(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1つ以上の銅イオンの源、1つ以上の促進剤、1つ以上の抑制剤、1つ以上の電解質、及び1つ以上の化合物を含む、電気めっき浴であって、前記1つ以上の化合物が、スルトン、アミン、及び以下の式(VI)を有する化合物の反応生成物
であり、前記アミンは以下の式を有し、
【化1】
式中、R’は水素または−CH
2−CH
2−を含み、Rは、H
2N−(CH
2)
m−、HO−(CH
2)
m−、−HN−CH
2−CH
2−、Q−(CH
2)
m−、以下の構造を有する部分、
【化2】
以下の構造を有する部分、
【化3】
または以下の構造を有する部分、
【化4】
を含み、式中、R
1〜R
14は独立して、水素及び(C
1−C
3)アルキルから選択され、mは2〜12の整数であり、nは2〜10の整数であり、pは1〜10の整数であり、qは2〜10の整数であり、r、s、及びtは1〜10の数であり、Qは環内に1つもしくは2つの窒素原子を有する5〜6員複素環であるか、またはQはベンゼンスルホンアミド部分であるが、但し、R’が−CH
2−CH
2−であるとき、Rは−HN−CH
2−CH
2−であり、Rの窒素がR’の炭素原子と共有結合を形成して複素環を形成し、
【化5】
式中、R”は以下の構造を有する部分、
【化6】
以下の構造を有する部分、
【化7】
以下の構造を有する部分、
【化8】
あるいは置換もしくは非置換のトリアジナン環またはピペラジン環であり、式中、R
15は水素またはヒドロキシルを含み、uは1〜2の整数であり、v、x、及びyは独立して、1〜10の整数であり、R
16及びR
17は独立して、水素及びカルボニル部分から選択されるが、但し、R
16及びR
17がカルボニル部分であるとき、前記カルボニル部分は式(VI)のビニル基の炭素と共有結合を形成し、水素を置換して前記ビニル基の前記炭素と前記共有結合を形成して5員複素環を形成
し、
前記スルトンは、以下の式を有する1つ以上の化合物から選択される、電気めっき浴
:
【化9】
(
式(XI)中、R18〜R23は独立して、水素、(C1−C3)アルキル、ヒドロキシル、及びアセテート部分から選択され、ただしR18〜R23の少なくとも1つは、ヒドロキシル、及びアセテート部分から選択される)
及び
【化10】
(式(XII)中、R24〜R27は独立して、水素、(C1−C3)アルキル、ヒドロキシル、及びアセテート部分から選択される)。
【背景技術】
【0002】
物品を金属コーティングで電気めっきする方法は、一般的にめっき溶液中の2つの電極の間に電流を流すことを含み、その電極の1つがめっきされる物品である。典型的な酸性銅電気めっき溶液は、溶解した銅、通常は硫酸銅、浴に導電性を付与するのに十分な量の硫酸などの酸性電解質、ハロゲン化物の源、ならびにめっきの均一性及び金属析出物の品質を向上させる独自の添加剤を含む。そのような添加剤としては、レベラー、促進剤、及び抑制剤などが挙げられる。
【0003】
電解銅めっき溶液は、化粧コーティング及び防食コーティングなどの様々な産業用途で使用され、電子工業でも、特にプリント回路基板及び半導体の製造に使用される。回路基板の製造においては、典型的には、プリント回路基板の表面の選定部位の上、ブラインドビア及びトレンチの中、及び回路基板基材の表面の間を通るスルーホールの壁の上に、銅が電気めっきされる。ブラインドビア、トレンチ、及びスルーホールの露出面、すなわち、壁と床が、それらの開口の表面に銅がめっきされる前に、無電解金属化などにより、最初に導電性にされる。めっきされたスルーホールは1つの板の表面から別の板の表面への導電性の経路を提供する。ビア及びトレンチは回路基板内層の間に導電性の経路を提供する。半導体の製造においては、ビア、トレンチ、またはそれらの組み合わせなどの様々なフィーチャーを含むウエハの表面の上に、銅が電気めっきされる。このビア及びトレンチは半導体装置の様々な層の間に導電性を提供するために金属化される。
【0004】
