(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6622910
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】光輝性透明ラベルを用いた、製品のラベリング方法および光輝性透明ラベル
(51)【国際特許分類】
B42D 25/465 20140101AFI20191209BHJP
B42D 25/36 20140101ALI20191209BHJP
【FI】
B42D25/465
B42D25/36
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-516499(P2018-516499)
(86)(22)【出願日】2015年11月23日
(65)【公表番号】特表2019-501035(P2019-501035A)
(43)【公表日】2019年1月17日
(86)【国際出願番号】IB2015059037
(87)【国際公開番号】WO2017089857
(87)【国際公開日】20170601
【審査請求日】2018年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】513233573
【氏名又は名称】エコール ポリテクニック フェデラル ドゥ ローザンヌ (ウペエフエル)
【氏名又は名称原語表記】ECOLE POLYTECHNIQUE FEDERALE DE LAUSANNE (EPFL)
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】エフィエヌ,ナセール
(72)【発明者】
【氏名】グランジャン,ニコラ
【審査官】
藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0074449(US,A1)
【文献】
特開2012−236369(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0062194(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0200219(US,A1)
【文献】
特開2009−054767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/00−25/485
G09F 1/00− 5/04
G09F 13/00−13/46
C03C 17/22−17/27
C30B 29/38
G04B 39/00−39/02
G04B 45/00−45/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光輝性ラベルを用いて製品(1)にラベリングする方法であって、前記ラベルが、通常の光条件下では透明であるがUV照明下ではフォトルミネセンスによって出現する光輝性部分(10)を有し、前記ラベルがさらに、通常の光条件下でもUV照明下でも透明である非光輝性部分(9)を有する方法であって、
前記方法が、
前記製品の上に積層体を堆積させることを含み、前記積層体が、厚みが1ミクロン未満のAlN合金で形成された第一の材料、および厚みが10nm未満のGaN合金で形成された第二の材料が連続して交互に並ぶ層(3、4)を有して、二つの材料の間の境界面に量子ナノ構造をもたらすものであり、
前記非光輝性部分の中へイオンを組み込むこと、または透明材料(6)を堆積させることを含んでいる方法。
【請求項2】
前記積層体が100個以下の数の積み重ね(3、4)の連続する層を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記層(3、4)が、スパッタリングや原子層堆積、分子線エピタキシー法、有機金属気相成長法の中の方法のうちの一つによって成長する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第二の材料の前記層(3)が、50%未満のインジウム、アルミニウム、ヒ素および/またはリンを含有するGaN合金を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第二の材料の前記層(3)が、希土類元素の存在を10%以下の含有量で含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記量子ナノ構造が、第二の材料の前記層(3)内に作り出され、量子ドットを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第一の材料の前記層(4)が、ドーパント元素として20%未満のマグネシウム、シリコン、リチウム、ベリリウム、カドミウムおよび/または亜鉛を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記イオンが、拡散技術または注入技術によって積層体内に組み込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記透明材料(6)が、選択的に除去された光輝性部分(5)の補充に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
