(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半金属元素含有層と前記繊維基材との間に金属層を更に有し、前記金属層の厚みに対する前記半金属元素含有層の厚みの比率が0.01以上10以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の積層シート。
請求項1〜8のいずれかに記載の積層シート、請求項9に記載のコーティング繊維、及び請求項10に記載のコーティング繊維束からなる群より選択される少なくとも1種、並びに樹脂を含有する、複合材料。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0027】
1.積層シート
本発明は、その一態様において、繊維基材と、該基材の表面上に配置されている半金属元素含有層とを有する積層シート(本明細書において、「本発明の積層シート」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。
【0028】
<1−1.繊維基材>
繊維基材は、繊維又は繊維束を素材として含む基材であって、シート状のものである限り、特に制限されない。繊維基材は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、繊維及び繊維束以外の成分が含まれていてもよい。その場合、繊維基材中の繊維及び繊維束の合計量は、例えば80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、通常100質量%未満である。繊維基材としては、例えば、織物(例えば、平織、綾織(斜文織)、繻子織等)、編物、不織布、紙等が挙げられる。これらの中でも、表面の凹凸形状が比較的大きく、本発明の積層シートの意匠性がより高くなるという観点から、好ましくは織物、編物等が挙げられ、より好ましくは織物が挙げられる。
【0029】
繊維基材を構成する繊維としては、特に制限されず、例えば無機繊維、有機繊維等を広く用いることが出来る。無機繊維としては、炭素繊維(例えばPAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、カーボンナノチューブ等)、ガラス繊維(例えばグラスウール、グラスファイバー等)、鉱物繊維(例えば温石綿、白石綿、青石綿、茶石綿、直閃石綿、透角閃石綿、陽起石綿等)、人造鉱物繊維(例えばロックウール、セラミックファイバー等)、金属繊維(例えば、ステンレス繊維、アルミニウム繊維、鉄繊維、ニッケル繊維、銅繊維等)等が挙げられる。
【0030】
有機繊維としては、合成繊維(例えばナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリウレタン繊維等)、再生繊維(例えばレーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル、アセテート等)、植物繊維(例えば綿繊維、麻繊維、亜麻繊維、レーヨン繊維、ポリノジック繊維、キュプラ繊維、リヨセル繊維、アセテート繊維等)、動物繊維(例えば羊毛、絹、天蚕糸、モヘヤ、カシミア、キャメル、ラマ、アルパカ、ビキューナ、アンゴラ、蜘蛛糸等)等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは無機繊維が挙げられ、より好ましくは炭素繊維が挙げられ、さらに好ましくはPAN系炭素繊維が挙げられる。
【0031】
繊維基材は、繊維基材を構成する繊維として、或いは繊維基材を構成する繊維以外の成分として、炭素材料を含有することが好ましい。炭素材料としては、特に制限されず、例えば炭素繊維(例えばPAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、カーボンナノチューブ等)、カーボンブラック、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソポーラスカーボン、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、炭素繊維又は炭素繊維束が挙げられ、より好ましくはPAN系炭素繊維又はその束が挙げられる。繊維基材を構成する繊維以外の成分として炭素材料を含有する場合、制限されないが、例えば繊維表面をコーティングする成分、繊維同士を連結させる成分として炭素材料を含有する。
【0032】
繊維のサイズは、繊維の種類に応じて異なり得るものであり、特に制限されない。炭素繊維の場合、例えば平均直径が1,000〜30,000nm程度(特に1,000〜10,000nm程度)が好ましい。
【0033】
繊維の形態は、連続長繊維や連続長繊維をカットした短繊維、粉末状に粉砕したミルド糸等、いずれでもよい。
【0034】
繊維は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0035】
