(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の水性リキッドインキは、着色剤(A)、酸基を有するバインダー(B)、塩基性化合物(C)及び水性媒体(D)を含む。
【0012】
前記着色剤(A)としては、1種又は2種以上を用いることができ、有機顔料又は無機顔料等の顔料、染料等が挙げられ、インキ、塗料、記録剤等に用いられるものが好ましい。
前記有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられる。
【0013】
記無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、ベンガラ、アルミニウム、マイカ(雲母)などが挙げられる。また、ガラスフレーク又は塊状フレークを母材とした上に金属、又は金属酸化物をコートした光輝性顔料(メタシャイン;日本板硝子株式会社)を使用できる。
【0014】
カラーインデックス名としては、
C.I.Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、42、74、83;
C.I.Pigment Orange 16;
C.I.Pigment Red 5、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、81、101;
C.I.Pigment Violet 19、23;
C.I.Pigment Blue 23、15:1、15:3、15:4、17:1、18、27、29
C.I.Pigment Green 7、36、58、59;
C.I.Pigment Black 7;
C.I.Pigment White 4、6、18などが挙げられる。
【0015】
藍インキにはC.I.Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン)、黄インキにはコスト・耐光性の点からC.I.Pigment Yellow83、紅インキにはC.I.Pigment Red 57:1を用いることが好ましい。白インキには酸化チタン、墨インキにはカーボンブラック、金、銀インキにはアルミニウム、パールインキにはマイカ(雲母)を使用することがコストや着色力の点から好ましい。アルミニウムは粉末又はペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングタイプのアルミニウムを使用するかそれともノンリーフィングを使用するかは、輝度感および濃度の点から適宜選択される。
【0016】
前記顔料の合計含有率は、インキの濃度、着色力を確保する観点から、インキの総量中、好ましくは1質量%以上であり、好ましくは50質量%以下である。
【0017】
前記酸基を有するバインダー(B)は、酸基を有するポリオール(b1−1)並びにポリエーテルポリオール(b1−2)及びポリカーボネートポリオール(b1−3)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオール(b1)と、ポリイソシアネート(b2)との反応物であるウレタン樹脂(B1)を含む。
【0018】
前記ウレタン樹脂(B1)の酸価は、好ましくは3mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上であり、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下である。本明細書において、酸価は、前記ウレタン樹脂(B1)の製造に用いる酸基を有するポリオール(b1−1)等の酸基含有化合物等の使用量に基づいて算出した理論値を意味する。
【0019】
また、前記ウレタン樹脂(B1)は、脂環式構造を含む。脂環式構造を含むことで、印刷物のブロッキングを抑制することができる。前記脂環式構造としては、例えば、シクロブチル環、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、シクロヘプチル環、シクロオクチル環、プロピルシクロヘキシル環等の炭素原子数3以上10以下(好ましくは炭素原子数4以上8以下)の飽和の単環構造;トリシクロ[5.2.1.0. 2.6]デシル骨格、ビシクロ[4.3.0]ノニル骨格、トリシクロ[5.3.1.1]ドデシル骨格、プロピルトリシクロ[5.3.1.1]ドデシル骨格、ノルボルニル骨格、イソボルニル骨格、ジシクロペンタニル骨格、アダマンチル骨格等の炭素原子5数以上20以下(好ましくは炭素原子数7以上12以下)の飽和の橋掛け環構造などが挙げられる。これらの中でも、飽和の単環構造が好ましく、シクロヘキシル環構造がより好ましい。
【0020】
前記ウレタン樹脂(B1)に含まれる脂環式構造の含有量は、前記ウレタン樹脂(B1)の総量中、1,000mmol/kg以上であり、好ましくは1,200mmol/kg以上、より好ましくは1,500mmol/kg以上であり、好ましくは5,000mmol/kg以下、より好ましくは3,000mmol/kg以下、さらに好ましくは2,500mmol/kg以下である。
本明細書において、前記ウレタン樹脂(B1)に含まれる脂環式構造の割合は、前記ウレタン樹脂(B1)の製造に使用するポリオール(b1)やポリイソシアネート(b2)等の全原料の合計質量と、前記ウレタン樹脂(A)の製造に使用される脂環式構造含有化合物(脂環式構造を有するポリオール(b1−3)、脂環式構造を有するポリイソシアネート)の有する脂環式構造の物質量に基づいて算出した値である。
【0021】
また、前記ウレタン樹脂(B1)は、芳香環を含んでいてもよい。前記ウレタン樹脂(B1)が芳香環を含む場合、その含有量は、前記ウレタン樹脂(B1)の総量中、好ましくは0mmol/kg以上、より好ましくは500mmol/kg以上、さらに好ましくは1,000mmol/kg以上であり、好ましくは4,000mmol/kg以下、より好ましくは3,000mmol/kg以下、さらに好ましくは2,500mmol/kg以下である。
