(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記絶縁基板の一方の面に上記第1、第2の電極が配置され、上記絶縁基板の他方の面に上記高融点金属体が配置され、少なくとも上記第1の電極上に搭載された上記第1の可溶導体と上記高融点金属体とが重畳する請求項9〜15のいずれか1項に記載のスイッチ素子。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明が適用されたスイッチ素子について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
[スイッチ素子]
本発明が適用されたスイッチ素子1は、
図1に示すように、絶縁基板10と、絶縁基板10上に、近接して形成された第1、第2の電極11,12と、第1の電極11上に搭載された第1の可溶導体13と、絶縁基板10を介して第1の電極11と同一面上に隣接され、第1の可溶導体13よりも融点の高い高融点金属体15とを有する。なお、
図1(A)は第1の可溶導体の溶断前におけるスイッチ素子1のカバー部材20を除いて示す平面図であり、
図1(B)はA‐A’断面図であり、
図1(C)はB‐B’断面図であり、
図1(D)はC‐C’断面図である。
【0015】
このスイッチ素子1は、第1、第2の電極11,12がブザーやランプあるいは警報システム等からなる警報器31と接続され、高融点金属体15の発熱により第1の可溶導体13を溶融させることにより、この溶融導体によって第1、第2の電極11,12間を短絡させ、警報器31であるブザーやランプあるいは警報システム等を作動させるものである。
【0016】
絶縁基板10は、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材を用いて略方形状に形成されている。絶縁基板10は、その他にも、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよいが、第1の可溶導体13の溶断時の温度に留意する必要がある。
【0017】
[第1、第2の電極]
第1、第2の電極11,12は、絶縁基板10の表面10a上に、互いに近接配置されるとともに離間されることにより開放されている。また、第1の電極11には後述する第1の可溶導体13が搭載されている。第1、第2の電極11,12は、高融点金属体15が通電に伴って発熱することにより、
図2に示すように、第1の可溶導体13の溶融導体13aが第1、第2の電極11,12間にわたって凝集、結合し、この溶融導体13aを介して短絡されるスイッチ2を構成する。なお、
図2(A)は第1の可溶導体の溶断時におけるスイッチ素子1のカバー部材20を除いて示す平面図であり、
図2(B)はA‐A’断面図であり、
図2(C)はB‐B’断面図であり、
図2(D)はC‐C’断面図である。
【0018】
第1、第2の電極11,12は、高融点金属体15によって加熱されることにより、第1の可溶導体13の溶融導体13aを凝集しやすくすることができる。
【0019】
第1、第2の電極11,12は、それぞれ、絶縁基板10の側面10b,10cに設けられたキャスタレーションを介して裏面10fに設けられた外部接続端子11a,12aと接続されている。第1、第2の電極11,12は、これら外部接続端子11a,12aを介して警報器31と接続され、スイッチ素子1が動作することにより、当該警報器31への給電経路となる(
図5参照)。
【0020】
第1、第2の電極11,12は、CuやAg等の一般的な電極材料を用いて形成することができる。また、第1、第2の電極11,12の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。これにより、スイッチ素子1は、第1、第2の電極11,12の酸化を防止し、第1の可溶導体13の溶融導体を確実に保持させることができる。また、スイッチ素子1をリフロー実装する場合に、第1の可溶導体13を接続する接続用ハンダ17あるいは第1の可溶導体13の外層を形成する低融点金属が溶融することにより第1、第2の電極11,12を溶食(ハンダ食われ)するのを防ぐことができる。
【0021】
[高融点金属体]
高融点金属体15は、通電すると発熱する導電性を有する部材であって、第1の可溶導体13よりも融点が高く、たとえばW、Mo、Ru、Cu、Ag、あるいはこれらを主成分とする合金等からなる。高融点金属体15は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものをスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。
【0022】
高融点金属体15は、絶縁基板10の表面10a上に、第1、第2の電極11,12と並んで配置されている。これにより高融点金属体15は、絶縁基板10を介して第1の電極11と隣接され、通電に伴って発熱すると、絶縁基板10を介して熱が伝わり第1の電極11上に搭載されている第1の可溶導体13を溶融させることができる。
【0023】
また、高融点金属体15は、絶縁基板10の側面10b,10cに設けられたキャスタレーションを介して裏面10fに設けられた外部接続端子15aと接続されている。高融点金属体15は、外部接続端子15aを介して、警報器31の作動のトリガーとなる機能回路32と接続され、機能回路32の異常に伴う過電流によって発熱する(
図5参照)。
【0024】
また、高融点金属体15は、第1の可溶導体13と近接する位置において、相対的に細くなり、電流が集中することにより局部的に高温に発熱する発熱部15bが形成されている。第1の可溶導体13と近接する位置に発熱部15bを設けることにより、高融点金属体15は、効率よく第1の可溶導体13を溶融させ、速やかに第1、第2の電極11,12を短絡させることができる。
【0025】
図1に示すように、高融点金属体15は、機能回路32が正常に作動しているときは、定格内の適正な電流が流れている。そして、高融点金属体15は、機能回路32の異常によって過電流が流れると発熱し、
図2に示すように、第1の可溶導体13を溶融させ、溶融導体13aを介して第1、第2の電極11,12を短絡させる。その後も、高融点金属体15は発熱を続けることにより、
図3に示すように、自身のジュール熱によって溶断する。これにより、高融点金属体15は、機能回路32の異常による過電流が遮断され、発熱が停止する。すなわち、高融点金属体15は、第1の可溶導体13を溶融させるとともに自己発熱によって自身の給電経路を遮断するヒューズとして機能する。なお、
図3(A)は第1の可溶導体13及び高融点金属体15の溶断時におけるスイッチ素子1のカバー部材20を除いて示す平面図であり、
図3(B)はA‐A’断面図であり、
図3(C)はB‐B’断面図であり、
図3(D)はC‐C’断面図である。
【0026】
また、高融点金属体15は、局部的に高温となる発熱部15bを設けることにより、当該発熱部15bにおいて溶断する。このとき、高融点金属体15は、発熱部15bが相対的に細く形成されているため、溶断時に発生するアーク放電も小規模なものに収まり、後述する第1の絶縁層16の被覆効果とともに、溶融導体の飛散を防止することができる。
