(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6622955
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】ガスセンサ用ゲル状組成物
(51)【国際特許分類】
G01N 27/404 20060101AFI20191209BHJP
C08J 3/075 20060101ALI20191209BHJP
C08L 33/10 20060101ALI20191209BHJP
C08L 79/02 20060101ALI20191209BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20191209BHJP
C08F 2/44 20060101ALN20191209BHJP
【FI】
G01N27/404 341B
C08J3/075CEY
C08J3/075CFG
C08L33/10
C08L79/02
C08K5/098
!C08F2/44 A
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-208361(P2014-208361)
(22)【出願日】2014年10月9日
(65)【公開番号】特開2016-80367(P2016-80367A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 太郎
【審査官】
櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−021759(JP,U)
【文献】
特開昭47−006100(JP,A)
【文献】
特開平02−240556(JP,A)
【文献】
特開昭49−088386(JP,A)
【文献】
特開昭51−037287(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/058014(WO,A1)
【文献】
特開2010−202872(JP,A)
【文献】
特開2006−306711(JP,A)
【文献】
特表平02−500130(JP,A)
【文献】
M KOUDELKA,PERFORMANCE CHARACTERISTICS OF A PLANAR ‘CLARK-TYPE' OXYGEN SENSOR,Sensors and Actuators,1986年,Vol.9, Issue 3,pp.249-258
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.0mol/l以上の塩基性を示す電解質水溶液とアルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート、アルキルアミノアルキル系メタクリレートまたは、多価アルコールメタクリレートあるいはそのアルコキシエーテル誘導体から選ばれる一種または二種以上であるメタクリレート系モノマーの重合物、または、数平均分子量が300〜100000のポリエチレンイミンをグリシジルエーテル系架橋剤によって架橋させてなるポリエチレンイミン系ポリマーを含む均質なゲル状組成物としたことを特徴とするガスセンサ用ゲル状組成物。
【請求項2】
前記塩基性を示す電解質水溶液が有機酸の塩を含むことを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ用ゲル状組成物。
【請求項3】
前記有機酸の塩が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩であることを特徴とする請求項2に記載のガスセンサ用ゲル状組成物。
【請求項4】
前記有機酸の塩が、酢酸カリウムである、請求項2または3に記載のガスセンサ用ゲル状組成物。
【請求項5】
前記メタクリレート系モノマー重合物が、下記一般式で示されるモノマーを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスセンサ用ゲル状組成物。
【化1】
(式中、R
1〜R
3はそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基、Aは水素または水酸基、nは0〜5である)
【請求項6】
前記グリシジルエーテル系架橋剤がポリグリコールグリシジルエーテルであることを特徴とする、請求項1〜5に記載のガスセンサ用ゲル状組成物。
【請求項7】
前記ポリグリコールグリシジルエーテルが下記一般式で示されることを特徴とする、請求項6に記載のガスセンサ用ゲル状組成物。
【化2】
(式中nは4〜22)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスセンサ用ゲル状組成物に関し、特に塩基性を示す電解質水溶液を含むゲル状組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゲルないしゲル状組成物は、物理化学的には分散系の一種であって、分散質のネットワークによって高い粘性とともに流動性を失った半固形状態の物質系を意味し、広義には固体分散媒のコロイドであるソリッドゾルを包含する。
【0003】
また、材料系によってゲルを分類した場合、分散質が高分子であって架橋等によって網目構造となったゲルを高分子ゲルと呼び、分散媒が水のゲルをヒドロゲル、分散媒が有機溶媒のゲルの場合をオルガノゲルと通常呼ばれている。
【0004】