プリント回路基板(PCB)の電気めっきにおけるように、めっきの特定分野では、電気めっき浴中のレベラーの使用が基板表面上に均一な金属析出物を得る上で重要となり得る。不規則なトポグラフィーを有する基板を電気めっきすることは困難を伴い得る。電気めっきの間に、電圧低下が典型的には表面の開口内で発生し、表面と開口との間の不均一な金属析出物を引き起こし得る。電気めっきのむらは電圧低下が比較的激しい場所、つまり、開口が狭く高い場所で悪化する。結果として、実質的に均一な厚さの金属層を析出することは、電子機器の製造においてしばしば困難な手順である。電子機器に実質的に均一な、または水平な銅層を提供するために、銅めっき浴においてレベリング剤がしばしば使用される。
【0005】
携帯性の傾向は、電子機器の増大した機能性と相まって、PCBの小型化を加速させている。スルーホール配線を有する伝統的な多層PCBは、常に実用的な解決策ではない。ブラインドビアを活用する、シーケンシャルビルドアップ技術などの、高密度配線に対する代替的なアプローチが開発されている。ブラインドビアを使用する過程における目的の1つは、ビアと基板表面との間の銅析出物の厚さのばらつきを最小化しつつ、ビア充填を最大化することである。これは、PCBがスルーホールとブラインドビアのどちらも備えるとき、特に困難である。
【0006】
レベリング剤は、基板表面にわたる析出物を水平にするために、また電気めっき浴のつきまわり性を向上するために、銅めっき浴において使用される。つきまわり性は表面の銅析出物の厚さに対するスルーホール中心の銅析出物の厚さの比率として定義される。より新しいPCBは、スルーホールとブラインドビアのどちらも備えるように製造されている。電流浴添加剤、特に電流レベリング剤は、基板表面と充填されたスルーホール及びブラインドビアとの間の水平な銅析出物を常に提供するわけではない。ビア充填は充填されたビア内の銅と表面との間の高さの違いによって特徴付けられる。したがって、PCBの製造のために金属電気めっき浴に使用される、浴のつきまわり性を強化しつつ水平な銅析出物を提供するレベリング剤に対する当該技術分野における必要性が残る。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書を通して使用される場合、文脈上明確に別途示されない限り、以下の略語は以下の意味を有するものとする:A=アンペア;A/dm
2=アンペア/平方デシメートル;℃=セ氏温度;g=グラム;ppm=100万分率=mg/L;L=リットル、μm=ミクロン=マイクロメートル;mm=ミリメートル;cm=センチメートル;DI=脱イオン化;mL=ミリリットル;mol=モル;mmol=ミリモル;Mw=重量平均分子量;Mn=数平均分子量;
【0029】
;及びPCB=プリント回路基板。全ての数の範囲は、そのような数の範囲が合計で100%となることを余儀なくされることが明らかである場合を除いて、包括的であり、また任意の順序で組み合わせ可能である。
【0030】
本明細書を通して使用される場合、「フィーチャー」は基板上の形状を指す。「開口」は、スルーホール及びブラインドビアを含む、凹状のフィーチャーを指す。本明細書を通して使用される場合、「めっき」という用語は電気めっきを指す。「析出物」及び「めっき」は本明細書を通して同義に使用される。「レベラー」は、実質的に水平または平面の金属層を提供することができる有機化合物またはその塩を指す。「レベラー」及び「レベリング剤」という用語は本明細書を通して同義に使用される。「促進剤」は電気めっき浴のめっき速度を高める有機添加物を指す。「抑制剤」は電気めっきの間に金属のめっき速度を抑える有機添加物を指す。「プリント回路基板」及び「プリント配線基板」という用語は本明細書を通して同義に使用される。「部分」という用語は、官能基全体または官能基の一部のいずれかを基礎構造として含み得る分子またはポリマーの一部を意味する。「部分」及び「基」という用語は、本明細書を通して同義に使用される。冠詞「a」及び「an」は、単数形及び複数形を指す。
【0031】
化合物は、スルトン、アミン、及びアクリルアミドを含む反応生成物を含む。本発明のアミンは以下の式を有し、
【0033】