繊維束は、複数の繊維からなるものである限り、特に制限されない。繊維束を構成する繊維の本数は、例えば500以上、好ましくは1000以上、より好ましくは1000〜50000、さらに好ましくは1500〜40000、よりさらに好ましくは2000〜30000である。
【0036】
繊維基材の厚みは、繊維の種類に応じて異なり得るものであり、特に制限されない。繊維基材の厚みは、例えば0.01〜10mm、好ましくは0.05〜5mmである。
【0037】
繊維基材の層構成は特に制限されない。繊維基材は、1種単独の繊維基材から構成されるものであってもよいし、2種以上の繊維基材が複数組み合わされたものであってもよい。
【0038】
<1−1−1.炭素質基材>
繊維基材は、炭素質基材であることが好ましい。
【0039】
炭素質基材は、炭素材料を素材として含む基材であって、シート状のものである限り、特に制限されない。炭素質基材は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、炭素材料以外の成分が含まれていてもよい。その場合、炭素質基材中の炭素材料量は、例えば80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、通常100質量%未満である。
【0040】
炭素材料としては、特に制限されず、例えば炭素繊維(例えばPAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、カーボンナノチューブ等)、カーボンブラック、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソポーラスカーボン、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、炭素繊維又は炭素繊維束が挙げられ、より好ましくはPAN系炭素繊維又はその束が挙げられる。
【0041】
炭素繊維のサイズは、特に制限されないが、例えば平均直径が1,000〜30,000nm程度(特に1,000〜10,000nm程度)が好ましい。
【0042】
炭素繊維の形態は、連続長繊維や連続長繊維をカットした短繊維、粉末状に粉砕したミルド糸等、いずれでもよい。
【0043】
炭素繊維束は、複数の繊維からなるものである限り、特に制限されない。繊維束を構成する繊維の本数は、例えば500以上、好ましくは1000以上、より好ましくは1000〜50000、さらに好ましくは1500〜40000、よりさらに好ましくは2000〜30000である。
【0044】
炭素材料は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。 炭素質基材の具体例としては、例えば炭素繊維基材(例えば、平織、綾織(斜文織)、繻子織等の織物、編物、不織布、紙等)、グラフェンシート等が挙げられる。これらの中でも、凹凸をより多く残すことができる本発明の着色技術における効果を発揮できるという観点から、炭素質基材は、凹凸を有するものが好ましく、具体的には、炭素繊維基材が好ましく、炭素繊維の織物、編物等がより好ましく、炭素繊維の織物がさらに好ましい。
【0045】
炭素質基材の厚みは、その種類に応じて異なり得るものであり、特に制限されない。炭素質基材の厚みは、例えば0.01〜10mm、好ましくは0.05〜5mmである。
【0046】
炭素質基材の層構成は特に制限されない。炭素質基材は、1種単独の炭素質基材から構成されるものであってもよいし、2種以上の炭素質基材が複数組み合わされたものであってもよい。
【0047】
<1−2.半金属元素含有層>
半金属元素含有層は、繊維基材上に配置される、より具体的には、繊維基材上に直接又は1以上の他の層を介して配置される。本発明の積層シートが後述の金属層を含む場合、半金属元素含有層は、金属層上に配置される、換言すれば金属層の繊維基材側とは反対側の表面上に配置される。
【0048】
半金属元素含有層は、半金属元素を素材として含む層である限り、特に制限されない。半金属元素含有層は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、半金属元素以外の成分が含まれていてもよい。その場合、半金属元素含有層中の半金属元素の含有量は、例えば30質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上、非常に好ましくは99質量%以上であり、通常100質量%未満である。
【0049】
半金属元素含有層を構成する半金属元素としては、特に制限されず、例えばケイ素、ゲルマニウム、アンチモン、テルル、ホウ素、ヒ素、リン、ビスマス、セレン等が挙げられる。これらの中でも、積層シートの色調を良好に調整できる観点から、ケイ素、ゲルマニウム、アンチモン、テルル、ホウ素、リン、ビスマス、及びセレンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ケイ素、ゲルマニウム、及びビスマスからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ケイ素であることがさらに好ましい。