一方、従来から電解質水溶液を、各種ガスセンサなどに用いることが知られている。例えば、特開昭59−17146号公報(特許文献1)には、酸素濃度計に用いる電解液として、有機酸と有機酸の塩を用いることが記載されている。また、特開2001−208722号公報(特許文献2)には、電解質含有体がゲル状であることが好ましいことが記載されている。さらに、特開平05−335032号公報(特許文献3)には、シリカ微粒子を用いたゲル状電解質が記載されている。しかしながら、特許文献1においては、塩基性の電解質を用いると寿命が短くなるなど問題があることが記載されている。さらに、特許文献2においては、ゲル状電解質にアクリルアミドを用いることなどが記載されており、安全性に問題がある。特許文献3には、シリカ微粒子を用い無機酸水溶液をゲル状組成物としたことは記載があるが、シリカ微粒子を用いている為、ゲルの安定性に問題があった。前記の通り、従来のゲル状組成物においては、塩基性の電解質を安定的にゲル状組成物とすることに課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−17146号公報
【特許文献2】特開2001−208722号公報
【特許文献3】特開平05−335032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、塩基性を示す電解質水溶液をゲル状組成物とすることで、取り扱いが容易で、安定性に優れるガスセンサ用ゲル状組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、塩基性を示す電解質水溶液を特定の重合物を用いることによりゲル状組成物が得られ、前記課題が解決された。すなわち本発明は、
「1. 1.0mol/l以上の塩基性を示す電解質水溶液とアルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート、アルキルアミノアルキル系メタクリレートまたは、多価アルコールメタクリレートあるいはそのアルコキシエーテル誘導体から選ばれる一種または二種以上であるメタクリレート系モノマーの重合物
、または、数平均分子量が300〜100000のポリエチレンイミンをグリシジルエーテル系架橋剤
によって架橋させてなるポリエチレンイミン系ポリマ
ーを含む均質なゲル状組成物としたことを特徴とするガスセンサ用ゲル状組成物。2.前記塩基性を示す電解質水溶液が有機酸の塩を含むことを特徴とする第1項に記載のガスセンサ用ゲル状組成物。
3.前記有機酸の塩が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩であることを特徴とする第2項に記載のガスセンサ用ゲル状組成物。
4.前記有機酸の塩が、酢酸カリウムである、第2項または第3項に記載のガスセンサ用ゲル状組成物。
5.前記メタクリレート系モノマー重合物が、下記一般式で示されるモノマーを含む、第1項〜第4項のいずれか1項に記載のガスセンサ用ゲル状組成物。
【化1】
(式中、R
1〜R
3はそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基、Aは水素または水酸基、nは0〜5である)
6.前記グリシジルエーテル系架橋剤がポリグリコールグリシジルエーテルであることを特徴とする、第1項〜第5項に記載のガスセンサ用ゲル状組成物。
7.前記ポリグリコールグリシジルエーテルが下記一般式で示されることを特徴とする、第6項に記載のガスセンサ用ゲル状組成物。
【化2】
(式中nは4〜22)」に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塩基性を示す電解質水溶液をメタクリレート系モノマーの重合物またはポリエチレンイミン系ポリマーとゲル状組成物としたことにより、電解質の取り扱いが容易になり、ゲルの安定性についても向上し、ガスセンサに用いた際にもガスセンサの性能が向上するなど優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るガスセンサ用ゲル状組成物の好ましい実施態様につき説明する。
【0010】
本発明に係るガスセンサ用ゲル状組成物は、塩基性を示す電解質水溶液とメタクリレート系モノマーの重合物またはポリエチレンイミン系ポリマーを含むゲル状組成物をガスセンサ用ゲル状組成物としたことが特徴の一つである。
【0011】
本発明による塩基性を示す電解質水溶液としては、有機酸の塩を含む電解質水溶液が好ましく用いられる。さらに有機酸の塩として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩を用いることが好ましい。このような有機酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸リチウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、シュウ酸リチウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、酪酸リチウム、酪酸ナトリウム、酪酸カリウムなどが好ましく用いられ得る。さらに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基性を示す電解質を用いることもできる。
【0012】
上記電解質水溶液の濃度は、目的とする用途に応じて適宜選択することができるが、1mol/l以上の電解質水溶液を用いることとが好ましく、さらに、飽和の電解質水溶液を用いることもできる。そして本発明は塩基性を示す電解質水溶液についてゲル化できることが特徴の一つである。
【0013】
また、本発明において、メタクリレート系モノマーは、単独ないし組み合わせて重合反応に供することができ、アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート、アルキルアミノアルキル系メタクリレートおよび(または)多価アルコールメタクリレートおよびそのアルコキシエーテル誘導体が好ましく用いられ得る。
