(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
<燃料供給装置>
はじめに、本発明の一実施形態に係る燃料供給装置について、図を参照しながら説明する。なお、以下の各図において、共通する構成については同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る燃料供給装置の構成を模式的に示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る燃料供給装置10は、水蒸気改質を行う改質ユニット100と、水蒸気改質により生成した改質反応生成物(反応生成物)を熱交換する熱交換ユニット(110,120,130)と、を備えている。
【0023】
熱交換ユニット(110,120,130)は、改質ユニット100の後段に備えられており、三段の熱交換器によって構成されている。熱交換ユニット(110,120,130)は、前段側から順に、第1熱交換器(第1熱交換部)110と、第2熱交換器(第2熱交換部)120と、第3熱交換器(第3熱交換部)130と、によって構成されている。
【0024】
燃料供給装置10は、水蒸気改質によって改質燃料を生成する機能と、生成した改質燃料を内燃機関に供給する機能と、を有している。燃料供給装置10は、ガス燃料と過熱蒸気とを含む混合ガスを水蒸気により水素改質(水蒸気改質)して、水素ガスを含む改質燃料を生成する。そして、生成した改質燃料を内燃機関に供給する。
【0025】
燃料供給装置10は、内燃機関の前段側に備えられる燃料供給系統に設置することによって、内燃機関の燃料を従来のガス燃料から改質燃料に切り替えることができる。燃料供給装置10は、ガス燃料の単位供給量に対する内燃機関の燃焼効率を、改質燃料の供給によって向上させることを可能とするものである。
【0026】
水蒸気改質によって生成する水素は、従来のガス燃料の主成分であるメタン等の炭化水素と比較して、燃焼速度が速く、燃焼の安定性が高い性質を有している。そのため、内燃機関の燃料を従来のガス燃料から改質燃料に切り替えると、内燃機関の燃焼特性が劣っている場合であっても、内燃機関における燃焼効率が向上し、本来供給されるはずのガス燃料の単位供給量に対して、内燃機関で生じる燃焼エネルギ(発熱量)の合計を増大させることができる。
【0027】
燃料供給装置10によって改質燃料を供給する内燃機関としては、例えば、ガスエンジン、ガスタービン、燃料電池等が挙げられる。以下の説明では、燃料供給装置10の後段にガスエンジンを設置する場合を例にとり、燃料供給装置10等の実施形態について説明を行う。
【0028】
燃料供給装置10には、
図1に示すように、改質燃料の原料として、ガス燃料と過熱蒸気とを含む混合ガスが供給される。混合ガスは、内燃機関の前段側に備えられる燃料供給系統上において、炭化水素を主成分とするガス燃料と、所定の温度に過熱された過熱蒸気とが、互いに混合されることによって生成される。
【0029】
ガス燃料としては、好ましくはメタンを主成分とする炭化水素系の燃料を用いることができる。炭化水素系の燃料としては、例えば、13A、12A等の都市ガスが挙げられる。代表的な都市ガスである「13A」は、約90%のメタンと、約10%未満のエタン、プロパン、ブタンを含有している。ガス燃料としては、LPG、CNG、バイオガス等や、これらを混合した混合ガスが用いられてもよい。
【0030】
過熱蒸気としては、例えば、290〜300℃付近まで過熱された水蒸気を用いることができる。このような比較的低温の過熱蒸気は、ガスエンジンから排出される排気ガスの廃熱で容易に生成させることができる。このような比較的低温の過熱蒸気によると、改質反応の反応効率は低くなるものの、ガスエンジンの燃焼室への導入に適合した許容最大温度以下の改質燃料を生成させることができる。
【0031】
改質ユニット100は、ガス燃料と過熱蒸気とを含む混合ガスを取り込み、混合ガスに含まれる炭化水素を水蒸気により水素改質(水蒸気改質)して、改質燃料となる水素ガスを含む改質反応生成物を生成する装置である。改質ユニット100に混合ガスが導入されると、改質反応と転化反応によって改質反応生成物が生成する。改質反応生成物は、改質燃料の主成分となる水素、副生した二酸化炭素、未反応の炭化水素、未反応の水蒸気等を含むガス状の混合物である。
【0032】
改質ユニット100は、改質燃料を生成する改質能力、すなわち、ガス燃料の単位供給量に対する水素の生成量、換言すると、内燃機関に供給される燃料中の炭化水素と水素との混合比が、改質燃料の供給先である内燃機関の燃焼特性に応じて調整される。なお、内燃機関の燃焼特性は、燃焼室の構造、点火方式、行程方式、燃料供給量、排気量、冷却損失等に依存し、所定のガス燃料の種類毎の燃焼効率、燃料消費量、低位発熱量、燃焼期間等によって評価することができる。
【0033】
内燃機関の燃焼特性が劣る場合、改質ユニット100における水素の生成量が増大する方向、換言すると、内燃機関に供給される燃料中の水素の混合比が増大する方向に向けて、改質能力の調整が行われる。一方、内燃機関の燃焼特性が優れる場合、改質ユニット100における水素の生成量が減少する方向、換言すると、内燃機関に供給される燃料中の水素の混合比が減少する方向に向けて、改質能力の調整が行われる。
【0034】
図1に示すように、改質ユニット100は、主取込管101と、ヘッダ器102と、取込側細管103と、調節弁104と、改質器105と、排出側細管106と、主排出管107と、を備えている。取込側細管103、調節弁104、改質器105および排出側細管106は、それぞれ、複数備えられている。これらの改質器105および配管機器で構成される系統は、並列状に備えられている。
【0035】
主取込管101は、ガス燃料と過熱蒸気とが混合された混合ガスを改質ユニット100に取り込むための配管である。主取込管101には、燃料供給装置10の外部から混合ガスが供給される。主取込管101は、改質ユニット100のガス入口に接続されている。主取込管101の下流端には、ヘッダ器102が接続している。
【0036】
ヘッダ器102は、複数の配管同士を集約するための配管機器である。ヘッダ器102は、流体が通流可能な管状に設けられており、流体を流入させる入口と、流体を分配して流出させる複数の出口と、を有している。ヘッダ器102の入口には、主取込管101が接続している。ヘッダ器102の各出口には、取込側細管103が接続している。
【0037】
取込側細管103は、分配された混合ガスを各改質器105に取り込むための配管である。取込側細管103は、改質器105毎に備えられている。各取込側細管103の下流端には、改質器105が接続している。各取込側細管103には、調節弁104が備えられている。