【0022】
前記脂環式構造は、前記ポリオール(b1)に含まれていてもよく、前記ポリイソシアネート(b2)に含まれていてもよい。前記ポリイソシアネート(b2)由来の脂環式構造と、前記ポリオール(b1)由来の脂環式構造との含有量比は、モル基準で、0以上であり、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。
【0023】
前記酸基を有するポリオール(b1−1)の酸基としては、例えば、カルボキシ基又はスルホン酸基が挙げられ、前記酸基を有するポリオール(b1−1)としては、例えば、カルボキシ基を有するポリオール、スルホン酸基を有するポリオール等が挙げられる。
【0024】
前記カルボキシ基を有するポリオールとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のヒドロキシ酸;カルボキシ基を有するポリエステルポリオールなどが挙げられる。前記カルボキシ基を有するポリエステルポリオールは、前記ヒドロキシ酸と各種ポリカルボン酸とを反応させることで得ることができる。
【0025】
前記スルホン酸基を有するポリオールとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、スルホン酸基を有するジカルボン酸又はその塩と、低分子量ポリオール(例えば、分子量100以上1000以下)との反応物であるポリエステルポリオール等が挙げられる。前記スルホン酸基を有するジカルボン酸としては、例えば、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸等が挙げられる。前記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の炭素原子数が1〜10のアルカンジオール;ジエチレングリコール等の炭素原子数が2〜10のポリエーテルポリオールなどが挙げられる。
【0026】
前記酸基を有するポリオール(b1−1)の数平均分子量は、好ましくは100以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは1000以下である。
本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定して得られたポリスチレン換算値を表すものとする。
【0027】
前記ポリエステルポリオール(b1−2)としては、例えば、低分子量ポリオール(例えば、分子量50以上300以下のポリオール)とポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるポリエステルポリオール;ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルポリオール;これらの共重合ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0028】
前記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の比較的低分子量(例えば、分子量50以上300以下)のポリオールなどが挙げられる。
【0029】
前記ポリカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;並びに前記脂肪族ポリカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸の無水物又はエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0030】
前記ポリエステルポリオール(b1−2)の数平均分子量は、顔料等との相溶性の観点から、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上であり、好ましくは4,000以下、より好ましくは3,000以下である。
【0031】
前記ポリカーボネートポリオール(b1−3)としては、例えば、炭酸エステルとポリオールとの反応物;ホスゲンとポリオール等との反応物などが挙げられる。
【0032】
前記炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0033】
前記炭酸エステル及びホスゲンと反応しうるポリオールとしては、例えば、上記低分子量ポリオールとして例示したポリオール;ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、ポリエステルポリオール(ポリヘキサメチレンアジペート等)等の高分子量ポリオール(重量平均分子量500以上5,000以下)などが挙げられる。中でも、芳香環含有ポリオールが好ましい。
【0034】
前記ポリカーボネートポリオール(b1−3)の数平均分子量は、顔料等との相溶性の観点から、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上であり、好ましくは4,000以下、より好ましくは3,000以下である。
【0035】
また、前記ポリオール(b1)中、ポリエステルポリオール(b1−2)及びポリカーボネートポリオール(b1−3)の合計中のポリカーボネートポリオール(b1−3)の含有率は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0036】
前記ポリオール(b1)は、少なくともポリカーボネートポリオール(b1−3)を含むことが好ましい。前記ポリオール(b1)中、ポリカーボネートポリオール(b1−3)の含有率は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上
であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0037】
前記酸基を有するポリオール(b1−1)、前記エステルポリオール(b1−2)及び前記ポリカーボネートポリオール(b1−3)の合計の含有率は、ポリオール(b1)中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、95質量%以下であってもよい。
【0038】
前記ポリオール(b1)は、さらに、脂環式構造を有するポリオール(b1−4)を含むことが好ましい。
前記脂環式構造を有するポリオール(b1−4)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、ジシクロヘキサンジオール、水素添加ビスフェノ−ルA、1,3−アダマンタンジオール等の脂環式構造を有する飽和ジオール;1,1’−ビシクロヘキシリデンジオール等の脂環式構造を有する不飽和ジオール;シクロヘキサントリオール等の脂環式構造を有する飽和トリオールなどが挙げられる。前記脂環式構造を有するポリオール(b1−4)の数平均分子量は、好ましくは100以上500以下である。
【0039】
前記脂環式構造を有するポリオール(b1−4)を用いる場合、その含有率は、印刷物のブロッキング抑制の観点から、ポリオール(b1)全量中、好ましくは0質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0040】
前記酸基を有するポリオール(b1−1)、前記ポリエステルポリオール(b1−2)、前記ポリカーボネートポリオール(b1−3)及び前記脂環式構造を有するポリオール(b1−4)の合計の含有率は、ポリオール(b1)中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0041】
前記ポリオール(b1)としては、他のポリオール(b1−5)を含んでいてもよい。前記他のポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、低分子量ポリオール(例えば、分子量50以上300以下)、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。
【0042】
前記ポリエーテルポリオール(b1−2)としては、例えば、活性水素原子を有する基(−NH−又は−OH)を2個以上有する化合物の1種又は2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものが挙げられる。
【0043】
前記開始剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA等の水酸基を2個有する化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の水酸基を3個有する化合物などが挙げられる。
【0044】
前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロロヒドリン等のエポキシド化合物;テトラヒドロフラン等の炭素原子数4以上(好ましくは炭素原子数4〜6、特に好ましくは炭素原子数4)の環状エーテルなどが挙げられる。
【0045】
前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、顔料等との相溶性の観点から、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上であり、好ましくは4,000以下、より好ましくは3,000以下である。
本明細書において、数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定して得られる値を表すものとする。
【0046】
前記低分子量ポリオールとしては、分子量が50以上300以下程度のポリオールを用いることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール等の炭素原子数2以上6以下の脂肪族ポリオール;1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式構造含有ポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物及びそれらのアルキレンオキシド付加物等の芳香族構造含有ポリオールなどが挙げられる。
【0047】
前記ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリイソブテンポリオール、水素添加(水添)ポリブタジエンポリオール、水素添加(水添)ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。
【0048】
前記他のポリオール(b1−5)の含有率は、ポリオール(b1)中、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、よりいっそう好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0049】
前記ポリイソシアネート(b2)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリエンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式構造を有するポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0050】
