(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施例を図面を用いて説明する。洗濯工程においては、ドラム式洗濯機でも洗濯乾燥機でも同じ工程であるため、以下の実施例ではドラム式洗濯乾燥機を用いて説明する。
【0012】
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施例に係るもので、ドラム式洗濯乾燥機の外観斜視図を示す。また
図2は、本発明の第1の実施例に係るもので、ドラム式洗濯乾燥機の内部構造を示す右側面の概略断面図である。
【0013】
まず外観について説明する。ベース1hの上部に、主に鋼板と樹脂成形品で作られた側板1a及び補強材(図示せず)を組合わせて骨格を構成し、さらにその上に前面カバー1c、下部前面カバー1f、上面カバー1eを取り付けることで筐体1を形成している。前面カバー1cには洗濯物207を出し入れするドア9が設けられており、背面には背面カバー1dがとりつけられている。
【0014】
つぎに、洗濯乾燥機の概略構造および洗濯から乾燥工程までを簡単に説明する。
図1に示す筐体1の内側には
図2のごとく、ほぼ中央部に外槽2が備えられている。外槽2は下部の複数個のダンパ5により支持されている。外槽2の内側に回転可能に設けたドラム3には、ドア9を開けて洗濯物207を投入する。ドア9自体は、ドア枠9bにドアガラス9aを固定したものであり、ヒンジ9cにより、筐体に取り付けられている。回転可能なドラム3の開口部の外周には、脱水時の洗濯物207のアンバランスによる振動を低減するための、流体バランサー208が設けられている。また、ドラム3の内側には洗濯物207を持ち上げる複数個のリフター209が設けられている。回転可能なドラム3は金属製フランジ210に連結された主軸211を介して、ドラム駆動用のモータM10aに直結されている。外槽2の開口部には弾性体からなるゴム製のベローズ10が取付けられている。このゴム製のベローズ10は、外槽2内とドア9との水密性を維持する役割をしている。これにより、洗い,すすぎ及び脱水時の水漏れの防止が図られている。回転可能なドラム3は、側壁である円筒部に遠心脱水および通風用の多数の小孔(図示せず)を有する。
【0015】
洗濯水を外槽2の上部までくみ上げて、ドラム3内の洗濯物207に散布するための循環ポンプ18は、外槽2よりも下部の筐体ベース1h側に固定されている。洗濯水は、外槽下部に設けられた水受け部54の排水口21から、糸くずフィルタ222を通して循環ポンプ18の吸込口側に入り、循環ポンプ18で昇圧されたのち、散水ノズル223(
図8参照)からドラム3内に向けて散水される。また水受け部54の底部に排水のために設けた排水口21は、糸くずフィルタ222と排水弁V1を介して、排水ホース26に通じており、水受け部54内の水を排水できる。
【0016】
一方、オーバーフローホース205は、外槽の前部に取り付けられており、排水弁V1手前で排水口21からの連結ホース(図示せず)と合流している。即ち、排水弁V1が開となれば、オーバーフローホース205は、排水ホース26と連通される構成となっている。水密性よりも水圧上昇に対する安全性を重視させた場合、即ちオーバーフローホースが取り付けてある所定の水位よりも水量が増えてしまった場合には、いかなる場合でも強制的に排水できるように、オーバーフローホース205を排水弁V1よりも下流側で、排水ホース26と連通させる構成としてもなんら差し支えない。
【0017】
ドラム3内の洗濯物207に気流を導く送風ダクト29と、送風手段である送風ファン20は、外槽2から離して筐体1に固定(図示せず)されている。吹出しノズル203は、外槽2に、洗濯乾燥機正面からみて回転可能なドラム3の中心軸よりも上側且つ、洗濯乾燥機側面からみて、正面寄りの前側の位置に固定されている。前記吹出しノズル203と温風ヒータ213の出口は、柔軟構造のゴム製の蛇腹管212で、その長手伸縮方向が外槽2に対して略垂直となる配置で接続しており、外槽2の振動を吸収している。排水口21,送風ファン20の吸気口(図示せず)及び吐出口(図示せず)には温度センサ(図示せず)が設けてある。本実施例の加熱手段の一つである温風ヒータ213は必要に応じて、送風温度を調節するのに用いる。
【0018】
洗濯もしくは洗濯乾燥コースを選んで運転を開始すると、投入された洗剤を溶かして洗濯物に散布する洗剤溶かし工程を実行する。洗濯工程の初期は、工程終了までに使用する全水量よりも少ない給水量で洗剤を溶かし、この高濃度洗剤液をドラム3を回転させて、洗濯物207を攪拌させながら循環ポンプ18にて満遍なく散布する。このため通常は、外槽2内には洗剤液のしみこんだ洗濯物207と、外槽2底部の水受け部54に少量の洗剤液が存在する。ドラム3を回転させることで、洗濯物207をドラム3上部に持ち上げた後、重力により底部まで落下させるタンブリング動作に基づくたたき洗いを行い続けると、洗濯物207にしみこんだ洗剤液が搾り出てくるので、必要に応じて間欠的に循環ポンプ18を駆動させて、再び洗濯物207に洗剤液を散布する。この動作中においても、洗濯水と洗濯物のいわゆる洗浄温度を上げると、洗浄性能を向上できる。本実施例では、洗濯工程においてヒートポンプ230を用いて温風をつくり、洗濯水及び洗濯物を温める。
【0019】
図3は、洗濯乾燥機を背面側からみた基本構成図である。ヒートポンプ230を用いた温風システムは、ヒートポンプ230、外部熱交換器236である水冷熱交換器236a、送風ファン20から主に構成されている。ヒートポンプ230は
図3に示すごとく、圧縮機237、放熱器231、第1膨張弁232、内部熱交換器233、切替弁234及び第2膨張弁235と水冷媒熱交換器236a、これらを結ぶ配管系から構成されている。洗濯工程においては、圧縮機237からの高温高圧冷媒は、放熱器231と熱交換器233にて、循環空気に冷却され、その後、第2膨張弁で絞られて低温低圧とされる。低温低圧の冷媒は、水冷媒熱交換器236aに送られ、水に加熱された後、圧縮機に戻される。
【0020】
このとき放熱器231と内部熱交換器233の間にある第1膨張弁は、絞りを抑えて、通過する冷媒に対して、絞りによる圧力降下を抑制している。すなわち、冷媒は、放熱器231と内部熱交換器233までは高圧状態で、送風ファン20からの気流で冷却される。換言すれば、冷媒により送風ファン20からの気流は加熱される。その後、冷媒は第2膨張弁で絞り膨張されて低圧となり、水冷媒熱交換器236aで吸熱する。
図4は本実施例におけるヒートポンプ230の基本構成を示す模式図である。また
図5は、洗濯における温風生成時の冷媒状態を模式的に示したモリエル線図である。ヒートポンプ230は、水冷媒熱交換器236aで水から吸熱した熱を、熱交換器233と放熱器231で、送風ファン20からの気流に放熱する。このような構成とすることで、気流をダクト29内で一旦冷やすことなく効率よく温めることができるので、洗浄温度を早く上げることができる。
【0021】
