特許第6622929号(P6622929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6622929
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】体の温度を調整するための装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/04 20060101AFI20191209BHJP
【FI】
   A61B18/04
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-556916(P2018-556916)
(86)(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公表番号】特表2019-514561(P2019-514561A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】DK2017050130
(87)【国際公開番号】WO2017186249
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2018年12月21日
(31)【優先権主張番号】PA201670265
(32)【優先日】2016年4月28日
(33)【優先権主張国】DK
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518377115
【氏名又は名称】クラウス リー
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】クラウス リー
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−262983(JP,A)
【文献】 特開2010−207619(JP,A)
【文献】 特表2002−500915(JP,A)
【文献】 国際公開第2001/012061(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/036357(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0030145(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02238928(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/04
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体の温度を調整するためのシステムであって、
前記体の外側から前記体の内側の体腔までのチャネル(301)を提供するためのシース(300)であって、前記チャネル(301)に対して傾斜する案内セクション(304)を備えるシースと、
内部流体チャネルと、外部輪郭と、流体入口(221)と、流体出口(222)とを備える熱交換ユニット(220)であって、前記熱交換ユニットの前記内部流体チャネルの少なくとも一部は、前記シース(300)の前記チャネル(301)を通って挿入され、液体を、前記流体入口を通し、前記内部流体チャネルに入れて通し、前記内部流体チャネルから前記流体出口を通すように適合され、前記熱交換ユニットは、形状を変更するように適合され、前記熱交換ユニット(220)の前記内部流体チャネルから流体を除去したときに圧縮された形状(220’)が達成され、前記熱交換ユニット(220)の外部輪郭は、前記シース(300)の前記チャネル(301)の内径および前記シースの前記案内セクション(304)の内径より小さい熱交換ユニットと
を備えるシステム。
【請求項2】
前記案内セクションは、前記チャネルを回転させることによって、前記チャネルを通って延びる軸周りで回転可能である請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記案内セクションの角度は、前記チャネルに対して実質的に垂直である請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記シースは、前記シースを前記シースの周りの皮膚に固定するための締め付け手段(303)を備える請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記シースは、前記チャネル(301)の内側に自己シール手段(302)を備える請求項1から4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記自己シール手段は、圧縮可能な、少なくとも部分的に流体不透過性のスポンジを備える請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