前記ポリイソシアネート(b2)としては、脂環式構造を有するポリイソシアネートを含むことが好ましい。脂環式構造を有するポリイソシアネートの含有率は、前記ポリイソシアネート(b2)中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0051】
前記ポリオール(b1)に含まれる水酸基に対する前記ポリイソシアネート(b2)のイソシアネート基の当量割合[イソシアネート基/水酸基]は、モル基準で、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上であり、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下である。
【0052】
前記ウレタン樹脂(B1)を製造する際、必要に応じて鎖伸長剤を用いてもよい。
【0053】
前記鎖伸長剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、ポリアミン、ヒドラジン化合物、その他活性水素原子を有する化合物が挙げられる。
【0054】
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン等のジアミン;N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン等のヒドロキシ基を有するジアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン等のトリアミン;トリエチレンテトラミン等テトラミンなどが挙げられる。これらの中でも、エチレンジアミンが好ましい。
【0055】
前記ヒドラジン化合物としては、例えば、ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3セミカルバジッドプロピルカルバジン酸エステル、セミカルバジド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0056】
前記その他活性水素を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水添ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール、水等が挙げられる。
【0057】
前記鎖伸長剤として、例えば、ポリアミンを用いる場合、ポリアミンが有するアミノ基とイソシアネート基との当量比[アミノ基/イソシアネート基]は、1.2以下が好ましく、0.3以上1以下の範囲がより好ましい。
【0058】
ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、印刷物の耐久性向上の観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上であり、好ましくは500,000以下、より好ましくは200,000以下、さらに好ましくは100,000以下である。重量平均分子量を大きくすることで、印刷物の耐久性を向上できるだけでなく、乾燥不良によるブロッキング等を抑制することができ、重量平均分子量を適度に小さくすることで、インキの転移不良や再溶解性等を抑制することができる。
【0059】
前記ウレタン樹脂(B1)は、前記ポリオール(b1)と前記ポリイソシアネート(b2)とを反応させ、必要に応じて、さらに鎖伸長剤を反応させることで製造することができる。前記ポリオール(b1)と前記ポリイソシアネート(b2)とを反応させる際には、有機溶剤を共存させてもよい。前記ポリオール(b1)と前記ポリイソシアネート(b2)とを反応させる際の反応温度は、50℃以上150℃以下であることが好ましい。
【0060】
前記有機溶剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド溶剤などが挙げられる。
【0061】
また、前記有機溶剤は、安全性や環境に対する負荷低減を図るため、前記ウレタン樹脂(B1)の製造途中又は製造後に、例えば、減圧留去等により一部又は全部を除去してもよい。
【0062】
前記ウレタン樹脂(B1)の含有率は、前記酸基を有するバインダー(B)中、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
【0063】
前記酸基を有するバインダー(B)は、予め後述する水性媒体(D)に分散させておいてもよい。ウレタン樹脂(B1)を水性媒体(D)に分散させる方法(水性化方法)としては、前記酸基を有するバインダー(B)を調製し(バインダー(B)調製工程)、得られた酸基を有するバインダー(B)と後述する塩基性化合物(C)の少なくとも一部とを混合し(中和工程)、得られた混合物と前記水性媒体(D)とを混合して分散液を調製する(分散工程)方法が挙げられる。
鎖伸長剤を用いる場合、鎖伸長剤は、前記バインダー(B)調製工程で添加してもよいし、前記分散工程の後に添加してもよい。
【0064】
酸基を有するバインダー(B)の含有率は、水性インキの再溶解性、印刷物のブロッキングの抑制、印刷濃度の向上、及び基材への密着性観点から、前記分散液中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0065】
前記水性化方法では、必要に応じて乳化剤を使用してもよい。また、水溶解や水分散の際には、必要に応じてホモジナイザー等の機械を使用してもよい。
前記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン系乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム塩等のアニオン系乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系乳化剤などが挙げられる。中でも、保存安定性の観点から、アニオン性又はノニオン性の乳化剤が好ましい。