【0050】
半金属元素は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0051】
半金属元素含有層は、上記半金属元素から構成される金属若しくは合金から構成されてもよく、上記半金属元素を含む化合物から構成されてもよく、またはこれらの混合物から構成されてもよい。半金属元素を含む化合物としては、例えば酸化物、窒化物、炭化物及び窒化酸化物等が挙げられる。上記酸化物としては、例えばMO
X[式中、Xは式:n/10≦X≦n/2.5(nは半金属の価数である)を満たす数であり、Mは半金属元素である。]で表される化合物が挙げられる。
【0052】
上記窒化物としては、例えばMN
y[式中、Yは式:n/100≦Y≦n/3(nは半金属の価数である)を満たす数であり、Mは半金属元素である。]で表される化合物が挙げられる。
【0053】
上記炭化物としては、例えばMC
z[式中、Zは式:n/100≦Z≦n/4(nは半金属の価数である)を満たす数であり、Mは半金属元素である。]で表される化合物が挙げられる。
【0054】
上記窒化酸化物としては、例えばMO
XN
y[式中、XとYは、n/100≦X、n/100≦Y、かつ、X+Y≦n/2(nは半金属の価数である)であり、Mは半金属元素である。]で表される化合物が挙げられる。
【0055】
上記酸化物又は窒化酸化物の酸化数Xに関しては、例えばMO
x又はMO
xN
yを含む層の断面を、FE−TEM−EDX(例えば、日本電子社製「JEM−ARM200F」)により元素分析し、MO
x又はMO
xN
yを含む層の断面の面積当たりのMとOとの元素比率からXを算出することにより、酸素原子の価数を算出することができる。
【0056】
上記窒化物又は窒化酸化物の窒素化数Yに関しては、例えばMN
y又はMO
xN
yを含む層の断面を、FE−TEM−EDX(例えば、日本電子社製「JEM−ARM200F」)により元素分析し、MN
y又はMO
xN
yを含む層の断面の面積当たりのMとNとの元素比率からYを算出することにより、窒素原子の価数を算出することができる。
【0057】
上記炭化物の炭素化数Zに関しては、例えばMC
z含む層の断面を、FE−TEM−EDX(例えば、日本電子社製「JEM−ARM200F」)により元素分析し、MC
z含む層の断面の面積当たりのMとCとの元素比率からZを算出することにより、炭素原子の価数を算出することができる。
【0058】
半金属層は、MO
x(Mはn価の半金属を表し、かつxは0以上n/2未満の数を表す。)、MN
y(Mはn価の半金属を表し、かつyは0以上n/3以下の数を表す)又はMC
z(Mはn価の金属又は半金属を表し、かつzは0以上n/4以下の数を表す)を含む層を有することが好ましい。この場合において、Mは、それぞれ、ケイ素、ゲルマニウム、ガリウム、亜鉛、銀、金、チタン、アルミニウム、モリブデン、ニオブ、又はインジウムであることが好ましい。これらの中でも、色彩の彩度を大きくする観点等から、好ましくはケイ素、ゲルマニウム、チタン等が挙げられ、より好ましくはケイ素、ゲルマニウム等が挙げられる。
【0059】
色彩の彩度をより大きくする観点等から、MO
x中のMがケイ素である場合、Xは、1未満の数を表すことが好ましく、0.5以下であることがより好ましく、0.5未満であることがより好ましい。MN
y中のMがケイ素である場合、Yは、4/3以下の数を表すことが好ましい。MC
z中のMがケイ素である場合、Zは、1以下の数を表すことが好ましい。
【0060】
半金属元素含有層の厚みは、特に制限されないが、例えば1nm以上150nm以下である。該厚みは、より鮮やかな発色を実現する観点から、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは6nm以上、よりさらに好ましくは8nm以上である。上記半金属元素含有層の厚みの上限は、好ましくは100nm、より好ましくは70nm、さらに好ましくは60nm、よりさらに好ましくは50nmである。
【0061】
別の観点から(特に、後述金属層をさらに含み、且つ後述の光学特性を備える場合において)、半金属元素含有層の厚みは、1nm以上40nm以下であることが好ましい。このような範囲とすることにより、より鮮やかな発色を実現することができる。該厚みは、より鮮やかな発色を実現する観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である、該厚みの上限は、より鮮やかな発色を実現する観点から、好ましくは30nm、より好ましくは25nmである。
【0062】
半金属元素含有層の層構成は特に制限されない。半金属元素含有層は、1層からなる単層であってもよいし、同一又は異なる組成を有する複数の層であってもよい。また、半金属元素含有層は、その2つの主面の一方或いは両方において、表面が酸化皮膜等の皮膜で構成されていてもよい。
【0063】
<1−3.金属層>