【0027】
なお、高融点金属体15は、上述した導電ペーストを印刷することによりパターン形成する他にも、銅箔や銀箔等の高融点金属箔や、銅線や銀線等の高融点金属ワイヤーを用いて形成してもよい。また、高融点金属箔や高融点金属ワイヤーを用いて高融点金属体15を構成する場合、高融点金属体15の溶断後における溶融導体のリークの問題が導電パターンに比して少ないことから、絶縁基板10として熱伝導性に優れ、第1の可溶導体13を速やかに溶融させることができるセラミック基板を好適に用いることができる。
【0028】
[第1の絶縁層]
第1、第2の電極11,12及び高融点金属体15は、絶縁基板10の表面10a上において第1の絶縁層16に被覆されている。第1の絶縁層16は、第1、第2の電極11,12及び高融点金属体15の保護及び絶縁を図るとともに、高融点金属体15の溶断時におけるアーク放電を抑制するために設けられ、例えばガラス層からなる。
【0029】
第1の絶縁層16は、高融点金属体15の発熱部15bを覆うとともに、第1、第2の電極11,12の先端部11b,12bを除く領域上に形成されている。すなわち、第1、第2の電極11,12は、先端部11b,12bが第1の絶縁層16より露出され、後述する第1の可溶導体13の溶融導体13aが凝集、結合可能とされている。
【0030】
また、第1の絶縁層16は、第1の電極11と重畳する一部に開口部16aが形成されている。そして、第1の電極11は、先端部11b及び開口部16aに接続用ハンダ17が設けられ、この接続用ハンダ17によって先端部11bと開口部16aとの間にわたって、第1の絶縁層16上に第1の可溶導体13を支持している。
【0031】
[第2の絶縁層]
また、高融点金属体15と絶縁基板10との間に第2の絶縁層24を形成してもよい。第2の絶縁層24は、第1の絶縁層16と同様に、ガラス等からなる。
【0032】
このとき、第2の絶縁層24は、発熱部15bの中心を含む領域に部分的に形成されてもよい。高融点金属体15は、発熱部15bの中心付近が第2の絶縁層24上に積層される。これにより、
図3に示すように、高融点金属体15は、発熱部15bが第2の絶縁層24を跨いで形成され、第2の絶縁層24の熱伝導率が絶縁基板10よりも小さく溶断時には第2の絶縁層24上で遮断される。したがって、高融点金属体15は、溶断後における絶縁抵抗を高くすることができ、リークを確実に防止することができる。
【0033】
[第1の可溶導体]
第1の絶縁層16を介して第1、第2の電極11,12上に搭載される第1の可溶導体13は、高融点金属体15の発熱により速やかに溶融されるいずれの金属を用いることができ、例えば、ハンダや、Snを主成分とするPbフリーハンダ等の低融点金属を好適に用いることができる。
【0034】
また、第1の可溶導体13は、低融点金属と高融点金属とを含有してもよい。低融点金属としては、ハンダや、Snを主成分とするPbフリーハンダなどを用いることが好ましく、高融点金属としては、Ag、Cu又はこれらを主成分とする合金などを用いることが好ましい。高融点金属と低融点金属とを含有することによって、スイッチ素子1をリフロー実装する場合に、リフロー温度が低融点金属の溶融温度を超えて、低融点金属が溶融しても、低融点金属の外部への流出を抑制し、第1の可溶導体13の形状を維持することができる。また、溶断時も、低融点金属が溶融することにより、高融点金属を溶食(ハンダ食われ)することで、高融点金属の融点以下の温度で速やかに溶断することができる。なお、第1の可溶導体13は、後に説明するように、様々な構成によって形成することができる。
【0035】
ここで、第1の可溶導体13は、接続用ハンダ17によって第1の電極11上に接続されている。そして、第1の可溶導体13の面積は、第1の電極11と重畳する接続面積以上の大きさを有する。すなわち、第1の可溶導体13は、第1の電極11上に接続されるとともに、第1の電極11と重畳する接続面積以上の面積を有し、好ましくは第2の電極12側へ張り出して支持されている。
【0036】
これにより、第1の可溶導体13は、第1、第2の電極11,12の各先端部11b,12b間にわたって凝集するのに十分な溶融導体13aの体積を有し、確実に第1、第2の電極11,12間を短絡させることができる。
【0037】
なお、第1の可溶導体13の面積は、第1の電極11との接続面積の2倍以上有することが、確実に第1、第2の電極11,12間を短絡させるのに十分な溶融導体13aの量を確保するうえで望ましい。
【0038】
また、第1の可溶導体13は、
図1(A)(D)に示すように、第2の電極12上に積層された第1の絶縁層16に支持されることにより、第2の電極12上に重畳されてもよい。これにより、第1の可溶導体13は、高融点金属体15の発熱によって溶融すると、第1、第2の電極11,12の各先端部11b,12b上に溶融導体13aが凝集するとともに、凝集した溶融導体13aが結合し、より確実に第1、第2の電極11,12間を短絡させることができる。
【0039】
なお、第1の可溶導体13は、酸化防止、濡れ性の向上等のため、フラックス18が塗布されていることが好ましい。
【0040】
[スイッチ回路・警報回路]
以上のようなスイッチ素子1は、
図4に示すような回路構成を有する。すなわち、スイッチ素子1は、第1の電極11と第2の電極12とが、正常時には開放され(
図4(A))、高融点金属体15の発熱により第1の可溶導体13が溶融すると、当該溶融導体13aを介して短絡するスイッチ2を構成する(
図4(B))。なお、第1、第2の電極11,12の各外部接続端子11a,12aは、スイッチ2の両端子を構成する。そして、スイッチ2の短絡後に、高融点金属体15が自己発熱によって溶断し、給電経路が遮断されることにより、発熱が停止する(
図4(C))。
【0041】
そして、スイッチ素子1は、例えば警報回路30に組み込まれて用いられる。
図5は警報回路30の回路構成の一例を示す図である。警報回路30は、スイッチ素子1のスイッチ2により警報器31を作動させる作動回路33と、作動回路と電気的に独立して形成され、第1の可溶導体13よりも融点の高い高融点金属体15からなるヒューズが電源に直列に繋がる機能回路を有する制御回路34とを備える。
【0042】
図5に示すように、スイッチ素子1は、スイッチ2の両外部接続端子11a,12aが、ブザーやランプあるいは警報システム等からなる警報器31に接続される。また、スイッチ素子1は、高融点金属体15の両外部接続端子15aが、機能回路32に接続される。
【0043】
このような構成を有するスイッチ素子1は、警報器31を動作させるスイッチ2を構成する第1、第2の電極11,12に対して、隣接して形成されている高融点金属体15の発熱により第1の可溶導体13を溶融させ、この溶融導体を介して短絡させる。すなわち、スイッチ素子1は、高融点金属体15と第1、第2の電極11,12とは物理的、電気的に独立して構成され、高融点金属体15の熱によって第1、第2の可溶導体13,14が溶融することにより短絡する、いわば熱的に接続することにより連動する構成を取る。