【0066】
前記塩基性化合物(C)は、塩基性金属化合物(C1)及び有機アミン(C2)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
前記塩基性金属化合物(C1)としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;塩化ナトリウム、塩化カリウム等の金属塩化物;硫酸銅等の金属硫酸塩などが挙げられる。
【0067】
前記有機アミン(C2)としては、アンモニア;モノエタノールアミン等の第1級アミン;トリエチルアミン、ジエチルエタノールアミン等の第3級アミン;モルホリン等の環状アミンなどが挙げられる。
前記塩基性化合物(C)は、少なくとも有機アミン(C2)を含むことが好ましい。
【0068】
以下の式で表される比率は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.05以上であり、0.3以下あり、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.15以下である。前記比率が前記範囲にあることで、ボイルレトルト性が良好となる。
塩基性金属化合物(C1)のモル数×塩基性金属化合物(C1)の価数/{(有機アミン(C2)のモル数×有機アミン(C2)の価数)+(塩基性金属化合物(C1)のモル数×塩基性金属化合物(C1)の価数)}
【0069】
前記塩基性金属化合物(C1)及び前記有機アミン(C2)は、水性リキッドインキ中で、前記酸基を有するバインダー(B)の酸基と塩を形成していてもよい。前記塩基性化合物(C1)及び前記有機アミン(C1)が前記酸基を有するバインダーの酸基を中和することで、水分散性を向上しやすくなる。
【0070】
前記塩基性化合物(C)の含有量は、前記酸基を有するバインダー(B)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは4質量部以下である。
【0071】
前記水性媒体(D)としては、水;親水性有機溶剤;水及び親水性有機溶剤の混合物等が挙げられ、安全性や環境に対する付加の観点から、水又は水及び親水性有機溶剤の混合物が好ましい。
前記親水性有機溶剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、水と混和するものであることが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール及び2−プロパノール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリアルキレングリコール、グリセリン等の多価アルコール溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチルカルビトール等のエーテル溶剤;N−メチル−2−ピロリドン等のアミド溶剤などが挙げられる。
【0072】
前記水性媒体(D)が水及び親水性有機溶剤を含む場合、水の含有率は、水性媒体(D)中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、例えば100質量%以下、さらには95質量%以下であることも許容される。
【0073】
本発明の水性リキッドインキは、さらに助剤を含んでいてもよい。前記助剤としては、耐摩擦性、滑り性等を付与するためのパラフィン系ワックス、ポリエチレン系ワックス、カルナバワックス等のワックス;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミド化合物;印刷時の発泡を抑制するためのシリコン系、非シリコン系消泡剤;分散剤等を適宜使用することもできる。
【0074】
前記分散剤としては、ノニオン系分散剤が好ましい。
前記分散剤の酸価は、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは25mgKOH/g以下、さらに好ましくは20mgKOH/g以下であり、例えば1mgKOH/g以上、さらには3mgKOH/g以上であってもよい。
前記分散剤の酸価は、前記酸基を有するバインダー(B)の酸価よりも小さいことが好ましい。前記酸基を有するバインダー(B)の酸価と前記分散剤の酸価との差は、例えば1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上であり、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは20mgKOH/g以下である。
【0075】
前記分散剤の含有量は、前記着色剤(A)100質量部に対して、好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上、さらに好ましくは60質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは75質量部以下である。
前記分散剤の含有量は、前記酸基を有するバインダー(B)100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下である。
【0076】
前記水性リキッドインキの粘度は、離合社製ザーンカップ#4を使用して25℃において測定した数値として、好ましくは7秒以上、より好ましくは10秒以上であり、好ましくは25秒以下、より好ましくは20秒以下である。
ミリパスカル秒で粘度を示すと、25℃において好ましくは70(mPa・s)以上、より好ましくは100(mPa・s)以上であり、好ましくは350(mPa・s)以下、より好ましくは250(mPa・s)以下である。