通過する液体の温度を変更する治療制御手段(210)をさらに備える請求項1からのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムは、
液体を前記治療制御手段(210)から前記熱交換ユニット(220)の前記流体入口(221)まで通すための入口チューブ(201)と、
液体を、前記熱交換ユニット(220)の前記流体出口から前記治療制御手段(210)まで通すための出口チューブ(102)と
を備える請求項に記載のシステム。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載の体の温度を調整するためのシステム用の熱交換ユニット(220)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
体の温度を調整するための装置およびそのような装置のための構成要素に関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者の体の温度を制御することは、時に、医療治療の好ましくまたは重要な部分となる。これは、たとえば、特に低体温症の患者など、健康が危険となるまで体温低下した人の場合である。これらの患者は、正しく治療されない場合、死に至ることがあり、体の回復を助けようとするために、厳しい治療介入もしばしば実施される。
【0003】
最も簡単には、外側要素によって、たとえば毛布、温水などによって体を加温するか、または冷却することができる。
【0004】
より厳しい治療介入は体外加温であり、この場合、血液を患者から引き出し、外部ヒータによって能動的に暖め、その後血液を体に再導入する。これは、毛布などによる簡単な加温と比較して、より高い熱伝達速度を有するという利点を有する。
【0005】
さらに、特許文献1は、静脈内熱制御システムによって患者の温度を制御するためのシステムを開示しており、この場合、カテーテルを患者の静脈内に置き、カテーテル内の液体の温度を制御することにより、患者の血液の温度を制御し、こうして患者を冷やすか、または加温する。これは、患者の体から血液を引き出さず、したがってこの方法では体を痛めにくいという利点を有する。
【0006】
特許文献2、特許文献3、特許文献4、および特許文献5は、血流内の種々の配置および血流内のカテーテルの種々の形状を有する静脈内温度制御装置のバリエーションを開示している。これらはすべて、静脈内熱制御の効率性を向上させようとするものである。
特許文献6は、血管に挿入するためのカテーテル、すなわち静脈内温度制御装置を開示する。前記カテーテルは、冷却剤用の入口および出口を備え、拡張可能なバルーンをさらに備える。さらに、カテーテルは、シースを通って挿入されるように適合される。カテーテルは、冷却剤供給ラインおよび冷却剤戻りラインを介して冷却システムに連結され得る。
特許文献7は、クモ膜下腔内でナビゲートし、手順を実施するのに有用なカテーテルを開示する。したがって、前記カテーテルは、血管に入るように設計されると理解される。本発明の実施形態では、カテーテルは、遠位端部内に、入口および出口を通して液体が供給される熱交換要素を備える。液体は、熱交換器を通り過ぎることができる。したがって、この文献は、静脈内温度制御装置と考えられてよい。
特許文献8は、外科的アクセスポータルを開示し、すなわちシースに関し、このシースは、シール・ハウジングと、スリーブ・ハウジングに装着された、下にある組織へのアクセスをもたらすように適合された内部の長手方向通路を有するスリーブとを備える。スポンジが、シールの遠位に配設され、シール・ハウジングに入る流体を吸収する。
特許文献9は、カニューレを開示し、すなわちシースに関し、このシースは、組織内で完全につぶれるように可撓性であってよいが、依然として器具がポータルを通過することを可能にし得る。
特許文献10は、トロカールを開示しており、すなわち、上を覆う組織内の開口部を通って、下にある組織へのアクセスがもたらされる外科手順に使用するためのシースに関する。トロカールは、操作部および挿入部を含み、前記挿入部は、剛性管部分と、移動可能なリンクから構成された角度(曲げ可能な)部分とを含む。曲げ可能な部分は、下にある組織の内側になると曲がることができ、それによってトロカールを介して作動される器具を前記下にある組織の内側で種々の方向に向けることができる。