式中、R’は水素または部分:−CH
2−CH
2−から選択され、好ましくはR’は水素であり、Rは、部分:H
2N−(CH
2)
m−、HO−(CH
2)
m−、−HN−CH
2−CH
2−、Q−(CH
2)
m−、以下の構造を有する部分、
【0039】
から選択され、式中、R
1〜R
14は独立して、水素及び(C
1−C
3)アルキルから選択され、好ましくはR
1〜R
6は独立して、水素及びメチルから選択され、より好ましくはR
1〜R
6は水素から選択され、好ましくはR
7〜R
14は独立して、水素及びメチルから選択され、mは2〜12の整数であり、好ましくは2〜3であり、nは2〜10の整数であり、好ましくは2〜5であり、pは1〜10の整数であり、好ましくは1〜5であり、より好ましくは1〜4であり、qは2〜10の整数であり、r、s、及びtは独立して、1〜10の数であり、Qはイミダゾールまたはピリジン部分などの、環内に1つもしくは2つの窒素原子を有する5〜6員複素環であるか、またはQは下記の構造(V)を有するベンゼンスルホンアミド部分であるが、但し、R’が−CH
2−CH
2−であるとき、Rは−HN−CH
2−CH
2−であり、Rの窒素がR’の炭素と共有結合を形成してピペラジン環などの複素環を形成する。最も好ましいアミンは、R’が水素であり、RがH
2N−(CH
2)
m−であるアミンである。
【0041】
式(I)を有するアミンとしては、エチレンジアミン、アミノエタン−1−オール、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)、3,3’−(ブタン−1,4−ジヒルビス(オキシ))ビス(プロパン−1−アミン)、ポリ(1−(2−((3−(2−アミノプロピル)ブタン−2−イル)オキシ)エトキシ)プロパン−2−アミン)及び4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホンアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
nが2であり、かつpが5であるとき、部分(II)を有する好ましい化合物は、以下の構造を有する6,8,11,15,17−ペンタメチル−4,7,10,13,16,19−ヘキサオキサドコサン−2,21−ジアミンである。
【0044】
部分(IV)を有する好ましい化合物は以下の構造を有し、
【0046】
式中、変数r、s、及びtは上記に定義される。好ましくはMwは200g/モル〜2000g/モルの範囲である。
【0047】
アクリルアミドは以下の式を有する化合物を含み、
【0049】
式中、R”は以下の構造を有する部分、
【0055】
あるいは置換もしくは非置換のトリアジナン環またはピペラジン環であり、式中、R
15は水素またはヒドロキシルから選択され、好ましくはR
15は水素であり、uは1〜2の整数であり、好ましくは1であり、v、x、及びyは独立して、1〜10の整数であり、R
16及びR
17は独立して、水素及びカルボニル部分から選択されるが、但し、R
16及びR
17がカルボニル部分であるとき、カルボニル部分は式(VI)のビニル基の炭素と共有結合を形成し、水素を置換してビニル基の炭素と共有結合を形成して、以下の構造を有する5員複素環を形成する。
【0057】
1つ以上のスルトンが、3つ目の反応物として含まれる。スルトンは、環状スルホン酸エステルである。好ましくは、そのようなスルトンは以下の式を有する化合物を含むが、これらに限定されず、
【0061】
式中、R
18〜R
27は独立して、水素、(C
1−C
3)アルキル、ヒドロキシル、及び
アセテート部分から選択される。好ましくは、R
18〜R
27は独立して、水素、メチル、エチル、及びヒドロキシルから選択される。より好ましくは、R
18、R
19、R
21、R
22、R
23、R
24、R
26及びR
27は水素であり、R
20及びR
25は独立して、水素及びヒドロキシルから選択される。 も好ましくは、R
18〜R
27は水素である。好ましくは、スルトンはR
18〜R
23が水素である構造(XI)である。
【0062】
