特許第6622984号(P6622984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6622984ラチスブーム用ラチス部材、ラチスブーム、及びクレーン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6622984
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】ラチスブーム用ラチス部材、ラチスブーム、及びクレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/64 20060101AFI20191209BHJP
   B66C 23/26 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   B66C23/64
   B66C23/26 C
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-120852(P2015-120852)
(22)【出願日】2015年6月16日
(65)【公開番号】特開2016-3144(P2016-3144A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2018年6月14日
(31)【優先権主張番号】20 2014 004 888.6
(32)【優先日】2014年6月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597120075
【氏名又は名称】リープヘル−ヴェルク エーインゲン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Liebherr−Werk EhingenGmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローラント ボーナッカー
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ウィーデマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス クライバー
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−255987(JP,A)
【文献】 特開2006−315864(JP,A)
【文献】 特開2007−223699(JP,A)
【文献】 米国特許第04253579(US,A)
【文献】 特開2009−249186(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104150378(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00─23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の取り外し可能な連結点を介して長手方向に分離可能に互いに連結されているラチス部材の部品を少なくとも2つ備え、
ラチス部材部品の1つ以上は、前記連結点の領域において、1本以上の縦管を少なくとも部分的に有し、
ラチス部材の幅を広げるために、1つ以上のラチス部材は、複数のラチス部材を互いに長手方向に連結するための連結点が設けられていない、ラチス部材の片側部分同士の間において、1つ以上のスペーサバーを介して互いに選択的に連結可能に構成されている
ことを特徴とするラチス部材。
【請求項2】
前記ラチス部材の部品は、長手方向に見た場合のラチス部の下部及び上部において、対応するスペーサバーを介して連結可能である
ことを特徴とする請求項に係るラチス部材。
【請求項3】
前記少なくとも1つのスペーサバーの空間的構造は、平行六面体を形成しており、その長手方向縁部は、前記ラチス部材の縦軸を横切るように延びるとともに1つ以上の斜め材及び/又は横部材を介して互いに連結されている4つの長手方向バーによって形成されている
ことを特徴とする請求項又はのうちの1項に記載のラチス部材。
【請求項4】
ラチス部材の部品の1つ以上の前記縦管は、1つ以上の非緊張材及び/又は斜め材を介してラチス部材の部品の少なくとも1つのコーナバーに連結されている
ことを特徴とする請求項1〜のうち1項に記載のラチス部材。
【請求項5】
1つ以上の前記連結点は、ラチス部材の部品の非緊張材及び/又は斜め材の少なくとも一部に直接連結されている