【0038】
調節弁104は、開度を連続的に変化させることが可能な流量調整弁である。調節弁104は、改質器105毎に備えられている。調節弁104の開度は、手動または自動で制御される。調節弁104によると、任意の中間開度、全開および全閉のいずれかに弁開度を変えることができるため、改質器105毎の混合ガスの流量を精密に調整することができる。
【0039】
改質器105は、ガス燃料と過熱蒸気とを含む混合ガスを水蒸気改質して改質燃料となる改質反応生成物を生成する反応器である。改質器105は、改質触媒を保持する充填相を備えたインライン型の反応器として設けられている。改質器105には、改質触媒を被毒する付臭剤等の硫黄分を除去するため、脱硫触媒が併用されてもよい。
【0040】
改質触媒としては、例えば、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金、パラジウム等を活性金属とした触媒を用いることができる。活性金属は、アルミナ、ジルコニア等に含浸担持させる方法、共沈させて焼成する方法、金属箔化する方法、発泡化する方法等の各種の方法で触媒を形成させることができる。
【0041】
排出側細管106は、改質器105で生成した改質反応生成物を各改質器105から排出するための配管である。排出側細管106は、改質器105毎に備えられている。各排出側細管106の上流端には、改質器105が接続している。各排出側細管106の下流端は、一つの管路に集約しており、主排出管107に接続されている。
【0042】
主排出管107は、改質器105で生成した改質反応生成物を改質ユニット100から排出するための配管である。主排出管107は、改質ユニット100のガス出口に接続されている。主排出管107の下流端には、第1熱交換器110が配管を介して接続している。
【0043】
このように、主取込管101と、複数の取込側細管103とは、改質器105に混合ガスを取り込むための取込路を形成している。取込路は、上流側から下流側に向けて分岐しており、各改質器105に接続している。また、複数の排出側細管106と、主排出管107とは、改質器105から改質反応生成物を排出するための排出路を形成している。排出路は、各改質器105から延びており、下流側で集約している。
【0044】
このような取込路には、管路が集約した上流側に、改質器105毎に取り込まれる混合ガスの圧力を均等化させるヘッダ器102が備えられている。複数の改質器105は、ヘッダ器102において集約されている。排出路は、主排出管107において集約されている。このようなヘッダ器102を設置すると、改質器105毎の改質能力を、混合ガスの圧力の均等化によって平準化させることができる。複数の改質器105のそれぞれが、互いに同程度の改質能力を発揮するようになるため、改質ユニット100の全体としての改質能力を、混合ガスの通流によって反応系を構成する改質器105の構成本数によって調整することが可能になる。
【0045】
また、このような取込路には、管路が分岐した下流側に、開度を連続的に変化させることが可能な調節弁104が備えられている。このような調節弁104を設置すると、改質器105毎の改質能力を、弁開度の変更によって調整することができる。所定の構成本数に調整した一以上の改質器105の下で、個々の改質器105の改質能力が変更されるため、改質ユニット100の全体としての改質能力を、より精密に調整することが可能になる。
【0046】
改質器105毎の改質能力、すなわち、改質器105毎のガス燃料の単位供給量に対する水素の生成量(内燃機関に供給される燃料中の炭化水素と水素との混合比)は、混合ガスの温度だけでなく、混合ガスの流量にも依存する。そのため、各調節弁104の開放および全閉によって改質器105の構成本数を変えたり、いずれかの調節弁104の開度を0%から100%の範囲で変えたりすると、改質ユニット100自体の改質能力が変更されることになる。
【0047】
改質ユニット100の全体としての改質能力は、混合ガスの通流によって反応系を構成する改質器105の構成本数のみによって調整してもよいし、改質器105毎に備えられる調節弁104の開度のみによって調整してもよいし、改質器105の構成本数と調節弁104の開度との両方によって調整してもよい。但し、改質ユニット100の全体としての改質能力は、精密に調整する観点から、改質器105の構成本数と調節弁104の開度との両方によって調整することが好ましい。
【0048】
改質ユニット100の全体としての改質能力が、内燃機関の燃焼特性に対して過剰になると、水蒸気改質による水素の生成が無駄になる。例えば、燃料供給装置10を新型のガスエンジンに適用する場合、燃焼室内における燃料の燃焼効率は、炭化水素を主成分とするガス燃料の場合であっても、十分に高い水準を確保することができる。そのため、このような場合、改質器105の構成本数が減らされる。改質能力を構成する改質器105に含まれない改質器105の調節弁104の開度は、改質ユニット100の運転開始時に全閉に制御され、運転中においても、全閉に保持される。
【0049】
一方、改質ユニット100の全体としての改質能力が、内燃機関の燃焼特性に対して不足すると、水素による燃焼効率の向上が必要になる。例えば、燃料供給装置10を旧型のガスエンジンに適用する場合、燃焼室内における燃料の燃焼効率は、炭化水素を主成分とするガス燃料の場合であると、大きく低下する虞がある。そのため、このような場合、改質器105の構成本数が増やされる。改質能力を構成する改質器105の調節弁104の開度は、改質ユニット100の運転開始時に全開または中間開度のいずれかに制御され、運転中においても、その開度が保持される。
【0050】
改質ユニット100の全体としての改質能力は、所定の構成本数の改質器105の下、調節弁104の開度を中間開度に設定することによって微調整することができる。調節弁104の開度を中間開度にする場合、全開の状態から開度を絞って調節することが好ましい。改質ユニット100は、改質能力を構成する改質器105の調節弁104の開度を全開に保持し、または、何れかの改質器105の調節弁104の開度を全開の保持を解除して、全体としての改質能力を調節するのが好ましい形態となる。
【0051】
改質能力を構成する改質器105に付随する調節弁104のうち、中間開度の状態に制御される調節弁104は、並列状に備えられた系統のうち、いずれか一つに付随した調節弁104であることが好ましい。中間開度に制御する調節弁104を、いずれか一つの系統に限定すると、改質ユニット100の全体としての改質能力を、一つの系統を対象とした一般的な弁制御で精密に調整することができる。従って、予めガスエンジンの運転開始前に改質能力を構成する改質器105の構成本数を設定し、設定した改質器105のうち、必要に応じていずれか一つの改質器105の調節弁104を中間開度として調整する。
