。すなわち、工具は、既に、本発明の圧力センサを挿入するのに使用可能な穿孔を有し、圧力測定と日付刻印の両方が可能である。さらに、単一の部品のみ、すなわち保管しなければならないのは本発明の圧力センサのみであり、2つの異なる部品、すなわち、従来の圧力センサと日付スタンプを保管しなくてもよくなるので、在庫保管が用意になる。
【0009】
本発明の解決策は、圧力センサが圧力センサ製造業者によって小型化されることおよび/または日付スタンプが日付スタンプ製造業者によって小型化されるということに基づくのではなく、圧力センサ内に日付スタンプを組み込むことに基づくので、全く新しいアプローチである。
【0010】
金属またはプラスチック加工工具は、具体的には、射出成形品を製造するために使用され得る鋳型である。
【0011】
センサハウジングは、少なくとも本発明の圧力センサの従来の部品を包囲する。本発明の圧力センサの従来の部品は、圧力測定に関係する。従来の圧力センサのセンサハウジングは、測定面を有する。本発明の圧力センサの動作中、従来の圧力センサのこの測定面は、測定される圧力に「直接」または「間接的に」さらされる。「直接」または「間接的に」測定される圧力は、測定面に影響を及ぼす。この場合、「直接」という用語は、従来の圧力センサの測定面が、圧力が測定される媒体と接触することを意味する。用語「間接的」は、従来の圧力センサの測定面と圧力が測定される媒体との間に圧力伝達要素が存在し、要素が媒体および従来の圧力センサの測定面の両方と接触するので、この「間接的な」ケースでは、従来の圧力センサの測定面が、圧力が測定される媒体と接触しないことを意味する。
【0012】
市販されている従来の圧力変換器は、圧電式、ピエゾ抵抗式、誘導式、容量式および/または電位差式の圧力変換器および/または抵抗線歪みによる圧力変換器のような圧力変換器として使用され得る。圧力変換器は、測定面に作用する圧力を力として取得する。
【0013】
従来の圧力センサ内に日付スタンプを組み込んで構成され得る本発明の圧力センサは、圧力が測定される媒体と接触する。この接触領域を前面と呼ぶ。前面は、異なる領域、すなわち、少なくとも第1の前面と第2の前面とに分割される。第1の前面と第2の前面とが一緒になって、本発明の圧力センサの前面全体を構成することが可能であり、つまり、このことは、前面全体が表現可能なマークに利用可能であるという利点になる。しかしながら、第1の前面と第2の前面とが一緒になって前面全体よりも小さい前面を構成することも可能である。これは、上述したように、センサハウジングの測定面が、圧力が測定される媒体と直接接触するケースであり、またこの測定面が第1の前面または第2の前面と同一でないケース、すなわち、測定面に鋳造適合性マークがないケースであり得る。さらに、1つまたは複数の追加の前面に1つまたは複数の追加の鋳造適合性マークを設け、1つまたは複数の追加の前面を互いに対して、および/または第1の前面ならびに/もしくは第2の前面に対して、調整可能にすることが可能である。
【0014】
第1の鋳造適合性マークおよび第2の鋳造適合性マークは、有利には、1つまたは複数の英数字および/または1つまたは複数の矢印のような1つまたは複数の標識を含む。鋳造適合性マークは、ベース領域に対する窪みおよび/または隆起によって形成され得る。本発明の圧力センサの前面を見ると、鋳造適合性マークは鏡像反転したように見えるかもじれない。
【0015】
第1の前面と第2の前面とが互いに対して調整可能であるため、第1の鋳造適合性マークと第2の鋳造適合性マークとは、互いに様々な異なる位置を取り得る。第2の鋳造適合性マークの位置に対する第1の鋳造適合性マークの各位置は、様々な位置に応じて他の鋳造適合性全体マークと異なる特定の鋳造適合性全体マークを形成する。このように、本発明の1つの同じ圧力センサは、第2の前面に対して第1の前面を調整することによって様々な異なる鋳造適合性全体マークを作成するのに使用され、マークは射出成形品上の異なる表示となり得る。異なる鋳造適合性全体マークを使用することによって作成され得る異なる表示の意味は、例えば、日付および/またはバッチ番号であり得る。
【0016】
第1の前面および第2の前面は、好ましくは特定の位置に適合するように互いに調整可能であり得る。これは、適切な方法で配置されたスナップイン要素によって達成され得る。
【0017】
調整は、手動で行われ得る。例えば、鋳造適合性マークの窪みに係合する調整工具を用いて、関係する前面に力を加えることにより、対応する前面を調整することができる。前面を調整するための力の方向は、前面に平行な平面内であり得る。調整はさらに、本発明の圧力センサの長手方向軸を中心としたトルクを加えることによって、前面が前記長手方向軸を中心として回転するように行われ得る。
【0018】
好適な実施形態では、第1の前面が圧力変換器に動作可能に接続される。
【0019】