特許文献11は、患者の大静脈系、すなわち血管に入るように設計された導入シースおよびカテーテルを開示する。したがって、この文献は、静脈内温度制御装置に関する。シースは、前記カテーテルの使用前にカテーテルを正しい位置に配置するように特に設計される。カテーテルは、少なくとも熱交換要素を備える。カテーテルは、体内への挿入に合わせて適合された全体的に円筒形状の実質的に細長い構造体である。カテーテルの適切な材料を選択する際の考慮には、座屈に対する抵抗が含まれることが明示的に述べられている。熱交換要素は、カテーテルの幅周りに径方向に配設された流体担持式の膨張可能なバルーンとして配置される。好ましい実施形態では、バルーン直径は、4mm〜10mmである。第1の管腔は、流入チャネルの役割を果たして、バルーンに熱交換流体を供給し、熱交換流体はカテーテル内で循環される。第2の管腔は、流出チャネルの役割を果たす。
【0007】
あるいは、加熱または冷却された液体を患者内側の体腔内に直接注射することができる。たとえば、低体温症を治療するために、加熱された液体が、胸腔または腹腔内に注射される。これは、加温が最も重要である体内の中央で加温するという利点を有する。
【0008】
簡単な加温の場合、熱伝達は、多くの場合十分な助けとならない。体外加温は、簡単な加温より早いが、血液は通常、心臓の遠くの静脈から取り除かれ、熱伝達はそのため中央では達成されないため、依然としてすべての状況に十分な早さではない。
【0009】
静脈内熱制御は、これが加温であれ、冷却であれ、患者の血流内に異物を挿入することを必要とする。熱伝達に関して最適な結果を達成するために、カテーテルをできるだけ心臓の近くに挿入しなければならず、したがって先進の外科的処置を必要とする。さらにより複雑になると、これらのシステムが心臓の近くに導入されるとき、これらの設計は、熱伝達を向上させるために最大表面積を目指し、必ずかなりのサイズを必要とする。血液の流れは、そのため必ず妨害され、それによって血液凝固、またはさらに正確には血栓症に関連するさらなる合併症を生み出し得る。静脈内加温が利用される場合、抗凝固薬が必要とされ、それによってこれらに付随する合併症をもたらす。
【0010】
患者の体腔内に加熱または冷却された液体を直接注射して患者の温度を制御することで、患者の体内には液体が必ず蓄積され、これは排出されなければならない。使用される液体は、患者と直接接触しているため、さらに使用することは安全ではない。この方法による治療は、100リットルもの医療級の等張食塩水液を使用し得る。液体を多く使用することに加えて、電解質バランスを崩壊させることがあり、それによって塩が食塩水液と共に洗い出される。最後に、胸腔は、2つの体腔のうち患者の心臓および肺の最も近くにあるため、この中で加温が実行されることが最も好ましい。しかし、液体を胸腔内に注射することにより、肺の機能を保持するのに必要とされる真空が取り除かれ、その結果肺に穴をあける。
【0011】
さらに、上記で説明した方法はすべてかなりの量の装置を必要とし、それによって患者の治療は病院に限定される。救出された人の治療をヘリコプタまたは救急車内で開始することができず、治療が大幅に遅れ得るため、これは問題である。さらに、心臓関連の外科的処置に必要とされる専門家を対策チームで使えないこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2006/036357号
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/151942号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/044387号明細書
【特許文献4】国際公開第0158397号
【特許文献5】米国特許第6685733号明細書
【特許文献6】国際公開第01/12061号
【特許文献7】国際公開第2004/060465号
【特許文献8】欧州特許出願公開第2238928号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2009/182288号
【特許文献10】特開平10−262983号公報