構造(XI)の化合物は、1,3−プロパンスルトン、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンスルトン、及び2−アセトキシ−1,3−プロパンスルトンを含み、構造(XII)の化合物は1,3−プロペンスルトンを含む。
【0063】
本発明の反応生成物は、マイケル付加によって調製され得る。従来のマイケル付加手順に従って、本発明の反応生成物を調製することができる。アミンはマイケル付加のドナーとして機能し、アクリルアミドはマイケル付加のアクセプターである。概して、十分な量のアクリルアミドを反応容器に添加し、その後エタノール、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセトン、水またはそれらの混合物などの十分な量の溶媒を添加する。その後、十分な量のアミンを反応容器に添加する。反応は、室温から110℃までまたは室温から60℃までなどで、18〜24時間または4〜6時間の間、行われ得る。その後、スルトンを反応混合物に添加する。混合物の温度は80℃〜95℃に維持され得る。撹拌しながら加熱を1〜4時間の間、行う。アミンとアクリルアミドとスルトンとのモル比は、典型的に1:1:1である。しかし、使用される特定の反応生成物に依存して、比率は異なり得る。軽微な実験を用いて、所与の反応物に対して適切なモル比を判定することができる。
【0064】
1つ以上の反応生成物を含むめっき浴及びめっき方法は、プリント回路基板または半導体チップなどの、基板上に実質的に水平にめっきされた金属層を提供するのに有用である。また、めっき浴及び方法は、基板の開口を金属で充填するのに有用である。銅析出物は、高つきまわり性及び減少されたノジュール形成を有する。
【0065】
銅が上に電気めっきされ得る任意の基板は、反応生成物を含有する銅めっき浴と共に、基板として使用され得る。そのような基板としては、プリント配線基板、集積回路、半導体パッケージ、リードフレーム、及び配線が挙げられるが、これらに限定されない。集積回路基板は、デュアルダマシン製造過程において使用されるウエハであり得る。そのような基板は典型的には、様々なサイズを有する、いくつかのフィーチャー、特に開口を含む。PCBのスルーホールは、直径50μm〜350μmなどの様々な直径を有し得る。そのようなスルーホールの深度は、0.8mm〜10mmなどに異なり得る。PCBは、様々なサイズを有する、最大直径200μm及び深度150μm以上のブラインドビアを含み得る。
【0066】
銅めっき浴は、銅イオンの源、電解質、及びレベリング剤を含有し、このレベリング剤は、上記で説明されたように、アミン、アクリルアミド及びスルトンの反応生成物である。銅めっき浴は、ハロゲン化物イオン源、促進剤、及び抑制剤を含有し得る。任意選択的に、銅に加えて、電気めっき浴は、銅/錫合金を電気めっきするために、1つ以上の錫の源を含み得る。好ましくは、電気めっき浴は、銅電気めっき浴である。
【0067】
好適な銅イオンの源は銅塩であり、限定されないが、以下を含む:硫酸銅、塩化銅などの銅ハロゲン化物、酢酸銅、硝酸銅、テトラフルオロホウ酸銅、アルキルスルホン酸銅、アリールスルホン酸銅、スルファミン酸銅、過塩素酸銅、及びグルコン酸銅。例示的なアルカンスルホン酸銅は、銅(C
1−C
6)アルカンスルホン酸、より好ましくは、銅(C
1−C
3)アルカンスルホン酸を含む。好ましいアルカンスルホン酸銅は、メタンスルホン酸銅、エタンスルホン酸銅、及びプロパンスルホン酸銅である。例示的なアリールスルホン酸銅は、限定されないが、ベンゼンスルホン酸銅、及び、p−トルエンスルホン酸銅を含む。銅イオンの源の混合物が使用され得る。銅イオン以外の1つ以上の金属イオンの塩が、本電気めっき浴に添加され得る。典型的には、めっき溶液1L当たり10〜400gの銅金属量を提供するのに十分な量で銅塩が存在する。
【0068】