この実施形態の利点は、第1の前面に加えられる圧力が、圧力変換器が配置されているセンサハウジングの測定面に伝達されるということである。したがって、圧力センサの動作中、第1の前面は、射出成形品に表示を刻印する機能を果たし、さらに第1の前面に第1の鋳造適合性マークが含まれることにより射出成形中に圧力を取得する機能を果たす。
【0020】
第1の前面が測定面を形成する場合、すなわち、第1の鋳造適合性マークがセンサハウジングの測定面に直接配置される場合、圧力センサの特に単純な設計が実現され得る。
【0021】
しかしながら、第1の前面と測定面との間に圧力伝達要素が存在することも可能である。この圧力伝達要素は、以下に説明するように、追加の特徴を有し得る。
【0022】
第1の前面が測定面を形成しない場合、第1の前面と測定面とは互いに前後に配置される、すなわち、圧力が測定される媒体から見ると、第1の前面が前に来て、測定面が後ろになる。
【0023】
非常に小さい測定面の場合には、第1の鋳造適合性マークまたは第2の鋳造適合性マークがそこに配置されていなくても、測定面は、圧力が測定される媒体と直接接触する、すなわち、第1の前面も第2の前面も、強制的に圧力変換器に動作可能に接続する必要がないという点が有利であり得る。
【0024】
別の好適な実施形態では、第1の前面は、第2の前面によって全体的に囲まれている。
【0025】
この実施形態は、例えば、第1の前面が、第2の前面に対する第1の前面の位置に応じて、第1の鋳造適合性マークが第2の鋳造適合性マークの特定の部分を指し示す標識または矢印を有する場合に、特に有利である。
【0026】
第1の前面は、円形であり得る。第2の前面は、第1の前面が配置される円形穴を有し得る。第1の前面は、第2の前面の穴を完全に埋めることができる。
【0027】
第1の前面はさらに、四角形、六角形または十二角形のような多角形の形状であってもよい。第2の前面は、第1の前面が第2の前面の穴を完全に埋めるように、対応する穴を有することができる。
【0028】
しかしながら、第2の前面が第1の前面を一部のみ取り囲むか、または第1の前面によって取り囲まれることは、当然可能である。
【0029】
別の好適な実施形態では、第1の前面および第2の前面は、実質的に共通平面内にある。
【0030】
このように、射出成形中の射出成形品への第1の鋳造適合性マークと第2の鋳造適合性マークとの刻印は、可能な限り同じ高さになる。射出成形部品が不必要に厚くなることは避けられる。
【0031】
しかしながら、第1の前面と第2の前面とが2つの平行であるが離間した平面に配置されることも可能である。この場合、第1の前面は突出し得、例えば、その周囲側壁には、第2の鋳造適合性マークの一部を指し示す突出部があり得、突出部は場合により第2の前面と重なる。
【0032】
第1の前面と第2の前面とが共通平面内に位置する場合、第1の前面と第2の前面との重なり部分がない場合がある。
【0033】
別の好適な実施形態では、第2の鋳造適合性マークを有する第2の前面は、ブッシング上に配置される。
【0034】
ブッシングは、特に管状であり、測定面の領域内のセンサハウジングの外径と等しいかそれより大きい内径を有する。結果として、ブッシングは、既存の従来の圧力センサの使用を可能にし、そのセンサハウジングは、測定面から第2の鋳造適合性マークを有するブッシングを適用するために使用され得る。この場合、ブッシングは、特定の領域においてセンサハウジング上に配置されていれば十分である。
【0035】
多角形の中空形材は、例えば、正方形、六角形または十二角形の中空形材をブッシングとして使用することができる。多角形の中空形材は、内部が中空の長手方向延長部を有し、その断面は、その長手方向軸に直交する内側および外側限界線として多角形を有する本体である。
【0036】
多角形の中空形材は、(丸い)ブッシングと比較すると、利点として、多角形の中空形材の内部または外側に位置し得る第1の鋳造適合性マークに対する第2の鋳造適合性マークの所定の位置決めが可能である。
【0037】
別の好適な実施形態では、ブッシングはセンサハウジングと接触している。
【0038】
この場合、ブッシングとセンサハウジングは同心状に配置される。このように、本発明の圧力センサの特に省スペース構造が実現され得る。
【0039】
あるいは、第2の鋳造適合性マークを有するブッシングとセンサハウジングとの間に一定の距離が存在してよい。この距離は、例えば、第1の鋳造適合性マークを有する追加のブッシング用のスペースとなる。このようなブッシングは、回転させることによって互いに対して容易に調整され得る。
【0040】
別の好適な実施形態では、ブッシングはセンサハウジングに固定接続される。
【0041】
この実施形態は、特に容易に製造され得る。
【0042】