図6は、外部熱交換器236である水冷媒熱交換器236aへの給水及び排水流路について抜粋して示した模式図である。水冷媒熱交換器236aにおいて、冷媒に吸熱された冷水は、洗濯運転もしくは洗濯工程の終了時に給水弁16から追加給水した給水圧により、外槽2内に設けた散水スプレー247に導かれ、外槽2内部の洗浄に用いられる。水道水よりも低温の水により洗浄することで、洗濯時に残水とともに残った雑菌などの繁殖をおさえながら、洗い流すことができる。さらに残った洗剤かすも発泡を抑制して円滑に洗い流すことができる。また風呂の残り湯を水冷媒熱交換器236aに流して吸熱源に利用した場合は、熱交換後は常温レベルとなっていることも多く、洗濯終了時に給水弁16からの給水圧にて排水切替弁238を介して排水しても、何ら差し支えない。
【0022】
その後の洗濯工程において、外槽内に追加給水して、洗剤液を通常の洗濯水量まで増やすと、外槽底部の水受け部54にも十分な水量が確保される。もし、水受け部54に温水ヒータ240を設けてある場合(
図8参照)には、温水ヒータ240を用いて、ひきつづき洗濯水を温めてもよい。
【0023】
また、ヒートポンプの凝縮温度は、高圧冷媒などを除いて、通常は冷媒の潜熱を確保して循環流量を抑える主旨から、臨界点よりも低温とするのが好ましい。このため、例えばHFC-134aでは、臨界点約101.1℃に対して、凝縮温度は90℃未満に抑えるのが望ましい。冷媒と熱交換により上昇する温風温度は、それよりも低くなり、洗濯物207の加熱温度はさらに低くなる。このため、洗浄温度で90℃クラスの高温を必要とする洗濯コースなどでは、加熱初期はヒートポンプを用いて効率よく加熱し、後半は送風ファン20出口内に設けた温風ヒータ213を用いて温風温度をさらに上げて、洗濯物207を加熱するのが好ましい。あるいは、追加給水後に水受け部54に設けた前記温水ヒータ240を用いて、温めていくのがよい。
【0024】
また、循環ポンプ18よりも小流量の循環ポンプ239を別置し、水受け部54から汲み上げて送風ファン20出口近傍にて温風内に散布することで、温風に液滴を混ぜて、洗濯物207に散布させてもよい。
図7は小流量循環ポンプ239による温風内散布のようすを示した模式図である。洗濯工程の途中で、通常の循環量レベルを確保できるまで追加給水して、循環ポンプ18にて散布させると、洗濯物207の温度は急激に低下してしまうが、このような構成にして、少量の循環水を温風にのせて散布させれば、洗濯物207に含まれる水を満遍なく且つ僅かずつ入れ替えることができるため、洗濯物207の急激な温度低下も抑えることができるので、より洗浄性能を向上させることができる。
【0025】
本実施例では、前述のようにダクト内において冷媒と送風ファンからの気流が熱交換する放熱器と熱交換器を、全て空気を加熱させる凝縮器として利用する。洗濯工程の過程で、通常の水量まで給水して外槽底部の水量を増した場合、気流が水受け部54の液面をこすることでおきる発泡や送風ファン戻り空気への液滴随伴を防止するために、風量を下げる場合がある。このような場合でも、十分な凝縮面積が確保できるので、温風温度を下げてしまう心配もない。さらに外部熱交換器236を設けて筐体外からの熱エネルギーを取り込むため、外部熱交換器236である水冷媒熱交換器236aへの通水量を調整することで、洗濯物207に吹き付ける気流の温度上昇速度を容易に調節できるとともに、安定して高温の気流を保持させることができる。以上のように、乾燥運転時の除湿空気を生成させるヒートポンプに外部から吸熱できる外部熱交換器236を追加することで、洗浄時の洗濯物の洗浄温度を上げる熱源の一つとして、ヒートポンプを利用できる。また本発明のヒートポンプでは、洗浄温度を上げる熱源の一つとして用いるときに、乾燥用の除湿空気を生成させるときの蒸発器を凝縮器の一部とすることで、乾燥運転時よりも高温の気流を容易に生成できる。また本実施例では、第1の膨張弁は、絞り抵抗を抑えた全開状態にできるものを使用しているが、第1膨張弁を迂回するバイパス路を設けて、第1膨張弁を閉じた流路としても機能上は何ら差し支えない。
【0026】
このように構成したドラム式洗濯乾燥機における洗濯工程を運転パターンと温風タイミングの観点から詳述する。回転可能なドラム3内に洗濯物207を投入し、排水弁V1を閉じた状態で給水して、ドラム3を回転させて洗濯物207を洗濯する。洗濯工程は、さらに洗剤溶かし工程、前洗い工程、本洗い工程からなる。洗剤溶かし工程は、洗濯開始時の布量センシングで提示し、投入された洗剤を水で溶かして、ドラム3内の洗濯物207に散布する工程である。洗剤投入部に給水された水は、洗剤とともにドラム3底部に位置する水受け部54に導かれる。
【0027】
図8は、水受け部54の水を循環ポンプ18により循環させている様子を示す斜視図である。循環ポンプ18を駆動すると、水受け部54の水は,排水口21から糸くずフィルタ222を介して循環ポンプ18の吸込口(図示せず)に入る。循環ポンプ18で昇圧された洗濯水は、循環ポンプ18の出口と連通する循環吐出口54bから再び水受け部54に戻される(洗剤溶かし工程の循環経路)。この循環を繰り返すことで、少ない水で洗剤を溶かした高濃度洗剤液を生成する。循環ポンプ18の出力は、最大洗濯負荷に応じた洗濯水を、外槽2の上方に設けた散水ノズル231まで、くみ上げるに十分な仕様となっている。このため、前述の洗剤溶かし工程の循環経路で循環させると、循環ポンプ18の所要動力は最終的には熱エネルギーに変わり、高濃度洗剤液の温度を上昇させる。生成された高濃度洗剤液は、外槽2の上方に設けた散水ノズル231までくみ上げられて、ドラム3内の洗濯物207へ散布される。このとき、循環ポンプ18の出口には、外槽2上方まで導く経路と、上述のように散布せずに水受け部54に戻す経路が必要となるが、本実施例では、循環ポンプ18のケーシング外周に各々の経路につながる吐出口(
図2参照)を設けておき、循環ポンプ18の回転方向を替えることで、回転方向に応じて最初に連通する吐出口側から吐出させることで経路を切り替えている。あるいは循環ポンプ18の吐出口は一箇所として、その下流側で分岐させて流路を切り替えても、機能としてはなんら差し支えない。
【0028】
前洗い工程では、高濃度洗剤液が散布された洗濯物207に、送風ファン20からの気流を、ヒートポンプ230にて温めたのちに吹きつけて、洗濯物207を温めながら洗浄する。洗濯物207は高濃度洗剤液を保水した状態であるため、洗濯物207の繊維隙間を空気が占めるよりも熱伝導は良く、効率よく加熱できる。また温度を上げることで、保水されている高濃度洗剤液の表面張力を下げることができる。さらに洗濯物207の温度が上がると、繊維中の空気が繊維を膨潤させるので、高濃度洗剤液の繊維への浸透をより促進できる。これにより繊維から、より多くの汚れを短時間で分離できる。分離できた汚れは、保水された高濃度洗剤液内に迅速に分散されるので、再び凝集して再付着することを防ぐことができる。
【0029】