好適な錫化合物としては、錫ハロゲン化物などの塩、硫酸錫、メタンスルホン酸錫などのアルカンスルホン酸錫、ベンゼンスルホン酸錫などのアリールスルホン酸錫、及びp−トルエンスルホン酸錫などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの電解質組成物中の錫化合物の量は、典型的には、5〜150g/Lの範囲の錫含有量を提供する量である。錫化合物の混合物は、上記で説明された量で使用され得る。
【0069】
本発明で有用な電解質は、酸性である。好ましくは、電解質のpHは≦2である。好適な酸性の電解質としては、硫酸、酢酸、フルオロホウ酸、メタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などのアリールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、スルファミン酸、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、クロム酸、ならびにリン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。酸の混合物は、本金属めっき浴で有利に使用され得る。好ましい酸は、硫酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、塩酸、及びその混合物を含む。酸は、1〜400g/Lの範囲の量で存在し得る。電解質は、一般的に、様々な供給源から商業的に入手可能であり、さらに精製することなく使用され得る。
【0070】
そのような電解質は、任意選択的にハロゲン化物イオン源を含有し得る。典型的には、塩化物イオンが使用される。例示的な塩化物イオンの源は、塩化銅、塩化錫、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩酸を含む。幅広い範囲のハロゲン化物イオン濃度が本発明で使用され得る。典型的には、ハロゲン化物イオン濃度はめっき浴を基準とした0〜100ppmの範囲である。そのようなハロゲン化物イオン源は、一般的に、商業的に入手可能であり、さらに精製することなく使用され得る。
【0071】
めっき浴は、典型的には、促進剤を含有する。任意の促進剤(光沢剤とも称される)は、本発明での使用に好適である。そのような促進剤は当業者に周知である。促進剤としては、N,N−ジメチル−ジチオカルバミン酸−(3−スルホプロピル)エステル、3−メルカプト−プロピルスルホン酸−(3−スルホプロピル)エステル、3−メルカプト−プロピルスルホン酸ナトリウム塩、カルボン酸、ジチオ−O−エチルエステル−S−エステル及び3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸カリウム塩、ビス−スルホプロピルジスルフィド、ビス−(ナトリウムスルホプロピル)−ジスルフィド、3−(ベンゾチアゾリル−S−チオ)プロピルスルホン酸ナトリウム塩、ピリジニウムプロピルスルホベタイン、1−ナトリウム−3−メルカプトプロパン−1−スルホネート、N,N−ジメチル−ジチオカルバミン酸−(3−スルホエチル)エステル、3−メルカプト−エチルプロピルスルホン酸−(3−スルホエチル)エステル、3−メルカプト−エチルスルホン酸ナトリウム塩、カルボン酸−ジチオ−O−エチルエステル−S−エステル及び3−メルカプト−1−エタンスルホン酸カリウム塩、ビス−スルホエチルジスルフィド、3−(ベンゾチアゾリル−S−チオ)エチルスルホン酸ナトリウム塩、ピリジニウムエチルスルホベタイン、及び1−ナトリウム−3−メルカプトエタン−1−スルホネートが挙げられるが、これらに限定されない。促進剤は、様々な量で使用され得る。概して、促進剤は、0.1ppm〜1000ppmの範囲の量で使用される。
【0072】