【特許文献11】米国特許第6733517号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、体の温度を調整するためのシステムおよび装置であって、前記体の外側から前記体の内側の体腔までのチャネルを提供するためのシースであって、前記チャネルに対して傾斜する案内セクションを備える、シースと、内部流体チャネルと、外部輪郭と、流体入口と、流体出口とを備える熱交換ユニットであって、前記熱交換ユニットの前記内部流体チャネルは、前記流体入口と前記流体出口との間に一連のチャネルを備え、前記熱交換ユニットは、前記シースのチャネルを通って前記体の内側の体腔内に圧縮状態で挿入されるように適合され、流体入口に入り、熱交換ユニットに入る液体は、一連のチャネルを拡張させ、最終的には熱交換ユニットを完全に拡張させ、こうして液体が、前記流体入口を通り、前記一連のチャネルに入り、前記一連のチャネルから前記流体出口を通ることを可能にする。
【0014】
このシステムにより、より優しい操作を患者上で実施することができ、それによって望ましくは深刻な外傷を回避しながら、効果的で迅速な温度調整を供給する。
【0015】
体とは、動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくは人の体を意味する。体腔とは、上記で説明した熱交換ユニットを受け入れることができる体の内部区画を意味する。好ましくは、胸腔または腹腔を意味する。本発明の実施形態では、それによって血管は包含されないことが明示的に理解される。
【0016】
本発明の実施形態では、シースは、さらに、前記シースを前記シース周りの皮膚に固定するための締め付け手段を備える。それにより、案内手段の正しい配向が確立されると、この配向を好都合に維持しながら、患者の体腔の減圧を回避することもできる。
【0017】
本発明の実施形態では、熱交換ユニットは、右胸腔、左胸腔、腹腔、または体腔の任意の組み合わせに挿入される。それにより、血管を貫通することなく、体の中央領域へのアクセスが得られる。
【0018】
本発明の実施形態では、シースは、さらに、前記チャネルの内側に自己シール手段を備える。それにより、患者の体腔の減圧を回避しながら、操作手順を段階的に実行し、患者に苦痛を与えることなくシースを挿入した後、中断することを可能にもする。
【0019】
本発明の実施形態では、熱交換ユニットは、形状を変更するように適合され、前記熱交換ユニットの前記内部チャネルから流体を除去した場合、圧縮された形状が達成され、前記熱交換ユニットの外部輪郭は、前記シースの前記チャネルの内径より小さい。それにより、熱交換ユニットは、これでない場合に同じサイズの穴を通って可能であるものより大きい表面積を有して、体腔内に挿入され得る。
【0020】
本発明の実施形態では、少なくとも2つの熱交換ユニットが、患者の少なくとも1つの体腔内に挿入されてよく、たとえば熱交換ユニットを各胸腔に挿入する、1つを胸腔に、1つを腹腔に挿入する、またはさらに複数を各々に挿入するなどがある。これにより、好都合には、熱交換ユニットを中央に置くことを可能にする。これにより、患者を早く、中央で加温することが達成される。
【0021】
本発明は、さらに、本発明によるシステムで使用するためのシースおよび熱交換ユニットに関連する。
【0022】
本発明の実施形態では、これは、さらに、本発明によるシステムの一部として使用される、治療制御手段および入口チューブおよび出口チューブに関する。
【0023】
以下では、例示の実施形態が本発明によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】患者および有利な挿入領域の側面図である。
図2】本発明による液体熱制御システムの図である。
図3】本発明によるシースの断面図である。
図4】本発明による胸膜加温装置の図である。
図5】本発明による、患者に挿入されたシースの図である。
図6】本発明による、患者に挿入された熱伝達ユニットの図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1では、患者の好ましい挿入場所が見られる。体の任意の場所を使用することができるが、ここではわきの下の挿入が、胸腔内への非外傷的アクセスを達成するための有用な場所となり得る。たとえば2つの肋骨間に切開が行われる。胸腔へのアクセスは、好都合には、1.5cm〜2cm幅の切開を行うことによって達成されるが、切開のサイズに関して技術的制限はない。
【0026】
図2は、本発明による液体熱伝達システム200を示す。この液体熱伝達システム200は、体から熱を吸収するか、または体に熱を放射するための熱交換ユニット220と、熱調整液体を温めるか、または冷却するための治療制御器ユニット210と、治療制御器ユニットと熱交換ユニットとの間で熱調整液体を移送するための入口チューブ201および出口チューブ202とを備える。