また汚れによっては、洗濯物207にかけた洗濯水の水量が少ない(洗剤濃度が濃い)ほうがよく落ちる場合と、逆に洗濯水の水量が多い(洗剤濃度が薄い)ほうが良く落ちる場合とがある。両者に作用する汚れ落ちの原動力には違いがあり、以下のように解釈できる。洗剤の主成分の一つである界面活性剤は、繊維の濡れを促進して、さらに汚れや布の表面電位を、界面活性剤のマイナス極性に引き寄せることで、負に帯電させる働きがある。これにより、洗濯物から浮かせた汚れ同士や繊維と汚れの間の反発力を増す効果がある。このため、ファン・デル・ワールス力を主体として付着している固形の汚れの洗浄には、界面活性剤の濃度が濃いほうが、ファン・デル・ワールス力に対抗させる前述の反発力を増強できる。よって固形汚れなどは、一般的に界面活性剤濃度が濃いほうがよく落とせる。一方、水や洗濯水に溶け易いいわゆる水溶性の汚れは、溶媒である洗濯水に対する溶質となる汚れの濃度によって、溶解速度が変わる。汚れの濃度が薄い液では溶解速度が大きいが、濃い液では溶解速度が低下する。このため洗濯物207が保水する洗濯水中に分散している汚れの濃度を薄めておけば、さらに洗濯物207から汚れが落ちやすい。換言すれば、洗濯物207の保水する洗濯水は、汚れの濃度の極めて低い洗濯水に置き替えてやるか、汚れの濃度を薄めてやる処置が必要となる。即ち、この種の汚れに対する界面活性剤の役割は、洗濯物207からはがした汚れを分散保持して、凝集や再付着を防ぐ役割が大きいので、ある程度の洗剤濃度が満たされていれば、汚れ落ちに対する洗剤濃度の依存性は小さい。
【0030】
また、どちらの汚れに対しても、洗浄温度を上げることは、結果的に洗浄力を増すことにつながる。前者に対しては、温度を上げることで、洗濯水中の分子拡散が促進されるので、布表面や汚れ表面に、より多くの界面活性剤を付着させることができ、反発力を増強できる。後者に対しても、洗剤溶液中での界面活性剤の拡散が向上し、布表面の濡れを促進できる。さらに分離させた汚れも効果的に拡散できる。
【0031】
その後の本洗い工程では、前洗い工程が終了した時点で追加給水して、水受け部54の水量を増やして、水位を上げる。この水位は、循環ポンプ18により水受け部54から洗濯水をくみ上げて、外槽上部の散水ノズル231から連続して散布するのに十分な水位を保つものとする。散水ノズル231からの散布は、連続であっても間欠であってもよい。具体的には、洗濯物207の裏側などに多くの汚れがまだ付着している間は、連続で散布して洗濯水の攪拌を促進することで、洗濯物207が保水する洗濯水を、常に汚れ濃度の低い洗濯水に入れ替えることができる。その後、汚れがほとんど落ちた後は、たたき洗いの機械力を主体として残りの汚れを落とすほうが洗浄効率がよい。よって後半の散布は、機械力を妨げないように間欠散布とするのが好ましい。また循環ポンプ18の駆動力を間欠とすることで、消費電力量を抑えられるので、省エネルギーの面からも好ましい。
【0032】
なお散水ノズル231は、外槽2に、洗濯乾燥機正面からみて回転可能なドラム3の中心軸よりも上側且つ、洗濯乾燥機側面からみて、正面寄りの前側の位置に固定されており、散水ノズル231からの噴出範囲を、ドラム3の半径方向に対して広角にして散布する構造としている。この本洗い工程では、広範囲の散布とともに、ドラム3の回転によりドラム3内の下方に溜まった洗濯物207を持ち上げて、ドラム3内の上方から落下させることにより、洗濯物207に機械的な力を与えてたたき洗いをする。ドラム径が大きいほど、広範囲の散布とたたき洗いの相乗効果が得られ、本洗い工程の時間を短縮できる。この工程において、洗濯物及び洗濯水の洗浄温度を上げるには、前洗い工程のように温風を用いても本質的には変わらない。温風吹き出しノズルと散水ノズルとは、洗濯乾燥機を正面から見て、中心軸に対して相対する配置としている。ドラム内の水位を上げることで、同じ回転数に対する循環ポンプの循環水量が増えても、温風による水滴の随伴や水流との直接接触に伴う発泡を抑えた構成としている。
【0033】
また必要に応じて、前記本洗い工程は、第1本洗い工程および前記第1本洗い工程の後に実行される第2本洗い工程を有し、第1本洗い工程の終了時に給水して前記第2本洗い工程の水量は、前記第1本洗い工程の水量よりも多くして、前記第2本洗い工程の前記循環ポンプ18の循環流量は、前記第1本洗い工程での前記循環ポンプ18の循環流量よりも大きくする。さらに、前記第2本洗い工程の前記ドラム駆動のモータM10aの回転速度は、前記第1本洗い工程のモータM10aの回転速度よりも低くする。
【0034】
本洗い工程は主に、水量の少ない前洗い工程では洗いにくい衣類の内側やポケットの中などの汚れを洗濯物207から分離させるために行う。このためさまざまな汚れを落とすために、前述のように水量とドラム駆動のモータM10aの回転速度を変えた、少なくとも2つ以上の工程の組み合わせとするのがより好ましい。第1本洗い工程では、ドラム3の回転速度を高くするため、ドラム3の回転とともに上方に持ち上げられた洗濯物207は、全て下方に落ちずに、大半は遠心力により、ドラム3の内壁にへばり着いた状態で、ドラム3とともに回転している。そこに循環ポンプ18から洗濯水を散布させるので、洗濯物207への洗濯水の貫通流速を速くしている。これにより、汚れを洗濯物から溶け出しやすくしている。これに続く第2本洗い工程では、ドラム3の回転速度を第1本洗い工程よりも低くして、遠心力を弱めて前述の洗濯物207のドラム3へのへばりつきを極力抑えて、ドラム3の上方から下方に叩き落すたたき洗いを重視した工程としている。これにより、洗濯物207に機械力を作用させることで、主に疎水性の汚れを落としやすくできる。洗濯物207をドラム3の上方から下方に叩き落とす際に、ドラム3の下方に停留している洗濯水の水位を高くして、かつ循環水量も多くすることで、必要以上に洗濯物207どうしが直接ぶつかり合って、繊維を圧迫させることを防ぐこともできる。
【0035】
すすぎ工程では、排水弁V1を開けて、洗濯水を排水した後、排水弁V1を閉じて、外槽2内に所定の水位まですすぎ水を給水する。その後、ドラム3を回転させて、洗濯物207とすすぎ水を攪拌してすすぐ。洗浄運転での温風生成時に、水冷媒熱交換器236aにて吸熱されて低温となった水は、このすすぎ工程内において、外槽2の内側やドラム3の外側の洗浄に用いる。より詳細な工程内容は、本実施例の運転工程の説明(後述)の中で詳述する。
【0036】
また、脱水工程においては、排水弁V1を開いて外槽2内のすすぎ水を排水した後、ドラム3を回転させて洗濯物207を遠心脱水する。脱水回転数は、洗濯物207のバランスがとれずにモータM10aの電流値が上限を超えるなどの不具合がない限り、負荷に応じた設定回転数まで上昇させる。脱水回転数を上げて、ドラム3が高速回転すると、外槽2にも振動が伝わり、外槽2自身も僅かながら振動する。送風ダクト29は筐体1に固定されているため、乾燥フィルタ8と外槽2側面部をつなぐジャバラホース215が連動して、振動の一部を吸収する。
【0037】
乾燥工程では、再びヒートポンプ230を駆動させて、乾燥空気をドラム3内に送る。乾燥時は、第1膨張弁232を絞り、熱交換器233をヒートポンプ230の蒸発器として用い、第2膨張弁235は全開もしくは回避させることで、外部熱交換器236での空気もしくは水と冷媒との熱交換を防止して、安定した乾燥運転とする。運転中は、負荷レベルに応じてより少ない消費電力量と乾燥度、仕上がりの良さを両立できるように、気流の温湿度の最適化を行う。ここで乾燥度とは、完全に乾燥させた布本来の質量を試験終了後の布の質量で除した値を百分率表示したものである。乾燥の前半は、布表面での蒸発速度が支配的となる定率乾燥であるため、低湿度の循環空気を効率よく作るヒートポンプ運転が好ましい。乾燥後半は、布内部に残留する水分を蒸発させる減率乾燥となるため、前半よりも温風温度を確保して布内部まで熱を伝え易くするのが好ましい。
【0038】