【0052】
第1熱交換器110は、改質ユニット100から供給される改質反応生成物を気体冷媒との熱交換により冷却する。第1熱交換器110は、熱交換ユニット(110,120,130)のうち、中程度の交換熱量で運転される。
【0053】
図1に示すように、第1熱交換器110は、多管式の熱交換器として設けられている。第1熱交換器110は、略筒状である中空構造の胴部111と、胴部111内に並列した複数の細管112と、を備えている。胴部111内の空間と、細管112内の空間とは、互いに隔てられている。
【0054】
胴部111は、熱交換媒体を流入させる胴部入口113と、熱交換媒体を流出させる胴部出口114と、を有している。胴部入口113は、細管112の下流側の胴部111に設けられている。胴部出口114は、細管112の上流側の胴部111に設けられている。胴部111内には、胴部入口113および胴部出口114を通じて、所定の気体冷媒が充満するように流される。
【0055】
細管112は、熱交換媒体を流入させる細管入口115と、熱交換媒体を流出させる細管出口116と、を有している。細管112の上流側の端部および下流側の端部は、それぞれ、一つの管路に集約している。細管入口115は、管路が集約された上流側の端部であって、胴部111の改質ユニット100側に設けられている。細管入口115は、改質ユニット100のガス出口と連通している。細管出口116は、管路が集約された下流側の端部であって、胴部111の第2熱交換器120側に設けられている。細管出口116は、第2熱交換器120と連通している。各細管112内には、細管入口115から導入された改質反応生成物が細管112毎に分流して流され、細管出口116から排出される。
【0056】
第1熱交換器110は、改質ユニット100から供給される改質反応生成物と、燃料供給装置10の外部から供給される気体冷媒との間で、細管112の管壁を介して対向流で熱交換を行い、放熱した改質反応生成物と、受熱した気体冷媒とを生じる。熱交換によって放熱した改質反応生成物は、細管112の下流で一つの細管出口116に合流して第2熱交換器120に送出される。一方、熱交換によって受熱した気体冷媒は、燃料供給装置10の外部に送出される。
【0057】
第1熱交換器110によると、改質反応生成物の温度を、混入している蒸気の非加圧時の液化温度や、内燃機関の燃料許容温度に向けて下げることができる。また、改質反応生成物の熱を気体冷媒の加熱に利用することができる。なお、改質ユニット100で生成する改質反応生成物の温度は、例えば、290〜300℃付近である。内燃機関への導入に許容される燃料許容温度は、ガスエンジンの場合、通常、常温から常温よりも数十℃高い温度までの範囲である。
【0058】
第2熱交換器120は、第1熱交換器110から供給される改質反応生成物を改質燃料との熱交換により冷却する。第2熱交換器120は、第1熱交換器110よりも小さい交換熱量で運転される。
【0059】
図1に示すように、第2熱交換器120は、二重筒型の熱交換器として設けられている。第2熱交換器120は、筒状の内筒121と、内筒121の外面を囲む筒状の外筒122と、を備えている。内筒121内の空間と、内筒121の外側の外筒122内の空間とは、互いに隔てられている。
【0060】
内筒121は、熱交換媒体を流入させる内筒入口123と、熱交換媒体を流出させる内筒出口124と、を有している。内筒入口123は、内筒121の第1熱交換器110側の頂壁に設けられている。内筒出口124は、内筒121の第3熱交換器130側の底壁に設けられている。内筒121内には、内筒入口123から導入された改質反応生成物が流され、内筒出口124から排出される。
【0061】
外筒122は、熱交換媒体を流入させる外筒入口125と、熱交換媒体を流出させる外筒出口126と、を有している。外筒入口125は、外筒122の第3熱交換器130側に設けられている。外筒入口125には、一端が第3熱交換器130に接続された排気管220が接続されている。外筒出口126は、外筒122の第1熱交換器110側に設けられている。外筒122内には、第3熱交換器130から供給され、外筒入口125から導入された液化分離反応生成物が充満するように流され、外筒出口126から排出される。
【0062】
第2熱交換器120は、第1熱交換器110から供給される改質反応生成物と、第3熱交換器130から供給される蒸気が液化分離された液化分離反応生成物との間で、内筒121と外筒122との間の管壁を介して対向流で熱交換を行い、放熱した改質反応生成物と、改質燃料とを生じる。改質反応生成物は、液化分離反応生成物との熱交換により、液化分離反応生成物を内燃機関で許容可能な最高相対湿度以下となるまで再加熱して改質燃料を生成した後に、内筒出口124から第3熱交換器130に送出される。改質燃料は、内燃機関で許容可能な最高相対湿度以下の状態で、燃料供給装置10の後段に設置される内燃機関に送出される。
【0063】
第2熱交換器120によると、改質反応生成物の温度を、混入している蒸気の液化温度や、内燃機関の燃料許容温度に向けて下げることができる。また、第3熱交換器で熱交換して蒸気が分離された液化分離反応生成物の温度を、内燃機関への導入に許容される燃料許容温度の範囲内で高温に上げて、相対湿度が低下した改質燃料を生成させることができる。内燃機関に供給される改質燃料の相対湿度は、内燃機関で許容可能な最高相対湿度以下であり、80%以下である。改質燃料は、このような相対湿度以下となる所定の温度の範囲に再加熱されてから、内燃機関に向けて供給される。
【0064】
第3熱交換器130は、第2熱交換器120から供給される改質反応生成物を液体冷媒との熱交換により冷却し、改質反応生成物中に含まれる蒸気を液化分離させて液化分離反応生成物を生成する。第3熱交換器130は、第1熱交換器110よりも大きい交換熱量で運転される。
【0065】
図1に示すように、第3熱交換器130は、内部が区画された多管式の熱交換器として設けられている。第3熱交換器130は、熱交換室131Hと貯留室131Cとに上下に区画された中空構造の胴部131と、胴部131内を区画するシール部材132と、熱交換室131H内に並列しており、シール部材132を貫通して貯留室131C内に開口した複数の細管133と、を備えている。熱交換室131H内の空間と、細管133内の空間とは、互いに隔てられている。
【0066】