ことを特徴とする請求項1〜のうち1項に記載のラチス部材。
【請求項6】
1つ以上の取り外し可能な連結点を介して長手方向に分離可能に互いに連結されているラチス部材の部品を少なくとも2つ備え、
ラチス部材部品の1つ以上は、前記連結点の領域において、1本以上の縦管を少なくとも部分的に有し、
ラチス部材の部品の1つ以上の前記縦管は、1つ以上の非緊張材及び/又は斜め材を介してラチス部材の部品の少なくとも1つのコーナバーに連結されており、
前記縦管は、長手方向において、1つ以上の前記非緊張材、斜め材、及び/又は連結点によって分断されている
ことを特徴とするラチス部材。
【請求項7】
1つ以上の取り外し可能な連結点を介して長手方向に分離可能に互いに連結されているラチス部材の部品を少なくとも2つ備え、
ラチス部材部品の1つ以上は、前記連結点の領域において、1本以上の縦管を少なくとも部分的に有し、
1つ以上の前記連結点は、ラチス部材の部品の非緊張材及び/又は斜め材の少なくとも一部に直接連結されており、
前記縦管は、長手方向において、1つ以上の前記非緊張材、斜め材、及び/又は連結点によって分断されている
ことを特徴とするラチス部材。
【請求項8】
1つ以上の前記連結点は、ピン留め可能な連結部、詳細には分岐した指状の連結部である
ことを特徴とする請求項1〜7のうち1項に記載のラチス部材。
【請求項9】
前記コーナバーは、1つ以上の前記縦管よりも寸法、特に直径及び/又は壁厚が大きい
ことを特徴とする請求項に記載のラチス部材。
【請求項10】
請求項1〜9のうち1項に記載のラチス部材の少なくとも1つを有するラチスブームであって、
鉛直な起伏面において起伏可能である
ことを特徴とするラチスブーム。
【請求項11】
1つ以上の取り外し可能な連結点を介して長手方向に分離可能に互いに連結されているラチス部材の部品を少なくとも2つ備え、
ラチス部材部品の1つ以上は、前記連結点の領域において、1本以上の縦管を少なくとも部分的に有するラチスブームであって、
鉛直な起伏面において起伏可能であり、
少なくとも1つの第1領域及び少なくとも1つの第2領域を有し、前記ラチスブームは、第1領域において、スペーサバーを介して連結されているラチス部材の部品を有するラチス部材を1つ以上備え、第2領域において、第1領域のスペーサバーよりも短いスペーサバーを介して、又は、前記スペーサバーを介すことなくラチス部材の部品が連結されているラチス部材を1つ以上有する
ことを特徴とするラチスブーム。
【請求項12】
前記第1領域及び前記第2領域は、横部材及び/又は改良型ピボット連結部材、及び/又は改良型ラチス部材を介して互いに連結されている
ことを特徴とする請求項11に記載のラチスブーム。
【請求項13】
ブーム幅が一定となるように、又は、長手方向に調節可能となるように、選択的にラチスブームが組立可能である
ことを特徴とする請求項10〜12のうち1項に記載のラチスブーム。
【請求項14】
輸送の目的のために、1つ以上のラチス部材及び/又はラチス部材の部品は、互いの内部に格納可能又は押し込むことが可能であること、及び/又は、輸送のために、1つ以上のクレーン組付品が少なくとも1つのラチス部材内に格納可能である
ことを特徴とする請求項10〜13のうち1項に記載のラチスブーム。
【請求項15】
請求項10〜14のうち1項に記載のラチスブームを有する
ことを特徴とするクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンブーム用ラチス部材、ラチスブーム、及びこのようなラチス部材を少なくとも1つ有するクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
ラチスブームは、用途に応じて寸法が決められて組み立てられる。可能な揚高はブーム長さによって固定される一方、最大吊上能力は、特にブーム強度で決められる。ラチスブームは、典型的には平行六面体の形状を有する公知のラチス部材から構成される。ラチス部材の長手方向縁部は、4本のコーナバーによって互いに連結されており、隣接するコーナバーは、斜め材又は非緊張材を介して互いに連結されている。
【0003】
吊上能力を向上させる方法としては、コーナバー間の間隔、ひいてはラチス部材の直径が大きくなるように、組み立てられたラチス部材の寸法を大きくすることが考えられる。
【0004】