なお、乾燥時間をより短縮させたい場合には、放熱器231と熱交換器233の間に設けた給排気口241を開いて、蒸発器としての熱交換器233で除湿された空気の一部を排気し、排気と同量の筐体内空気を放熱器231の上流側で風路内に取り込む。温風の温度を上げると、ドラム3から乾燥フィルタ8を介して蒸発器である熱交換器233に戻す空気の温度レベルも上がる。温度レベルが上がると、その温度に対する飽和蒸気湿度も上がり、より多くの湿気を含んだ循環空気となる。そこで、熱交換器233で冷却除湿して、冷却温度までの潜熱を回収した飽和空気を排気し、メインモータM10aの排熱や圧縮機237からの放熱により温まった筐体内の空気(湿度は周囲雰囲気と同等)を取り込む。このような構成とすることで、放熱器231で冷媒により加熱された湿度の低い温風をドラム3内に送ることができる。
【0039】
乾燥終了後は、排水孔240側の圧力より排水ホース26側の圧力を高く保ちながら、水封じを破らない圧力レベルまで送風ファン20の回転数を下げて、給水電磁弁16を開いて水を流し、排水トラップ202の水封じを回復させて乾燥工程終了となる。
【0040】
以上のように、洗濯から乾燥までの運転が可能な洗濯乾燥機や洗濯を行う洗濯機によれば、洗濯物207と洗濯水の洗浄温度を、ダクト内に設けたヒートポンプの放熱器231と熱交換器233をヒートポンプ230の凝縮器として用いて、効率よく加熱することができる。なお乾燥工程時には、従来どおり、ダクト内の放熱器231をヒートポンプ230の凝縮器とし、第1膨張弁232を介して冷媒が流れる熱交換器233を蒸発器とすることで、除湿空気をドラム3内に送ることができる。
【0041】
次に洗濯工程に関係する構成要素について順に説明する。まずは給水ユニット15の構成ついて説明する。
図9は筐体上部左側の概略断面図である。
図9に示すように、給水ユニット15(給水手段)は、外槽2の外部に設けられた給水口2aに水を供給して、外槽2内に給水するための装置である。給水ユニット15は、上面カバー1e(
図9参照)の背面側に設けられている。
図10は、本実施例の洗濯乾燥機における上面カバーを外した平面図である。
図10に示すように、給水ユニット15には、給水ホース接続口16aと、給水電磁弁16と、風呂水給水ポンプ17と、前記吸水ホース接続口17aと、水位センサ34と、水位センサと外槽を結ぶチューブ35とが設置されている。
【0042】
給水ホース接続口16aは、一端が水道水の水栓に取り付けられたホース(図示省略)の他端が接続される接続部分である。給水電磁弁16は、洗剤投入部7の粉末洗剤投入室73および液体洗剤投入室74に連通する給水管P1や、柔軟仕上剤投入室75に連通する給水管P2などと、水道水を注水する弁体の開閉制御を電磁力で行うバルブである。粉末洗剤投入室73、液体洗剤投入室74および柔軟仕上剤投入室75内に供給された水道水は、
図9に示すように、洗剤類、柔軟仕上剤と共に洗剤送出管P3、給水口2aを介して外槽2内に注水される。
【0043】
ここで、給水電磁弁16は、基本的には5つの電磁弁で構成されており、1つは給水管P1を介して粉末洗剤投入室73および液体洗剤投入室74への給水を開閉により制御し、1つは給水管P2を介して柔軟仕上剤投入室75への給水を開閉により制御し、1つは給水管(図示せず)を介して外槽2の給水口2a(
図9参照)への給水を制御し、1つは水冷媒熱交換器236aへの給水を制御し、1つは必要に応じて、ヒートポンプユニット230の放熱器231、熱交換器233への散水管242への給水の制御や外槽2内お掃除用の散水スプレー247への給水を制御するものである。あるいは外槽2の給水口2aへの給水を制御する電磁弁から分岐して、給水の一部を外槽2内に設けた外槽2上部またはドラム3上部に散水する散水スプレー247へ給水できるようにしてもよい。これにより、外槽2内に水を溜められるとともに外槽2上部またはドラム3上部を洗浄することができる。さらに、ドラム3を回転させながらドラム3上部へ散水し、外槽2上部へ跳ね返り飛散するようにすることで、ドラム3および外槽2を満遍なく洗浄することができる。なお、散水スプレー247は、ドラム3内側へ散水するように設けてもよく、これにより、給水の一部をドラム3内の洗濯物に直接水をかけられるので、すすぎ工程におけるすすぎ効率も向上できる。
【0044】
風呂水給水ポンプ17は、風呂の残り湯(風呂水)を吸引して取り込んで、主に外槽2内に注水するポンプである。吸水ホース接続口17a(
図10参照)は、風呂水を給水するためのホースが接続される接続部分であり、前記風呂水給水ポンプ17に連通している。
【0045】
図2に示すように、外槽2の後部底面には、一端側内にドラム3が回転自在に支持され、他端側にモータM10aの回転軸211が支持されている。外槽2の内側には、前記回転軸211を後部底面に固定したドラム3が、回転可能な状態に収納されている。外槽2は、前面部、下面部及び上面部を以下のように支持することで、振れや倒れを防いでいる。前面部は、ゴム製のベローズ10によって筐体1の前側内壁に弾性的に支持され、下面部は、ベース1hに固定されたダンパ5により弾性的に防振支持される。さらに、上面部は、上補強材36に取り付けた補助ばね33(
図10参照)で筐体1の天井面に弾性的に吊り下げられて、支持されている。
【0046】
図9に示すように、外槽2の後側の上部左側には、外槽2内へ水、洗剤、漂白剤、柔軟仕上剤等を含む液体を供給するための給水口2a(供給口)が設けられている。筐体1内の上部左側には洗剤容器72が設けられており、給水口2aと洗剤容器72の出水口72aとは、ゴム製の蛇腹管P4で接続されている。
【0047】
外槽2の後部端面の最下部には、エアトラップ(図示せず)を介してチューブ35がつなげられてあり、チューブの上端は、水位センサ34(
図10参照)に接続され、外槽2内の水位を検出する。
【0048】
次に給水経路50および電導度検出手段4について説明する。
図11は、外槽2を本体正面側からみた斜視図である。外槽2は、外周壁51と底壁52とを有する。外槽2の底壁52の背面53(内面)には、水、洗剤、漂白剤等を含む液体を給水口2aから外槽2の下方部分に導くための給水経路50(溝55)が形成されている。ここでは、外周壁51から底壁52にかけての円筒形状の外周壁51の内径が徐々に減少する繋ぎ部分は、底壁52に含まれることとする。
【0049】
前記給水経路50は、外槽2内の上部に供給された水を、外槽2の内底部56に形成された水受け部54に流れるようにガイドする経路である。この給水経路50は、例えば、外槽2の上部に形成され、外槽2内に液体を供給する給水口2aと、外槽2の底壁52に形成され、液体を給水口2aから外槽2の下方部分に導くための溝55と、溝55の下端部55a以外を覆って管路を形成するカバー部材61と、を備えて構成されている。なお、カバー部材61は、設けなくても構わない。
【0050】
溝55は、給水口2aから鉛直方向下方に延び、外槽2の下方部分に向けて、緩やかにカーブした略円弧形状に形成された流路(給水経路50)からなる。溝55は、縦断面視においてコ字状に形成され、給水口2aから外槽2内への給水は、矩形断面の奥側隅部付近を流れ、溝55内から外槽2内に広がり出ることはない。カバー部材61は、溝55の形状に対応して平面上で湾曲した帯状板体であり、カバー部材61の材質としては、例えば外槽2と同じPP(ポリプロピレン)が使用されている。