また、第3熱交換器130は、貯留室131C側に、第1水位検出器231と、第2水位検出器232と、を備えている。第3熱交換器130の貯留室131C側には、排水管210と、排気管220と、が接続している。排水管210には、ドレン弁230が備えられている。排気管220は、一端が貯留室131Cに接続されており、他端が第2熱交換器120に接続されている。
【0067】
胴部131の熱交換室131Hは、熱交換媒体を流入させる熱交換室入口134と、熱交換媒体を流出させる熱交換室出口135と、を有している。熱交換室入口134は、細管133の下流側の胴部131に設けられている。熱交換室出口135は、細管133の上流側の胴部131に設けられている。熱交換室131H内には、熱交換室入口134から導入された所定の液体冷媒が充満するように流され、熱交換室出口135から排出される。
【0068】
細管133は、熱交換媒体を流入させる細管入口136と、熱交換媒体を流出させる細管出口137と、を有している。細管133の上流側の端部は、一つの管路に集約している。細管入口136は、管路が集約された上流側の端部であって、胴部131の第2熱交換器120側に設けられている。細管入口136は、第2熱交換器120の内筒出口124と連通している。細管出口137は、シール部材132を貫通して貯留室131C内の上部に開口している。細管133内には、細管入口136から導入された改質反応生成物が細管133毎に分流して流され、細管出口137から排出される。
【0069】
胴部131の貯留室131Cは、貯留室131C内の液体を排出させるための液体出口138と、貯留室131C内の気体を排出させるための気体出口139と、を有している。液体出口138は、貯留室131Cの底部に設けられている。液体出口138には、排水管210が接続されている。気体出口139は、貯留室131Cの上部側であって複数の細管133の最下端部より下側に設けられている。気体出口139には、排気管220が接続されている。貯留室131C内には、熱交換室131Hで熱交換した改質反応生成物が流入するようになっている。
【0070】
第3熱交換器130の熱交換室131Hは、第2熱交換器120から供給される改質反応生成物と、燃料供給装置10の外部から供給される液体冷媒との間で、細管133の管壁を介して対向流で熱交換を行い、放熱した改質反応生成物と、受熱した液体冷媒とを生じる。熱交換によって放熱した改質反応生成物は、水蒸気の液化温度以下に冷却されて、改質反応生成物に含まれる蒸気が液化分離される。蒸気が分離された液化分離反応生成物と、蒸気が液化して生じた水とは、重力や圧力で貯留室131Cに流入する。一方、熱交換によって受熱した液体冷媒は、燃料供給装置10の外部に送出される。
【0071】
第3熱交換器130の貯留室131Cは、熱交換室131Hにおける熱交換によって液化した水を受ける。貯留室131C内に貯留される貯留水は、液体出口138から排水管210を通じて燃料供給装置10の外部に排出される。一方、熱交換室131Hから貯留室131C内に流入した液化分離反応生成物は、含水量が低下した状態で、気体出口139から排気管220を通じて第2熱交換器120に送出される。
【0072】
第3熱交換器130によると、熱交換室131Hにおける熱交換で、改質反応生成物の温度を蒸気の液化温度以下に下げることができる。また、熱交換による冷却で、蒸気を液化させて重力分離することにより、含水量が低下した液化分離反応生成物を生成することができる。液化分離反応生成物は、低温であり、且つ、含水量が低いため、第2熱交換器120における再加熱で、容易に相対湿度を低下させることが可能になる。また、液化分離して貯留室131Cに溜まった貯留水は、過熱蒸気の生成に再利用することができる。
【0073】
以上の燃料供給装置10によると、改質ユニット100の水素を生成する改質能力を、改質器105の構成本数や、改質器105毎に備えられる調節弁104の開度によって調整することができる。そのため、改質ユニット100の改質能力を、内燃機関の燃焼特性に応じて、自在且つ精密に調整することができる。種々の燃焼特性を持つ任意の内燃機関に対して、炭化水素と水素との混合比が適切に調節された燃料を供給可能であるため、内燃機関に本来供給されるはずのガス燃料の単位供給量に対して、内燃機関で生じる燃焼エネルギ(発熱量)の合計を増大させることができる。よって、以上の燃料供給装置10によると、燃焼効率が高い改質燃料を供給して内燃機関のエネルギ効率を向上させることができる。
【0074】
以上の燃料供給装置10によると、燃焼特性が劣っている旧型の内燃機関を用いるような場合であっても、高い燃焼効率で運転することができるため、ガス燃料の節約やエネルギ変換効率の向上を図ることが可能である。例えば、燃焼性能が低い旧型のガスエンジンに対しては、水素の混合比を高くした燃焼速度が速い燃料を供給して、旧型のガスエンジンのエネルギ変換効率を、10〜15%程度向上させることもできる。
【0075】
<ガスエンジンシステム>
次に、前記の燃料供給装置をガスエンジンに適用した、本発明の一実施形態に係るガスエンジンシステムについて、図面を参照しながら説明する。
【0076】
図2は、本発明の実施形態に係るガスエンジンシステムの構成を示す図である。
図2に示すように、本実施形態に係るガスエンジンシステム1は、前記の燃料供給装置10と、気体状の燃料を燃焼させる内燃機関であるガスエンジン20と、を備えている。
【0077】
また、本実施形態に係るガスエンジンシステム1は、第1燃料供給路11と、第2燃料供給路12と、第3燃料供給路13と、燃料分配路14と、蒸気供給路15と、混合ガス供給路16と、第1改質燃料移送路17と、第2改質燃料移送路18と、改質燃料排出路19と、を備えている。これらの流路は、不図示のポンプ、弁等の配管機器を接続した配管等で形成されている。
【0078】
また、本実施形態に係るガスエンジンシステム1は、第1分配部21と、第2分配部(燃料分配部)22と、第1混合部31と、第2混合部(燃料混合部)32と、ガス燃料供給弁41と、改質燃料供給弁42と、放出弁43と、調速弁44と、を備えている。これらの配管構造や配管機器は、各流路上に設置されている。これらの各弁の開度は、手動または自動で制御される。
【0079】
ガスエンジンシステム1は、ガスエンジン20の前段に、ガス燃料を原料として改質燃料を生成する前記の燃料供給装置10を備えている。ガス燃料としては、好ましくはメタンを主成分とする炭化水素系の燃料を用いることができる。炭化水素系の燃料としては、例えば、13A、12A等の都市ガスが挙げられる。
【0080】
