(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6622982
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】粘性流動体収容容器用の落し蓋、及び当該落し蓋を有する粘性流動体収容容器
(51)【国際特許分類】
B65D 39/02 20060101AFI20191209BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20191209BHJP
B65D 47/34 20060101ALI20191209BHJP
B65D 81/24 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
B65D39/02
B65D83/00 K
B65D47/34 110
B65D81/24 A
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-92960(P2015-92960)
(22)【出願日】2015年4月30日
(65)【公開番号】特開2016-210425(P2016-210425A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】390024372
【氏名又は名称】竹本容器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139033
【弁理士】
【氏名又は名称】日高 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100067091
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100198797
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 裕
(72)【発明者】
【氏名】間島 剛史
【審査官】
矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3193592(JP,U)
【文献】
米国特許第01353104(US,A)
【文献】
実開平04−027783(JP,U)
【文献】
米国特許第06302304(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44−35/54
B65D 39/00−55/16
B65D 83/00
B65D 83/08−83/76
B65D 67/00−79/02
B65D 81/18−81/30
B65D 81/38
B65D 85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の内部に充填される粘性流動体の液面変位に連動して変位する落し蓋であって、
前記落し蓋は、
その中心に、前記容器本体の内部から粘性流動体を吸引する吸引ガイドパイプに嵌合装着される取付穴を有し、
外周縁には、前記容器本体の内壁面に接する上向きの周側壁が形成され、
裏面には前記取付穴を中心として放射状に複数の空気流入溝が形成されるとともに、少なくとも1つの前記空気流入溝の先端は前記周側壁の外側に開口している、
ことを特徴とする粘性流動体収容容器用の落し蓋。
【請求項2】
前記落し蓋の裏面には、複数の前記空気流入溝を円周方向に連通させる円周溝が更に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の粘性流動体収容容器用の落し蓋。
【請求項3】
前記空気流入溝は、断面がU字状又はコ字状又はV字状である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の粘性流動体収容容器用の落し蓋。
【請求項4】
前記円周溝は、断面がU字状又はコ字状又はV字状である、
ことを特徴とする請求項2に記載の粘性流動体収容容器用の落し蓋。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の落し蓋を容器本体内に装着した、
ことを特徴とするポンプ付きの粘性流動体収容容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリームのような粘性流動体を
収容した容器本体内から手動式の吐出ポンプを用いて内容物を吐出する
際、粘性流動体の液面の変化に
連動して下降(変位)しながら容器本体の内周面に付着した内容物を掻き落し、無駄なく内容物を使い切るための落し蓋
、及び当該落し蓋を有する粘性流動体収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の落し蓋は、平板状を呈していて、容器本体内の内容物の液面と共に下降する構成である(実公平3−35209号公報)。
【0003】
しかし、この公知例の場合、落し蓋18は容器本体1の内径に対して上部に形成した段差分小径となることから、容器本体の内壁面との間に隙間が発生し、内壁面に付着した内容物を十分に掻き落とし、無駄なく使い切ることはできない。
【0004】
また、特開2004−34997号公報には、スリットを形成した落し蓋が
開示されているが、このスリットは容器本体の口径よりも落し蓋の外径が大きい場合に、この落し蓋をスリットで変形させて挿入しやすくするためのものであって、容器本体の内壁面に付着した内容物の掻き落しにスリットが寄与する訳ではない。
【0005】
一方、掻き落し率を高めるために容器本体の内径と落し蓋の外径との間に隙間を無くすと共に落し蓋の裏面に空気の逃げ溝を放射状に形成した公知例が、実用新案登録第3193592号公報に紹介されている。しかし、この落し蓋Bの場合、落し蓋Bの下面に形成した空気逃げ溝Eはその先端E’が行き止りとなっていることから空気の逃げ場がなくなり、内容物内に気泡が混入していると、この気泡がポンプの空動を引き起こすという問題がある。
【0006】
また、ポンプによる強い真空作用により、液面が容器本体Aの底面に近づいて行くと、ポンプの駆動により吸引ガイドパイプFの先端部分に負圧が集中し、落し蓋Bは
図7に示すように周囲が持ち上って逆ハ字状に変形する。
【0007】
この結果、内容物は周囲の持ち上った部分に残ってしまい、最後まで使い切ることができないという問題がある。
【0008】
また、この公知例の場合、落し蓋Bの空気逃し溝Eの先端E’は、行き止りとなっているため、落し蓋Bが容器本体A内の底面Dのところまで下降して来た時に、差圧でこの底面Dに密着してしまい、ポンプを容器本体Aから取り外そうとしても、底面Dから落し蓋Bが離れず、無理に引き離そうとすると吸引ガイドパイプFから落し蓋Bが外れて容器本体A内に残してしまうことがある。
