(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記最終焼鈍する段階は、850℃〜1150℃の温度で露点温度10℃〜70℃の雰囲気で行う第1段階と、900℃〜1200℃の温度で露点温度10℃以下の水素及び窒素を含む混合ガス雰囲気で行う第2段階とを含む請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的とするところは、方向性電磁鋼板の製造方法及びこれによって製造された方向性電磁鋼板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:4.0%以下(0重量%を除く)、C:0.001%〜0.4%及び、Mn:0.001〜2.0%を含有し、残部はFe及びその他不可避的に混入される不純物を含むスラブを提供する段階と、スラブを再加熱する段階と、スラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する段階と、熱延鋼板を熱延板焼鈍する段階と、熱延板焼鈍された熱延鋼板を1次冷間圧延する段階と、冷間圧延された鋼板を脱炭焼鈍する段階と、脱炭焼鈍が完了した鋼板を2次冷間圧延する段階と、冷間圧延が完了した鋼板を最終焼鈍する段階と、を含み、最終焼鈍が終了した鋼板は、結晶粒内に存在する磁区の大きさ(2L)が鋼板の厚さ(D)より小さい(2L<D)ことを特徴とする。
【0006】
スラブは、Siを1重量%以下(0重量%を除く)含むことがよい。
スラブは、Alを0.01重量%以下(0重量%を除く)さらに含むことが好ましい。
スラブの再加熱温度は、1050℃〜1350℃であることができる。
1次冷間圧延する段階及び2次冷間圧延する段階における圧下率は、それぞれ50%〜70%であることがよい。
【0007】
冷間圧延された鋼板を脱炭焼鈍する段階及び脱炭焼鈍が完了した鋼板を2次冷間圧延する段階は、2回以上繰り返し行うことが好ましい。
脱炭焼鈍する段階は、800℃〜1150℃の温度で露点温度0℃以上の水素を含む雰囲気で行うことがよい。
最終焼鈍する段階は、850℃〜1150℃の温度で露点温度10℃〜70℃の雰囲気で行う第1段階と、900℃〜1200℃の温度で露点温度10℃以下の水素及び窒素を含む混合ガス雰囲気で行う第2段階を含むことが好ましい。
第1段階は300秒以下で行い、第2段階は60秒〜300秒間行うことがよい。
【0008】
冷間圧延する段階以降の最終焼鈍する段階は、連続して行うことができる。
最終焼鈍段階以降の電磁鋼板内の炭素量は、0.003重量%以下(0重量%を除く)であることがよい。
最終焼鈍が終了した鋼板は、{110}<001>方位から15度以内の方位を有する結晶粒の体積分率が50%以上であることができる。
最終焼鈍が終了した鋼板は、粒径が20μm〜1000μmの結晶粒の体積分率が50%以上であることが好ましい。
【0009】
本発明の方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:4.0%以下(0重量%を除く)、C:0.003%以下(0重量%を除く)及びMn:0.001〜2.0%を含有し、残部はFe及びその他不可避的に混入される不純物を含み、結晶粒内に存在する磁区の大きさ(2L)は鋼板の厚さ(D)より小さいことを特徴とする。
【0010】
Siを1.0重量%以下(0重量%を除く)含むことがよい。
Alを0.01重量%以下(0重量%を除く)さらに含みことが好ましい。
結晶粒内に存在する磁区の大きさ(2L)は、10〜500μmであることができる。
{110}<001>方位から15度以内の方位を有する結晶粒の体積分率が50%以上であることが好ましい。
粒径が20μm〜1000μmの結晶粒の体積分率が50%以上であることがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、最終焼鈍時コイル状態でバッチ(Batch)形態の焼鈍を行わず連続的な焼鈍を行い得る方向性電磁鋼板の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、短時間の焼鈍だけでも方向性電磁鋼板を生産することができる。