【0027】
熱交換ユニット220および治療制御器210は、入口チューブ201および出口チューブ202を介して連結される。入口チューブは、治療制御器を熱交換ユニットの入口に連結する。実質的に目標温度を有する液体が、入口チューブを流れ抜ける。出口チューブは、熱交換ユニットを温度調整装置に連結し、出口チューブを流れ抜ける液体は、実質的に体の温度を有する。これにより、閉液体ループが確実にされる。閉液体ループは、胸腔内に直接液体を注射するのに比べて、加温の結果となる肺の圧縮の限定を可能にすると共に、体腔内に液体が自由に流れるのに比べて、液体の使用を著しく制御し、少なくすることを可能にする。
【0028】
熱交換ユニット220は、図2には、圧縮された熱交換ユニット220’として示される。この状態では、熱交換ユニットは流体を有さず、したがって、患者に挿入するように準備されている。熱交換ユニットは、液体と体との間で熱を伝達するために液体が流れ抜けるチャネルである。
【0029】
熱交換ユニットは、可撓性材料から形成され、それによって熱交換ユニットが体内への挿入前に圧縮され、次いで、挿入後に拡張可能であることを可能にする。この圧縮は、さまざまな方法で実行されてよく、この場合、挿入後に内部チャネル内に液体を導入することによって容易に拡張させるために、熱交換ユニットを波様の形で曲げることが有利になり得る。しかし、これは、無作為になどの異なるやり方で巻かれるか、または圧縮されてよい。熱交換ユニットは、製造時などの、液体システム200との連結前に圧縮されるか、または治療制御器によって圧縮される。本発明の実施形態では、熱交換ユニットは、実質的に円筒形状になるように、または楕円断面を有するように自動的に圧縮する。この状態では、熱交換ユニットの外径は、シースの内径より小さく、したがって熱交換ユニットをシース300に通して挿入することができる。本発明の別の実施形態では、熱交換ユニット220の圧縮は、圧縮中、嵌合直径を有するチューブにこれを挿入することによって強化される。嵌合直径は、シースの直径に等しい直径であってよい。
【0030】
熱交換ユニット220は、シリコーン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、または別の材料などの可撓性の医療級材料、通常はポリマーで製造され、入口221および出口222である少なくとも2つの開口部を有する。
【0031】
治療制御器ユニット210は、これを通過する液体を加熱または冷却するように適合される。これは、加熱要素または冷却要素によって達成される。本発明の1つの実施形態では、温度制御器ユニットは、液体を所定の値まで加熱または冷却する。別の実施形態では、目標温度を変更することができる。これは、異なる状況が異なる目標温度を必要とし得るため、特に有用である。また、これにより、最初に液体を高速で加熱または冷却することによってより早い作用が可能になる。
【0032】
本発明の実施形態では、目標温度を変更することができる場合、治療制御器210は、加熱要素および冷却要素の両方を備える。
【0033】
本発明の実施形態では、熱伝達システムは、さらに、熱伝達液体に関連するパラメータを測定する感知ユニットを備える。これらのパラメータは、液体圧力または液体温度の少なくとも1つを含む。たとえば、液体圧力は、チューブ201、202のいずれか、または両方において監視され得る。温度は、チューブ201、202のいずれかおよび/または熱交換ユニットにおいて監視され得る。出口チューブ内の温度を測定することにより、液体へのおよび/または液体からの、治療に関する情報を与える伝達された熱を評価することが可能になる。本発明の別の実施形態では、温度は、入口チューブにおいて、出口チューブにおいて、および熱交換ユニットに対応する位置において監視され、それによって患者への熱伝達を正確に算出して、シース内側における入口チューブと出口チューブとの間に発生するいかなる損失も補償することができる。
【0034】
図3は、本発明によるシース300の断面図であり、前記シース300は、熱伝達ユニットを置くための患者の所望の体腔への好都合なアクセスを可能にするように適合される。シース300は、圧縮された熱交換ユニット220’をそこから挿入するためのチャネル301と、使用前、使用中、および/または理想的には使用後にチャネルからの体腔の減圧を阻害するための前記チャネル301内側の自己シール手段302と、シースを体に締め付け、シース周りの減圧および出血を阻害するための締め付け手段303と、所望の体腔、好ましくは胸腔の内側に入った後、挿入されたシースを所望の方向に向けるための案内セクション304とを備える。