ガスエンジン20は、第1燃料供給路11、第2燃料供給路12および第3燃料供給路13を介して、ガスエンジンシステム1の外部にあるガス燃料供給元と接続されている。第1燃料供給路11、第2燃料供給路12および第3燃料供給路13は、ガスエンジン20に向けて燃料を供給するための流路である。ガスエンジン20は、これらの流路を通じて、ガス燃料を供給可能とされている。
【0081】
第1燃料供給路11と第2燃料供給路12との間には、ガス燃料供給元から供給されるガス燃料を燃料供給装置10とガスエンジン20とに分配する第1分配部21が設けられている。第1分配部21からは、燃料分配路14が分岐している。燃料分配路14は、ガス燃料供給元から供給されるガス燃料を燃料供給装置10に向けて供給するための流路である。
【0082】
燃料分配路14の下流端は、第1混合部31に接続している。第1混合部31は、ガス燃料と過熱蒸気とを合流させて燃料供給装置10に供給される混合ガスを生じる合流点である。第1混合部31には、蒸気供給路15が接続されている。蒸気供給路15は、燃料供給装置10に向けて過熱蒸気を供給するための流路である。
【0083】
第1混合部31からは、混合ガス供給路16が分岐している。混合ガス供給路16は、ガス燃料と過熱蒸気とが混合された混合ガスを燃料供給装置10に供給するための流路である。燃料供給装置10は、第1燃料供給路11、燃料分配路14および混合ガス供給路16を通じて、ガス燃料を供給可能とされている。
【0084】
混合ガス供給路16の下流端は、燃料供給装置10の改質ユニット100のガス入口に接続している(
図1参照)。燃料供給装置10の改質燃料の出口(第2熱交換器120の外筒出口126)には、
図2に示すように、第1改質燃料移送路17の上流端が接続している。第1改質燃料移送路17の下流端には、第2改質燃料移送路18が接続している。
【0085】
第1改質燃料移送路17と第2改質燃料移送路18との間には、燃料供給装置10が生成した改質燃料をガスエンジン20とガスエンジンシステム1の外部とに分配する第2分配部22が設けられている。第2分配部22からは、改質燃料排出路19が分岐している。改質燃料排出路19は、燃料供給装置10で生成した余剰の改質燃料をガスエンジンシステム1の外部に排出するための流路である。
【0086】
第2改質燃料移送路18の下流端は、第2混合部32に接続している。第2混合部32は、第2燃料供給路12と第3燃料供給路13との間に設けられている。第2混合部は、ガス燃料と改質燃料とを合流させてガスエンジン20に供給される混合燃料を生じる合流点である。ガスエンジン20は、第1改質燃料移送路17、第2改質燃料移送路18および第3燃料供給路13を通じて、改質燃料を供給可能とされている。
【0087】
第2燃料供給路12には、ガス燃料供給弁41が設置されている。ガス燃料供給弁41は、ガス燃料供給元からガスエンジン20に供給されるガス燃料の供給量を調整するための流量調整弁である。ガス燃料供給弁41によると、第1分配部21におけるガス燃料の分配比が変更されるため、燃料供給装置10へのガス燃料の供給量や、ガスエンジン20へのガス燃料の供給量が調整される。
【0088】
第2改質燃料移送路18には、改質燃料供給弁42が設置されている。改質燃料供給弁42は、燃料供給装置10からガスエンジン20に供給される改質燃料の供給量を調整するための流量調整弁である。改質燃料供給弁42によると、第2分配部22における改質燃料の分配比が、放出弁43との協働によって変更されるため、ガスエンジン20への改質燃料の供給量や、ガスエンジンシステム1の外部への改質燃料の排出量が調整される。
【0089】
改質燃料排出路19には、放出弁43が備えられている。放出弁43は、第2分配部22からガスエンジンシステム1の外部に放出される改質燃料の放出量を調整するための流量調整弁である。放出弁43によると、第2分配部22における改質燃料の分配比が改質燃料供給弁42との協働によって変更されるため、ガスエンジン20への改質燃料の供給量や、ガスエンジンシステム1の外部への改質燃料の放出量が調整される。
【0090】
第3燃料供給路13には、調速弁44が備えられている。調速弁44は、ガスエンジン20に供給されるガス燃料の供給量を調整するための流量調整弁である。調速弁44によると、ガスエンジン20の燃焼室に供給されるガス燃料の流量がガスエンジン20の運転モード等に応じて調整される。
【0091】
図3は、ガスエンジンの起動−停止カーブの一例を示す図である。
図3に示すように、一般的なガスエンジンにおいて、起動から停止までの運転条件は、回転速度[rpm]と時間[s]との関係を示す起動−停止カーブによって表される。なお、
図3においては、起動−停止カーブを直線によって模式的に表している。また、起動−停止カーブの横軸を短縮して表している。
【0092】
一般的なガスエンジンにおいて、定格回転速度(回転数)Rs[rpm]、起動時の回転数上昇速度[rpm/s]、停止時の回転数下降速度[rpm/s]等は、ガスエンジン毎に固有の条件となるように、性能に応じて定められている。ガスエンジンは、定格回転速度Rsの運転によって、必要な仕事、電力等が取り出されている。
【0093】
ガスエンジンシステム1(
図2参照)においても、
図3に示すような起動−停止カーブにしたがって、ガスエンジン20が運転される。ガスエンジンシステム1は、ガスエンジンの起動カーブ(起動−停止カーブ)に応じてガスエンジン20に供給される燃料が調整されるものである。
【0094】
ガスエンジン20に供給される燃料は、炭化水素を主成分とするガス燃料、燃料供給装置10がガス燃料と過熱蒸気とを含む混合ガスを水蒸気改質して生成した改質燃料、および、ガス燃料と改質燃料とが混合された混合燃料のうちのいずれかである。
【0095】
なお、混合燃料は、ガス燃料と改質燃料との混合比が、燃料の切り替えに際して、任意の中間値をとることができる。また、改質燃料は、ガスエンジン20に供給される燃料中における炭化水素と水素との混合比が、任意の中間値をとることができる。改質燃料の炭化水素と水素との混合比は、ガスエンジン20の起動前に、ガスエンジン20の燃焼特性に応じて調整される。
【0096】
ガスエンジンシステム1は、起動から停止までの5つの段階(
図3のI〜V参照)毎に、燃料の切り替えを伴う運転モードに、順次、切替制御される。ガスエンジンシステム1は、5種類の運転モードとして、起動モードと、起動後燃料切替モード(第1燃料切替モード)と、定格速度モードと、停止前燃料切替モード(第2燃料切替モード)と、停止モードと、を有している。
【0097】
表1は、5種類の運転モードについて、ガス燃料供給弁41、改質燃料供給弁42および放出弁43の動作と、ガスエンジン20に供給される燃料の種類と、ガスエンジン20に供給される水素ガスの濃度レベルと、を示している。