本発明の積層シートは、半金属元素含有層と繊維基材との間に金属層を更に有することが好ましい。金属層により、光沢感、耐変色性、色彩の鮮やかさ等をより向上させることができる。本発明の積層シートが金属層を含む場合、金属層は、繊維基材上に配置される、換言すれば繊維基材の有する2つの主面の少なくとも1方の表面上に配置される。
【0064】
金属層は、金属を素材として含む層である限り、特に制限されない。金属層は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、金属以外の成分が含まれていてもよい。その場合、金属層中の金属量は、例えば80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、通常100質量%未満である。
【0065】
金属層を構成する金属としては、特に制限されず、例えば銀、アルミニウム、チタン、銅、ガリウム、亜鉛、銀、金、スズ、鉄、モリブデン、ニオブ、ニッケル、クロム、及びインジウム等が挙げられる。これらの中でも、金属層と半金属元素含有層との一定以上の屈折率差を得やすいという観点、色彩の鮮やかさの観点等から、好ましくは銀、アルミニウム、チタン等が挙げられ、より好ましくは銀、アルミニウム等が挙げられ、さらに好ましくは銀が挙げられる。
【0066】
金属は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0067】
金属層の厚みは、特に制限されず、例えば1nm以上200nm以下である。該厚みの下限は、光沢感、色彩の鮮やかさ等の観点から、好ましくは5nm、より好ましくは10nm、さらに好ましくは20nm、よりさらに好ましくは25nm、特に好ましくは30nmである。該厚みの上限は、光沢感、色彩の鮮やかさ等の観点から、好ましくは100nm、より好ましくは80nm、さらに好ましくは70nm、よりさらに好ましくは60nm、特に好ましくは60nmである。
【0068】
また、該厚みは、金属の下地層(繊維基材)の反射の影響をより低減することができ、半金属元素含有層との干渉を適切な程度にしてより鮮やかな発色が可能になるという観点から、好ましくは5〜100nm、より好ましくは10〜80nm、さらに好ましくは20〜70nm、よりさらに好ましくは25〜60nm、特に好ましくは28〜60nm、非常に好ましくは30〜32nmである。
【0069】
本発明の積層シートが金属層を含む場合、金属層の厚みに対する半金属元素含有層の厚みの比率(=半金属元素含有層の厚み/金属層の厚み)の下限は、特に制限されないが、光沢感、色彩の鮮やかさ等の観点から、好ましくは0.01、より好ましくは0.05、さらに好ましくは0.1、よりさらに好ましくは0.2、特に好ましくは0.4である。該厚みの比率の上限は、特に制限されないが、光沢感、色彩の鮮やかさ等の観点から、好ましくは10、より好ましくは5、さらに好ましくは2、よりさらに好ましくは1、特に好ましくは0.8である。
【0070】
金属層の層構成は特に制限されない。金属層は、1層からなる単層であってもよいし、同一又は異なる組成を有する複数の層であってもよい。また、金属層は、その2つの主面の一方或いは両方において、表面が酸化皮膜等の皮膜で構成されていてもよい。
【0071】
<1−4.金属または半金属の酸化物層>
本発明の積層シートは、半金属元素含有層の繊維基材側とは反対側の表面上に、酸化物層をさらに有することが好ましい。酸化物層により、耐変色性、摩擦堅牢度等をより向上させることができる。
【0072】
酸化物層は、金属または半金属の酸化物を素材として含む層である限り、特に制限されない。酸化物層は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、該酸化物以外の成分が含まれていてもよい。その場合、酸化物層中の該酸化物量は、例えば80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、通常100質量%未満である。
【0073】
酸化物層を構成する半金属酸化物としては、特に制限されず、例えばケイ素、ゲルマニウム、アンチモン、テルル、ビスマス、セレン等の半金属(好ましくはケイ素)の酸化物が挙げられる。より具体的には、半金属酸化物としては、AO
X[式中、Xは式:n/2.5≦X≦n/2(nは半金属の価数である)を満たす数であり、Aはケイ素、ゲルマニウム、アンチモン、テルル、ビスマス、及びセレンからなる群から選択される半金属である。]で表される化合物が挙げられる。上記式中のAが半金属元素である場合、積層シートの色調を良好に調整できる観点から、Aはケイ素が好ましく、半金属酸化物がSiO
2であることがより好ましい。半金属酸化物は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0074】
酸化物層を構成する金属酸化物としては、特に制限されず、例えばチタン、アルミニウム、ニオブ、コバルト、ニッケル等の金属(好ましくはチタン、及び、アルミニウム)の酸化物が挙げられる。より具体的には、金属酸化物としては、AO