さらに、本発明の一実施例によれば、結晶粒成長抑制剤を使わない方向性電磁鋼板を提供することができる。
さらにまた、本発明の一実施例によれば、浸窒焼鈍を省略することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1、第2及び第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層及び/またはセクションを説明するために用いられるが、これらに限定されない。これらの用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションとの区別にのみ用いられる。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲から外れない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションといえる。
ここに用いられる専門用語は、単に特定の実施例を説明するためであり、本発明を限定することを意図しない。ここに用いられる単数形は文言においてこれと明確に反対の意味を有さない限り複数形も含む。明細書において用いられる「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素及び/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素及び/または成分の存在や付加を除くものではない。
【0014】
ある部分が他の部分の「上に」にあるという場合、これは、他の部分の真上または上にあるか、その間に他の部分が介在され得る。これと対照的にある部分が他の部分の「真上に」あるという場合は、その間に他の部分が介されない。
他に定義しないが、ここに用いられる技術用語及び科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。一般的に用いられる辞書に定義されている用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有するものとさらに解釈され、定義しない限り理想的又は過度に形式的な意味として解釈されない。
また、特に言及しない限り%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
以下、本発明の実施例について、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に行うように詳しく説明する。しかし、本発明は、様々な相異する形態に実現され得さ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0015】
一般に、変圧器のコア素材として電力変換に用いられる方向性電磁鋼板に求められる特性は、高い磁束密度と低い鉄損特性である。高い磁束密度の特性は、電力変換効率を高められるだけでなく、設計磁束密度を高めることが可能であり、少ないコア素材を使用して変圧器の大きさを縮小できる利点がある。さらに、電力変化過程で方向性電磁鋼板自体で発生する損失である鉄損の場合、変圧器の無負荷損失を減らすことができる利点がある。
これまで方向性電磁鋼板に関する研究及び技術開発は、ほぼ大部分が鉄損を減少させるために進められてきた。方向性電磁鋼板の鉄損は、大きく次のとおり履歴損失(Hysteresis Loss)、伝統的渦電流損失(Classical Eddy Current Loss)及び異常渦電流損失(Anomalous Eddy Current Loss)に区分される。
履歴損失の場合、方向性電磁鋼板が磁化程度によって発生する電磁鋼板自体の損失であって、方向性電磁鋼板に不純物や欠陥がなく、ゴス方位の集積度が高い場合は損失が小さい。
【0016】