金属のめっき速度を抑制することができる任意の化合物は、抑制剤として本電気めっき組成物で使用され得る。好適な抑制剤としては、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド(EO/PO)コポリマー及びブチルアルコール−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドコポリマーを含む、ポリプロピレングリコールコポリマー及びポリエチレングリコールコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。好適なブチルアルコール−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドコポリマーは、100〜100,000g/モルの重量平均分子量を有するものであり、好ましくは、500〜10,000g/モルである。そのような抑制剤が使用されるとき、それらは典型的には、組成物の重量を基準とした1〜10,000ppmの範囲の量で存在し、さらに典型的には、5〜10,000ppmである。本発明のレベリング剤は、抑制剤としても振る舞うことができる機能も有し得る。
【0073】
概して、反応生成物は、200〜100,000g/モルの数平均分子量(Mn)を有し、典型的には300〜50,000g/モルであり、好ましくは500〜30,000g/モルであるが、他のMn値を有する反応生成物が使用され得る。そのような反応生成物は、1000〜50,000g/モルの範囲の重量平均分子量(Mw)値を有し得、典型的には5000〜30,000g/モルであるが、他のMw値が使用されてもよい。
【0074】
電気めっき浴中で使用される反応生成物、すなわち、レベリング剤の量は、選択される個々のレベリング剤、電気めっき浴中の金属イオン濃度、使用される個々の電解質、電解質の濃度、及び印加される電流密度に依存する。概して、電気めっき浴中のレベリング剤の総量は、めっき浴の総重量を基準とした0.01ppm〜1000ppmの範囲にあり、好ましくは0.1ppm〜250ppmであり、より好ましくは1ppm〜100ppmであり、最も好ましくは5ppm〜50ppmであり、しかし、より多い、または、より少ない量が使用されてもよい。
【0075】
電気めっき浴は、任意の順序で構成成分を組み合わせることによって調製され得る。金属イオンの源、水、電解質、及び任意選択的なハロゲン化物イオン源などの無機構成成分が、最初に浴容器に加えられ、その後、レベリング剤、促進剤、抑制剤、及び任意の他の有機構成成分などの有機構成成分が加えられることが好ましい。
【0076】
電気めっき浴は、任意選択的に少なくとも1つの追加のレベリング剤を含有し得る。そのような追加のレベリング剤は、本発明の別のレベリング剤でもよく、または代替的に、任意の従来のレベリング剤でもよい。本レベリング剤と組み合わせて使用され得るのに好適な従来のレベリング剤は、限定されないが、Stepらに対する米国特許第6,610,192号、Wangらに対する第7,128,822号、Hayashiらに対する第7,374,652号、及びHagiwaraらに対する第6,800,188号に開示されるものを含む。そのようなレベリング剤の組み合わせは、レベリング能力及びつきまわり性を含む、めっき浴の特徴を調整するために使用され得る。
【0077】
典型的には、めっき浴は10〜65℃またはさらに高い任意の温度で使用され得る。好ましくは、めっき浴の温度は10〜35℃であり、さらに好ましくは15〜30℃である。
【0078】
概して、電気めっき浴は使用中に撹拌される。任意の好適な撹拌方法が使用され得、またそのような方法は、当該技術分野で周知である。好適な撹拌方法としては、エアスパージング、ワークピースアジテーション、及びインピンジメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
典型的には、基板をめっき浴と接触させることによって基板が電気めっきされる。基板は、典型的には、陰極として機能する。めっき浴は、可溶性または不溶性であり得る陽極を含む。電位は、典型的には電極に印加される。十分な電流密度が印加され、基板上に所望の厚さを有する金属層を析出するのとならんで、ブラインドビア、トレンチ、及びスルーホールを充填するか、スルーホールをコンフォーマルにめっきするのに十分な時間、めっきが行われる。電流密度は0.05〜10A/dm
2の範囲であり得るが、より高い、または、より低い電流密度は使用され得る。特定の電流密度は、めっきされる基板、めっき浴組成、及び所望の表面金属の厚さに、ある程度依存する。そのような電流密度の選択は、当業者の能力の内である。