各製品についてただ一つだけのパターンを作り出すために一度限りのマスクの利用を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記UV照明および/またはUV光が、400nm以下のUV波長を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
光輝性パターン(11)を有する製品(1)であって、
前記パターンが、
通常の光条件下では透明であるがUV照明下ではフォトルミネセンスによって出現する光輝性部分(10)を有し、前記光輝性部分(10)が、厚みが1ミクロン以下のAlN合金で形成された第一の材料の層(4)と厚みが10nm以下のGaN合金で形成された第二の材料の層(3)とを交互に有し、二つの材料の間の境界面に量子ナノ構造を含む積層体を有するものであり、
通常の光条件下でもUV照明下でも透明である非光輝性部分(9)を有し、前記非光輝性部分が、透明性を高めるための追加の透明材料(6)またはイオンを含むものである製品。
【請求項13】
前記イオンが、酸素、窒素、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、マグネシウム、リチウム、ベリリウム、ホウ素、リン、アルミニウム、亜鉛、ヒ素、ガリウム、シリコン、カドミウム、および/または光輝性積層体の性能を低下させることができ積層体の中へ非輻射再結合中心欠陥を作り出すことができるあらゆる種類の元素を含んでいる、請求項12に記載の製品。
【請求項14】
前記透明材料(6)が、前記積層体の屈折率に実質的に等しい屈折率を有している、請求項12に記載の製品。
【請求項15】
前記製品(1)が透明である、請求項12に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明でありしたがって不可視である光輝性ラベルを用いた、製品のラベリングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
隠しマークを用いた解決方法は、偽造から保護されるべき製品を保護するために、偽造者が再現するのが困難であるかまたは費用のかかる隠しマークを用いてこの製品にマーキングすることによって、広く利用されている。利用者はそのとき、隠しマークの存在および真偽を確認することによって、製品の真偽を確認することができる。
【0003】
一例として、スイス特許出願第00775/12号明細書は、通常の照明条件下では不可視であり、UVレーザを当てると目に見えるマークで、携帯用時計の部品を保護することを提案している。その技術は干渉に基づくものであり、また出現するべき特定の波長を有するUVレーザを必要とする。それは、LIGAプロセスによって製造された反射性材料で作られた部品のマーキングに適応している。
【0004】
仏国特許発明第2587504号明細書は、携帯用時計のガラスと結びつけられた、またはそれに代わるホログラムを有する携帯用時計を開示している。このホログラムは、光源に対して選択される入射角に応じて、携帯用時計の従来の機能が現れるか、またはホログラムに起因してレリーフ模様を伴う三次元画像が現れるかのどちらかになるように位置決めされる。
【0005】
欧州特許出願公開第2006796号明細書は、携帯用時計などの高級品の偽造に対する別の保護を提案している。それは、薄膜を用いて作り出されるホログラムに基づいている。
【0006】
欧州特許第1893542号明細書は、携帯用時計製造分野において、サファイア基板における別のホログラムを開示している。その目的は装飾である。
【0007】
特開昭62−019789号公報は、層が携帯用時計の蓋に形成されている透過型ホログラムを開示している。
【0008】
欧州特許第1297491号明細書は、透明基板のためのCLR技術を開示している。
【0009】
また、いくつかの文献は、発光材料のパターンを用いて製品を保護することを提案している。一例として、米国特許出願公開第2010/062194号明細書の実施形態は、偽造防止パターンを有する発光材料に関している。発光材料は、紫外線光の吸収に反応して可視光を放出するように構成されている。発光材料は、直径がおよそ500ナノメートル未満である発光粒子を含む。したがって、偽造防止パターンは、周囲光の下では目に見えないであろう。しかしながら製品の真偽は、紫外線光の下で、偽造防止パターンの形での発光によって識別されることができる。
【0010】
米国特許出願公開第2001/033371号明細書は、量子ドット、半導体ナノ結晶、および半導体微粒子を蛍光性暗号化要素として用いて、物体に関する情報を暗号化するための方法を開示している。
【0011】
米国特許第6445009号明細書は、装置が、AlNまたはGaNの各層の中で、室温で可視光を放出するGaNまたはGalnN量子ドットの一平面よって構成される少なくとも一つの積み重ねを含むコーティングを備えるシリコン基板を含むことを開示しており、その内容は参照により援用される。この装置は、白色光生成のために用いられる。
【0012】
類似の技術が、同様に欧州特許第1273049号明細書において開示されており、その内容は参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】スイス特許出願第00775/12号明細書