別の解決手段が、マルチストランドブームの設計を提案する独国実用新案出願公開第202008004663号明細書から知られている。ここで提案されたラチスマストブームは、詳細には第1領域及び第2領域から構成され、第1領域は、ラチス部材からの少なくとも2本のストランドを備えており、第2領域は、ラチス部材から形成された1本のストランドを備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この実用新案明細書における組み立てられたラチスブームに使用されるラチス部材の数が原因で、最終的なブームの重量が非常に重くなり、そのため、クレーンに大きな荷重がかかるとともに、積載容量の決定の際にその重量を考慮しなければならない。
【0006】
本発明の目的には、上述の問題を克服できるラチスブームの設計を可能にするラチス部材の別の構成を得るための方法を提供することが含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の特徴を有するラチス部材によってこの目的が実現される。ラチス部材の好適な実施形態は、主請求項に従属する従属請求項の主題である。
【0008】
請求項1によれば、1つ以上の取り外し可能な連結点を介して長手方向に分離可能に互いに連結されているラチス部材の部品を少なくとも2つ備えるクレーンブーム用ラチス部材が提案される。
【0009】
本発明によれば、ラチス部材の2つの部品の解放可能な連結部により、ラチス部材の少なくとも2つの部品同士を柔軟に接合することができる。すなわち、これらラチス部材の部品を互いに直接連結するか、又は、スペーサ部品を用いてこれらラチス部材の部品を連結することによって、最終的なラチス部材の断面を必要に応じて変更できるようにすることかの、いずれかが可能である。
【0010】
本発明によれば、安定性の理由のため、ラチス部材の1つ以上の部品は、1つ以上の縦管を少なくとも部分的に連結点の領域において有するようにされる。縦管は、ラチス部材の長手方向に延びることによって、平行六面体のラチス部材の部品の長手方向の縁部を形成する。介在する1つ以上のスペーサ要素を用いて組み立てしてもよい。このようして実現されたラチス部材の部品は安定性があるからである。結果として、個々のラチス部材をブーム組付品に柔軟に適応させることができる。調節可能な直径、詳細には調節可能な幅を有するラチス部材が製造される。したがって、個々のラチス部材から組み立てられたブーム構造は、用途に応じて寸法が決められ、必要に応じて吊上能力がより高いクレーンを構成することができる。
【0011】
例えば、ラチス部材の1つ以上の部品は、1つ以上のスペーサバーを介して互いに連結できることが考えられる。複数のスペーサバーを使用する場合、例えば、ラチス部材の2つの部品が、長手方向に見た場合のラチス部材の部品の下部及び上部において、対応する1つのスペーサバーを介して連結されるように、ラチス部材の部品の長手方向にスペーサバーを組み合わせることが好都合である。
【0012】
発明の好適な実施形態では、少なくとも1つのスペーサバーは、平行六面体の形状を有する。スペーサバーの構造は、面的なデザインを有することができるが、重量の理由のため、下面部のみが空間的構造を有する変形例が特に好ましい。例えば、前記ラチス部材の縦軸を横切るように延びるとともに好ましくは連結予定のラチス部材の部品に端部側で連結される長手方向バー、詳細には4つの長手方向バーによって長手方向の縁部が形成されている平行六面体形状が考えられる。長手方向バーは、1つ以上の斜め材及び/又は横部材を介して互いに連結されている。横部材を長手方向バーに端部側で固定することが好ましい。こうすることは、スペーサバーの1つの実施形態の変形例に過ぎず、直径がより大きい最終的なラチス部材に必要な安定性及び強度を付与する何らかの別の構造も想定可能である。
【0013】
発明の好ましい実施形態では、ラチス部材の部品の1つ以上の縦管は、1つ以上の非緊張材及び/又は斜め材を介して、同じラチス部材の部品の少なくとも1つのコーナバーに連結されている。ラチス部材の部品の可能な設計の変形例では、ラチス部材の部品は、1つ以上の非緊張材及び/又は斜め材を介して対応する縦管に連結されている2つの外側に配置された隣接するコーナバーを有する。こうして、ラチス部材のうち少なくとも1つには、外側に配置された長手方向縁部がコーナバーによって形成されるとともに内側に配置された長手方向縁部が縦管によって形成される平行六面体の形状が同様に付与される。
【0014】
ラチス部材の部品は、好ましくは連結点の具体的な実施形態における差異を別にして、同一又はほぼ同一のものであってもよい。しかしながら、ラチス部材の部品の設計が異なっていても構わない。
【0015】