伝統的渦電流損失は、方向性電磁鋼板が磁化過程において鋼板自体で発生する渦電流によって発生する損失であって、Si含有量を高め、鋼板の厚さを減少させることによって鋼板の渦電流を最小化して損失を減らす努力が行われてきた。また、他の異常渦電流損失は、変圧器が作動する交流下で方向性電磁鋼板磁区(magnetic domain)の移動及び回転に関する損失であって、磁区の大きさ(Magnetic domain size、2L)が微細なほど損失が減少する特性がある。異常渦電流損失を改善するための研究は、履歴損失と伝統的渦電流損失に対する研究より相対的に最近になって進められた研究であり、レーザを鋼板表面に照射することによって鋼板表面に局部的な応力を付与して一時的に磁区を微細化する方法や鋼板表面に一定のパターンの屈曲を付与して構造的磁区変化による永久的磁区微細化する方法などが開発されてきた。また、他の磁区微細化方法としては鋼板表面に膨張係数が異なるコーティング物質を塗布することによって鋼板表面に膨張係数差による張力を付与して磁区を微細化する方法までも開発されてきた。
【0017】
本発明者らは、方向性電磁鋼板の異常渦電流損失を減らすための研究を重ねた結果、方向性電磁鋼板の結晶粒の大きさを小さくすれば、磁区の大きさを小さくすることができ、これによって製造された方向性電磁鋼板全体の鉄損を画期的に減らすことが可能である事実を発見した。
通常、磁区の大きさは、結晶粒の大きさと下記式(1)の関係にある。
磁区の大きさ(2L)∝(結晶粒の大きさ)1/2 (1)
つまり、結晶粒の大きさが小さいほど磁区の大きさは小さくなり、これによって異常渦電流損失は減少する。
【0018】
異常渦電流損失は、伝統的渦電流損失と下記式(2)の関係にある。
Wea=[1.63*(2L/d)−1]*Wec (2)
式(2)において、Weaは異常渦電流損失、Wecは伝統的な渦電流損失、2Lは磁区の大きさ、dは鋼板の厚さを示す。
式(2)において、鋼板の厚さが一定であると仮定すると,磁区の大きさが減少するほど異常渦電流損失も減少する。
ゴス方位結晶粒の大きさを小さいくすれば、結晶粒大きさと磁区の大きさの関係式(1)に基づいて、画期的に磁区の大きさを減少させることが可能であり、これによって、方向性電磁鋼板の鉄損を画期的に減少させることができる。
【0019】
以上のことをまとめると、方向性電磁鋼板の鉄損を低減するためには、ゴス方位の再結晶粒形成による優れた磁化特性に応じた履歴損失の低減とSi含有量の増加と鋼板の厚さ減少による伝統的な渦電流損失の低減そして、最終的にゴス方位結晶粒の大きさを微細化することによって、磁区の大きさを縮小させて異常渦電流損失を減少させることが必要である。方向性電磁鋼板全体の損失を減らすためには、すべての履歴損失、伝統的渦電流損失そして異常渦電流損失をいずれも減少させることが好ましいが、場合によっては履歴損失や伝統的な渦電流損失の画期的な改善がなくとも、ゴス方位結晶粒の大きさを最少化して異常渦電流損失だけを大きく改善させることによって、生産が容易でかつ磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を製造することができる。
【0020】
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:4.0%以下(0重量%を除く)、C:0.001%〜0.4%及び、Mn:0.001〜2.0%を含有し、残部はFe及びその他不可避的に混入される不純物を含むスラブを提供する段階と、スラブを再加熱する段階と、スラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する段階と、熱延鋼板を熱延板焼鈍する段階と、熱延板焼鈍された熱延鋼板を1次冷間圧延する段階と、冷間圧延された鋼板を脱炭焼鈍する段階と、脱炭焼鈍が完了した鋼板を2次冷間圧延する段階と、冷間圧延が完了した鋼板を最終焼鈍する段階と、を含む。この他に、方向性電磁鋼板の製造方法は、必要に応じて他の段階をさらに含むことができる。
【0021】
以下では各段階別に詳しく説明する。