【0035】
チャネル301は、穴を拡張させたままにすることを可能にする実質的に硬質の円筒形状を有するなど、さまざまな形状を有することができる。別の実施形態では、シースは、実質的により軟質の材料から作製されるが、チャネルの長さに沿ってチャネルの壁内に埋め込まれた金属ワイヤまたは硬質プラスチックのシートもしくはチューブなどの、より硬い材料の少なくとも2つの細長い要素を備え、それによって、シースを体の内側でも回転させ制御することができる。この実施形態では、シースは、体によって及ぼされた圧力に対してこの円筒形状を自動的に保持せず、その代わり、実質的には、穴が閉じることを可能にして、胸腔の減圧をこうして回避する。
【0036】
好ましくは、シースを通る内部チャネルは、自己シール手段302を備える。これは、シース300のチャネル301による胸腔の減圧を阻害すると共に、流体連通を限定するか、または回避し、したがって汚染を回避する可能性のために望ましい。自己シールとは、シースが、患者に挿入される間、患者の体腔と外側との間の流体連通を少なくとも阻害することを可能にする構造体を意味する。自己シール手段は、反復的にシール可能である必要はなく、したがって、別の治療において破損可能であるフィルムであってよい。本発明の好ましい実施形態では、自己シール手段は、挿入時に熱交換ユニットの周りをシールし、次いでチューブ周りをシールしながら、熱交換ユニットが詰まることなく、熱交換ユニットを引き出すことも可能にする。
【0037】
本発明の実施形態では、この自己シール手段は、少なくとも2つの硬化要素をシースの長さに沿って備えた、可撓性であるチャネル301によって形成される。この実施形態では、シースの可撓性壁は、シースの壁を、体の力の下で互いに向かって押しつけることを可能にして、それによってシースを少なくとも部分的にシールする。
【0038】
本発明の実施形態では、チャネル301には、自己シール膜が嵌合される。本発明の別の実施形態では、シールセクションには、チャネルの径方向壁の内側に沿って接着された、閉セルまたは開セル発泡材料などの圧縮可能であり、少なくとも部分的に空気不透過性である材料が嵌合される。この材料は、体腔の減圧を実質的に限定しながら、熱交換ユニットの挿入時に熱交換ユニットがこの材料をチャネルの内壁に向かって外方向に押し出すことを可能にする。本発明の実施形態では、自己シール機能は、可撓性チャネルと、チャネル301の内側の圧縮可能であり、少なくとも部分的に空気不透過性である材料の層との組み合わせによって達成される。
【0039】
シースは、締め付け手段303によって、治療中に患者の体に締め付けられる。好都合には、この手段は、接着剤であり、この接着剤は、患者の体に接着するように嵌合されて、シース周りに流体密封シールをさらにもたらす。これは、さらに、穴とシースとの間の胸腔へのアクセスの結果、胸腔が減圧されないことを確実にする。胸腔へのアクセスは、このとき、シース300を通るチャネル301に限定される。
【0040】
案内セクション304は、熱交換ユニット220を、案内セクション304の配向によって定められた特有の方向に案内することができる。有利には、シースは、円形コーナを備えたL字形状である。チャネルから最も遠い案内セクションの端部は、硬質材料を含まず、可撓性材料から作製されて、シースの回転が、体腔に対して過剰な外傷を引き起こさないことを確実にする。案内セクションの配向を、挿入後、その配向を視覚的に決定できないときに制御するために、好ましくは、チャネルは、締め付け手段の上方にマークを有して配向を明示する。
【0041】
図4は、熱交換ユニット220がシース300を通って挿入されており、その後、流体の挿入によって拡張されている状態にある胸膜熱制御装置400を示す。
【0042】
図4では、熱交換ユニット220の例示的な実施形態が、拡張された状態220”で示される。熱交換ユニット220は、2つの外部表面と、内部チャネルとを備える。熱交換ユニットは、たとえば熱調整液体がその間を流れる2つのシートなどのさまざまな形状をとることができ、好ましくは、毛細管網のように成形される。毛細管網とは、入口221から出口222まで、一連のチャネルを通って走るチャネルと理解されてよく、この場合、これらの一連のチャネルは、入口および出口では少なく、広くなることができ、熱交換ユニット220の半分のところでは細く、より多くなることができる。本発明の別の実施形態では、毛細管網は、一連のチャネルを明示するにすぎず、この場合、これらは、内部チャネル内で任意のやり方で分岐し、収束することができる。これらのチューブは、有利には、2つの相互に接着されたシートの内部表面であってよく、したがって、構造的完全性を毛細管網に与えることは、少なくともチューブが、熱伝達率を保持する間、絡まらずまたは互いに対して変位しないことを意味する。本発明の実施形態では、これは重要であり、その理由は、熱交換ユニットは流体内容に応じて拡張および収縮できる必要があるためである。