【0080】
本発明の利点は、実質的に水平な金属析出物がPCB上に得られることである。PCBのスルーホール、ブラインドビア、及びそれらの組み合わせは、実質的に充填されるか、またはスルーホールは望ましいつきまわり性でコンフォーマルにめっきされる。本発明のさらなる利点は、幅広い範囲の開口及び開口サイズが充填され得るか、または望ましいつきまわり性でコンフォーマルにめっきされ得ることである。
【0081】
つきまわり性は、PCBサンプルの表面にめっきされた金属の平均の厚さと比較した、スルーホールの中央にめっきされた金属の平均の厚さの比率として定義され、百分率として報告される。つきまわり性が高いほど、めっき浴がスルーホールをコンフォーマルにめっきしやすくなる。本発明の金属めっき組成物は、≧45%のつきまわり性を有し、好ましくは≧50%である。
【0082】
反応生成物は、基板にわたって、小さなフィーチャーを有する基板及び様々なフィーチャーのサイズを有する基板の上であっても、実質的に水平な表面を有する銅及び銅/錫層を提供する。このめっき方法は、電気めっき浴が高つきまわり性を有するように、効果的にスルーホール内に金属を析出する。
【0083】
本発明の方法は一般的にプリント回路基板の製造についての言及と共に説明されてきたが、本質的に水平または平面の、銅または銅/錫の析出物、及び、充填されたまたはコンフォーマルにめっきされた開口が所望される任意の電解過程において、本発明が有用であり得ることは評価される。そのような過程は、半導体のパッケージング及び配線の製造を含む。
【0084】
以下の実施例は、本発明をさらに例示することを意図するが、その範囲を制限することを意図するものではない。
【実施例1】
【0085】
30mmolのN,N’メチレンビスアクリルアミドを三つ口フラスコに添加した。10mLのジクロロメタン及び20mLのエタノールをフラスコに添加した。反応混合物が白濁して見え、その後、30mmolのエチレンジアミンを混合物に添加した。反応混合物を室温で19時間保持した。大量の固形物が反応混合物中に形成された。30mmolの1,3−プロパンスルトンを反応混合物に添加し、もう5mLのエタノールを添加した。その後、反応の温度を1時間で90℃まで上昇させると、反応混合物は再び白濁した。溶媒の全てが真空蒸着によって取り除かれ、反応生成物1は水の中での良好な溶解性を有する白い泡状の固形物であった。
【実施例2】
【0086】
複数の銅電気めっき浴を、75g/Lの銅硫酸ペンタハイドレートとしての銅、240g/Lの硫酸、60ppmの塩化物イオン、1ppmの促進剤、及び1.5g/Lの抑制剤を組み合わせて調製した。促進剤は、ビス(ナトリウム−スルホプロピル)ジスルフィドであった。抑制剤は<5,000の重量平均分子量を有するEO/POコポリマーであり、末端ヒドロキシル基であった。各電気めっき浴は、下記の実施例3の表内に示されているとおり、5ppm、10ppm、または20ppmの量の実施例1の反応生成物も含有した。反応生成物は、精製せずに使用された。
【実施例3】
【0087】
3.2mmの厚さ、両面FR4PCB、5cm×9.5cm、複数のスルーホールを有するサンプルが、実施例2の銅電気めっき浴を使用するハリング槽内において銅で電気めっきされた。サンプルは直径0.25mmのスルーホールを有した。各浴の温度は25℃であった。3A/dm
2の電流密度をサンプルに40分間、印加した。銅めっきサンプルを、めっき浴のつきまわり性(TP)ならびに銅析出物上のノジュールの数を判定するために分析した。
【0088】
つきまわり性は、PCBサンプルの表面にめっきされた銅の平均の厚さと比較した、スルーホールの中央にめっきされた銅の平均の厚さの比率として判定することにより算出した。つきまわり性は百分率として報告した。
【0089】
【表1】
【0090】
結果は、つきまわり性が45%を超えることを示し、反応生成物の良好なつきまわり性能を示した。加えて、銅析出物のいずれにも観察されたノジュールはなかった。
【実施例4】