まず、重量%で、Si:4.0%以下(0重量%を除く)、C:0.001%〜0.4%及び、Mn:0.001〜2.0%を含有し、残部はFe及びその他不可避的に混入される不純物を含むスラブを準備する。
組成を限定する理由は次のとおりである。
シリコン(Si)は、方向性電磁鋼板の磁気異方性を低くして比抵抗を増加させて鉄損を改善する。本発明の一実施例では最終製品結晶粒の大きさを小さくして異常渦電流損失を大きく減少させることが特徴であるが、Siを添加すればするほど鉄損をさらに改善させることができるため、一定量以上を添加することが効果的である。したがって、冷間圧延が可能な含有量である4重量%の範囲まで、Si含有量を添加することができる。しかし、Si含有量が多過ぎる場合は、冷延時の脆性が増加して冷間圧延が不可能になる虞がある。さらに具体的にはSiを1重量%以下(0重量%を除く)とすることが好ましい。
【0022】
炭素(C)は、オーステナイト相変態を促進する元素であって、方向性電磁鋼板の熱延組織を均一にし、冷間圧延時ゴス方位の結晶粒形成を促進して磁性に優れた方向性電磁鋼板を製造するために必要な重要な元素である。しかし、最終製品にCが存在すると、磁気時効現象を起こして磁気特性を低下させるため、最終製造された電磁鋼板には、Cが0.003重量%以下にしなければならない。C添加による相変態及びゴス方位結晶粒の再結晶を促進するためには、スラブ内にCが0.001重量%以上添加されなければ効果が得られず、これより少ない含有量では不均一な熱延組織によって2次再結晶が不安定に形成される。しかし、スラブにCを0.4重量%超えて添加すると、熱間圧延時にオーステナイト相変態による微細な熱延組織の形成により1次再結晶粒が微細になり、熱間圧延終了後の巻取り過程や熱延板焼鈍後に冷却過程において粗大なカーバイドを形成する虞があり、常温ではFe
3C(セメンタイト)を形成して組織を不均一に導きやすい。さらに、脱炭工程及び最終焼鈍工程において0.003重量%以下に脱炭するのに焼鈍時間が長くなる問題がある。したがって、スラブ内のCの含有量は0.001〜0.4重量%に限定することがよい。
【0023】
マンガン(Mn)は、Siと同様に比抵抗を増加させて鉄損を減少させる効果もあり、Cと同様にオーステナイト相変態を促進して熱間圧延及び焼鈍工程で結晶粒の粒径を微細化させる重要な元素である。このようなMnの添加量を0.001重量%未満にすると、Cの効果と同様に相変態が十分行われず、スラブ及び熱延組織が粗大化して最終製品の結晶粒の粒径が微細にならない虞があり、比抵抗の増加による鉄損改善の効果も微々たるものとなる。さらに、Mnを2.0重量%を超えて添加すると、鋼板表面にFe
2SiO
4のほかにマンガン酸化物(Mn Oxide)が形成され、最終焼鈍工程で脱炭が円滑に行われなくなる。したがって、好ましいMnの添加量は、0.001〜2.0重量%であり得る。さらに具体的にMnの添加量は、0.01〜1.0重量%であることがより好ましい。
【0024】
本発明の一実施例でアルミニウム(Al)は、不可避的不純物として扱う。つまり、Alは、スラブ及び鋼板内でその含有量を最小化することがよい。具体的にAlをさらに含む場合、その範囲を0.01重量%以下に制限することが好ましい。
前述した成分は、本発明の基本構成であって、その他にも不可避的に含まれたり、磁気特性を向上させる他の合金元素が添加されても本発明の特徴であるゴス方位結晶粒の微細化による鉄損改善の効果を弱化させない。
前述した組成の溶鋼からスラブを製造する方法としては、分塊法、連続鋳造方法、薄スラブ鋳造またはストリップキャスティングが可能である。
次に、スラブを再加熱する。スラブの再加熱温度は1050℃〜1350℃であることができる。スラブの再加熱時の温度が低いと、圧延負荷が増加し、温度が高い場合は低融点の高温酸化物の形成によりスラブウォッシング(washing)現象が起こり、実収率が落ち、また、熱延組織が粗大化して磁性に悪影響を及ぼす問題が発生する。したがって、前述した温度範囲にスラブの再加熱温度を調節することがよい。
【0025】