【0009】
上記公知例の図7において、符号のCは容器本体Aの底、F’は吸引ガイドパイプFの下端に形成した落し蓋Bの係合片、Gは吸引ガイドパイプFの下端に形成した内容物aの吸引口である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、内容物を最後まで使い切って落し蓋(ポンプ)を容器本体内から
取り外す際、落し蓋が容器本体の底面に密着して取り外
しが困難な状況となることを無くすとともに、特に粘度の高い内容物のときに差圧が大きく作用して落し蓋が逆ハ字状に湾曲して内容物を最後まで使い切ることができなくなったりするのを防ぐ落し蓋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、
本願の第一の発明は、容器本体の内部に充填される粘性流動体
の液面変位に連動して変位する落し蓋であって、前記落し蓋は、その中心に、前記容器本体
の内部から粘性流動体を吸引する吸引ガイドパイプ
に嵌合装着される取付穴を有し、外周縁には、
前記容器本体の内壁面に接する
上向きの周側壁が形成され
、裏面には
前記取付穴を中心として放射状に
複数の空気流入溝
が形成されるとともに、少なくとも1つの前記空気流入溝の先端
は前記周側壁の外側に開口
している、ことを特徴とする。
【0012】
また、
第一発明の一実施形態によれば、複数の前記空気流入溝を円周方向に連通させる円周溝
が形成されている、ことを特徴とする。
【0013】
また、
第一発明の一実施形態によれば、前記空気流入溝及び円周溝は、断面U字状又はコ字状又はV字状
である、ことを特徴とする。
【0014】
更に、本願の第二の発明は、ポンプ付きの粘性流動体収容容器であって、上記第一発明の落し蓋を容器本体内に装着した、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上に記載したとおり、落し蓋の下面に空気流入溝を形成したことにより、この落し蓋が容器本体内において底面に密着しても、前記空気流入溝を経由して容器本体内の空気を落し蓋の下面に導くことができる。
【0016】
この結果、落し蓋は、容器本体の底面に密着せず、ポンプ側を引き上げると簡単に容器本体内から取り外すことができる。
【0017】
また、高粘性内容物の場合に、落し蓋は、容器本体内の底面に接近しても、空気流入溝を経由して落し蓋の下側(裏側)に空気が流れ込むため、落し蓋を境として上下に差圧が無くなり、落し蓋は変形しない。
【0018】
この結果、内容物は最後の段階においても落し蓋の下面と容器本体の底面との間に残らず、最後まで使い切ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る落し蓋を取り付けたポンプ付ボトルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0020】
以下、
図1〜
図6に基づいて本発明に係る落し蓋の実施例を詳細に説明する。
【0021】
符号の1は本発明に係る落し蓋であって、この落し蓋1は、容器本体10の内径とほぼ同径
のエッジ3aを周側壁3の上縁に形成した皿形状を呈していると共に底面2には中央に形成した取付穴4から放射状に
複数の空気流入溝5、6が形成されている。
【0022】
空気流入溝5の先端5bは行き止りとなっている
一方、空気流入溝6の先端6b(
図2、
図4、
図5参照)は周側壁3の外周面に閉口している。
【0023】
また、前記空気流入溝5、6の間は
図4、
図6に示すように円周溝7により全体が連通されている。
【0024】
なお、空気流入溝5、6及び円周溝7の数は任意であ
り、内容物の粘性が高い場合にはその本数を増加し、低い場合には減らすことができる。
【0025】
図2、
図3において、
5a、6aは前記空気流入溝5、6の裏側(落し蓋1の上面)に現われ
るリブである。
【0026】
なお、前記空気流入溝5、6の断面形状はU字状、コ字状、V字状等任意であって、この断面形状は本発明において限定されない。
【0027】
以上に説明した落し蓋1は、
図1に示すように容器本体10の内壁径13と落し蓋1のエッジ3aが略同径に設定されていて、ポンプ14のシリンダー16の嵌合部15に嵌合した吸引ガイドパイプ18に取付穴4を利用して上下方向に摺動自在に取り付けられている。
【0028】
図1において、11は容器本体10の上縁に形成されたねじ部であって、ポンプ14付のキャップ19はこのねじ部11を用いて開閉自在に取り付けられている。
【0029】
図1において、17はポンプ14のシリンダー16に接続された吸引ガイドパイプ、17aは吸引ガイドパイプ7の下端に形成された吸引スリット、17bは落し蓋1を受け止めて落下を防ぐ係合片であって、内容物aはポンプヘッド14aを駆動することにより
図1において吸引スリット17aから吸引ガイドパイプ17を介してシリンダー16内に吸い上げられたのち、ノズル20から吐出される。
【0030】
このように、容器本体10内の内容物aは、ポンプ14のポンプヘッド14aを上下動させると、真空作用により吸引ガイドパイプ17の吸引スリット17aからシリンダー内に吸引され、ノズル20から吐出される。
【0031】
そして、液面が低下すると、落し蓋1は真空作用と液面との密着の作用により吸引ガイドパイプ18に沿って安定的に
下降(変位)し、容器本体10の内周壁13に付着した内容物aをエッジ3aで掻き落とす。
【0032】
落し蓋1が液面に密着しながら下降する間に、空気流入溝5、6内に入り込んだ空気は、落し蓋1の周側壁3と容器本体1の内周壁13間を通って落し蓋1の底面2内に流れ込むため、落し蓋1の底面2と容器本体10内とは同圧に
維持され、落し蓋1は
図7で説明したように変形することなく内容物aを最後まで掻き落とす。
【0033】
この作用により、内容物aは無駄なく使い切ることができると共に、落し蓋1は、空気流入溝5、6の作用で容器本体1の底面に密着することもなくなり、ポンプ14(キャップ19)と一緒に容器本体10から取り外して内容物aの補充等を行うことができる。
【0034】
なお、容器本体10の胴部は、本実施例では円筒状を呈しているが、この胴部は楕円形、四角形等の場合もあり、これに併せて落し蓋1もその形状となる。
【0035】
そして、落し蓋1の空気流入溝6は、楕円形の場合には長円方向に設け、四角形の場合にはコーナー方向(対角線方向)に向けて設ける。
【符号の説明】
【0036】
1 落し蓋
2 底面
3 周側壁
4 取付孔
5,6 空気流入溝
10 容器本体
13 内周壁
14 ポンプ
18 吸引ガイドパイプ
19 キャップ
20 ノズル