【0051】
外槽2の溝55の両側部には、背面53よりも後方に退避した段部(図示省略)が形成されており、この段部(図示省略)上にカバー部材61が配置されることにより、カバー部材61の上面(前面)が背面53よりも前方に出っ張らないようになっている。カバー部材61は、その帯状板体の両側部の複数個所に設けられたねじ穴62にねじ部材(図示省略)等により外槽2に固定されて、給水経路50の管路が形成される。
【0052】
電導度検出手段4は、給水口2aから供給された水が最初に触れる位置に設けられている。即ち、前記給水口2aから供給された水が溝55から水受け部54に流下する位置に設けてある。このため電導度検出手段4は、水道水が給水された場合、水の電導度を正しく測定することができる。洗剤や柔軟仕上剤が供給された場合も、電導度検出手段4は、水の中に洗剤や柔軟仕上剤が含まれていることを検知することができる。また、電導度検出手段4は、水受け部54の内部に配置されているので、後述する洗剤溶かし工程において、洗剤が溶かされた水の電導度を検出することができるようになっている。
【0053】
また電導度検出手段4は、洗濯前の水道水、洗濯(洗い、すすぎ、脱水)時の洗濯水の電導度を検出するセンサであり、合成樹脂製のセンサベースに、一対の電極(図示せず)を備えた構成となっている。電極は、たとえば平板形状とすることにより、電極面積を棒状の電極に比べて広く確保することができ、安定した電導度の検知が可能になる。
【0054】
次に制御装置100および駆動装置M10の構成について説明する。
図12は、本発明の実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の制御装置100の構成を示すブロック図である。制御装置100(運転制御手段)は、モータM10a(駆動装置M10)および給水ユニット15およびヒートポンプ230を制御して洗い運転を実行可能にすると共に、電導度検出手段4で検出した外槽2内の液体の電導度から電導度の算出、液体内に含有している柔軟仕上剤の有無の判定(基準濃度に対する判別)、脱水工程の短縮の判定、すすぎ工程の短縮の判定等を行う装置である。
図12に示すように、制御装置100は、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」と称する)110、駆動回路、操作スイッチ12,13や電導度検出手段4や各種センサからの入力回路等で構成される。マイコン110は、使用者の操作や、洗濯工程、乾燥工程での各種情報信号を受ける。マイコン110は、駆動回路を介して、駆動装置M10(モータM10a)、給水電磁弁16、排水弁V1、送風ファン20等に接続され、これらの開閉、回転、通電を制御する。また、使用者にドラム式洗濯機に関する情報を知らせるために、表示器14やブザー(図示せず)等を制御する。
【0055】
図2に示すように、駆動装置M10は、ドラム3を回転駆動させる装置であり、外槽2の底面の外側中央に設置されている。駆動装置M10は、モータM10aと取付具M10b(
図2参照)とを有している。モータM10aの回転軸は、外槽2を貫通し、ドラム3に結合されている。モータM10aは、その回転を検出するホール素子あるいはフォトインタラプタなどで構成される回転検出装置28と、モータM10aに流れる電流を検出するモータ電流検出装置(図示省略)とを備えている。
【0056】
このように制御装置100は、マイコン110を中心に構成される。マイコン110は、運転パターンデータベース111と、工程制御部112と、回転速度算出部113と、衣類重量算出部114と、電導度測定部115と、洗剤量・洗い時間決定部116と、濁度判定部117と、閾値記憶部118と、を備えている。
【0057】
操作スイッチ12,13は、使用者により運転コースを入力することができるように構成されており、入力された信号をマイコン110に出力する。また、水位センサ34は、外槽2の内部に貯留された水の水位を検出することができるようになっており、検出された信号をマイコン110に出力する。
【0058】
温度センサT1は、外槽2の下部(例えば、排水口21)に設けられ、外槽2の内部に貯留された水の温度を検出することができるようになっている。温度センサT2は、送風ファン20の吸気側に設けられ、ヒートポンプから送風ファン20に吸気される空気の温度を検出することができる。温度センサT3は、送風ファン20の排気側かつ温風ヒータ213よりも下流側に設けられ、送風ファン20からドラム3内に吹き出される空気の温度を検出することができるようになっている。温度センサT4は、乾燥フィルタ8下流側且つヒートポンプの熱交換器の上流側に設けられ、ドラムからヒートポンプに戻る循環空気の温度を検出することができる。なお、温度センサT1〜T4で検出された信号は、マイコン110に出力される。加速度センサ27は外槽2に取り付けられ、外槽2(ドラム3)の振動を検知する。加速度センサで検知された信号は、マイコン110に出力される。
【0059】
回転検出装置28は、例えばレゾルバ(回転角センサの一種)で構成され、モータM10aの回転を検出することができ、検出された信号はマイコン110に出力される。モータ電流検出装置25は、モータM10aの電流値を検出することができ、検出された信号は、マイコン110に出力される。電導度検出手段4は、外槽2の内部に貯留された水の電導度を検出することができ、検出された信号はマイコン110に出力される。
【0060】
マイコン110は、操作スイッチ12,13から入力された運転コースに対応する運転パターンを運転パターンデータベース111から呼び出し、洗濯、すすぎ、脱水、乾燥の何れかから開始する機能を有する。工程制御部112は、運転パターンデータベース111から呼び出された運転パターンに基づき、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程、乾燥工程の各工程を運転制御する機能を有する。各工程において、工程制御部112は、表示器14、給水ユニット15、給水電磁弁16、排水弁V1を制御する機能を有する。また、工程制御部112は、モータ駆動回路121を介して駆動装置M10のモータM10aを駆動制御し、温風ヒータおよび温水ヒータを設けた機種においては、温風ヒータスイッチ123のON/OFFを制御することにより温風ヒータ213への通電を制御し、温水ヒータスイッチ122のON/OFFを制御することにより温水ヒータ240への通電を制御する。ファン駆動回路124を介して送風ファン20を制御し、循環ポンプ駆動回路125を介して循環ポンプ18を駆動制御する機能を有する。さらに、圧縮機駆動回路126を介して圧縮機237を制御し、第1膨張弁駆動回路127を介して第1膨張弁232の開度を制御し、第2膨張弁駆動回路128を介して第2膨張弁235の開度を制御する。ヒートポンプの構成要素に含まれる切替弁234も、切替弁制御回路129を介して制御する。
【0061】
ここで、循環ポンプ18は、排水口21から吸い込んだ水を窪み部54の循環吐出口54bから吐出させる洗剤溶かし動作と、排水口21から吸い込んだ水を外槽2の開口部に設けられた散水ノズル231からドラム3の内部に吐出させる循環動作と、を切り替えて