次に、再加熱が完了したスラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する。熱間圧延時、オーステナイト相が存在する温度範囲内で熱間圧延して熱延鋼板を製造することがよい。オーステナイト相が存在しない低い温度では圧延負荷が増加するだけでなく、相変態による結晶粒微細化の効果も得られない。
次に、熱延鋼板を熱延板焼鈍する。熱延板は、再結晶及び相変態が可能な温度以上で熱延板焼鈍することがよい。具体的に高温加熱による低融点酸化層の生成を防止するため、850〜1150℃の温度で熱延板焼することができる。熱延板焼鈍時の雰囲気は、熱延板の脱炭反応が起こり得る0℃以上の露点温度及び水素ガスを含有する雰囲気であることが好ましい。
次に、熱延板焼鈍された熱延鋼板を1次冷間圧延する。熱延板焼鈍を行った後、鋼板を酸洗して冷間圧延してもよい。冷間圧延時の圧下率は50%〜70%であることがよい。
【0026】
次に、冷間圧延された鋼板を脱炭焼鈍する。冷間圧延鋼板は、再結晶のための焼鈍を行い、この時、脱炭反応が起こるように800℃〜1150℃の温度で、0℃以上の露点温度及び水素ガスを含有する雰囲気で焼鈍を行う。温度が低すぎると、脱炭が難しく、温度が高すぎると、厚い酸化層が形成され、むしろ脱炭反応が阻害される。露点温度が低すぎると、脱炭反応が阻害される。さらに具体的に露点温度は10〜70℃であることがより好ましい。
次に、脱炭焼鈍が完了した鋼板を2次冷間圧延を行う。冷間圧延時、圧下率は50%〜70%であることができる。冷間圧延された鋼板を脱炭焼鈍する段階及び脱炭焼鈍が完了した鋼板を2次冷間圧延する段階は、2回以上繰り返し行う。一例として、2回繰り返し行う場合、1次冷間圧延する段階、脱炭焼鈍する段階、2次冷間圧延する段階、脱炭焼鈍する段階、3次冷間圧延する段階、最終焼鈍する段階順に行う。この時、最後の冷間圧延する段階で最終製品の厚さまで冷間圧延を行い、それぞれの脱炭工程は、脱炭反応が起こるように800℃〜1150℃の温度で、0℃以上の露点温度及び水素ガスを含有する雰囲気で焼鈍を行う。
【0027】
次に、冷間圧延が完了した鋼板を最終焼鈍する。
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板の製造方法では、既存のバッチ(batch)方式と異なり2次冷間圧延に次いで連続して最終焼鈍を行うことができる。
最終焼鈍段階は、850℃〜1150℃の温度で露点温度10℃〜70℃の雰囲気で行う第1段階、及び900℃〜1200℃の温度で露点温度10℃以下の水素及び窒素を含む混合ガス雰囲気で行う第2段階で行うことがよい。第1段階は300秒以下で行い、第2段階は60秒〜300秒間行う。
最終焼鈍前の冷延板は、脱炭焼鈍が進行され、 素鋼炭素量が最小スラブの炭素量に対して40重量%〜60重量%残っている状態である。したがって、最終焼鈍時の第1段階では、炭素が抜け出しながら表層部に形成された結晶粒が内部に拡散する。第1段階では鋼板中の炭素量を0.01重量%以下になるように脱炭を行うことがよい。
【0028】
この後、第2段階では1段階で拡散されたゴス方位を有する集合組織が成長する。本発明の一実施例による方向性電磁鋼板の製造方法では、ゴス集合組織は、従来の正常ではない粒子成長によって結晶粒が成長した場合とは異なり、結晶粒の粒径は1mm以内となることができる。したがって、従来の方向性電磁鋼板に比べて結晶粒の粒径が非常に小さいゴス方位結晶粒からなる微細組織を得ることができる。
最終焼鈍が完了した電磁鋼板内の炭素量は、0.003重量%以下であることがよい。
最終焼鈍が完了した方向性電磁鋼板は、必要に応じて絶縁コーティング液を塗布した後、乾燥するとがよい。
【0029】
一方、従来のバッチ(Batch)形態に最終焼鈍時、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布するため、MgOコーティング層が存在するが、本発明の一実施例による方向性電磁鋼板は、バッチ形態でない連続式で最終焼鈍を行い得るため、MgOコーティング層が存在しないことがある。