【特許文献2】仏国特許発明第2587504号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2006796号明細書
【特許文献4】欧州特許第1893542号明細書
【特許文献5】特開昭62−019789号公報
【特許文献6】欧州特許第1297491号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2010/062194号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2001/033371号明細書
【特許文献9】米国特許第6445009号明細書
【特許文献10】欧州特許第1273049号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
偽造者らは、隠しマークを再現するために必要な技術を発展させるためにかなりの金額を投資する。多くの保護技術は、限られた期間、すなわち偽造者らが保護のハッキングに成功するまでの間しか効果を維持しない。
【0015】
本発明の目的はしたがって、既存の方法とは異なる、新しい製品ラベリング方法を提案することである。
【0016】
別の目的は、ほとんどの既存の方法よりも再現するのが困難な製品ラベリング方法を提案することである。
【0017】
別の目的は、費用がかかる、希少な設備がなくとも、存在および真偽が確認しやすいラベリング方法を提案することである。
【0018】
別の目的は、ガラスやサファイアを含む透明材料に適した、製品ラベリング方法を提案することである。
【0019】
別の目的は、通常の照明条件下では不可視またはほぼ不可視であるが特殊な照明条件下では目に見える製品ラベリング方法を提案することである。
【0020】
別の目的は、光輝性部分および非光輝性部分を含み、またそれら二つの部分の間の境界面が通常の照明条件下では見えにくい、製品ラベリング方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明によると、これらの目的は、光輝性ラベルを用いて製品にラベリングする方法によって達成され、前記ラベルは、通常の光条件下では透明であるがUV照明下ではフォトルミネセンスによって出現する光輝性部分を有し、前記ラベルはさらに、通常の光条件下でもUV照明下でも透明である非光輝性部分を有し、
前記方法は、
前記製品の上に積層体を堆積させることを含み、前記積層体は、厚みが1ミクロン未満の例えばAlN、および第二の材料として厚みが10nm未満の例えばGaNなどの、二つの異なる材料が交互に並ぶナノ層を有し、
該方法はまた、前記非光輝性部分の中への透明材料の堆積またはイオンの組み込みによって、前記非光輝性部分の透明性を高めることを含む。
【0022】
この方法は、ラベルの透明性の向上、とりわけラベルの非光輝性部分の透明性の向上、および光輝性部分と非光輝性部分との間の境界面の透明性の向上という利点を有する。
【0023】
ラベルは、製品を追跡するために利用され得る。
【0024】
ラベルは、複製するのが困難な偽造予防物として利用され得る。不可視であることはより高い安全性をもたらすが、それは、偽造者が自身でUV光を用いて確認しない限り、製品がマーキングされていることさえも分からないからである。
【0025】
層は、スパッタリングや原子層堆積、分子線エピタキシー法、有機金属気相成長法技術などの、ナノメートル領域の精度をもつ既知の成長法を用いて堆積される。
【0026】
一実施形態において、非発光性の透明性は、積層体の光輝性能力を局部的に不活性化するイオンを積層体の中に組み込むことによって高められる。
【0027】
イオンは、酸素、窒素、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、マグネシウム、リチウム、ベリリウム、ホウ素、リン、アルミニウム、亜鉛、ヒ素、ガリウム、シリコン、カドミウム、および/または光輝性積層体の性能を低下させることができ積層体の中へ非輻射再結合中心欠陥を作り出すことができるあらゆる種類の元素を含んでよい。
【0028】
イオンは、拡散や注入などの複数の方法によって積層体内に組み込まれることができる。
【0029】
イオンは、文字と数字を組み合わせたコンテンツ、図形、素描、画像などのようなさまざまな大きさや形のパターンを作り出すために、マスクを通して積層体内に組み込まれ得る。
【0030】
層は、文字と数字を組み合わせたテキスト、図形、素描などのようなさまざまな大きさや形のパターンを作り出すために、マスクを通して堆積されてよい。
【0031】
一実施形態において、該方法は、非光輝性部分を作り出すために積層体の一部の選択エッチングを含む。
【0032】
透明材料が、前記非光輝性部分の上に堆積されてよい。
【0033】
非光輝性部分の上に堆積される透明材料は、積層体の屈折率に好ましくは近い屈折率を有する。これは、光輝性部分と非光輝性部分との間の境界面での屈折を減少させ、したがってラベルの不可視性に貢献する。
【0034】
マスクは、各製品についてただ一つだけのパターンを用いた一度限りのマスクであってよい。このように、個別の一連の情報、例えば製品に関連する識別コードや認証情報などの数字および/または文字の単数または複数の組み合わせ、ならびにUPCやEAN13などの一次元バーコード、もしくはデータマトリックスコードやマキシコード、PDF417、QRコード(登録商標)などの二次元バーコードを用いて、各製品にラベリングすることが可能である。