【0043】
本発明の実施形態では、熱交換ユニットが少なくとも2つの異なる形状をとることができるように適合される場合、これは、少なくとも1つ、可能であれば2つ、有利には少なくとも3つの細長い剛性要素を備え、これらの剛性要素は、入口チューブおよび出口チューブに平行な方向に走っている。これらの要素は、流体を取り除いたときに、熱交換要素の圧縮に少なくとも部分的に耐えるように適合され、したがってこの圧縮を挿入方向に実質的に垂直に実行させる。この要素は、より太いおよび/または異なるプラスチック材料、または被覆された金属ワイヤまたは曲げることができる金属シートなどの任意の有用な材料であってよい。
【0044】
本発明の実施形態では、熱交換ユニットが少なくとも2つの異なる形状をとることができるように適合される場合、これは、少なくとも1つの細長い、実質的に弾性の要素を備え、この要素は、熱交換ユニットの挿入方向に垂直に走り、熱交換ユニットが圧縮されたときに緩和された状態にあり、熱交換ユニットが拡張された状態にあるときに拡張された状態にある。除圧時、この弾性材料は、圧縮が挿入方向に実質的に垂直に実施されることを確実にする。この要素は、任意のゴムタイプ材料などの任意の有用な材料のものであってよい。
【0045】
熱交換ユニット220は、入口221および出口222である少なくとも2つの開口部を有し、2つの開口部は、熱交換ユニット220の流体チャネルの対向端部に置かれる。これらの2つの端部は、流体チャネルおよび熱交換ユニットの特有の形状に応じて物理的に互いに近づいて置かれ得る。たとえば、熱交換ユニットを実質的にU字形状として構築することにより、流体チャネルは、物理的に互いの近くで開始および終了して、両方の開口部が熱交換ユニットの最後の部分として患者に入ることを可能にし、それによって単一の穴が入口カテーテルおよび出口カテーテルの両方を保持することを可能にする。ここで述べた同じ原理を使用して他の形状を考案することもでき、たとえば、実質的にM字形状、波形状、円形または正方形もある。本発明の実施形態では、熱交換ユニットはU字形状である必要はなく、その代わり、流体チャネルがU字形状であるだけでよい。
【0046】
入口チューブ201および出口チューブ202の流体圧力を監視し、これらを比較することにより、熱交換ユニットの制御された拡張を達成することができる。熱交換ユニットが圧縮され、所望の位置に挿入されたとき、入口チューブを通して熱制御液体を挿入することで、熱交換ユニットが拡張する。これは、入口チューブ内の圧力を増大させ、この場合出口チューブは、依然として空であることができ、または大きな液体圧力を有していないことができる。本発明の実施形態では、流体の流れは、出口チューブ内でブロックされ、それによって入口チューブを通って挿入された液体は、必ず熱交換ユニットを拡張させる。熱交換ユニットが拡張にするにつれて、この拡張に対する抵抗が、入口チューブ内に圧力を生み出し、この圧力は、次いで、治療制御器ユニット内で測定される。熱交換器ユニットが完全に拡張されたとき、流れが増大して圧力降下を促し、この圧力降下を使用して液体循環を開始する。理想的には、熱交換ユニットおよびカテーテルが圧力上昇によって破損しないことを確実にする耐性が観察されなければならない。これは、手動でまたは理想的には治療制御器ユニットによって実施され得る。
【0047】
図5は、本発明による治療の第1のステップの側面図である。最初に、好ましくは胸腔(図示せず)などの所望の体腔に切開が行われる。胸腔を使用することにより、体内の中央位置が使用され、ここでは、体の血液の流れに直接的に介入せずに心臓および肺に近接近して熱交換が実施される。心臓および肺が加温される。これは、心臓および肺が血液循環系の中央であるため効果的である一方で、血液循環系を直接開かないことで、一連の合併症を回避する。切開が行われた後、シース300が、生み出された穴に挿入される。
【0048】