【0099】
(起動モード)
起動モードは、ガスエンジン20へのガス燃料の供給を開始してガスエンジン20を起動するための運転モードである。起動モードは、ガスエンジン20へのガス燃料の供給を開始してガスエンジン20を始動させた後、ガスエンジン20が定格回転速度Rsに到達するまで実行される(
図3のI参照)。
【0100】
起動モードにおいて、ガス燃料供給弁41は、開度が連続的に大きくなるように開方向に制御される。改質燃料供給弁42は、全閉に制御される。放出弁43は、全開に制御される。
【0101】
起動モードにおいて、各弁が制御されると、ガス燃料の一部は、ガスエンジン20に供給され、ガス燃料の残部は、燃料供給装置10に供給される。燃料供給装置10で生成した改質燃料は、十分な水素濃度に達していない可能性があり、ガスエンジンシステム1の外部に排出される。ガスエンジン20には、ガス燃料のみが供給される。ガスエンジン20へのガス燃料の流量は、スロットル弁等を所定の開度にしてクランキングを行った後、ガスエンジン20が定格回転速度Rsに到達するまで増加方向に維持される。
【0102】
(起動後燃料切替モード)
起動後燃料切替モードは、ガスエンジン20への改質燃料の供給を開始し、ガス燃料の供給量を減らすと共に改質燃料の供給量を増やしながら、混合燃料でガスエンジン20を運転する運転モードである。起動後燃料切替モードは、起動モードによってガスエンジン20が定格回転速度Rsに到達した後に、ガスエンジン20に供給される改質燃料が所定の燃焼力に到達するまで実行される(
図3のII参照)。
【0103】
起動後燃料切替モードにおいて、ガス燃料供給弁41は、開度が連続的に小さくなるように閉方向に制御される。改質燃料供給弁42は、開度が連続的に大きくなるように開方向に制御される。放出弁43は、開度が連続的に小さくなるように閉方向に制御される。起動後燃料切替モードでは、ガスエンジン20を定格回転速度に維持することが好ましい。
【0104】
起動後燃料切替モードにおいて、各弁が制御されると、ガス燃料の一部は、ガスエンジン20に供給され、ガス燃料の残部は、燃料供給装置10に供給される。燃料供給装置10で生成した改質燃料は、所定の水素濃度に達して所定の燃焼力に到達するまで、ガスエンジンシステム1の外部に排出されながら、ガスエンジン20への分配比が次第に高められる。ガスエンジン20には、所定の燃焼力に到達した改質燃料の供給が可能になるまで、混合燃料が供給される。ガスエンジン20への改質燃料の流量は、ガスエンジン20に供給される改質燃料が所定の燃焼力に到達するまで増加方向に制御される。一方、ガスエンジン20へのガス燃料の流量は、改質燃料の流量と同期的に反対の減少方向に制御することができる。
【0105】
(定格速度モード)
定格速度モードは、ガスエンジン20へのガス燃料の供給を停止し、改質燃料でガスエンジン20を運転する運転モードである。定格速度モードは、ガスエンジン20に供給される改質燃料が所定の燃焼力に到達した後に、取り出したい仕事量、電力量等に応じて、所望の運転時間にわたって実行される(
図3のIII参照)。
【0106】
定格速度モードにおいて、ガス燃料供給弁41は、全閉に制御される。改質燃料供給弁42は、全開に制御される。放出弁43は、全閉に制御される。定格速度モードでは、ガスエンジン20を定格回転速度に維持して、仕事量、電力量等に応じて一定時間運転を行う。
【0107】
定格速度モードにおいて、各弁が制御されると、ガス燃料は、燃料供給装置10のみに供給される。燃料供給装置10で生成した改質燃料は、ガスエンジン20のみに供給される。ガスエンジン20には、改質燃料のみが供給される。ガスエンジン20に供給される改質燃料は、炭化水素と水素との混合比が、ガスエンジン20の燃焼特性に応じた所定値になるように、燃料供給装置10における改質器105の構成本数の調整や、調節弁104の開度の調整によって予め調整される。
【0108】
(停止前燃料切替モード)
停止前燃料切替モードは、ガスエンジン20を停止させるまでの時間を考慮して定格速度モードから移行する。停止前燃料切替モードは、定格速度モードによってガスエンジン20が運転している間に、ガスエンジン20へのガス燃料の供給を再開し、改質燃料の供給量を減らすと共にガス燃料の供給量を増やしながら、混合燃料でガスエンジン20を運転し、混合燃料でガスエンジン20を一定時間運転した後に改質燃料の供給を停止する運転モードである。停止前燃料切替モードは、ガスエンジン20への改質燃料の供給が停止されるまで実行される(
図3のIV参照)。
【0109】
停止前燃料切替モードにおいて、ガス燃料供給弁41は、開度が連続的に大きくなるように開方向に制御される。改質燃料供給弁42は、開度が連続的に小さくなるように閉方向に制御される。改質燃料供給弁42は、ガスエンジン20内や配管内の改質燃料が全焼可能な量に減少した後に、全閉に制御される。放出弁43は、開度が連続的に大きくなるように開方向に制御される。停止前燃料切替モードでは、ガスエンジン20を定格回転速度に維持することが好ましい。
【0110】
停止前燃料切替モードにおいて、各弁が制御されると、ガス燃料の一部は、ガスエンジン20に供給され、ガス燃料の残部は、燃料供給装置10に供給される。燃料供給装置10で生成した改質燃料は、ガスエンジン20への分配比が次第に下げられる。ガスエンジン20には、改質燃料の供給が停止されるまで、混合燃料が供給される。ガスエンジン20への改質燃料の流量は、ガスエンジン20に供給される改質燃料がガスエンジン20内で全焼可能になるまで減少方向に制御される。一方、ガスエンジン20へのガス燃料の流量は、改質燃料の流量と同期的に反対の増加方向に制御することができる。
【0111】
(停止モード)
停止モードは、ガス燃料の供給量を減らしてガスエンジン20を停止し、ガスエンジン20へのガス燃料の供給を停止する運転モードである。停止モードは、ガスエンジン20への改質燃料の供給が停止された後に実行される(
図3のV参照)。
【0112】
停止モードにおいて、ガス燃料供給弁41は、開度が連続的に小さくなるように閉方向に制御される。ガス燃料供給弁41は、ガスエンジン20を停止した後に、全閉に制御される。改質燃料供給弁42は、全閉に制御される。放出弁43は、全開に制御される。
【0113】
停止モードにおいて、各弁が制御されると、ガス燃料は、ガスエンジン20への供給量が次第に下げられる。燃料供給装置10で生成した改質燃料は、ガスエンジンシステム1の外部に排出される。ガスエンジン20には、ガス燃料の供給が停止されるまで、ガス燃料のみが供給される。ガスエンジン20へのガス燃料の流量は、ガスエンジン20内や配管内の改質燃料が消失し、ガス燃料の供給が停止されるまで減少方向に維持される。