【0077】
前記水性リキッドインキの表面張力は、好ましくは25mN/m以上、より好ましくは33mN/m以上であり、好ましくは50mN/m以下、より好ましくは43mN/以下である。インキの表面張力を適度に高めることで、基材へのインキの濡れ性を維持しつつ、ドットブリッジ(中間調の網点部分で隣り合う網点同士が繋がった印刷面の汚れ)を抑制することができ、インキの表面張力を適度に低くすることで、基材へのインキの濡れ性を高め、ハジキを抑制することができる。
【0078】
本発明に係る水性リキッドインキは、グラビア、フレキソ印刷インキの製造に一般的に使用されているアイガーミル、サンドミル、ガンマミル、アトライター等を用いて製造することができる。
【0079】
本発明の水性リキッドインキを調製する際、均一性の観点から、予め前記着色剤(A)と、前記酸基を有するバインダー(B)の少なくとも一部と、前記塩基性化合物(C)の少なくとも一部と、前記分散剤と、前記水性媒体(D)の少なくとも一部を混合して、予備組成物(練肉ベースインキ)を調製してもよい。
【0080】
本発明の水性リキッドインキは、各種の基材と密着性に優れ、紙、合成紙、熱可塑性樹脂フィルム、プラスチック製品、鋼板等への印刷に使用することができるものであり、電子彫刻凹版等によるグラビア印刷版を用いたグラビア印刷用、又は樹脂版等によるフレキソ印刷版を用いたフレキソ印刷用のインキとして有用である一方で、版を使用せずインクジェットノズルからインキを吐出するインクジェット方式向けのインキを除くものである。即ち、インクジェットインキの場合、ノズルから吐出したインク滴が、直接基材に密着し印刷物を形成するのに対し、本発明の水性リキッドインキは、印刷インキを一旦印刷版又は印刷パターンに密着・転写した後、インキのみを再度基材に密着させ、必要に応じて乾燥させ印刷物とするものである。
本発明の水性リキッドインキを用いてグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式から形成される印刷インキの膜厚は、例えば10μm以下、好ましくは5μm以下である。
【0081】
基材は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂などの生分解性樹脂、PP、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂又はそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好適に使用できる。これらの基材フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、その製法も限定されるものではない。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1〜500μmの範囲であればよい。
基材フィルムの印刷面には、コロナ放電処理がされていることが好ましく、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよい。
【実施例】
【0082】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
【0083】
(合成例1〜10、比較合成例1〜3:バインダー(1)〜(13)の調製)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、表1に示すポリオール(b1)及び表1に示すポリイソシアネート(b2)をメチルエチルケトン中で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(酸基を有するバインダー)の有機溶剤溶液を得た。
次いで、表1に示す塩基性化合物(C)又はその水溶液を加えることで前記ウレタンプレポリマーが有するカルボキシ基の一部又は全部を中和し、さらに水と表1に示す鎖伸長剤の水溶液を加え十分に攪拌することにより、ウレタン樹脂の水分散体を得、次いでエージング・脱溶剤することによって、不揮発分40質量%のバインダー(1)〜(13)を得た。
得られたバインダー(1)〜(13)における前記ウレタン樹脂中の脂環式構造の含有量、芳香環の含有量及び酸価を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
表1中、ポリエステルポリオール1は脂肪族ポリエステルポリオール(株式会社ダイセル製「L212AL」、数平均分子量1,250)を表し、ポリエステルポリオール2は芳香族ポリエステルポリオール(エチレングリコール13.1質量部、ネオペンチルグリコール22.0質量部、テレフタル酸18.5質量部、イソフタル酸18.5質量部、アクリル酸7.9質量部をモノブチル錫オキシド0.03質量部の存在下で反応させた芳香族ポリエステルポリオール。数平均分子量1,000)を表し、ポリカーボネートポリオール1はポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製「エタナコール UH−200」、数平均分子量2,000)を表し、ポリカーボネートポリオール2はポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製「エタナコール UH−100」、数平均分子量1,000)を表し、ポリエーテルポリオール1はポリテトラエチレングリコール(数平均分子量2,000)を表す。
【0086】
実施例1〜10、比較例1〜3