X[式中、Xは式:n/2.5≦X≦n/2(nは金属の価数である)を満たす数であり、Aはチタン、アルミニウム、ニオブ、コバルト、及び、ニッケルからなる群から選択される金属である。]で表される化合物が挙げられる。上記式中のAが金属元素である場合、積層シートの色調を良好に調整できる観点から、Aはチタン及びアルミニウムが好ましく、金属酸化物はAZO、TiO
2及びAl
2O
5であることがより好ましい。金属酸化物は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0075】
積層シートの耐変色性及び摩擦堅牢度等をなお一層向上させる観点から、上記式中のXは、好ましくはn/2.4以上n/2以下、より好ましくはn/2.3以上n/2以下、さらに好ましくはn/2.2以上n/2以下、特に好ましくはn/2.1以上n/2以下である。
【0076】
酸化層の厚みは、特に制限されず、例えば1nm以上100nm以下である。該厚みは、耐変色性、摩擦堅牢度等の観点から、好ましくは2以上50nm以下、より好ましくは5以上40nm以下、さらに好ましくは8以上30nm以下である。
【0077】
半金属元素含有層の厚みに対する酸化物層の厚みの比率(=酸化物層の厚み/半金属元素含有層の厚み)は、特に制限されないが、耐変色性、摩擦堅牢度等の観点から、好ましくは0.05以上2以下、より好ましくは0.05以上1.5以下、さらに好ましくは0.05以上1以下、よりさらに好ましくは0.1以上1以下である。
【0078】
酸化物層の層構成は特に制限されない。酸化物層は、1層からなる単層であってもよいし、同一又は異なる組成を有する複数の層であってもよい。
【0079】
<1−5.光学特性>
本発明の積層シートは、好ましくは、繊維基材、金属層、及び半金属元素含有層をこの順で有する積層シートであって、前記半金属元素含有層と前記金属層の屈折率差が2以上であり、前記半金属元素含有層の厚みが1nm以上40nm以下である、積層シートである。本発明の積層シートにおいて、半金属元素含有層と金属層の屈折率差(=半金属元素含有層の屈折率−金属層の屈折率)を2以上とすることにより、より鮮やかな発色を実現することができる。該屈折率差は、好ましくは2以上8以下、より好ましくは3以上6以下、さらに好ましくは3以上5以下である。
【0080】
屈折率差は、積層シートの成膜面の正反射を含む反射率を測定して得られる反射スペクトルのうち、可視域付近(波長300nm以上800nm以下)の極小値(ボトム波長)における屈折率の差(=半金属元素含有層の屈折率−金属層の屈折率)である。屈折率は、公知の解析ソフト(J.A.Woollam社製、WVASE32又はその同等品)を用いて算出することができる。
【0081】
本発明の積層シートにおいて、半金属元素含有層と金属層の消衰係数差(=半金属元素含有層の消衰係数−金属層の消衰係数)は、より鮮やかな発色を実現することができるという観点から、負の値であることが好ましい。また、同様の観点から、負の値は、その絶対値がより大きい値である方が望ましい。該絶対値は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2以上、よりさらに好ましくは3以上、特に好ましくは4以上である。該絶対値の上限は、特に制限されないが、例えば10、8、7である。
【0082】
消衰係数差は、積層シートの成膜面の正反射を含む反射率を測定して得られる反射スペクトルのうち、可視域付近(波長300以上800nm以下)の極小値(ボトム波長)における消衰係数の差(=半金属元素含有層の消衰係数−金属層の消衰係数)である。消衰係数は、公知の解析ソフト(J.A.Woollam社製、WVASE32又はその同等品)を用いて算出することができる。
【0083】
本発明の積層シートにおいて、ボトム波長は、より鮮やかな発色を実現することができるという観点から、好ましくは300nm以上700nm以下、より好ましくは400nm以上600nm以下、さらに好ましくは450nm以上600nm以下である。
【0084】
ボトム波長は、積層シートの成膜面の正反射を含む反射率を測定して得られる反射スペクトルのうち、可視域付近(波長300〜800nm)の極小値である。
【0085】
<1−6.製造方法>
本発明の積層シートは、特に制限されないが、例えば(1)繊維基材の表面に半金属元素含有層を付着させる工程により、(2)繊維基材の表面に金属層を付着させる工程及び金属層の繊維基材側とは反対側の表面に半金属元素含有層を付着させる工程により、(3)前記(1)又は(2)に加えて、半金属元素含有層の繊維基材側とは反対側の表面に酸化物層を付着させる工程により、得ることができる。
【0086】
特に限定されないが、前記付着は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、パルスレーザーデポジション法等により行うことができる。これらの中でも、膜厚制御性の観点から、スパッタリング法が好ましい。
【0087】
スパッタリング法としては、特に限定されないが、例えば、直流マグネトロンスパッタ、高周波マグネトロンスパッタ及びイオンビームスパッタ等が挙げられる。また、スパッタ装置は、バッチ方式であってもロール・ツー・ロール方式であってもよい。