【0014】
上記のアルキルアミノアルキル系メタクリレートとしては、好ましくは下記一般式で表されるものを用いることができる。
【化3】
(式中、R
1〜R
3はそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基、Aは水素または水酸基、nは0〜5である。)
【0015】
具体的には、ジメチルアミノエチルメタクリレートの四級化物、ジエチルアミノエチルメタクリレートの四級化物、ジプロピルアミノエチルメタクリレートの四級化物、N,N,N−トリメチル−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルアンモニウムクロライドなどのメタクリレート系モノマーが好ましく用いられ得る。
【0016】
さらに、多価アルコールメタクリレートおよびそのアルコキシエーテル誘導体としてはグリセリンメタクリレート、メトキシエチレングリコールメタクリレートモノマーが好ましく用いられ得る。
【0017】
重合開始剤としては、使用するモノマーの種類に応じて適宜選択され得るが、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルファネートハイドライド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロライドなどのアゾ開始剤、クミルパーオキシデカネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシデカネート、t−ブチルパーオキシデカネートなどの有機化酸化物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素などの無機化合物などが好ましく用いられ得る。
【0018】
本発明において、メタクリレート系モノマーの配合比は、使用するモノマーに応じて適宜最適範囲を選択することができるが、通常、塩基性を示す電解質水溶液80質量部に対して5質量部〜35質量部が好ましく、さらに好ましくは10質量部〜30質量部の範囲である。
【0019】
本発明に係るゲル状組成物の製造方法においては、前記メタクリレート系モノマーを塩基性を示す電解質水溶液に溶解させて、さらに重合開始剤を添加して、たとえば30〜80℃の温和な加熱温度範囲で重合ないし共重合反応を起こさせることによって、反応系全体が均質な状態で直接ゲル化される。尚、本発明でいう均質なゲルとは、重合物と電解質水溶液が粗密ない状態になっていることをいう。
【0020】
このようにして得られたゲル状組成物は、反応系の全体が直接かつ均質な状態にゲル化されたものであり、液相や固相の析出や相分離は実質的に認められない。また、本発明により得られるゲル状組成物は、比較的光透過性が高く、透明から白色の範囲のゲル状組成物を比較的簡易かつ熱負荷の少ない工程で得ることができる。
【0021】
本発明によってこのような均質なゲル状組成物が得られる理由は必ずしも明らかではなく、また本発明はいかなる理論にも拘束されるものではないが、以下のように推測することができる。
【0022】
塩基性を示す電解質水溶液に対する重合物のゲル化能は前記電解質水溶液と重合物の親和性に起因すると考えられる。前記電解質水溶液と重合物の親和性が高すぎると、重合物はゲルを生じず電解質水溶液に対して溶解状態となり、物性変化を生じないか増粘程度の変化に留まる。また、電解質水溶液と重合物の親和性が低すぎれば、重合物は溶媒と相互状態を形成することができなくなり、沈殿や濃厚相などの相分離または一部のゲル化程度に留まると考えられる。従って前記電解質水溶液を均質にゲル化するためには、重合物に電解質水溶液に対し適度な親和性を与えるために、重合物に電解質水溶液と親和性を示す親水部と解離性を示す疎水部を適度に導入する。このように設計されたモノマーを用いて重合反応を進行させると、溶媒を自己の巨大分子中に含みながら重合が進行していくため、相分離することなくネットワークを形成していき、重合物は実質的に均質なゲルを形成すると考えられる。
【0023】
また、本発明において使用するポリエチレンイミン系ポリマーとしては、好ましくは数平均分子量300〜100000の範囲、さらに好ましくは600〜80000の範囲のポリエチレンイミン、特に好ましくは1000〜70000の範囲のからなるポリエチレンイミンを用いることが望ましい。
【0024】
本発明において、前記ポリエチレンイミン系ポリマーを架橋剤によって架橋させることが好ましい。このような架橋剤としては、エチレンポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、プロピレンポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル系架橋剤が好ましく用いられ、ポリグリコールジグリシジルエーテルがより好ましく用いられ、下記一般式のポリエチレングリコールジグリシジルエーテルがさらに好ましく用いられる。
【化4】
(式中nは4〜22)
【0025】
本発明において、前記のポリエチレンイミン系ポリマーの配合比は、使用するポリエチレンイミン系ポリマーに応じて適宜最適範囲を選択することができるが、通常、塩基性を示す電解質水溶液に対して0.1〜50質量%、が好ましく、さらに好ましくは1〜30質量%の範囲である。
【0026】
さらに、本発明において、前記の架橋剤は、使用するポリエチレンイミン系ポリマーに応じて適宜最適範囲を選択することができるが、通常、ポリエチレンイミン系ポリマー1質量部に対して0.1質量部〜10質量部が好ましく、さらに好ましくは0.3質量部〜8質量部の範囲である。