合成例及び比較合成例で得たバインダー(1)〜(13)をそれぞれ以下の組成によりよく撹拌混合した後、ビーズミルで練肉して、練肉ベースインキを作製した。次いで、得られた練肉ベースインキにさらにバインダー(1)〜(13)をそれぞれ10質量部と、水4質量部を追加混合して水性青色印刷インキを作製した。得られた印刷インキの粘度をザーンカップ#4(離合社製)で16秒(25℃)になるように水で調整し、それぞれ実施例1〜10、比較例1〜3の水性リキッドインキとした。
【0087】
また、得られた水性リキッドインキの表面張力を確認すべく、25℃における表面張力を測定した。表面張力はWilhelmy法に基づき、協和界面科学(株)製 自動表面張力計DY−300を用いて測定した。
【0088】
〔練肉ベースインキ配合〕
FASTOGEN BLUE LA5380藍顔料(DIC社製) 15質量部
水性フレキソインキ用バインダー 40質量部
ノニオン系顔料分散剤(BYK社製) 10質量部
イソプロピルアルコール 3質量部
水 8質量部
シリコン系消泡剤(BYK社製) 0.2質量部
【0089】
〔水性リキッドインキ(青色)の配合総量(粘度調整用の水を除く)〕
FASTOGEN BLUE LA5380藍顔料(DIC社製) 15質量部
水性フレキソインキ用バインダー 50質量部
ノニオン系顔料分散剤(BYK社製) 10質量部
イソプロピルアルコール 3質量部
水 12質量部
シリコン系消泡剤(BYK社製) 0.2質量部
【0090】
実施例及び比較例の水性リキッドインキをFlexiproof100テスト印刷機(Testing Machines,Inc.社製)を用いて、表1に示すコロナ処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績(株)製 エステルE5102 厚さ12μm)、コロナ処理二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡績(株)製 パイレンP2161 厚さ20μm)に、縦240mm×横80mmのベタ絵柄を印刷後、ドライヤーで乾燥し印刷物を得た。
【0091】
得られた印刷物について、各フィルム使用時のボイルレトルト性、耐溶剤性、耐ブロッキング性、基材密着性について評価し、インキ転移性については印刷濃度で確認した。
【0092】
〔評価項目1:ボイルレトルト性(耐熱水性)〕
前記コロナ処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム印刷物のインキ面にウレタン系のドライラミネート接着剤ディックドライLX−500/KW−75(DIC製)を塗膜量が3.5g/m
2となるように塗布、乾燥後、ドライラミネート機(DICエンジニアリング製)によってアルミニウム箔(以下、AL:東洋アルミニウム工業(株)製 アルミ箔C、15μm)をラミネートし、2層のラミネート物1を得た。次にラミネート物1のAL上に接着剤を同様に塗布し、無延伸ポリプロピレンフィルム(以下、R−CPP:東レ合成フィルム社製 ZK−75 50μm)を積層し、40℃で5日間エージング施し、3層の複合ラミネート物2を得た。
得られたラミネート物2を120mm×120mmの大きさのパウチに製袋し、内容物として、食酢、サラダ油、ミートソースを重量比で1:1:1に配合した疑似食品70gを充填密封した。作成したパウチを135℃、30分間の蒸気レトルト殺菌処理をした後、インキ皮膜の剥離の程度を4段階で評価を行った。
◎:剥離が全くない。
○:小さなブリスター状の剥離が極僅かにある。
△:中間サイズのブリスター状の剥離が部分的にある。
×:大小問わず、全面に剥離がある。
【0093】
〔評価項目2:耐溶剤性〕
上記で得られた印字物をエタノールを浸した綿棒で10回こすり、印字の消失度合いを評価した。賞味期限をインクジェット方式で印字した市販のラミネート物を比較標準とした。尚、判定基準は以下の通りとした。
◎:印字部分が、全く消失せず良好。
○:印字部分の80%以上が、消失せず良好。
△:印字部分の50%が消失。
×:印字部分が100%消失。
【0094】
〔評価項目3:耐ブロッキング性〕
印刷物の印刷面と非印刷面が接触するようにフィルムを4cm×4cmサイズにカットしてから重ねあわせ、5Kgf/cm
2の荷重をかけ、40℃の環境下に12時間放置した後、フィルムを剥離した際の非印刷面へのインキの転移(裏移り)の状態を、裏移りの部分の面積比率(%)を基準に目視で判定した。
◎:非印刷面への転移は全く見られない。
○:5%未満と僅かであるが、裏移りによる転移が見られる。
△:5%以上〜20%未満の裏移りによる転移が見られる。
×:20%以上の裏移りによる転移が見られる。
【0095】
〔評価項目4:基材密着性〕
印刷物を1日放置後、印刷面にセロハンテープ(ニチバン製12mm幅)を貼り付け、セロハンテープの一端を印刷面に対して直角方向に素早く引き剥がした時の印刷皮膜の残存率を基準に外観を目視判定した。
◎:印刷皮膜が全く剥がれない。
○:印刷皮膜の80%以上〜90%未満がフィルムに残った。
△:印刷皮膜の50%以上〜80%未満がフィルムに残った。
×:印刷皮膜の50%未満しかフィルムに残らなかった。
【0096】
〔評価項目5:インキ転移性〕
前記印刷物のベタ濃度をX−Rite社製SpectroEye濃度計を使用してインキ転移性を評価した。
〇:印刷物の藍濃度は1.9以上であり、インキ転移性は良好である。
△:印刷物の藍濃度は1.6以上1.9未満であり、インキ転移性は中位である。
×:印刷物の藍濃度は1.6未満であり、インキ転移性は不良である。
【0097】
【表2】
【0098】
本発明の水性リキッドインキを用いることで、水性リキッドインキとしての基本性能(基材に対する密着性・耐ブロッキング性・高い印刷濃度等)を兼ね備えた上に、さらに高い耐水性(ボイルレトルト性)と耐溶剤性とを兼ね備える水性リキッドインキを提供することができる。上記性能を兼ね備えることで、ボイルレトルトにも耐えうる印刷物を提供可能である。