ラチス部材の2つ以上の部品を連結するための必要な1つ以上の連結点は、ラチス部材の1つ以上の非緊張材の端部と、ラチス部材の部品の縦管とのうちいずれか又は両方に形成できる。連結点が1つ以上の非緊張材の端部側で形成されている場合、配置された縦管は、1つ以上の非緊張材又は連結点によって長手方向に分断されてもよい。
【0016】
前述の連結点のうち1つ以上は、ピン留めできるとともに、詳細には、差込可能なピンを有する、分岐した指状の連結部として構成できる。また、多分岐の連結部又は蟻継ぎ状の連結部も使用できる。
【0017】
ラチス部材の個々の部品のコーナバーがこれら部品の縦管よりも寸法が大きいことは、本発明に係るラチス部材の重量を最適化するように設計するには賢明であり得る。コーナバーに対する荷重がより大きいので、縦管の寸法を小さくすることによって重量を低減できる。使用された縦管は、寸法、特に直径が小さくなる。
【0018】
ラチス部材に加えて、本発明はさらに、本発明又は発明の好適な実施形態に係る少なくとも1つのラチス部材を有するラチスブームに関する。請求項に係るラチスブームは、鉛直な起伏面で起伏可能なブームであることが好ましい。本発明に係るラチスブームの利点及び特性は、発明に係るラチス部材の利点及び特性と対応していることが明らかであるので、この点については繰り返し説明しない。
【0019】
本発明に係るラチスブームの特に好ましい実施形態において、ラチスブームは、少なくとも1つの第1ブーム領域及び少なくとも1つの第2ブーム領域を有し、ラチスブームは、第1領域において、第1のスペーサバーを介して互いに連結されているラチス部材の部品を有する1つ以上のラチス部材を備え、第2領域には、1つ以上の従来のラチス部材及び/又は本発明に係るラチス部材が設けられ、これらラチス部材の部品は、互いに直接連結されているか、又は、第1のスペーサバーよりも短いスペーサバーに連結されている。使用される本発明に係るラチス部材の実施形態によって、長手方向に柔軟な断面を有するラチスブームを構成する可能性がもたらされる。こうして、ラチスブームは、それぞれの吊上能力及び外的影響に対してより柔軟に適応できる。
【0020】
したがって、独国実用新案出願公開第202008004663号明細書とは対照的に、2本の平行なブームストランドを用いて作業することはもはや必要ないが、重要な領域では、幅が広くなったラチス部材でブームを組み立てることができる。こうして、従来技術の利点が実現できる一方、本発明に係るブームが軽量構造を有するように設計されているので、クレーンの吊上能力の最適化も行われる。
【0021】
クレームブームは、2つの領域に限定されず、異なるブーム断面を有する2つ以上の異なる領域を有するブームが考えられる。
【0022】
本発明の更なる実質的な利点には、従来技術から知られている設計とは対照的に、「疑似ブームストランド」が互いに連結されていることがある。ストランド間にある新たな領域によって、ブームの安定性が高くなるとともに過剰なねじれ歪みが打ち消される。
【0023】
別々のブーム領域は、理想的には、適切な横部材及び/又は改良型ラチス部材を介して、長手方向に連結できる。クレーン上部構造に対するピボットブーム連結は、改良型ピボット連結部材によって可能である。
【0024】
様々な寸法の1つ以上のラチス部材は、クレーン輸送のために、互いの中に格納して輸送できる。輸送目的のために、ラチス部材を複数の個別の部品に分解することも考えられる。ラチス部材の部品は、例えば、従来のラチス部材の中空の空間に格納されてもよい。輸送目的のために、ラチス部材の内部に1つ以上の大型クレーン組付品を収容することも考えられる。
【0025】
最後に、本発明は、本発明又は本発明の好適な実施形態に係るラチスブームを有するクレーン、特に移動式クレーンに関する。発明に係るクレーンの利点及び特性は、発明に係るラチスブームの利点及び特性と対応しているので、この点については繰り返し説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A図1Aは、発明に係るラチス部材の様々な図である。
図1B図1Bは、発明に係るラチス部材の様々な図である。
図1C図1Cは、発明に係るラチス部材の様々な図である。
図2A図2Aは、発明に係るラチス部材にスペーサバーが挿入された状態の様々な図である。
図2B図2Bは、発明に係るラチス部材にスペーサバーが挿入された状態の様々な図である。
図2C図2Cは、発明に係るラチス部材にスペーサバーが挿入された状態の様々な図である。