【0114】
以上のガスエンジンシステム1によると、ガスエンジン20の燃料が、定格運転時に、改質燃料に切り替えられるため、ガス燃料の全体としての消費量を抑制して、ガス燃料を節約することができる。改質燃料は、水素ガスを主成分としているため、ガス燃料と比較して1モル当たりの発熱量は低下するものの、燃焼速度が速いため、内燃機関の燃焼効率を向上させることができる。ガス燃料を水素改質した場合、供給される燃料の全重量に対して、ガスエンジン20で生じる燃焼エネルギ(発熱量)の合計が増大することになり、水素改質しない場合と比較して、ガス燃料の単位供給量に対する燃焼エネルギ(発熱量)の合計が大きくなる。よって、以上のガスエンジンシステム1によると、燃焼効率が高い改質燃料を供給して内燃機関のエネルギ効率を向上させることができる。
【0115】
以上のガスエンジンシステム1によると、燃焼特性が劣っている旧型のガスエンジン20を用いるような場合であっても、高い燃焼効率で運転することができるため、ガス燃料の節約やエネルギ変換効率の向上を図ることが可能である。例えば、燃焼性能が低い旧型のガスエンジンに対しては、水素の混合比を高くした燃焼速度が速いガス燃料を供給して、旧型のガスエンジンのエネルギ変換効率を、10〜15%程度向上させることもできる。
【0116】
また、以上のガスエンジンシステム1によると、起動後燃料切替モードが実行されるため、ガス燃料で確実に着火および定格回転速度への立ち上げを行った後に、改質燃料に切り替えることができる。また、定格速度モードが実行されるため、ガスエンジン20の燃焼室に導入される水素が所定の濃度に到達したときに、ガス燃料の供給を停止することができる。ガス燃料の供給が適時に停止されるため、ガス燃料が節約される。また、停止前燃料切替モードが実行されるため、停止時のガスエンジン20の燃焼室内で水素を確実に燃焼させて、燃焼室内に水素を残留させず運転を停止することができる。ガスエンジン20の燃焼室内に水素が残留しないため、ガスエンジン20の再起動を確実且つ速やかに行うことができる。
【0117】
図4は、ガスエンジンシステムに対する燃料供給装置の接続を示す図である。
図4に示すように、燃料供給装置10は、ガス燃料を改質反応生成物と熱交換してから取り込むように接続することができる。また、燃料供給装置10は、第3熱交換器130で改質反応生成物から分離した水と、ガスエンジン20の排気ガスと、を過熱蒸気の生成に利用するように接続することができる。
【0118】
図4において、燃料供給装置10の第1熱交換器110には、ガスエンジンシステム1の燃料分配路14が接続されている。燃料分配路14は、第1熱交換器110の胴部入口113に接続している。燃料分配路14は、第1熱交換器110の胴部111内を通り、胴部出口114から第1混合部31に接続している。
【0119】
また、燃料供給装置10の第3熱交換器130には、冷媒保存庫300が接続されている。冷媒保存庫300は、液体冷媒を保存するための機器である。冷媒保存庫300は、例えば、大気との熱交換を行う冷却塔、熱交換媒体との熱交換を行う熱交換器等に内蔵させて液体冷媒を冷却させることができる。
【0120】
冷媒保存庫300の冷媒出口と、第3熱交換器130の熱交換室入口134との間には、冷媒供給路310が接続されている。第3熱交換器130の熱交換室出口135と、冷媒保存庫300の冷媒入口との間には、冷媒返送路320が接続されている。冷媒保存庫300に保存される液体冷媒は、冷媒保存庫300と第3熱交換器130の熱交換室131Hとの間を循環的に流される。
【0121】
また、燃料供給装置10の排水管210には、給水タンク(給水部)400が接続されている。排水管210は、第3熱交換器130の貯留室131Cの底部と給水タンク400との間を接続している。給水タンク400は、改質反応生成物から分離された水を貯留するための容器である。
【0122】
給水タンク400には、給水路410が接続されている。給水路410の他端には、過熱蒸気生成装置500が接続されている。給水路410は、給水タンク400に貯留されている貯留水を過熱蒸気生成装置500に供給するための流路である。給水路410には、給水ポンプ420が設置されている。給水タンク400に貯留される貯留水は、過熱蒸気の必要量に応じて、給水ポンプ420によって過熱蒸気生成装置500に供給される。
【0123】
過熱蒸気生成装置500は、水を加熱して過熱蒸気を生成する装置である。過熱蒸気生成装置500には、排気ガス供給路430が接続されている。排気ガス供給路430は、ガスエンジン20から排出された排気ガスを過熱蒸気生成装置500に供給するための流路である。また、過熱蒸気生成装置500には、一端が第1混合部31に接続された蒸気供給路15が接続されている。
【0124】
図4に示すガスエンジンシステム1において、燃料供給装置10の第3熱交換器130は、貯留室131Cの底部と給水タンク400との間を接続する排水管210と、排水管210上に設けられたドレン弁230と、を有している。貯留室131Cに溜まった貯留水は、ドレン弁230を開放することによって、給水タンク400に流入するようになっている。
【0125】
また、
図4に示すガスエンジンシステム1において、貯留室131Cは、排水管210に貯留水を排出するための液体出口138が、貯留室131Cの底部に設けられており、液化分離反応生成物を排出するための気体出口139が、貯留室131Cの上部に設けられている。また、第1水位検出器231が、貯留室131Cの底部に設けられており、第2水位検出器232が、第1水位検出器231よりも上方、且つ、気体出口139よりも下方に設けられている。
【0126】
図4に示すガスエンジンシステム1は、第1水位検出器231が貯留水の水位を検出しないとき、ドレン弁230を全閉に制御させることができる。一方、第1水位検出器232が貯留水の水位を検出したとき、ドレン弁230を全開に制御させることができる。ドレン弁230は、手動または自動で制御される。
【0127】
第1水位検出器231は、貯留室131Cの底部に設けられているため、改質反応生成物から分離された水分が、貯留室131C内に蓄積しているか否か、検出することができる。第1水位検出器231が貯留水の水位を検出しないときには、貯留水が貯留室131C内に蓄積していないため、ドレン弁230を全閉に制御し、閉鎖された第3熱交換器130内に水を確実に捕捉させることができる。
【0128】