【0044】
したがって、スイッチ素子1は、スプリングや警報接点等の機械要素の連結、結合によって構成されておらず、また機械要素の物理的な連動によらず作動させることができるため、絶縁基板10の面内において、コンパクトに設計することができ、狭小化された実装領域にも実装可能となる。また、スイッチ素子1は、部品点数、製造工数の削減を図り、低コスト化を図ることができる。さらに、スイッチ素子1は、絶縁基板10をリフロー実装等により表面実装することができ、狭小化された実装領域においても、簡易に実装することができる。
【0045】
実使用時において、スイッチ素子1は、機能回路32の不具合によって高融点金属体15に過電流が流れる。すると、
図2及び
図4(B)に示すように、高融点金属体15が発熱し、これにより、第1の可溶導体13が溶融する。第1の可溶導体13の溶融導体は、開口部16aに比して広面積で、かつ高融点金属体15によって加熱された第1、第2の電極11,12の各先端部11b,12bの上に凝集し、結合する。これにより、スイッチ素子1は、第1、第2の電極11,12間が短絡し、警報器31を作動させることができる。すなわち、スイッチ素子1は、スイッチ2がオンとなる(
図3、
図4(C))。警報回路30は、スイッチ素子1のスイッチ2がオンとなることにより、作動回路33によって警報器31が作動される。
【0046】
このとき、スイッチ素子1は、高融点金属体15の第1の可溶導体13の近傍に、細く形成された発熱部15bを設けることで、高抵抗の発熱部15bが高温となり、効率よく第1の可溶導体13を溶融させ、速やかに第1、第2の電極11,12を短絡させることができる。また、高融点金属体15は、高抵抗の発熱部15bが局部的に高温となるのみで、側縁に面する両外部接続端子15aは放熱効果も相まって比較的低温に保たれる。そのため、スイッチ素子1は、外部接続端子15aの実装用ハンダが溶融することもない。
【0047】
図3に示すように、第1、第2の電極11,12間の短絡後も高融点金属体15は発熱を続け、自身のジュール熱によって遮断する。これにより、スイッチ素子1は、機能回路32による通電が遮断され、発熱が停止する(
図4(C))。このとき、スイッチ素子1は、高融点金属体15が第1の絶縁層16によって被覆されているため、アーク放電を抑制し、溶融導体の爆発的な飛散を抑制することができる。また、高融点金属体15に細く形成された発熱部15bを設けることにより、溶断箇所が狭小化され、飛散する溶融導体の量を低減させることができる。
【0048】
さらに、第2の絶縁層24を絶縁基板10と発熱部15bとの間に設けることにより、高融点金属体15の溶融導体が絶縁基板10の表面10aに食い込み、溶融残渣が連続することによるリークを防止することができる。また、第2の絶縁層24を発熱部15bの中心領域に部分的に形成することにより、高融点金属体15が第2の絶縁層24上で遮断され、確実に遮断することができる。
【0049】
このように、スイッチ素子1は、第1の可溶導体13よりも融点の高い高融点金属体15が発熱することにより、確実に第1の可溶導体13が高融点金属体15よりも先に溶融し、第1、第2の電極11,12を短絡させることができる。すなわち、スイッチ素子1は、高融点金属体15の遮断が第1、第2の電極11,12を短絡させる要件とはなっていない。したがって、スイッチ素子1は、機能回路32の異常に伴い高融点金属体15の定格を超える電流が流れたことを伝える警報スイッチとして使用することができる。
【0050】
また、高融点金属体15は、自身のジュール熱により遮断することにより、自動的に発熱を停止する。したがって、スイッチ素子1は、機能回路32による給電を規制する機構を設ける必要がなく、簡易な構成で高融点金属体15の発熱を停止することができ、素子全体の小型化を図ることができる。
【0051】
[接続部]
また、スイッチ素子1は、
図6(A)〜(C)に示すように、高融点金属体15と、第1の可溶導体13が搭載されている第1の電極11とを接続する接続部19を形成してもよい。接続部19は、例えば高融点金属体15や第1の電極11と同じ導電材料を用いて、高融点金属体15や第1の電極11と同じ工程においてパターン形成されることにより設けることができる。
【0052】
高融点金属体15と第1の電極11とを接続することにより、スイッチ素子1は、高融点金属体15が通電により発熱すると、接続部19及び第1の電極11を介して熱が第1の可溶導体13に伝わり、より速やかに溶融させることができる。したがって、接続部19は、熱伝導性に優れるAgやCu等の金属材料により形成することが好ましい。
【0053】
[カバー部材/カバー部電極]
スイッチ素子1は、絶縁基板10上に内部を保護するカバー部材20が取り付けられている。スイッチ素子1は、絶縁基板10がカバー部材20に覆われることによりその内部が保護されている。カバー部材20は、スイッチ素子1の側面を構成する側壁21と、スイッチ素子1の上面を構成する天面部22とを有し、側壁21が絶縁基板10上に接続されることにより、スイッチ素子1の内部を閉塞する蓋体となる。このカバー部材20は、上記絶縁基板10と同様に、たとえば、熱可塑性プラスチック,セラミックス,ガラスエポキシ基板等の絶縁性を有する部材を用いて形成されている。
【0054】
また、
図7に示すように、カバー部材20は、天面部22の内面側に、カバー部電極23が形成されても良い。カバー部電極23は、第1、第2の電極11,12の各先端部11b,12b間にわたって重畳する位置に形成されている。このカバー部電極23は、高融点金属体15が発熱し、第1の可溶導体13が溶融されると、第1、第2の電極11,12上に凝集した溶融導体13aが接触して濡れ広がることにより、溶融導体13aを保持する許容量を増加させ、より確実に第1、第2の電極11,12を短絡させることができる。
【0055】
[変形例1]
なお、本発明が適用されたスイッチ素子は、絶縁基板の表面上において、高融点金属体と第1、第2の電極とを重畳させてもよい。なお、以下の説明において、上述したスイッチ素子1と同様の構成については、同じ符号を付してその詳細を省略する。このスイッチ素子40は、
図8(A)(B)に示すように、絶縁基板10の表面10aの相対向する側面10d,10e側の縁部の間にわたって高融点金属体15が形成されている。また、スイッチ素子40は、第1、第2の電極11,12が絶縁基板10の表面10aの相対向する側面10b,10c側の縁部に形成されている。
【0056】
高融点金属体15は、絶縁基板10の略中央部において第1の絶縁層41によって被覆されている。また、高融点金属体15は、絶縁基板10の側面10d,10eに形成されたキャスタレーションを介して裏面10fに形成された外部接続端子15aと接続されている。また、高融点金属体15は、第1、第2の電極11,12が重畳する中間部が両端部よりも細く形成されることにより高温に発熱する発熱部15bが形成されている。
【0057】