【0035】
該方法は、非制限的に、携帯用時計のガラスなどの透明製品のラベリングによく適応している。
【0036】
ラベルは、携帯用時計のガラスのいずれの面に堆積されてもよく、例えばラベルは携帯用時計のガラスの内側面に堆積されてもよいし、携帯用時計のガラスの外側面に堆積されてもよいし、または携帯用時計のガラスの両面に堆積されてもよい。
【0037】
本発明は、例として与えられ以下のような図面によって説明される実施形態の記述を用いることによって、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】マーキングされるべき製品の一例を示している。
【
図2.3.4】光輝性材料の積層体を作り出すための、前記製品上への層の連続する堆積を示している。
【
図5】本発明の第一の実施形態による方法を用いた、ラベルの光輝性部分を画定するための、作り出された積層体の選択された部分のエッチングを示している。
【
図6】ラベルの非光輝性部分を作り出すための、透明材料を用いた、エッチングされた部分の充填を示している。
【
図7】本発明の第二の実施形態による方法を用いた、積層体の選択された部分の光輝性能力を不活性化してラベルの非光輝性部分を作り出すための、積層体の中へのイオンの組み込みを示している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ここで、ラベル10を用いて製品1にラベリングするための方法の第一の実施形態が、
図1から
図6と関連付けながら説明される。製品1は、携帯用時計のガラス、ディスプレイ用ガラス、透明ラベルなどのような透明製品であってよい。それは例えばサファイアガラスであるかもしれない。
【0040】
図2で、AlNなどの第一の材料の、相対的に厚い最初の層2が、製品1の上に、例えば携帯用時計のガラスの内側面に堆積される。この最初の層は任意である。この層は、基板の上へ続いていく層の付着力を改善する。最初の層2の厚みは、20nm〜1000nmであり得る。
【0041】
図3で、GaNなどの第二の材料の追加の層3と、AlNなどの第一の材料の層4とを用いた積み重ねが、最初の層2の上に堆積される。
【0042】
GaNなどの第二の材料の層3は、20nm未満の厚み、例えば2〜8nmの厚みを有し得る。
【0043】
AlNなどの第一の材料の層4は、そのとき第一の層3の上に堆積される。層4は、50nm未満の厚み、例えば5〜15nmの厚みを有し得る。第一の材料の層4はこのように、第一の材料の層2よりも薄い。
【0044】
GaN層3とAlN層4との間の格子定数の不一致は、AlN層4とGaN層3との間の境界面で局所的な歪みを作り出し、GaN/AlN量子ナノ構造をもたらす。このような量子ナノ構造は、自由な電流キャリア(すなわち半導体中の電子および正孔)を捕捉し、それゆえにそれらの輻射再結合率を高める。量子ナノ構造はとりわけ、UV光を吸収して可視光を再放出する。
【0045】
窒化アルミニウムすなわちAlNなどの第一の材料の層4は、ドーパント元素として20%以下のマグネシウム、シリコン、リチウム、ベリリウム、カドミウムおよび/または亜鉛を含み得る。
【0046】
希土類元素が10%以下の含有量で、放出される光の量を増やすためにかつ/またはその色を制御するために、第二の材料のいくつかの層またはすべての層の中に含まれてもよい。
【0047】
第二の材料は、放出される光の量を増やすためにかつ/またはその色を制御するために、50%以下のインジウム、アルミニウム、ヒ素および/またはリンを含有するGaN合金であり得る。
【0048】
量子細線、量子井戸、および/または量子ドットを含むさまざまなタイプの量子ナノ構造が、本発明内で利用され得る。量子ドットなどの3Dナノ構造は、それらの高粗度が原因で、量子井戸などの2Dナノ構造と比べると透明性が低いかもしれない。一方、3Dナノ構造は、2Dナノ構造と比べて高い発光能力を示す。
【0049】
それゆえに、3Dナノ構造と2Dナノ構造の適切な組合せが、透明性と発光能力との間の容認できる妥協点を提示し得る。
【0050】
一実施形態において、製品は、光の再放出がないときの透明性を損なわずに再放出される光の量を増やすために、量子井戸などの2Dナノ構造と量子ドットなどの3Dナノ構造との適切な組合せを含んでいる。
【0051】
量子ナノ構造は、スパッタリングや分子線エピタキシー法、原子層堆積、有機金属気相成長法などのさまざまな方法によって成長し得る。これらの方法は、以降で説明されるように量子ナノ構造サイズの精密な制御を許可し、ひいては量子ナノ構造の発光色の制御を許可する、単分子層精度の成長制御を可能にする。
【0052】
前記量子ドットを第二の材料の層3内に作り出すために、該方法は、少なくとも一つの第二の材料層を荒仕上げする段階を含み得る。
【0053】
この過程をN回繰り返すことにより、一つの積層体がそのとき
図4で示されるように作り出される。一つの積層体内の積み重ねの数Nは、例えば4〜100個の積み重ねであり得、各積み重ねは、第一の材料の層4を一つおよび第二の材料の層3を一つ含む。これは最終的なラベル11の光度の増大をもたらす。
【0054】
