特許第6623101号(P6623101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6623101-円偏波アンテナ 図000002
  • 特許6623101-円偏波アンテナ 図000003
  • 特許6623101-円偏波アンテナ 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623101
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】円偏波アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20191209BHJP
【FI】
   H01Q13/08
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-68163(P2016-68163)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-184009(P2017-184009A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】羽田野 由晴
【審査官】 新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−147883(JP,A)
【文献】 特開平06−276015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板の一方の面に、正方形板状であって縮退分離素子を備えた放射導体が形成され、当該放射導体の一辺中央に給電点を有する円偏波アンテナであって、
前記給電点を設けた辺に直交する辺の中央から、前記放射導体と同一面上で外方に向けて、送受する信号周波数の2分の1波長から5分の3波長の間の長さで形成されて成る1本の紐状のスタブが突設されて成ると共に、
前記放射導体に対峙する前記誘電体基板の他方の面には、グランド導体が面形成されて成ることを特徴とする円偏波アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円偏波アンテナに関し、詳しくは方形型パッチアンテナから成る円偏波アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の方形型パッチアンテナから成る円偏波アンテナおいて、軸比の周波数特性とインピーダンス整合の周波数特性とを個別に調整可能としたものに、例えば特許文献1に記載された構成の円偏波アンテナがある。この円偏波アンテナは、第1の誘電体基板の片面に縮退分離素子を備えた放射導体を配置し、第1の誘電体基板に重なる様に且つ平行に第2の誘電体基板を配置して地導体とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−110347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の円偏波アンテナは、軸比の周波数特性とインピーダンス整合の周波数特性とを個別に調整できた。しかしながら、軸比の周波数特性を調整するには、放射導体の形状を調整することになるため、調整が容易ではなかった。また、2枚の誘電体基板を平行に配置して給電線により両者を連結する構造であるため、構造が複雑でコスト高であった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、インピーダンス整合の周波数特性を維持したまま、放射導体自体を調整することなく軸比の周波数特性を調整できる簡易な構造の円偏波アンテナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、誘電体基板の一方の面に、正方形板状であって縮退分離素子を備えた放射導体が形成され、当該放射導体の一辺中央に給電点を有する円偏波アンテナであって、前記給電点を設けた辺に直交する辺の中央から、前記放射導体と同一面上で外方に向けて、送受する信号周波数の2分の1波長から5分の3波長の間の長さで形成されて成る1本の紐状のスタブが突設されて成ると共に、前記放射導体に対峙する前記誘電体基板の他方の面には、グランド導体が面形成されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、スタブの長さを変更すればインピーダンス整合の周波数特性を維持したまま軸比の共振周波数を調整することが可能であり、簡易な操作で調整できる。
【0007】
また、スタブが半波長で良い場合はスタブの余分な部分を切断すれば良いし、半波長より僅かに長くする必要がある場合であっても切断作業で良く、スタブを継ぎ足すような面倒な作業が必要なく簡易な作業で調整できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スタブの長さを変更すればインピーダンス整合の周波数特性を維持したまま軸比の共振周波数を調整することが可能であり、簡易な操作で調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る円偏波アンテナの一例を示す基板正面図である。
図2】スタブの長さを変化させた場合の軸比の周波数特性である。
図3】(a)〜(c)は円偏波アンテナの他の例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る円偏波アンテナの一例を示し、誘電体基板(以下、単に「基板」とする)上に形成した放射導体パターンを示している。図1において、1は放射導体、2は給電点、3は縮退分離素子、4はスタブ、5は基板である。尚、基板5の裏面は全面グランド導体(図示せず)が形成されてる。
【0011】
放射導体1は略正方形をなし、一辺の長さLaは送受する円偏波周波数の略半波長となっている。また、縮退分離素子3は放射導体1の対向する一対の角部が45度の所定の幅で切り欠かれて形成されている。
更に、給電点2は周囲4辺のうちの一辺の中央に設けられている。即ち、図1に示す縮退分離素子3を形成した端部からの距離Lfは1Laの2分の1の値である。
【0012】
そして、スタブ4は給電点2を設けた辺に隣接して直交する2辺のうちの一方の辺の中央から突設され、放射導体1と同一面上で細長く紐状に形成されている。全体の長さは放射導体1と同様に円偏波周波数の半波長の長さを基本としている。
但し、本発明の目的にあるように、このスタブ4は軸比の共振周波数を調整する際に長さが変更される素子であり、切断して短くする調整方法の方が簡単であるため、作製時は半波長より僅かに長めとなっている。例えば5分の3波長の長さで作製され、切断の作業だけで希望する軸比の共振周波数特性を得ることを可能としている。
【0013】
また、ここではスタブ4はL字状に折り曲げ形成され、連結片の長さL1と折り曲げた先の折り曲げ片の長さL2の合計がスタブ4の長さとなる。このように折り曲げることで、放射導体1を形成している基板5を大きくすることなく基板5上にスタブ4の形成を可能としている。
【0014】
図2はこの円偏波アンテナの軸比の周波数特性を示し、スタブの長さを変えた場合の特性の変化を示している。図2において、D1は位相0度の特性、D2は位相+15度の特性、D3は移動−15度の特性をそれぞれ示している。そして、スタブ4の長さを例えば4mm変化させることで15度の位相変化を可能としている。
【0015】
このように、スタブ4の長さを変更すればインピーダンス整合の周波数特性を維持したまま軸比の共振周波数を調整することが可能であり、簡易な操作で調整できる。
また、スタブ4が半波長で良い場合はスタブ4の余分な部分を切断すれば良いし、半波長より僅かに長くする必要がある場合であっても切断作業で良く、スタブ4を継ぎ足すような面倒な作業が必要なく簡易な作業で調整できる。
【0016】
図3は円偏波アンテナの他の形状を示している。図3(a)はスタブ4の折り曲げ方向を図1とは逆の方向としている。図3(b)では図1とは対向する辺にスタブ4を形成している。また図3(c)では、折り曲げず真っ直ぐ形成している。
このように、スタブ4の形成部位は、給電点2を設けた辺の左右何れでも良いし、当然折り曲げなくても良い。
【符号の説明】
【0017】
1・・放射導体、2・・給電点、3・・縮退分離素子、4・・スタブ、5・・基板(誘電体基板)。
図1
図2
図3