第1、第2の電極11,12は、絶縁基板10の側面10b,10cに形成されたキャスタレーションを介して裏面10fに形成された外部接続端子11a,12aと接続されている。また、第1、第2の電極11,12は、側面10b,10c側の縁部から第1の絶縁層41の上面にわたって形成され、第1の絶縁層41の上面において互いの先端部11b,12bが近接されるとともに離間することにより、開放されている。また、第1、第2の電極11,12は、先端部11b,12bを除き、第2の絶縁層42によって被覆されている。
【0058】
第2の絶縁層42には、一部に開口部42aが形成されている。そして、第1の電極11は、先端部11b及び開口部42aに接続用ハンダが設けられ、この接続用ハンダによって先端部11bと開口部42aとの間にわたって、第2の絶縁層42上に第1の可溶導体13を支持している。
【0059】
ここで、第1の可溶導体13の面積は、第1の電極11と重畳する接続面積以上の大きさを有する。そして、好ましくは第1の電極11との接続面積の2倍以上の面積を有し、さらに好ましくは、第1の可溶導体13は、第2の電極12側へ張り出し、第2の電極2上に形成された第2の絶縁層42に支持されている。
【0060】
これにより、スイッチ素子40は、第1、第2の電極11,12の先端部11b,12b、及び第1の可溶導体13の少なくとも一部は、高融点金属体15の発熱部15bと重畳されている。なお、第1の可溶導体13上には、酸化防止、濡れ性の向上等のため、フラックス18が塗布されている。
【0061】
第1、第2の絶縁層41,42は、上述したスイッチ素子1の絶縁層16と同様に、ガラス等の絶縁材料を好適に用いることができる。
【0062】
このようなスイッチ素子40によれば、高融点金属体15の発熱部15bに重畳して第1、第2の電極11,12及び第1の可溶導体13が配置されているため、発熱部15bの発熱により速やかに第1の可溶導体13を溶融させ、第1、第2の電極11,12を短絡させることができる。このとき、スイッチ素子40は、ガラス等からなる第1、第2の絶縁層41,42を介して、発熱部15bと第1、第2の電極11,12及び第1の可溶導体13とが連続的に積層されているため、発熱部15bの熱を効率よく伝導させることができる。
【0063】
また、スイッチ素子40は、第1の可溶導体13が、第1、第2の電極11,12の各先端部11b,12b間にわたって凝集するのに十分な溶融導体13aの体積を有し、確実に第1、第2の電極11,12間を短絡させることができる。
【0064】
[第3の絶縁層]
また、スイッチ素子40は、高融点金属体15と絶縁基板10との間に第3の絶縁層43を形成してもよい。第3の絶縁層43は、第1、第2の絶縁層41,42と同様に、ガラス等からなる。このとき、第3の絶縁層43は、発熱部15bの中心を含む領域に部分的に形成されてもよい。高融点金属体15は、発熱部15bの中心付近が第3の絶縁層43上に積層される。これにより、高融点金属体15は、発熱部15bが第3の絶縁層43を跨いで形成され、溶断時には第3の絶縁層43上で遮断される。したがって、高融点金属体15は、溶断後における絶縁抵抗を高くすることができ、リークを確実に防止することができる。
【0065】
[変形例2]
また、本発明が適用されたスイッチ素子は、絶縁基板の表面に第1、第2の電極を形成し、絶縁基板の裏面に高融点金属体を形成することにより、高融点金属体と第1、第2の電極とを重畳させてもよい。なお、以下の説明において、上述したスイッチ素子1と同様の構成については、同じ符号を付してその詳細を省略する。このスイッチ素子50は、
図9に示すように、絶縁基板10の裏面10fの相対向する側面10d,10e側の縁部の間にわたって高融点金属体15が形成されている。また、スイッチ素子50は、第1、第2の電極11,12が絶縁基板10の表面10aの相対向する側面10b,10c側の縁部に形成されている。
【0066】
高融点金属体15は、絶縁基板10の略中央部において第1の絶縁層51によって被覆されている。また、高融点金属体15は、絶縁基板10の側面10d,10e側の縁部に形成された図示しない外部接続端子と接続されている。また、高融点金属体15は、第1、第2の電極11,12が重畳する中間部が両端部よりも細く形成されることにより高温に発熱する発熱部15bが形成されている。
【0067】
第1、第2の電極11,12は、絶縁基板10の側面10b,10cに形成されたキャスタレーションを介して裏面10fに形成された図示しない外部接続端子と接続されている。また、第1、第2の電極11,12は、側縁10b,10cから絶縁基板10の表面10aの略中央部において互いの先端部11b,12bが近接されるとともに離間することにより、開放されている。また、第1、第2の電極11,12は、先端部11b,12bを除き、第2の絶縁層52によって被覆されている。
【0068】
第2の絶縁層52には、一部に開口部52aが形成されている。そして、第1の電極11は、先端部11b及び開口部52aに接続用ハンダが設けられ、この接続用ハンダによって先端部11bと開口部52aとの間にわたって、第2の絶縁層52上に第1の可溶導体13を支持している。
【0069】
ここで、第1の可溶導体13の面積は、第1の電極11と重畳する接続面積以上の大きさを有する。そして、好ましくは第1の電極11との接続面積の2倍以上の面積を有し、さらに好ましくは、第1の可溶導体13は、第2の電極12側へ張り出し、第2の電極12上に形成された第2の絶縁層52に支持されている。
【0070】
これにより、スイッチ素子50は、第1、第2の電極11,12の先端部11b,12b、及び第1の可溶導体13の少なくとも一部は、高融点金属体15の発熱部15bと重畳されている。なお、第1の可溶導体13上には、酸化防止、濡れ性の向上等のため、フラックス18が塗布されている。
【0071】
第1、第2の絶縁層51,52は、上述したスイッチ素子1の絶縁層16と同様に、ガラス等の絶縁材料を好適に用いることができる。
【0072】
このようなスイッチ素子50によれば、高融点金属体15の発熱部15bに重畳して第1、第2の電極11,12及び第1の可溶導体13が配置されているため、発熱部15bの発熱により速やかに第1の可溶導体13を溶融させ、第1、第2の電極11,12を短絡させることができる。このとき、スイッチ素子50は、絶縁基板10として、セラミック基板等の熱伝導性に優れたものを用いることにより、高融点金属体15を第1の可溶導体13の設けられた面と同一面に形成した場合と同等に加熱することができるため好適である。
【0073】
また、スイッチ素子50は、第1の可溶導体13が、第1、第2の電極11,12の各先端部11b,12b間にわたって凝集するのに十分な溶融導体13aの体積を有し、確実に第1、第2の電極11,12間を短絡させることができる。
【0074】
[第3の絶縁層]
また、スイッチ素子50は、高融点金属体15と絶縁基板10との間に第3の絶縁層53を形成してもよい。第3の絶縁層53は、第1、第2の絶縁層51,52と同様に、ガラス等からなる。このとき、第3の絶縁層53は、発熱部15bの中心を含む領域に部分的に形成されてもよい。高融点金属体15は、発熱部15bの中心付近が第3の絶縁層53上に積層される。これにより、高融点金属体15は、発熱部15bが第3の絶縁層53を跨いで形成され、溶断時には第3の絶縁層53上で遮断される。したがって、高融点金属体15は、溶断後における絶縁抵抗を高くすることができ、リークを確実に防止することができる。