この積層体は、不可視光の下では透明であるが、しかしUV照明の下でフォトルミネセンスによって出現する。
【0055】
ここで
図5および
図6を用いて、ほぼ目に見えない、非再放出部位を製造するための方法の第一の実施形態が記述される。
【0056】
この第一の実施形態において、積層体の層2、3、4は、
図8で示されるようなパターンまたはロゴ11を作り出すためにエッチングされる。このような場合、光輝性部分10と周囲空気との間の屈折率差が、境界面での光の部分的な屈折を作り出し、したがってモチーフは通常の光条件下でも目に見えるようになる。
【0057】
この問題を軽減するために、マーク12の、光輝性積層体がエッチングされる部分9は、
図6で示されるように、非光輝性材料6で満たされる。この材料6は、積層体の屈折率に類似した屈折率を有するように選択される。ここで、類似したというのは、屈折率が積層体の屈折率に近いということ、いずれにせよ周囲空気の屈折率よりも積層体の屈折率にずっと近いということを意味する。
【0058】
非光輝性材料6は、マーク12の全表面に堆積されてもよい。一実施形態において、この材料は、さらに光輝性部分10を覆ってもよい。
【0059】
ここで
図7および
図8を用いて、ほぼ目に見えない、非再放出部位を製造するための方法の第二の実施形態が記述される。
【0060】
この第二の実施形態において、
図7で示されるように、第一および第二の層3、4の積層体は、マーク12の全表面に堆積される。この実施形態において、マスク8は省略されてもよいが、しかしながらマスクはマーク12の境界を画定するために、またはマーク内の何らかのパターンを画定するために利用されてもよい。
【0061】
非光輝性部分9はそのとき、酸素、窒素、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、マグネシウム、リチウム、ベリリウム、ホウ素、リン、アルミニウム、亜鉛、ヒ素、ガリウム、シリコン、カドミウムなどのイオン、および/または光輝性積層体の性能を低下させることができるあらゆる種類の元素のイオン7を層の中へ組み込むことによって、この積層体内に作り出される。イオンは、露出部分9の中へ非輻射欠陥を作り出し、こうしてそれらの光輝性能力を不活性化する。
【0062】
積層体の、イオンが中に組み込まれる部分9を慎重に選択することによって、光輝性パターン11と非光輝性部分9とを有するマーク12を作り出すことが可能である。イオンは、マスク8を通して組み込まれてもよい。
【0063】
この目的のために組み込まれる必要があるのは限られた数のイオンだけなので、イオンは、露出部分9の屈折率を大幅には変更しない。光輝性部分10と非光輝性部分9との間の境界はこのように、全く目に見えない。
【0064】
マスク8は、一度限りのマスクであってもよい。それらはパーソナライズされていてよい。パターン11はしたがって、各製品についてただ一つだけのものであり得る。
【0065】
GaN/AlN量子ナノ構造によって放出される光の色すなわち波長は、バルクGaNまたはバルクAlNのエネルギーバンドギャップに加えて、幾つかの要因によって決まる。第一に、このような低次元量子ナノ構造におけるエネルギー量子化は、量子ナノ構造サイズに応じたエネルギー遷移を生じさせ、構造が小さくなるにつれて基本状態のエネルギーレベルは高くなる。第二に、GaNとAlNとの間の大きな偏波不整合は、およそ5MV/cmである、GaN/AlN量子ナノ構造における巨大電場をもたらす。この電場は、このような構造における有効な遷移エネルギーを減少させる。これは量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)として知られている。大きな分極電場によって誘導される強いQCSEは、量子ナノ構造によるUV吸収をもたらし、さらに可視光がこのような構造の基底状態から放出される。
【0066】
量子ナノ構造サイズを慎重に制御することにより、エネルギー遷移、したがって放出される光は、広範囲の色にわたって調整されることができる。
【0067】
先に説明されたように、他のパラメータが、発光色を調整するために利用され得る。実際には、量子ナノ構造内部の高いキャリア密度は、QCSEを遮蔽することができ、これによりブルーシフト発光が生じる。これは大きなポンプパワーの下に起こる。実際には、UV照度を低から高に変化させると、量子ナノ構造から放出される光は、黄色から緑色へまたは緑色から青色といった、より短い波長に転じる。この特徴はQCSEに起因するものであり、ひいてはGaN/AlN量子ナノ構造の特異的性質であって、例えばリン、またはツリウムやエルビウム、ユウロピウム、プラセオジムなどの希土類元素などの代替技術を利用することにより再現することはできないものであり、というのもそのような材料の発光色は、それらの固有特性によって決定されているからである。
【0068】
それゆえに、一実施形態において、マーク12は、再放出される光の色がUV光の強度によって決まる量子ナノ構造を用いて作り出され、これにより、再現するのがさらにいっそう困難である可変色の光輝性部分がもたらされる。
【符号の説明】
【0069】
1 製品
2 最初の層
3 第二の材料の層
4 第一の材料の層
6 非光輝性材料
8 マスク
9 非光輝性部分
10 光輝性部分
11 パターンまたはロゴ
12 マーク