図3A図3Aは、本発明の根底にある基本的な課題を説明するためのラチスブームの模式的な正面図である。
図3B図3Bは、本発明の根底にある基本的な課題を説明するためのラチスブームの模式的な正面図である。
図4】従来技術から公知の2ストランドブームの断面図である。
図5】発明に係るラチスブームにスペーサバーが挿入されている状態の断面図である。
図6A図6Aは、本発明の別の実施形態に係るラチス部材の様々な図である。
図6B図6Bは、本発明の別の実施形態に係るラチス部材の様々な図である。
図6C図6Cは、本発明の別の実施形態に係るラチス部材の様々な図である。
図7A図7Aは、本発明に係るラチス部材にスペーサバーが挿入されている状態の様々な図であって、図6Aに対応する図である。
図7B図7Bは、本発明に係るラチス部材にスペーサバーが挿入されている状態の様々な図であって、図6Bに対応する図である。
図7C図7Cは、本発明に係るラチス部材にスペーサバーが挿入されている状態の様々な図であって、図6Cに対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の更なる利点及び特性が、図面に示す実施形態を参照しながら、より詳細に説明される。
【0028】
図1A及び図1Bは、本発明に係るラチス部材2の様々な図を示す。本発明に係るラチス部材の構造により、ラチス部材の幅、詳細には、組み立てられたラチスブームの鉛直な起伏面を横断するラチス部材の幅を柔軟に調節できる。こうして、様々なタイプのブームが組立可能になり、本発明に係るラチス部材2sの構成により、従来のタイプのラチス部材と比べて重量を低減できる。
【0029】
ラチス部材2は、分離可能に設計されるとともに、組み立てられたブームの起伏面3に沿ってラチス部材の2つの片側部分2R及び2Lに分解される。ラチス部材の構造は、図1Bの斜視図で見ることができるとともに、典型的には、平行六面体の形状を有するラチス部材の長手方向縁部を形成する4本のコーナバー21,21´,21´´,21´´´を備えている。コーナバー21,21´,21´´,21´´´は、これらの端部側において、起伏面3と平行に延びる2本の対応する切れ目のない非緊張材27を介して連結されている。起伏面を横断する方向に延びる非緊張材23及び/又は斜め材22はすべて分離可能に設計され、非緊張材23及び/又は斜め材22の各部分は、連結点25を介して互いに取り外し可能に連結されている。ラチス部材2は、これらの連結を外すことによって片側部分2R及び2Lに分割される。
【0030】
ラチス部材の片側部分2R,2Lはそれぞれ、連結点25の領域において、すなわち、起伏面3に沿って、縦管24を2本備えており、これら縦管24は、非緊張材23によってラチス部材の片側部分の1つの側面につき3つの縦管セグメントに分割されるとともに非緊張材に固定される。したがって、ラチス部材全体では、合計4つの縦管24、すなわち合計12個の縦管セグメントを備えている。隣接するコーナバー21及び21´´並びに21´及び21´´´は、従来のラチス部材とは対照的に、非緊張材及び斜め材を介して互いに直接連結されてはいないが、その代わりに、縦管24の領域において連結点25を介して互いに連結されている。
【0031】
さらに、斜め材22は、コーナバー21,21´,21´´,21´´´から非緊張材23における連結点25を有する端部の方向に延びているとともに、非緊張材23における縦管24がある箇所の上方に配置されることによって、ラチス部材の片側部分2R,2Lごとに公知の三角形の構造を形成する。図面をより分かりやすくするために、ラチス部材の起伏面3と平行な側面における非緊張材及び斜め材は図示しない。
【0032】
連結点25は、取り外し可能な連結部、詳細には分岐した指状の連結部として設計されており、その連結手段、すなわちピンは、連結を外すために簡単に引き抜くことができる。
【0033】
上述の形状を有する複数のラチス部材2を互いに長手方向に連結するために、別の連結点26,26´がラチス部材2の端部側に設けられる。図1Cは、2つの相互に連結されたラチス部材2のブームセグメント10を示す。連結点26,26´も解放可能な連結部、すなわち、公知の分岐した指状の連結部として実現される。
【0034】
さらに、図1A図1Cから分かるように、コーナバー21,21´,21´´,21´´´が、一体化された縦管24よりもはるかに大きい寸法を有している。これにより、重量が低減されることになる。
【0035】