【0075】
[第2の可溶導体]
なお、スイッチ素子1は、
図10に示すように、第2の電極12上に第2の可溶導体14を搭載してもよい。第2の可溶導体14は、第1の可溶導体13と同じ材料によって形成することができる。また、第2の可溶導体14は、第1の可溶導体13と同様に、第2の電極12の先端部12b及び第1の絶縁層16上に形成された開口部16aに設けられた接続用ハンダによって接続されている。また、第2の可溶導体14も、第1の可溶導体13と同様に、第2の電極12との接続面積以上の面積を有し、第1の電極11側へ張り出して支持されることが好ましい。
【0076】
スイッチ素子1は、第1、第2の可溶導体13,14を設けることにより、より多くの溶融導体が第1、第2の電極11,12間にわたって凝集し、より速く、より確実に、第1、第2の電極11,12間を短絡させることができる。
【0077】
スイッチ素子40,50も同様に、第2の電極上に第2の可溶導体14を設けてもよい。
【0078】
[変形例3]
また、本発明が適用されたスイッチ素子は、第1の可溶導体を第1、第2の電極の近傍に、第1、第2の電極と各々絶縁状態で搭載させてもよい。なお、以下の説明において、上述したスイッチ素子1,50と同様の構成については、同じ符号を付してその詳細を省略する。このスイッチ素子60は、第1の可溶導体13が第1の絶縁層16を介して第1の電極11上から第2の電極12側へ搭載され、好ましくは
図11(A)(B)に示すように第1、第2の電極11,12間にわたって搭載されることにより、第1、第2の電極11,12の近傍に、第1、第2の電極11,12と各々絶縁状態で搭載されている。
【0079】
これにより、第1の可溶導体13は、第1の電極11と重畳する接続面積以上の面積を有し、第1、第2の電極11,12の各先端部11b,12b間にわたって凝集するのに十分な溶融導体13aの体積を有し、確実に第1、第2の電極11,12間を短絡させることができる。
【0080】
また、第1の可溶導体13は、
図11(B)に示すように、絶縁性を有するカバー部材20によって位置決めを図るようにすることが好ましい。カバー部材20は、第1の絶縁層16上において第1の可溶導体13が搭載される位置に応じて、位置決め段部25が形成され、絶縁基板10上に搭載されることにより、位置決め段部25により第1の可溶導体13の搭載位置を規制する。これにより、第1の可溶導体13は、リフロー温度等の高温環境に曝された場合にも、第1、第2の電極11,12間にわたる所定の位置に保持される。
【0081】
スイッチ素子60は、高融点金属体15の発熱によって第1の可溶導体13が溶融すると、
図11(C)に示すように、表面張力により表面積を最小にする力が働き球状に膨れる。すなわち、第1の可溶導体13は、第1,第2の電極11,12の相対向する先端部11b,12b間に向かって膨れる様に凝集することから、自動的に第1、第2の電極11,12間を短絡させることができる。
【0082】
なお、第1の可溶導体13は、酸化防止、濡れ性の向上等のため、フラックス18が塗布されていることが好ましい。
【0083】
[変形例4]
また、本発明が適用されたスイッチ素子は、第1の可溶導体を、絶縁層を介して、第1の電極上に搭載するとともに、接着剤により固定してもよい。なお、以下の説明において、上述したスイッチ素子1,50,60と同様の構成については、同じ符号を付してその詳細を省略する。このスイッチ素子70は、第1の可溶導体13が第1の絶縁層16を介して第1の電極11上から第2の電極12側へ搭載され、好ましくは
図12(A)(B)に示すように第1、第2の電極11,12間にわたる所定の位置に搭載されるとともに、接着剤により固定されている。
【0084】
第1の絶縁層16上には接着剤71が設けられ、この接着剤71によって第1の絶縁層16上に第1の可溶導体13を支持している。これにより、第1の可溶導体13は、第1の絶縁層16上における搭載位置が固定され、リフロー温度等の高温環境に曝された場合にも、第1、第2の電極11,12間にわたる所定の位置に保持される。
【0085】
スイッチ素子70においても、高融点金属体15の発熱によって第1の可溶導体13が溶融すると、表面張力により表面積を最小にする力が働き球状に膨れる。すなわち、第1の可溶導体13は、第1,第2の電極11,12の相対向する先端部11b,12b間に向かって膨れる様に凝集することから、自動的に第1、第2の電極11,12間を短絡させることができる。
【0086】
なお、接着剤71としては、公知の接着剤を用いることができるが、高融点金属体15の発熱に伴う第1の可溶導体13の溶融時において、熱を効率良く伝達させる為に熱伝導率の高い接着剤が好ましい。
【0087】
また、第1の可溶導体13は、酸化防止、濡れ性の向上等のため、フラックス18が塗布されていることが好ましい。
【0088】
[変形例5]
また、本発明が適用されたスイッチ素子は、第1の可溶導体を絶縁層を介して第1の電極上に搭載するとともに接着剤により固定し、第2の可溶導体を絶縁層を介して第2の電極上に搭載するとともに接着剤により固定してもよい。なお、以下の説明において、上述したスイッチ素子1,50,60,70と同様の構成については、同じ符号を付してその詳細を省略する。
【0089】
このスイッチ素子80は、
図13(A)(B)に示すように第1の可溶導体13が第1の絶縁層16を介して第1の電極11上から第2の電極12側へ張り出して搭載されるとともに、第1の絶縁層16の表面に設けられた接着剤71により固定されている。これにより、第1の可溶導体13は、第1の絶縁層16上における搭載位置が固定され、リフロー温度等の高温環境に曝された場合にも、第1の電極11上の所定の位置に保持される。
【0090】
同様にスイッチ素子80は、第2の可溶導体14が第1の絶縁層16を介して第2の電極12上から第1の電極11側へ張り出して搭載されるとともに、第1の絶縁層16の表面に設けられた接着剤71により固定されている。これにより、第2の可溶導体14は、第1の絶縁層16上における搭載位置が固定され、リフロー温度等の高温環境に曝された場合にも、第2の電極12上の所定の位置に保持される。
【0091】
スイッチ素子80においても、高融点金属体15の発熱によって第1、第2の可溶導体13,14が溶融すると、表面張力により表面積を最小にする力が働き球状に膨れる。その際、接着剤71は、第1の絶縁層16より露出する第1の電極11と第2の電極12の先端部11b,12b近傍の第1の絶縁層16の表面に設けられることが好ましい。すなわち、第1、第2の可溶導体13,14は、第1,第2の電極11,12の相対向する先端部11b,12b間に向かって膨れる様に凝集することから、自動的に第1、第2の電極11,12間を短絡させることができる。
【0092】