行うことができるようになっている。なお、このような動作切替可能な循環ポンプ18の構成は、循環ポンプ18と切替弁(図示せず)とにより構成されるものであってもよく、あるいは循環ポンプ18の回転方向を切り替えることにより吐出方向を切り替えることができる構成であってもよい。
【0062】
回転速度算出部113は、モータM10aの回転を検出する回転検出装置28からの検出値に基づき、モータM10aの回転速度を算出する機能を有する。衣類重量算出部114は、回転速度算出部113で算出された回転速度と、モータ電流検出装置25の検出値に基づいて、ドラム3(
図2参照)内の洗濯物207の重量を算出する機能を有する。洗濯物207の重量が増加することによりドラム3を回転させるための負荷が大きくなり、モータM10aに流れるモータ電流が多く必要になることから、モータM10aのモータ電流と回転速度により洗濯物207の重量を算出することができる。
【0063】
電導度測定部115は、電導度検出手段4からの検出値を用いて水道水、洗濯水の電導度を測定する機能を有する。洗剤量・洗い時間決定部116は、電導度測定部115が測定した電導度等に基づいて、洗剤量および洗濯物のすすぎ時間を決定する機能を有するものであり、詳細は後述する。
【0064】
濁度判定部117は、電導度測定部115が測定した電導度に基づいて、衣類の汚れ具合(以下、濁度とする)を判定する機能を有する。閾値記憶部118は、濁度判定部117が衣類の汚れ具合(濁度)を判定する際に用いる閾値を記憶する機能を有する。ちなみに、濁度判定部117および閾値記憶部118は、本実施例では、以下のように本洗い工程時の制御に使用している。第1本洗い工程の前後において、電導度測定部115により、洗浄水の電導度EC1を計測する。なお、電導度を計測する際は、給水電磁弁16による外槽2への給水、循環ポンプ18による循環、モータM10aによるドラム3の回転は停止されていることが望ましい。濁度判定部117において、第1本洗い工程の前後で測定した電導度EC1の差が、閾値記憶部118に記憶された閾値以上か否かを判定する。もし否(閾値よりも低い)であれば、汚れが少ないと判断し、可であれば、汚れが多いと判断して、その後の第2本洗い工程に進む。第2本洗い工程は、前述のように第1本洗い工程よりも水位を高くして、さらに循環ポンプ18の循環流量も多くしたたたき洗いとしている。即ち、洗濯物207がドラム3上方に持ち上げられて、下方にたたき落とされた際に、洗濯物207どうしがぶつかり合って、繊維を圧迫するのを防いでいる。しかしながらこの工程が長いほど、洗濯物207のごわつきは増大する傾向にある。したがって、汚れが比較的少ない場合は、第2本洗い工程を極力短くしたい。そこで、汚れが少ないと判断できた場合には、第2本洗い工程の運転時間を短く調整する。なお、濁度の判定は、他の工程間の切り替えタイミングや各工程の運転時間の見直しにも使用できる。
【0065】
次に、第1実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の運転工程について説明する。
図13は、第1実施形態例に係るドラム式洗濯乾燥機における洗濯運転(洗い〜すすぎ〜脱水)の運転工程を説明する工程図である。
【0066】
ステップS1において、工程制御部112は、ドラム式洗濯乾燥機の運転工程のコース選択の入力を受け付ける(コース選択)。ここで、使用者は、ドア9を開けて、ドラム3の内部に洗濯する洗濯物207を投入し、ドア9を閉じる。そして、使用者は、操作スイッチ12,13を操作することにより、運転工程のコースを選択し入力する。操作スイッチ12,13が操作されることにより、選択された運転工程のコースが工程制御部112に入力される。工程制御部112は、入力された運転工程のコースに基づいて、運転パターンデータベース111から対応する運転パターンを読み込み、ステップS2に進む。なお、以下の説明において、40℃温水洗濯コース(洗い〜すすぎ2回〜脱水)が選択されたものとして説明する。
【0067】
ステップS2において、工程制御部112は、ドラム3に投入された洗濯物の重量(布量)を検出する工程を実行する(布量センシング)。具体的には、工程制御部112は、モータM10aを駆動してドラム3を回転させるとともに、衣類重量算出部114が注水
前の洗濯物207の重量(布量)を算出する。
【0068】
ステップS3において、工程制御部112は、洗剤量・運転時間を算出する工程を実行する(洗剤量運転時間算出)。具体的には、工程制御部112は、給水電磁弁16を制御して(例えば、第3電磁弁を開弁して)、外槽2の給水口2aに直接給水する。電導度測定部115は、給水された水の電導度(硬度)を検出する。また、センサT1で、給水された水の温度を検出する。その後、給水電磁弁16を制御して、外槽2への給水を終了する。
【0069】
洗剤量・洗い時間決定部116は、ステップS2で検出した布量、水の電導度(硬度)、水の温度に基づいて、マップ検索により、投入する洗剤量と運転時間を決定する。そして、工程制御部112は、決定された洗剤量・運転時間を表示器14に表示する。ここで洗剤量を決定するマップは、温水洗濯コース専用のマップとしてもよい。温水洗濯コースでは洗濯物207が保水する洗剤液の濃度が、汚れ落ちに大きく影響する。もし、ドラム径とモータトルクのバランスから機械力の強い場合には、通常の洗濯コースにおいては、洗剤量が少なくて済む。しかしながら、本コースでは、水量の少ないままで洗浄温度を上げるので、移染(色移り)防止の観点から布のこすれあいを抑えるために、機械力の依存を小さくする。このため温水洗濯コース時には、洗剤量が逆に少なすぎてしまう場合では、通常の機械力に応じた濃度レベルとしておくべきである。
【0070】
なお、外槽2に給水して水の電導度(硬度)および水温を検出するものとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、前回運転時の水の電導度(硬度)および水温をマイコン110の記憶部(図示せず)に記憶しておき、それを用いてもよい。
【0071】
ステップS4において、工程制御部112は、洗剤投入待ち工程を実行する(洗剤投入待ち工程)。例えば、工程制御部112は、所定時間待機して、ステップS5に進む。なお、工程制御部112は、洗剤投入部7の開閉を検知する手段(図示せず)により、洗剤投入部7が開けられた後に閉じられた場合、洗剤が投入されたものとして、ステップS5に進む構成であってもよい。
【0072】
ステップS5において、工程制御部112は、洗剤溶かし工程を実行する(洗剤溶かし工程)。例えば、工程制御部112は、給水電磁弁16を制御して、給水管P1を介して粉末洗剤投入室73および液体洗剤投入室74に給水する。粉末洗剤投入室73および液体洗剤投入室74の洗剤と水は、洗剤送出管P3、蛇腹管P4、給水口2a、給水経路50を介して、出口50aから外槽2の水受け部54に流入する(
図9及び10参照)。所定水量まで給水すると、工程制御部112は、給水電磁弁16を制御して(例えば、第1電磁弁を閉弁して)、給水を停止させる。そして、工程制御部112は、洗剤溶かし動作を実行する(洗剤溶かし動作)。具体的には、工程制御部112は、循環ポンプ18を制御して、排水口21から吸い込んだ水と洗剤を、水受け部54の循環吐出口54bから吐出させる。循環吐出口54bから吐出された水と洗剤は、水受け部54を流れ、排水口21へと向かい、循環するようになっている(