【0088】
2.コーティング繊維、コーティング繊維束
本発明は、その一態様において、繊維と、該繊維の表面上に配置されている半金属元素含有層とを有するコーティング繊維に関する。また、本発明は、その一態様において、繊維、繊維表面上に配置された金属層、及び前記金属層上に配置された半金属元素含有層を有するコーティング繊維であって、 前記半金属元素含有層と前記金属層の屈折率差が2以上であり、 前記半金属元素含有層の厚みが1nm以上40nm以下である、コーティング繊維に関する。本明細書において、これらをまとめて、「本発明のコーティング繊維」と示すこともある。さらに、本発明は、その一態様において、複数の本発明のコーティング繊維を含む、コーティング繊維束(本明細書において、「本発明のコーティング繊維束」と示すこともある。)に関する。以下に、これらについて説明する。
【0089】
本発明のコーティング繊維は、半金属元素含有層と繊維との間に金属層を更に有することが好ましい。この場合、本発明のコーティング繊維においては、半金属元素含有層は、金属層上に配置される、換言すれば金属層の繊維基材側とは反対側の表面上に配置される。また、本発明のコーティング繊維は、半金属元素含有層の繊維基材側とは反対側の表面上に、酸化物層をさらに有することが好ましい。
【0090】
繊維、繊維束、金属層、半金属元素含有層、酸化物層、光学特性、製造方法等については、上記「1.積層シート」の記載と同様である。
【0091】
本発明のコーティング繊維の一態様においては、半金属元素含有層は、繊維の少なくとも一部(全表面積の例えば30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、通常100%以下)又は全部の表面上に配置される。同様に、本発明のコーティング繊維の一態様においては、金属層は、繊維の少なくとも一部(全表面積の例えば30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、通常100%以下)又は全部の表面上に配置される。
【0092】
本発明のコーティング繊維及び本発明のコーティング繊維束からなる群より選択される少なくとも1種は、これのみで、或いは他の繊維及び繊維束からなる群より選択される少なくとも1種との組み合わせで、本発明の積層シートを構成することができる。他の繊維としては、特に制限されず、例えば、無機繊維、有機繊維等が広く用いられる。
【0093】
無機繊維としては、ガラス繊維(例えばグラスウール、グラスファイバー等)、鉱物繊維(例えば温石綿、白石綿、青石綿、茶石綿、直閃石綿、透角閃石綿、陽起石綿等)、人造鉱物繊維(例えばロックウール、セラミックファイバー等)、金属繊維(例えば、ステンレス繊維、アルミニウム繊維、鉄繊維、ニッケル繊維、銅繊維等)等が挙げられる。
【0094】
有機繊維としては、合成繊維(例えばナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリウレタン繊維等)、再生繊維(例えばレーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル、アセテート等)、植物繊維(例えば綿繊維、麻繊維、亜麻繊維、レーヨン繊維、ポリノジック繊維、キュプラ繊維、リヨセル繊維、アセテート繊維等)、動物繊維(例えば羊毛、絹、天蚕糸、モヘヤ、カシミア、キャメル、ラマ、アルパカ、ビキューナ、アンゴラ、蜘蛛糸等)等が挙げられる。
【0095】
3.用途
本発明の積層シート、本発明のコーティング繊維、及び本発明のコーティング繊維束は、鮮やかな色彩を有しながらも、光沢を有しており、また着色対象が凹凸を有する場合(例えば、炭素繊維基材を採用する場合)はそれが本来有する凹凸がより多く残されているので、意匠性がより高められた繊維基材として、各種分野において、例えば繊維基材と樹脂との複合材料として利用することができる。
【0096】
また、本発明の好ましい態様において、本発明の積層シート、本発明のコーティング繊維、及び本発明のコーティング繊維束は、繊維基材、繊維、繊維束等が本来有する凹凸がより多く残されており、光沢を有し、且つより鮮やかな色彩を有するので、意匠性がより高められた繊維材料として、各種分野において、例えば繊維と樹脂との複合材料として利用することができる。
【0097】
この観点から、本発明は、その一態様において、本発明の積層シート、本発明のコーティング繊維、及び本発明のコーティング繊維束からなる群より選択される少なくとも1種(以下、これらを総称して、「本発明の繊維材料」と示す。)、並びに樹脂を含有する、複合材料(本明細書において、「本発明の複合材料」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。
【0098】
本発明の複合材料は、本発明の繊維材料と樹脂を含有する限りにおいて、特に制限されない。好ましくは、本発明の複合材料は、本発明の繊維材料が母材である樹脂中に含有されてなる、繊維強化プラスチックである。