また、第1、第2の可溶導体13,14は、酸化防止、濡れ性の向上等のため、フラックス18が塗布されていることが好ましい。
【0093】
[変形例6]
また、本発明が適用されたスイッチ素子は、上述したように絶縁基板10上に第1、第2の電極11,12及び高融点金属体15を形成する他、以下に説明するように、絶縁基板を備えずに構成してもよい。なお、以下の説明において、上述したスイッチ素子1,40,50,60,70,80と同一の部材については同一の符号を付してその詳細を省略する。
【0094】
図14に示すスイッチ素子90は、金属板等の導電体からなる第1、第2の電極91,92と、第1の電極91上に第1の絶縁体93を介して搭載された第1の可溶導体13と、第2の絶縁体94を介して第1の電極91と隣接され、第1の可溶導体13よりも融点の高い金属板等の導体からなる高融点金属体95とを有する。なお、
図14(A)は第1の可溶導体13の溶断前におけるスイッチ素子90の平面図であり、
図14(B)はA‐A’断面図である。
【0095】
第1、第2の電極91,92は、例えばCuやAg等の一般的な電極材料を用いて形成された板状体からなり、互いに近接配置されるとともに離間されることにより開放されている。これら第1、第2の電極91,92は、高融点金属体95が通電に伴って発熱することにより、第1の可溶導体13の溶融導体13aが第1、第2の電極91,92間にわたって凝集、結合し(
図17参照)、この溶融導体13aを介して短絡されるスイッチ2を構成する。
【0096】
また、第1、第2の電極91,92は、外部回路との接続用の開口部91a、92aが形成されている。スイッチ素子90は、例えば第1、第2の電極91,92が開口部91a、92aを介して警報器31と接続され、スイッチ2がオンとされることにより、当該警報器31への給電経路となる(
図5参照)。
【0097】
第1の電極91は、第2の電極92と対向する先端部91bを除く領域に第1の絶縁体93が設けられている。第1の絶縁体93は、例えば、ガラスやソルダーレジスト等の絶縁材料を第1の電極91上に塗布することにより、あるいは耐熱性を有するエンジニアリングプラスチック等を第1の電極91上に接着することにより形成することができる。
【0098】
同様に、第2の電極92上にも、第1の電極91と対向する先端部92bを除く領域に第1の絶縁体93が設けられている。これにより、スイッチ素子90は、第1、第2の電極91,92の先端部91b,92bが第1の絶縁体93より露出され、第1の可溶導体13の溶融導体13aが凝集、結合可能とされている。
【0099】
第1の電極91の先端部91bには、接続用ハンダ96が設けられ、この接続用ハンダ96によって第1の絶縁体93上に第1の可溶導体13を支持している。
【0100】
ここで、第1の可溶導体13の面積は、第1の電極91と重畳する接続面積以上の大きさを有する。すなわち、第1の可溶導体13は、第1の電極91上に接続されるとともに、第1の電極91と重畳する接続面積以上の面積を有し、好ましくは第2の電極92側へ張り出して支持されている。
【0101】
これにより、第1の可溶導体13は、第1、第2の電極91,92の各先端部91b,92b間にわたって凝集するのに十分な溶融導体13aの体積を有し、確実に第1、第2の電極91,92間を短絡させることができる。
【0102】
なお、第1の可溶導体13の面積は、第1の電極91との接続面積の2倍以上有することが、確実に第1、第2の電極91,92間を短絡させるのに十分な溶融導体13aの量を確保するうえで望ましい。
【0103】
また、第1の可溶導体13は、
図14(A)(B)に示すように、第2の電極92上に積層された第1の絶縁体93に支持されることにより、第2の電極92上に重畳されてもよい。これにより、第1の可溶導体13は、高融点金属体95の発熱によって溶融すると、第1、第2の電極91,92の各先端部91b,92b上に溶融導体13aが凝集するとともに、凝集した溶融導体13aが結合し、より確実に第1、第2の電極91,92間を短絡させることができる。
【0104】
なお、第1、第2の電極91,92は、上述した第1、第2の電極11,12と同様に、表面上に、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。
【0105】
[高融点金属体]
高融点金属体95は、通電すると発熱する導電性を有する部材であって、たとえばW、Mo、Ru、Cu、Ag、あるいはこれらを主成分とする合金等を用いて形成された板状体からなる。高融点金属体95は、両端部に外部回路との接続用の開口部95aが形成されている。スイッチ素子90は、例えば高融点金属体95が開口部95aを介して警報器31の作動のトリガーとなる機能回路32と接続され、機能回路32の異常に伴う過電流によって発熱する(
図5参照)。
【0106】
図15に示すように、高融点金属体95は、矩形板状に形成されるとともに中央部が細くなり、電流が集中することにより局部的に高温に発熱する発熱部95bが形成されている。高融点金属体95は、第1の可溶導体13と近接する位置に発熱部95bを設けることにより、効率よく第1の可溶導体13を溶融させ、速やかに第1、第2の電極91,92を短絡させることができる。
【0107】
また、高融点金属体95は、
図16に示すように、第2の絶縁体94を介して第1の電極91と隣接されている。このとき、高融点金属体95は、発熱部95bが第2の絶縁体94を介して第1、第2の電極91,92と重畳される。第2の絶縁体94は、例えば耐熱性を有するエンジニアリングプラスチックやガラス板、セラミック板等を用いて形成することができる。
【0108】
これによりスイッチ素子90は、高融点金属体95が通電に伴って発熱すると、第2の絶縁体94及び第1の電極91を介して第1の可溶導体13を加熱し、第1の可溶導体13を溶融させることができる。また、スイッチ素子90は、第1の可溶導体13を第2の電極92上に形成された第1の絶縁体93上に搭載することにより、高融点金属体95の熱が第2の電極92及び第2の電極92上に形成された第1の絶縁体93を介しても第1の可溶導体13に伝達し、速やかに溶融させることができる。
【0109】
図17(A)に示すように、スイッチ素子90は、機能回路32が正常に作動しているときは、高融点金属体95に定格内の適正な電流が流れている。そして、スイッチ素子90は、機能回路32の異常によって高融点金属体95に過電流が流れると発熱し、
図17(B)に示すように、第1の可溶導体13を溶融させ、溶融導体13aを介して第1、第2の電極91,92を短絡させる。その後も、高融点金属体95は発熱を続けることにより、
図17(C)に示すように、自身のジュール熱によって発熱部95bが溶断する。これにより、高融点金属体95は、機能回路32の異常による過電流が遮断され、発熱が停止する。すなわち、高融点金属体95は、第1の可溶導体13を溶融させるとともに自己発熱によって自身の給電経路を遮断するヒューズとして機能する。
【0110】