図11参照)。これにより、水と洗剤が攪拌され、洗剤が水に溶かされるようになっている。所定時間(例えば、10秒)が経過した後、生成した高濃度洗剤液を外槽上部の散水ノズル223までくみ上げて、散布する。
図8に散布の様子を示す。少ない高濃度洗剤液を、極力、洗濯物207に均一に散布するために、散布直前にドラム3を高速で回転させて、遠心力でドラム3内面に洗濯物207を張り付かせておく。ドラム3の回転を保ちながら、循環ポンプ18で外槽2上部の散水ノズル231までくみ上げた高濃度洗剤液を散布する。高濃度洗剤液は散水時の速度エネルギーと、洗濯物207に到達してから働く遠心力により、ドラム3内壁に向かって洗濯物207に浸透していく。またドラム3は洗濯物207が遠心力で張り付く回転速度で回っているため、たとえばドラム3を80r/minで回した場合、散布時間が20秒でも、ドラム上の同一点に対して約26回散水された水を浴びせることができる。
【0073】
また
図14は、高濃度洗剤液を散布する時の循環ポンプ18の吸い込み側水位と揚程の関係を模式的に示したもので、散布後半に吸い込み側に追加する追加水との関係についても模式的に示している(
図14(b))。生成した高濃度洗剤液が少ないため、循環ポンプ18を動かして外槽2上部の散水ノズル231から散水した高濃度洗剤液は、洗濯物207にほとんど浸潤するため、水受け部54には戻らず、循環ポンプ18の吸込口の高濃度洗剤液がやがて不足する。
図14(a)は、この高濃度洗剤液を散水ノズル223まで揚水するのに十分な量が確保できてない状態で循環ポンプ18を回し続けている状態を示している。循環ポンプ18の吸込口が、高濃度洗剤液で十分満たされないため、循環ポンプ18は揚程を確保できず、散水ノズル223までの経路には、高濃度洗剤液が滞留した状態となる。
図14(b)は(a)の状態から循環ポンプ18の吸い込み側に追加給水した状態を示す。この状態において、水受け部54に追加給水すると、循環ポンプ18の吸込側は高濃度洗剤液と追加した水で満たされて、再び揚程を確保できるようになり、連続してくみ上げることが可能となる。これにより循環ポンプ18の出口から散水ノズル223までの経路に滞留していた残りの高濃度洗剤液を、洗剤溶かし工程の前半で生成したときの洗剤濃度のまま、洗濯物207に散布できる。以上のように洗剤溶かし工程の前半で生成した高濃度洗剤液を効率よく洗濯物に浸み込ませることができる。高濃度洗剤液を洗濯物207に浸み込ませた後、次の工程において温風を効率よく生成し吹き付けることで、消費電力をおさえつつ、洗浄力を向上できる。
【0074】
ステップS6において、工程制御部112は、前洗い洗浄工程を実行する(前洗い洗浄工程)。前洗い洗浄工程では、高濃度洗剤液を散布された洗濯物207に、ヒートポンプ230で加熱した温風を、送風ファン20により洗濯物207に吹き付けて、押し広げるとともに加熱していく。このときヒートポンプ230への吸熱源とする水冷媒熱交換器236aに、随時給水する。水冷媒熱交換器236aの冷水出口側に温度センサ(図示せず)を設けておき、この温度が所定温度を下回ったとき、間欠的に給水してもよい。なお、給水により水冷媒熱交換器236aから押し流された冷水は、排水弁V1から機外へ排水させる。本工程において、洗濯物207は高濃度洗剤液を保水した状態であるため、洗濯物207の見かけの熱伝導率は高く、効率よく加熱できる。また温度を上げることで、保水されている高濃度洗剤液の表面張力と粘度をさげることができて、さらに洗濯物207の繊維を膨潤させるので、高濃度洗剤液の繊維への浸透をより促進できる。これにより、繊維から汚れを効率よく分離できる。分離できた汚れは、保水された高濃度洗剤液内に迅速に分散されるので、再び凝集して再付着することを防ぐことができる。工程を開始してから所定時間が経過すると、給水電磁弁16を制御して、外槽2内の洗濯水の水位を上昇させる。そして外槽2内の洗濯水の水位が、洗剤溶かし工程時の水位WL0に対して所定の水位WL1(WL0<WL1)まで上昇すると、給水を停止させ、前洗い工程を終了し、ステップS7に進む。
【0075】
ステップS6の前洗い工程が終了すると、工程制御部112は、本洗い工程を実行する。ここで、本洗い工程とは、ドラム3の回転によりドラム3内の下方に溜まった洗濯物207を持ち上げて、ドラム3内の上方から落下させることにより、洗濯物207に機械的な力を与えてたたき洗いをする工程である。本洗い工程は、ステップS7の本洗い1工程(第1本洗い工程)と、ステップS8の本洗い2工程(第2本洗い工程)と、で構成されている。
【0076】
ステップS7において、工程制御部112は、第1本洗い工程を実行する(第1本洗い工程)。具体的には、工程制御部112は、循環ポンプ18を所定の流量PF1となるように制御して、排水口21から吸い込んだ洗濯水を外槽2の開口部に設けられた散水ノズル231からドラム3の内部に散水させるとともに、モータM10aを制御してドラム3を所定の回転速度DR1で回転させることにより、ドラム3の内部の洗濯物207をたたき洗いする。このとき水受け部に温水ヒータを設けた機種では、温水ヒータ240に通電して追加給水した水を選択設定された所定温度(40℃)まで温める。もし、温水ヒータ240を備えていない機種であれば、ひきつづきヒートポンプ230により温風をつくり送風ファン20から吹き付けるが、ドラム3内の水位を増し、循環水量も増したため、温風による液滴の随伴や洗剤液の発泡を抑える意図から、温風の風量は抑え気味とする。本実施例ではダクト内にある放熱器231と熱交換器233を冷媒の凝縮器としているため、伝熱面積が十分確保されており、温風の温度低下や著しい熱量低下をおさえることができる。また設定温度が高い場合や洗濯負荷が大きい場合にも本コースの選択を可とした場合には、送風ファン20出口部に温風ヒータ213を設けておき、さらに昇温させるのがよい。このときは小流量の循環ポンプ239を別置し、水受け部54から汲み上げて送風ファン20出口近傍に散布することで、温風に液滴を混ぜて、洗濯物207に散布させてもよい。追加給水を通常の循環ポンプ18で散布させると洗濯物207の温度は急激に低下してしまうが、このような構成にすると、洗濯物207に含まれる水を満遍なく且つ僅かずつ入れ替えることができるため、洗濯物207の急激な温度低下も抑えることができるので、より洗浄性能を向上させることができる。
【0077】
所定の時間(T1)が経過すると、工程制御部112は、第1本洗い工程を終了し、ステップS8に進む。ステップS8において、工程制御部112は、第2本洗い工程を実行する(第2本洗い工程)。具体的には、工程制御部112は、給水電磁弁16を制御して、所定の水位WL2(WL1<WL2)まで外槽2に給水する。また、工程制御部112は、循環ポンプ18を所定の流量PF2(PF1<PF2)となるように制御して、排水口21から吸い込んだ洗濯水を外槽2の開口部に設けられた散水ノズル231からドラム3の内部に散水させるとともに、モータM10aを制御してドラム3を所定の回転速度DR2(DR1>DR2)で回転させることにより、ドラム3の内部の洗濯物207をたたき洗いする。所定の時間(T2)が経過すると、工程制御部112は、モータM10aおよび循環ポンプ18を停止させ、排水弁V1を開弁して外槽2内の洗濯水を排水する。