【0091】
反応混合物に添加されるスルトンが30mmolの2−ヒドロキシ−1,3−プロパンスルトンである以外は、実施例1の方法が繰り返される。反応生成物2は、精製せずに使用される。
【0092】
その後、複数の銅電気めっき浴を、75g/Lの銅硫酸ペンタハイドレートとしての銅、240g/Lの硫酸、60ppmの塩化物イオン、1ppmの促進剤、及び1.5g/Lの抑制剤を組み合わせて調製する。促進剤は、ビス(ナトリウム−スルホプロピル)ジスルフィドである。抑制剤は<5,000の重量平均分子量を有するEO/POコポリマーであり、末端ヒドロキシル基である。各電気めっき浴は、5ppm、10ppm、または20ppmの量の反応生成物2も含有する。
【0093】
3.2mmの厚さ、両面FR4PCB、5cm×9.5cm、複数のスルーホールを有するサンプルが、銅電気めっき浴を使用するハリング槽内において銅で電気めっきされる。サンプルは直径0.25mmのスルーホールを有する。各浴の温度は25℃である。3A/dm
2の電流密度をサンプルに40分間、印加する。銅めっきサンプルを上記の実施例3に説明されているとおり、めっき浴のつきまわり性(TP)ならびに銅析出物上のノジュールの数を判定するために分析する。各浴のTP%は45%よりも大きくなることが予測され、銅析出物上で見られることが予測されるノジュールはない。
【実施例5】
【0094】
反応混合物に添加されるスルトンが30mmolの2−アセトキシ−1,3−プロパンスルトンである以外は、実施例1の方法が繰り返される。反応生成物3は、精製せずに使用される。
【0095】
その後、複数の銅電気めっき浴を、75g/Lの銅硫酸ペンタハイドレートとしての銅、240g/Lの硫酸、60ppmの塩化物イオン、1ppmの促進剤、及び1.5g/Lの抑制剤を組み合わせて調製する。促進剤は、ビス(ナトリウム−スルホプロピル)ジスルフィドである。抑制剤は<5,000の重量平均分子量を有するEO/POコポリマーであり、末端ヒドロキシル基である。各電気めっき浴は、5ppm、10ppm、または20ppmの量の反応生成物3も含有する。
【0096】
3.2mmの厚さ、両面FR4PCB、5cm×9.5cm、複数のスルーホールを有するサンプルが、銅電気めっき浴を使用するハリング槽内において銅で電気めっきされる。サンプルは直径0.25mmのスルーホールを有する。各浴の温度は25℃である。3A/dm
2の電流密度をサンプルに40分間、印加する。銅めっきサンプルを上記の実施例3に説明されているとおり、めっき浴のつきまわり性(TP)ならびに銅析出物上のノジュールの数を判定するために分析する。各浴のTP%は45%よりも大きくなることが予測され、銅析出物上で見られることが予測されるノジュールはない。
【実施例6】
【0097】
反応混合物に添加されるスルトンが30mmolの1,3−プロペンスルトンである以外は、実施例1の方法が繰り返される。反応生成物4は、精製せずに使用される。
【0098】
その後、複数の銅電気めっき浴を、75g/Lの銅硫酸ペンタハイドレートとしての銅、240g/Lの硫酸、60ppmの塩化物イオン、1ppmの促進剤、及び1.5g/Lの抑制剤を組み合わせて調製する。促進剤は、ビス(ナトリウム−スルホプロピル)ジスルフィドである。抑制剤は<5,000の重量平均分子量を有するEO/POコポリマーであり、末端ヒドロキシル基である。各電気めっき浴は、5ppm、10ppm、または20ppmの量の反応生成物4も含有する。
【0099】
3.2mmの厚さ、両面FR4PCB、5cm×9.5cm、複数のスルーホールを有するサンプルが、銅電気めっき浴を使用するハリング槽内において銅で電気めっきされる。サンプルは直径0.25mmのスルーホールを有する。各浴の温度は25℃である。3A/dm
2の電流密度をサンプルに40分間、印加する。銅めっきサンプルを上記の実施例3に説明されているとおり、めっき浴のつきまわり性(TP)ならびに銅析出物上のノジュールの数を判定するために分析する。各浴のTP%は45%よりも大きくなることが予測され、銅析出物上で見られることが予測されるノジュールはない。