また、高融点金属体95は、局部的に高温となる発熱部95bを設けることにより、当該発熱部95bにおいて溶断する。このとき、高融点金属体95は、発熱部95bが相対的に細く形成されているため、溶断時に発生するアーク放電も小規模なものに収まり、第2の絶縁体94の被覆効果とともに、溶融導体の飛散を防止することができる。
【0111】
[第2の可溶導体]
なお、スイッチ素子90は、
図18(A)(B)に示すように、第2の電極92上に第2の可溶導体14を搭載してもよい。第2の可溶導体14は、第1の可溶導体13と同じ材料によって形成することができる。
【0112】
このとき、スイッチ素子90は、第1、第2の電極91,92上に設けた第1の絶縁体93に開口部93aを形成し、第1、第2の電極91,92の各先端部91b,92b及び開口部93aに接続用ハンダ96を設け、各先端部91b,92b及び開口部93aの間にわたって第1、第2の可溶導体13,14を支持する。
【0113】
また、第2の可溶導体14も、第1の可溶導体13と同様に、第2の電極92との接続面積以上の面積を有することが好ましい。
【0114】
スイッチ素子90は、第1、第2の可溶導体13,14を設けることにより、より多くの溶融導体が第1、第2の電極91,92間にわたって凝集し、より速く、より確実に、第1、第2の電極91,92間を短絡させることができる。
【0115】
図19(A)に示すように、スイッチ素子90は、機能回路32が正常に作動しているときは、高融点金属体95に定格内の適正な電流が流れている。そして、スイッチ素子90は、機能回路32の異常によって高融点金属体95に過電流が流れると発熱し、
図19(B)に示すように、第1、第2の可溶導体13,14を溶融させ、溶融導体13a,14aを介して第1、第2の電極91,92を短絡させる。その後も、高融点金属体95は発熱を続けることにより、
図19(C)に示すように、自身のジュール熱によって発熱部95bが溶断する。これにより、高融点金属体95は、機能回路32の異常による過電流が遮断され、発熱が停止する。すなわち、高融点金属体95は、第1、第2の可溶導体13,14を溶融させるとともに自己発熱によって自身の給電経路を遮断するヒューズとして機能する。
【0116】
また、高融点金属体95は、局部的に高温となる発熱部95bを設けることにより、当該発熱部95bにおいて溶断する。このとき、高融点金属体95は、発熱部95bが相対的に細く形成されているため、溶断時に発生するアーク放電も小規模なものに収まり、第2の絶縁体64の被覆効果とともに、溶融導体の飛散を防止することができる。
【0117】
[変形例7]
また、本発明が適用されたスイッチ素子は、第1の可溶導体を第1、第2の電極の近傍に、第1、第2の電極と各々絶縁状態で搭載させてもよい。なお、以下の説明において、上述したスイッチ素子90と同様の構成については、同じ符号を付してその詳細を省略する。このスイッチ素子100は、
図20に示すように、第1の可溶導体13が第1の絶縁体93を介して第1、第2の電極91,92間にわたって搭載されることにより、第1、第2の電極91,92の近傍に、第1、第2の電極91,92と各々絶縁状態で搭載されている。
【0118】
これにより、第1の可溶導体13は、第1の電極91と重畳する接続面積以上の面積を有し、第1、第2の電極91,92の各先端部91b,92b間にわたって凝集するのに十分な溶融導体13aの体積を有し、確実に第1、第2の電極91,92間を短絡させることができる。
【0119】
また、第1の可溶導体13は、
図20(B)に示すように、絶縁性を有するカバー部材101によって位置決めを図るようにすることが好ましい。カバー部材101は、スイッチ素子100の第1、第2の電極91,92及び第1の絶縁体93上に接続される。このカバー部材101は、上記カバー部材20と同様に、たとえば、熱可塑性プラスチック,セラミックス,ガラスエポキシ基板等の絶縁性を有する部材を用いて形成されている。
【0120】
また、カバー部材101は、第1の絶縁体93上において第1の可溶導体13が搭載される位置に応じて、位置決め段部102が形成され、第1、第2の電極91,92上に搭載されることにより、位置決め段部102により第1の可溶導体13の搭載位置を規制する。これにより、第1の可溶導体13は、リフロー温度等の高温環境に曝された場合にも、第1、第2の電極11,12間にわたる所定の位置に保持される。
【0121】
スイッチ素子100は、高融点金属体95の発熱によって第1の可溶導体13が溶融すると、
図20(C)に示すように、表面張力により表面積を最小にする力が働き球状に膨れる。すなわち、第1の可溶導体13の溶融導体13aは、第1,第2の電極91,92の相対向する先端部91b,92b間に向かって膨れる様に凝集することから、自動的に第1、第2の電極91,92間を短絡させることができる。
【0122】
なお、第1の可溶導体13は、酸化防止、濡れ性の向上等のため、フラックスを塗布してもよい。また、スイッチ素子100は、一対のカバー部材101で第1、第2の電極91,92を上下から挟みこむようにしてもよい。これにより、スイッチ素子100は、溶融導体の流出や周囲の汚損を防止するとともに、取扱い性を向上させることができる。
【0123】
[変形例8]
また、本発明が適用されたスイッチ素子は、第1の可溶導体を、絶縁層を介して、第1の電極上に搭載するとともに、接着剤により固定してもよい。なお、以下の説明において、上述したスイッチ素子90,100と同様の構成については、同じ符号を付してその詳細を省略する。このスイッチ素子110は、
図21(A)(B)に示すように第1の可溶導体13が第1の絶縁体93を介して第1の電極91,92間にわたる所定の位置に搭載されるとともに、接着剤により固定されている。
【0124】
第1の絶縁体93は、表面に接着剤71が設けられ、この接着剤71によって第1の絶縁体93上に第1の可溶導体13を支持している。これにより、第1の可溶導体13は、第1の絶縁体93上における搭載位置が固定され、リフロー温度等の高温環境に曝された場合にも、第1、第2の電極91,92間にわたる所定の位置に保持される。
【0125】
スイッチ素子110においても、高融点金属体95の発熱によって第1の可溶導体13が溶融すると、表面張力により表面積を最小にする力が働き球状に膨れる。すなわち、第1の可溶導体13の溶融導体13aは、第1,第2の電極91,92の相対向する先端部91b,92b間に向かって膨れる様に凝集することから、自動的に第1、第2の電極91,92間を短絡させることができる。
【0126】
また、第1の可溶導体13は、酸化防止、濡れ性の向上等のため、フラックス18を塗布してもよい。
【0127】
[変形例9]
また、本発明が適用されたスイッチ素子は、第1の可溶導体を絶縁体を介して第1の電極上に搭載するとともに接着剤により固定し、第2の可溶導体を絶縁体を介して第2の電極上に搭載するとともに接着剤により固定してもよい。なお、以下の説明において、上述したスイッチ素子90,100,110と同様の構成については、同じ符号を付してその詳細を省略する。
【0128】
このスイッチ素子120は、