一方、第2水位検出器232は、第1水位検出器231よりも上方、且つ、気体出口139よりも下方に設けられている。第2水位検出器232が貯留水の水位を検出したときには、ドレン弁230を全開に制御し、貯留室131C内の貯留水を給水タンク400に移すことができる。
【0129】
図4に示すガスエンジンシステム1において、過熱蒸気生成装置500は、給水タンク400から供給される貯留水を、ガスエンジン20から排出された排気ガスの廃熱で加熱して過熱蒸気を生成する。そして、過熱蒸気生成装置500は、燃料供給装置10に所定の温度に過熱された過熱蒸気を供給する。過熱蒸気生成装置500としては、煙管ボイラ、直管式水管ボイラ、曲管式水管ボイラ、貫流ボイラ等の自然循環式または強制循環式の蒸気ボイラを用いることができる。過熱蒸気の温度は、例えば、290〜300℃、好ましくは295℃である。
【0130】
改質ユニット100は、第1熱交換器110から供給されるガス燃料と過熱蒸気生成装置500から供給される過熱蒸気とを含む混合ガスを取り込み、ガス燃料と過熱蒸気とを含む混合ガスを水蒸気改質して改質燃料となる改質反応生成物を生じる。第1熱交換器110から供給されるガス燃料は、第1熱交換器110における熱交換で予熱された後に、過熱蒸気生成装置500から供給される過熱蒸気と混合される。
【0131】
第1熱交換器110は、改質ユニット100から供給される改質反応生成物と、ガスエンジンシステム1の外部にあるガス燃料供給元から供給されるガス燃料との間で熱交換を行い、放熱した改質反応生成物と、予熱されたガス燃料と、を生じる。熱交換によって放熱した改質反応生成物は、第2熱交換器120に送られる。一方、熱交換によって受熱したガス燃料は、第1混合部31を通じて供燃料供給装置10に送られる。
【0132】
第1熱交換器110に対して改質ユニット100から供給される改質反応生成物の温度は、例えば、290〜300℃、好ましくは295℃である。ガス燃料供給元から供給されるガス燃料の温度は、例えば、5〜25℃、好ましくは15℃である。第1熱交換器110から排出される改質反応生成物の温度は、例えば、226〜246℃、好ましくは236℃である。第1熱交換器110から排出されるガス燃料の温度は、例えば、260〜280℃、好ましくは270℃である。
【0133】
第2熱交換器120は、第1熱交換器110から供給される改質反応生成物と、第3熱交換器130から供給される液化分離反応生成物との間で熱交換を行い、放熱した改質反応生成物と、再加熱された改質燃料と、を生じる。熱交換によって放熱した改質反応生成物は、第3熱交換器130に送られる。一方、改質燃料は、ガスエンジン20に送られる。
【0134】
第2熱交換器120に対して第1熱交換器110から供給される改質反応生成物の温度は、例えば、226〜246℃、好ましくは236℃である。第3熱交換器130から供給される液化分離反応生成物の温度は、例えば、25〜45℃、好ましくは35℃である。第2熱交換器120から排出される改質反応生成物の温度は、例えば、224.5〜244.5℃、好ましくは234.5℃である。第2熱交換器120から排出される改質燃料の温度は、例えば、30〜40℃、好ましくは40℃である。改質燃料の相対湿度は、内燃機関で許容可能な最高相対湿度以下であり、80%以下である。
【0135】
第3熱交換器130は、第2熱交換器120から供給される改質反応生成物と、液体冷媒保存庫300から供給される液体冷媒との間で熱交換を行い、改質反応生成物に含まれる蒸気を冷却して液化分離し、受熱した液体冷媒と、蒸気が液化分離した水と、含水量が低下した液化分離反応生成物と、を生じる。熱交換によって受熱した液体冷媒は、冷媒保存庫300に返送される。また、液化分離した水は、排水管210および給水路410を通じて過熱蒸気生成装置500に送られる。一方、液化分離反応生成物は、排気管220を通じて第2熱交換器120に送られる。
【0136】
第3熱交換器130に対して第2熱交換器120から供給される改質反応生成物の温度は、例えば、224.5〜244.5℃、好ましくは234.5℃である。液体冷媒保存庫300から供給される液体冷媒の温度は、例えば、27〜37℃、好ましくは32℃である。第3熱交換器130から排出される液体冷媒の温度は、例えば、37〜47℃、好ましくは42℃である。第3熱交換器130から排出される液化分離反応生成物の温度は、例えば、25〜35℃、好ましくは35℃である。
【0137】
以上のガスエンジンシステム1に対する燃料供給装置10の接続によると、改質燃料の原料であるガス燃料が、第1熱交換器110における改質反応生成物との熱交換で予熱されてから改質ユニット100に取り込まれる。そのため、改質反応生成物の熱を改質反応に利用することができる。また、改質燃料の原料である過熱蒸気を、第3熱交換器130で液化分離させた水と、ガスエンジン20の排気ガスとを利用して生成させることができる。水が循環的に再利用されるだけでなく、排気ガスの廃熱が利用されるため、ガスエンジンシステム1の全体としての熱効率を高くすることができる。過熱蒸気生成装置500において生成される過熱蒸気の温度は、ガスエンジン20の性能に依存する。
【0138】
以上、本発明に係る燃料供給装置およびガスエンジンシステムの実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、技術的範囲を逸脱しない限り、様々な変形例が含まれる。例えば、前記の実施形態は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、或る実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えたり、或る実施形態の構成に他の構成を加えたりすることが可能である。また、或る実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、構成の削除、構成の置換をすることも可能である。
【解決手段】燃料供給装置10は、ガス燃料の単位供給量に対する内燃機関の燃焼効率を改質燃料の供給によって向上させるものであって、ガス燃料と過熱蒸気とを含む混合ガスを取り込み、改質燃料となる反応生成物を生成する改質ユニットを備え、改質ユニットは、改質能力が内燃機関の燃焼特性に応じて調整される。ガスエンジンシステム1は、ガスエンジンの起動カーブに応じて燃料が切り替えられるものであって、燃料供給装置10とガスエンジン20とを備え、ガス燃料の供給を開始してガスエンジン20を起動する起動モードと、ガス燃料の供給量を減らすと共に改質燃料の供給量を増やしながらガスエンジン20を運転する燃料切替モードと、改質燃料でガスエンジン20を運転する定格速度モードとを有する。