本発明の一実施例により生成されたゴス(Goss)方位({110}<001>方位から15度以内の方位)の結晶粒は、冷間圧延及び脱炭焼鈍を繰り返すほどさらに増加する傾向を示し、少なくとも2回の冷間圧延及び脱炭焼鈍を行った時、鋼板内のゴス方位を有する結晶粒の体積分率は、少なくとも50%以上に増加する。
本発明の一実施例により生成された結晶粒は、粒径が5mm未満であり、20μm〜1000μmの結晶粒の体積分率が50%以上となる。結局、結晶粒内に存在する磁区の大きさは非常に小さくなる。従来の方向性電磁鋼板で見られる磁区の大きさは、通常鋼板の厚さより大きいが、本発明の一実施例により製造される鋼板は、結晶粒内に存在する磁区の大きさ(2L)が鋼板の厚さ(D)より小さく形成される。
【0030】
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:4.0%以下(0重量%を除く)、C:0.003%以下(0重量%を除く)及び、Mn:0.001〜2.0%を含有し、残部はFe及びその他不可避的に混入される不純物を含み、結晶粒内に存在する磁区の大きさ(2L)は鋼板の厚さ(D)より小さい。
方向性電磁鋼板の組成については、前述したスラブの組成と同一であり、方向性電磁鋼板の製造過程で組成範囲が実質的に変動しないので、重複する説明は省略する。ただし、前述したように、脱炭焼鈍及び最終焼鈍過程で脱炭されるため、炭素の含有量は0.003重量%以下となる。
【0031】
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板は、鋼板内のゴス方位を有する結晶粒の体積分率は、少なくとも50%以上増加して鉄損及び磁束密度に優れる。また、方向性電磁鋼板内の結晶粒の粒径は、20〜1000μmが50%以上となり、最大5mmを越えない大きさであって、この時、結晶粒内に存在する磁区の大きさは、鋼板の厚さより小さい大きさになる。このような微細な磁区構造によって、本発明で製造された鋼板の異常渦電流損失は、従来の方法で製造された方向性電磁鋼板の異常渦電流損失より画期的に減少して全体の鉄損を大きく改善させることができる。
さらに具体的に結晶粒内に存在する磁区の大きさ(2L)は、10〜500μmであることが好ましい。
【0032】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかし、この実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明はこれに限定されない。
実施例1
重量%でSi:2.0%、C:0.15%、Mn:0.05%を含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなるスラブを1100℃の温度で加熱した後、3mmの厚さに熱間圧延し、次いで、焼鈍温度1000℃で熱延板焼鈍を行った。冷却した後酸洗を行い、最終の厚さ0.27mmまで冷間圧延を行った。最終の厚さまで冷間圧延を行うことにおいて、冷間圧延と冷間圧延との間に脱炭焼鈍を含まず直接最終の厚さまで冷間圧延する方法と、冷間圧延と冷間圧延との間に脱炭焼鈍を1回以上含み、複数の段階を経て冷間圧延する方法を行った。脱炭焼鈍は、1000℃の温度で水素及び窒素の湿潤混合ガス雰囲気(露点温度60℃)で行った。
その後の最終焼鈍時には1000℃の温度で水素及び窒素の湿潤混合ガス雰囲気(露点温度60℃)で2分間焼鈍を行った後、1100℃の乾燥(露点温度0℃)水素及び窒素混合ガス雰囲気で3分間の焼鈍を行った。
【0033】
最終焼鈍処理が終了した鋼板でゴス方位結晶粒の分率と磁気特性との関係を比較して下記表1に示した。
ここで、ゴス方位の結晶粒分率評価は、通常の結晶方位測定方法に用いて理想的な{110}<001>方位から15度以内の誤差が見える方位の結晶粒の体積分率を測定した。
さらに、Kerr microscopyを用いて電磁鋼板を脱磁した状態で磁区観察による磁区平均大きさを測定した。
【表1】