案内セクション304が最初に挿入される。シースの長さが穴の内側になったとき、シースを穴の内側で制御可能に回転させることができ、この場合シースの回転は案内セクション304を回転させる。一実施形態では、シースは、案内要素を図5Aに示すように体の長さおよび平面Aに平行に向けて挿入される。次いで、図5Bに見られるように、シース300は、約90度、または熱伝達ユニット220を体の前中心に向かって、したがって実質的に肺および/または心臓上に向けるように案内要素をもっていくのに適した別の角度に回転される。この角度は、実質的に平面Bである。この所望の配向は、平面Bに対して、いずれかの方向にさらに90度、好ましくは45度、または最も好ましくは25度の角度だけ、平面Bから実質的に変化することができる。方向Aのこの挿入により、挿入の容易さが達成される。平面Bに回転することにより、最も効果的な治療が達成される。
【0049】
本発明の実施形態では、シースは、穴に挿入され、案内要素がシースを所望の角度に向けるように回転された後、次いで、締め付け手段303によって体に締め付けられる。これにより、案内要素はその正しい配向を保持することを確実にする。治療は、この時点でシース内の自己シール手段によってほんのしばらく一時停止され得る。それにより、比較的短い移送であっても、本発明による治療に使用して、実施されるその後のステップの準備をすることができる。
【0050】
図6は、本発明による治療のその後のステップの側面図である。最初に、熱交換ユニット220は、図6Aに見られるように、意図する案内角度で準備されているシース300内で移動される。熱交換ユニットはその所望の角度に挿入されたとき、液体が入口チューブ201を通って熱交換ユニット220内に移動される。液体が熱交換ユニットに入るにつれて、この中を走るチャネルをこの液体が拡張させ、最終的には熱交換ユニットを完全に拡張させ、これは図6Bに見られる。熱交換ユニットが完全に拡張されたとき、流体の流れは増大し、したがって入口チューブにおいて圧力低下を促進させ、流体循環が開始するのを合図し、治療制御器ユニットは出口チューブから液体を引き出す。
【0051】
熱交換ユニットおよびカテーテルがシース内で移動されるとき、熱交換ユニットまたはカテーテルは、シースの内側に嵌合するプラグなどの流体シール手段、または穴周りの領域に締め付けられる接着剤表面を含むことができる。これは、熱交換ユニットが通り抜けた後、シース300の自己シール手段302がそのシール能力を失う場合、たとえばこれが破損可能な膜である場合などに特に有利である。
【0052】
本発明の実施形態では、熱交換ユニットは、挿入されたときには最少容積を有するが、挿入され拡張されたときは最大表面積を有するように設計される。
【0053】
使用後、熱交換ユニットは圧縮され、その後、シースを通って体腔から慎重に引き出される。
【0054】
この方法により、わきの下の穴を通って胸腔にアクセスする従来の操作手順が、新しいステップと併用されて本発明の手段を達成することができ、そのため、本発明によって治療するために実際されなければならない複雑または特殊な方法は、全くまたはほとんどない。専門家がいない状況であっても、現場で、または病院への移送中に操作を開始するか、または完了することができる。シースを挿入することは簡単な手順であり、熱交換ユニットを挿入し、動かすには、閉式液体システムと、このシステムに含まれる、10リットル、5リットル、4リットル、3リットル、2リットル、1リットルまたはさらには0.5リットルの少なさであってよい比較的少量の生理食塩水とを必要とするだけである。
【0055】
さらに、本発明の実施形態では、2つの平行な熱交換システムを、患者の2つの胸腔の各々に1つずつ挿入して同時に作用させることができる。別の実施形態では、任意の数の熱交換ユニットが同時に使用されてよい。当技術分野では、生理食塩水の直接的注射により、1つの胸腔に生理食塩水が充填され、他方は排出される。したがって、本発明は、極めて高いおよび/またはより制御された熱伝達率をさらに達成する。
【0056】
本発明の実施形態では、熱交換ユニットは、シースの途中までしか挿入されない。
【符号の説明】
【0057】
101 好ましい挿入領域
200 液体熱伝達システム
201 入口チューブ
202 出口チューブ
210 治療制御デバイス
220 熱交換ユニット
220’ 圧縮された熱交換ユニット
220” 拡張された熱交換ユニット
221 入口
222 出口
300 シース
301 チャネル
302 自己シール手段
303 締め付け手段
304 案内セクション
400 胸膜加温装置
A 好ましい挿入方向
B 好ましい案内方向
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B