【0078】
ステップS9において、工程制御部112は、第1すすぎ工程を実行する(第1すすぎ工程)。例えば、第1すすぎ工程において、工程制御部112は、給水電磁弁16および排水弁V1を制御して、給水と排水を繰り返すとともに、モータM10aを制御してドラム3を回転させ、循環ポンプ18を制御して、排水口21から吸い込んだすすぎ水を外槽2の開口部に設けられた散水ノズル231からドラム3の内部に散水させて、衣類をすすぐ。そして、所定の時間が経過すると、工程制御部112は、モータM10aおよび循環ポンプ18を停止させ、排水弁V1を開弁して外槽2内のすすぎ水を排水する。
【0079】
また第1すすぎ工程の後半において、水冷媒熱交換器236aに給水して、水冷媒熱交換器236a内に滞留する冷水を、洗浄ノズルである散水スプレー247から外槽2内側やドラム3に散布して、残留洗剤液や洗濯物からの雑菌を洗い流す。常温の水よりも温度の低い水で洗い流すことで、常温の水よりも雑菌の繁殖を抑えられるため、排水経路に残った場合でもぬめりの発生やカビの発生を極力抑えることができる。また洗剤液の残り成分を、泡立てずに洗い流すことができる。
【0080】
また洗濯時の温風を作り出すときに吸熱されて生じた冷水を、洗濯終了時の槽洗浄に用いれば、外槽やドラムに付着していた雑菌を繁殖させずに洗い流すことができるため、洗濯機を清潔に保つことができ、衛生面の向上につながる。また、洗剤残り成分なども発泡させずに速やかに洗い流せるため、少ない水量で清潔性を保つことができる。
【0081】
ステップS10において、工程制御部112は、第2すすぎ工程を実行する(第2すすぎ工程)。例えば、第2すすぎ工程において、工程制御部112は、排水弁V1を閉弁し、給水電磁弁16を制御して、所定の水位まで外槽2に給水する。また、工程制御部112は、モータM10aを制御してドラム3を回転させ、循環ポンプ18を制御して、排水口21から吸い込んだすすぎ水を外槽2の開口部に設けた散水ノズル223からドラム3の内部に散水させて、洗濯物207をすすぐ。そして、所定の時間が経過すると、工程制御部112は、モータM10aおよび循環ポンプ18を停止させ、排水弁V1を開弁して外槽2内のすすぎ水を排水する。
【0082】
ステップS11において、工程制御部112は、脱水工程を実行する(脱水工程)。具体的には、工程制御部112は、排水弁V1を開弁させるとともに、モータM10aを制御してドラム3を本洗い工程時よりも高速で回転させ、洗濯物207を遠心脱水する。そして、所定の時間が経過すると、工程制御部112は、モータM10aを停止させ、排水弁V1を閉弁して、洗濯コース(洗い〜すすぎ〜脱水)を終了する。
【0083】
なお、ステップS7及びステップS8における本洗い工程においては、洗濯物207の黒ずみ、ごわつきを抑制させる運転特性としており、以下にそのメカニズムを中心に説明する。第1本洗い工程(ステップS7)の後に第2本洗い工程(ステップS8)を行うが、第2本洗い工程の水位WL2は、第1本洗い工程の水位WL1よりも高くなっている(WL1<WL2)。即ち、外槽2内の洗浄水の水量を増やすことにより、洗濯物207から剥がされた汚れを洗浄水に分散させることができ、洗濯物207から剥がされた汚れが再び洗濯物207に付着することにより生じる「洗濯物の黒ずみ」を抑制することができる。
【0084】
また、第2本洗い工程のドラム3の回転速度DR2は、第1本洗い工程のドラム3の回転速度DR1よりも遅くなっている(DR1>DR2)。ドラム3の回転速度DR2を回転速度DR1より遅くすることにより、ドラム3の回転によりドラム3内の下方に溜まった洗濯物207を持ち上げてドラム3内の上方から落下させる際、落下を開始する位置が低くなる。即ち、たたき洗いされる洗濯物207に加わる落下衝撃(機械力)が抑制され、「洗濯物のごわつき」を抑制することができる。また、水位WL2を高くすることによっても、落下衝撃(機械力)が抑制され、「洗濯物のごわつき」を抑制することができる。一方ドラム3の回転速度DR1は、遠心力によってドラム3内壁に張り付いた洗濯物207が、上方に持ち上げられるまでに、重力により全て剥がれ落ちてしまうよりも速い回転速度で回して(遠心力>重力)、すべての洗濯物に対して、たたき洗いのような落下をさせない運転としても、差支えない。即ち、たたき洗いを極力抑えつつ、通常の洗濯運転よりも多い循環量を洗濯物207に通過させることで、洗浄する運転としてもよい。しかしながら、たたき洗いによる洗浄性能が低下するおそれがあるが、これに対し、第2本洗い工程の循環ポンプ18の流量PF2を、第1本洗い工程の循環ポンプ18の流量PF1よりも大きくすることで(PF1<PF2)、水流による洗浄性能を確保させることができる。たとえば循環ポンプ18の循環流量は、30L/min以上80L/min以下とすることが望ましい。また、第1本洗い工程の運転時間(T1)と第2本洗い工程の運転時間(T2)は、第2本洗い工程の運転時間(T2)の方が第1本洗い工程の運
転時間(T1)よりも長くなるように設定するのが望ましい(T1<T2)。このようにすることにより、「洗濯物のごわつき」をより抑制することができる。
【0085】
以上のように、第1実施形態例に係るドラム式洗濯乾燥機の運転工程によれば、効率よく温風をつくることができ、少ない消費電力量で洗浄性能を向上させることができる。さらに衣類の黒ずみと衣類のごわつきを抑制することができる。
【0086】
また温度に対して色落ち、色あせが気になる洗濯物や、加温により繊維の縮みが目立ってしまう洗濯物に関しては、通常の洗濯コースを選ぶことができる。この場合には消費電力量が少なくて済む。さらに、黒ずみが気になる白物や薄い柄物、ごわつきが気になるタオルなど以外の洗濯物で、どちらかというと節水を望む洗濯では、節水洗濯コースを選ぶことができる。この場合は、前記本洗い工程において水位を上げず、循環流量も、15〜20L/minに設定することで、洗濯全体の使用水量を抑えることができる。
【0087】
図15は、ヒートポンプ230の構成における他の実施例を示した模式図である。本実施例では、内部熱交換器233から圧縮機237への配管の間に、第2膨張弁235と外部熱交換器236を設けた構成としている。なお第2膨張弁235は第1膨張弁232と同様に、絞り抵抗を抑えることができるものとしている。たとえば外部熱交換器236を水冷媒熱交換器236aとして、水の流れを重力により流下できる構成とすれば、排水弁を開いて水冷媒熱交換器236a内の水を空にすることで、水冷媒熱交換器236aを冷媒が流れるときに熱交換させずにすむので、水冷媒熱交換器236aを回避させる流路を必要としない。このような構成とすることで、運転制御と部品点数を減らすことができる。
【0088】
図16は、ヒートポンプ230の構成における他の実施例を示した模式図である。本実施例では、外部熱交換器236に空気冷媒熱交換器236bを設けた構成としている。ヒートポンプ230により温水を生成させる場合は、吸熱源として、ドラム3を駆動させるメインモータM10aの排熱や送風ファン20の排熱により温められた筐体内の空気を利用することができる。このような構成とすることにより、外部熱交換器236への水配管を設ける必要がなく、運転制御と部品点数を減らすことができる。