表1に示したとおり、熱延板焼鈍を行った後に、最終の厚さまで冷間圧延過程で少なくとも1回以上の脱炭が起こる中間焼鈍を含む場合に最終製品にゴス方位の結晶粒の分率は少なくとも50%以上確保し得、微細な磁区の大きさが得られた。このような高いゴス方位分率及び微細な磁区の大きさによって最終製品において優れた磁束密度及び低鉄損の特性が得られた。
【0034】
実施例2
重量%でC:0.2%、Mn:0.05%を含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなるスラブのSi含有量を下記表2に示すように変化させて製造した。スラブを1150℃の温度で加熱した後、3mmの厚さに熱間圧延し、次いで焼鈍温度950℃で熱延板焼鈍を行った。冷却した後酸洗を行い、60%の圧下率で冷間圧延を行った。冷間圧延された板は、再び900℃の温度で露点温度60℃の水素と窒素の混合ガス雰囲気で再結晶及び脱炭焼鈍を行った。以降、同一の冷間圧延と脱炭焼鈍を2回さらに繰り返した。最終的に鋼板の厚さを0.23mmまで冷延した後、950℃の温度で露点温度60℃の水素と窒素の混合ガス雰囲気で180秒間脱炭焼鈍(1段階)を行った後、1000℃の乾燥(露点0℃)した水素雰囲気で100秒間熱処理(2段階)を行った。Si含有量変化に応じた最終焼鈍鋼板の磁気特性を表2に示した。
【0035】
【表2】
表2に示したとおり、Si含有量が4重量%以下は、複数の冷間圧延及び脱炭焼鈍により最終結晶粒の粒径1000μm以下の微細組織を確保し、この時磁区の大きさは、鋼板の厚さより小さい磁区の大きさを確保した結果、優れた鉄損を確保することができた。Si含有量が4重量%を超えた場合は脆性が増加して冷間圧延時の板破断により最終の厚さまで冷間圧延することが難しく、脱炭焼鈍時間のあいだ脱炭が行われず、非常に小さい結晶粒の粒径と劣位である磁気特性を示した。
【0036】
実施例3
重量%でSi:3.0%、C:0.25%、Mn:0.5%を含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなるスラブを1200℃の温度で加熱した後、2.5mmの厚さに熱間圧延し、次いで焼鈍温度1100℃、露点温度40℃の水素及び窒素混合ガス雰囲気で熱延板焼鈍を行い、冷却した後酸洗を行った後、65%の圧下率で1次冷間圧延を行った。次に、冷間圧延された板は、再び1050℃の温度で露点温度60℃の水素及び窒素の湿潤混合ガス雰囲気で脱炭焼鈍を行った。以降1次脱炭焼鈍板を最終0.30mmの厚さまで2次冷間圧延を行った後、最終焼鈍をした。最終焼鈍は、炭素含有量が0.003重量%以下となるように露点温度65℃の水素、窒素の湿潤混合ガス雰囲気で下記表3のように焼鈍温度を変更して脱炭焼鈍(1段階)を行った。最終的に脱炭焼鈍に次いで追加昇温して1150℃の露点0℃の乾燥した水素雰囲気で仕上げ熱処理(2段階)を行った。最終焼鈍が終了した鋼板の結晶粒の粒径及びKerr microscopyを用いた磁区の大きさを測定し、磁気特性と比較して下記表3に示した。
【0037】
【表3】
表3に示したとおり、最終焼鈍温度(1段階)が850〜1150℃である場合は、最終製品で結晶粒の粒径が20〜1000μmの比率が50%以上となりれ、そのために磁区の大きさも鋼板の厚さより小さい大きさとなって優れた鉄損特性示した。脱炭焼鈍温度が850℃より低い場合、磁区の大きさが非常に小さいにもかかわらず、全体的な磁気特性劣位である理由は、結晶粒の中にゴス方位分率が50%以下であるためと判断された。逆に、1150℃より高い場合は、結晶粒の粒径が粗大になることによって、磁区の大きさが鋼板の厚さより大きくなるため、鉄損が改善されなかった。
【0038】
本発明は、実施例に限定されず、互いに異なる多様な形態で製造するこよができる。本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施することができることを理解できるであろう。したがって、上に記した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものでないと理解しなければならない。