【0027】
本発明に係るゲル状組成物の製造方法においては、前記のポリエチレンイミン系ポリマーを塩基性を示す電解質水溶液に溶解させて、さらに架橋剤を添加して、たとえば20〜80℃の温和な加熱温度範囲で重合ないし共重合反応を起こさせることによって、反応系全体が均質な状態で直接ゲル化される。尚、本発明でいう均質なゲルとは、ポリエチレンイミン系ポリマーと電解質水溶液が粗密ない状態になっていることも含める。
【0028】
このようにして得られたゲル状組成物は、反応系の全体が直接かつ均質な状態にゲル化されたものであり、液相や固相の析出や相分離は実質的に認められない。また、上記本発明の方法によれば、得られるゲル状組成物は、比較的光透過性が高く、透明から白色の範囲のゲル状組成物を比較的簡易かつ熱負荷の少ない工程で得ることができる。
【0029】
本発明において、このような均質なゲル状組成物が得られる理由は必ずしも明らかではなく、また本発明はいかなる理論にも拘束されるものではないが、以下のように推測される。
【0030】
塩基性を示す電解質水溶液に対するポリエチレンイミン系ポリマーと架橋剤からなる架橋体ポリマーのゲル化能は電解質水溶液中における架橋体ポリマー分子の親和性と自由度に起因すると考えられる。電解質水溶液と架橋体ポリマーの親和性と自由度が高すぎると、架橋体ポリマーはゲルを生じず溶媒に対して溶解状態となり、物性変化を生じないか増粘程度の変化に留まる。また、電解質水溶液と架橋体ポリマーの自由度が低すぎたり電解質水溶液との親和性が低すぎれば、重合物は電解質水溶液と相互状態を形成することができなくなり、沈殿や濃厚相などの相分離または一部のゲル化程度に留まると考えられる。従って電解質水溶液を均質にゲル化するためには、架橋体ポリマーが電解質水溶液と親和性を維持しつつ、ゲル化するための分子の適度な強制力が必要となる。架橋体ポリマーに電解質水溶液に対し適度な親和性を与えるために、架橋体ポリマーに電解質水溶液と親和性を示す親水部と強制力の基となる架橋部を適度に導入する。ポリエチレンイミンは分子内に親水性であり反応性に富むアミノ基、イミノ基を多数含有しているため、これらの設計に適しており好適に利用することが可能である。このように適宜設計されたポリエチレンイミン系ポリマーと架橋剤を用いて架橋反応を進行させると、溶媒を自己の巨大分子中に含みながら架橋、変性が進行していくため、相分離することなくネットワークを形成していき、架橋体ポリマーは均質なゲルを形成すると考えられる。
【0031】
本発明は、前記のゲル状組成物を酸素センサなどのガスセンサに用いるが、ガスセンサに用いる際に、電解質がゲル状組成物である為、取り扱いが容易であり、液漏れをおこすことが無く、安定性に優れたガスセンサとすることができる。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
ジメチルアミノエチルアミノメタクリレート4級化物(メタクリレート系モノマー)10質量部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキシド繰り返し数9 メタクリレート系モノマー)10質量部を、塩基性を示す電解質水溶液(6.5M−酢酸カリウム電解質水溶液)80質量部へ溶解させた。
次いで、この溶液を10〜20℃へ冷却後、窒素ガスを10分間導入し、さらに、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド1質量部、過硫酸アンモニウム0.002質量部を加え、均一に溶解させて重合組成物を調製した。
得られた重合組成物をガラス管へ充填し、加熱処理を行い、さらに重合反応を行うことによってゲル化反応を生じさせるようにして、酢酸カリウム電解質水溶液とメタクリレート系モノマーの重合物からなる、均質なゲル状組成物を得た。
【0033】
(実施例2〜7)
表1に示したメタクリレート系モノマーと6.5M−酢酸カリウム電解質水溶液の配合で、実施例1と同じ方法で均質なゲル状組成物を得た。
【0034】
【表1】
【0035】
(実施例8)
30質量%ポリエチレンイミン水溶液((株)日本触媒製、商品名P−1000、数平均分子量70000)10質量部を、塩基性を示す電解質水溶液(6.5M−酢酸カリウム電解質水溶液)87.5質量部へ溶解させた。次いで、これにエチレンポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(エチレンオキシド繰り返し単位9)2.5質量部を加え均一に溶解させて、反応組成物を調製した。
得られた反応組成物をガラス管へ充填し、加熱処理を行い、さらに架橋反応させることによってゲル化反応を生じさせるようにして、酢酸カリウム電解質水溶液とエチレンポリエチレングリコールジグリシジルエーテルで架橋されたポリエチレンイミンからなる、均質なゲル状組成物を得た。
【0036】
(応用実施例1〜8)
前記実施例1〜8で作製したゲル状組成物を用いて、ガラス管をハウジングとして電解質を保持する酸素センサを作製した。前記酸素センサに振動を与えたり、上下を入れ替え、その状態を確認したが、電解質水溶液が漏れ出すこともなく、振動を与える前後で、その変化は見られなかった。
【0037】
(応用比較例1)
6.5M−酢酸カリウム電解質水溶液をガラス管をハウジングに保持する酸素センサを作製した。前記酸素センサに振動を与えたり、上下を入れ替え、その状態を確認したが、電解質水溶液が漏れ出し、酸素センサとしての機能を失っていた。
【0038】
前記応用実施例1〜8と、応用比較例1との比較からも明らかなように、ゲル状組成物を用いると、センサとしての取り扱い性能、安定性に優れていることが分かる。