ブッシングは、任意の既知の方法を適用して、例えば、ブッシングを強制的にねじ込むことによって、はんだ付けによって、溶接によって、および/または接着によって、センサハウジングに固定接続され得る。
【0043】
しかしながら、既に上述したように、ブッシングをセンサハウジングに固定接続することは必須ではない。ブッシングはさらに、移動することができる状態を維持したままセンサハウジングと接触してもよい、またはさらに一定の距離離間して配置されてもよい。
【0044】
別の好適な実施形態では、第1の前面がセンサハウジングに対して回転できるように、第1の前面が調整要素上に配置される。
【0045】
この場合、調整要素は、センサハウジングの測定面と接触している圧力伝達要素の形態で設計され得る。しかしながら、調整要素は、第2の前面を囲むブッシングまたは多角形の中空形材として設計されてもよい。
【0046】
別の好適な実施形態では、ブッシングはセンサハウジングに固定接続され、第1の前面はセンサハウジングに対して第1の前面が回転できるように調整要素上に配置される。
【0047】
このように、前面の互いの調整が特に容易に実施され得、既存の従来の圧力センサが改造せずに使用され得る。
【0048】
別の好適な実施形態では、ブッシングは、調整要素を取り囲む。
【0049】
この実施形態は、特に省スペースである。
【0050】
別の好適な実施形態では、第1の前面は、センサハウジングに固定接続される。
【0051】
この実施形態も、容易に製造され得る。
【0052】
本発明はさらに、金属またはプラスチック加工工具に関する。本発明の圧力センサは、工具上に配置される。
【0053】
このような工具は、工具内に従来の圧力センサおよび従来の日付スタンプを取り付けるのに工具内の取付スペースが不十分であっても、品質に優れ、例えば、日付スタンプを有する射出成形品を製造するために使用され得る。
【0054】
本発明の圧力センサは、凹部に、特に工具内に位置する穿孔に挿入され得る。本発明の圧力センサは、工具に固定的にまたは調整可能に接続され得る。圧力センサは、ポジティブロックおよび/または摩擦ロックの方法で工具に接続され得る。このように、圧力センサは、長手方向の止め具またはねじ込み式の接続によって工具に接続され得る。
【0055】
別の好適な実施形態では、工具に取り付けられたセンサハウジングは、工具に対して調整され得、特に回転され得る。
【0056】
その結果、工具の特に単純な構造が実現され得る。例えば、測定面が第1の前面を同時に形成するように、測定面には第1の鋳造適合性マークが設けられ得る。そのことにより、第1の前面は、工具に対して調整され得る、特に回転され得るので、第2の鋳造適合性マークを有する第2の前面は、第2の前面に対する第1の前面の調整機能を損なうことなく、工具に固定接続され得る。
【0057】
また、第2の鋳造適合性マークに相当するマークを工具上に直接配置することも考えられる。この場合、圧力センサ上の第2の鋳造適合性マークは絶対的に必要であるとは限らない。しかしながら、第2の鋳造適合性マークは、特に工具を変更しなくても容易に交換可能であるため、本発明の圧力センサ上に、例えば、ブッシング上に第2の鋳造適合性マークを配置するのがより有利である。
【0058】
その他の点に関しては、工具に直接配置される第2の鋳造適合性マークに相当するマークのケースは、この実施形態もまた本発明の理論に属するので、本発明の圧力センサの特殊なケースと見なされるであろう。
【0059】
本発明はさらに、金属またはプラスチック加工工具を製造または後付けする方法に関する。該方法は、工具内に凹部を作成するまたは露出させるステップと、工具内の凹部に本発明の圧力センサを取り付けるステップとを含む。
【0060】
凹部は、具体的には穿孔であり得る。
【0061】
該方法は、例えば、取付スペースの限られた工具であっても、同時に圧力測定と日付刻印とを可能にするという利点を提供する。例えば、工具の異なる場所に2つの凹部または穿孔用のスペースがない場合、取付スペースが制限される。
【0062】
さらに、既に日付スタンプを有するが、圧力測定はできない工具が使用されている。本発明の方法を用いれば、工具を再加工する必要もなく、工具から日付スタンプを取り外して、本発明の圧力センサと交換することができる。別の穿孔を製造するような再加工作業では、通常、工具を射出成形機から取り外す必要がある。このことは、本発明の方法を使用することによって回避され得、その結果、射出成形機の停止時間を最小限に抑えることができる。
【0063】
本発明はさらに、射出成形品を製造する際の本発明の圧力センサの使用に関する。
【0064】
結果として、射出成形品の品質を向上させることができる。
【0065】
以下の詳細な説明および請求項全体から、本発明のさらなる有利な実施形態および特徴の組み合わせが考えられる。
【0066】
実施形態を説明するために使用される図面は、以下の通りである。