【0099】
樹脂としては、特に制限されず、種々様々な樹脂を採用することができる。なお、樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂(例えば、ナイロン)、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルイミド、ポリ塩化ビニルやポリエーテルサルホン等が挙げられる。
【0100】
本発明の複合材料は、常法にしたがって製造することができ、自動車、航空機、スポーツ関連製品(ゴルフシャフト、テニスラケット、バドミントンラケット、釣り竿、スキー板、スノーボード、バット、アーチェリー、自転車、ボート、カヌー、ヨット、ウィンドサーフィン等)、医療器具、建築部材、電気機器(パソコン等の筐体、スピーカーコーン)等を製造するための構造材料等、様々な用途において活用することができる。
【実施例】
【0101】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0102】
(1)積層シートの製造
(実施例1)
繊維基材として、炭素繊維(目付量200g/m
2、フィラメント径7μm、密度12.5本/インチ)が綾織で織られた織物(三菱ケミカル社製「TR3523 M」、厚さ0.21mm)を用いた。
【0103】
繊維基材を真空装置内に設置し、5.0×10
−4Pa以下となるまで真空排気した。続いて、アルゴンガスを導入して、DCマグネトロンスパッタリング法により、繊維基材の表面上に、半金属元素含有層としてSi層(平均厚み30nm)を形成して、積層シートを得た。
【0104】
(実施例2)
実施例1で使用した繊維基材を真空装置内に設置し、5.0×10
−4Pa以下となるまで真空排気した。続いて、アルゴンガスを導入して、DCマグネトロンスパッタリング法により、繊維基材の表面上に、半金属元素含有層としてSi層(平均厚み50nm)を形成して、繊維基材と半金属元素含有層との積層体を得た。
【0105】
繊維基材と半金属元素含有層との積層体を真空装置内に設置し、5.0×10
−4Pa以下となるまで真空排気した。続いて、アルゴンガスを導入して、DCマグネトロンスパッタリング法により、半金属元素含有層の繊維基材側とは反対側の表面上に、酸化物層としてSiO
2層(平均厚み2nm)を形成して、積層シートを得た。
【0106】
(実施例3)
半金属元素含有層としてSi層(平均厚み30nm)を形成し、酸化物層としてSiO
2層(平均厚み30nm)を形成する以外は、実施例2と同様にして積層シートを得た。
【0107】
(実施例4)
半金属元素含有層としてSi層(平均厚み30nm)を形成し、酸化物層としてSiO
2層(平均厚み10nm)を形成する以外は、実施例2と同様にして積層シートを得た。
【0108】
(実施例5)
半金属元素含有層としてSi層(平均厚み30nm)を形成し、酸化物層としてTiO
2層(平均厚み3nm)を形成する以外は、実施例2と同様にして積層シートを得た。
【0109】
(実施例6)
実施例1で使用した繊維基材を真空装置内に設置し、5.0×10
−4Pa以下となるまで真空排気した。続いて、アルゴンガスを導入して、DCマグネトロンスパッタリング法により、繊維基材の表面上に、金属層としてAl層(平均厚み50nm)を形成して、繊維基材と金属層との積層体を得た。
【0110】
繊維基材と金属層との積層体を真空装置内に設置し、5.0×10
−4Pa以下となるまで真空排気した。続いて、アルゴンガスを導入して、DCマグネトロンスパッタリング法により、金属層の繊維基材側とは反対側の表面上に、半金属元素含有層としてSi層(平均厚み30nm)を形成して、積層シートを得た。
【0111】
(実施例7)
金属層としてTi層(平均厚み50nm)を形成する以外は、実施例6と同様にして積層シートを得た。得られた積層シートを真空装置内に設置し、5.0×10
−4Pa以下となるまで真空排気した。続いて、アルゴンガスを導入して、DCマグネトロンスパッタリング法により、半金属元素含有層の繊維基材側とは反対側の表面上に、酸化物層としてSiO
2層(平均厚み5nm)を形成して、積層シートを得た。
【0112】
(実施例8〜10,13〜15)
金属層を形成する金属、金属層の厚み、及び半金属層の厚みを表1及び2に示すように変更したこと以外は、実施例6と同様にして積層シートを得た。
【0113】
(実施例11)
繊維基材を丸網で編まれた編物であるポリエステル繊維基材(マスダ社製「アミーナ BF−4624」)とした以外は、実施例15と同様にして積層シートを得た。
【0114】
(実施例12)
繊維基材を黒色のポリエステル(30デニール)が平織で織られた織物であるポリエステル繊維基材(マスダ社製「ひかるげんじTM−3001 E21」)としたこと以外は、実施例15と同様にして積層シートを得た。
【0115】
(実施例16)