本発明によれば、ラチス部材の片側部分2L,2Rを用いると、非常に重い積荷を吊り上げたり非常に高い負荷トルクを負担したりするためのクレーンも用意することができる。この目的のために、ラチス部材の片側部分2L,2Rは、互いに直接連結されはしないが、図2A図2Bにおいて容易に認識できるように、1つ以上のスペーサバー30を介して互いに連結される。ラチス部材の片側部分同士の間にスペーサバー30を入れることによって、起伏面3を横切る方向にラチス部材が広がることになる。このように形成されたラチス部材を大型ラチス部材2Sと呼ぶ。
【0036】
スペーサバー30がラチス部材の片側部分2L,2Rの上側領域及び下側領域に配置されている(間に挟まれたスペースが空いた状態のままである)ことが、図2Bから認識できる。使用されるスペーサバー30は、同様に平行六面体の形状を有し、その側面には、非緊張材及び斜め材からなる公知の三角形の形状を含んでいる。スペーサバーの長さは、ラチス部材2ごとに同じ長さが選ばれ、図2Aではこの長さは参照番号31で示されている。したがって、スペーサバー30の使用に起因して、起伏面3を横切るラチス部材の幅は、長さ31の分だけ広がることになる。スペーサバー30を設置することによって、このシステムの幅を理想的には少なくとも2倍にすることができる。
【0037】
スペーサバー30の長手方向縁部は、長手方向バー28によって形成されており、その端部は、ラチス部材の2つの片側部分2R,2Lの分岐した指状の連結部25における一対の対向一致点25を形成している。この場合、隣接する長手方向バー28の間隔は、ラチス部材の片側部分2R,2Lの連結点の間隔と一致する。
【0038】
図2Cから分かるように、個々の大型ラチス部材2Sは、互いに連結されてブーム10又はブームの一部を形成できる。大型ラチス部材2Sの目的及び趣旨は、ラチスブーム10をより高い吊上能力のために最適化すること、さらには、独国実用新案出願公開第202008004663号明細書におけるように、外的影響に対してより頑丈にラチスブーム10を構築することである。
【0039】
公知のラチスマストクレーンでは、ラチスマストブームが、通常、起伏時に支持ロープによって保持される。そのため、急傾斜の位置での最大吊上能力の決定的な基準は、大きい荷重を吊り上げる際のラチスマストブームにおける起伏面3からのブームの撓みではなく、図3A及び図3Bに示すように起伏面3に対して垂直な側方への変形である。ここには、異なる幅B、B´を有する2つのラチスブーム1,10の正面図が模式的に示されている。ここでは、図3Aは、図面の紙面に対して垂直な面3における起伏軸6を中心として起伏可能なラチスマストブーム1を示している。図3Bは、図面の紙面に対して垂直な面3におけるラフィング軸6を中心として同様に起伏可能なラチスマストブーム10を示している。この点について図3Aに示す幅Bを有するラチスマストブーム1が、風力などの横方向に作用する力Fによる荷重がなくても横方向の撓みS1を生じる場合、既存の撓みS1がある状態で吊荷を吊り上げることによって、横方向の大きなトルクが生じる。
【0040】
図3Bに示すように、Bよりも大きい幅B´を有するラチスマストブーム10が使用される場合、この状況は改善する。なぜなら、横方向に作用する力Fによるラチスマストブームの変形が小さくなって、S1よりも小さい横方向の撓みS2しか生じないからである。それに応じて、横方向のトルクも小さくなる。また、幅が広がることによって、荷重によって生じた横方向のトルクに対するラチスマストブーム10の剛性が高くなる。
【0041】
ブーム10の幅は、本発明に係るラチス部材2の構成によって、対応する用途に柔軟に適応させることができるとともに、従来技術と比べて、図3Bに基づいて吊上能力を最適化できる。
【0042】
詳細には、ブーム10における起伏軸6に近い下側領域は、起伏面3からの撓みに対して非常に強くなるように設計されることが好ましい。これを実現するには、詳細には、コーナバー21,21´,21´´,21´´´の壁厚を大きくする一方、縦管24の壁厚を小さいまま維持する。配置の状況に応じて、最終的に幅B´が使用されることにより最大の横方向の撓みS2が確認されるようなスペーサバー30の長さ31が選択される。この点について、長さ31が大きいと、建設現場でスペースを多く取るが、コーナバー21,21´,21´´,21´´´が起伏面3から遠く離れているので、最大吊上能力が大きく向上することになる。ラチスブーム10は、起伏面3から少ししか撓まない。
【0043】