図22(A)(B)に示すように第1の可溶導体13が第1の絶縁体93を介して第1の電極91上から第2の電極92側へ張り出して搭載されるとともに、第1の絶縁体93の表面に設けられた接着剤71により固定されている。これにより、第1の可溶導体13は、第1の絶縁体93上における搭載位置が固定され、リフロー温度等の高温環境に曝された場合にも、第1の電極91上の所定の位置に保持される。
【0129】
同様にスイッチ素子120は、第2の可溶導体14が第1の絶縁体93を介して第2の電極92上から第1の電極91側へ張り出して搭載されるとともに、第1の絶縁体93の表面に設けられた接着剤71により固定されている。これにより、第2の可溶導体14は、第1の絶縁体93上における搭載位置が固定され、リフロー温度等の高温環境に曝された場合にも、第2の電極92上の所定の位置に保持される。
【0130】
スイッチ素子120においても、高融点金属体95の発熱によって第1、第2の可溶導体13,14が溶融すると、表面張力により表面積を最小にする力が働き球状に膨れる。その際、接着剤71は、第1の絶縁層16より露出する第1の電極11と第2の電極12の先端部11b,12b近傍の第1の絶縁層16の表面に設けられることが好ましい。すなわち、第1、第2の可溶導体13,14の溶融導体13a,14aは、第1,第2の電極91,92の相対向する先端部91b,92b間に向かって膨れる様に凝集することから、自動的に第1、第2の電極91,92間を短絡させることができる。
【0131】
また、第1、第2の可溶導体13,14は、酸化防止、濡れ性の向上等のため、フラックスを塗布してもよい。
【0132】
[可溶導体の変形例]
第1、第2の可溶導体13,14は、ハンダにより形成してもよく、あるいは低融点金属と高融点金属とを含有してもよい。高融点金属層130はAg、Cu又はこれらを主成分とする合金等からなり、低融点金属層131はSn又はSnを主成分とするPbフリーハンダ、Sn/In系ハンダ、Sn/Bi系ハンダ等からなる。このとき、第1、第2の可溶導体13,14は、
図23(A)に示すように、外層として高融点金属層130が設けられ、内層として低融点金属層131が設けられた可溶導体を用いてもよい。この場合、第1、第2の可溶導体13,14は、低融点金属層131の全面が高融点金属層130によって被覆された構造としてもよく、相対向する一対の側面を除き被覆された構造であってもよい。高融点金属層130や低融点金属層131による被覆構造は、メッキ等の公知の成膜技術を用いて形成することができる。
【0133】
また、
図23(B)に示すように、第1、第2の可溶導体13,14は、内層として高融点金属層130が設けられ、外層として低融点金属層131が設けられた可溶導体を用いてもよい。この場合も、第1、第2の可溶導体13,14は、高融点金属層130の全面が低融点金属層131によって被覆された構造としてもよく、相対向する一対の側面を除き被覆された構造であってもよい。
【0134】
また、第1、第2の可溶導体13,14は、
図24に示すように、高融点金属層130と低融点金属層131とが積層された積層構造としてもよい。
【0135】
この場合、第1、第2の可溶導体13,14は、
図24(A)に示すように、第1、第2の電極11,12,91,92に支持される下層と、下層の上に積層される上層からなる2層構造として形成され、下層となる高融点金属層130の上面に上層となる低融点金属層131を積層してもよく、反対に下層となる低融点金属層131の上面に上層となる高融点金属層130を積層してもよい。あるいは、第1、第2の可溶導体13,14は、
図24(B)に示すように、内層と内層の上下面に積層される外層とからなる3層構造として形成してもよく、内層となる低融点金属層131の上下面に外層となる高融点金属層130を積層してもよく、反対に内層となる高融点金属層130の上下面に外層となる低融点金属層131を積層してもよい。
【0136】
また、第1、第2の可溶導体13,14は、
図25に示すように、高融点金属層130と低融点金属層131とが交互に積層された4層以上の多層構造としてもよい。この場合、第1、第2の可溶導体13,14は、最外層を構成する金属層によって、全面又は相対向する一対の側面を除き被覆された構造としてもよい。
【0137】
また、第1、第2の可溶導体13,14は、内層を構成する低融点金属層131の表面に高融点金属層130をストライプ状に部分的に積層させてもよい。
図26は、第1、第2の可溶導体13,14の平面図である。
【0138】
図26(A)に示す第1、第2の可溶導体13,14は、低融点金属層131の表面に、幅方向に所定間隔で、線状の高融点金属層130が長手方向に複数形成されることにより、長手方向に沿って線状の開口部132が形成され、この開口部132から低融点金属層131が露出されている。第1、第2の可溶導体13,14は、低融点金属層131が開口部132より露出することにより、溶融した低融点金属と高融点金属との接触面積が増え、高融点金属層130の浸食作用をより促進させて溶断性を向上させることができる。開口部132は、例えば、低融点金属層131に高融点金属層130を構成する金属の部分メッキを施すことにより形成することができる。
【0139】
また、第1、第2の可溶導体13,14は、
図26(B)に示すように、低融点金属層131の表面に、長手方向に所定間隔で、線状の高融点金属層130を幅方向に複数形成することにより、幅方向に沿って線状の開口部132を形成してもよい。
【0140】
また、第1、第2の可溶導体13,14は、
図27に示すように、低融点金属層131の表面に高融点金属層130を形成するとともに、高融点金属層130の全面に亘って円形の開口部133が形成され、この開口部133から低融点金属層131を露出させてもよい。開口部133は、例えば、低融点金属層131に高融点金属層130を構成する金属の部分メッキを施すことにより形成することができる。
【0141】
第1、第2の可溶導体13,14は、低融点金属層131が開口部133より露出することにより、溶融した低融点金属と高融点金属との接触面積が増え、高融点金属の浸食作用をより促進させて溶断性を向上させることができる。
【0142】
また、第1、第2の可溶導体13,14は、
図28に示すように、内層となる高融点金属層130に多数の開口部134を形成し、この高融点金属層130に、メッキ技術等を用いて低融点金属層131を成膜し、開口部134内に充填してもよい。これにより、第1、第2の可溶導体13,14は、溶融する低融点金属が高融点金属に接する面積が増大するので、より短時間で低融点金属が高融点金属を溶食することができるようになる。
【0143】
また、第1、第2の可溶導体13,14は、低融点金属層131の体積を、高融点金属層130の体積よりも多く形成することが好ましい。第1、第2の可溶導体13,14は、高融点金属体15によって加熱されることにより、低融点金属が溶融することにより高融点金属を溶食し、これにより速やかに溶融、溶断することができる。したがって、第1、第2の可溶導体13,14は、低融点金属層131の体積を、高融点金属層130の体積よりも多く形成することにより、この溶食作用を促進し、速やかに第1、第2の電極11,12,91,92間の短絡を行うことができる。