繊維基材として黒色のポリエステル(30デニール)が平織で織られた織物であるポリエステル繊維基材(マスダ社製「ひかるげんじTM−3001 E21」)を用いて、半金属層、金属層、酸化物層を表2に示すように変更したこと以外は実施例7と同様にして積層シートを得た。
【0116】
(比較例1)
実施例1で使用した繊維基材の一方の面に、青色顔料を含む塗料を塗布して、着色層(光透過性を有しない層、平均厚み15μm)を形成して、積層シートを得た。
【0117】
(比較例2)
実施例1で使用した繊維基材を真空装置内に設置し、5.0×10
−4Pa以下となるまで真空排気した。続いて、アルゴンガスを導入して、DCマグネトロンスパッタリング法により、繊維基材の表面上に、金属層としてTi層(平均厚み50nm)を形成して、繊維基材と金属層との積層シートを得た。
【0118】
(比較例3)
実施例16における黒色のポリエステル(30デニール)が平織で織られた織物であるポリエステル繊維基材(マスダ社製「ひかるげんじTM−3001 E21」)を評価対象とした。
【0119】
(2)評価1
(織目の評価)
積層シートの表面を観察したときに、繊維基材に用いた炭素繊維が有する凹凸形状(表面模様)が損なわれていないか及び表面模様が視認されるか、目視にて確認した。
[織目の判定基準]
○:凹凸形状が損なわれていない(炭素繊維から変化無し)
×:凹凸形状が損なわれている(炭素繊維との差異あり)。
【0120】
(光沢感の評価)
積層シートの表面、及び繊維基材の表面を観察したときに、金属光沢感を有するか、目視にて確認した。
[金属光沢感の判定基準]
○○○:金属光沢感がかなりある
○○:金属光沢感がある
○:金属光沢感がわずかにある
×:金属光沢感がない。
【0121】
(耐変色性の測定)
分光測色計(コニカミノルタ社製「CM−2500d」)を用いて、JIS Z8781−4(2013)に準拠して、積層シートの表面、及び繊維基材の表面のL
*a
*b
*表色系におけるL
*、a
*、b
*を求めた。測定後、各積層シートを高温高湿チャンバーに入れ、85℃/85%の条件下、240h静置し、その後の表面のL
*a
*b
*表色系におけるL
*、a
*、b
*を同様に測定した。高温高湿試験前後の L
*、a
*、b
*から、JIS Z8781−4(2013)に準拠して、積層シート表面のL
*a
*b
*表色系における色差ΔE
*abを求めた。
【0122】
(摩擦堅牢度の評価)
摩擦堅牢度試験機(大栄科学精機製作所製)を用いて、JIS L 0849に準拠して、積層シートの摩擦堅牢度を測定した。試験条件として湿潤条件を用いた。
【0123】
(鮮やかさの評価)
分光側色計(コニカミノルタ社製「CM−2500d」)を用いて、JIS Z8781−4(2013)に準拠して、積層シートの表面、及び繊維基材の表面のL
*a
*b
*表色系におけるL
*、a
*、b
*を求めた。鮮やかさの指標として、彩度C*を用いた。C*=√(a*
2+b*
2)。
【0124】
結果を下記表1及び表2に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
実施例1〜16の積層シートは、比較例1〜3の積層シートと比較して、鮮やかな色彩でありながらも、織目が損なわれておらず、且つ光沢感も備えるものであった。
【0128】
(3)評価2
実施例6〜16について、下記の測定を行った。【0129】
(ボトム波長の測定)
積層シートを5cm角にカットし、分光光度計(日本分光社製V−670、積分球ユニットISN−723付き)で成膜面の正反射を含む反射率を測定した。得られた反射スペクトルのうち、可視域付近(波長300〜800nm)の極小値をボトム波長とした。
【0130】
(屈折率差および消衰係数差)
上で得られた反射スペクトルのボトム波長における屈折率差(=半金属元素含有層の屈折率−金属層の屈折率)および消衰係数差(=半金属元素含有層の消衰係数−金属層の消衰係数)を計算した。屈折率や消衰係数の値はエリプソメトリー解析ソフト(J.A.Woollam社製WVASE32)の材料ライブラリーのものを用いた。
【0131】
(反射a
*及び反射b
*の測定、鮮やかさの評価)
上で得られた反射スペクトルを分光光度計に付属のカラー診断プログラムVWCD−790でL
*a
*b
*表色系の色目計算を行った。計算条件は光源:D65、視野角:10°、データ間隔:5nmである。得られたa
*及びb
*の値を反射a
*、反射b
*とした。
【0132】
また、色の鮮やかさの指標として反射a
*、反射b
*の2乗和の平方根([√(a*
2+b*
2)])、いわゆる彩度を計算した。
【0133】
結果を下記表3に示す。
【0134】
【表3】
【0135】
実施例6,8〜12,16の積層シートは、実施例7,9,13〜15の積層シートと比較して、顕著に色彩における鮮やかさが高いことが分かった。
鮮やかな色彩を得ながらも、光沢を付与できる着色技術を提供すること、さらには、基材が凹凸を有する場合は、その凹凸をより多く残すことができる着色技術を提供することを課題とする。この課題を、繊維基材と、該繊維基材の表面上に配置されている半金属元素含有層とを有する積層シートにより解決する。