大型ラチス部材2Sは、ラチスブーム10の下側領域に取り付けられることが好ましい。より軽量のラチス部材2は、ラチスブーム10の上側領域に設置される。これらラチス部材2は、追加のスペーサバー30のない分離可能なラチス部材2であってもよいし、従来のラチス部材であってもよい。また、勿論、2つ以上の別々の部分からブーム10を組み立ててもよい。
【0044】
図3Bに示す実施形態によれば、最初の2つ又は3つのラチス部材は、大型ラチス部材2Sとして設計できる。こうすれば、起伏軸6に近いラチスブーム10の下側領域にかなりの重量が付与されるとともにラチスブーム10の撓みが小さくなる。ブーム10の上側領域においては重量が低減されるとともに、ブーム10は意図的に軽量のまま維持される。
【0045】
別々のラチス部材2を有するブーム10の別々の領域は、対応する横材を介して互いに連結できる。クレーンの上部構造に対するピボット連結は、改良型ピボット連結部材又は改良型ラチス部材を介して実行可能である。この後、この使用された特別な要素は、例えば、2mから2m+2mまでの範囲にある、現在設置する予定のシステムの幅に適合される。
【0046】
本発明に係るラチス部材2は、従来技術におけるラチス部材と同程度の長さ、例えば6〜14mの範囲の長さを有してもよい。搬送の際に、ラチス部材の片側部分2L,2Rは、従来技術における2つのラチス部材内に入れて搬送されてもよい。
【0047】
ラチス部材の片側部分2L,2Rの各々とスペーサバー30との連結は、できる限り強固になるように設計されなければならない。この理由で、対応する部品2R,2L,30の間に、連結点25が少なくとも2つ、可能であれば少なくとも4つ設けられる。スペーサバー30が、ラチス部材の片側部分2L,2Rの間の実際のスペーサバーとして使用されない場合、クレーン、詳細にはブームシステムにおける別の場所に使用されることも理論的に考えられる。
【0048】
ラチス部材2は、連結点25に起因して、同じ寸法を有する従来のラチス部材よりもねじり柔軟性が高くなるとは限らない。このため、対応する連結点25を機械的に再加工することが必要な場合がある。
【0049】
大型ラチス部材2Sと独国実用新案出願公開第202008004663号明細書に係る2ストランドブームの単純なラチス部材2とが混在する構成を有する、本発明に係るラチスブーム10の実質的な利点を図4及び図5を参照して説明する。
【0050】
図4は、従来技術から知られているような2ストランドブーム構造の断面を示す。ねじり慣性モーメントは、ラチスブーム1の断面における囲われた領域の面積の2乗に比例している。図4の場合には、ねじり慣性モーメントは、個々のねじり慣性モーメント(ここではBとCとの間の長方形)の合計から構成されている。構成部材が分解されるので、ストランド間にある表面、すなわち、コーナバーB間の表面は支持されていない。
【0051】
図5は、大型ラチス部材2Sを有するブーム10による本発明に係る解決手段を示す。発明に係る解決手段において、外側のコーナバー21,21´,21´´,21´´´によって囲まれた表面によって周辺のスラストフローが可能になるので、ねじり慣性モーメントは不均衡に大きくなる。
【0052】
図6A図6Cは、本発明の別の実施形態に係るラチス部材200を示す。これらの図面は、図1A図1Cと実質的に対応しており、同じ構成要素又は組付品には、同じ参照番号が付与されている。したがって、以下では、差異のみに注目する。ラチス部材200もまた、分離可能なラチス部材の片側部分200L及び200Rを備えている。第1の実施形態とは違って、図1A図1Cに示す設計から非緊張材が省かれている。起伏面3に沿って延びる縦管24は、斜め材によってラチス部材の片側部分200L,200Rの1つの面につき3つの縦管セグメントに分割されるとともに斜め材22に固定される。したがって、ラチス部材200全体では、合計4つの縦管24、すなわち合計12個の縦管セグメントを備えている。隣接するコーナバー21,21´´並びに21´,21´´´は、従来のラチス部材とは対照的に、非緊張材及び斜め材を介して互いに直接連結されてはいないが、その代わりに、縦管24の領域において連結点25を介して互いに連結されている。
【0053】
図6A図6Cの実施形態では、縦管24は、コーナバー21,21´´並びに21´,21´´´よりも短いので、力の流れ及び重量の点で好適であることがさらに認識できる。
【0054】
図7A図7Cは、図2A図2Cと実質的に対応しているが、大型ラチス部材200sを得るために図6A図6Cの実施形態におけるラチス部材200が使用されている。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C